説明

オイルシール

【課題】金属環にゴム膜を被着してなるオイルシールにおいて、ゴム膜にヘタリが生じるのを抑制する。
【解決手段】ゴム状弾性体製のシールリップを被着した金属環の軸方向一方の平面上にシールリップと一体のゴム膜を被着してなり、ゴム膜を被着した金属環をその軸方向両側から剛材製保持部材にて挟むことより装着部位へ装着されるオイルシールにおいて、ゴム膜中に設けられるとともに装着時に一方の剛材製保持部材に直接当接する突起部を金属環に一体成形したことを特徴とする。当該オイルシールがショックアブソーバー用オイルシールとして用いられる場合、突起部はワッシャーまたはロッドガイド等に直接当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置の一種であるオイルシールに係り、更に詳しくは、その構成要素として、金属環と、この金属環に被着したゴム状弾性体よりなるシールリップおよびゴム膜とを有するオイルシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図5に示すオイルシール1が知られており、このオイルシール1は、金属環2と、この金属環2に被着されたゴム状弾性体3よりなるシールリップ4およびゴム膜5とを有している。シールリップ4は、金属環2の内周部に設定された主リップ4Aおよびダストリップ4Bと、金属環2の外周部に設定された外周リップ4C等よりなり、これら複数のシールリップ4を型にて一体成形した結果として、これらリップ4と一体のゴム膜5が金属環2の一面2a上に設定されている。
【0003】
また、このオイルシール1は、図6に示すように、金属環2をその軸方向両側から剛材製保持部材にて挟むことよって装着部位へ装着される。図4はショックアブソーバー21のシール部を示しており、このようにオイルシール1がショックアブソーバー21のシール部に装着される場合、金属環2はその軸方向両側から剛材製保持部材であるロッドガイド22およびワッシャー23にて挟まれ、外筒24の端部(カシメ部)24aをカシメることにより装着部位へ装着される。この装着状態において、主リップ4Aおよびダストリップ4Bはショックアブソーバー21の軸部25の周面に摺動自在に密接し、主リップ4Aにてオイルをシールするとともにダストリップ4Bにて外部ダストをシールする。外周リップ4Cは外筒24の内面およびロッドガイド22の段差面に密接し、ここからオイルが漏れないようにシールする。
【0004】
上記構成のオイルシール1は、上記したように金属環2をその軸方向両側からロッドガイド22およびワッシャー23にて挟むことよって装着部位へ装着されるが、金属環2の一面2aにゴム膜5が被着され、このゴム膜5も金属環2とともに挟まれることから、装着状態においてこのゴム膜5に経時的なヘタリが生じることがあり、ヘタリが生じると、装着にガタツキが発生し、これによりオイルシール1の固定性が悪化したり、軸力が低下したりする問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平9−126266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、金属環にゴム膜を被着してなるオイルシールにおいて、ゴム膜にヘタリが生じることがなく、もってオイルシールの固定性が悪化したり軸力が低下したりすることがないオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるオイルシールは、ゴム状弾性体製のシールリップを被着した金属環の軸方向一方の平面上に前記シールリップと一体のゴム膜を被着してなり、前記ゴム膜を被着した金属環をその軸方向両側から剛材製保持部材にて挟むことより装着部位へ装着されるオイルシールにおいて、前記ゴム膜中に設けられるとともに装着時に一方の前記剛材製保持部材に直接当接する突起部を前記金属環に一体成形したことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の請求項2によるオイルシールは、上記した請求項1のオイルシールにおいて、当該オイルシールは、ゴム膜を被着した金属環をその軸方向両側からロッドガイドおよびワッシャーにて挟むことより装着部位へ装着されるショックアブソーバー用オイルシールであって、前記金属環のワッシャー側の面にゴム膜が被着されており、突起部は、前記ワッシャーに当接するよう設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の請求項3によるオイルシールは、上記した請求項1のオイルシールにおいて、当該オイルシールは、ゴム膜を被着した金属環をその軸方向両側からロッドガイドおよび外筒のカシメ部にて挟むことより装着部位へ装着されるショックアブソーバー用オイルシールであって、前記金属環のロッドガイド側の面にゴム膜が被着されており、突起部は、前記ロッドガイドに当接するよう設定されていることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成を備えた本発明のオイルシールにおいては、金属環に突起部が一体成形され、この突起部がゴム膜中に設けられるとともに装着時に一方の剛材製保持部材に直接当接するものとされているために、金属環および一方の剛材製保持部材間に、ゴム膜が介在しない剛材接触部分(金属接触部分)が設定される。したがって金属環および一方の剛材製保持部材間でゴム膜が挟圧されなくなることから、これに伴ってゴム膜にヘタリが生じるのを抑えることが可能となる。
