説明

オキシランをカルボニル化するための触媒及び方法

ラクトンの製造方法は、オキシランの接触カルボニル化により行い、その際、触媒として、
a) 成分Aとして少なくとも1種のコバルト化合物及び
b) 成分Bとして一般式(I)
MXn−x (I)
[式中、
Mは、アルカリ土類金属又は元素周期表の3、4又は12又は13族の金属を表し、
Rは、水素又は炭化水素基(この炭化水素基はMと結合する炭素原子以外の炭素原子で置換されていてもよい)を表し、
Xは、アニオンを表し、
nは、Mの原子価に相当する数を表し、
xは、0〜nの範囲内の数を表し、
その際、n及びxは、電荷中性が生じるように選択される]の少なくとも1種の金属化合物
からなる触媒系を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒系の存在でオキシランを接触カルボニル化することによるラクトンの製造、相応する触媒系及びその使用に関する。
【0002】
単純な及び置換されたオキシランの接触カルボニル化は自体公知である。この生成物は所望のラクトンではないことが多いか、又はこの反応実施又は出発物質はラクトンの有効な製造又は単離を行えないことが多い。この場合に、頻繁にこれらの化合物は煩雑でかつコストのかかる合成によってのみ得ることができる。
【0003】
JP-A-09 169 753では、触媒としてCoCOを用いて流通式反応器中でエポキシドをカルボニル化してラクトンにすることが記載されている。転化率は30%にすぎない。これは、ラクトンの高い収率及び純度を達成するために分離装置及び返送装置が必要であることを意味する。
【0004】
GB-A-1,020,575はβ−ラクトンのポリマーの製造方法に関する。一酸化炭素と1,2−エポキシドとを、中間生成物としてβ−ラクトンの形成のために反応させる。この場合、オクタカルボニル二コバルトを触媒として使用する。更に、金属ハロゲン化物、例えばヨウ化カリウム及び第4級アンモニウムハロゲン化物、例えばテトラエチルアンモニウムブロミドから選択される助触媒を使用することができる。しかしながら、ラクトンの収率は10%より低く、生成物の主要なフラクションはポリヒドロキシプロピオンエステルである。更に、この反応は複雑な方法で複数の圧力段階で行われる。
【0005】
EP-B-0 577 206は、コバルト源からの触媒系及びヒドロキシ置換ピリジン化合物、特に3−ヒドロキシピリジン又は4−ヒドロキシピリジンを用いたエポキシドのカルボニル化に関する。このカルボニル化は、有利にヒドロキシ化合物、例えば水又はアルコールの存在で実施される。使用した触媒の活性は比較的低く、かつラクトンの単離は記載されていない。更に、カルボニル化の完了の後に、反応混合物中で変化が生じていることが確認された。24時間内でラクトンの重合が行われている。このことから、反応混合物中のラクトンは非反応性ではないことが明らかである。更に、ラクトンはピリジンの影響下で重合することができることは公知である。
【0006】
Chemistry Letters 1980, p. 1549 - 1552は、触媒としてロジウム錯体を用いたエポキシドと一酸化炭素との反応に関する。この収率は最大70%である。
【0007】
J. Org. Chem. 2001, 66, p. 5424 - 5426では、コバルト及びルイス酸−触媒を用いたエポキシドのカルボニル化によるβ−ラクトンの合成を記載している。触媒として、PPNCo(CO)とBFEtOとからの系が使用される。この収率は、7〜86%である。しかしながら、この反応時間は7〜24時間であり、大量の触媒の使用が必要である。
【0008】
J. Am. Chem. Soc. 124, No. 7, 2002, p. 1174 - 1175には、エポキシドのカルボニル化によるβ−ラクトンの製造を記載している。触媒として、アルミニウム塩の塩とテトラカルボニルコバルト酸塩からの混合物が使用される。このアルミニウム化合物の取り扱い及び合成は費用がかかるため、この方法は大規模工業的に実施できない。
【0009】
本発明の課題は、エポキシドのカルボニル化によりラクトンを製造するための、費用がかからないかつ有効は方法を提供することであった。他の課題は、この反応のために適当な触媒系を提供することである。
【0010】
前記の課題は、本発明の場合に、オキシランの接触カルボニル化によるラクトンの製造方法において、触媒として、
a) 成分Aとして少なくとも1種のコバルト化合物及び
b) 成分Bとして一般式(I)
MXn−x (I)
[式中、
Mは、アルカリ土類金属又は元素周期表の3、4又は有利に12又は13族の金属を表し、
Rは、水素又は炭化水素基(この炭化水素基はMと結合した炭素原子以外の炭素原子で置換されていてもよい)を表し、
Xは、アニオンを表し、
nは、Mの原子価に相当する数を表し、
