説明

エンボス装置、および、加工品の製造方法

【課題】原反に凹凸柄を形成するエンボス装置であって、高速で効率的に原反に凹凸柄を形成することができるエンボス装置を提供する。
【解決手段】エンボス装置10は、エンボスロール20およびバックアップロール30から原反50の進行方向に沿ってずれた位置に配置された第1案内ロール35および第2案内ロール40を有する。エンボスロール20およびバックアップロール30の少なくとも一方の径は、原反50の幅方向中央部分51aに対面する位置において、原反50の幅方向両端部51bに対面する位置よりも、太くなっている。第1案内ロール35および第2案内ロール40は、原反50の端部分51bを圧しながら回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原反に凹凸柄を形成するエンボス装置に係り、とりわけ、高速で効率的に原反に凹凸柄を形成することができるエンボス装置に関する。
【0002】
また、本発明は、原反に凹凸柄を形成して加工品を製造する製造方法に係り、とりわけ、高速で効率的に加工品を製造することができる加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
今般、例えば特許文献1に示すように、エンボス加工は広く普及した加工方法となっている。特許文献1には、原反にエンボス加工を施すことにより、離型紙(加工品)を製造する方法が開示されている。この離型紙は、合皮製品、化粧シート、内装材等のシート状材料を作製するための型紙として用いられる。
【0004】
一般的に、とりわけ原反のような比較的に薄い被加工体にエンボス加工を施す場合、エンボス加工に用いられるエンボス装置は、エンボス型面を有したエンボスロールと、エンボスロールに対向して配置されたバックアップロールと、を備えている。エンボスロールとバックアップロールは、互いに対向するようにして配置され、加工中には、その両端部分を互いに向けて押圧されるようになる。この結果、凹凸形状を形成されたエンボスロールとバックアップロールとの間を通過する原反に、エンボスロールの凹凸形状に対応した凹凸柄が転写されるようになる。
【0005】
ところで、加工効率を向上させるためにエンボスロールの軸線方向における長さを長くすると、加工時にエンボスロールがその軸線方向に曲がってしまう。このような場合でも、軸線方向に沿ったエンボスロールの両端部分においては、バックアップロールに向けて押圧され得ることから、十分な加工圧力を維持することができる。しかしながら、軸線方向に沿ったエンボスロールの中央部分においては、曲がりによって、十分な加工圧力を確保することができなくなる。加工圧力が低下すると、凹凸柄を十分に転写することができなくなる可能性がある。
【0006】
このような不具合を解消するため、従来のエンボスロールおよびバックアップロールの少なくとも一方に、いわゆるクラウンが形成され、軸線方向における中央部分での径が、軸線方向における両端部分での径よりも太くなっている。このエンボス装置によれば、エンボスロールの中央部分においても、十分な加工圧力を原反に対して及ぼすことが可能となる。
【特許文献1】特開2002−205311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、エンボスロールまたはバックアップロールの径がその軸線方向に沿って変化すると、エンボスロールまたはバックアップロールの回転周速度もその軸線方向に沿って変化する。すなわち、エンボスロールまたはバックアップロールにクラウンが形成されると、当該クラウンロールの中央部分における回転周速度が、当該クラウンロールの両端部分における回転周速度よりも速くなる。このため、エンボスロールとバックアップロールとの間を通過する原反の速度が、原反の幅方向に沿った各位置で異なるようになる。これにともなって、エンボスロールおよびバックアップロールの回転による駆動によって搬送される原反の搬送速度も、原反の幅方向に沿った各位置で異なるようになる。
【0008】
