説明

エンジンシステム

【課題】双発のエンジンにおいて、エンジンの排出ガスを共用の(連結された)導管を通して流すことによる悪影響を解消する。
【解決手段】ヘリコプタ型飛行モードと固定翼型飛行モードで作動可能で、かつ飛行中にこれらの飛行モードの間で移行可能な航空機10用のエンジンシステム20は、第1のエンジン22、第2のエンジン24および導管アッセンブリ34を備えている。導管アッセンブリ34は、第1のエンジン22と連通した第1の排気サブアッセンブリおよび第2のエンジン24と連通した第2の排気サブアッセンブリを備えている。第1の排気サブアッセンブリによって、第2の排気サブアッセンブリ内の流体の移送と実質的に独立して流体を移送することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。特に、ヘリコプタ型飛行と固定翼型飛行の両方が可能な航空機のエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプタ型飛行と固定翼型飛行の両方が可能な航空機が知られている。このような航空機の一つの例は、米国特許第5,454,530号明細書に記述されている。イリノイ州、シカゴのボーイング社製の単一のエンジンのX−50“ドラゴンフライ”航空機が
【特許文献1】に記載される航空機に類似している。これらの航空機は、一般に先尾翼ロータウィング(CRW)航空機と呼ばれている。
【0003】
CRW航空機は、先尾翼アッセンブリとリアクションロータとを備えている。リアクションロータは、垂直離着陸のような操縦を可能にする比較的低い速度のヘリコプタ型の飛行で駆動される(つまり、回転される)。リアクションロータは、実質的に水平飛行を可能にする比較的高い速度の翼が生じた(固定翼)飛行に対して所定の位置に固定され得る。先尾翼アッセンブリは、どちらからの切換えも同様であるが、ヘリコプタ型飛行と固定翼型飛行との間の切換え中に重要な揚力を発生させる。
【0004】
しかし、現行の設計には多数の課題がある。例えば、単一のエンジン設計は、エンジンの配置、保守、組立などに関して制限がある。さらに、エンジン停止が生じたときに、単一のエンジンの設計では、部分的つまり緊急飛行に対して作動し続けることが可能な第2のエンジンを備える航空機よりも一般的に大きな安全性の危険がある。
【特許文献1】米国特許第5,454,530号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知の双発の設計は、共用の(連結された)導管を通ってエンジンの排出ガスを流しているが、これは、運転上の問題がある。例えば、隣接するエンジンの間の排気の流れの特性や稀に起こる不規則性(つまり、相違)によって起こり得るエンジンの排気ガスの流れの音響的な影響が、共用の連成した導管を介して起こり得る。さらに、一つのエンジンで起こる突然発生するストール即ちサージは十分に補正できず、共用の導管を介して連結された隣接するエンジンに望ましくない悪影響を与え得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ヘリコプタ型飛行モードと固定翼型飛行モードで作動可能で、飛行中にこれらの飛行モードの間で移行が可能である航空機に利用される本発明のエンジンシステムは、第1のエンジン、第2のエンジンおよび導管アッセンブリを備えている。導管アッセンブリは、第1のエンジンと連通している第1の排気サブアッセンブリおよび第2のエンジンと連通している第2の排気サブアッセンブリを備えている。第1の排気サブアッセンブリによって、第2の排気サブアッセンブリ内の流体の移送と実質的に独立して流体を移送することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、メインエアフレーム12、先尾翼アッセンブリ14、尾翼アッセンブリ16、リアクションロータ18および第1のガスタービンエンジン22と第2のガスタービンエンジン24を備えたエンジンシステム20を有する航空機10の斜視図である。航空機10は、ヘリコプタ型飛行モードおよび固定翼型飛行モードで作動可能な先尾翼ロータウィング(CRW)型航空機である。リアクションロータ18は、ヘリコプタ型の飛行のときに選択的に回転し、固定翼型飛行では回転が固定される。リアクションロータ18は、両方の飛行モードで所望の揚力を生み出すように空力的に形づけられている。図1に示されるように、リアクションロータ18は、実質的に水平方向の固定翼飛行に適した回転位置に固定される。
【0008】