xは、0〜nの範囲内の数を表し、
その際、n及びxは、電荷中性が生じるように選択される]の少なくとも1種の金属化合物
からなる触媒系を使用することにより解決される。
【0011】
本発明は、更に上記に定義された触媒(但し、Al(C/Co(acac)の組み合わせは除外する)により解決される。
【0012】
この触媒系Al(C/Co(acac)は既に、Die Makromolekulare Chemie 89,1965, p. 263 - 268 に記載されている。この文献は、一酸化炭素とアルキレンオキシドとの共重合に取り組んでいる。ラクトンの形成は記載されていない。
【0013】
ラクトンは、生分解性ポリエステルの製造のための有用化合物である(例えばEP-A-0 688 806参照)。このポリエステルは、多様な分野、例えばポリウレタン製造の際のポリオールとして又は材料として使用される。
【0014】
本発明の場合に、コバルト化合物、特に低い酸化状態のコバルト化合物、及びオキシランを穏和にカルボニル化してラクトンにする金属化合物の組み合わせが、有効な触媒系を形成することが見出された。
【0015】
本発明により使用された触媒系中に、有利に成分A 1mol当たり、成分B 0.1〜1000mol、特に有利に1〜100molが存在する。
【0016】
有利に、成分Aは、反応条件下でコバルトカルボニル化合物が存在するように選択される。これは、成分Aとしてコバルトカルボニル化合物を直接使用することができるか、又は反応条件下でコバルトカルボニル化合物に変換される化合物を使用することができることを意味している。
【0017】
Rは、有利に水素又はC〜C32−アルキル、C20−アルケニル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C18−アリール、C〜C20−アラルキル又はC〜C20−アルカリールであり、その際、Mが結合した炭素原子を除き、炭素原子には置換基が存在していてもよい。Rは、有利に水素又はモノアニオン性ヒドロカルビル基、例えばC〜C32−アルキル、例えばメチル、エチル、i−又はn−プロピル、i−、n−又はt−ブチル、n−ペンチル又はn−ヘキシル、C〜C20−アルケニル、例えばプロペニル又はブテニル、C〜C20−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタジエニル又はシクロヘキシル、C〜C18−アリール、例えばフェニル又はナフチル、及びC〜C20−アリールアルキル、例えばベンジル(例えば、ヒドロカルビル基はアルキル、特に有利なヒドロカルビル基はメチル又はエチルである)。
【0018】
X=アニオン、例えばハロゲン化物(フルオロを除く)、スルホナート、酸化物、C〜C32−アルコキシド、アミド;有利なアニオンは、ハロゲン化物又はアルコキシド、特に有利にクロリド又はC〜C12−アルコキシドである。
【0019】
この場合、nは酸化状態OZもしくは金属の原子価に相当し、xはnと同じ値か又はそれより小さいが、負の数ではない(各オキシドリガンドについてx=x+1が通用する)。
【0020】
成分BはAlCl3−xが有利であり、その際、xは0〜3の数であり、RはC〜C−アルキルである。数n及びxは、この場合、整数値又は分数値であることができる。分数値は、相応する化合物の混合物の場合に生じることがある。
【0021】
場合により、成分A又はBは、中性の供与体Lを配位領域中に形成することができる。供与体Lは一般に、酸素、窒素又はリン原子を有する中性の化合物、例えばエーテル、炭酸塩、ケトン、スルホキシド、アミン、アミド、ホスファン、ニトロ−又はニトリルなどの官能基である。供与体Lは同様にオレフィン又は芳香族化合物であることもできる。
【0022】
もちろん、複数の異なる成分B及び/又はAの混合物を触媒系として利用することもできる。
【0023】
オクタカルボニル二コバルト及びトリメチルアルミニウム又はオクタカルボニル二コバルト及びトリエチルアルミニウム又はオクタカルボニル二コバルト及びトリ(sec−ブチル)アルミニウム、又はオクタカルボニル二コバルト及びトリスイソプロポキシアルミニウムの組み合わせが特に有利である。
【0024】
このカルボニル化は、一般に、高めた圧力で及び高めた温度で実施される。もちろん、大気の一酸化炭素圧でも生成物形成は観察される。圧力は一般にCO−ガスにより形成される。この圧力は、所定の場合に、不活性媒体、例えばアルゴン、窒素によって形成することもできる。この圧力は、この場合に、1〜250bar、有利に10〜100bar、特に有利に20〜60barである。この反応は、一般に−10〜200℃の温度で実施することができる。有利な温度は、20〜150℃、特に有利に40〜110℃である。
【0025】
