説明

エンジン

【課題】クランク軸線aと平行な一側部に吸気マニホールド73を、他側部に排気マニホールド71を備えていると共に、前記排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールド73に還流させるEGR装置91を備えているエンジン70において、新気とEGRガスとの混合状態のバラツキを少なくすると共に、できるだけエンジン70の全高をコンパクトなものにする。
【解決手段】本願発明に係るエンジン70は、前記吸気マニホールド73と新気導入用の吸気スロットル部材96とを連通させる中継管路92を備える。前記排気マニホールド71から延びる還流管路95の出口側を前記中継管路92に連通接続する。前記中継管路92は、前記吸気マニホールド73の横外側部に、前記吸気マニホールド73に沿って延びるように取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、排気マニホールドから排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールドに還流させるEGR装置(排気ガス再循環装置)を備えたエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジン等の排気ガス対策として、排気ガスの一部を吸気側に還流させるEGR装置(排気ガス再循環装置)を設けることにより、燃焼温度を低く抑えて排気ガス中のNOx量(窒素酸化物量)を低減させるという技術が知られている。
【0003】
この種のEGR装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1のEGR装置においては、ディーゼルエンジンの排気マニホールドから分岐した還流管路が吸気マニホールドに接続されている。排気ガスの一部(EGRガス)を還流管路経由で吸気マニホールドに供給することによって、EGRガスと吸気側からの新気とが混合され、当該混合ガスがディーゼルエンジンの各気筒内(吸気行程の気筒内)に導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−261072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成では、吸気マニホールドに還流管路が直接接続されているため、各気筒間のガス混合状態(EGRガスと新気との混合状態)が不均等になるおそれがあった。すなわち、吸気マニホールドに還流管路を直接接続した場合は、EGRガスと新気とが吸気マニホールド内で混合されるため、吸気マニホールドの形状によっては、EGRガスの流れが偏って新気とのガス混合状態にムラが生ずることになる。このままムラのある混合ガスが各気筒に分配されると、その中でもEGRガス量の多い気筒が新気不足に陥り、特にEGRガス量が所定量を超えていれば、ディーゼルエンジンの燃焼状態が急激に悪化して黒煙(スモーク)の発生を招来するのであった。
【0006】
そこで、本願発明は上記のような現状を改善することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、クランク軸線と平行な一側部に吸気マニホールドを、他側部に排気マニホールドを備えていると共に、前記排気マニホールドから排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールドに還流させるEGR装置を備えているエンジンであって、前記吸気マニホールドと新気導入用の吸気スロットル部材とを連通させる中継管路を備えており、前記排気マニホールドから延びる還流管路の出口側が前記中継管路に連通接続されており、前記中継管路は、前記吸気マニホールドの横外側部に、前記吸気マニホールドに沿って延びるように取り付けられているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載したエンジンにおいて、前記クランク軸線と交差する一側部に冷却ファンを備えており、前記吸気マニホールドと前記中継管路との連通部分が前記冷却ファン寄りに形成されているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載したエンジンにおいて、前記中継管路における前記連通部分寄りの部位には、平面視で前記吸気マニホールドに近付くに連れて前記クランク軸線と交差する方向の長さが短くなる傾斜部が形成されており、前記中継管路のうち前記傾斜部の上流側に前記還流管路の出口側が連通接続されているというものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によると、クランク軸線と平行な一側部に吸気マニホールドを、他側部に排気マニホールドを備えていると共に、前記排気マニホールドから排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールドに還流させるEGR装置を備えているエンジンであって、前記吸気マニホールドと新気導入用の吸気スロットル部材とを連通させる中継管路を備えており、前記排気マニホールドから延びる還流管路の出口側が前記中継管路に連通接続されており、前記中継管路は、前記吸気マニホールドの横外側部に、前記吸気マニホールドに沿って延びるように取り付けられているから、新気とEGRガスとを前記吸気マニホールドに送り込む前に混合して、ガス混合状態のバラツキ(ムラ)を少なくできる。その上、前記中継管路を前記吸気マニホールドの横外側方に位置させて、前記エンジンの全高を低く抑制でき、前記エンジンのコンパクト化に寄与するという効果を奏する。
【0011】
また、前述の通り、前記中継管路は、前記吸気マニホールドの横外側部に、前記吸気マニホールドに沿って延びるように取り付けられているから、前記中継管路の長さを前記吸気マニホールドの長手方向に沿って長くできることになる。このため、新気とEGRガスとの混合空間が広がり、新気とEGRガスとの混合促進に寄与する(混合ガス中においてEGRガスをより効率よく拡散させることが可能になる)という効果も奏する。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載したエンジンにおいて、前記クランク軸線と交差する一側部に冷却ファンを備えており、前記吸気マニホールドと前記中継管路との連通部分が前記冷却ファン寄りに形成されているから、前記吸気マニホールド内部の混合ガスの流れ方向が一方方向になる。このため、前記エンジンの各気筒にムラの少ない混合ガスを分配でき、前記各気筒間のEGRガス量がばらつくのを格段に低減できる。また、前記吸気マニホールドと前記中継管路との連通部分に前記冷却ファンからの冷却風が当たるので、ムラの少なくなった混合ガスの冷却に効果が高い。その結果、黒煙の発生が抑制され、前記エンジンの燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を確実に低減できる。すなわち、特定の気筒で失火を招来することなく、EGRガスの還流による排気ガスの清浄化(クリーン化)を達成できるという効果を奏する。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載したエンジンにおいて、前記中継管路における前記連通部分寄りの部位には、平面視で前記吸気マニホールドに近付くに連れて前記クランク軸線と交差する方向の長さが短くなる傾斜部が形成されており、前記中継管路のうち前記傾斜部の上流側に前記還流管路の出口側が連通接続されているから、前記中継管路に流入した新気のうち一方の内側面(左内側面)に沿って流れるものは、前記傾斜部の内面側に衝突して、前記中継管路における前記還流管路の出口側付近で中心の方向に偏流する。このため、前記中継管路における前記還流管路の出口側付近では、新気の流れが渦を形成するかのように乱れる。このように乱れた新気の流れに対して、前記還流管路からのEGRガスが前記中継管路内に流入するから、EGRガスは、前記中継管路内への流入と同時に、内部を流れる新気にスムーズに混合される。従って、前記中継管路内において、新気とEGRガスとを前記吸気マニホールドに送り込む前に撹拌しながら効率よく混合でき(混合ガス中においてEGRガスをスムーズに分散でき)、前記中継管路内でのガス混合状態のバラツキ(ムラ)をより確実に抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ディーゼルエンジンの平面図である。
【図2】ディーゼルエンジンの吸気マニホールド設置側の側面図である。
【図3】ディーゼルエンジンの排気マニホールド設置側の側面図である。
【図4】ディーゼルエンジンの冷却ファン設置側の側面図である。
【図5】ディーゼルエンジンのフライホイールハウジング設置側の側面図である。
【図6】DPFの断面説明図である。
【図7】ディーゼルエンジンの燃料系統説明図である。
【図8】コモンレールシステムの要部拡大側面図である。
【図9】吸気マニホールド周辺の拡大側面図である。
【図10】吸気マニホールド周辺の拡大平面図である。
【図11】吸気マニホールドとコレクタとの関係を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(1).ディーゼルエンジンの全体構造
