説明

オイルミスト生成装置

【課題】 供給するオイルの全量をオイルミストにすることができ、様々な種類の加工方法に適用できるオイルミスト生成装置を提供する。
【解決手段】 オイルミスト生成装置1は、オイルノズル11にオイル23を供給するオイル供給手段3と、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間に印加される高電圧により発生するコロナ放電によってオイルミスト6を生成すると共にオイルミスト6を帯電させるオイルミスト生成帯電手段2と、オイルミスト6に向けてエアを供給するエア供給手段4と、エアの圧力によってオイルミスト6が搬送されると共にオイルミスト6を加工部分に搬送するオイルミスト搬送手段5と、から構成されているため、オイルノズル11に供給されたオイル23の全量をオイルミスト6にでき、必要最小限のオイル23を供給するだけでオイルミスト6を安定して供給できる。また、オイルミスト6の量を変化させることで様々な種類の加工に適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを霧化することによりオイルミストを生成すると共に、生成したオイルミストを工作物の加工時の加工部分又は潤滑を要する被潤滑部品の潤滑点に供給するオイルミスト生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工作物に対して切削加工、研削加工、ドリル加工等の機械加工を行なう場合、オイルを霧化することにより生成したオイルミストを工作物の加工部分に供給することにより、工作物と加工工具との間の潤滑や加工により発生する熱の冷却等を行なっている。また、軸受や歯車等の潤滑を必要とする部品の潤滑点にオイルミストを供給することにより、部品の円滑な動作の確保や動作により発生する熱の冷却等を行なっている。
【0003】
そして、上記したオイルミストを生成する装置として、従来、オイルの供給パイプから滴下したオイルに高速のエアを衝突させることによりオイルを霧化してオイルミストを生成するもの(例えば、特許文献1及び特許文献2)や、オイルを噴射するオイルノズルと工作物又は加工工具との間に高電圧を印加することにより発生するコロナ放電によってオイルを霧化してオイルミストを生成するもの(例えば、特許文献3)等が提案されている。
【特許文献1】特開平10−19192号公報
【特許文献2】特開平5−172296号公報
【特許文献3】特開2001−150296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1及び特許文献2に係る装置の場合、オイルミストを生成する際にエアを用いてオイルを霧化するものであるため、生成されるオイルミストの粒子径を制御することができない。このため、オイルミストの粒子径がバラツキを持ってしまい、エアによる搬送が不可能な大きな径の粒子のオイルミストも生成されてしまう。即ち、供給したオイルの全量をエアにより搬送可能な粒子径のオイルミストにすることができず、エアにより搬送可能なオイルミストに生成される量は、供給されたオイル量の約10〜20%程度であった。
【0005】
更に、エアにより搬送可能な粒子径のオイルミストであっても、その粒子径は小径から大径に亘る分布を持ち、粒子径の大きいオイルミストは、オイルミストの供給点に達するまでの間にその経路内に付着してしまうため、搬送可能なオイルミストの全量を供給点まで至らしめることができなかった。
【0006】
このように、オイルミストの生成時及びオイルミストの搬送時においてオイルロスが生じるため、オイルミストを供給点に安定して供給するためには、必要以上にオイルを供給しなければならないという問題があった。
【0007】
また、上記した特許文献3に係る装置の場合、オイルノズルと工作物又は加工工具との間のコロナ放電によってオイルを霧化してオイルミストを生成するものであるため、工作物の加工部分に外側からオイルミストを供給可能な加工方法では有効であるが、加工部分の外側からオイルミストの供給が困難な加工方法の場合、例えば、ドリルにより穴加工を行なうような場合には、穴の表面にオイルミストを供給するためには、オイルミストを噴射するオイルノズルがドリルの先端となり、ドリルと工作物とが接触して電気的短絡状態となるため、コロナ放電を行なうことができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記