説明

エンジン潤滑剤

【課題】本発明の目的は、4ストロークエンジンでの使用に特に有用なエンジン潤滑剤を提供することである。
【解決手段】エンジン潤滑剤、特にSAE 0Wエンジン潤滑剤が記載されている。このエンジン潤滑剤は、15質量%以上の少なくとも1種のジエステルおよび20質量%以下の添加剤を含むエンジン潤滑剤であって、該少なくとも1種のジエステル、または1種超が存在するのであればその混合物が、100℃において3.3以下の動粘度、130以上の粘度指数、−30℃以下の流動点および15質量%以下のノアク蒸発損失を有しているエンジン潤滑剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン潤滑剤、特に4ストロークエンジンにおいて用いられるエンジン潤滑剤、そしてより好ましくはSAEの分類のSAE 5W未満の等級を有するエンジン潤滑剤に関し、またそのような潤滑剤の4ストロークエンジンにおける使用に関する。
【背景技術】
【0002】
増え続ける環境上の、法的な、そして経済的な圧力のために、エンジン潤滑剤は、エンジンの効率の増加、すなわちより大きいmpgもしくはkpl、およびエンジン排出物の低減、そして潤滑剤交換の頻度の減少、すなわちより少ないオイルの使用、に寄与することが求められている。
【0003】
しかしながら、特に石油由来のオイル、例えば鉱物油を潤滑剤として用いる場合には、これらの要求はこれらのオイルによって示される粘度と揮発特性に相反する要求を課すので、これらの要求に適合するのは困難なことである。例えば、エンジンオイルは、周囲温度が低い時には冷えたエンジンを容易に始動させることが求められ、一方では、高温の作動温度において良好な潤滑を確実にさせることが求められる。このことは、異なる粘度の潤滑剤原料油を混合することによって達成することができる。しかしながら、このような配合は、成分の潤滑剤原料油の異なる粘度指数のために、作動温度範囲の要求に適合するのには十分ではない可能性がある。このことは粘度指数向上剤の使用につながり、しばしば比較的に多量の使用につながる。このような粘度指数向上剤は、しばしば重合体の性質であり、そして特に高性能車両においては、作動温度およびエンジン内の流体の剪断によって破壊される可能性があり、粘度の潜在的な損失およびエンジンの故障を招く。
【0004】
他の取り組みは合成潤滑剤原料油、例えば特別に処理された鉱物油、アルファオレフィンオリゴマーおよびポリマー(これ以降、ポリアルファオレフィン)およびエステル、例えばモノエステル、ジエステル、ポリエステルおよび複合エステルを、場合によっては適切な添加剤、例えば粘度指数向上剤と共に、用いている。
【0005】
このような取り組みは、例えば独国特許出願公開第2133042号明細書、欧州特許出願公開第0089709号明細書、欧州特許第0792334号明細書、特開平05−331483号明細書、米国特許第4155861号明細書および米国特許第6303548号明細書に例示されている。
【0006】
独国特許出願公開第2133042号明細書には、粘度分類が10W−20〜5W−20のエンジン潤滑剤が開示されており、それらは80〜105の範囲の粘度指数および100℃において7.5cSt〜12cStの範囲の動粘度を有する鉱物油ラフィネート、100℃において3cSt〜5cStの範囲の動粘度と3%〜10%のノアク(Noack)蒸発損失とを有する油溶性の合成潤滑剤、例えばジエステル、および添加剤からなっている。100℃において7sStの動粘度および116の粘度指数を有し、また5%の添加剤パッケージを有している10Wエンジンオイルの具体的な例が、75%の、100℃において9cStの動粘度、102の粘度指数および6%のノアク(Noack)蒸発損失を有する鉱物油、並びに25%のトリメチルアジピン酸ジ−n−デカノールから誘導されている。
【0007】
欧州特許出願公開第0089709号明細書には、アルコールから誘導された有機炭酸ジエステルが、エンジン潤滑剤の成分として開示されている。
【0008】
欧州特許第0792334号明細書には、少なくとも8個の炭素原子を有する飽和分岐鎖脂肪族一価アルコールおよび少なくとも10個の炭素原子を有する飽和分岐鎖脂肪族モノカルボン酸から誘導された少なくとも1種のエステルを有するエンジン潤滑剤が開示されている。
【0009】