まず、主として図1〜図5を参照しながら、コモンレール式のディーゼルエンジン70の全体構造について説明する。なお、以下の説明では、クランク軸線aと平行な両側部(クランク軸線aを挟んで両側の側部)を左右、フライホイールハウジング78設置側を前側、冷却ファン76設置側を後側と称して、これらを便宜的に、ディーゼルエンジン70における四方及び上下の位置関係の基準としている。
【0017】
図1〜図3に示すように、ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと平行な一側部に吸気マニホールド73を、他側部に排気マニホールド71を備えている。実施形態では、シリンダヘッド72の左側面に吸気マニホールド73が配置されており、シリンダヘッド72の右側面に排気マニホールド71が配置されている。シリンダヘッド72は、クランク軸74とピストン(図示省略)が内蔵されたエンジンブロック75上に搭載されている。エンジンブロック75の前後両側面から、クランク軸74の前後先端側を突出させている。ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと交差する一側部には、冷却ファン76が設けられている。実施形態では、エンジンブロック75の後側面側に冷却ファン76が位置している。クランク軸74の後端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力を伝達するように構成されている。
【0018】
図1〜図3に示す如く、ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと交差する他側部(実施形態ではエンジンブロック75の前側面側)に、フライホイールハウジング78が固着されている。フライホイールハウジング78内にフライホイール79が配置されている。フライホイール79はクランク軸74の前端側に軸支されていて、クランク軸74と一体的に回転するように構成されている。作業機械(例えば油圧ショベルやフォークリフト等)の作動部に、フライホイール79を介してディーゼルエンジン70の動力を取り出すように構成されている。
【0019】
また、エンジンブロック75の下面にはオイルパン81が配置されている。エンジンブロック75の左右側面とフライホイールハウジング78の左右側面とには、機関脚取付部82がそれぞれ設けられている。各機関脚取付部82には、防振ゴムを有する機関脚体83がボルト締結されている。ディーゼルエンジン70は、各機関脚体83を介して、作業機械(例えば油圧ショベルやフォークリフト等)等のエンジン支持シャーシ84に防振支持される。
【0020】
吸気マニホールド73の入口側は、後述するEGR装置91(排気ガス再循環装置)のコレクタ92を介してエアクリーナ(図示省略)に連結されている。エアクリーナに吸い込まれた新気(外部空気)は、当該エアクリーナにて除塵・浄化されたのち、コレクタ92を介して吸気マニホールド73に送られ、そして、ディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。
【0021】
EGR装置91は、ディーゼルエンジン70の再循環排気ガス(排気マニホールド71からのEGRガス)と新気(エアクリーナからの外部空気)とを混合させて吸気マニホールド73に供給する中継管路としてのコレクタ(EGR本体ケース)92と、エアクリーナにコレクタ92を連通させる吸気スロットル部材93と、排気マニホールド71にEGRクーラ94を介して接続する還流管路としての再循環排気ガス管95と、再循環排気ガス管95にコレクタ92を連通させるEGRバルブ部材96とを有している。
【0022】
すなわち、吸気マニホールド73と新気導入用の吸気スロットル部材93とがコレクタ92を介して連通接続されている。コレクタ92には、再循環排気ガス管95の出口側につながるEGRバルブ部材96が連通接続されている。コレクタ92は、前後長手の略筒状に形成されていて、当該コレクタ92の給気取入れ側(長手方向の前部側)に吸気スロットル部材93がボルト締結されている。コレクタ92の給気排出側は吸気マニホールド73の入口側にボルト締結されている。なお、EGRバルブ部材96は、その内部にあるEGRバルブ(図示省略)の開度を調節することにより、コレクタ92へのEGRガスの供給量を調節するものである。
【0023】