した事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、供給するオイルの全量をオイルミストにすることができると共に、様々な種類の加工方法に適用できるオイルミスト生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、請求項1に係る発明について、図面を参照して説明すると、図1に示すように、オイル23を霧化することによりオイルミスト6を生成すると共に、生成したオイルミスト6を工作物52の加工時の加工部分又は潤滑を要する被潤滑部品の潤滑点に供給するオイルミスト生成装置1において、オイル23を供給するオイルノズル11にオイル23を供給するオイル供給手段3と、前記オイルノズル11と該オイルノズル11から間隔を置いて設置されたコロナ放電電極(電極)12との間に印加される高電圧により発生するコロナ放電によって、前記オイルノズル11から供給されたオイル23を霧化することによりオイルミスト6を生成すると共に、生成したオイルミスト6を帯電させるオイルミスト生成帯電手段2と、該オイルミスト生成帯電手段2によって生成されたオイルミスト6に向けてエアを供給するエア供給手段4と、該エア供給手段4から供給されるエアの圧力によって、前記オイルミスト生成帯電手段2により生成されたオイルミスト6が搬送されると共に、搬送されるオイルミスト6を前記加工部分又は前記潤滑点に搬送するオイルミスト搬送手段5と、から構成されることを特徴とするオイルミスト生成装置1とした。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、図面を参照して説明すると、図3に示すように、請求項2に記載されるオイルミスト生成装置1は、前記工作物52又は該工作物52を加工するためのドリル(加工工具)51又は前記被潤滑部品を、帯電した前記オイルミスト6と逆の極性で帯電させる逆極性帯電手段7を備えたことを特徴とするオイルミスト生成装置1とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明においては、オイルミスト生成装置1は、オイル23を供給するオイルノズル11にオイル23を供給するオイル供給手段3と、オイルノズル11とオイルノズル11から間隔を置いて設置されたコロナ放電電極12との間に印加される高電圧により発生するコロナ放電によって、オイルノズル11から供給されたオイル23を霧化することによりオイルミスト6を生成すると共に、生成したオイルミスト6を帯電させるオイルミスト生成帯電手段2と、オイルミスト生成帯電手段2によって生成されたオイルミスト6に向けてエアを供給するエア供給手段4と、エア供給手段4から供給されるエアの圧力によって、オイルミスト生成帯電手段2により生成されたオイルミスト6が搬送されると共に、搬送されるオイルミスト6を加工部分又は潤滑点に搬送するオイルミスト搬送手段5と、から構成されている。
【0012】
上記のようにコロナ放電によってオイルミスト6を生成するものであるため、オイルノズル11に供給されたオイル23の全量をオイルミスト6にすることができ、オイルミスト6の生成時のオイルロスを防ぐことができる。また、コロナ放電によってオイルミスト6を生成するものであるため、生成されるオイルミスト6の粒子径のバラツキを非常に小さくすることができ、これにより、オイルミスト6が供給点に達するまでにその経路内に付着することがなくなり、オイルミスト6搬送時のオイルロスを防ぐことができる。
【0013】
このように、オイルミスト6の生成時及びオイルミスト6の搬送時におけるオイルロスを防ぐことができるため、必要最小限のオイル23を供給するだけで、オイルミスト6を供給点に安定して供給することができる。
【0014】
また、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間に印加する電圧を変化させることにより、オイルミスト6の粒子径を変化させることができると共に、供給するオイル23の量を変化させることにより、生成されるオイルミスト6の量を変化させることができるため、加工方法の種類及び潤滑を必要とする部品の種類に合わせて最適なオイルミスト6の粒子径及びオイルミスト6の量とすることができる。従って、様々な種類の加工及び潤滑に適用することができる。
【0015】
