説明

オイルミスト除去機能を備えた空気調和機

【課題】放電極(オイルミスト荷電部)や接地極(オイルミスト捕集部)上にオイルミストが堆積することを防止し、メンテナンスを容易にすると共に、長期間にわたって優れた荷電効率及び捕集性能を維持できる、室内循環型も可能なオイルミスト除去機能を備えた空気調和機を提供する。
【解決手段】空気取入口と空気吐出口が設けられたケーシング13内に、オイルミストを含んだ空気が導入される空気導入部20と、放電極31と対極32によって形成されるイオン流場とクロスするように前記オイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストを空気イオンで荷電する荷電部30と、荷電部30の下流側に設置され、両側を正と負の高電圧スクリーン41a、41bで挟むことにより周囲の電界強度を高めたコイル42によって、前記荷電部30で荷電されたオイルミストを捕集する捕集部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルミスト除去機能を備えた空気調和機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の切削、研削を行なう機械加工工場では、加工部分の冷却や潤滑、加工精度の向上のために切削油をかけているが、摩擦熱や加工機械の高速回転によりオイルミストが大量に発生する。このオイルミストを除去するために、従来から、工場内に設置される各生産装置1に対して、特許文献1や特許文献2に示されているような静電気方式や濾過方式の局所排気処理用オイルミスト除去装置2を設置すると共に、全外気型空気調和機3を設置して、全外気によって全体換気を行う方法が採用されている(図16参照)。
【0003】
しかしながら、このような局所排気処理用オイルミスト除去装置2には、初期除去性能を維持するための適切なメンテナンスを実施する必要があったが、それがなされないため、除去装置として機能していない場合が多かった。また、このような除去装置を設置しても、工作機械の開放(隙間)部分や、加工物及び工具交換のための扉やカバーの開放時において、オイルミストが直接工場内に放出される場合があり、工場内にオイルミストが浮遊するという問題を引き起こしていた。
【0004】
さらに、オイルミストの吸引による作業者の健康被害、床面が滑り易くなることによる作業の安全性の問題、オイルミストの工場外への排出による大気汚染への影響等が懸念されている。また、図16に示すように、工場内に全外気型空気調和機3を設置し、全体換気方式を採用した場合には、オイルミストを排出するために温調した空気をすべて排気することになるため、エネルギーロスが大きいという問題点もあった。
【特許文献1】特開2001−137741号公報
【特許文献2】特開2003−185241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、近年、エネルギーロスの少ない室内循環型空気調和機を採用することが検討されているが、この場合、工場内が換気されないため、工場内の環境悪化が懸念される。このような環境悪化を防止するため、オイルミスト除去装置として室内循環型の静電気方式のものが一般的に多く使用されている(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、このような室内循環型の静電気方式オイルミスト除去装置を採用した場合、放電極や接地極上にオイルミストが短時間に堆積して捕集性能が低下するため、その性能維持のために頻繁に電極をクリーニングする必要があった。また、従来、工場内を温調するための室内循環型空気調和機は、オイルミストの付着により冷温水コイルが汚れるため、頻繁にメンテナンスを行う必要があった。
【0007】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、放電極(オイルミスト荷電部)や接地極(オイルミスト捕集部)上にオイルミストが堆積することを防止し、メンテナンスを容易にすると共に、長期間にわたって優れた荷電効率及び捕集性能を維持できる、室内循環型も可能なオイルミスト除去機能を備えた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機は、空気取入口と空気吐出口が設けられたケーシング内に、オイルミストを含んだ空気が導入される空気導入部と、放電極と対極によって形成されるイオン流場とクロスするように前記オイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストを空気イオンで荷電する荷電部と、該荷電部の下流側に設置された周囲の電界強度を高めたコイルによって、前記荷電部で荷電されたオイルミストを捕集する捕集部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
