説明

オイルパン

【課題】高油温時、内壁と外壁の間に配置されたバイメタルのみが内壁と外壁に接触し、内壁と外壁の間には隙間が設けられる二層構造になっていたため、完全一層構造のオイルパン、即ち、通常のオイルパンに比べて、放熱性能が著しく劣っていた。
【解決手段】連結部13の変形により、低油温時はオイルパン本体11と外装部12が二層構造となり、高油温時はオイルパン本体11と外装部12が一層構造となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、エンジンブロックの底部に設けられて、エンジンの潤滑と共に冷却等を行うエンジンオイルを貯留するオイルパンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンオイルを貯留するオイルパンである、「二重構造オイルパン」(特許文献1参照)が知られている。この「二重構造オイルパン」は、オイルパンの本体が内壁と外壁の二重構造からなり、オイルの温度が高い高油温時は、内壁と外壁の間に配置されたバイメタルの形状が変化することによりバイメタルを介して内壁と外壁を接触させる、離接機能を有している。
【特許文献1】実開平03−021507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の「二重構造オイルパン」においては、高油温時、内壁と外壁の間に配置されたバイメタルのみが内壁と外壁に接触し、内壁と外壁の間には隙間が設けられる二層構造になっていたため、完全一層構造のオイルパン、即ち、通常のオイルパンに比べて、放熱性能が著しく劣っていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明に係るオイルパンは、連結部の変形により、低油温時はオイルパン本体と外装部が二層構造となり、高油温時はオイルパン本体と外装部が一層構造となることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0005】
この発明に係るオイルパンによれば、低油温時は、オイル貯留部と外装部が二層構造を有することにより断熱性能が向上して油温上昇が促進され、高油温時は、オイル貯留部と外装部が密着して一体化することにより、オイル貯留部の冷却性能に影響を与えることはなく、放熱性能が劣ることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
(第1実施の形態)
図1は、この発明の第1実施の形態に係るオイルパンを示し、(a)は高油温時の断面図、(b)は低油温時の断面図である。図1に示すように、オイルパン10は、オイルパン本体(オイル貯留部)11、外装部12、及び連結部13を有しており、例えば、エンジンブロックの底部に設けられて、エンジンの潤滑と共に冷却等を行うエンジンオイルを貯留する。オイルパン10に貯留されたオイルは、オイル循環路へと送り出された後、オイル循環路を巡って再びオイルパン10に戻される。
【0007】
オイルパン本体11は、オイルを貯留する箱形状に形成されており、平坦面からなる底部11aと、底部11a周縁に縦壁状に形成された周壁11bを有している。底部11aの外表面側である底面の略中央には、内側に入り込む窪みとなる凹部14が形成されている。この凹部14の底面からの深さは、連結部13の収縮状態における厚さと同一かそれ以上に深く形成されており、収縮状態の連結部13は、底面から突出することなく凹部14内に格納された状態になる。
【0008】
外装部12は、オイルパン本体11の底部11a及び周壁11b下部に外側から密着する平板状の底部12a及び周壁12bを有する、低い周壁からなる箱形状に形成されている。つまり、外装部12は、オイルパン本体11の少なくとも底面を覆って外側からオイルパン本体11に密着することができる。
【0009】
連結部13は、オイルパン本体11の底部11aに形成された凹部14に配置されて、オイルパン本体11と外装部12にそれぞれ固着されており、オイルパン本体11と外装部12を連結している。この連結部13は、回復温度以上になると所定の記憶形状に戻る形状記憶材料により形成されており、温度変化に伴って変形すると共に、変形後、変形状態を保持することができる。このように、変形後に或る一定の温度以上に加熱すると変形前の形状に戻る部材として、例えば、バイメタルがある。
【0010】
連結部13が形状記憶材料によって形成されていることにより、オイルパン本体11に貯留されているオイルの温度が高温(回復温度以上)のとき、連結部13は所定の記憶形状である収縮状態となり、外装部12をオイルパン本体11に密着させる。このとき、連結部13は、凹部14内に格納された状態になり((a)参照)、オイルパン10は、オイルパン本体11の底部11aと外装部12の底部12aが隙間無く密着した一層構造状態になる((a)参照)。