そして、原反の搬送速度を上昇させようとすると、原反の幅方向に沿った各位置での搬送速度の相違に起因し、原反に皺がより顕著に発生してしまう。このため、原反への加工速度を上昇させることができない。昨今においては、コストダウンに対する要望がさらに強まっていることから、加工効率の限界は非常に重要な問題となっている。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものである。すなわち、本発明は、原反に凹凸柄を形成するエンボス装置であって、高速で効率的に原反に凹凸柄を形成することができるエンボス装置を提供することを目的とする。また、本発明は、原反に凹凸柄を形成して加工品を製造する製造方法であって、高速で効率的に加工品を製造することができる加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるエンボス装置は、原反を搬送しながら当該原反に凹凸柄を形成するエンボス装置であって、回転可能なエンボスロールと、前記エンボスロールに対向して配置され、前記エンボスロールとの間で前記原反を圧するようになる回転可能なバックアップロールと、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールから原反の進行方向に沿ってずれた位置に配置された回転可能な第1案内ロールと、前記第1案内ロールに対向して配置され、前記第1案内ロールとの間で前記原反を圧するようになる回転可能な第2案内ロールと、を備え、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールの少なくとも一方の径は、前記原反の進行方向に直交する原反の幅方向における前記原反の中央部分に対面する位置において、前記原反の幅方向における両端部に対面する位置よりも、太くなっており、前記第1案内ロールおよび前記第2案内ロールは、前記原反のうちの前記中央部分以外の領域であって、前記両端部分をそれぞれ含む領域を圧するように、配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によるエンボス装置において、前記原反の前記両端部分のそれぞれに対応するように、一対の第1案内ロールが設けられていてもよい。
【0012】
また、本発明によるエンボス装置において、前記原反の前記両端部分のそれぞれに対応するように、一対の第2案内ロールが設けられ、前記一対の第2案内ロールは、一つのロールの外周面上に離間して配置された一対の円筒状部材であってもよい。このような本発明によるエンボス装置において、前記円筒状部材の前記原反に接触するようになる表面の粗さは、前記単一のロールの前記外周面の粗さよりも粗くなっていてもよい。
【0013】
さらに、本発明によるエンボス装置において、前記第1案内ロールおよび前記第2案内ロールは、前記原反の進行方向に沿って、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールよりも下流側に配置されていてもよい。
【0014】
本発明による加工品の製造方法は、上述したいずれかの本発明によるエンボス装置を用いて原反に凹凸柄を形成し、加工品を製造する製造方法であって、前記原反を間に挟んだ状態で前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを回転させ、前記原反に凹凸柄を形成していくエンボス加工工程を、備え、前記エンボス加工工程において、前記原反を間に挟んだ前記第1案内ロールおよび前記第2案内ロールを回転させ、前記原反を進行方向に誘導することを特徴とする。
【0015】
本発明による加工品の製造方法の前記エンボス加工工程において、前記原反の両端部分に対面する位置における前記エンボスロールおよび前記バックアップロールの前記少なくとも一方の回転周速度よりも速い回転周速度で、前記第1案内ロールおよび前記第2案内ロールの少なくとも一方が回転駆動されてもよい。このような本発明による加工品の製造方法の前記エンボス加工工程において、前記原反の中央部分に対面する位置における前記エンボスロールおよび前記バックアップロールの前記少なくとも一方の回転周速度以下の回転周速度で、前記第1案内ロールおよび前記第2案内ロールの前記少なくとも一方が回転駆動されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高速で効率的に原反に凹凸柄を形成することができる。これにより、加工費用を低下させることも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0018】
図1乃至図3は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうちまず、図1乃至図3を参照して、原反に凹凸柄を形成して加工品を製造するエンボス装置について説明する。ここで、図1は、エンボス装置およびエンボス装置による加工品の製造方法を説明するための斜視図である。また、図2は、エンボス装置を模式的に示す上面図である。さらに、図3は、図2にIII−III線に沿った断面図である。
【0019】