上記のような構成を有する請求項1に記載の発明によれば、放電極と対極の間に形成されるイオン流場とクロスするようにオイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストと空気イオンの衝突確率を向上させ、オイルミストを効率良く帯電させることができる。
【0010】
また、コイルの周囲に大きな電位勾配(電界)をつくることにより、荷電されたオイルミストは上流側の高電圧スクリーンと接地されたコイルのコイルフィンの縁との間にできた電界によるクーロン力で、コイルフィンの縁にまず捕集される。残りは、オイルミストと反対極性の下流側の高電圧スクリーンによりコイルフィン間に誘引され、下流側の高電圧スクリーンに捕集される前に、コイルフィンと荷電されたオイルミストとの間に働くクーロン力により捕集される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機において、前記荷電部は、柱状の放電極取付棒に複数対の放電極が上下方向に所定の間隔をあけて取り付けられると共に、前記放電極取付棒及び前記放電極が筒状の放電極保護管内に収納され、前記放電極保護管には、その内部に収納された放電極の先端部に対応する位置に穴部が形成され、前記穴部と対向する位置には接地された対極が設けられ、前記放電極取付棒には高電圧発生装置が接続され、前記放電極保護管内には、清浄空気供給装置により清浄化された空気が供給されるように構成され、前記穴部により前記放電極と前記対極の間にイオン流場が形成されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は荷電部の構成を具体的に規定したものであって、高電圧発生装置に接続された放電極からは該高電圧発生装置と同極性の空気イオンが発生し、放電極と対極の間にイオン流場が形成される。このイオン流場とクロスするようにオイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストと空気イオンの衝突確率を向上させ、オイルミストを効率良く帯電させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機において、前記捕集部は、接地されたコイルと、その上流側及び下流側に配設された高電圧スクリーンとから構成され、前記コイルの上流側の高電圧スクリーンには、前記放電極取付棒に印加される電圧と同極性の高電圧発生装置が接続され、前記コイルの下流側の高電圧スクリーンには、前記放電極取付棒に印加される電圧と反対極性の高電圧発生装置が接続されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は捕集部の構成を具体的に規定したものであって、接地されたコイルの上流側の高電圧スクリーンに、放電極取付棒に印加される電圧と同極性の高電圧を印加すると共に、該コイルの下流側の高電圧スクリーンには、放電極取付棒に印加される電圧と反対極性の高電圧を印加して、大きな電位勾配(電界)をつくることにより、荷電されたオイルミストは上流側の高電圧スクリーンと接地されたコイルのコイルフィンの縁との間にできた電界によるクーロン力で、コイルフィンの縁にまず捕集される。残りは、オイルミストと反対極性の下流側の高電圧スクリーンによりコイルフィン間に誘引され、下流側の高電圧スクリーンに捕集される前に、コイルフィンと荷電されたオイルミストとの間に働くクーロン力により捕集される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機において、前記穴部の断面形状がテーパー状とされ、前記放電極保護管の内側の径に対して外側の径が大きくなるように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
上記のような構成を有する請求項4に記載の発明によれば、断面形状がテーパー状に形成された穴部の内側の径でシースエアの速度を速めてシースエア効果を高めると同時に、外側のより大きい径で電極先端の電界強度を高め、より低い印加電圧で多量のイオンを発生させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機において、前記対極は、所定の幅のスリットを有するスクリーン状に構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機において、前記対極は、格子状に構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
上記のような構成を有する請求項5あるいは請求項6に記載の発明は、対極の構造を具体的に規定したものであって、対極をスリットを有するスクリーン状または格子状にして、その面積をできるだけ小さく構成することにより、対極でのオイルミストの捕集量を最小にすることができるので、対極が汚れにくくなり、頻繁に洗浄や清掃等を実施する必要がなくなる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項2乃至請求項6のいずれか一に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機において、前記清浄空気供給装置と前記荷電部とが一体化して構成されていることを特徴とするものである。