【0011】
本発明のオイルシールがショックアブソーバー用のオイルシールとして用いられる場合、当該オイルシールは、ゴム膜を被着した金属環をその軸方向両側からロッドガイドおよびワッシャーにて挟むことより装着部位へ装着される。この場合、ゴム膜は金属環のワッシャー側の面に被着されるので、突起部はワッシャーに当接するように設定される(請求項2)。
【0012】
また、ショックアブソーバーのタイプとしては、ワッシャーが省略されて、ゴム膜を被着した金属環をその軸方向両側からロッドガイドおよび外筒のカシメ部にて挟むことより装着部位へ装着されるものがある。この場合、ゴム膜は金属環のロッドガイド側の面に被着されるので、突起部はロッドガイドに当接するように設定される。(請求項3)。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0014】
すなわち、本発明の請求項1によるオイルシールにおいては上記したように、金属環に突起部が一体成形され、この突起部がゴム膜中に設けられるとともに装着時に一方の剛材製保持部材に直接当接するものとされているために、金属環および一方の剛材製保持部材間にゴム膜が介在しない剛材接触部分が設定され、金属環および一方の剛材製保持部材間でゴム膜が挟圧されなくなり、ゴム膜にヘタリが生じなくなる。したがって本発明所期の目的どおり、ゴム膜にヘタリが生じることがなく、もってオイルシールの固定性が悪化したり軸力が低下したりするのを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の請求項2または3においては、ショックアブソーバー用オイルシールにおいて、上記請求項1の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係るオイルシール1の要部断面を示している。
【0018】
当該実施例に係るオイルシール1は、金属環2と、この金属環2に被着(加硫接着)されたゴム状弾性体3とを有し、このゴム状弾性体3によってシールリップ4とゴム膜5とが一体に成形されている。シールリップ4は、金属環2の内周部に設定された主リップ4Aおよびダストリップ4B、金属環2の外周部に設定された外周リップ4C、ならびに金属環2の径方向中央部に設定された小リップ4Dの組み合わせよりなり、これら複数のシールリップ4を型にて一体成形した結果として、これらリップ4と一体のゴム膜5が金属環2の一面2a上に設定されている。
【0019】
また、このオイルシール1は、図2に示すように、ショックアブソーバー21用のオイルシールとして用いられるものであって、金属環2をその軸方向両側から剛材製保持部材であるロッドガイド22およびワッシャー23にて挟まれ、外筒24の端部(カシメ部)24aをカシメることにより装着部位へ装着される。したがって以上の構成であると、ゴム膜5が金属環2およびワッシャー23間で強圧されることからヘタリが生じることは上記したとおりであるが、これを防止するため当該実施例では以下の対策が施されている。
【0020】
すなわち、金属環2の一面(ワッシャー23側の面)2a上に、軸方向一方へ向けて、かつゴム膜5中に埋設されるようにして突起部2cが一体成形されており、この突起部2cが装着時にワッシャー23に直接当接するように構成されている。したがってこの構成によれば、金属環2およびワッシャー23間にゴム膜5が介在しない剛材同士(金属同士)の接触部分が設定され、金属環2およびワッシャー23間でゴム膜5が挟圧されなくなることから、ゴム膜5にヘタリが生じなくなる。したがって、ゴム膜5にヘタリが生じず、装着にガタツキが発生せず、オイルシール1の固定性の悪化や軸力の低下を防止することができる。
【0021】
尚、上記突起部2cはプレス加工によって金属環2に形成されるので、金属環2のロッドガイド22側の面2bには、半抜き加工の結果として凹部2dが形成されている。突起部2cの高さ寸法は、ゴム膜5のヘタリ防止機能を十分に全うするため、ゴム膜5の厚みと同等に設定されている。突起部2cはカシメによる強圧を受けるため、先端面に平坦面を有している。突起部2cの先端面にはゴム膜5は被着されていない。また突起部2cはこれが環状であると、型によるリップ4成形時にゴム生地が廻らなくなるため、円周上に複数の突起部2cが並べられる構造とされている。すなわち突起部2cは複数、好ましくは3つ以上が円周上等間隔をあけて等配状に設定されている。