図1に示すように、エンボス装置10は、エンボスロール20と、エンボスロール20に対向して配置され、エンボスロール20との間で原反50を圧するようになるバックアップロール30と、を備えている。また、図1に示すように、エンボス装置10は、エンボスロール20およびバックアップロール30から離間して配置された第1案内ロール35と、第1案内ロール35に対向して配置され、第1案内ロール35との間で原反を圧するようになる第2案内ロール40と、を備えている。さらに、エンボス装置10は、エンボスロール20およびバックアップロール30の間に向けて原反50を供給する原反供給装置(図示せず)をさらに備えている。
【0020】
図1に示すように、エンボスロール20およびバックアップロール30は、それぞれ、円柱状または円筒状に形成されている。エンボスロール20およびバックアップロール30は、それぞれの外周面が対向するように配置されている。また、エンボスロール20およびバックアップロール30は、それぞれの中心軸線L1,L2が平行となるように配置されている。
【0021】
エンボスロール20およびバックアップロール30は、それぞれの中心軸線L1,L2を中心として回転可能に保持されている。エンボスロール20およびバックアップロール30は、駆動装置28(図2参照)に連結されている。そして、この駆動装置28の駆動により、エンボスロール20およびバックアップロール30は、所望の回転周速度で回転され得るように構成されている。なお、「回転周速度」とは、回転可能なロール状部材の外周面上の一点が、当該ロール状部材の回転にともなって単位時間あたりに移動する距離のことを差し示している。
【0022】
エンボスロール20は、その外周面上に形成された凹凸形状を含むエンボス型面25を有している。エンボス型面25は、図1に示すように、原反供給装置から供給される原反50に当接するようになる。図1に示すように、エンボス型面25は、原反50に形成すべき凹凸柄55に対応した凹凸形状を有している。エンボス型面25の凹凸形状は、製造される加工品の用途等に応じ、種々の粗さや深さを含んだ凹凸形状として構成される。一例として、製造されるべき加工品60が合成皮革用の離型紙(型紙)である場合には、エンボス型面25の凹凸形状は、原反50に皮模様を付与し得るように構成される。エンボスロール20は、エンボス型面25を含むその全体を、銅や鉄等の金属によって構成され得る。
【0023】
一方、エンボスロール20のエンボス型面25と対面するバックアップロール30の表層部は、エンボス型面25に押圧されて、エンボス型面25上に形成された凹凸形状に対応して変形可能であり、かつ、変形状態を少なくとも一期間維持し得るように構成されている。すなわち、バックアップロール30は、エンボス型面25として種々の凹凸形状を有したエンボスロール20に対し、汎用性を有したメス型として機能し得るようになっている。
【0024】
エンボスロール20の外径は、例えば200mm〜400mmとすることができる。一方、バックアップロール30の外径は、エンボスロール20の外径と同一にする、あるいは、整数倍にすることが好ましい。また、軸線方向(すなわち、中心軸線の方向および回転軸線の方向)L1,L2に沿ったエンボスロール20及びバックアップロールの長さは、例えば1000mm〜2000mmとすることができる。
【0025】
このようなエンボスロール20およびバックアップロール30によれば、エンボスロール20およびバックアップロール30の間で原反50をニップすることができる。さらに、エンボスロール20およびバックアップロール30の間に原反50を挟んだ状態でエンボスロール20およびバックアップロール30を回転駆動することにより、エンボス型面25の凹凸形状を原反50に転写しながら、ニップ圧で原反50を搬送していくことができる。
【0026】
ところで、エンボスロール20およびバックアップロール30の一方または両方が、クラウンを形成されたクラウンロールとして機能するようになっている。ここでクラウンロールとは、その中心軸線と平行な方向に沿って、外径の大きさが変化するロールのことを指している。本実施の形態におけるクラウンロールでは、その中心軸線と平行な方向における中央部分において、外径が太くなっており、その中心軸線と平行な方向における両端部分において、外径が細くなっている。すなわち、図2からよく理解され得るように、エンボスロール20およびバックアップロール30の少なくとも一方の径が、原反50の進行方向に直交する原反50の幅方向における原反50の中央部分51aに対面する位置において、原反50の幅方向における両端部分51bに対面する位置よりも、太くなっている。
【0027】
次に、第1案内ロール35および第2案内ロール40について説明する。
【0028】