また、コロナ放電により生成されたオイルミスト6は、帯電しているためオイルミスト6同士の凝集が起こりにくく、これにより、オイルミスト6の搬送経路途中での損失を小さくすることができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明においては、オイルミスト生成装置1は、工作物52又は工作物52を加工するためのドリル51又は被潤滑部品に対して、帯電したオイルミスト6と逆の極性の電荷を付与する逆極性帯電手段7を備えたことにより、工作物52、ドリル51、被潤滑部品へのオイルミスト6の付着性が向上するため、作業環境中に放出される無駄なオイルミスト6を低減させることができ、霧害を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図1乃至図5を参照して説明する。まず、図1及び図2を参照してオイルミスト生成装置1の構成について説明する。図1は、オイルミスト生成装置1の構成を示す概略図であり、図2は、コロナ放電によりオイルミスト6が生成される状態を示す概略図である。
【0018】
実施形態に係るオイルミスト生成装置1は、図1に示すように、オイル23を霧化することによりオイルミスト6を生成すると共に、生成したオイルミスト6を工作物52の加工時の加工部分に供給するものである。なお、このように工作物52の加工時にオイルミスト6を加工部分に供給するばかりでなく、例えば、軸受や歯車のように潤滑を必要とする被潤滑部品の潤滑点に供給してもよい。
【0019】
上記したオイルミスト生成装置1は、オイル23を噴射するオイルノズル11にオイルを供給するオイル供給手段3と、オイルノズル11とオイルノズル11から間隔を置いて設置されたコロナ放電電極12との間に印加される高電圧により発生するコロナ放電によって、オイルノズル11から供給されたオイル23を霧化することによりオイルミスト6を生成すると共に、生成したオイルミスト6を帯電させるオイルミスト生成帯電手段2と、オイルミスト生成帯電手段2によって生成されたオイルミスト6に向けてエアを供給するエア供給手段4と、エア供給手段4から供給されるエアの圧力によって、オイルミスト生成帯電手段2により生成されたオイルミスト6が搬送されると共に、搬送されるオイルミスト6を工作物52の加工部分又は被潤滑部品の潤滑点に搬送するオイルミスト搬送手段5と、から構成されるものである。
【0020】
そこで、上記したオイルミスト生成装置1を構成する構成部品について説明すると、まず、オイルミスト生成帯電手段2は、オイルミスト生成帯電手段2の基体を構成するオイルミスト生成部10と、中空針状に形成されるオイルノズル11と、網状に形成されるコロナ放電電極12と、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間に接続される高電圧発生装置13と、から構成されている。
【0021】
オイルミスト生成部10は、例えば、図1に示すように、円筒形状に形成されるものであり、一端側(図中、左側)はエア供給手段4が接続されるエア側端部14として形成されると共に、他端側(図中、右側)はオイルミスト搬送手段5が接続されるオイルミスト搬送側端部15として形成されている。このオイルミスト生成部10内部のエア側端部14側にはオイルノズル11の先端が臨むと共に、オイルミスト搬送側端部15側にはコロナ放電電極12が設置されている。
【0022】
オイルノズル11は、前述のように中空針状に形成されると共に、オイル23が供給されるオイル噴出し口16がコロナ放電電極12側に向くように設置されている。また、オイル噴出し口16と反対側の端部である接続端部17には、オイル供給手段3のオイル供給パイプ22が接続されている。
【0023】
コロナ放電電極12は、前述のように網状に形成されると共に、オイルミスト生成部10の内側形状に合わせた円形状に形成されて、オイルミスト生成部10内に設置されている。また、このコロナ放電電極12は、オイルノズル11のオイル噴出し口16から約30〜50mmの間隔を置いて設置されている。なお、本実施形態においては、コロナ放電電極12は、網状で円形状に形成されるものであるが、これに限らず、例えば、リング形状に形成されてその内径がオイルミスト生成部10の内径と合うように、オイルミスト生成部10の内壁に埋め込まれるものであってもよい。この場合には、生成されたオイルミスト6は、コロナ放電電極12の中心に形成されている円形状の穴を通過することとなる。
【0024】