コレクタ92内には新気が供給されると共に、排気マニホールド71からEGRバルブ部材96を介してコレクタ92内にEGRガス(排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部)が供給される。新気と排気マニホールド71からのEGRガスとがコレクタ92内で混合されたのち、コレクタ92内の混合ガスが吸気マニホールド73に供給される。すなわち、ディーゼルエンジン70から排気マニホールド71に排出された排気ガスの一部が、吸気マニホールド73からディーゼルエンジン70に還流されることによって、高負荷運転時の最高燃焼温度が下がり、ディーゼルエンジン70からのNOx(窒素酸化物)の排出量が低減されることになる。
【0024】
以上の構成から明らかなように、吸気マニホールド73と新気導入用の吸気スロットル部材93とを連通させる中継管路としてのコレクタ92を備えており、排気マニホールド71から延びる還流管路の出口側がEGRバルブ部材96を介してコレクタ92に連通接続されているから、新気とEGRガスとが吸気マニホールド73に送り込まれる前に混合されることになる。このため、混合ガス中においてEGRガスを広く分散でき、吸気マニホールド73に送り込まれる前段階でガス混合状態のバラツキ(ムラ)が少なくなる。その結果、ディーゼルエンジン70の各気筒にムラの少ない混合ガスを分配でき、各気筒間のEGRガス量のバラツキを抑制できる。その結果、黒煙の発生を抑制して、ディーゼルエンジン70の燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を低減できる。
【0025】
図1及び図3に示すように、シリンダヘッド72の右側方で排気マニホールド71の上方には、ターボ過給機100が配置されている。ターボ過給機100は、タービンホイール(図示省略)を内蔵したタービンケース101と、ブロアホイール(図示省略)を内蔵したコンプレッサケース102とを有している。タービンケース101の排気ガス取入れ管105に、排気マニホールド71の出口側が接続されている。タービンケース101の排気ガス排出管103には、排気ガス浄化装置としてのディーゼルパティキュレートフィルタ1(以下、DPFという)を介してテールパイプ(図示省略)が接続される。ディーゼルエンジン70の各気筒から排気マニホールド71に排出された排気ガスは、ターボ過給機100及びDPF1等を経由して、テールパイプから外部に放出される。
【0026】
一方、コンプレッサケース102の給気取入れ側に、給気管104を介してエアクリーナの給気排出側が接続される。コンプレッサケース102の給気排出側に、過給管108を介して吸気スロットル部材93の給気取入れ側が接続される。エアクリーナにて除塵された新気(外部空気)は、コンプレッサケース102から吸気スロットル部材93及びコレクタ92を経由して、吸気マニホールド73に送られ、そして、ディーゼルエンジン70の各気筒に供給される。
【0027】
排気ガス浄化装置としてのDPF1は、排気ガス中の粒子状物質(PM)等を捕集するためのものであり、図1〜図4に示すように、平面視でクランク軸74と交差する左右方向に長く延びた略円筒形状で、シリンダヘッド72の前側面に相対向するようにフライホイールハウジング78上に配置されている。DPF1の左右両側(長手方向一端側と長手方向他端側)には、排気ガス取入れ側と排気ガス排出側とが左右振り分けて設けられている。DPF1の排気ガス取入れ側は、タービンケース101の排気ガス排出管103に接続されている。DPF1の排気ガス排出側は、テールパイプ107の排気ガス取入れ側に接続されている。
【0028】
DPF1は、耐熱金属材料製のDPFケーシング60に内蔵された略筒型の内側ケース4,20に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒2とハニカム構造のスートフィルタ3とを直列に並べて収容した構造になっている(図6参照)。図1〜図4に示すように、実施形態のDPF1は、支持体としての左右一対のブラケット脚61,62を介してフライホイールハウジング78に取り付けられている。この場合、左ブラケット脚61の一端側は、DPFケーシング60の外周側に設けられたフランジにボルト締結されている。右ブラケット脚62の一端側は、DPFケーシング60の外周側に溶接固定されている。左右両ブラケット脚61,62の他端側は、フライホイールハウジング78の上面に形成されたDPF取付部80にボルト締結されている。つまり、上記したDPF1は、左右両ブラケット脚61,62とタービンケース101の排気ガス排出管103とにより、高剛性部材であるフライホイールハウジング78の上部に安定的に連結支持されている。
【0029】
図1〜図4に示すように、DPFケーシング60には、内部の詰り状態を検出する差圧センサ63の入口側感知体64と出口側感知体65とが設けられている。差圧センサ63は、DPF1内におけるスートフィルタ3を挟んだ上流側及び下流側間の圧力差を検出するためのものである。当該圧力差に基づいてスートフィルタ3の粒子状物質堆積量を換算され、DPF1内の詰り状態を把握できる。差圧センサ63にて検出された圧力差に基づいて例えば吸気スロットル部材93を作動させることによって、スートフィルタ3の再生制御を実行するように構成されている。実施形態では、シリンダヘッド72の前側面に固定されたセンサブラケット66に検出本体67が取り付けられている。DPFケーシング60側の両感知体64,65は、それぞれハーネス68,69を介して差圧センサ63の検出本体67に接続されている。
【0030】
上記の構成において、ディーゼルエンジン70の排気ガスは、タービンケース101の排気ガス排出管103から、DPFケーシング60のうちディーゼル酸化触媒2より上流側の空間に流入し、ディーゼル酸化触媒2からスートフィルタ3の順に通過して浄化処理される。排気ガス中の粒子状物質は、この段階でスートフィルタ3における各セル間の多孔質な仕切り壁を通り抜けできずに捕集される。その後、ディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3を通過した排気ガスがテールパイプ107に放出される。
【0031】
排気ガスがディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3を通過するに際して、排気ガス温度が再生可能温度(例えば約300℃)を超えていれば、ディーゼル酸化触媒2の作用にて、排気ガス中のNO(一酸化窒素)が不安定なNO(二酸化窒素)に酸化する。そして、NOがNOに戻る際に放出するO(酸素)にて、スートフィルタ3に堆積した粒子状物質が酸化除去されることにより、スートフィルタ3の粒子状物質捕集能力が回復する(スートフィルタ3が再生する)ことになる。
【0032】
(2).コモンレールシステム及びディーゼルエンジンの燃料系統構造
次に、図2、図7及び図8を参照しながら、コモンレールシステム117とディーゼルエンジン70の燃料系統構造を説明する。なお、図8では説明の便宜上、吸気マニホールド73に取り付けられるコレクタ92、EGRバルブ部材96等のEGR装置91の図示を省略している。図2、図7及び図8に示すように、ディーゼルエンジン70に設けられた4気筒分の各インジェクタ115に、燃料ポンプ116とコモンレールシステム117とを介して、燃料タンク118が接続されている。各インジェクタ115は、電磁開閉制御型の燃料噴射バルブ119を有している。コモンレールシステム117は、円筒状のコモンレール120(蓄圧室)を有している。
【0033】
図2、図7及び図8に示すように、燃料ポンプ116の吸入側には、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料タンク118が接続される。燃料タンク118内の燃料が、燃料フィルタ121及び低圧管122を介して燃料ポンプ116に吸い込まれる。一方、燃料ポンプ116の吐出側には、高圧管123を介してコモンレール120が接続される。円筒状のコモンレール120の長手中途部に高圧管コネクタ124が設けられている。当該高圧管コネクタ124に、高圧管123の端部が高圧管コネクタナット125の螺着にて連結されている。また、コモンレール120には、4本の燃料噴射管126を介して4気筒分の各インジェクタ115がそれぞれ接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向に4気筒分の燃料噴射管コネクタ127が設けられている。当該燃料噴射管コネクタ127に、燃料噴射管126の端部が燃料噴射管コネクタナット128の螺着にて連結されている。
【0034】
上記の構成により、燃料タンク118の燃料が燃料ポンプ116によってコモンレール120に圧送され、高圧の燃料がコモンレール120に蓄えられる。各燃料噴射バルブ119がそれぞれ開閉制御されることによって、コモンレール120内の高圧の燃料が各インジェクタ115からディーゼルエンジン70の各気筒に噴射される。すなわち、各燃料噴射バルブ119を電子制御することによって、各インジェクタ115から供給される燃料の噴射圧力、噴射時期、噴射期間(噴射量)が高精度にコントロールされる。このため、ディーゼルエンジン70から排出される窒素酸化物(NOx)を低減できると共に、ディーゼルエンジン70の騒音振動を低減できる。