上記のような構成を有する請求項7に記載の発明によれば、荷電部の構成、ひいては本空気調和機の構成をよりコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、放電極(オイルミスト荷電部)や接地極(オイルミスト捕集部)上にオイルミストが堆積することを防止し、メンテナンスを容易にすると共に、長期間にわたって優れた荷電効率及び捕集性能を維持できる、室内循環型も可能なオイルミスト除去機能を備えた空気調和機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るオイルミスト除去機能を備えた室内循環型空気調和機(以下、本空気調和機という)の具体的な実施の形態(以下、実施形態という)を、図面を参照して説明する。
【0023】
(1)構成
(1−1)オイルミスト除去機能付き空気調和機の構成
図1に示すように、本空気調和機10は、その両端に空気取入口11と空気吐出口12が設けられたケーシング13内に、大別して、空気導入部20、荷電部30、捕集部40及び送風機50を配置してなるものである。
【0024】
すなわち、本空気調和機10は、空気取入口11を介してケーシング13内に該空気調和機が設置される工場内のオイルミストを含んだ空気が導入される空気導入部20と、後述するような構成を有する放電極31と対極(接地極)32によって形成されるイオン流場とクロスするように前記オイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストを空気イオンで高効率に荷電する荷電部30と、該荷電部30の下流側に設置され、両側を正と負の高電圧スクリーン41a、41bで挟むことにより周囲の電界強度を高めた冷温水コイル42によって、前記荷電部30で荷電されたオイルミストを高効率で捕集する捕集部40と、工場内のオイルミストを含んだ空気を本空気調和機10内に導入すると共に、オイルミストを除去した空気を空気吐出口12から再度工場内に給気する送風機50とから構成されている。
【0025】
また、前記荷電部30には、清浄空気供給装置60から清浄空気が供給されるように構成され、前記冷温水コイル42の上流側には、自動洗浄装置43が配設されると共に、冷温水コイル42の下流側には、エリミネーター47が配設されている。なお、図2は、本空気調和機10を金属加工工場等に設置した場合の全体構成を示したものである。以下、本空気調和機10の各部の構成について詳述する。
【0026】
(1−2)オイルミストの荷電部の構成
本空気調和機10の荷電部30は、以下のように構成されている。すなわち、図1、図3及び図4に示すように、四角柱状の放電極取付棒33には、隣接する2側面に複数対の放電極31が上下方向に所定の間隔をあけて取り付けられ、さらに、これらの放電極取付棒33及び放電極31は、円筒状の放電極保護管34内に収納されている。また、前記放電極取付棒33は、負の高電圧発生装置36に接続されている。
【0027】
また、前記放電極保護管34には、その内部に収納された放電極31の先端部に対応する位置に穴部35が形成され、この穴部35が清浄空気吹出口となって、前記清浄空気供給装置60により清浄化された空気を、放電極31の周囲に該放電極31を包むように供給することができるように構成されている。これにより、清浄空気によってオイルミストを含む空気をパージして、オイルミストの放電極31上への堆積を防止することができるように構成されている。
【0028】
なお、図4に示すように、前記穴部35の断面形状はテーパー状とされ、放電極保護管34の内側の径に対して外側の径が大きくなるように構成されている。これにより、内側の径でシースエアの速度を速めてシースエア効果を高めると同時に、外側のより大きい径で電極先端の電界強度を高め、より低い印加電圧で多量のイオンを発生させることができるように構成されている。電極先端から見える対極の面積が広いほど、電極先端の電界強度が上がるからである。
【0029】
一方、前記放電極保護管34に形成された穴部35の向い側には、所定の幅のスリット32aを有するスクリーン状の対極(接地極)32が設けられている。これにより、図4に示すように、放電極31と対極32の間にイオン流場を形成し、そこをクロスするようにオイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストと空気イオンの衝突確率を向上させ、荷電効率をアップすることができるように構成されている。
【0030】
なお、図5(A)は、前記スリット32aを有するスクリーン状の対極32と放電極保護管34及び放電極31の位置関係を示す平面図であり、図5(B)は、前記スリット32aを有するスクリーン状の対極32の断面図である。また、対極(接地極)32の形状は、上述したようなスリット32aを有するスクリーン状に限定されるものではなく、図6(A)(B)に示すように、格子状としても良い。