エポキシドのカルボニル化は、段階的にも連続的方法でも実施することができる。このカルボニル化は、気相中でも、不活性反応媒体中でも実施することができる。この媒体は、一般に液体である。この媒体は通常の溶剤、例えばエーテル、ジグリム、テトラグリム、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、炭化水素、例えばヘキサン、オクタン、イソパラフィン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン;塩素化炭化水素、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン又は極性溶剤、例えばDMF、DMSO、エステル、ニトリル、ニトロ化合物、ケトン又はいわゆるイオン性液体である。有利な溶剤はDME、ジグリム、ジクロロメタンである。同様にオキシランを反応媒体として使用することもできる。
【0026】
触媒系を更に活性化するために、供与体リガンド、ホスファン又はニトリルを添加することもできる。触媒成分(例えばコバルト及びアルキル化合物)を粒子状の担持材料、例えばシリカ又は酸化アルミニウム上に設けることにより、気相カルボニル化の意味で、溶剤不含の反応実施も可能である。
【0027】
オキシラン化合物として、酸化エチレン並びに置換されたエポキシドが適している。これは、通常では次の一般式(II)に該当する化合物である:
【0028】
【化1】

【0029】
前記式中、基Rは相互に無関係に水素、ハロゲン、ニトロ基−NO、シアノ基−CN、エステル基−COOR又は1〜32個の炭素原子を有する炭化水素基(これは置換されていてもよい)を意味する。式(II)中で、基Rは完全に又は部分的に一致しているか又は4つの異なる基であることができる。RはC〜C12−アルキル、アリールであることができる。
【0030】
ジェミナルに置換されたエポキシド、特に有利にもっぱら1位で置換されたエポキシドが用いられる。
【0031】
適当な炭化水素基は、例えばC〜C32−アルキル、例えばメチル、エチル、i−又はn−プロピル、i−、n−又はt−ブチル、n−ペンチル又はn−ヘキシル、C〜C20−アルケニル、例えばプロペニル又はブテニル、C〜C20−シクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル、C〜C18−アリール、例えばフェニル又はナフチル、C〜C20−アリールアルキル、例えばベンジルである。この場合に、2つの基Rは、これらの基が相互にエポキシ基の異なるC原子に存在する場合に、相互に橋かけされていてもよくかつC〜C20−シクロアルキレン基を形成していてもよい。
【0032】
〜C32−炭化水素基が前記のRと同様に置換されていてもよい置換基として、特に次の基が挙げられる:ハロゲン、シアノ、ニトロ、チオアルキル、tert−アミノ、アルコキシ、アリールオキシ、アリールアルコキシ、カルボニルジオキシアルキル、カルボニルジオキシアリール、カルボニルジオキシアリールアルキル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールアルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アリールアルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル及びアリールアルキルスルホニル。
【0033】
オキシラン化合物として、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン(1−ブテンオキシド、BuO)、酸化シクロペンテン、酸化シクロヘキセン(CHO)、酸化シクロヘプテン、2,3−エポキシプロピルフェニルエーテル、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、i−ブテンオキシド(IBO)、酸化スチレン又はアクリルオキシドが有利に使用される。酸化エチレン(EO)、酸化プロピレン(PO)、酸化ブチレン又はi−ブテンオキシドが特に有利に使用され、更に特に有利に酸化エチレン及び酸化プロピレン又はこれらの混合物が使用される。
【0034】
本発明による方法のために使用すべきオキシラン化合物は、例えば末端オレフィンの当業者に公知のエポキシ化により得ることができる。エポキシ化が立体非特異的に進行する場合、ラセミ分割を行うことができる。ラセミ分割のための方法、例えばキラルのカラム材料を用いたHPLCクロマトグラフィーは、当業者に公知である。有利に、このオキシラン化合物は、末端オレフィンから出発して、定着したステレオ選択的方法を介して直接エナンチオマー純粋な形又は光学的に濃縮された形で製造される。適当な方法は、例えばいわゆるSharplessエポキシ化(J. Am. Chem. Soc. 1987 (109), p. 5765 ff.及び8120 ff.;並びに参照"Asymmetric Synthesis", Hrsg. J. D. Morrison, Academic Press, New York, 1985, 5巻, 7及び8章)である。