【0035】
なお、図7に示すように、燃料タンク118には、ポンプ燃料戻り管129を介して燃料ポンプ116が接続されている。円筒状のコモンレール120の長手方向の端部に、コモンレール120内の燃料の圧力を制限する圧力調整バルブ付きの戻り管コネクタ130を介して、コモンレール燃料戻り管131が接続されている。燃料ポンプ116の余剰燃料とコモンレール120の余剰燃料とは、ポンプ燃料戻り管129及びコモンレール燃料戻り管131を介して、燃料タンク118に回収されることになる。
【0036】
(3).ディーゼルエンジンの吸気系の詳細構造
次に、主として図8〜図11を参照しながら、ディーゼルエンジン70の吸気系の詳細構造を説明する。ディーゼルエンジン70におけるクランク軸線aと平行な一側部(実施形態ではシリンダヘッド72の左側面)には、ディーゼルエンジン70の各気筒に向かう吸気ポート(図示省略)を開口させていると共に、これら各吸気ポートに新気及びEGRガスの混合ガスを分配するための吸気マニホールド73が取り付けられている(図8〜図10参照)。
【0037】
吸気マニホールド73は横方向内向きに開口した前後長手の箱型に形成されている。実施形態では、横方向内向きのヘッド側開口部141の周囲に一体形成されたヘッド側フランジ142を複数本のボルト143にてシリンダヘッド72の左側面に締結することにより、吸気マニホールド73は、前記吸気ポート群に被さって連通した状態でシリンダヘッド72の左側面にフランジ接合されている。なお、図示は省略するが、ヘッド側フランジ142とシリンダヘッド72の左側面との間には、ヘッド側開口部141の周囲を囲う軟質材製のシール部材が介挿されている。吸気マニホールド73の横外側面(左側面)のうち冷却ファン76寄りの後部側には、入口側である給気取入れ側開口部144が形成されている。給気取入れ側開口部144の周囲には吸気側フランジ145が一体形成されている。
【0038】
図8及び図9に示すように、吸気マニホールド73の下面側には前後一対の締結台部133が一体形成されている。また、コモンレール120には、吸気マニホールド73の締結台部133に対応する上向き突出状の締結ボス部134が一体形成されている。横方向外側(左方)からのレール取付ボルト135にて締結台部133に締結ボス134を締結することにより、コモンレール120は、吸気マニホールド73に沿って延びる姿勢で当該吸気マニホールド73に着脱可能に吊り下げ固定されている。実施形態では、吸気マニホールド73の左斜め下方の角隅部にコモンレール120を近接させている。また、コモンレール120は、これに設けられた高圧管コネクタ124及び燃料噴射管コネクタ127が横方向外向き(左外向き)になるように長手軸線回りに傾倒している(寝かされている)。
【0039】
一方、EGR装置91を構成する中継管路としてのコレクタ92は、吸気マニホールド73の横方向外側(実施形態では左側)に位置している。前述の通り、コレクタ92は前後長手の略筒状に形成されていて、吸気マニホールド73の横外側面(左側面)に、吸気マニホールド73の長手方向(前後方向)に沿って延びるように取り付けられている。従って、吸気マニホールド73とコレクタ92とは横並び状の配置関係に設定されている。
【0040】
コレクタ92の横内側面(右側面)のうち冷却ファン76寄りの後部側には、給気排出側開口部146が形成されている。給気排出側開口部146の周囲にはコレクタ側フランジ147が一体形成されている。吸気マニホールド73の吸気側フランジ145にコレクタ側フランジ147を重ね合わせて複数本のボルト148にて締結することにより、吸気マニホールド73とコレクタ92とは、給気取入れ側開口部144と給気排出側開口部146とを連通させた状態でフランジ接合されている。そして、前述の通り、吸気スロットル部材93は、コレクタ92の給気取入れ側である長手方向の前部側にボルト締結されている。
【0041】
従って、図11に示すように、吸気マニホールド73及びコレクタ92の内部は、吸気スロットル部材93から両開口部144,146の連通部分を経て各吸気ポートに至るまでの間をUターン状に折り返した吸気通路になっている。また、吸気マニホールド73とコレクタ92との連通部分(両開口部144,146の連通部分でもある)は、冷却ファン76寄りの後部側に位置している。なお、図示は省略するが、吸気側フランジ145とコレクタ側フランジ147との間には、給気取入れ側開口部144及び給気排出側開口部146の周囲を囲う軟質材製のシール部材が介挿されている。
【0042】