上記したオイルノズル11とコロナ放電電極12との間には、高電圧発生装置13が接続されており、この高電圧発生装置13によって、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間に高電圧が印加されるようになっている。そして、このオイルノズル11とコロナ放電電極12との間に印加される高電圧によってコロナ放電が発生するようになっている。なお、コロナ放電とは、針のような金属製の電極にかかる電圧がある大きさを超えたとき、空気の絶縁が破壊されて電極の先端部分に発生する青紫色の放電現象のことをいう。
【0025】
ここで、本実施形態に係るオイルミスト生成装置1において、コロナ放電によってオイル23を霧化することによりオイルミスト6が生成される状態について、図2を参照して説明する。本実施形態におけるオイルミスト生成装置1では、図2の概略図に示すように、オイルノズル11とオイルノズル11から間隔を置いてコロナ放電電極12が設置されると共に、オイルノズル11からはオイル供給手段3から供給されたオイル23が供給される。オイルノズル11から噴出されるオイル23は液状であるが、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間に高電圧発生装置13によって高電圧を印加することにより、オイル23が霧化されてオイルミスト6が生成されると同時に、生成されるオイルミスト6が帯電される。このとき、図2に示すように、オイルノズル11側にマイナス極が接続されているため、生成されるオイルミスト6はマイナスの電荷で帯電される。
【0026】
このように、本実施形態に係るオイルミスト生成装置1においては、マイナスの電荷により帯電したオイルミスト6が生成されることとなる。なお、生成されるオイルミスト6の粒子径は、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間に印加する電圧値によって変化するものであり、電圧値を高くするほど粒子径が小さくなるが、オイルミスト6としての適正な粒子径は、1μm以下である。これは、粒子径を1μm以下とすれば、オイルミスト6の付着性を低下させることができる。そして、オイルミスト6の粒子径をこの1μm以下とするために必要な電界値は、後述するように、約300〜400kV/mである。なお、オイルノズル11にプラス極、コロナ放電電極12にマイナス極を接続することにより、オイルミスト6をプラスの電荷で帯電させることもできる。
【0027】
次に、オイル供給手段3について説明すると、オイル供給手段3は、オイル23を貯留しておくオイルタンク20と、オイルタンク20のオイル23をオイルミスト生成帯電手段2に供給するための動力源であるオイル供給装置21と、両端がそれぞれオイルタンク20及びオイルノズル11の接続端部17に接続されると共にオイル23が通るオイル供給パイプ22と、から構成されている。
【0028】
上記したオイル供給装置21は、オイルタンク20から吸引したオイル23をオイル供給パイプ22を介してオイルノズル11に送り出すものであり、具体的には、定まった量のオイルを安定して供給することができる定量ポンプである静電ポンプ,ピストンポンプ,ギアポンプ,静圧ポンプ等が用いられ、必要とされるオイルミスト6の量やオイルミスト生成装置1の製造コスト等を勘案して選択されるものである。なお、本実施形態においては、上記した定量ポンプのうち、微少量のオイル23を供給することができるという点から、微少容量ポンプである静電ポンプを用いている。このように静電ポンプを用いて微少量のオイル23を供給することで、オイルミスト6の生成量も細かく調整することができるため、様々な種類の工作方法又は被潤滑部品に対して適用できるオイルミスト生成装置1を構成することができる。
【0029】
次に、エア供給手段4について説明すると、エア供給手段4は、エアを送り出す圧力空気源30と、圧力空気源30から送りだされるエアを清浄化するエアフィルター31と、圧力空気源30から送りだされるエアの圧力を調整するエアレギュレータ32と、オイルミスト生成部10のエア側端部14に接続されると共に、圧力空気源30から送りだされるエアが通るエア供給パイプ33と、から構成されている。上記した圧力空気源30は、内部圧力を高めることによりエア供給パイプ33を介してエアをオイルミスト生成部10に送り出す送風機等である。
【0030】
