説明

エンボス加工シート

【課題】通気性を持たない生地や通気性を有するが生地の裏面と接着層の間に挟まれた空気層が加工工程時間内では完全に抜くことが難しい生地に、空気を確実に逃がして接着され、生地にエンボスを形成することによりきれいに装飾を施すことができるエンボス加工シートを提供する。
【解決手段】樹脂で成形された樹脂シート12と、樹脂シート12の片面に取り付けられ熱可塑性樹脂で作られた接着層14を有する。樹脂シート12と接着層14を貫通する空気孔22を備える。樹脂シート12と接着層14には、型押しされて凸部16と凹部18が形成され、凸部16と凹部18で所望の絵柄20が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生地の裏面に重ねて生地にエンボスを形成するエンボス加工シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服や小物を装飾するためにエンボスを付ける場合があり、エンボスを付ける方法は多種類ある。例えばエンボスを形成した樹脂シートを生地の所望の位置に加熱押圧により接着する方法がある。
【0003】
その他、特許文献1に開示されている立体形状浮出しマット及びその製造方法は、スポンジ状の弾性体の発泡体表面及びカバーとなるシートに形崩れしない明瞭な立体形状を同時にかつ容易に型押しして浮き出させることができ、しかもシートと発泡体とを型押し時に密着させて座布団やクッションをつくるものである。
【特許文献1】特開2002−360388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術の場合、エンボスを付ける生地が通気性を持たないときや通気性を有するが生地の裏面と接着層の間に挟まれた空気層が加工工程時間内では完全に抜くことが難しい生地のとき、加熱押圧した後に空気層が残ることがある。空気層が残ると、外観がよくないため商品とならない場合もあった。
【0005】
また、特許文献1に開示されている立体形状浮出しマットは、発泡体を両側から挟むシートが、例えば綿、ポリエステルまたはナイロン等の布であり、十分な通気性を有し空気層が残ることがなく、空気を抜く手段が必要ないものである。このため、通気性のないシートに利用することは考慮されていないものである。
【0006】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、通気性を持たない生地や通気性を有するが生地の裏面と接着層の間に挟まれた空気層が加工工程時間内では完全に抜くことが難しい生地に、空気を確実に逃がして接着され、生地にエンボスを形成することによりきれいに装飾を施すことができるエンボス加工シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂で成形された樹脂シートと、前記樹脂シートの片面に取り付けられ熱可塑性樹脂で作られた接着層と、前記樹脂シートと前記接着層を貫通する空気孔が設けられ、前記樹脂シートと前記接着層には型押しされて凸部と凹部が形成され、前記凸部と前記凹部で所望の絵柄が形成されているエンボス加工シートである。前記エンボス加工シートは、所望の製品の通気性を持たない生地や通気性が悪い生地、例えば通気性を有するが生地の裏面と接着層の間に挟まれた空気層が、加工工程時間内では完全に抜くことが難しい生地に接着することにより前記生地に前記凸部と前記凹部に沿う凹凸を形成して前記生地に前記絵柄を設けるものである。
【0008】
また、前記空気孔は複数個設けられ、前記凸部ではそのほぼ中心に位置し、前記凹部では前記凸部近傍の隅部に位置している。前記空気孔は、レーザ光線で形成してもよい。
【0009】
また、前記樹脂シートと前記接着層はポリウレタンである。前記接着層はポリウレタンの接着シートを貼着して設けてもよい。この場合、前記樹脂シートは、エンボス加工型を当てて高周波溶着機により、前記接着シートの貼着と前記凹凸の形成が同時に行われる。
【0010】
また、前記エンボス加工シートは、製品の生地に接着するとき、エンボス加工型を当てて高周波溶着機により製品の生地に接着され、前記生地の凹凸を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のエンボス加工シートは、通気性を持たない生地や通気性を有するが生地の裏面と接着層の間に挟まれた空気層が加工工程時間内では完全に抜くことが難しい生地に、空気を確実に逃がして接着され、生地にきれいにエンボスを形成することにより装飾を施すことができる。生地との接着部分に空気層が残ることを確実に防ぎ、製品の歩留まりが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態のエンボス加工シート10は、基材となる柔軟な樹脂シート12が設けられ、樹脂シート12の表面12aに、接着層14が設けられている。樹脂シート12は例えば熱可塑性のポリウレタン等で作られ、厚みは500μmである。接着層14は、例えばポリウレタン等のホットメルトの接着シートを、樹脂シート12に貼り付けて設けられ、厚みは50μmである。
【0013】
互いに重ねられた樹脂シート12と接着層14はプレスされて、樹脂シート12の表面12aが突出する凸部16と、逆に裏面12bが突出した表面12aの凹部18が形成されている。凸部16と凹部18により、平行四辺形や星形、枠等の絵柄20が設けられている。各凸部16には、樹脂シート12と接着層14を貫通する空気孔22がそれぞれ設けられ、空気孔22は凸部16のほぼ中心に位置している。凹部18は、凸部16以外の部分に連続して設けられ、凹部18の数箇所にも空気孔22が設けられている。凹部18の空気孔22は、凸部16近傍に位置する隅部に位置している。
