説明

エンボスロールの製造方法

【課題】エンボスロールに起因する壁紙の意匠の違和感を生じさせない、エンボスロールの製造方法を提供すること。
【解決手段】金属製ロールの表面にエンボス模様を形成し、該形成面にブラスト処理を施すエンボスロールの製造方法であって、ブラスト処理を少なくとも2回行い、そのうちの1回は粒径350〜1000μmの粒子を50質量%以上含む投射材料を用いることを特徴とするエンボスロールの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンボスロールの製造方法に関し、詳しくは、壁紙製造用のエンボスロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
壁紙に意匠性を付与する方法として、壁紙の表面にトップコートを施し、エンボスロールを用いて、凹凸模様を付すことが行われるが、該意匠性の付与に際し、艶を制御することは重要である。壁紙の艶は、低い方が、しっとりとした落ち着き感がでることから、一般に好まれる傾向にある。一方、艶が高いと、プラスチック感が強くなるため、耐水性が求められる部分の壁紙や汚れを防止したい部分の壁紙を除いては、敬遠される傾向にある。
壁紙の艶を決定する要因としては、壁紙表面のトップコートに用いるインキ自体の艶、エンボス加工する際の加工温度、エンボスロール表面の艶などが挙げられる。
【0003】
壁紙表面のトップコートに用いるインキの艶に関しては、インキ組成物にマット剤(艶消剤)を含有させることで、低艶化が達成される。また、エンボス加工時の加工温度については、一般的に、エンボスロールに接する直前の壁紙の表面温度が高いほど、エンボスロールの艶が転写されやすく、またライン速度が遅いほど、エンボスロールと壁紙の接触時間が長くなるために、エンボスロールの艶が転写されやすい。したがって、エンボスロールの艶の制御が重要となるが、エンボスロールの艶を落とす方法として、一般にメッキ処理やブラスト処理が挙げられる。
これまで、壁紙用のエンボスロールにおいては、凹凸形状を付与した後、クロムメッキによって、艶を落とすことが行われてきた。これは、ブラスト処理による壁紙の品質に対する影響が不明であり、かつブラスト処理は壁紙製造に対するコストアップ要因であるため、行われてこなかったものである。
【0004】
ところで、壁紙用途以外のエンボスロールにおいては、エンボスロールの艶の制御方法として、ブラスト加工及びクロムメッキが行われている。
例えば、化粧シートにおいては、高艶を得るために、エンボス版が使用される場合がある。具体的には、特許文献1に、このような艶の高い化粧シート作製用のエンボス版が開示されており、その製造工程の一工程として、サンドブラスト処理することが開示されている。サンドブラスト処理に用いる投射材料としては、粒子径が1〜100μm程度の鉄、炭化珪素、アルミナ、酸化クロム、酸化鉄等の無機粒子が用いられている(特許文献1[0027])。すなわち、非常に粒径の小さい投射材料が用いられている。
また、特許文献2には、化粧シート基材の表面にエンボス版を用いて微細凸部を賦形してなる耐スクラッチ性化粧シートが開示されており、該化粧シートの製造過程で用いられるエンボス版は、粒子径150〜500μmの非金属系のガラスビーズを用いて、サンドブラスト処理がなされ、サンドブラストした表面にクロムメッキによって保護層が設けられることが開示されている(特許文献2[0017])。
【0005】
エンボスロールの製造方法としては、金属ロールの表面に、ミルロール法やレジスト腐食法などによって、凹凸模様を形成する方法がとられる。
ミルロール法は、ミルロールと呼ばれる凹凸形状を有するロール版を、移動させながら、金属ロールに押し付けていき、金属ロールの表面に凹凸形状を付与する方法であるが、ミルロールの押しムラによって、局所的な版深違いや、凹凸形状違いができることがある。すなわち、ミルロールを移動して、金属ロールに凹凸を賦形するに際して、金属ロール全体に凹凸をつける必要があるため、凹凸を賦形した部分に一部重複させながら、ミルロールを移動させることになる。したがって、該重複部分については、局所的な版深違いや、凹凸形状違いができることがある。このような、版深違いや、凹凸形状の違いは、壁紙が施工された後に、部屋に差し込む射光(特に朝日や夕日)によって、エンボスの影が壁紙全体として均一に見えず、数センチの帯状に等間隔に見えるなど、壁紙として違和感を生じさせることがあった。
【0006】