【0011】
一方、オイルパン本体11に貯留されているオイルの温度が低温(回復温度未満)のとき、連結部13は変形(膨張)状態になる。このとき、連結部13は、凹部14内から飛び出て底部11a外表面から突出した状態になり((b)参照)、この連結部13の変形動作に伴って、外装部12は、周壁12bをオイルパン本体11の周壁11bに沿って摺動させ、オイルパン本体11と外装部12が離反することになる。
つまり、外装部12は、オイルパン本体11に対し、連結部13の変形動作に伴う可動部として機能し、オイルの温度が低温のとき、外装部12をオイルパン本体11から離反させる方向に変形した状態になり、オイルパン10は、オイルパン本体11の底部11aと外装部12の底部12aの間に空間sを有する二層構造状態になる((b)参照)。
【0012】
このため、オイルパン本体11に貯留されているオイルの温度が低い低油温(回復温度未満)時は、形状記憶材料からなる連結部13の変形により、オイルパン本体11と外装部12が二層構造となるため、オイルパン10は、断熱性が高まりオイルパン本体11内に貯留されているオイルの温度の上昇が促進されて、オイルの粘度低くなり、その結果、粘性抵抗が小さくなる。一方、オイルパン本体11に貯留されているオイルの温度が高い高油温(回復温度以上)時は、形状記憶材料からなる連結部13が変形(収縮)して、オイルパン本体11と外装部12が密着一体化した一層構造となるため、オイルパン10の冷却性能に影響を与えることは無い。
【0013】
なお、連結部13が、オイルパン本体11の凹部14に設置されていることにより、連結部13を形成する形状記憶材料が、オイルパン本体11と外装部12を連結して変形する少量でよいため、安価なシステムコストで、オイルパン本体11と可動部である外装部12からなる二層構造を実現することができる。
【0014】
(第2実施の形態)
図2は、この発明の第2実施の形態に係るオイルパンを示し、(a)は高油温時の断面図、(b)は低油温時の断面図である。図2に示すように、オイルパン20は、連結部13に代えて、オイルパン本体11の周壁11bに配置した連結部21を有すると共に、外装部12に代えて、平板状の外装部22を有している。連結部21を周壁11bに配置したことにより、オイルパン本体11に凹部14は設けていない。その他の構成及び作用は、第1実施の形態に係るオイルパン10(図1参照)と同様である。
【0015】
連結部21は、連結部13と同様の形状記憶材料によって形成されており、オイルパン本体11の周壁11b外側に突設した段差部状の取付部23の下端面に配置されて、取付部23の下端面と外装部22の周辺部に固着されており(図2参照)、オイルパン本体11と外装部22を連結している。つまり、連結部21は、オイルパン本体11の周壁11bに、周壁11bの一部として配置されている。
【0016】
外装部22は、外装部12の平板状の底部12aを、連結部21に対応させて拡大して形成されており、この外装部22を、オイルパン本体11に対し、連結部21の変形動作に伴う可動部としている。つまり、外装部22は、オイルパン本体11の少なくとも底面を覆って外側からオイルパン本体11に密着することができる。
取付部23は、オイルパン本体11の全周に渡る帯状に形成しても良いし、或いはオイルパン本体11の周囲複数箇所に離間して形成しても良く、連結部21と取付部23は、外装部12の周壁12b(図1参照)と同様の形状を有するように一体的に形成されている。
【0017】
上記構成を有することで、オイルパン20は、オイルパン本体11に貯留されているオイルの温度が低い低油温(回復温度未満)時は、形状記憶材料からなる連結部21の変形(膨張)により、オイルパン本体11と外装部22が、オイルパン本体11の底部11aと外装部22の間に空間sを有する二層構造となる((b)参照)。このため、オイルパン20の断熱性が高まり、オイルパン本体11内に貯留されているオイルの温度の上昇が促進されて、オイルの粘度低くなり、その結果、粘性抵抗が小さくなる。
【0018】
一方、オイルパン本体11に貯留されているオイルの温度が高い高油温(回復温度以上)時は、形状記憶材料からなる連結部21の変形(収縮)により、オイルパン本体11と外装部22が密着一体化した一層構造となる((a)参照)。このため、オイルパン20の冷却性能に影響を与えることは無い。
このように、オイルパン本体11の周壁11bに連結部21を配置することにより、オイルパン本体11の形状を複雑にせず簡易にすることができるため、オイルパン本体11の製造コストを低減することができ、更に、オイルパン本体11、ひいてはオイルパン20の生産性を高めることができる。
【0019】
(第3実施の形態)