リアクションロータ18は、ヘリコプタ型飛行モードのときに、排気ガスが第1および第2のガスタービンエンジン22,24から選択的に流れることができる内部通路26A,26Bを備えている。内部通路26A,26Bは、リアクションロータ18の両端またはその付近に位置する前/後の反対方向を向いた各排気口28A、28Bで終端をなしている。流体(つまり、排気ガス)は、排気口28A,28Bを通って流れることが可能で、両者の組み合わせによりリアクションロータのねじり荷重を生み出し、リアクションロータ18を作動(つまり、回転)させる回転力を生み出す。
【0009】
さらに、エンジンシステム20は、第1のガスタービンエンジン22に機能的に連結された第1の排気ノズル30および第2のガスタービンエンジン24に機能的に連結された第2の排気ノズル32を備えている。第1および第2のガスタービンエンジン22,24からの流体(つまり、排気ガス)は、固定翼型モードで第1および第2の排気ノズル30,32それぞれを選択的に通って流れることが可能である。
【0010】
第1および第2のガスタービンエンジン22,24は、適当などのような形式のガスタービンエンジンであっても良い。第1および第2のガスタービンエンジン22,24の特定の大きさと形状は、特定の用途により望ましいように変化する。一般的に、第1および第2のガスタービンエンジン22,24は実質的に同じものである。
【0011】
航空機10の2つの飛行モードは、以下のように理解され得る。第1および第2のガスタービンエンジン22,24からの流体は、リアクションロータ18の内部通路26A,26Bを通るか、または第1および第2の排気ノズル30、32を通るか、のどちらかを選択的に通過することが可能である。ヘリコプタ型飛行モードでは、リアクションロータ18を作動させるために、第1および第2のガスタービンエンジン22,24から内部通路26A,26Bを通って排気口28A,28Bへ案内される。リアクションロータ18の回転は、揚力を発生させ、垂直離着陸のような操縦を含むヘリコプタ型の飛行を可能にする。固定翼型飛行モードでは、流体は、第1および第2のガスタービンエンジン22,24から第1および第2の排気ノズル30、32それぞれを通って案内され、推力を生み出しており、揚力は回転が固定されたリアクションロータ18(固定された翼として作用して)によって作られる。
【0012】
ヘリコプタ型飛行モードから固定翼型飛行モードへの移行および逆方向の移行の切換動作は飛行中に可能である。飛行中にパイロットからの要求に応じて、リアクションロータ18は、回転を阻止して固定翼飛行を可能にするために、メインエアフレーム12に対して所定の位置に固定され得る。先尾翼アッセンブリ14は、移行中に役立つ揚力を発生させている。CRW飛行機の飛行モードの他の例は、特許文献1に記載されている。
【0013】
図2および図3は、エンジンシステム20の概略図である。図2は、エンジンシステム20の概略の平面図であり、図3は、図2の線3−3に沿ったエンジンシステム20の概略的な断面の側面図である。リアクションロータ18が、参考として破線内に示されるが、航空機10の他の部分は簡潔にするために省略する。
【0014】
エンジンシステム20は、第1および第2の切り離された導管サブアッセンブリを構成する導管アッセンブリ34を備えている。第1の導管サブアッセンブリは、第1のガスタービンエンジン22用のものであり、エンジン連結部36、ロータ連結部38およびノズル連結部40を備えている。エンジン連結部36は、第1のガスタービンエンジン22に機能的に連結されている。ロータ連結部38は、エンジン連結部36とリアクションロータ18の内部通路26Aに機能的に連結されている。ノズル連結部40は、第1の排気ノズル30とロータ連結部38に機能的に連結されている。第1の流路42が、第1のガスタービンエンジン22から、エンジン連結部36、ロータ連結部38およびノズル連結部40を通って画定される。第2の導管サブアッセンブリは、第2のガスタービンエンジン24用のものであり、エンジン連結部44、ロータ連結部46およびノズル連結部48を備えている。エンジン連結部44は、第2のガスタービンエンジン24に機能的に連結される。ロータ連結部46は、エンジン連結部44とリアクションロータ18の内部通路26Bに機能的に連結される。ノズル連結部48は、第2の排気ノズル32とロータ連結部46に機能的に連結される。第2の流路50が、第2のガスタービンエンジン24から、エンジン連結部44、ロータ連結部46およびノズル連結部48を通って画定される。
【0015】
図3に示されるように、第1および第2の各導管サブアッセンブリのロータ連結部38,46は、リアクションロータ18の回転軸である軸A中心に同心円状に配列されている。これにより、第2の導管サブアッセンブリのロータ連結部46は、第2の流路50の概ね円筒形の部分を画定し、第1の導管サブアッセンブリのロータ連結部38は、第1の流路42の概ね環状の部分を画定している。
【0016】