【0031】
(1−3)清浄空気供給装置
前記荷電部30に清浄空気を供給する清浄空気供給装置60は、外気をフィルタによって清浄処理する外気処理装置であり、図1に示すように、プレフィルタ61、中性能フィルタ62及び送風機63から構成されている。そして、この清浄空気供給装置60によって得られた清浄空気は、給気ダクト64を介して、本空気調和機10の上方から前記放電極保護管34内に供給されるように構成されている。
【0032】
(1−4)オイルミストの捕集部
本空気調和機10の捕集部40は、以下のように構成されている。すなわち、冷温水コイル42はアルミニウム製等のコイルフィン(図示せず)が複数枚等間隔に配置されて構成され、冷温水コイル42の下部から冷温水が供給され、上部より排出されるように構成されている。
【0033】
また、図1に示すように、冷温水コイル42の上流側及び下流側には、高電圧スクリーン41a、41bが設置され、上流側の高電圧スクリーン41aには負の高電圧発生装置44aが接続され、下流側の高電圧スクリーン41bには正の高電圧発生装置44bが接続されている。
【0034】
また、冷温水コイル42の上流側には、該冷温水コイル42に捕集されたオイルミストを除去するために自動洗浄装置43が設置されている。この自動洗浄装置43には、洗浄水を供給する洗浄水送水管43a、及び、供給された洗浄水を冷温水コイル42に吹き付ける噴射ノズル43bが取り付けられ、前記噴射ノズル43bを上下方向あるいは横方向に往復移動させることができるように構成されている。
【0035】
なお、前記高電圧スクリーン41a、41bは、図7(A)〜(C)に示すように、四角形状の網目構造を有するスクリーン45aをスクリーン枠46に固定したもの、あるいは、縦縞又は横縞の網目構造を有するスクリーン45b、45cをスクリーン枠46に固定したものが用いられる。また、図8(A)〜(C)に示すように、菱形状の網目構造を有するスクリーン45dをスクリーン枠46に固定したもの、網目形状が右斜線又は左斜線のスクリーン45e、45fをスクリーン枠46に固定したもの、あるいは、図9に示すように、複数個のパンチング穴を有するスクリーン45gをスクリーン枠46に固定したものなどが用いられる。
【0036】
(2)作用
上記のような構成を有する本実施形態のオイルミスト除去機能を備えた室内循環型空気調和機は、以下のように作用する。
【0037】
すなわち、図1及び図2に示すように、ケーシング13の一端に設けられた空気取入口11からオイルミストを含む空気がケーシング13内に導入される(空気導入部20)。このオイルミストを含む空気は、送風機50によってケーシング13内を荷電部30方向に移動する。
【0038】
一方、荷電部30においては、図4に示すように、負の高電圧発生装置36に接続された放電極31からは負の空気イオンが発生し、放電極31と対極32の間にイオン流場が形成される。このイオン流場とクロスするようにオイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストと空気イオンの衝突確率を向上させ、オイルミストを効率良く帯電させることができる。
【0039】
なお、この場合、荷電されたオイルミストを対極32に誘引し捕集することにより、対極32が汚れ、頻繁に洗浄や清掃等が必要になることが懸念されるが、荷電されたオイルミストはイオンに比べてはるかに粒子径が大きく、電気的移動度が非常に小さいため、気流に流されて対極32にあまり捕集されない。
【0040】
また、荷電されていないオイルミストは、対極32に慣性衝突して捕集される可能性はあるものの、本実施形態においては、対極を図5(B)や図6(B)に示すようにスリットを有するスクリーン状または格子状にして、対極の面積をできるだけ小さく構成することにより、対極でのオイルミストの捕集量を最小にしているので、対極が汚れ、頻繁に洗浄や清掃等を実施する必要がない。
【0041】
続いて、荷電部30において負に荷電されたオイルミストは捕集部40に運ばれる。ここで、冷温水コイル42における荷電されたオイルミストの捕集原理について、図10を参照して説明する。
【0042】
すなわち、荷電部30において負イオンによりオイルミストが荷電される場合には、冷温水コイル42の上流側に設置された高電圧スクリーン41aは、負に帯電したオイルミストを捕集しないようにするため負電圧が印加されている。一方、下流側に設置された高電圧スクリーン41bは冷温水コイル前後の電界強度を高めるために、上流側の高電圧スクリーン41aと反対極性の正電圧が印加されている。
【0043】
このように冷温水コイル42の上流側の高電圧スクリーン41aにオイルミストと同極の負の高電圧を印加し、下流側の高電圧スクリーン41bに反対極の正の高電圧を印加して、大きな電位勾配(電界)をつくることにより、荷電されたオイルミストは上流側の高電圧スクリーン41aと接地された冷温水コイル42のコイルフィン48の縁との間にできた電界によるクーロン力で、コイルフィン48の縁にまず捕集される。
