説明

オゾンガス発生装置及びその製造方法

【課題】高純度で高濃度なオゾンガスを最初から安定して生成できるオゾンガス発生装置を提供する。
【解決手段】原料ガスに、高純度の酸素ガスを用いてオゾンガスを発生させるオゾンガス発生装置である。一対の電極14,14の各々の対向面側に、各々1つずつ誘電体13が設けられている。一対の誘電体13,13の間には、原料ガス供給経路とオゾンガス取出経路とが接続された放電空隙20が形成されている。一対の誘電体13,13には、放電空隙20に面する機能膜17が設けられている。機能膜17には酸化クロムが含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度オゾンガスの生成に適したオゾンガス発生装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンウエハの洗浄等に用いるために、半導体製造設備でオゾンガス発生装置が多用されつつある。半導体製造設備では、僅かな不純物や異物が混入しても生産性に大きく影響するため、そこで使用されるオゾンガス発生装置も高純度なオゾンガスの生成能力が必要とされる。そのため、原料ガスに高純度の酸素ガス(例えば99.9%以上)を使用することはもちろん、生成されるオゾンガス中への僅かな不純物の混入でさえも徹底して排除する必要がある。
【0003】
例えば、電極が放電空隙に露出しているとその表面からガス中に不純物が混入するおそれがあるため、通常、このようなオゾンガス発生装置の放電セルでは、電極が放電空隙に露出しないよう、アルミナ等の誘電体が電極と放電空隙との間に設けられている。
【0004】
ところが、そのように電極からの不純物の混入を防止し、原料ガスに高純度な酸素ガスを用いて純度を高めると、高濃度なオゾンガスを安定して生成することができないという問題がある(例えば、特許文献1等)。そのため、高純度な酸素ガスに微量の窒素ガス等の触媒ガスを添加することなどが行われているが、そうすると、半導体の製造にとって好ましくない窒素酸化物が副生成物として生成されるため、半導体分野向けのオゾンガス発生装置には適さないという問題がある。
【0005】
そのようなことから、触媒ガスを用いずに高純度な酸素ガスだけで高濃度なオゾンガスを安定して生成できる手段が要望されており、本出願人もこれまでいくつか提案している(特許文献1,2)。
【0006】
例えば、特許文献1では、所定量の酸化チタンを誘電体に加えることを提案した。そうすることで、触媒ガスを含まない高純度の酸素ガスを用いた場合でも、オゾンガスを安定して生成できるようになる。更に、特許文献2では、Ti(チタン)、W(タングステン)、Sb(アンチモン)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、V(バナジウム)、Zn(亜鉛)やこれらの酸化物が有効であることを見出し、これらの粉末を誘電体の表面にガラス系の焼き付け固定剤で固定することを提案した。
【0007】
本発明に関し、放電時に発生するスパッタで高電圧電極が劣化するのを防止するために、高電圧電極の表面に酸化クロムをコーティングしたオゾン発生装置が開示されている(特許文献3)。放電空隙に高電圧電極が露出していることから、このオゾン発生装置では、原料ガスに高純度な酸素ガスを使用することは想定していないものと思われる。
【0008】
また、触媒ガスの添加効果を効果的に引き出すことができるオゾン発生装置用誘電体が開示されている(特許文献4)。このオゾン発生装置用誘電体では、アルミナ基板中のクロム酸化物量を所定量以下に制限してオゾンガスへの不純物の混入を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3740254号公報
【特許文献2】特開2008−156218号公報
【特許文献3】特開平9−315803号公報
【特許文献4】特許第3995665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献1や2の手段を用いることにより、原料ガスに高純度な酸素ガスだけを使用しても、ある程度は高濃度オゾンガスを安定して生成することができる。しかし、半導体の高機能化に伴って半導体製造設備に求められる清浄性はより高度になり、そこで使用されるオゾンガス発生装置も、より高度な性能が求められるようになってきている。
【0011】
ところで、本発明者は、誘電体の表面にニオブ等の金属酸化物でできた機能膜を設けることを先に提案している(特願2009−205009)。このような機能膜を設けることで、原料ガスに高純度な酸素ガスのみを使用しても、安定して高濃度なオゾンガスを生成させることができるようになる。
【0012】