次に、オイルミスト搬送手段5について説明すると、オイルミスト搬送手段5は、その一端がオイルミスト生成部10のオイルミスト搬送側端部15に接続されると共に、オイルミスト生成帯電手段2により生成されたオイルミスト6を送るオイルミスト搬送管40と、オイルミスト搬送管40の他端に接続されると共に、オイルミスト搬送管40から送られたオイルミスト6を工作物52の加工部分又は被潤滑部品の潤滑点に噴射するためのオイルミスト噴射ノズル41とから構成されている。なお、このオイルミスト搬送管40は、帯電したオイルミスト6がその管内に付着することを防ぐために、電気絶縁材料を使用することが望ましい。
【0031】
しかして、上記のように構成されるオイルミスト生成装置1の作用について説明すると、まず、オイル供給装置21を稼動させることにより、オイルタンク20内のオイル23がオイル供給パイプ22を介してオイルノズル11内へ供給される。オイルノズル11内へ供給されたオイル23は、オイル噴出し口16からコロナ放電電極12に向けて噴出される。このとき、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間には、前述したように、高電圧発生装置13により高電圧が印加されており、この高電圧によってコロナ放電が発生している。そして、オイル噴出し口16から噴出されるオイル23が図2で説明した原理により、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間のコロナ放電で霧化されることにより、マイナスの極性で帯電されたオイルミスト6が生成される。
【0032】
また、オイルミスト生成部10のエア側端部14には、前述したように、エア供給パイプ33が接続されており、圧力空気源30から送り出されるエアがエア供給パイプ33を介してオイルミスト生成部10内に供給されるため、この供給されたエアによって、生成されたオイルミスト6がオイルミスト生成部10のオイルミスト搬送側端部15に向けて送り出されることとなる。そして、オイルミスト搬送側端部15に向けて送り出されたオイルミスト6は、オイルミスト搬送側端部15に接続されたオイルミスト搬送管40を介してオイルミスト噴射ノズル41に送り出される。
【0033】
このオイルミスト噴射ノズル41は、図1に示すように、工作物52と工作機械主軸50によって回転するドリル51とが接する箇所、即ち、工作物52の加工時の加工部分にその噴射部42を向けて設置されている。そして、噴射部42から噴射されたオイルミスト6が工作物52の加工時の加工部分に付着することにより、工作物52とドリル51との間の潤滑や加工時の発熱に対する冷却が行なわれる。
【0034】
なお、上記した実施形態(第1実施形態)は、工作物52又はドリル51を帯電させるものではないが、オイルミスト6と同様に工作物52又はドリル51を帯電させるものであってもよい。このような実施形態(第2実施形態)について図3を参照して説明する。図3は、第2実施形態に係るオイルミスト生成装置1の構成を示す概略図である。なお、第1実施形態に係るオイルミスト生成装置1と同様の機能を有する部材には、同様の符号を付してある。また、第2実施形態に係るオイルミスト生成装置1は、逆極性帯電手段7が備えられている以外は、第1実施形態に係るオイルミスト生成装置1と同様であるため、逆極性帯電手段7以外の構成については説明を省略する。
【0035】
第2実施形態に係るオイルミスト生成装置1は、図3に示すように、逆極性帯電手段7が備えられている。この逆極性帯電手段7は、工作物52とコロナ放電電極12との間に接続されて、工作物52とコロナ放電電極12との間に電圧を印加する帯電用電圧発生装置55によって構成されるものである。この帯電用電圧発生装置55は、図3に示すように、工作物52側にプラス極が、オイルミスト生成部10側にマイナス極がそれぞれ接続されているため、工作物52には、プラスの電荷で帯電されるようになっている。
【0036】
ここで、前述したように、オイルミスト生成帯電手段2においては、オイルノズル11側には、高電圧発生装置13のマイナス極が接続されているため、生成されるオイルミスト6はマイナスの電荷で帯電されている。このため、上記のようにプラスの電荷で帯電されている工作物52に対して付着しやすくなる。このように、マイナスの電荷で帯電されているオイルミスト6と逆の極性であるプラスの電荷で工作物52を帯電することにより、工作物52へのオイルミスト6の付着性が向上するため、作業環境中に放出される無駄なオイルミスト6を低減させることができ、霧害を低減することができる。