【0035】
更に、Jacobsen et al.著, Tetrahedron Lett.1997,38, p. 773 - 776;及びJ. Org. Chem. 1998,63, p. 6776 - 6777に記載された、大規模工業的に簡単に実施できる方法を用いて、末端オレフィンもしくはラセミの末端エポキシドから出発して、光学的に濃縮されたオキシラン化合物にすることができる(Acc. Chem. Res. 2000,33, p. 421 - 431参照)。
【0036】
光学的に濃縮されたオキシラン化合物は、エナンチオマー純粋なオキシラン化合物にラセミ体を相応する量で混合することにより製造することも可能である。
【0037】
末端に二重結合を有する化合物として、基本的にこの化合物種の全てのオレフィン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテンが挙げられる。
【0038】
一般に、この反応の実施の際に、まずコバルト錯体(A)及び例えばアルキル化合物(B)を個々に、同時に又は予め混合して、場合により冷却しながら反応容器内へ添加することから始める。オキシラン化合物は、反応容器中へ導入する前に、場合により既に触媒成分の溶液/懸濁液と混合することもできる。更に、このオキシラン化合物も反応容器中へ直接導入することもできる。有利に、カルボニル化は不活性条件下で、つまり水分及び空気の不在で実施される。
【0039】
ラクトンの分解、分離及び生成は、一般に公知の方法により実施することができる。例えば、このラクトンは蒸留又は結晶化により簡単に単離することができる。
【0040】
本発明による方法を用いて、エナンチオマー純粋なオキシラン化合物から出発して、相応する3−ヒドロキシプロピオン酸ラクトンが得られる。光学的に純粋な形で存在するオキシラン化合物を使用する場合には、ラクトンに達し、この場合に光学純度のグレードはオキシランにおけるグレードに直接対応する。こうして製造されたラクトンから出発して、生分解性ポリマーの種類の熱可塑性の特性プロフィールが製造され、この特性は極めて簡単でかつ所望の適用のために適切に調節することができる。
【0041】
本発明の利点は、カルボニル化触媒及び市販の触媒成分の簡単な運転法、高い活性及び高い生産性において示される。
【0042】
本発明は、成分A及びBを混合することによる本発明により使用される触媒の製造方法にも関する。更に、本発明はカルボニル化反応中での前記の触媒の使用にも関する。
【0043】
化学薬品
使用された化学薬品は、Fluka, AldrichもしくはMerck社から入手し、更に精製せずに使用した。この溶剤は、分子ふるいで乾燥させて得られ、かつ使用の前にそれぞれ脱ガスした。このAlアルキル化合物は溶剤としてトルエンを使用した。
【0044】
分析
NMR分光分析はBruker社のAMX 400で測定した。IR測定(KBr又は溶液として直接)は、Bruker社のIFS 113V及びIFS 66V装置で実施した。反応速度論の測定のためのオンラインIR試験のために、Mettler Toledo社のReact1RTM(Si CompTMDippersystem)を用いて作業した。
【0045】
一般的な方法:
ジグリム中のオクタカルボニル二コバルトCoCO(1eq)に、0℃でアルゴン雰囲気下で所望の量のエポキシド(表1〜4参照)を添加した。最終的に、タイプBの化合物(1〜6eq)を添加した(表1〜4参照)。
【0046】
鋼製オートクレーブ(100又は250ml)の充填のためにまず排気し、アルゴンガス流の下で原料を入れた。鋼製オートクレーブ中に導入した後、10〜65barの一酸化炭素圧を調節し、カルボニル化を所定の時間にわたり75〜105℃で維持した。このカルボニル化は、周囲の圧力に圧力低下させることにより中断され、得られた反応溶液を0℃に冷却した後にオートクレーブから取り出し、分析した。触媒の分離のために、得られた溶液をジエチルエーテル/ペンタンからなる混合物中に添加することができる。シリカゲルを介した濾過により、この触媒並びに最少量のポリマー割合が分離され、濾液の引き続く蒸留分離によりラクトンが純粋な形で生じた。
【0047】
本発明を以下の実施例により詳細に説明する:
実施例
実施例1:
オクタカルボニル二コバルトCoCO(260mg)をジグリム16ml中に溶かし、この溶液を0℃に冷却し、酸化プロピレン8mlを添加した。トルエン中のMeAlの2N溶液0.77mlの添加の後で、この反応溶液を、水分及び酸素の遮断下で、ガラススリーブを備えた鋼製オートクレーブ100ml中に導入した。カルボニル化反応はCO 60barで、5時間、75℃で実施した。このカルボニル化反応の中断を、周囲圧力に圧力低下させることにより行い、かつ0℃に冷却した。取り出された試料の分析(H−及び13C−NMR)は、エポキシドの完全なカルボニル化及び>95%のラクトン割合(副生成物はポリヒドロキシブチラート及びアセトン)を示した。