図10及び図11に示すように、コレクタ92における連通部分寄りの部位には、平面視で吸気マニホールド73に近付くに連れてクランク軸線aと交差する方向(実施形態では左右方向)の長さが短くなる傾斜部150が形成されている。換言すると、コレクタ92における連通部分寄りの部位は、平面視で角を斜めに切り落としたような形状の傾斜部150になっている。図11に示すように、傾斜部150の傾斜内面151は、コレクタ92の給気取入れ側の通路に被さる状態になっていて、吸気スロットル部材93から流入する新気のうち一方の内側面(左内側面)に沿って流れるものを、傾斜内面151にて中心(真ん中寄り)の方向に偏流させるように構成されている。コレクタ92の上面のうち傾斜部150の上流側には、上向きに開口する還流開口部152が形成されている。還流開口部152の周囲にはバルブ用フランジ153が一体形成されている。バルブ用フランジ153上にEGRバルブ部材96のEGRガス排出側がボルト締結されている。
【0043】
上記の構成において、吸気スロットル部材93からコレクタ92内に流入した新気は冷却ファン76(後方側)に向けて流れる。前記新気のうち一方の内側面(左内側面)に沿って流れるものは、傾斜部150の傾斜内面151に衝突して、還流開口部152の下方付近で中心の方向に偏流する。このため、還流開口部152の下方付近では、新気の流れが図11に示す反時計回りの渦を形成するかのように乱れることになる。このように乱れた新気の流れに対して、再循環排気ガス管95からのEGRガスは、EGRバルブ部材96を介して上方から流入するから、EGRガスは、コレクタ92内への流入と同時に、内部を流れる新気にスムーズに混合される。従って、コレクタ92内において、新気とEGRガスとを吸気マニホールド73に送り込む前に撹拌しながら効率よく混合でき(混合ガス中においてEGRガスをスムーズに分散でき)、コレクタ92内でのガス混合状態のバラツキ(ムラ)をより確実に抑制できる。
【0044】
還流開口部152の下方付近で混合された混合ガスは、傾斜部150の傾斜内面151に沿って給気排出側開口部146(連通部分)に案内され、給気取入れ側開口部144からフライホイールハウジング78側(前方側)に方向転換して、吸気マニホールド73内を流れ、ディーゼルエンジン70の各気筒に分配される。このように吸気マニホールド73内部の混合ガスの流れ方向は、給気取入れ側開口部144からフライホイールハウジング78側に向かう一方方向になるから、ディーゼルエンジン70の各気筒にムラの少ない混合ガスを分配して、各気筒間のEGRガス量がばらつくのを格段に低減できる。その結果、黒煙の発生が抑制され、ディーゼルエンジン70の燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を低減できる。すなわち、特定の気筒で失火を招来することなく、EGRガスの還流による排気ガスの清浄化(クリーン化)を達成できるのである。
【0045】
(4).まとめ
上記の記載並びに図1、図2、図9及び図10から明らかなように、クランク軸線aと平行な一側部に吸気マニホールド73を、他側部に排気マニホールド71を備えていると共に、前記排気マニホールド71から排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールド73に還流させるEGR装置91を備えているエンジン70であって、前記吸気マニホールド73と新気導入用の吸気スロットル部材93とを連通させる中継管路92を備えており、前記排気マニホールド71から延びる還流管路95の出口側が前記中継管路92に連通接続されており、前記中継管路92は、前記吸気マニホールド73の横外側部に、前記吸気マニホールド73に沿って延びるように取り付けられているから、新気とEGRガスとを前記吸気マニホールド73に送り込む前に混合して、ガス混合状態のバラツキ(ムラ)を少なくできる。その上、前記中継管路92を前記吸気マニホールド73の横外側方に位置させて、前記エンジン70の全高を低く抑制でき、前記エンジン70のコンパクト化に寄与するという効果を奏する。
【0046】
また、前記中継管路92は、前記吸気マニホールド73の横外側部に、前記吸気マニホールド73に沿って延びるように取り付けられているから、前記中継管路92の長さを前記吸気マニホールド73の長手方向に沿って長くできるので、新気とEGRガスとの混合空間が広がり、新気とEGRガスとの混合促進に寄与する(混合ガス中においてEGRガスをより効率よくに拡散させることが可能になる)という効果を奏する。
【0047】