図1乃至図3に示すように、第1案内ロール35および第2案内ロール40は、原反50の進行方向に沿って、エンボスロール20およびバックアップロール30からずれた位置に配置されている。本実施の形態においては、図1および図2に示すように、第1案内ロール35および第2案内ロール40は、原反50の進行方向に沿って、エンボスロール20およびバックアップロール30よりも下流側に配置されている。
【0029】
第1案内ロール35および第2案内ロール40は、図1及び図2に示すように、原反50のうちの中央部分51a以外の領域であって、両端部分51bをそれぞれ含む領域に対面するように配置されている。本実施の形態においては、図3に示すように、原反50の両端部分51aのそれぞれに対応するように、一対の第1案内ロール35および一対の第2案内ロール40が設けられている。
【0030】
図3に示すように、第1案内ロール35および第2案内ロール40は、それぞれ、円柱状または円筒状に形成されている。第1案内ロール35および第2案内ロール40は、それぞれの外周面が対向するように配置されている。また、第1案内ロール35および第2案内ロール40は、それぞれの中心軸線L3,L4が平行となるように配置されている。さらには、第1案内ロール35および第2案内ロール40は、第1案内ロール35および第2案内ロール40の中心軸線L3,L4がエンボスロール20およびバックアップロール30の中心軸線L1,L2と平行となるように、配置されている。また、第1案内ロール35および第2案内ロール40は、それぞれの中心軸線L3,L4を中心として回転可能に保持されている。
【0031】
本実施の形態においては、図1乃至図3に示すように、一対の第1案内ロール35は、別個の円柱状部材として構成され、原反50の幅方向に離間して配置されている。図3に示すように、各第1案内ロール35は、原反50の一つの幅方向端部分51bに対面する位置に配置されている。また、一対の第1案内ロール35は、その中心軸線L3が同軸軸線上に位置するようにして、配置されている。
【0032】
一方、図3からよく理解することができるように、本実施の形態において、一対の第2案内ロール40は、別個の円筒状部材として構成されており、原反50の幅方向に離間して配置されている。本実施の形態において、一対の第2案内ロール40は、回転可能な一本のロール(単一のロール)45の外周面上に、原反50の幅方向に離間して配置されている。したがって、一対の第2案内ロール40の中心軸線L2は、同軸軸線上に位置している。また、一対の第2案内ロール40は、一本のロール45に対して固定され、一本のロール45と同期して回転可能となっている。図3に示すように、各第2案内ロール40は、原反50の一つの幅方向端部分51bに対面する位置に配置されている。
【0033】
ここで、第2案内ロール40を嵌め込まれるロール45は、例えば、エンボスロール20の下流側に配置された搬送用のロール45とすることができる。エンボスロールを有する一般的なエンボス装置においては、原反を搬送するための搬送用のロールがエンボスロールの上流側および下流側に設けられている。このような搬送用ロールのうちの一本に、円筒状部材を嵌め込むことによって、本実施の形態による第2案内ロール40を構成することができる。
【0034】
この際、第2案内ロール40をなす円筒状部材の原反50に接触するようになる表面の粗さが、ロール40の外周面の粗さよりも粗くなっていることが好ましい。なお、ここでいう「粗さ」とは、例えば、JISB0601に準拠して測定される十点平均粗さRzとすることができる。
【0035】
次に、上述した構成のエンボス装置10を用いて原反50に凹凸柄55を形成し、加工品60を製造する方法の一例について説明する。
【0036】
まず、原反50が、図示しない原反供給装置から、エンボスロール20およびバックアップロール30の間に向けて、供給される。この際、エンボスロール20およびバックアップロール30は、その外周面の回転周速度が原反50の供給速度と一致するように、駆動装置28によって回転駆動されている。なお、エンボスロール20およびバックアップロール30の下流側には、図示しない巻き取り機が設けられている。そして、巻き取り機が原反50を一方の側から巻き取ることにより、原反50が繰り出されて供給されるようになっている。なお、巻き取り機による巻き取りによって原反50に及ぼされる引張力は、原反50の長手方向に直交する幅方向において実質的に均一となっている。
【0037】
また、原反50は、例えば、紙、より具体的には、80g/m2〜200g/m2程度の坪量を有したクラフト紙から構成され得る。原反50の厚みは、数百μm、より具体的には25μm〜500μm程度とすることができる。