【0022】
また、図3および図4に示すように、本発明の他の実施例として、ショックアブソーバー21の別のタイプとしては、上記ワッシャー23が省略されて、ゴム膜5を被着した金属環2をその軸方向両側からロッドガイド22および外筒24のカシメ部24aにて挟むことより装着部位へ装着されるものがあり、この場合、ゴム膜5は図示するように金属環2のロッドガイド22側の面2bに被着される。したがってこの場合には、金属環2のロッドガイド22側の面2b上に、軸方向一方へ向けて、かつゴム膜5中に埋設されるようにして突起部2cが一体成形され、この突起部2cが装着時にロッドガイド22に直接当接するように構成される。したがってこの構成によれば、金属環2およびロッドガイド22間にゴム膜5が介在しない剛材同士(金属同士)の接触部分が設定され、金属環2およびロッドガイド22間でゴム膜5が挟圧されなくなることから、ゴム膜5にヘタリが生じなくなる。したがって、ゴム膜5にヘタリが生じず、装着にガタツキが発生せず、オイルシール1の固定性の悪化や軸力の低下を防止することができる。
【0023】
尚、上記突起部2cはプレス加工によって金属環2に形成されるので、金属環2の外筒カシメ部24a側の面2aには、半抜き加工の結果として凹部2dが形成される。突起部2cの高さ寸法は、ゴム膜5のヘタリ防止機能を十分に全うするため、ゴム膜5の厚みと同等に設定されている。突起部2cはカシメによる強圧を受けるため、先端面に平坦面を有している。突起部2cの先端面にはゴム膜5は被着されていない。突起部2cはこれが環状であると、型によるリップ4成形時にゴム生地が廻らなくなるため、円周上に複数の突起部2cが並べられる構造とされている。すなわち突起部2cは複数、好ましくは3つ以上が円周上等間隔をあけて等配状に設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係るオイルシールの要部断面図
【図2】同オイルシールの装着状態を示す断面図
【図3】本発明の他の実施例に係るオイルシールの要部断面図
【図4】同オイルシールの装着状態を示す断面図
【図5】従来例に係るオイルシールの要部断面図
【図6】同オイルシールの装着状態を示す断面図
【符号の説明】
【0025】
1 オイルシール
2 金属環
2a,2b 面
2c 突起部
2d 凹部
3 ゴム状弾性体
4 シールリップ
4A 主リップ
4B ダストリップ
4C 外周リップ
4D 小リップ
5 ゴム膜
21 ショックアブソーバー
22 ロッドガイド
23 ワッシャー
24 外筒
24a 端部
25 軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性体製のシールリップを被着した金属環の軸方向一方の平面上に前記シールリップと一体のゴム膜を被着してなり、前記ゴム膜を被着した金属環をその軸方向両側から剛材製保持部材にて挟むことより装着部位へ装着されるオイルシールにおいて、
前記ゴム膜中に設けられるとともに装着時に一方の前記剛材製保持部材に直接当接する突起部を前記金属環に一体成形したことを特徴とするオイルシール。
【請求項2】
請求項1のオイルシールにおいて、
当該オイルシール(1)は、ゴム膜(5)を被着した金属環(2)をその軸方向両側からロッドガイド(22)およびワッシャー(23)にて挟むことより装着部位へ装着されるショックアブソーバー(21)用オイルシールであって、前記金属環(2)のワッシャー(23)側の面(2a)にゴム膜(5)が被着されており、
突起部(2c)は、前記ワッシャー(23)に当接するよう設定されていることを特徴とするオイルシール。
【請求項3】
請求項1のオイルシールにおいて、
当該オイルシール(1)は、ゴム膜(5)を被着した金属環(2)をその軸方向両側からロッドガイド(22)および外筒(24)のカシメ部にて挟むことより装着部位へ装着されるショックアブソーバー(21)用オイルシールであって、前記金属環(2)のロッドガイド(22)側の面(2b)にゴム膜(5)が被着されており、
突起部(2c)は、前記ロッドガイド(22)に当接するよう設定されていることを特徴とするオイルシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−298074(P2007−298074A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125001(P2006−125001)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】