説明

オゾン水生成装置

【課題】カソード水の廃棄や交換を必要とせずに容易にオゾン水を生成することのできるオゾン水生成装置を提供する。
【解決手段】オゾン水生成装置100は、陽イオン交換膜21の一方の面に陽極電極22を圧接し、他方の面に陰極電極23を圧接してなる触媒電極2を備え、陽極電極22に白金又は白金被覆金属を使用し、陰極電極23に塩化銀層を有する銀又は銀被覆金属を使用する。そして、陽極電極22に精製水を接触させて、陰極電極23に精製水の一部を供送し、陽極電極22と陰極電極23との間に直流電流を印加してオゾン水を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の電気分解によりオゾン水を生成するオゾン水生成装置に関するものであり、特に水が無菌の精製水であり、主として医療用に使用する電解式オゾン水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン水はクリーンな殺菌性や生物に対する活性増進などの効用が周知となり、食品工業・農業から栽培漁業の海域浄化までの広い範囲で利用されるようになったことが知られている。医療関連域でも、既に手洗い殺菌や内視鏡殺菌などの用途に普及し始め、多くの医療分野において治療に役立つという研究者の報文が年々発表されている。
現在、産業用に普及しているオゾン水の製法は大別して放電により生成したオゾンガスに溶解させるガス溶解法、電解により生成したオゾンガスを水に溶解させる電解ガス溶解法、電解面に原料水を直接接触させてオゾン水を生成させる直接電解法(例えば、特許文献1参照)の3方式が実用されている。
特に最近では、直接電解法が他のガス溶解法に比べ小型で経済的であり、かつ高濃度ガスの漏洩の危険がない等の理由から、野菜や食品の殺菌や付着農薬の分解など食品業界から農業分野にまで多く普及し始めている。
【特許文献1】特開平8−134678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のように白金を陽極触媒に使用する方法は、原料水が水道水又は地下水等の天然水又はそれを軟水器処理してカルシウムやマグネシウムの量を減らした水を原料としており、電解質が混合した電解質水であるため電導性を有している。そのため、このような電解質水は陽極電解面で電気分解が惹起され易く、水素がイオン交換膜を急速に陰極へと移動することから、陽極にオゾンが発生するというものである。
一方、原料水に純水又は精製水のような電導性の低い水を使用した場合は、陽極電解面における電導性が低いので電解電流が流れにくい。仮にさらに高電圧を印加して電流値を上げたとしても、陽極においては、酸素は発生するもののオゾンの発生はごく微量であるという現象が見られていた。
そこで、発明者等はこの現象をさらに追求し、陰極電極に電導性の高い食塩水や、さらに、陰極に洗浄作用のあるクエン酸水溶液などを接触させると、陽極−イオン交換膜−陰極によって構成されている電解系に流れる電流値が急増し、陽極に電気絶縁性の高い純水や精製水を供送しても陽極において活発な電気分解が惹起され、オゾンも活発に発生することを見いだした。そして、これをカソード水法として現在、殺菌脱臭等の用途として使用し始めている。
しかしながら、上記カソード水法は、カソード水が連続して陰極の水素発生面に接触しているため、運転を重ねるに従いカソード水が酸性化し、また系を通った微量成分が累積し、ある運転時間毎にカソード水の廃棄やその交換が必要であるという問題が生じていた
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、カソード水の廃棄や交換を必要とせずに容易にオゾン水を生成することのできるオゾン水生成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、例えば、図1、図2に示すように、陽イオン交換膜21の一方の面に陽極電極22を圧接し、他方の面に陰極電極23を圧接してなる触媒電極2を備え、前記陽極電極に精製水を接触させて、前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電流を印加してオゾン水を発生させるオゾン水生成装置100において、
前記陽極電極に白金又は白金被覆金属を使用し、前記陰極電極に塩化銀層を有する銀又は銀被覆金属を使用し、
前記陰極電極に前記精製水の一部を供送することを特徴とする。
【0006】
請求項1の発明によれば、陽極電極に白金又は白金被覆金属を使用し、陰極電極に塩化銀層を有する銀又は銀被覆金属を使用し、陽極電極に精製水を接触させ、その一部を陰極電極にも供送し、陽極電極と陰極電極との間に直流電流を印加することによって、精製水が陽極電極で電気分解され、水素が陽イオン交換膜を通って陰極電極に迅速に到達し、水分子より水素が引き抜かれた結果、元素としての酸素が、二価の酸素ガスと、三価のオゾンとして陽極電極において発生する。発生したオゾンは、精製水に容易に溶解しオゾン水化する。このように電気抵抗率の高い精製水を使用した場合でも、陰極電極に電導性の高い食塩水やクエン酸水溶液などを用いる必要がないので、カソード水の廃棄やその交換作業にかかる手間を省くことができ、容易にオゾン水を生成することができる。