【0048】
実施例2:
IR−センサを備えた250mlの鋼製オートクレーブ中に、アルゴン下で、0℃で、オクタカルボニル二コバルトCoCO(780mg)をジグリム50ml中に溶かし、酸化プロピレン26mlを添加した。トルエン中のMeAlの2N溶液7mlの添加後に、CO 60barを圧入した。カルボニル化反応はCO 60barで、2時間、95℃で実施した。このカルボニル化反応の中断を、周囲圧力に圧力低下させることにより行い、かつ0℃に冷却した。取り出された試料の分析(H−及び13C−NMR)は、エポキシドの完全なカルボニル化及び>95%のラクトン割合(副生成物はポリヒドロキシブチラート及びアセトン)を示した。
【0049】
実施例3:
IR−センサを備えた250mlの鋼製オートクレーブ中に、アルゴン下で、0℃で、オクタカルボニル二コバルトCoCO(780mg)をジグリム50ml中に溶かし、酸化プロピレン26mlを添加した。トルエン中のMeAlの2N溶液7mlの添加後に、CO 10barを圧入した。カルボニル化反応はCO 10barで、4時間、75℃で実施した。反応の中断のために、圧力を周囲圧力にまで放出させ、かつ0℃に冷却した。取り出された試料の分析(H−及び13C−NMR)は、エポキシドの完全なカルボニル化及び>95%のラクトン割合(副生成物はポリヒドロキシブチラート及びアセトン)を示した。
【0050】
実施例4:
オクタカルボニル二コバルトCoCO(130mg)をジグリム8ml中に溶かし、この溶液を0℃に冷却し、ブチルオキシラン7mlを添加した。トルエン中のMeAlの2N溶液0.39mlの添加の後で、この反応溶液を、水分及び酸素の遮断下で、ガラススリーブを備えた鋼製オートクレーブ100ml中に導入した。カルボニル化反応はCO 60barで、14時間、75℃で実施した。このカルボニル化反応の中断を、周囲圧力に圧力低下させることにより行い、かつ0℃に冷却した。取り出された試料の分析(H−及び13C−NMR)は、エポキシドの約70%のカルボニル化及び>75%のラクトン割合を示した。
【0051】
実施例5:
オクタカルボニル二コバルトCoCO(130mg)及びテトラエチルアンモニウム−コバルトカルボニラートEtNCo(CO)(232mg)を、ジグリム10ml中に溶かし、この溶液を0℃に冷却し、酸化プロピレン6mlを添加した。アルミニウムイソプロポキシド(i−PrO)Alの添加の後に、この反応溶液を、水分及び酸素の遮断下で、ガススリーブを備えた鋼製オートクレーブに導入した。カルボニル化反応はCO 60barで、16時間、75℃で実施した。このカルボニル化反応の中断を、周囲圧力に圧力低下させることにより行い、かつ0℃に冷却した。取り出された試料の分析(H−及び13C−NMR)は、エポキシドのほぼ完全なカルボニル化及び>85%のラクトン割合(副生成物はポリヒドロキシブチラート及びアセトン)を示した。
【0052】
次の表中に、他の実験をまとめ、この表は、コバルト化合物と成分Bとの多様な組み合わせで短時間で高い転化率を達成することを示す。
【0053】
表1: Al成分のバリエーション
【0054】
【表1】

【0055】
表1からの全ての実施例は、ガラススリーブを備えた100mlの鋼製オートクレーブ中で実施した;転化率及びラクトン割合はNMR測定を用いて取り出した試料から測定した;副生成物はポリヒドロキシブチラート及び少量のアセトンである。
【0056】
表2: 圧力バリエーション
【0057】
【表2】

【0058】
表2からの全ての実施例は、ガラススリーブなしの250mlの鋼製オートクレーブ中でIR反応制御を用いて実施した;転化率及びラクトン割合はNMR測定を用いて取り出した試料から測定した;副生成物はポリヒドロキシブチラート及び少量のアセトンである。
【0059】
表3: 温度バリエーション
【0060】
【表3】

【0061】
表3からの全ての実施例は、ガラススリーブなしの250mlの鋼製オートクレーブ中でIR反応制御を用いて実施した;転化率及びラクトン割合はNMR測定を用いて取り出した試料から測定した;副生成物はポリヒドロキシブチラート及び少量のアセトンである。
【0062】
表4: エポキシド/触媒比のバリエーション
【0063】
【表4】

【0064】
表4からの全ての実施例は、ガラススリーブを備えた100mlの鋼製オートクレーブ中で実施した;転化率及びラクトン割合はNMR測定を用いて取り出した試料から測定した;副生成物はポリヒドロキシブチラート及び少量のアセトンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシランの接触カルボニル化によるラクトンの製造方法において、触媒として、