【0044】
残りは、オイルミストと反対極の下流側の高電圧スクリーン41bによりコイルフィン間に誘引され、下流側の高電圧スクリーン41bに捕集される前に、コイルフィン48と荷電されたオイルミストとの間に働くクーロン力により捕集される。これは、単に接地されたコイルフィン48と荷電されたオイルミストとの間に生じる鏡像力ではない。
【0045】
このようにしてコイルフィン48にオイルミストが捕集された空気は、冷温水コイル42を通り抜けて清浄な空気となり、空気吐出口12から工場内の作業空間に供給される。
【0046】
なお、オイルミストを捕集した冷温水コイル42表面にはオイルミストが付着するが、自動洗浄装置43が噴射ノズル43bから洗浄水を間欠的に噴射して定期的に洗浄する。しかも、自動洗浄装置43は噴射ノズル43bが上下方向あるいは左右方向に往復移動するため、冷温水コイル42全体をまんべんなく洗うことができ、冷温水コイル42へのオイルミストの残留を防止することができる。その結果、冷温水コイル42は常に清浄な状態を保つことができ、冷温水コイル42によるオイルミストの捕集効率を高いレベルで維持することが可能となる。
【0047】
さらに、本実施形態においては、冷温水コイル42と送風機50との間にエリミネーター47を設けることにより、上記洗浄水の飛散を防止するという作用効果が得られる。
【0048】
また、本実施形態においては、冷温水コイルを用いることにより、本空気調和機が設置される工場内における空調設定温度に合わせて、適宜、該冷温水コイルに冷水あるいは温水を供給することにより、オイルミストを除去するだけでなく、工場内の空調の効率化が図れる。
【0049】
(3)効果
上述したように、本実施形態のオイルミスト除去機能を備えた室内循環型空気調和機においては、オイルミストの荷電効率を上げるために、放電極保護管34に形成した清浄空気吹出口の向い側にスクリーン状または格子状の対極(接地極)32を設けることにより、放電極31と対極32の間にイオン流場を形成し、そこをクロスするようにオイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストと空気イオンの衝突確率を向上させ、荷電効率を大幅に向上させることができる。
【0050】
また、放電極31の周囲に清浄空気を供給すると共に、冷温水コイル42を自動洗浄することによりローメンテナンスを実現し、オイルミストを含む空気をイオン流場とクロスして流すことによる荷電部30の高効率化と、冷温水コイル42の周囲の電界強度を強くすることによる捕集部40の高効率化により、オイルミストの除去効率を大幅に向上させることができる。
【0051】
このように本空気調和機は、高効率でオイルミストを捕集でき、且つ、ローメンテナンスであるので室内循環型とすることができるので、従来のように温調した工場内の空気をすべて排気する必要がないため、大幅な省エネルギー化が可能となる。また、従来の室内循環型空気調和機を採用する場合に比べて、工場内の環境を大幅に改善することができる。
【0052】
(4)他の実施形態
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、具体的な各部材の形状、あるいは取付位置及び方法は適宜変更可能である。例えば、対極の断面形状は、上述したようなスリットを有するスクリーン状や格子状に限定されるものではなく、図11(A)(B)に示すように、楕円形あるいは円形のパンチング穴を複数個形成したものを用いても良い。
【0053】
また、対極の形状は、図5、図6あるいは図11に示すような平板状に限定されるものではなく、図12又は図13に示すように、放電極保護管34の半円部分に沿った波状とすることもできる。これにより、オイルミストと空気イオンとの衝突確率がさらに向上するという作用効果が得られる。
【0054】
また、図14に示すように、放電極31が電極取付棒33の対向する2側面に設置されている場合には、対極として垂直の板や四角形状の棒や丸棒を用い、この対極を互いに隣接する放電極保護管34の間に配設しても良い。これにより、オイルミストの対極前での滞留時間が短くなるため、オイルミストの対極への捕集効率が低下し、対極の汚れを軽減できるという作用効果が得られる。
【0055】
さらに、上記の実施形態では、電極取付棒33に取り付ける放電極31をそれぞれ一対としたが、図15に示すように、該空気調和機の設計条件に合わせて1つずつとしても良い。また、前記清浄空気供給装置と前記荷電部とを一体化して構成しても良い。これにより、構成の簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るオイルミスト除去機能付き空気調和機の構成を示す図。
【図2】本発明に係るオイルミスト除去機能付き空気調和機を金属加工工場等に設置した場合の全体構成を示す図。
【図3】荷電部の構成を示す斜視図。
【図4】荷電部における作用を示す図。
【図5】(A)は、荷電部を構成する対極と放電極保護管及び放電極の位置関係を示す平面図、(B)は、対極の断面図。