また、陰極電極に精製水の一部を供送するので、陽極電極と陰極電極とにおける水流のバランスを調整することができる。
【0007】
請求項2の発明は、例えば、図4〜図6に示すように、請求項1に記載のオゾン水生成装置100Aにおいて、
前記触媒電極2Aは、前記精製水が満たされた水槽1A内に配置され、
前記水槽内に旋回水流を発生させて前記触媒電極に精製水を連続接触させる旋回水流発生手段(例えば、回転子6A及びマグネットスターラ7A)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明によれば、触媒電極が水槽内に配置され、触媒電極に精製水を連続接触させる旋回水流発生手段が設けられているので、旋回水流発生手段によって、触媒電極と旋回水流との接触が良くなり、陽極電極が旋回水流に面するため旋回水流の遠心力で陽極電極に衝突して微細な渦流が発生し、陽極電極から発生したオゾン気泡をその中に巻き込んで精製水中に溶解させることができる。したがって、オゾン気泡の精製水への溶解効率を向上させることができる。また、水槽内に触媒電極を配置することで、オゾン気泡が精製水中に溶解する溶解時間を十分に確保でき、この点においても溶解効率の向上を図ることができる。
【0009】
請求項3の発明は、例えば、図8に示すように、請求項1に記載のオゾン水生成装置100Bにおいて、
前記触媒電極は、前記精製水が満たされた水槽内に配置され、
前記水槽内の精製水を吸引し加圧して前記触媒電極の陽極電極に吹き付けることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明によれば、触媒電極が水槽内に配置され、精製水を吸引し加圧して陽極電極に吹き付けるので、陽極電極から発生したオゾン気泡を、吹き付けられた精製水中に確実に溶解させることができる。したがって、オゾン気泡の精製水への溶解効率を向上させることができる。また、水槽内に触媒電極を配置することで、オゾン気泡が精製水中に溶解する溶解時間を十分に確保でき、この点においても溶解効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るオゾン水生成装置によれば、カソード水の廃棄や交換を必要とせずに、電気抵抗率の高い精製水を使用して容易にオゾン水を生成することができる。その結果、オゾン水を殺菌や洗浄用として医療業や食品業、農業等に幅広く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第一の実施の形態のオゾン水生成装置100の斜視図、図2は、オゾン水生成装置100の平断面図である。
図1〜図2に示すように本発明に係るオゾン水生成装置100は、精製水が随時流され
る水槽1内に、触媒電極2を配置して構成されたもので、触媒電極2に直流電圧を印加することによってオゾン気泡を発生させて、そのオゾン気泡を水に溶解させることによりオゾン水を生成する装置である。
水槽1は、平断面視略T字状をなした略箱体であって、長手方向に延びる側面の一部が外側に突出して突出部分11を有している。水槽1の短手方向における一端面には、水槽1内に精製水を流入するための流入管41が取り付けられ、他端面には水槽1内で反応して生成されたオゾン水が流出する流出管42が取り付けられている。
【0013】
流入管41は、精製水が貯留された精製水貯留タンク(図示略)にポンプ(図示略)を介して連結されている。また、流出管42は、水槽1内で生成されたオゾン水を貯留するためのオゾン水貯留タンク(図示略)にポンプ(図示略)を介して連結されている。
水槽1内には、流入管41及び流出管42によって、その上端部近傍まで精製水で満たされており、また、水槽1の短手方向における一端部側から他端部側まで随時精製水が流されている。
このような水槽1のうち突出部分11には、その底部に水槽1の内壁面11aに沿って触媒電極2が配設されている。
【0014】
触媒電極2は、陽イオン交換膜21の一方の面に陽極電極22を密着させ、他方の面に陰極電極23を密着させてなるもので、陰極電極23面が突出部分11を形成する長手方向における内壁面11a側を向き、陽極電極22面が前記内壁面11aと対向する内壁面11b側を向くように配されている。このように触媒電極2を配置することにより、流入管41から水槽1内に流入された精製水の大部分が陽極電極22面に連続接触して流れる第一の流路31と、流入管13から水槽1内に流入された精製水の一部が分岐して陰極電極23面と突出部分11を形成する長手方向における内壁面11aとの間を陰極電極23面と連続接触して流れる第二の流路32とに仕切られている。
また、陽極電極22と陰極電極23との間には、電源装置(図示しない)の出力端24が電気的に連結され、直流電圧が印加されるように構成されている。すなわち、陽極電極22及び陰極電極23は、各電極22、23に導線を介して電源装置に連結されている。印加する直流電圧は、例えば、6〜15ボルトが好ましい。
【0015】
陽イオン交換膜21としては、従来公知のものを使用することができ、発生するオゾンに耐久性の強いフッ素系陽イオン交換膜を使用することができ、例えば厚さ200〜300ミクロンが好ましい。