また、レジスト腐食法などによってエンボスロールを製造した場合には、上記のようなミルロール法によって生じる問題はないが、例えば織物柄であると、太い繊維を表現した部分と細い繊維を表現した部分で、光が当たったときの影のでき方が異なり、この影の違いが周期的に起こると、エンボスの影が壁紙全体として均一に見えず、壁紙として違和感を生じ、これが壁紙全体の意匠に悪影響を及ぼす場合があった。
【0007】
エンボスロールの製造方法としては、上述のように、ミルロール法やレジスト腐食法などがあるが、エンボスロールの艶を制御する方法として、ブラスト加工やクロムメッキが行われてきた。しかしながら、壁紙用のエンボスロールは、上述のように、旧来、エンボスロール表面に、腐食又は彫刻等によってエンボス意匠を形成した後、半艶消しのクロムメッキを施すことが多く、一般的には、ブラスト処理は行われていなかった。
これに対し、ビニールクロスなど壁紙用途のエンボスロールに対して、エッチング処理又はブラスト処理を行うことを開示した先行技術がある(特許文献3参照)。特許文献3に開示されるブラスト処理等は、ビニールクロス等の表面に傷を付けずに滑らかなエンボスを得るために施されるものであるが、特許文献3に具体的に開示されるのは、エッチング処理であって、ブラスト処理の条件等については、一切開示がなく、ブラスト処理によって、特許文献3に開示される効果を示すか否かは不明である。
【0008】
一方、壁紙用途ではないエンボスロールについては、ブラスト処理のみによって、エンボスロールの表面に凹凸形状を付与する方法が提案されている(特許文献4参照)。特許文献4には、ブラストショットに粒子径の細かい基本的ブラスト材及び粒子径の粗いブラスト材を混合して使用する態様が開示されている(特許文献2[0006]参照)。また、比較例として、エンボスロールにJIS R6001に規定される研磨材粒度30番のアルミナ質ブラスト材で処理し、その後にJIS R6001に規定される研磨材粒度120番のアルミナ質ブラスト材で処理する方法が開示されている(特許文献4[0020]参照)。
しかしながら、特許文献4に開示されるエンボスロールは、ブラストショットのみで凹凸形状を形成させるものであり、腐食又は彫刻等によってエンボス模様を形成した後に、該エンボス模様を改良するためのブラスト処理とは根本的に異なる。また、特許文献4に開示されるエンボスロールは、合わせ構造体の中間膜として使用するフィルムのエンボス加工用であって、異なる粒子径のブラスト材を用いるのは、合わせ構造体を製造する際の脱気性等の改善のためであり(特許文献4[0005]参照)、壁紙用のエンボスロールとは全く異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−268740号公報
【特許文献2】特開平7−317267号公報
【特許文献3】特開平5−177453号公報
【特許文献4】特開平8−336757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述のような、エンボスロールに起因する壁紙の意匠の違和感を生じさせない、エンボスロールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、エンボスロールの製造方法において、特定の粒径を有する投射材料を用いて、ブラスト処理を少なくとも2回行うことで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)金属製ロールの表面にエンボス模様を形成し、該形成面にブラスト処理を施すエンボスロールの製造方法であって、ブラスト処理を少なくとも2回行い、そのうちの1回は粒径350〜1000μmの粒子を50質量%以上含む投射材料を用いることを特徴とするエンボスロールの製造方法、
(2)複数回行われるブラスト処理のうち、最後のブラスト処理が、前記粒径350〜1000μmの粒子を50質量%以上含む投射材料を用いるブラスト処理である上記(1)に記載のエンボスロールの製造方法、
(3)ブラスト処理の前及び/又はブラスト処理の後に、クロム層の積層処理を行う上記(1)又は(2)に記載のエンボスロールの製造方法、
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法により得られたエンボスロールを用いることを特徴とする壁紙の製造方法、及び
(5)上記(4)に記載の製造方法により得られる壁紙、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンボスロールに起因する壁紙の意匠の違和感を生じさせない、エンボスロールの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエンボスロールの製造方法は、金属製ロールの表面にエンボス模様を形成し、該形成面にブラスト処理を少なくとも2回行い、そのうちの1回は粒径350〜1000μmの粒子を50質量%以上含む投射材料を用いることを特徴とする。
【0014】
(金属製ロール)
本発明の製造方法に用いる金属製ロールとしては、鉄芯の表面の全面に金属基材を設けたものが用いられる。金属基材としては、通常エンボスロールに用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、亜鉛、銅、真鍮、アルミニウム、鉄、ステンレス、クロム等の金属が挙げられる。中でも、銅が腐食法における凹凸模様の形成安定性が優れるなどの理由で好ましい。
金属基材の厚さとしては、エンボス版の凹凸模様最大高低差をカバーできる厚みが必要であり、壁紙用途の場合は、通常、1000〜1500μmの厚さが必要である。
【0015】
(エンボス模様)
本発明の製造方法においては、エンボス模様の種類に特に制限はなく、例えば、織物柄、塗壁柄、木目導管模様、ヘアライン、梨地などが挙げられる。これらのうち、壁紙として頻繁に用いられる織物柄、塗壁柄が、本発明の効果を最も享受し得る柄であり、特に好ましい。
【0016】
金属製ロールの表面にエンボス模様を形成する方法としては、特に制限はなく、公知の腐食法等、従来の方法を用いることができる。より具体的には、例えば、先ず、所定の凹凸模様(織物柄、木目導管模様等)のパターンをコンピュータ画面上で作成後、前記パターンの画像をエンボス版のシリンダーの円周長でエンドレスになるようエンドレスファイルを作成する。なお、壁紙のエンボス版(金属製ロールの円周620mm、横方向1400mm)であれば、画像は、円周方向310mm、幅方向230mmが一般的サイズである。
かかるエンドレスファイルの凹凸模様データを、レジスト感光液を塗布した銅などの金属基材(エンボスシリンダー)上に、市販のレーザー刷版装置を用いて直接出力して焼き付ける。
次いで、シリンダーの現像、腐食、レジスト剥離を行うことにより、金属基材に所望のエンボス凹凸模様を付与することができる。なお、金属基材に付与する凹凸模様の表面粗さは限定されず、従来、金属基材(エンボスシリンダー)に凹凸模様を付与する場合と同じでよい。なお、金属基材として、銅基材を用いる場合には、そのモース硬度は3程度(2〜4程度)であることが好ましい。
【0017】
(ブラスト処理)
本発明の製造方法においては、エンボス模様形成面にブラスト処理を、少なくとも2回行うことが特徴である。ここで行う複数回のブラスト処理は、粒径の異なる投射材料を用い、そのうちの少なくとも1回は、粒径350〜1000μmの粒子を50質量%以上含む投射材料を用いる(以下「大粒径ブラスト処理」と称する。)。このような粒径の投射材料を用いることで、エンボスロールに起因する壁紙の意匠の違和感を生じさせない、エンボスロールを製造することができる。以上の観点から、ここで用いられる投射材料を構成する粒子の粒径は、600〜800μmの範囲が好ましい。
また、大粒径ブラスト処理に用いる投射材料中の粒径350〜1000μmの粒子は、本発明の効果をより効率的に得るとの観点から、該投射材料中に70質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。
この大粒径ブラスト処理は、複数回あるブラスト処理のうち、最後に行うことが好ましい。最後に行うことで、本発明の効果がより顕著に現れるからである。なお、大粒径ブラスト処理は、1回であってもよいし、複数回行ってもよい。
【0018】
大粒径ブラスト処理以外のブラスト処理(以下「通常ブラスト処理」と称する。)は、従来から行われている、粒径が100〜400μmの投射材料を用いたブラスト処理であればよい。通常ブラスト処理も1回であってもよいし、複数回行われてもよい。このような通常ブラスト処理を行うことで、エンボスロールの凹凸形状の最深部にまで、研磨剤(投射材料)が届くため、エンボスロールの凹部のみが、艶高になることを防ぐことができる。
以上のように、本発明の製造方法における最も好ましい態様としては、エンボス模様を付与した後に、通常のブラスト処理を1回以上行い、最後に大粒径ブラスト処理を少なくとも1回行う態様である。
【0019】
ブラスト処理は、上述のような投射材料を、例えば圧縮空気の力によって、ノズルの先端から吹き付けることで行うことができる。具体的には200〜500kPaの範囲であることが好ましい。200kPa以上であると、本発明の効果を十分に奏することができ、500kPa以下であると、凹凸模様を破壊することなく、デザイン上問題がない。以上の観点から、圧縮空気の圧力範囲は、300〜400kPaの範囲であることがさらに好ましい。
なお、ブラスト処理は、通常、常温で行われ、投射材料の吹き付け時間としては、0.01〜0.5秒程度である。また、ノズルから投射される材料の吹き付け面積に応じて、上記吹き付け時間の条件を満足するように、ノズルが走査される。
また、上記大粒径ブラスト処理及び通常ブラスト処理に用いる投射材料としては、ブラスト処理に従来用いられている材料を用いることができ、例えば、鉄、炭化珪素、アルミナ、酸化クロム、酸化鉄等の無機粒子を用いることができる。
【0020】
(クロム層の積層)
また、本発明の製造方法では、艶を制御する目的及び保護層としての機能を付与するとの観点から、クロム層を積層することが好ましい。クロム層は、ブラスト処理の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。また、ブラスト処理の前後のいずれにも、クロム層の積層処理を行ってもよい。
【0021】
クロム層の積層に用いるクロムの種類としては、光沢を有するものから、完全に艶消しのものまで種々あるが、ブラスト処理の前後のいずれにクロム層を積層するかによって決定される。
ブラスト処理前にクロム層を積層する場合には、光沢の高いものを用いることが好ましい。光沢の高いクロムは耐久性が高いために、保護層として優れる。また、艶の制御がブラスト処理により行うことができるので、エンボス版としての再現性も良好となる。
また、ブラスト処理の前にクロム層を積層させる場合には、ブラスト処理によって、クロム層が損なわれないようにするために、クロム層の厚さは30μm以上とすることが好ましい。さらに、経済性等を考慮すると30〜50μmの範囲がより好ましい。
【0022】
一方、ブラスト処理後にクロム層を積層する場合には、光沢の低いものを用いることが好ましい。ブラスト処理とクロム層の艶によって、エンボスロールの艶を制御するためである。
ブラスト処理後にクロム層を積層させる場合のクロム層の厚さについては、保護層としての機能を付与することができ、艶が制御できる範囲で特に制限はないが、15〜25μmの範囲が好ましい。
クロム層の積層方法については特に制限はなく、例えば、メッキにより簡便に付与することができる。なお、クロム層のモース硬度は7程度(6〜8程度)であることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法により得られるエンボスロールを用いて、壁紙を製造する方法については、従来のエンボス工程と同様であり、特に制限はない。
例えば、EVA樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EMAA樹脂(エチレン−メタクリル酸共重合体)、EMMA樹脂(エチレン−メタクリル酸メチル共重合体)などを主成分とする樹脂層を有した基材からなる壁紙用原反に、アクリル系インキなどを使って所望の絵柄を印刷する。これを赤外線輻射ヒータ等が配置された炉内で、温度200〜300℃で、20〜40秒間加熱し、これに織物柄など、所望の形の凹凸模様を設け、上述のブラスト処理を行った本発明の製造方法により得られるエンボスロールで加圧・賦形し、冷却固定して壁紙を得る。本発明の製造方法により得られるエンボスロールを設置するエンボス機については、特に制限はなく、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を用いることができる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
製造例1(壁紙用シートの製造)
エチレン系樹脂45質量%、無機充填材21質量%、安定剤2質量%、裏打紙32質量%からなる厚み200μmの壁紙用原反に、グラビア印刷にて絵柄を印刷し、発泡炉に該印刷済み壁紙用原反を通した。発泡炉の条件としては、発泡後の厚みが600μmとなるように、発泡炉温度とラインスピードを設定した。
なお、該600μm厚の発泡シートの表面温度が90〜100℃の状態で、実施例及び比較例にて製造されたエンボスロールによる賦型を行った。
【0025】
実施例1
シリンダー面長1400mm、円周930mm、表面材質「炭素鋼S25C」の金属製ロールの表面に公知の腐食法により、織物柄(最大版深600μm)のエンボス模様を付した。該エンボス模様上に投射材料として、粒径250〜212μmのアルミナ粒子を用い、294〜392kPa(3〜4kgf/cm2)の範囲に制御された圧力で、0.2秒間、均一にブラスト処理を行った。
次いで、粒径710〜600μmのアルミナ粒子を用い、上記と同条件で、均一にブラスト処理を行った。その後、エンボスロール表面に、半艶消し仕様の硬質クロムメッキ(硬栄鍍金工業(株))を施し、厚さ20μmのクロム層を積層した。
このようにして、製造したエンボスロールを用いて、製造例1にて製造した壁紙用シートにエンボス模様を施した。製造された壁紙は、エンボスロールに起因する意匠の違和感がなく、良好なものであった。
【0026】
実施例2
実施例1で用いたのと同様の金属製ロールを用い、実施例1と同様に織物柄(最大版深600μm)のエンボス模様を付した。該エンボスロール表面に、普通光沢仕様の硬質クロムメッキ(硬栄鍍金工業(株))を施し、厚さ50μmのクロム層を積層した。次いで、該クロム層上に、実施例1に記載の条件と同条件で、ブラスト処理を行った。すなわち、投射材料として、粒径250〜212μmのアルミナ粒子を用いたブラスト処理、及び、粒径710〜600μmのアルミナ粒子を用いたブラスト処理を、この順に行った。
このようにして、製造したエンボスロールを用いて、製造例1にて製造した壁紙用シートにエンボス模様を施した。製造された壁紙は、エンボスロールに起因する意匠の違和感がなく、良好なものであった。
【0027】
比較例1
実施例1で用いたのと同様の金属製ロールを用い、実施例1と同様に織物柄(最大版深600μm)のエンボス模様を付した。該エンボス模様上に投射材料として、粒径180〜150μmのアルミナ粒子を用い、294〜392kPa(3〜4kgf/cm2)の範囲に制御された圧力で、0.2秒間、実施例1と同様に均一にブラスト処理を行った。次いで、エンボスロール表面に、半艶消し仕様の硬質クロムメッキ(硬栄鍍金工業(株))を施し、厚さ20μmのクロム層を積層した。
このようにして、製造したエンボスロールを用いて、製造例1にて製造した壁紙用シートにエンボス模様を施した。壁紙が施工された後に、部屋に差し込む射光(特に朝日や夕日)によって、エンボスの影が壁紙全体として均一に見えず、意匠に違和感が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、エンボスロールに起因する壁紙の意匠の違和感を生じさせない、エンボスロールの製造方法を提供することができる。すなわち、本発明により製造したエンボスロールを用いて製造した壁紙は、壁紙が施工された後に、部屋に差し込む朝日や夕日などの射光によっても、エンボスの影が壁紙全体に均一に見え、意匠に違和感を生じない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製ロールの表面にエンボス模様を形成し、該形成面にブラスト処理を施すエンボスロールの製造方法であって、ブラスト処理を少なくとも2回行い、そのうちの1回は粒径350〜1000μmの粒子を50質量%以上含む投射材料を用いることを特徴とするエンボスロールの製造方法。
【請求項2】
複数回行われるブラスト処理のうち、最後のブラスト処理が、前記粒径350〜1000μmの粒子を50質量%以上含む投射材料を用いるブラスト処理である請求項1に記載のエンボスロールの製造方法。
【請求項3】
ブラスト処理の前及び/又はブラスト処理の後に、クロム層の積層処理を行う請求項1又は2に記載のエンボスロールの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られたエンボスロールを用いることを特徴とする壁紙の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により得られる壁紙。

【公開番号】特開2010−234513(P2010−234513A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88101(P2009−88101)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】