【0014】
次に、エンボス加工シート10の製造方法について図3に基づいて説明する。まず、図3(a)に示すように樹脂シート12の表面12aに接着層14となる接着シートを重ね、この状態でレーザ光線24を照射して周囲を所望の形状にカットし、同時に空気孔22を形成する。レーザ光線を照射するレーザ加工機は、例えばCOレーザ装置を使用する。次に、図3(b)に示すように、互いに重ねられた樹脂シート12と接着層14を、エンボス加工型26にセットする。エンボス加工型26のオス型26aの上に、樹脂シート12側を載せる。このとき、樹脂シート12または接着層14に剥離紙がある場合は、載せる前に剥がす。次に接着層14側からエンボス加工型26のメス型26bを載せ、高周波溶着機により、樹脂シート12と接着層14の貼着と、凸部16と凹部18の形成が同時に行われる。凸部16と凹部18により、絵柄20が設けられる。そして、図3(c)に示すエンボス加工シート10となる。
【0015】
次にエンボス加工シート10の使用方法について図3(d)に基づいて説明する。エンボス加工シート10を、エンボス加工型26にセットする。載せる向きは前回の樹脂シート12と接着層14の貼着と同様に、オス型26aに樹脂シート12側が接しメス型26bに接着層14が向くように載せる。接着層14の上に、エンボス加工シート10を取り付ける衣服28の生地30を載せる。生地30は、裏面にラミネート等が施され、通気性を有するが、生地の裏面と接着層の間に挟まれた空気層が加工工程時間内では完全に抜くことが難しい生地である。このとき生地30の裏面30aがエンボス加工シート10に接する向きにセットする。次に生地30の表面30b側からエンボス加工型26のメス型26bを載せ、高周波溶着機により、生地30とエンボス加工シート10を接着する。これにより、生地30はエンボス加工シート10の凸部16と凹部18に沿って折り曲げられて絵柄20が設けられる。生地30とエンボス加工シート10の接着層14の間に残った空気は、エンボス加工シート10の空気孔22を通過してエンボス加工シート10の裏面12bへ逃げるため、空気層が接着層14と生地30の間に残ることがない。
【0016】
この実施形態のエンボス加工シート10によれば、衣服28の生地30に確実にきれいな凹凸を形成して絵柄20を設けることができる。通気性を有するが生地の裏面と接着層の間に挟まれた空気層が加工工程時間内では完全に抜くことが難しい生地30でも、エンボス加工シート10との間の空気は空気孔22から逃がすため、生地30とエンボス加工シート10との間に空気層が残ることが無く、製品の歩留まりが向上し、作業効率が向上する。空気孔22は、凸部16の中心付近と凹部18の隅部に設けられ、空気が残りやすい部分に設けられているため確実に空気を抜くことができる。生地30にきれいに絵柄20が設けられるため、防水・防風機能等、いろいろな機能を持たせた生地30で衣服28を作ることができる。空気孔22は小さいため、生地30の表面30bに影響を与えることが無く、すっきりとした外観となる。
【0017】
なお、この発明のエンボス加工シートは適宜変更可能であり、エンボス加工シートの樹脂シートと接着層の素材や厚みなど適宜設定可能であり、エンボス加工シートの形状や絵柄のデザインは、商品に合わせて自由に設定することができる。エンボス加工シートは、いろいろな種類の衣服に取り付けることができ、衣服の他に鞄や帽子、手袋等の小物にも取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態のエンボス加工シートの使用方法を示す正面図である。
【図2】この実施形態のエンボス加工シートの正面図(a)と右側面図(b)である。
【図3】この実施形態のエンボス加工シートの製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0019】
10 エンボス加工シート
12 樹脂シート
14 接着層
16 凸部
18 凹部
20 絵柄
22 空気孔
28 衣服
30 生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂で成形された樹脂シートと、前記樹脂シートの片面に取り付けられ熱可塑性樹脂で作られた接着層と、前記樹脂シートと前記接着層を貫通する空気孔が設けられ、前記樹脂シートと前記接着層には型押しされて凸部と凹部が形成され、前記凸部と前記凹部で所望の絵柄が形成され、所望の製品の通気性を持たない生地や通気性の悪い生地に接着することにより前記生地に前記凸部と前記凹部に沿う凹凸を形成して前記生地に前記絵柄を設けることを特徴とするエンボス加工シート。
【請求項2】
前記空気孔は複数個設けられ、前記凸部ではそのほぼ中心に位置し、前記凹部では前記凸部近傍の隅部に位置していることを特徴とする請求項1記載のエンボス加工シート。
【請求項3】
前記樹脂シートと前記接着層はポリウレタンであることを特徴とする請求項1記載のエンボス加工シート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−246871(P2008−246871A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91552(P2007−91552)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(592019523)株式会社ゴールドウインテクニカルセンター (35)
【Fターム(参考)】