【0037】
なお、上記のように工作物52ではなく、ドリル51に対してプラスの電荷で帯電することにより、ドリル51へのオイルミスト6の付着性が向上するため、上記と同様の効果を奏することができる。
【0038】
また、工作物52の加工時ばかりでなく、潤滑を要する被潤滑部品の潤滑点にオイルミスト6を供給する場合に、この被潤滑部品をプラスの電荷で帯電することにより、被潤滑部品へのオイルミスト6の付着性が向上するため、上記と同様の効果を奏することができる。
【0039】
以上、第1実施形態及び第2実施形態について説明したが、上記した第1実施形態及び第2実施形態では、生成したオイルミスト6をオイルミスト搬送手段5のオイルミスト噴射ノズル41によって工作物52の加工部分に搬送するものであったが、このようなものに限らず、オイルミスト6がドリル51等の加工工具の内部を通って加工部分に供給されるようなものであってもよい。このような実施形態(第3実施形態)について図4を参照して説明する。図4は、第3実施形態に係るオイルミスト生成装置1の構成を示す概略図である。なお、第1実施形態に係るオイルミスト生成装置1と同様の機能を有する部材には、同様の符号を付してある。また、第3実施形態に係るオイルミスト生成装置1は、オイルミスト搬送手段5がオイルミスト搬送管40のみによって構成されると共に、このオイルミスト搬送管40が工作機械に接続されている以外は、第1実施形態に係るオイルミスト生成装置1と同様であるため、逆極性帯電手段7以外の構成については説明を省略する。
【0040】
第3実施形態に係るオイルミスト生成装置1は、オイルミスト搬送手段5のオイルミスト搬送管40が工作機械に接続されている。より詳細には、図4に示すように、工作機械の工作機械主軸50及びドリル51には、オイルミスト6が送られるオイルミスト供給通路53が形成されており、オイルミスト搬送管40は、このオイルミスト供給通路53の工作機械主軸50側の端部に接続されている。オイルミスト供給通路53は、工作機械主軸50からドリル51の先端に亘って挿通して形成されるものであり、ドリル51側の端部は、オイルミスト6を加工部分に供給するためのオイルミスト供給穴54として、外部と挿通して形成されている。
【0041】
しかして、オイルミスト生成帯電手段2で生成されたオイルミスト6は、オイルミスト搬送管40を介してオイルミスト供給通路53内へ送り出された後、オイルミスト供給穴54から工作物52の加工部分に供給されることとなる。このように、オイルミスト6が工作機械主軸50及びドリル51の内部を通って工作物の加工部分に直接供給されるため、オイルミスト6の飛散をより抑制することができる。なお、この場合、第2実施形態と同様に工作物52にプラスの極性で帯電させることにより、工作物52へのオイルミスト6の付着性を向上させることができる。
【0042】
なお、上記した第1実施形態乃至第3実施形態に係るオイルミスト生成装置1では、オイルノズル11に対するコロナ放電電極12の設置方向が、エア供給手段4からオイルミスト生成帯電手段2内に送られるエアの方向とほぼ平行であるものを示したが、これに限らず、オイルノズル11に対するコロナ放電電極12の設置方向が、エア供給手段4からオイルミスト生成帯電手段2内に送られるエアの方向と直交する方向であってもよい。即ち、例えば、図3において、オイルミスト生成部10の上下方向にオイルノズル11及びコロナ放電電極12が設置されているものであってもよい。この場合、オイルノズル11からコロナ放電電極12に向けて噴射されるオイルミスト6の側方からエアが供給され、このエアによってオイルミスト6がオイルミスト搬送手段5側に送り出されるものであってもよい。もしくは、減圧してオイルミストを搬送してもよい。
また、オイルに限らず水、水溶性切削液等でもオイルと同様に霧化することができる。
【0043】
以上、第1実施形態乃至第3実施形態に係るオイルミスト生成装置1の構成について説明したが、次に、オイルミスト生成装置1を用いて行なった試験について、図5乃至図7を参照して説明する。試験の内容は、電界値を一定にしたときに生成されるオイルミスト6の粒子径の個数分布の測定試験及び電界値を変化させたときに生成されるオイルミスト6の電界値毎の平均粒子径の測定試験である。図5は、試験に用いたオイルミスト生成装置1の構造を示す断面図であり、図6は、電界値を一定にしたときに生成されるオイルミスト6の粒子径の個数分布を表す表とグラフであり、図7は、電界値を変化させたときに生成されるオイルミスト6の電界値毎の平均粒子径を表す表とグラフである。なお、いずれの試験も大気圧下、温度23℃、中空針状ノズル径0.3mm、使用したオイルはVG32である。
【0044】
まず、図5に示す、試験に用いたオイルミスト生成装置1は、上記したような、オイルノズル11に対するコロナ放電電極12の設置方向が、エア供給手段4からオイルミスト生成帯電手段2内に送られるエアの方向と直交する方向となっているものである。その構造の概略を説明すると、オイルミスト生成装置1のほぼ中央にオイルミスト生成部10が形成されており、このオイルミスト生成部10の上方に高電圧発生装置13が、下方にオイル供給装置(静電ポンプ)21がそれぞれ設けられている。また、オイルミスト生成装置1の下部であってオイル供給装置21の周回を取り囲む空間には、オイル23が貯留されている。
【0045】
上記したオイルミスト生成部10内部の上壁には、コロナ放電電極12が設けられると共に、オイルミスト生成部10の底面にはオイルノズル11の先端が臨んでいる。このオイルノズル11は、オイルミスト生成部10とオイル供給装置21との間に位置するものであり、オイル供給装置21によって吸い込まれたオイル23がオイルノズル11に送り出されるようになっている。
【0046】
また、図示しないが、オイルミスト生成部10の一端(図中、左側端部)には、オイルミスト生成部10に対して圧力空気源30から送り出されるエアが通るエア供給パイプ33が接続され、他端(図中、右側端部)には、生成されたオイルミスト6を搬送するためのオイルミスト搬送管40が接続されている。
【0047】
しかして、オイル供給装置21によってオイルノズル11に送り出されたオイル23は、オイルノズル11から供給される。オイルノズル11から供給されたオイル23は、高電圧発生装置13によってオイルノズル11とコロナ放電電極12との間に印加される高電圧によって発生するコロナ放電により霧化されると共に帯電される。これにより、帯電したオイルミスト6が生成されることとなる。
【0048】
このとき、オイル23は、オイルノズル11から上方のコロナ放電電極12に向けて噴射されるため、生成されるオイルミスト6も上方に向かうが、圧力空気源30からのエアが矢印Aで示す方向でオイルミスト6の側方に向けて送られるため、オイルミスト6は、図5のように、右側方のオイルミスト搬送管40に向けて送り出されることとなる。
【0049】
上記のようにして、オイルミスト生成装置1でオイルミスト6が生成されるが、電界値を320kV/mとした場合、生成されるオイルミスト6の粒子径は、図6に示す値となった。図6(A)に示すように、生成されたオイルミスト6のうち、710個のオイルミスト6の粒子径を計測したところ、0〜0.6μm未満及び0.9〜2.1μm未満の粒子径の度数(個数)は0、0.6〜0.7μm未満及び0.8〜0.9μm未満の粒子径の度数は230、0.7〜0.8μm未満の粒子径の度数は250であり、その個数分布は、それぞれ0%、32.39%、35.21%であった。そして、図6(B)がその個数分布をグラフにしたものである。このように、電界値を320kV/mとした場合に生成されるすべてのオイルミスト6は、その粒子径が0.6〜0.9μm未満で形成されるものであった。なお、上記の粒度分布及び平均粒子径の測定は、ANDERSEN社製 MODEL 3351で行った。
【0050】
次に、電界値を変化させた場合、生成されるオイルミスト6の平均粒子径は、図7に示す値となった。図7(A)に示すように、電界値を0kV/mから200kV/mの間は50kV/m間隔で、200kV/mから360kV/mの間は20kV/m間隔で段階的に高めた場合の13段階の平均粒子径は、それぞれ、2481.40μm,2428.59μm,・・・,0.38μmであった。そして、図7(B)が電界値の違いによる生成されるオイルミスト6の平均粒子径の違いをグラフにしたものである。なお、平均粒子径を算出するためのオイルミスト6のサンプル数はいずれも100個である。
【0051】
ここで、前述したように、生成されるオイルミスト6としての適正な粒子径は、1μm以下であるが、オイルミスト6の粒子径をこの1μm以下とするために必要な電界は、上記した試験結果から約300〜400kV/mである。
【0052】