ところが、これら金属酸化物でできた機能膜の場合、いったん安定化させてしまえばその後は短時間でオゾンガスの濃度が安定するようになるが、どういうわけか、最初にオゾンガスを発生させる時にだけ、オゾンガスの濃度が安定するまでに時間がかかる現象が認められた。
【0013】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、原料ガスに高純度な酸素ガスだけを使用しても、最初から安定して高濃度オゾンガスが生成できるオゾンガス発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明のオゾンガス発生装置では、誘電体に酸化クロムを含む機能膜を設けた。
【0015】
具体的には、触媒ガスを添加しない高純度の酸素ガスを原料ガスに用いてオゾンガスを発生させるオゾンガス発生装置であって、向い合せに配置された一対の誘電体と、前記一対の誘電体間に形成された放電空隙と、前記放電空隙に放電を発生させる少なくとも一対の電極と、前記放電空隙に原料ガスを供給する原料ガス供給経路と、前記放電空隙からオゾンガスを取り出すオゾンガス取出経路と、前記一対の誘電体のうち、少なくともいずれか一方に設けられて前記放電空隙に面する機能膜と、を備え、前記機能膜が、酸化クロムを含むように構成されている。なお、放電の方式は無声放電でも沿面放電でもよい。電極は一対あれば足りるが、それ以上あってもよく、その数は必要に応じて適宜設定することができる。
【0016】
係る構成のオゾンガス発生装置によれば、原料ガスが供給され、そして、一対の電極によって電圧が印加されて放電が発生する、放電空隙に面して酸化クロムを含む機能膜が設けられているので、放電により原料ガスからオゾンガスが生成される際に、酸化クロムを効果的に作用させることができる。そして、そのように酸化クロムを作用させると、詳しいメカニズムはわからないが、原料ガスに高純度な酸素ガスのみを使用しても、最初から安定して高濃度なオゾンガスを生成させることができるようになる。なお、ここでいう高純度の酸素ガスとは、酸素ガスを少なくとも99.9容量%以上含む酸素ガスをいう。
【0017】
すなわち、ニオブ等の金属酸化物においては、最初のオゾンガス発生時に、濃度の安定に時間がかかるという現象が認められたが、酸化クロムの場合、最初から所定濃度のオゾンガスを発生させることができるため、オゾンガスの濃度を安定化させる必要が無くなってオゾン発生装置の立ち上げに時間を要さずに済む。
【0018】
この場合、前記機能膜の全体が酸化クロムで形成されているようにするのが好ましい。なお、ここでいう全体とは、機能膜の表面だけでなく、その内部に至るまで、そのほぼ全体が酸化クロムで形成されていることを意味する。
【0019】
例えば、金属のクロムで機能膜を形成しても、オゾンの酸化力によってその表面に酸化クロムの膜が形成されるため、触媒としての機能を発揮させることができる。しかし、その場合には、酸化クロムの膜は表面だけであるので、触媒としての機能を効果的に発揮させるのが難しく、性能が不安定になるおそれがある。それに対し、機能膜の全体を酸化クロムで形成すればそのようなおそれはなく、触媒機能を効果的に発揮させることができ、オゾンガスをより安定して生成させることができる。
【0020】
このような構造のオゾンガス発生装置は、例えば、前記誘電体に、クロムの膜をスパッタリングにより形成する金属膜形成工程と、前記一対の誘電体を向い合せに配置し、加熱による溶着により前記一対の誘電体を一体に接合する接合工程と、を含み、前記接合工程における加熱処理が、酸素含有雰囲気下で行われる製造方法を用いて製造すればよい。
【0021】
そうすれば、スパッタリングにより、クロムの金属薄膜を容易に形成することができ、加熱処理により、クロムの金属薄膜を酸化して酸化クロムを形成させることができるので、誘電体の接合と同時に機能膜を形成することができ、生産性に優れる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、原料ガスに高純度な酸素ガスだけを使用しても、高濃度なオゾンガスを最初から安定して生成できるようになり、半導体分野に好適なオゾンガス発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態におけるオゾンガス発生装置の概略斜視図である。
【図2】オゾンガス生成部の模式断面図である。
【図3】図2におけるI−I線から見た模式断面図である。
【図4】本実施形態のオゾン発生機における、立ち上げ時のオゾン濃度の経時変化を表したグラフである。実線が酸化クロムを用いた場合、破線が酸化ニオブを用いた場合をそれぞれ表している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0025】
(オゾンガス発生装置の構成)