特開平05−331483号明細書には、少ない量の粘度指数向上剤しか要求されないエンジンオイルが開示されている。このエンジンオイルは10%〜30%のジエステルまたはポリエステル、60%〜89%のアルファオレフィンオリゴマー、1%〜20%のエチレンアルファオレフィンオリゴマーおよび0.5%〜3%のジアルキルジチオリン酸亜鉛を磨耗防止剤として有している。このオイルは100℃において4cStまたはそれ以上の動粘度を有している。具体例は、100℃において3.62cStの動粘度を有するアジピン酸ジイソデシルを包含している。
【0010】
米国特許第4155861号明細書には、ジカルボン酸の単量体のジエステルならびにジカルボン酸(好ましくは分岐の)およびヘキサンジオールまたはトリメチルヘキサンジオールから誘導された複合エステルからなる混合エステルを主成分とする潤滑剤が開示されている。具体例では、単量体のジエステルは、トリメチルアジピン酸n−オクチル、トリメチルアジピン酸n−デシルである。複合エステルの1%〜10%の水準のトリメチルアジピン酸n−オクチル、n−デシルへの添加は、SAE分類の5W/20、5W/30または10W/40のエンジンオイルをもたらすと記載されている。
【0011】
米国特許第6303548号明細書には、SAE 0W−40の潤滑剤組成物が開示されており、これは5%〜80%の鉱物油の基原料油、100℃において3.5cSt〜4.5cStの範囲の動粘度を有する5%〜90%のポリアルファオレフィン、およびモノカルボン酸とポリカルボン酸とから一価のアルコールおよびポリオールとともに誘導された1%〜30%のエステル、更に3%〜7%のポリメタクリレートおよび4%〜9%のオレフィン共重合体もしくは水素化ジエン共重合体を含む粘度向上剤からなっている。具体例はアジピン酸ジイソオクチルを用いている。
【0012】
このような潤滑剤の不都合としては、基油の粘度指数(これは膜厚に影響を与える)によって与えられる固有の限界および揮発性(すなわち、潤滑剤のノアク(Noack)蒸発損失)を増加させることなしに粘度を低減させることができないことが挙げられる。更に、非常に低い粘度のエステルはまた高い極性を有する可能性があり、またこれらのエステルが高い使用量、例えば15質量%超で用いられる場合には、ZDDPなどの磨耗防止剤との競合のために、シール適合性の問題および潜在的磨耗の問題を招く可能性がある。例えば、アジピン酸ジイソオクチルは41のNPIを有している。更に、低揮発性を与えるように最適化されている低粘度の潤滑剤はまた、貧弱な酸化安定性(gem−分岐が存在する成分の使用から)から生じる、低粘度指数(125未満)、貧弱な低温流動特性、または短い交換間隔のいずれかに悩まされる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第2133042号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0089709号明細書
【特許文献3】欧州特許第0792334号明細書
【特許文献4】特開平05−331483号明細書
【特許文献5】米国特許第4155861号明細書
【特許文献6】米国特許第6303548号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、4ストロークエンジンでの使用に特に有用なエンジン潤滑剤を提供することである。本発明の更なる目的は、SAE分類の5W未満の等級、より好ましくはSAE分類の0Wもしくはそれ以下の等級を有するエンジン潤滑剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、エンジン潤滑剤は15質量%以上の少なくとも1種のジエステルおよび20質量%以下の添加剤を含んでおり、該少なくとも1種のジエステル、もしくはもしも1種超が存在するのであれば該ジエステルの混合物は、100℃において3.3以下の動粘度、130以上の粘度指数、−30℃以下の流動点、および15質量%以下のノアク(Noack)蒸発損失を有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、4ストロークエンジンでの使用に特に有用なエンジン潤滑剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここに記載され、また特許請求される本発明との関係においてこの明細書中で用いられる用語「質量%」は、文脈によって要求されるように、エンジン潤滑剤の総質量のパーセンテージとして表されるその成分の質量%を表す。文脈において特定の成分を表す場合、例えばノアク(Noack)蒸発損失では、用語「質量%」はその成分の総質量に対する質量%を表す。