【0038】
原反50は、エンボスロール20およびバックアップロール30の間において、エンボスロール20およびバックアップロール30から圧力を受ける。この結果、原反50にはエンボスロール20のエンボス型面25の凹凸形状が転写され、凹凸形状に対応した凹凸柄55が原反50に形成される。また、原反50がエンボスロール20およびバックアップロール30の間でニップされるため、原反50は、エンボスロール20およびバックアップロール30によってグリップされ、エンボスロール20およびバックアップロール30の回転にともなって進行させられる。
【0039】
このようにして、細長く延びる原反50に対して連続的にエンボス加工を施して、細長く延びる加工品60を形成していくことができる。とりわけ、ロールに巻き取られた原料としての原反50を当該ロールから順次繰り出すとともに、製造された加工品60をロールに巻き取って行くことにより、すなわち、いわゆるロールトゥロールの生産によれば、加工品60を極めて効率的に製造していくことができる。
【0040】
ところで、エンボスロール20およびバックアップロール30の軸線方向L1,L2に沿った長さが長いと、加工中に原反50へ圧力を加えている際に、エンボスロール20およびバックアップロール30は、その軸線方向L1,L2に沿った中央部分において互いから離れる方向に、曲がってしまう。この結果、エンボスロール20およびバックアップロール30から原反50の中央部51bに加えられる圧力が弱くなり、原反50の中央部分51aにおける凹凸柄55の形成が不十分となってしまう可能性がある。
【0041】
しかしながら、本実施の形態においては、上述したように、エンボスロール20およびバックアップロール30の少なくとも一方が、クラウンロールとして形成されている。そして、エンボスロール20およびバックアップロール30の少なくとも一方のロール径が、その中心軸線(回転軸線)L1,L2と平行な方向における各位置において変化している。具体的には、中心軸線(回転軸線)L1,L2と平行な原反50の幅方向において原反50の中央に位置する中央部分51aに対面する位置でのロールの径が、原反50の幅方向において原反50の中央部分51aの外方に位置する両端部分51bに対面する位置でのロールの径よりも太くなっている。そして、中央部分51aにおける膨径量を適宜調節しておくことにより、図2に示すように、エンボスロール20およびバックアップロール30のニップ幅(原反50の進行方向に沿ったニップ領域の幅)を、原反50の幅方向に沿って略一定にすることができる。この場合、エンボスロール20およびバックアップロール30から原反50の中央部分51aにも十分な圧力を加えることができるだけでなく、原反50の幅方向位置によらず、原反50に一定の所定圧力を加えることも可能となる。結果として、原反50の幅方向における各部分に対して、所望の凹凸柄55を形成することができる。
【0042】
その一方で、回転周速度は、回転角速度が一定であれば、径に比例して増減する。したがって、エンボスロール20およびバックアップロール30の少なくとも一方(クラウンロール)の径が、その中心軸線(回転軸線)L1,L2に沿った各位置において変化すれば、当該クラウンロールの外表面における回転周速度も、中心軸線(回転軸線)L1,L2に沿った各位置において変化する。
【0043】
上述したように、原反50は、エンボスロール20およびバックアップロール30によってグリップされ、エンボスロール20およびバックアップロール30の回転によって推し進められる。したがって、エンボスロール20およびバックアップロール30による原反50の搬送速度は、原反50の幅方向における中央部分51aにおいて、原反50の幅方向における両端部分51bよりも速くなる。この結果、原反50(加工品60)に皺が生じてしまう可能性があり、とりわけ、今般におけるコスト削減の要請に応じて原反50への加工速度を上昇させた場合には、原反50(加工品60)に大きな皺が生じてしまい得る。このようにして皺が発生した加工品60は、もはや、期待された機能を有さなくなり、使用不可能となることもある。
【0044】