図3は、この発明の第3実施の形態に係るオイルパンを示し、(a)は高油温時の断面図、(b)は低油温時の断面図である。図3に示すように、オイルパン25は、外装部22と連結部23に代えて、平板状の外装部22を連結部23と同じ形状記憶材料により形成して連結部23と一体化させ、極低い周壁からなる箱形状に形成した連結外装部(外装部)26を有している。その他の構成及び作用は、第2実施の形態に係るオイルパン20(図2参照)と同様である。
【0020】
平板状の底部26a及び周壁26bが形状記憶材料により形成された連結外装部26は、周壁26bを、オイルパン本体11の周壁11b外側に突設した段差部状の取付部23の下端面に配置して、周壁26bの上端面を取付部23の下端面に固着させることにより、オイルパン本体11に連結されている(図3参照)。つまり、連結外装部26を、連結部23と同一の部材で形成して、連結部23と一体化させており、オイルパン本体11の少なくとも底面を覆って外側からオイルパン本体11に密着させることができる。
【0021】
上記構成を有することで、オイルパン25は、オイルパン本体11に貯留されているオイルの温度が低い低油温(回復温度未満)時は、形状記憶材料からなる連結外装部26の変形(膨張)により、オイルパン本体11と連結外装部26が、オイルパン本体11の底部11aと連結外装部26の間に空間tを有する二層構造となる((b)参照)。このため、オイルパン20の断熱性が高まり、オイルパン本体11内に貯留されているオイルの温度の上昇が促進されて、オイルの粘度低くなり、その結果、粘性抵抗が小さくなる。
【0022】
加えて、連結外装部26は、全体が形状記憶材料により形成されているため、変形が連結外装部26全体に広がって底部26aが中心部を最低部とする曲面状となり、オイルパン本体11と連結外装部26の間の空間tが、第2実施の形態に係るオイルパン20におけるオイルパン本体11と外装部22の間の空間sより広がることになるので、断熱性を一層高めることができる。
【0023】
一方、オイルパン本体11に貯留されているオイルの温度が高い高油温(回復温度以上)時は、形状記憶材料からなる連結外装部26の変化(収縮)により、オイルパン本体11と連結外装部26が密着一体化した一層構造となる((a)参照)。このため、オイルパン25の冷却性能に影響を与えることは無い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1実施の形態に係るオイルパンを示し、(a)は高油温時の断面図、(b)は低油温時の断面図である。
【図2】この発明の第2実施の形態に係るオイルパンを示し、(a)は高油温時の断面図、(b)は低油温時の断面図である。
【図3】この発明の第3実施の形態に係るオイルパンを示し、(a)は高油温時の断面図、(b)は低油温時の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10,20,25 オイルパン
11 オイルパン本体
11a 底部
11b 周壁
12,22 外装部
12a 底部
12b 周壁
13,21 連結部
14 凹部
26 連結外装部
26a 底部
26b 周壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを貯留する箱形状のオイル貯留部と、
前記オイル貯留部の少なくとも底面を覆って外側から前記オイル貯留部に密着することができる外装部と、
前記オイル貯留部と前記外装部の間に位置して前記オイル貯留部と前記外装部を連結し、温度変化により変形すると共に、変形時、前記外装部を外側から前記オイル貯留部の底部に密着した状態に保持する連結部と
を有するオイルパン。
【請求項2】
前記連結部は、
高温時、前記外装部を前記オイル貯留部に密着させる方向に変形し、低温時、前記外装部を前記オイル貯留部から離反させる方向に変形する請求項1に記載のオイルパン。
【請求項3】
前記連結部は、
前記オイル貯留部の底面外側に設けた凹部に配置されている請求項1または2に記載のオイルパン。
【請求項4】
前記連結部は、
前記オイル貯留部の周壁に配置されている請求項1または2に記載のオイルパン。
【請求項5】
前記外装部を、前記連結部と同一の部材で形成し、前記連結部と一体化させた請求項4に記載のオイルパン。
【請求項6】
前記連結部は、
回復温度以上になると所定の記憶形状に戻る形状記憶材料により形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載のオイルパン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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