a) 成分Aとして少なくとも1種のコバルト化合物及び
b) 成分Bとして一般式(I)
MXn−x (I)
[式中、
Mは、アルカリ土類金属又は元素周期表の3、4又は12又は13族の金属を表し、
Rは、水素又は炭化水素基を表し、前記の炭化水素基はMと結合した炭素原子以外の炭素原子で置換されていてもよく、
Xは、アニオンを表し、
nは、Mの原子価に相当する数を表し、
xは、0〜nの範囲内の数を表し、
その際、n及びxは、電荷中性が生じるように選択される]の少なくとも1種の金属化合物
からなる触媒系を使用することを特徴とする、オキシランの接触カルボニル化によるラクトンの製造方法。
【請求項2】
反応条件下で、コバルトカルボニル化合物が存在するように成分Aを選択することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
一般式(I)中で、Mは、Al、Mg、Zn又はSnを表すことを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)中で、Rは水素又はC〜C32−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C18−アリール、C〜C20−アラルキル又はC〜C20−アルカリールを表し、その際、Mが結合した炭素原子以外の炭素原子に置換基が存在することができ、かつ/又はXはCl、Br、I、スルホナート、酸化物、C〜C32−アルコキシド又はアミドを表すことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
成分BはAlCl3−xであり、xは0〜3の数であり、RはC〜C−アルキルであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
Al(C/Co(acac)の組み合わせを除く、請求項1から5までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項7】
成分AとBとを混合することによる、請求項6記載の触媒の製造方法。
【請求項8】
カルボニル化反応のための、請求項6記載の触媒の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシランの接触カルボニル化によるラクトンの製造方法において、触媒として、
a) 成分Aとして少なくとも1種のコバルト化合物及び
b) 成分Bとして一般式(I)
MXn−x (I)
[式中、
Mは、Al、Mg又はZnを表し、
Rは、水素又はC〜C32−アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−シクロアルキル、C〜C18−アリール、C〜C20−アラルキル又はC〜C20−アルカリールを表し、その際、Mと結合した炭素原子以外の炭素原子に置換基が存在することができ、
Xは、Cl、Br、I、スルホナート、酸化物、C〜C32−アルコキシド又はアミドを表し、
nは、Mの原子価に相当する数を表し、
xは、0〜nの範囲内の数を表し、
その際、n及びxは、電荷中性が生じるように選択される]の少なくとも1種の金属化合物
からなる触媒系を使用することを特徴とする、オキシランの接触カルボニル化によるラクトンの製造方法。
【請求項2】
反応条件下で、コバルトカルボニル化合物が存在するように成分Aを選択することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
成分BはAlCl3−xであり、xは0〜3の数であり、RはC〜C−アルキルであることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
Al(C/Co(acac)の組み合わせを除く、請求項1から3までのいずれか1項記載の触媒。
【請求項5】
成分AとBとを混合することによる、請求項4記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
カルボニル化反応のための、請求項4記載の触媒の使用。

【公表番号】特表2006−500339(P2006−500339A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525400(P2004−525400)
【出願日】平成15年7月31日(2003.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008479
【国際公開番号】WO2004/012860
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】