一方、本実施の形態では、原反50の進行方向に沿ってエンボスロール20およびバックアップロール30からずれた位置に、回転可能な第1案内ロール35および第2案内ロール40が配置されている。第1案内ロール35および第2案内ロール40は、原反50の両端部分51bを間に挟んで加圧した状態で、回転するようになる。すなわち、第1案内ロール35および第2案内ロール40は、原反50の両端部分51bをグリップして回転し、原反50を所定の搬送経路で誘導する。結果として、第1案内ロール35および第2案内ロール40は、エンボスロール20およびバックアップロール30による搬送によって生じた原反50の幅方向における速度差を打ち消すように機能し得る。この結果、原反50を安定して搬送および加工することができ、これにより、加工品60の歩留まりを効果的に向上させることが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態においては、第2案内ロール40の表面の粗さが比較的に粗くなっている。この結果、原反50(加工品60)をより確実にグリップして搬送すること可能となる。これにより、原反50(加工品60)の搬送をさらに安定させることができる。
【0046】
以上のようにして、エンボスロール20に形成された凹凸形状に対応した凹凸柄55が原反50に形成され、帯状に延びる加工品60が連続的に作製されていく。本実施の形態によれば、高速で効率的に原反50に凹凸柄55を形成することができ、これにより、高速で効率的に加工品60を製造することができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、上述した実施の形態において、合成皮革用の離型紙を加工品60として製造する例を挙げたが、これに限られず、その他の用途に用いられる加工品60を製造することも当然に可能である。
【0049】
また、上述した実施の形態において、第2案内ロール40が円筒状部材として構成され、搬送用ロール等のロール45に嵌め込まれて保持されている例を示したが、これに限られない。第2案内ロール40が円柱状の部材として構成されていてもよい。
【0050】
さらに、上述した実施の形態において、第1案内ロール35が円柱状部材として構成されている例を示したが、これに限られない。例えば、第1案内ロール35が円筒状部材として構成され、搬送用ロール等に嵌め込まれて保持されるようにしてもよい。
【0051】
さらに、上述した実施の形態において、第1案内ロール35および第2案内ロール40が、回転可能に支持されてはいるものの、積極的に駆動されないようになっている例を示したが、これに限られない。例えば、図2に示すように、第1案内ロール35および第2案内ロール40の少なくとも一方が、駆動装置38に連結され、駆動装置38によって回転駆動されるようにしてもよい。この場合、搬送中における原反50への皺の発生をさらに効果的に防止することができる。
【0052】
さらに、上述した実施の形態において、第1案内ロール35および第2案内ロール40が、原反50の進行方向に沿ってエンボスロール20およびバックアップロール30よりも下流側に配置されている例を示したが、これに限られない。例えば、第1案内ロール35および第2案内ロール40が、原反50の進行方向に沿ってエンボスロール20およびバックアップロール30よりも上流側に配置されていてもよい。あるいは、第1案内ロール35および第2案内ロール40が、原反50の進行方向に沿ってエンボスロール20およびバックアップロール30の下流側および上流側の両側に配置されていてもよい。
【実施例】
【0053】
実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
実施例に係るエンボス装置と、比較例に係るエンボス装置と、を用いて原反にエンボス加工を行い、加工品としての離型紙を製造した。そして、離型紙を製造する際の加工速度の比較を行った。
【0055】
〔実施例〕
実施例に係るエンボス装置は、上述した実施の形態で説明した装置と同様に構成した。なお、第2案内ロールは、エンボスロールとバックアップロールのすぐ下流側に配置されていた搬送ローラーに対して取り付けた。搬送ローラーの径はφ150mmであった。第2案内ロールをなす円筒状部材の肉厚は2mmであり、第2案内ロールの中心軸線に沿った長さは200mmであった。第1案内ロールの外径はφ80mmであり、第1案内ロールの中心軸線に沿った長さは250mmであった。
【0056】
エンボスロールの径はφ250mmであり、バックアップロールの径はφ500mmであった。エンボスロールおよびバックアップロールの中心軸線に沿った長さは1800mmであった。バックアップロールには、その中心部の直径が両端部の直径よりも1.7mm太くなるクラウンを設けた。
【0057】
〔比較例〕
比較例に係るエンボス装置は、実施例に係るエンボス装置から、第1案内ロールおよび第2案内ロールを取り除いた装置とした。
【0058】
〔加工速度比較〕