上記の記載並びに図1、図2、図9及び図10から明らかなように、前記クランク軸線aと交差する一側部に冷却ファン76を備えており、前記吸気マニホールド73と前記中継管路92との連通部分144,146が前記冷却ファン76寄りに形成されているから、吸気マニホールド73内部の混合ガスの流れ方向が一方方向になる。このため、前記エンジン70の各気筒にムラの少ない混合ガスを分配でき、前記各気筒間のEGRガス量がばらつくのを格段に低減できる。また、前記吸気マニホールド73と前記中継管路92との連通部分144,146に冷却ファン76からの冷却風が当たるので、ムラの少なくなった混合ガスの冷却に効果的である。その結果、黒煙の発生が抑制され、前記エンジン70の燃焼状態を良好に保ちながら、NOx量を確実に低減できる。すなわち、特定の気筒で失火を招来することなく、EGRガスの還流による排気ガスの清浄化(クリーン化)を達成できるという効果を奏する。
【0048】
上記の記載並びに図9〜図11に示すように、前記中継管路92における前記連通部分寄りの部位には、平面視で前記吸気マニホールド73に近付くに連れて前記クランク軸線aと交差する方向の長さが短くなる傾斜部150が形成されており、前記中継管路92のうち前記傾斜部150の上流側に前記還流管路95の出口側が連通接続されているから、前記中継管路92に流入した新気のうち一方の内側面(左内側面)に沿って流れるものは、前記傾斜部150の内面側に衝突して、前記中継管路における前記還流管路の出口側付近で中心の方向に偏流する。このため、前記中継管路における前記還流管路の出口側付近では、新気の流れが渦を形成するかのように乱れる。このように乱れた新気の流れに対して、前記還流管路95からのEGRガスが前記中継管路92内に流入するから、EGRガスは、前記中継管路92内への流入と同時に、内部を流れる新気にスムーズに混合される。従って、前記中継管路92内において、新気とEGRガスとを前記吸気マニホールド73に送り込む前に撹拌しながら効率よく混合でき(混合ガス中においてEGRガスをスムーズに分散でき)、前記中継管路92内でのガス混合状態のバラツキ(ムラ)をより確実に抑制できるという効果を奏する。
【0049】
(5).その他
なお、本願発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明に係るエンジンは、例えばコンバイン、トラクタ等の農作業機や、バックホウ、フォークリフトカー等の特殊作業用車両のような各種車両に対して広く適用できる。また、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
a クランク軸線
1 DPF
2 ディーゼル酸化触媒
3 スートフィルタ
60 DPFケーシング
70 ディーゼルエンジン
71 排気マニホールド
73 吸気マニホールド
74 クランク軸
75 エンジンブロック
76 冷却ファン
78 フライホイールハウジング
91 EGR装置
92 コレクタ
93 吸気スロットル部材
94 EGRクーラ
95 再循環排気ガス管
96 EGRバルブ部材
115 インジェクタ
116 燃料ポンプ
117 コモンレールシステム
119 燃料噴射バルブ
120 コモンレール
150 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸線と平行な一側部に吸気マニホールドを、他側部に排気マニホールドを備えていると共に、前記排気マニホールドから排出される排気ガスの一部をEGRガスとして前記吸気マニホールドに還流させるEGR装置を備えているエンジンであって、
前記吸気マニホールドと新気導入用の吸気スロットル部材とを連通させる中継管路を備えており、前記排気マニホールドから延びる還流管路の出口側が前記中継管路に連通接続されており、前記中継管路は、前記吸気マニホールドの横外側部に、前記吸気マニホールドに沿って延びるように取り付けられている、
エンジン。
【請求項2】
前記クランク軸線と交差する一側部に冷却ファンを備えており、前記吸気マニホールドと前記中継管路との連通部分が前記冷却ファン寄りに形成されている、
請求項1に記載したエンジン。
【請求項3】
前記中継管路における前記連通部分寄りの部位には、平面視で前記吸気マニホールドに近付くに連れて前記クランク軸線と交差する方向の長さが短くなる傾斜部が形成されており、前記中継管路のうち前記傾斜部の上流側に前記還流管路の出口側が連通接続されている、
請求項2に記載したエンジン。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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