図1に、本発明を適用したオゾン発生機1(オゾンガス発生装置)を示す。このオゾン発生機1は、半導体分野向けの機種であり、高純度なオゾンガスを安定して生成できるように構成されている。オゾン発生機1には、原料ガス供給部2(原料ガス供給経路)やオゾンガス生成部3、オゾンガス取出部4(オゾンガス取出経路)のほか、図示はしないがこれらを駆動制御する駆動制御部や操作部などが備えられている。
【0026】
このオゾン発生機1では、原料ガス供給部2からオゾンガス生成部3に原料ガスが供給され、オゾンガス生成部3において原料ガスからオゾンガスが生成される。生成されたオゾンガスはオゾンガス取出部4を経由してオゾン発生機1の外部に取り出される。例えば、半導体製造設備では、このオゾン発生機1から取り出されるオゾンガスを純水に溶解させてオゾン水を生成し、シリコンウエハの洗浄等に用いられる。
【0027】
原料ガス供給部2には、原料ガス供給配管等が設けられている(図示せず)。原料ガス供給配管の一端は、原料ガスの供給源に連通し、他端はオゾンガス生成部3に連通している。この原料ガス供給配管には、例えばステンレス等の金属やフッ素樹脂など、不純物が混入し難い素材が用いられている。オゾンガス取出部4にも、これと同様にオゾンガス取出配管が設けられている。
【0028】
なお、原料ガスには、高純度の酸素ガス(99.9容量%以上:G3)が用いられる。99.9%を超える超高純度の酸素ガス(99.9998容量%以上:G2、G1)を用いることもできる。もちろん、窒素ガス等の触媒ガスの添加は行われない。
【0029】
図2に、このオゾン発生機1の主要部であるオゾンガス生成部3を模式的に示す。同図に示すように、オゾンガス生成部3には放電セル11が備えられていて、この放電セル11に高周波高圧電源12が接続されている。放電セル11には、誘電体13や電極14、区画壁15、接合層16(溶融部材)、機能膜17などが備えられている。
【0030】
誘電体13は、図3にも示すように、高純度のアルミナを焼成して矩形に形成された板状の部材である。誘電体13の板厚は、例えば0.05〜1mmであり、安定した性能を得るには0.1〜0.3mmとするのが好ましい。誘電体13の平行な一方の両縁部には、それぞれ、各縁に沿って延びる帯状のガス流路18,18が貫通形成されている。これらガス流路18,18の一方は原料ガス供給部2に連通して原料ガス供給経路の一部を構成し(原料ガス流入口18a)、他方はオゾンガス取出部4に連通してオゾンガス取出経路の一部を構成している(オゾンガス流出口18b)。
【0031】
また、誘電体13の平行な他方の両縁部にも、それぞれ、各縁に沿って延びる帯状の冷媒流路19,19が貫通形成されている。これら冷媒流路19には放電セル11を冷却するための冷媒が流通される。誘電体13は、1つの放電セル11に対して2枚一組で用いられ、向い合せにして、間に僅かな隙間(ギャップ)を介して略平行に配置されている。なお、本実施形態では便宜上、基本構造を示すために1つの放電セル11を示しているが、放電セル11は1つに限らず複数設けてあってもよい。
【0032】
本実施形態の放電セル11は、無声放電方式を採用したものであり、外側に向く各誘電体13の背面には、それぞれ、誘電体13よりも縦横幅がひとまわり小さく形成された膜状の電極14,14が互いに対向するように設けられている。これら電極14,14の一方は高周波高圧電源12の一方の端子側に電気的に接続され(高圧電極)、他方は、接地されている高周波高圧電源12の他方の端子側に電気的に接続されている(低圧電極)。
【0033】
各誘電体13の互いに向い合う対向面13aには、ガラス系素材からなる区画壁15が設けられている。区画壁15は、誘電体13の対向面13aの上に積層されていて、対向面13aを囲むようにその周辺部に設けられる囲繞部15aと、囲繞部15aの内側に複数設けられる線状のリブ部15bとを有している。各リブ部15bは原料ガス流入口18aからオゾンガス流出口18bに向かって延びるように設けられ、互いに隣接するリブ部15b,15bどうしは所定の間隔を隔てて略平行に配置されている。
【0034】
各誘電体13に設けられた区画壁15の上端部は、互いに突き合わせた状態で間に接合層16を介して一体に接合されている。接合層16は区画壁15と同質のガラス系素材からなる。こうして接合された一対の誘電体13,13の間には、周りが区画壁15で区画された複数の帯状の放電空隙20,20,…が形成されている。放電空隙20のギャップ寸法(対向面13aに直交する方向の寸法)は、200μm以下に設定されている。なお、この隙間寸法は小さい方が好ましく、例えば50μm以下に設定するのが好ましい。
【0035】
放電空隙20を区画している誘電体13の対向面13aの上には機能膜17が形成されている。具体的には、区画壁15で複数区画された帯状の対向面13aを被覆するように機能膜17が形成されている。このオゾン発生機1では、原料ガスに高純度な酸素ガスだけを用いて高濃度なオゾンガスを安定して生成できるように機能膜17に工夫が凝らされている。具体的には、この機能膜17には酸化クロム(例えば、Cr)が含まれている。
【0036】
これまでにも酸化チタン等、いくつか有効な素材を提案しているように、本発明者は、高純度で高濃度なオゾンガスを安定して生成するべく、触媒効果を発揮する機能素材を求めて研究開発を行っている。例えば、ニオブやタンタル、モリブデンの金属酸化物に、オゾンガスの生成に対して優れた触媒効果が得られることを見出している。具体的には、酸化チタン等では、環境温度が上下に変化すると、それに連動して、生成されるオゾンガスの濃度も上下に大きく変化する現象が認められていたのに対し、ニオブ等の金属酸化物を用いることで、環境温度が上下に変化しても、生成されるオゾンガスの濃度をその変化の影響をほとんど受けずに安定させることができるようになる。
【0037】
ところが、これらニオブ等の金属酸化物の場合、原因はわからないが、オゾン発生機1を立ち上げる際にオゾンガスの濃度が安定化するまでに時間がかかる傾向が認められた。すなわち、放電セル11を形成した後、最初に放電セル11に電圧を印加してオゾンガスを発生させる時に、オゾンガスの濃度が所定の濃度(最高到達濃度)に安定化するまでに数時間〜数10時間、場合によっては100時間を超えるような連続運転を要するという現象が認められた。ただし、時間がかかるのは最初だけであって、いったん安定化すれば、それ以降は短時間で安定化するようになる。
【0038】
最初だけとはいえ、濃度の安定化に時間を要するのは生産性の観点からは好ましくないため、その対策について本発明者が更に検討を進めていたところ、酸化クロムを用いることによって最初から短時間で安定化できることを見出した。
【0039】
図4に、オゾン発生機1を立ち上げる際、オゾンガスを最初に発生させた時のオゾンガス濃度の経時変化の概略を示す。図中、実線が酸化クロムを用いた場合での濃度を表しており、破線は酸化ニオブを用いた場合での濃度を表している(比較例)。同図に示すように、酸化ニオブの場合、徐々に濃度が増加していき、所定の高濃度で安定化するまで10時間を超える時間を要したのに対し、酸化クロムの場合、最初からオゾンガスの濃度は300g/mを超える所定の高濃度に安定し、その後もほとんどばらつくことなく安定した。
【0040】
そこで、本実施形態では、機能素材に酸化クロムを使用し、機能膜17の全体を酸化クロムで形成した。例えば、金属のクロムで機能膜17を形成しても、オゾンの酸化力によってその表面に酸化クロムの膜が形成されるため、その機能を発揮させることはできる。しかし、その酸化クロムの膜は表面だけであるので、触媒としての機能を効果的に発揮させるのが難しく、性能が不安定になるおそれがある。それに対し、機能膜17の全体が酸化クロムで形成されていればそのようなおそれはなく、その触媒機能を効果的に発揮させることができる。
【0041】
機能膜17の厚みは0.1〜10μmの範囲で設定するのが好ましく、1μm等、0.5〜1.5μmの範囲で設定するのが特に好ましい。0.1μmを下回ると、成膜時のばらつきによって適正な性能が発揮できないおそれがあり、10μmを上回ると、過度な厚みとなって誘電体13側の部分が機能せず、非効率になるおそれがある。
【0042】
このように構成された放電セル11の放電空隙20には、原料ガス供給部2から原料ガス流入口18aを通じて高純度な酸素ガスが供給される。そして、一対の電極14,14の間に高電圧が印加されると、放電空隙20内には無声放電が発生する。この無声放電と、放電空隙20に面する機能膜17との作用によって、放電空隙20内には濃度の安定したオゾンガスが生成され、オゾンガス流出口18bからオゾンガス取出部4を経由して高純度なオゾンガスがオゾン発生機1の外側に送出される。
【0043】
原料ガスが窒素等の触媒ガスを含む場合であれば、放電空隙20に面する機能膜17に酸化クロムが存在していると、触媒ガスが酸化クロムに作用してオゾンガスに不純物が混入するおそれがある。しかし、このオゾン発生機1では、触媒ガスを含まない高純度な酸素ガスが用いられているため、そのようなおそれはなく、高純度なオゾンガスを生成することができる。
【0044】
(オゾンガス発生装置の製造方法)
オゾン発生機1の主要部である放電セル11については、例えば、次のような金属膜形成工程と、接合工程とを含む製造方法を用いることで容易に製造することができる。
【0045】
まず、誘電体13に対してクロムの膜をスパッタリングにより形成する(金属膜形成工程)。具体的には、誘電体13の対向面13a側に区画壁15を形成した後、マスク等を用いてその所定部分にクロムの金属膜を形成する。スパッタリングにより金属膜を形成することで、比較的容易に高精度な薄膜を形成することができる。その結果、ギャップ寸法をより小さく設定できるため、より高濃度なオゾンガスを安定して生成できるようになる。