以上、本実施形態に係るオイルミスト生成装置1は、コロナ放電によってオイルミスト6を生成するものであるため、オイルノズル11に供給されたオイル23の全量をオイルミスト6にすることができ、オイルミスト6の生成時のオイルロスを防ぐことができる。また、コロナ放電によってオイルミスト6を生成するものであるため、生成されるオイルミスト6の粒子径のバラツキを非常に小さくすることができ、これにより、オイルミスト6が供給点に達するまでにその経路内に付着することがなくなり、オイルミスト6の搬送時のオイルロスを防ぐことができる。
【0053】
このように、オイルミスト6の生成時及びオイルミスト6の搬送時におけるオイルロスを防ぐことができるため、必要最小限のオイル23を供給するだけで、オイルミスト6を供給点に安定して供給することができる。
【0054】
また、オイルノズル11とコロナ放電電極12との間に印加する電圧を変化させることにより、オイルミスト6の粒子径を変化させることができると共に、供給するオイル23の量を変化させることにより、生成されるオイルミスト6の量を変化させることができるため、加工方法の種類及び潤滑を必要とする部品の種類に合わせて最適なオイルミスト6の粒子径及びオイルミスト6の量とすることができる。従って、様々な種類の加工及び潤滑に適用することができる。
【0055】
また、コロナ放電により生成されたオイルミスト6は、帯電しているためオイルミスト6同士の凝集が起こりにくく、これにより、オイルミスト6の搬送経路途中での損失を更に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】オイルミスト生成装置の構成を示す概略図である。
【図2】コロナ放電によりオイルミストが生成される状態を示す概略図である。
【図3】第2実施形態に係るオイルミスト生成装置の構成を示す概略図である。
【図4】第3実施形態に係るオイルミスト生成装置の構成を示す概略図である。
【図5】試験に用いたオイルミスト生成装置の構造を示す断面図である。
【図6】電界値を一定にしたときに生成されるオイルミストの粒子径の個数分布を表す表とグラフである。
【図7】電界値を変化させたときに生成されるオイルミストの電界値毎の平均粒子径を表す表とグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1 オイルミスト生成装置
2 オイルミスト生成帯電手段
3 オイル供給手段
4 エア供給手段
5 オイルミスト搬送手段
6 オイルミスト
7 逆極性帯電手段
11 オイルノズル
12 コロナ放電電極(電極)
23 オイル
51 ドリル(加工工具)
52 工作物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを霧化することによりオイルミストを生成すると共に、生成したオイルミストを工作物の加工時の加工部分又は潤滑を要する被潤滑部品の潤滑点に供給するオイルミスト生成装置において、
オイルを噴射するオイルノズルにオイルを供給するオイル供給手段と、
前記オイルノズルと該オイルノズルから間隔を置いて設置された電極との間に印加される高電圧により発生するコロナ放電によって、前記オイルノズルから供給されたオイルを霧化することによりオイルミストを生成すると共に、生成したオイルミストを帯電させるオイルミスト生成帯電手段と、
該オイルミスト生成帯電手段によって生成されたオイルミストに向けてエアを供給するエア供給手段と、
該エア供給手段から供給されるエアの圧力によって、前記オイルミスト生成帯電手段により生成されたオイルミストが搬送されると共に、搬送されるオイルミストを前記加工部分又は前記潤滑点に搬送するオイルミスト搬送手段と、から構成されることを特徴とするオイルミスト生成装置。
【請求項2】
前記オイルミスト生成装置は、前記工作物又は該工作物を加工するための加工工具又は前記被潤滑部品を、帯電した前記オイルミストと逆の極性で帯電させる逆極性帯電手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のオイルミスト生成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−102831(P2006−102831A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289844(P2004−289844)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】