【図6】(A)は、荷電部を構成する対極と放電極保護管及び放電極の位置関係の変形例を示す平面図、(B)は、対極の断面図。
【図7】(A)は、高電圧スクリーンの構成を示す平面図、(B)(C)は、スクリーン部分の変形例を示す図。
【図8】(A)は、高電圧スクリーンの構成を示す平面図、(B)(C)は、スクリーン部分の変形例を示す図。
【図9】高電圧スクリーンの構成を示す平面図。
【図10】冷温水コイルにおける荷電されたオイルミストの捕集原理を示す図。
【図11】(A)は、荷電部を構成する対極と放電極保護管及び放電極の位置関係の変形例を示す平面図、(B)は、対極の断面図。
【図12】荷電部を構成する対極と放電極保護管及び放電極の位置関係の変形例を示す平面図。
【図13】荷電部を構成する対極と放電極保護管及び放電極の位置関係の変形例を示す平面図。
【図14】荷電部を構成する対極と放電極保護管及び放電極の位置関係の変形例を示す平面図。
【図15】荷電部を構成する対極と放電極保護管及び放電極の位置関係の変形例を示す平面図。
【図16】従来の全外気型空気調和機を金属加工工場等に設置した場合の全体構成を示す図。
【符号の説明】
【0057】
10…オイルミスト除去機能を備えた室内循環型空気調和機
11…空気取入口
12…空気吐出口
13…ケーシング
20…空気導入部
30…荷電部
31…放電極
32…対極
33…電極取付棒
34…放電極保護管
35…穴部
36…高電圧発生装置
40…捕集部
41…高電圧スクリーン
42…冷温水コイル
43…自動洗浄装置
44…高電圧発生装置
47…エリミネーター
48…コイルフィン
50…送風機
60…清浄空気供給装置
61…プレフィルタ
62…中性能フィルタ
63…送風機
64…給気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気取入口と空気吐出口が設けられたケーシング内に、
オイルミストを含んだ空気が導入される空気導入部と、
放電極と対極によって形成されるイオン流場とクロスするように前記オイルミストを含んだ空気を流すことにより、オイルミストを空気イオンで荷電する荷電部と、
該荷電部の下流側に設置された周囲の電界強度を高めたコイルによって、前記荷電部で荷電されたオイルミストを捕集する捕集部と、を備えたことを特徴とするオイルミスト除去機能を備えた空気調和機。
【請求項2】
前記荷電部は、
柱状の放電極取付棒に複数対の放電極が上下方向に所定の間隔をあけて取り付けられると共に、前記放電極取付棒及び前記放電極が筒状の放電極保護管内に収納され、
前記放電極保護管には、その内部に収納された放電極の先端部に対応する位置に穴部が形成され、
前記穴部と対向する位置には接地された対極が設けられ、
前記放電極取付棒には高電圧発生装置が接続され、
前記放電極保護管内には、清浄空気供給装置により清浄化された空気が供給されるように構成され、
前記穴部により前記放電極と前記対極の間にイオン流場が形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機。
【請求項3】
前記捕集部は、接地されたコイルと、その上流側及び下流側に配設された高電圧スクリーンとから構成され、
前記コイルの上流側の高電圧スクリーンには、前記放電極取付棒に印加される電圧と同極性の高電圧発生装置が接続され、
前記コイルの下流側の高電圧スクリーンには、前記放電極取付棒に印加される電圧と反対極性の高電圧発生装置が接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機。
【請求項4】
前記穴部の断面形状がテーパー状とされ、前記放電極保護管の内側の径に対して外側の径が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機。
【請求項5】
前記対極は、所定の幅のスリットを有するスクリーン状に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機。
【請求項6】
前記対極は、格子状に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機。
【請求項7】
前記清浄空気供給装置と前記荷電部とが一体化して構成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれか一に記載のオイルミスト除去機能を備えた空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−183807(P2009−183807A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23209(P2008−23209)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000236160)株式会社テクノ菱和 (50)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】