【0046】
なお、区画壁15については、誘電体13に対してガラス系の素材を塗布、焼成することにより形成することができる。具体的には、スクリーン印刷により、ガラス系素材のペーストを誘電体13の対向面13aの所定部分に塗布する。その後、ガラス系素材が溶融する800℃以上の所定温度で所定時間焼成し、冷却固化させる。この塗布、焼成の処理を繰り返し行って積層された区画壁15を形成してもよい。
【0047】
次に、溶融部材を介して一対の誘電体13を向い合せに配置した後、加熱して一対の誘電体13,13を一体に接合する(接合工程)。溶融部材には、例えば、区画壁15と同質のガラス系素材のペーストを用いることができる。具体的には、各誘電体13の対向面13aに設けた区画壁15の上端部に溶融部材を塗布し、区画壁15の上端部どうしを密着させる。そうして、溶着部材が溶融する800℃以上の所定温度に加熱し、所定時間焼成する。
【0048】
このとき、酸素を含有する雰囲気下で焼成を行い、加熱条件を調整してクロムの金属膜の全体が酸化されるように設定する(機能膜形成工程)。そのようにすれば、焼成後に冷却すると、溶融部材は固化して接合層16を形成し、一対の誘電体13,13は一体に接合される。クロムの金属膜は酸化されて、そのほぼ全体が酸化クロムで形成された機能膜17となる。すなわち、誘電体13の接合と同時に機能膜17を形成することができるので、工数が削減でき、生産性に優れる。
【0049】
なお、本発明にかかるオゾンガス発生装置は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0050】
例えば、スパッタリング時に酸素ガスを導入して、誘電体13に酸化クロムからなる機能膜17を直接形成してもよい。また、クロム(金属)の微粒子、又は酸化クロムの微粒子をガラス系素材のペーストに混合してスクリーン印刷により塗布し、焼成することにより機能膜17を形成することもできる。
【0051】
その他、機能膜17は誘電体13の一方のみに設けてもあってもよい。区画壁15をいずれか一方の誘電体13にのみ形成し、他方の誘電体13に溶融部材を介して直接溶着するようにしてあってもよい。放電方式は、無声放電に限らず沿面放電を採用することもできる。オゾンガス発生装置は、単体で使用する形態に限らず、例えば、オゾン水製造装置に組み込むような部品形態で使用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 オゾン発生機(オゾンガス発生装置)
2 原料ガス供給部(原料ガス供給経路)
3 オゾンガス生成部
4 オゾンガス取出部(オゾンガス取出経路)
11 放電セル
12 高周波高圧電源
13 誘電体
13a 対向面
14 電極
15 区画壁
16 接合層(溶融部材)
17 機能膜
20 放電空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒ガスを添加しない高純度の酸素ガスを原料ガスに用いてオゾンガスを発生させるオゾンガス発生装置であって、
向い合せに配置された一対の誘電体と、
前記一対の誘電体間に形成された放電空隙と、
前記放電空隙に放電を発生させる少なくとも一対の電極と、
前記放電空隙に原料ガスを供給する原料ガス供給経路と、
前記放電空隙からオゾンガスを取り出すオゾンガス取出経路と、
前記一対の誘電体のうち、少なくともいずれか一方に設けられて前記放電空隙に面する機能膜と、
を備え、
前記機能膜が、酸化クロムを含むオゾンガス発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオゾンガス発生装置であって、
前記機能膜の全体が酸化クロムで形成されているオゾンガス発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載のオゾンガス発生装置の製造方法であって、
前記誘電体に、クロムの膜をスパッタリングにより形成する金属膜形成工程と、
前記一対の誘電体を向い合せに配置し、加熱による溶着により前記一対の誘電体を一体に接合する接合工程と、
を含み、
前記接合工程における加熱処理が、酸素含有雰囲気下で行われるオゾンガス発生装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−68530(P2011−68530A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222471(P2009−222471)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000183369)住友精密工業株式会社 (336)
【Fターム(参考)】