【0018】
好ましくは、前記のエンジン潤滑剤は、90質量%以下の前記の少なくとも1種のジエステルを含んでいる。本発明の1つの態様では、前記のエンジンオイルは、前記の少なくとも1種のジエステルおよび前記の添加剤から本質的になるものである。
【0019】
好ましくは、前記のエンジン潤滑剤は20質量%以上、より好ましくは25質量%以上の前記の少なくとも1種のジエステルを含んでいる。前記のエンジン潤滑剤は75質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下の前記の少なくとも1種のジエステルを含んでいてもよい。本発明の1つの態様では、前記のエンジン潤滑剤は約30質量%の前記の少なくとも1種のジエステルを含んでいる。
【0020】
前記のエンジン潤滑剤が、前記の少なくとも1種のジエステルおよび前記の添加剤から本質的になっていない場合には、前記のエンジン潤滑剤の残りは、APIのグループIII、IVおよびVの潤滑剤から選ばれた潤滑剤成分およびガスの液化潤滑剤(GTL)およびそれらの混合物を含んでいる。適切なグループIIIの潤滑剤の例としては、鉱物油が挙げられる。適切なグループIVの潤滑剤の例としては、C〜C12のアルファオレフィンから誘導されたポリアルファオレフィンを含んでおり、また100℃で3.6cSt〜8cStの範囲の動粘度を有している。グループVの潤滑剤の例としては、アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、およびエステル、例えば一価のアルコールおよび/もしくはポリオールおよびモノカルボン酸もしくはポリカルボン酸から誘導されたエステルが挙げられる。アルキルナフタレンの例としては、モービル(Mobil)から入手可能なシネスティック(商標)5およびシネスティック(商標)12のアルキルナフタレンが挙げられる。エステルの例としては、プライオルーブ(Priolube)1976(商標)のモノエステルおよびプライオルーブ(Priolube)3970(商標)のTMPnC/nC10ポリオールエステルがある。GTL基原料油は、天然ガス(すなわちメタンおよびより高級なアルカン)の合成ガス(一酸化炭素および水素)への転換および続くオリゴマー化(例えば、フィッシャー・トロプシュ法)を経由したより高分子量の分子への転換によって製造され、この高分子量の分子は水素化分解されて、所望の潤滑剤の沸点範囲/粘度範囲にあるイソパラフィンを生成する。GTL基原料油は、ほんの最近商業化されたものであり、従ってこれに関連して自由に入手できるデータは非常に少ないかまたは存在しない。知られている限りにおいて、このようなGTL基原料油はポリアルファオレフィンと同様の粘度等級を有するであろう。
【0021】
本発明の1つの態様では、前記のエンジン潤滑剤は、前記の少なくとも1種のジエステル、少なくとも1種のグループVの潤滑剤、好ましくはアルキルナフタレンまたは前記の少なくとも1種のジエステル以外のエステル、例えばポリオールエステルもしくは複合エステル、並びに前記の添加剤から本質的になっている。
【0022】
好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは、100℃で3.0cSt以下の動粘度を有している。好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは、140以下の粘度指数を有している。好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは、約−30℃以下、より好ましくは−35℃以下、そして特には−40℃以下の流動点を有している。好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは、14.5質量%以下、より好ましくは14.0質量%以下のノアク(Noack)蒸発損失を有している。
【0023】
好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは、200℃以上、より好ましくは210℃以上、更に好ましくは220℃以上、そして特には約230℃の引火点を有している。
【0024】