第1の分流バルブ52が、第1の導管サブアッセンブリのノズル連結部40と第1の排気ノズル30との間に位置している。第2の分流バルブ54が、第2の導管サブアッセンブリのノズル連結部48と第2の排気ノズル32との間に位置している。第1および第2の分流バルブ52,54は、第1および第2の流路42,50の各々に対して、ON/OFF式の選択的な流体の流れの遮断物として機能している。一つの実施例では、第1および第2の分流バルブ52,54は、第1および第2の排気ノズル30,32の各々への流体の流れを選択的に許容または拒絶するベネシャンブラインドのように回転するベーンを備えるタイプの可変ベーンアッセンブリである。他のタイプの分流バルブも他の実施例で利用できる。
【0017】
第1および第2の分流バルブ52,54は、所望の飛行モードに基づいて開閉される。第1および第2の分流バルブ52,54が閉じた状態では、第1および第2の排気ノズル30,32への流体の流れは遮断され(つまり、拒絶される)、流体の流れは、リアクションロータ18の内部流路26A,26Bを通って案内され、排気口28A,28Bから排出される。従って、ヘリコプタ型飛行が可能となる。第1および第2の分流バルブ52,54が開いた状態では、主な流体の流れは、第1および第2の排気ノズル30,32を通過する。従って、固定翼型飛行が可能となる。第1および第2の分流バルブ52,54が開いた状態で、リアクションロータ18の内部通路26A,26Bへ流体がいくらか流入し得るが、流体の大部分は自然に第1および第2の排気ノズル30,32を通って流れる傾向があることに留意されたい。しかし、他の実施例では、固定翼型飛行に対するリアクションロータ18への流体の流れを選択的に遮断するようにバルブ(図示せず)が使用され得る。
【0018】
第1および第2の導管サブアッセンブリが切り離されているので、導管アッセンブリ34の第1および第2の流路42,50は独立している。つまり、第1および第2のガスタービンエンジン22,24からの流体の流れ(つまり、排気ガス)は、独立し分離している。この分離は多数の利点をもたらしている。例えば、各エンジンに対する流路(つまり、流れの回路)は独立しており、エンジン間の流れの相互作用が想定されないので、一方のエンジンに関連するエンジンの現象が他のエンジンに関連する流体の流れに影響を及ぼさない。他方のエンジンが流体の流れの悪影響を受けずに作動し続けながら、一方のエンジンを停止することができる。さらに、本発明は、安全性、救命生存性および設置パッケージングに利点がある。
【0019】
図4は、図2の線4−4に沿ったエンジンシステム20の一部の断面図である。図4に示されるように、第1の軸受セット60と第2の軸受セット62が、第2の導管サブアッセンブリのロータ連結部46をリアクションロータ18と内部通路26Bに対し支持している。第1の軸受セット60はころ軸受のセットであり、第2の軸受セット62は玉軸受のセット(スラスト軸受)である。第1の流路42に対し第2の流路50をシールするために、シール64が、第2の軸受セット62に隣接して位置している。
【0020】
第3の軸受セット66および第4の軸受セット68が、第1の導管サブアッセンブリのロータ連結部38をリアクションロータ18と内側の通路26Aに対し支持している。第3の軸受セット66はころ軸受のセットであり、第4の軸受セット68は玉軸受のセット(スラスト軸受)である。環境空気に対し第1の流路42をシールするために、シール70が、第4の軸受セット68に隣接して位置している。シール64,70の双方は、例えば、通常のブラシシールまたはカーボンシールであり得る。
【0021】
軸受の配列および導管サブアッセンブリ34の回転部品間のインタフェースは、特定の用途に望ましいように変化し得ることに留意されたい。図4に示される特定の実施例は、制限的なものではなく、例示的なものである。
【0022】
本発明の最良の実施例を説明したが、当業者は、修正が本発明の範囲を逸脱することなく実施されることを理解できるであろう。例えば、分離した導管の流路の特定の大きさ、形状および配列は要求に応じて変化し、特定の航空機で利用されるエンジンの数によって2つ以上の独立した流路が構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のエンジンシステムを備えた航空機の斜視図。
【図2】エンジンシステムの概略の平面図。
【図3】図2の線3−3に沿ったエンジンシステムの概略的な断面図。
【図4】図2の線4−4に沿ったエンジンシステムの一部の断面図。
【符号の説明】
【0024】
10…航空機
12…メインエアフレーム
14…先尾翼アッセンブリ
16…尾翼アッセンブリ
18…リアクションロータ
20…エンジンシステム
22,24…ガスタービンエンジン
26A,26B…内部通路
28A,28B…排気口