比較例に係るエンボス装置を用い、幅1600mmの原反に対してエンボス加工を行った。原反の搬送速度を6m/minとした場合、加工中の原反にわずかに皺が発生した。ただし、皺の程度は、エンボス加工品を離型紙として使用する際には問題とならない程度であった。
【0059】
実施例に係るエンボス装置を用い、実施例と同一の原反に対してエンボス加工を行った。第1案内ロールおよび第2案内ロールのニップ圧を0.5MPaとした。原反の搬送速度を9m/minとした場合、加工中に原反に発生した皺は、比較例に係るエンボス装置を用いて6m/minの搬送速度で原反を加工した際に原反に発生した皺よりも少なかった。すなわち、実施例に係るエンボス装置によれば、比較例に係るエンボス装置と比較して、1.5倍の加工速度でより品質の高い加工品を製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であり、エンボス装置、および、エンボス装置による加工品の製造方法を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のエンボス装置を模式的に示す上面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 エンボス装置
20 エンボスロール
25 エンボス型面
28 駆動装置
30 バックアップロール
35 第1案内ロール
38 駆動装置
40 第2案内ロール
45 ロール
50 原反
51a 中央部分
51b 端部分
55 凹凸柄
60 加工品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反を搬送しながら当該原反に凹凸柄を形成するエンボス装置であって、
回転可能なエンボスロールと、
前記エンボスロールに対向して配置され、前記エンボスロールとの間で前記原反を圧するようになる回転可能なバックアップロールと、
前記エンボスロールおよび前記バックアップロールから原反の進行方向に沿ってずれた位置に配置された回転可能な第1案内ロールと、
前記第1案内ロールに対向して配置され、前記第1案内ロールとの間で前記原反を圧するようになる回転可能な第2案内ロールと、を備え、
前記エンボスロールおよび前記バックアップロールの少なくとも一方の径は、前記原反の進行方向に直交する原反の幅方向における前記原反の中央部分に対面する位置において、前記原反の幅方向における両端部に対面する位置よりも、太くなっており、
前記第1案内ロールおよび前記第2案内ロールは、前記原反のうちの前記中央部分以外の領域であって、前記両端部分をそれぞれ含む領域を圧するように、配置されている
ことを特徴とするエンボス装置。
【請求項2】
前記原反の前記両端部分のそれぞれに対応するように、一対の第1案内ロールが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のエンボス装置。
【請求項3】
前記原反の前記両端部分のそれぞれに対応するように、一対の第2案内ロールが設けられ、
前記一対の第2案内ロールは、一つのロールの外周面上に離間して配置された一対の円筒状部材である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエンボス装置。
【請求項4】
前記円筒状部材の前記原反に接触するようになる表面の粗さは、前記単一のロールの前記外周面の粗さよりも粗い
ことを特徴とする請求項3に記載のエンボス装置。
【請求項5】
前記第1案内ロールおよび前記第2案内ロールは、前記原反の進行方向に沿って、前記エンボスロールおよび前記バックアップロールよりも下流側に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のエンボス装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載されたエンボス装置を用いて原反に凹凸柄を形成し、加工品を製造する製造方法であって、
前記原反を間に挟んだ状態で前記エンボスロールおよび前記バックアップロールを回転させ、前記原反に凹凸柄を形成していくエンボス加工工程を、備え、
前記エンボス加工工程において、前記原反を間に挟んだ前記第1案内ロールおよび前記第2案内ロールを回転させ、前記原反を進行方向に誘導する
ことを特徴とする製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−149483(P2010−149483A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333079(P2008−333079)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】