好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは、欧州特許第0792334号明細書に記載されているように、30超〜100未満、より好ましくは80未満の非極性指数(NPI)を有している。
【0025】
好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは、−20℃に1週間保持された場合にも安定である。この低温安定性は、約30mLのジエステルを、ガラス瓶中に貯蔵し、そしてこの瓶を−20℃の冷凍装置に1週間放置し、この試料を一定の間隔を置いて調べ、そして結晶の形成またはゲル化の兆候に注目することによって試験することができる。
【0026】
好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは、−35℃で6200cPs以下の低温割れ模擬試験(CCS)動粘度を有している。
【0027】
好ましくは、前記のエンジン潤滑剤は前記の少なくとも1種のジエステルの唯一つを含んでいる。
【0028】
前記のエンジン潤滑剤が少なくとも2種の前記の少なくとも1種のジエステルを含んでいる場合には、それぞれのジエステルは異なる特性を備えたものを選ぶことができる。好ましくは、それぞれのジエステルの特性は上記に記載したような特性値の範囲にあるが、あるいは、ジエステル混合物の特性が上記の特性値の範囲内であるならば、少なくとも1種のジエステルの1つまたはそれ以上の特性は、上記の特性値の範囲外であってもよい。
【0029】
好ましくは、前記の少なくとも1種のジエステルは下記の、
a)少なくとも1種のC〜C12、好ましくはC〜C10の脂肪族ジカルボン酸もしくはそれらの無水物と、少なくとも1種の第一級もしくは第二級、好ましくは第一級のC〜C12、好ましくはC〜C10の脂肪族一級アルコールとの反応生成物(前記の少なくとも1種の酸が分岐したものであれば、その場合は前記の少なくとも1種のアルコールは直鎖であり、もしも前記の少なくとも1種の酸が直鎖であれば、その場合は前記の少なくとも1種のアルコールは分岐したものである)、および
b)少なくとも1種のC〜C12、好ましくはC〜C10の脂肪族モノカルボン酸と少なくとも1種のポリアルキレングリコール(そのアルキル基はC〜Cアルキル基およびそれらの混合物から選ばれる)との反応生成物(前記の少なくとも1種のポリアルキレングリコールが分岐したメチル基である少なくとも1つの繰り返し単位を含んでいる場合には、少なくとも1種の前記の少なくとも1種の酸は直鎖であり、またもしも前記の少なくとも1種のポリアルキレングリコールが直鎖の繰り返し単位だけを含んでいる場合には、少なくとも1種の前記の少なくとも1種の酸は分岐している)、
からなる群から選ばれる。
【0030】
好ましくは、ジエステルが二塩基酸もしくはそれらの無水物および一級アルコールから誘導される場合には、このジエステルは17〜36個、より好ましくは20〜30個、そして更に好ましくは23〜26個の炭素原子を含んでいる。
【0031】
好ましくは、ジエステルが一塩基酸およびポリアルキレングリコールから誘導される場合には、このジエステルは17〜40個、より好ましくは20〜30個の炭素原子を含んでいる。
【0032】
好ましくは、ジカルボン酸およびアルコールの反応生成物は、分岐した酸と直鎖のアルコールの反応生成物であるか、または直鎖の酸と分岐したアルコールとの反応生成物のいずれかである。
【0033】
好ましくは、モノカルボン酸とポリアルキレングリコールとの反応生成物は、分岐した酸とポリエチレングリコールとの反応生成物であるか、あるいは直鎖の酸とポリプロピレングリコールもしくはポリブチレングリコール、好ましくはポリプロピレングリコール、または少なくとも1つのエチレングリコール繰り返し単位を含むそれらの共重合体との反応生成物いずれかである。好ましくは、ポリアルキレングリコールは概ね150〜300の範囲、より好ましくは概ね180〜250の範囲の平均相対分子質量(avRMM)を有している。好ましいポリアルキレングリコールはポリプロピレングリコールである。
【0034】
分岐した酸および/または分岐したアルコールの分岐鎖は、C〜Cアルキル基、より好ましくはC〜Cアルキル基、そして特にはメチル基であることができる。この分岐した酸は好ましくはアルファの位置で分岐しているのではなく、好ましくはベータの位置で分岐している。好ましくは、この酸はいずれかのgem−分岐基、例えばgem−ジメチル基もしくはgem−ジエチル基をも含まず、そして好ましくは唯一のもしくはただ2つの分岐鎖、好ましくはベータの位置に単一の分岐鎖を含んでいる。
【0035】
好ましいジカルボン酸としては、アジピン酸、3−メチルアジピン酸およびセバシン酸が挙げられる。好ましい一級アルコールとしては、1−オクタノール、1−デカノールおよびそれらの混合物、2−エチルヘキサのールならびにイソノニルアルコールが挙げられる。好ましいモノカルボン酸としては、カプリル酸およびカプリン酸が挙げられる。好ましいポリアルキレングリコールは、好ましくは180〜250の範囲のavRMMを有するポリプロピレングリコールからなっている。
【0036】
好ましいジエステルは、アジピン酸ジイソノニル、3−メチル−アジピン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルおよびPPG225n−オクチル、n−デシルジエステルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる。より好ましくは、ジエステルは、アジピン酸ジイソノニル、3−メチル−アジピン酸ジ−n−オクチルおよびセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルおよびそれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0037】
予測されるように、前記のジエステルを製造するのに用いられる酸およびアルコールは、商業的供給源からのものであり、また100%の酸またはアルコールを含んでいる必要はない。このような市販用の製品は、通常は主要な製品の主成分とともに、他の異性体および/または短いもしくは長い鎖長の付加的な製品を含んでいる。このことは、反応生成物であるジエステルの特性の変動を招く可能性がある。特性におけるこのような変動は、以下の実施例において例示される。
【0038】
本発明の1つの態様では、前記のエンジン潤滑剤は、所望により単純エステル、これ以前に記載したジエステルでないジエステル、および複合エステルまたはそれらの混合物を含んでいてもよい。好ましくは、前記のジエステルと前記の所望によるエステルの質量比は、100:0〜60:40の範囲、より好ましくは100:0〜75:25の範囲、更に好ましくは99:1〜80:20の範囲、特には95:5〜85:15の範囲にある。
【0039】
前述したように、本発明の前記のエンジン潤滑剤は、20質量%以下の添加剤を含んでいる。好ましくは、前記のエンジン潤滑剤は、15質量%以下、より好ましくは10質量%以下の添加剤を含んでいる。
【0040】
通常は、前記の添加剤は、
a)粘度指数向上剤、例えばアルキルメタクリレート共重合体、オレフィン共重合体(OCP)およびそれらの混合物(これらは有効な量、通常は0.1質量%〜6質量%の範囲、が添加される)
b)酸化防止剤、例えばフェノール系酸化防止剤、例えばヒンダードフェノール、およびアルキル化ジフェニルアミンおよびそれらの混合物(これらは有効な量、通常は0.5質量%〜1質量%の範囲、が添加される)
c)金属不活性化剤、例えばジアルキルジチオリン酸の金属塩、チアジアゾールおよびとリアソール(これらはまた、防蝕剤および極圧添加剤としても機能する可能性がある)(これらは有効な量、通常は0.01質量%〜0.5質量%の範囲、が添加される)
【0041】
d)流動点降下剤(これらは有効な量、通常は0.1質量%〜1.0質量%、が添加される)
e)極圧添加剤、例えばジアリールジチオリン酸亜鉛(ZDDP)(これらは有効な量、通常は0.5質量%〜3.0質量%の範囲、が添加される)
f)摩擦調整剤、例えばグリセロールモノオレート(これらは有効な量、通常は0.3質量%〜1.3質量%の範囲、が添加される)
【0042】
g)消泡剤、例えばジメチルポリシロキサン、ポリアクリレート(これらは有効な量、通常は1ppm〜100ppm、が添加される)
h)多機能添加剤、例えばDDI(浄化剤分散防止)パッケージ、および
i)このような添加剤の混合物、である。
【0043】
本発明によるエンジン潤滑剤では、前記のジエステルおよび、所望による他のエステルが有意量、好ましくはエンジン潤滑剤の主成分として、存在しており、そのようなエンジン潤滑剤は粘度指数向上剤などの添加剤がなくてもよい。
【0044】
エンジン潤滑剤中で使用される添加剤の組み合わせおよびそれらの量は大きく変わる可能性があるが、しかしながら本発明による前記のエンジン潤滑剤中に含まれる全ての添加剤の総量は、前述のように、上限値が20質量%、より好ましくは15質量%、そして更に好ましくは10質量%である。
【0045】
本発明は、ここに記載した前記のエンジン潤滑剤の4ストロークエンジンの潤滑化における使用、およびここに記載した前記のエンジン潤滑剤で前記のエンジンを潤滑化することを含む4ストロークエンジンの潤滑化方法を含んでいる。
【0046】
本発明は更に、SAE 0Wエンジン潤滑剤を含んでおり、このエンジン潤滑剤はここに記載したジエステルを少なくとも1種含んでいる。ここに記載された特徴および実施態様はまた、変更すべきところは変更して前記のSAE 0Wエンジン潤滑剤に適用される。
【実施例】
【0047】
本発明は更に以下の実施例を参照して説明される。
実施例および比較例
下記の表1中に識別されたように、例1〜5は、本発明による前記のエンジン潤滑剤中での使用に適切なジエステルである。
比較例6〜11もまた表1中に識別されている。
各例の特性を表2中に示した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明はエンジン潤滑剤、特に4ストロークエンジンにおいて用いられるエンジン潤滑剤を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15質量%以上の少なくとも1種のジエステルおよび20質量%以下の添加剤を含むエンジン潤滑剤であって、該少なくとも1種のジエステル、または1種超が存在するのであればその混合物が、100℃において3.3以下の動粘度、130以上の粘度指数、−30℃以下の流動点および15質量%以下のノアク蒸発損失を有する、エンジン潤滑剤。
【請求項2】
15質量%以上の少なくとも1種のジエステルおよび20質量%以下の添加剤を含むSAE 0Wのエンジン潤滑剤であって、該少なくとも1種のジエステル、または1種超が存在するのであればその混合物が、100℃において3.3以下の動粘度、130以上の粘度指数、−30℃以下の流動点および15質量%以下のノアク蒸発損失を有する、エンジン潤滑剤。
【請求項3】
前記の少なくとも1種のジエステルを90質量%以下含む請求項1または2記載のエンジン潤滑剤。
【請求項4】
前記の少なくとも1種のジエステルおよび前記の添加剤から本質的になる請求項1〜3のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項5】
前記の少なくとも1種のジエステルを25質量%以上、かつ40質量%以下含む請求項1〜3のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項6】
APIグループIII、IVおよびVおよびそれらの混合物から選ばれた潤滑剤成分を含む請求項1〜3および5のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項7】
前記の少なくとも1種のジエステル、前記の添加剤および少なくとも1種のAPIグループVの潤滑剤から本質的になる請求項6記載のエンジン潤滑剤。
【請求項8】
前記の少なくとも1種のジエステルが、100℃において3.0以下の動粘度および/または140以上の粘度指数および/または−35℃以下の流動点および/または14質量%以下のノアク蒸発損失を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項9】
前記の少なくとも1種のジエステルが、
a)少なくとも1種のC〜C12、好ましくはC〜C10の脂肪族ジカルボン酸もしくはそれらの無水物と少なくとも1種の第一級もしくは第二級、好ましくは第一級のC〜C12、好ましくはC〜C10の脂肪族一級アルコールとの反応生成物(前記の少なくとも1種の酸が分岐したものであれば、その場合は前記の少なくとも1種のアルコールは直鎖であり、もしも前記の少なくとも1種の酸が直鎖であれば、その場合は前記の少なくとも1種のアルコールは分岐したものである)、および
b)少なくとも1種のC〜C12、好ましくはC〜C10の脂肪族モノカルボン酸と少なくとも1種のポリアルキレングリコール(そのアルキル基はC〜Cアルキル基およびそれらの混合物から選ばれる)との反応生成物(前記の少なくとも1種のポリアルキレングリコールが分岐したメチル基である少なくとも1つの繰り返し単位を含んでいる場合には、少なくとも1種の前記の少なくとも1種の酸は直鎖であり、またもしも前記の少なくとも1種のポリアルキレングリコールが直鎖の繰り返し単位だけを含んでいる場合には、少なくとも1種の前記の少なくとも1種の酸は分岐している)、