30,32…排気ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエンジンと、
第2のエンジンと、
第1の供給用導管と第2の供給用導管が通って延びているリアクションロータと、
第1の排気ノズルと、
第2の排気ノズルと、
第1の流路と第2の流路を画定している流れ移送導管と
を備え、
前記流れ移送導管の前記第1の流路は、前記第1のエンジン、前記リアクションロータの前記第1の供給用導管および前記第1の排気ノズルと連通し、かつ前記流れ移送導管の前記第2の流路は、前記第2のエンジン、前記リアクションロータの前記第2の供給用導管および前記第2の排気ノズルと連通し、
ヘリコプタ型飛行モードと固定翼型飛行モードの両方が可能で、かつ飛行中に両方の飛行モードの間の移行が可能な航空機用のエンジンシステム。
【請求項2】
前記第1のエンジンと前記第2のエンジンの両方が、ガスタービンエンジンであることを特徴とする請求項1記載のエンジンシステム。
【請求項3】
前記第1の流路と前記第2の流路が、同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記第1の流路が、前記第2の流路の内側に位置することを特徴とする請求項3記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記第1の排気ノズルの一部を閉鎖可能な第1の分流バルブと、
前記第2の排気ノズルの一部を閉鎖可能な第2の分流バルブと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のエンジンシステム。
【請求項6】
リアクションロータを備え、かつヘリコプタ型飛行モードと固定翼型飛行モードの両方が可能な航空機用のエンジンシステムであって、
第1のターボエンジンと、
第2のターボエンジンと、
前記第1のターボエンジンと連通するとともに、前記リアクションロータ上にまたはその内部に位置する第1の移送導管と連通する第1の排気サブアッセンブリと、
前記第2のターボエンジンと連通するとともに、前記リアクションロータ上にまたはその内部に位置する第2の移送導管と連通する第2の排気サブアッセンブリと、
を備え、
前記第1の排気サブアッセンブリを通った流体の移送と前記第2の排気サブアッセンブリを通った流体の移送は実質的に独立していることを特徴とするエンジンシステム。
【請求項7】
前記第1の排気サブアッセンブリ内の流体の流れを選択的に案内するように、前記第1の排気サブアッセンブリに機能的に連結された第1の分流バルブをさらに備えることを特徴とする請求項6記載のエンジンシステム。
【請求項8】
前記第2の排気サブアッセンブリ内の流体の流れを選択的に案内するように、前記第2の排気サブアッセンブリに機能的に連結された第2の分流バルブをさらに備えることを特徴とする請求項6記載のエンジンシステム。
【請求項9】
先尾翼アッセンブリとリアクションロータアッセンブリとを備え、ヘリコプタ型飛行モードと固定翼型飛行モードで作動可能であり、かつ飛行中にこれらの飛行モードの間の移行が可能な航空機用のエンジンシステムであって、
第1のエンジンと、
第2のエンジンと、
前記第1のエンジンと連通する第1の排気サブアッセンブリおよび前記第2のエンジンと連通する第2の排気サブアッセンブリを有する導管アッセンブリと、
を備え、
前記第1の排気サブアッセンブリの流体の移送が、前記第2の排気サブアッセンブリ内の流体の移送から実質的に独立していることを特徴とするエンジンシステム。
【請求項10】
前記ヘリコプタ型飛行モードでの飛行のために前記第1のエンジンから前記リアクションロータアッセンブリへ、または前記固定翼型飛行モードでの飛行のために第1の排気ノズルへ、選択的に流体を移送可能にするように、前記導管アッセンブリが構成されることを特徴とする請求項9記載のエンジンシステム。
【請求項11】
前記ヘリコプタ型飛行モードでの飛行のために前記第2のエンジンから前記リアクションロータアッセンブリへ、または前記固定翼型飛行モードでの飛行のために第2の排気ノズルへ、選択的に流体を移送可能にするように、前記導管アッセンブリが構成されることを特徴とする請求項9記載のエンジンシステム。
【請求項12】
前記第1のエンジンと前記第2のエンジンが、ガスタービンエンジンであることを特徴とする請求項9記載のエンジンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−2459(P2008−2459A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134862(P2007−134862)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION