説明

エンジン用チェーンガイド

【課題】プレートベースの板厚を増加させることなくガイド長手方向に沿った所定曲率の摺接曲面によるチェーン軌道を保持するとともに、エンジン内の高温環境下で伝動チェーンから過度の押圧荷重を受けてもプレートベースの変形や折損を防止して優れた耐久性を発揮するチェーンガイドを提供すること。
【解決手段】伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接曲面を形成したシュー110と、このシュー110の裏面をガイド長手方向に沿って支持するプレートベース120とを備えたエンジン用チェーンガイド100において、プレートベース120のガイド長手方向に沿った補強用細溝部122が、シュー110の摺接曲面に沿ったプレートベース120のプレート曲面に面押し加工により設けられていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジン用タイミングシステムにおいて伝動チェーンを摺接走行させるためのチェーンガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車エンジン用タイミングシステムにおいて伝動チェーンからタイミングチェーンを摺接走行させるためのチェーンガイドとして、エンジン内の駆動側スプロケットと従動側スプロケットとの間を周回走行するタイミングチェーンに対してテンショナと協働しながら揺動自在に摺接して適正なチェーン張力に調整するテンショナレバーと称する可動ガイドや前述したタイミングチェーンに摺接させて所定のチェーン軌道に沿って走行案内する固定ガイドが知られている。
【0003】
そして、これらのチェーンガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接曲面を形成したシューとこのシューの裏面をガイド長手方向に沿って支持するプレートベースとを備え、さらに、これらのシューとプレートベースがチェーン軌道を適切に保つためにガイド長手方向に沿って所定の曲率を確保した状態で発生しがちな変形や折損を防止するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−292855号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のチェーンガイドは、シューとプレートベースがチェーン軌道を適切に保つためにガイド長手方向に沿って所定の曲率を保持しているが、伝動チェーンから過度の押圧荷重が常時負荷されるとともにエンジン内において200度を越える高温環境下に置かれるため、鋼板からなるプレートベースであっても長期使用すると変形や折損を生じる虞れがあり、また、このようなプレートベースの変形や折損を防止するためにプレートベースの高強度化を図ろうとするとベース素材の大幅なコストアップを招くという問題があり、プレートベースの板厚を増して強度アップを図ろうとすると、エンジン内における設置スペース上の制約を受けて実現できないという問題があった。
【0005】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、プレートベースの板厚を増加させることなくガイド長手方向に沿った所定曲率の摺接曲面によるチェーン軌道を保持するとともに、エンジン内の高温環境下で伝動チェーンから過度の押圧荷重を受けてもプレートベースの変形や折損を防止して優れた耐久性を発揮するエンジン用チェーンガイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接曲面を形成したシューと該シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持するプレートベースとを備えたエンジン用チェーンガイドにおいて、前記プレートベースのガイド長手方向に沿った補強用細溝部が前記シューの摺接曲面に沿ったプレートベースのプレート曲面に面押し加工により設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
【0007】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたエンジン用チェーンガイドの構成に加えて、前記補強用細溝部が前記シューに対するプレートベースのプレート表面に設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0008】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたエンジン用チェーンガイドの構成に加えて、前記補強用細溝部が前記シューに対するプレートベースのプレート裏面に設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0009】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載されたエンジン用チェーンガイドの構成に加えて、前記補強用細溝部が前記伝動チェーンのリンクプレートに対向するプレート曲面の対向位置に設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載されたエンジン用チェーンガイドの構成に加えて、前記補強用細溝部が前記プレートベースの内部に向けて矩形状に凹んだ断面形状を有していることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載されたエンジン用チェーンガイドの構成に加えて、前記補強用細溝部が前記プレートベースのガイド長手方向に沿って並列状態で複数配置されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエンジン用チェーンガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接曲面を形成したシューと、該シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持するプレートベースとを備えていることにより、伝動チェーンを摺接させてチェーン軌道に沿って案内走行させることができるとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0013】
すなわち、本請求項1に係る発明のエンジン用チェーンガイドは、プレートベースのガイド長手方向に沿った補強用細溝部がシューの摺接曲面に沿ったプレートベースのプレート曲面に面押し加工により設けられていることによって、プレートベースの残留歪みが取り除かれるとともに補強用細溝部が塑性変形により形成されてプレートベース形態が安定してプレート強度を大幅に向上させるため、プレートベースの板厚を増加させることなくガイド長手方向に沿った所定曲率の摺接曲面によるチェーン軌道を保持することができるとともに、エンジン内の高温環境下で伝動チェーンから過度の押圧荷重を受けてもプレートベースの変形や折損を防止して優れた耐久性を発揮することができる。
【0014】
そして、本請求項2に係る発明のエンジン用チェーンガイドは、請求項1に係るエンジン用チェーンガイドが奏する効果に加えて、補強用細溝部がシューに対するプレートベースのプレート表面に設けられていることにより、この補強用細溝部が、チェーンガイドに付着した潤滑油のガイド長手方向に沿った内部油通路として機能するため、この内部油通路がシュー裏面とプレートベースのプレート表面との間に蓄熱されがちな伝動チェーンとシューとの摩擦熱をガイド外へ放熱し易くするとともにプレート裏面よりも大きくなりがちなプレート表面の残留歪みを完全に取り除いて、エンジン内の高温環境下で使用してもプレートベースの変形や折損をさらに一段と防止することができる。
【0015】
また、本請求項3に係る発明のエンジン用チェーンガイドは、請求項1または請求項2に係るエンジン用チェーンガイドが奏する効果に加えて、補強用細溝部がシューに対するプレートベースのプレート裏面に設けられていることにより、走行する伝動チェーンから過度の押圧荷重を受けてプレート裏面のガイド長手方向に圧縮応力が作用してもプレートベースの変形を抑制するため、エンジン内の高温環境下で使用してもプレートベースの変形や折損をさらに一段と防止することができる。
【0016】
また、本請求項4に係る発明のエンジン用チェーンガイドは、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るエンジン用チェーンガイドが奏する効果に加えて、補強用細溝部が伝動チェーンのリンクプレートに対向するプレート曲面の対向位置に設けられていることにより、伝動チェーンのリンクプレートの摺接走行に起因する摩擦熱を確実に放熱するため、走行する伝動チェーンのリンクプレートから過度の押圧荷重を受けてプレート裏面のガイド長手方向に圧縮応力が作用してもプレートベースの変形をさらに抑制することができる。
【0017】
また、本請求項5に係る発明のエンジン用チェーンガイドは、請求項1乃至請求項4のいずれかに係るエンジン用チェーンガイドが奏する効果に加えて、補強用細溝部がプレートベースの内部に向けて矩形状に凹んだ断面形状を有していることにより、面押し加工の際に板厚の微妙な誤差による溝幅の狭小化を回避してチェーンガイドに付着した潤滑油のガイド長手方向に沿った油通路が確実に形成されるため、この油通路に沿って潤滑油が蓄熱されがちな伝動チェーンとシューとの摩擦熱をガイド外へ放熱し易くすることが可能であり、また、面押し加工時における面押し加工工具の加工面の早期磨損を回避することもできる。
【0018】
また、本請求項6に係る発明のエンジン用チェーンガイドは、請求項1乃至請求項5のいずれかに係るエンジン用チェーンガイドが奏する効果に加えて、補強用細溝部がプレートベースのガイド長手方向に沿って並列状態で複数配置されていることにより、プレートベース上で塑性変形を分散させているため、プレートベースの残留歪みが確実に取り除かれ、その結果、プレートベース形態がより安定してプレート強度を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のエンジン用チェーンガイドは、伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接曲面を形成したシューとこのシューの裏面をガイド長手方向に沿って支持するプレートベースとを備え、プレートベースのガイド長手方向に沿った補強用細溝部がシューの摺接曲面に沿ったプレートベースのプレート曲面に面押し加工により設けられて、プレートベースの板厚を増加させることなくガイド長手方向に沿った所定曲率の摺接曲面によるチェーン軌道を保持するとともに、エンジン内の高温環境下で伝動チェーンから過度の押圧荷重を受けてもプレートベースの変形や折損を防止して優れた耐久性を発揮するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0020】
すなわち、本発明のエンジン用チェーンガイドは、自動車エンジン用タイミングシステムにおいて伝動チェーンからタイミングチェーンを摺接走行させるために用いられるものであって、さらに具体的には、エンジン内の駆動側スプロケットと従動側スプロケットとの間を周回走行するタイミングチェーンに対してテンショナと協働しながら揺動自在に摺接して適正なチェーン張力に調整するテンショナレバーと称する可動ガイドであっても良く、タイミングチェーンに摺接させて所定のチェーン軌道に沿って走行案内する固定ガイドであっても良い。
【0021】
そして、本発明で用いるプレートベースの具体的な材料については、伝動チェーンの張力変動やエンジン内部の高温環境下などで耐久性を発揮するために、例えば、鉄鋼材、アルミニウム材などの金属材料を用いるのが好ましく、アルミニウム材を用いた場合には軽量化を図ることができるのでより好ましい。
【0022】
また、本発明で用いるプレートベースのプレート曲面に形成された所定曲率については、ガイド長手方向に沿って少なくとも1以上の曲率を備えたものであれば良く、例えば、ガイド長手方向のチェーン進入側とチェーン進出側に小さな円弧を形成する曲率を備えるとともにこれらのチェーン進入側とチェーン進出側との中間部位に大きな円弧を形成する曲率を備えた可動ガイドのようなものであっても良く、ガイド長手方向のチェーン進入側とチェーン進出側に小さな円弧を形成する曲率を備えるとともにこれらのチェーン進入側とチェーン進出側との中間部位に直線状摺接面を形成した固定ガイドのようなものであっても良い。
【0023】
さらに、本発明で採用するプレートベースの面押し加工は、プレス加工に属するものであって、その面押しメカニズムについては現時点においても明確に解明されていないが、面押し加工による圧縮応力をプレートベースの加工面に作用させてプレートベースの残留歪みを取り除くとともに塑性変形させることによって、プレートベース形態が安定してプレート強度の大幅な向上が見込まれるものである。
【0024】
そして、前述した面押し加工によって得られる補強用細溝部の具体的断面形状については、例えば、矩形状、半円弧状、逆三角状などに凹んだ断面形状であれば良いが、矩形状や半円弧状に凹んだ断面形状の場合は、面押し加工工具の加工面の早期磨損を回避できるという生産技術上の利点もある。また、補強用細溝部の形成本数については、1本、若しくは、複数本の何れであっても良い。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の一実施例であるエンジン用チェーンガイドについて図面を基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例であるエンジン用チェーンガイドの使用態様図であり、図2は、図1に示す本発明の第1実施例である固定ガイドの概要図であり、図3は、図2のX−X線で示す断面図とその一部拡大断面図であり、図4は、本発明の第2実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図であり、図5は、本発明の第3実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図であり、図6は、本発明の第4実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図であり、図7は、本発明の第5実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図である。
【0026】
まず、本発明の一実施例であるエンジン用チェーンガイド100は、図1に示すように、自動車エンジン用タイミングシステムにおいてエンジン内の駆動側スプロケットS1と従動側スプロケットS2、S2との間を周回走行する伝動チェーンCのタイミングチェーンに対してテンショナTと協働しながら揺動自在に摺接して適正なチェーン張力に調整するテンショナレバーと称する可動ガイド、若しくは、伝動チェーンCのタイミングチェーンに摺接させて所定のチェーン軌道に沿って走行案内する固定ガイドとして用いるものである。
なお、図1における矢印は、伝動チェーンCの走行方向を示している。
【0027】
そこで、本発明の第1実施例であるエンジン用チェーンガイド100が前述した固定ガイドである場合について以下に詳しく説明する。
図2に示すように、本発明の第1実施例であるエンジン用チェーンガイド100は、伝動チェーンCをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接曲面を形成した合成樹脂製のシュー110とこのシュー110の裏面をガイド長手方向に沿って支持する鋼板製のプレートベース120とを備えている。
なお、図2に示す符号121は、前述したプレートベース120のガイド長手方向のチェーン進入側とチェーン進出側にそれぞれ設けてエンジン内壁側に固定するための取付座である。
【0028】
そして、本第1実施例のエンジン用チェーンガイド100は、図3に示すように、前述したプレートベース120のガイド長手方向に沿った補強用細溝部122がシュー110の摺接曲面に沿ったプレートベース120のプレート表面に面押し加工により設けられており、塑性変形により形成された補強用細溝部122がプレートベース120の残留歪みを取り除いてプレートベース形態を安定化させるとともに、潤滑油のガイド長手方向に沿った内部油通路として機能するようになっている。
【0029】
また、前述した補強用細溝部122は、プレートベース120の内部に向けて矩形状に凹んだ断面形状を有しており、面押し加工の際に板厚の微妙な誤差による溝幅の狭小化を回避して潤滑油のガイド長手方向に沿った油通路を確実に形成するとともに面押し加工時における面押し加工工具の加工面の早期磨損を回避するようになっている。
【0030】
したがって、このようにして得られた本発明の第1実施例であるエンジン用チェーンガイド100は、補強用細溝部122がプレート裏面よりも大きくなりがちなプレート表面の残留歪みを完全に取り除いてプレート強度を大幅に向上させるため、プレートベース120の板厚を増加させることなくガイド長手方向に沿った所定曲率の摺接曲面によるチェーン軌道を保持することが可能となり、また、内部油通路となる補強用細溝部122がシュー裏面とプレートベース120のプレート表面との間に蓄熱されがちな伝動チェーンCとシュー110との摩擦熱をガイド外へ放熱し易くするため、エンジン内の高温環境下で伝動チェーンCから過度の押圧荷重を受けてもプレートベース120の変形や折損を防止して優れた耐久性を発揮することができるなど、その効果は甚大である。
【0031】
つぎに、図4に示す本発明の第2実施例であるエンジン用チェーンガイド200は、上述した第1実施例のエンジン用チェーンガイド100と比較すると基本的な同様なガイド構造を備えているため、第1実施例のエンジン用チェーンガイド100で示す100番台の符号を200番台の符号に読み替えることによってそれらの説明を省略する。
【0032】
すなわち、図4に示す第2実施例のエンジン用チェーンガイド200は、矩形状に凹んだ断面形状を有する補強用細溝部222がシュー210の摺接曲面に沿ったプレートベース220のプレート裏面に面押し加工により設けられており、走行する伝動チェーンCから過度の押圧荷重を受けてプレート裏面のガイド長手方向に圧縮応力が作用してもプレートベース220の変形を抑制するようになっている。
【0033】
したがって、このようにして得られた本発明の第2実施例であるエンジン用チェーンガイド200は、塑性変形により形成された補強用細溝部222がプレートベース220の残留歪みを取り除いてプレートベース形態を安定化させるとともにエンジン内の高温環境下で使用してもプレートベース220の変形や折損をさらに一段と防止することができるなど、その効果は甚大である。
【0034】
また、図5に示す本発明の第3実施例であるエンジン用チェーンガイド300は、上述した第2実施例のエンジン用チェーンガイド200と比較すると基本的な同様なガイド構造を備えているため、第1実施例のエンジン用チェーンガイド200で示す200番台の符号を300番台の符号に読み替えることによってそれらの説明を省略する。
【0035】
すなわち、図5に示す第3実施例のエンジン用チェーンガイド300は、補強用細溝部322がプレートベース320の内部に向けて半円弧状に凹んだ断面形状を有しており、プレート裏面よりも大きくなりがちなプレート表面の残留歪みを取り除いてプレート強度を大幅に向上させるようになっている。
【0036】
したがって、このようにして得られた本発明の第3実施例であるエンジン用チェーンガイド300は、本発明の第2実施例であるエンジン用チェーンガイド200と同様に、塑性変形により形成された半円弧状に凹んだ断面形状を有する補強用細溝部322がプレートベース320の残留歪みを取り除いてプレートベース形態を安定化させるとともにエンジン内の高温環境下で使用してもプレートベース320の変形や折損をさらに一段と防止することができるなど、その効果は甚大である。
【0037】
さらに、図6に示す本発明の第4実施例であるエンジン用チェーンガイド400は、上述した第1実施例のエンジン用チェーンガイド100と比較すると基本的な同様なガイド構造を備えているため、第1実施例のエンジン用チェーンガイド100で示す100番台の符号を400番台の符号に読み替えることによってそれらの説明を省略する。
【0038】
すなわち、図6に示す第4実施例のエンジン用チェーンガイド400は、プレート表面に形成された補強用細溝部422が伝動チェーンCのリンクプレートLに対向するプレート表面の対向位置に設けられており、伝動チェーンCのリンクプレートLの摺接走行に起因する摩擦熱を確実に放熱するようになっている。
【0039】
したがって、このようにして得られた本発明の第4実施例であるエンジン用チェーンガイド400は、プレート表面に塑性変形により形成された補強用細溝部422がプレートベース420の残留歪みを取り除いてプレートベース形態を安定化させるとともに、走行する伝動チェーンCのリンクプレートLから過度の押圧荷重を受けてプレート裏面のガイド長手方向に圧縮応力が作用してもプレートベース420の変形をさらに抑制することができるなど、その効果は甚大である。
【0040】
さらに、図7に示す本発明の第5実施例であるエンジン用チェーンガイド500は、上述した第4実施例のエンジン用チェーンガイド400と比較すると基本的な同様なガイド構造を備えているため、第4実施例のエンジン用チェーンガイド400で示す400番台の符号を500番台の符号に読み替えることによってそれらの説明を省略する。
【0041】
すなわち、図7に示す第5実施例のエンジン用チェーンガイド500は、補強用細溝部522が伝動チェーンCのリンクプレートLに対向するプレート裏面の対向位置に面押し加工により設けられており、伝動チェーンCのリンクプレートLの摺接走行に起因する摩擦熱を確実に放熱するとともに、走行する伝動チェーンCから過度の押圧荷重を受けてプレート裏面のガイド長手方向に圧縮応力が作用してもプレートベース520の変形を抑制するようになっている。
【0042】
したがって、このようにして得られた本発明の第5実施例であるエンジン用チェーンガイド500は、プレート裏面に塑性変形により形成された補強用細溝部522がプレートベース520の残留歪みを取り除いてプレートベース形態を安定化させるとともに、エンジン内の高温環境下で走行する伝動チェーンCのリンクプレートLから過度の押圧荷重を受けてプレート裏面のガイド長手方向に圧縮応力が作用してもプレートベース520の変形や折損をさらに一段と防止することができるなど、その効果は甚大である。
【0043】
また、図8に示す本発明の第6実施例であるエンジン用チェーンガイド600は、上述した第1実施例のエンジン用チェーンガイド100と比較すると基本的な同様なガイド構造を備えているため、第1実施例のエンジン用チェーンガイド100で示す100番台の符号を600番台の符号に読み替えることによってそれらの説明を省略する。
【0044】
すなわち、図8に示す第6実施例のエンジン用チェーンガイド600は、矩形状に凹んだ断面形状を有する補強用細溝部622がシュー610の摺接曲面に沿ったプレートベース620のプレート表面およびプレート裏面に面押し加工により設けられており、走行する伝動チェーンCから過度の押圧荷重を受けてプレート表面およびプレート裏面の少なくとも一方にガイド長手方向の圧縮応力が作用してもプレートベース220の変形を抑制するようになっている。
しかも、補強用細溝部622がプレートベース620のガイド長手方向に沿って並列状態で複数配置されていることにより、鋼板製のプレートベース620上で塑性変形を分散させているため、プレートベース620の残留歪みが確実に取り除かれるようになっている。
【0045】
したがって、このようにして得られた本発明の第6実施例であるエンジン用チェーンガイド600は、プレート表面およびプレート裏面に塑性変形により形成された補強用細溝部622がプレートベース620の残留歪みを取り除いてプレートベース形態を安定化させるとともにエンジン内の高温環境下で使用してもプレートベース620の変形や折損をさらに一段と防止することができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例であるエンジン用チェーンガイドの使用態様図。
【図2】図1に示す本発明の第1実施例である固定ガイドの概要図。
【図3】図2のX−X線で示す断面図とその一部拡大断面図。
【図4】本発明の第2実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図。
【図5】本発明の第3実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図。
【図6】本発明の第4実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図。
【図7】本発明の第5実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図。
【図8】本発明の第6実施例である固定ガイドの断面図とその一部拡大断面図。
【符号の説明】
【0047】
100,200,300,400,500,600・・・エンジン用チェーンガイド
110,210,310,410,510,610・・・シュー
120,220,320,420,520,620・・・プレートベース
121・・・取付座
122,222,322,422,522,622・・・補強用細溝部
C ・・・伝動チェーン
L ・・・リンクプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動チェーンをガイド長手方向に沿って摺接走行させる摺接曲面を形成したシューと、該シューの裏面をガイド長手方向に沿って支持するプレートベースとを備えたエンジン用チェーンガイドにおいて、
前記プレートベースのガイド長手方向に沿った補強用細溝部が、前記シューの摺接曲面に沿ったプレートベースのプレート曲面に面押し加工により設けられていることを特徴とするエンジン用チェーンガイド。
【請求項2】
前記補強用細溝部が、前記シューに対するプレートベースのプレート表面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン用チェーンガイド。
【請求項3】
前記補強用細溝部が、前記シューに対するプレートベースのプレート裏面に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のエンジン用チェーンガイド。
【請求項4】
前記補強用細溝部が、前記伝動チェーンのリンクプレートに対向するプレート曲面の対向位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のエンジン用チェーンガイド。
【請求項5】
前記補強用細溝部が、前記プレートベースの内部に向けて矩形状に凹んだ断面形状を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のエンジン用チェーンガイド。
【請求項6】
前記補強用細溝部が、前記プレートベースのガイド長手方向に沿って並列状態で複数配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のエンジン用チェーンガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−52621(P2009−52621A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218587(P2007−218587)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【出願人】(507286378)東京千曲産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】