からなる群から選ばれる、請求項1〜8のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項10】
前記のジエステルが、二塩基酸もしくはそれらの無水物および一級アルコールから誘導される場合には、このジエステルは17〜36個、より好ましくは20〜30個、そして更に好ましくは23〜26個の炭素原子を含んでおり、または一塩基酸およびポリアルキレングリコールから誘導される場合には、このジエステルは17〜40個、より好ましくは20〜30個の炭素原子を含んでいる、請求項9記載のエンジン潤滑剤。
【請求項11】
ジカルボン酸およびアルコールの反応生成物が、分岐した酸と直鎖のアルコールの反応生成物であるか、または直鎖の酸と分岐したアルコールとの反応生成物のいずれかであり、モノカルボン酸とポリアルキレングリコールとの反応生成物は、分岐した酸とポリエチレングリコールとの反応生成物であるか、あるいは直鎖の酸とポリプロピレングリコールもしくはポリブチレングリコール、好ましくはポリプロピレングリコール、または少なくとも1つのエチレングリコール繰り返し単位を含むそれらの共重合体との反応生成物のいずれかである、請求項9または10記載のエンジン潤滑剤。
【請求項12】
ポリアルキレングリコールは概ね150〜300の範囲、より好ましくは概ね180〜250の範囲の平均相対分子質量を有している、請求項11記載のエンジン潤滑剤。
【請求項13】
前記の分岐した酸がベータの位置で分岐し、および/またはgem分岐した基を含まない、請求項9〜12のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項14】
前記のジカルボン酸がアジピン酸、3−メチルアジピン酸およびセバシン酸を含む、請求項9〜13のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項15】
一級アルコールが1−オクタノール、1−デカノールおよびそれらの混合物、2−エチルヘキサノールならびにイソノニルアルコールを含む、請求項9〜14のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項16】
前記のポリアルキレングリコールがポリプロピレングリコール、好ましくは180〜250の範囲の平均相対分子質量を有するポリプロピレングリコールを含む、請求項9〜14のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項17】
前記のジエステルが、アジピン酸ジイソノニル、3−メチルアジピン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルおよびPPG225n−オクチル、n−デシルジエステルおよびそれらの混合物である、請求項1〜16のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項18】
15質量%以下、より好ましくは10質量%以下の前記添加剤を含む請求項1〜17のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤。
【請求項19】
4ストロークエンジンの潤滑における請求項1〜18のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤の使用。
【請求項20】
請求項1〜20のいずれか1項記載のエンジン潤滑剤で4ストロークエンジンを潤滑することを含むエンジンの潤滑化方法。

【公表番号】特表2010−520319(P2010−520319A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551257(P2009−551257)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000599
【国際公開番号】WO2008/104745
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(506352278)クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー (24)
【Fターム(参考)】