【0016】
陽極電極22と陰極電極23とは、陽イオン交換膜21を全面的に覆い隠すように密着されるものではなく、多数の通孔を設けて、陽極電極22と陰極電極23とは陽イオン交換膜21に接触部と非接触部とを有して重ねられている。すなわち、陽極電極22及び陰極電極23はグレーチング状又はパンチングメタル状をなしている。図2ではグレーチングの場合を示している。特に、陰極電極23は陽極電極22よりも目の粗さが粗くなるように形成されている。具体的に、グレーチング状とは線材を溶接した格子状で、パンチングメタル状とは金属板に多数の通孔を形成した多孔板状である。
【0017】
陽極電極22としてはオゾン発生触媒機能を有した金属を使用し、この金属としては二酸化鉛が最も広く知られている。しかし、この二酸化鉛は加工が難しく、微小な通孔が不規則に存在するポーラス体を使用しているが、二酸化鉛のポーラス体は脆弱で耐久性に劣り、さらにはオゾン水中に鉛が溶出する可能性もあることから、純粋なオゾン水を得るため、白金又は白金被覆金属の電極を使用することが好ましく、特に、本発明ではチタンに白金を被覆した金属を使用することが好ましい。
一方、陰極電極23としては塩化銀層を有する銀又は銀被覆金属を使用する。塩化銀はオゾン測定の比較電極としても使われており、毒性なく安定してカソード電位の維持を行い、陽極電極22において安定してオゾンを発生できるものである。
そして、陽極電極22は平面状の金属をグレーチング状に加工することが望ましい。また、被覆処理としては、例えばメッキや熱着等により行うことができる。
【0018】
このようにグレーチング状の陽極電極22とすることによって、陽極電極22を構成する部材の交点部位Pが尖って外面に突出し、水流と接触して渦流を生じ、陽極電極22で発生したオゾンの微泡を巻き込んで溶解を早めることができる。
【0019】
また、パンチングメタル状の電極とした場合には、多孔板は略平面的であるので、多孔板と平行な水はこの多孔板内をほとんど流過しづらいので、例えば、ラス網の下に重ねて併用することがより好ましい。
【0020】
このような陽イオン交換膜21、陽極電極22及び陰極電極23は、それぞれ板状に形成されており、これらを密着させた後、絶縁性の接合部材(図示しない)により接合されることによって触媒電極2とされている。また、触媒電極2の水槽1への固定方法としては、例えば、水槽1の突出部分11における内壁面11aから陰極電極23に向けて所定箇所に棒状の取付部材(図示しない)を設けて、これによって支持するように固定しても良い。ここで使用する取付部材は、耐オゾン性の材料からなるものが好ましい。また、その他、水槽1の底面に触媒電極2を直接固定しても良く、特に限定しない。
【0021】
また、オゾン水生成装置100は、図1及び図2には図示しないが図5に示すように、水槽1内のオゾン濃度を検出する濃度検出器5Aと、検出したオゾン濃度に基づいて触媒電極2への通電を制御する通電制御手段(図示しない)とを備えている。濃度検出器5Aは、検出電極51Aと電位測定の基準となる比較電極52A、これら検出電極51A及び比較電極52Aの一方の端部に結線して電位を測定する電位差計等から構成されている。したがって、検出電極51A及び比較電極52Aの先端部(他方の端部)を水槽1内の溶液中に浸し、検出電極51Aのオゾン濃度変化による検出電極51Aと比較電極52Aとの電位差を検出して濃度を測定する。
検出電極51Aとしては、例えば白金や金等からなる電極を使用し、比較電極52Aとしては銀/塩化銀を使用することが好ましい。
このようにして検出されたオゾン濃度と、予め設定されたオゾン濃度とが一致するように電源装置の通電制御部(通電制御手段)が陽極電極22及び陰極電極23間の電圧を制御するように構成されている。
【0022】
次に、上述の構成をなしたオゾン水生成装置100の作用について説明する。
図1〜図2に示すように、流入管41から流出管42へと精製水を常に流し続けて、水槽1内に水流を発生させておく。ここで、精製水は、第一の流路31を流れて陽極電極22に接触し流出管42へと流れるとともに、その一部は第二の流路32を流れて陰極電極23に接触した後、流出管42へと流れる。
そして、電源装置を駆動させることによって陽極電極22及び陰極電極23間に所定の電圧を印加する。ここで、陰極電極23に例えば上述の塩化銀を使用しているので、通電により陽極電極22と陰極電極23との間に電路が形成されて、第一の流路31を流れる精製水が陽極電極22に接触することによって陽極電極22上に酸素と多量のオゾンが発生し、発生したオゾンは流水中に溶解してオゾン水化する。陰極電極23では、第二の流路32を流れる精製水が陰極電極23に接触することによって水素が生成される。
【0023】
また、第一の流路31では流入管41から流出管42へと流れる水流が発生しているので、陽極電極22側において精製水はわずかな陽極電極22の凹凸によって流れの方向が複雑に変わる。すなわち、陽極電極22において水はわずかな間隙流路を求めて、通孔内に流出入して、方向を変えながら複雑な迷路状の流路を通ることになり、その結果、水は渦を巻く流れ、つまり渦流となる。そして、この渦流は陽極電極22に近接して起こり、陽イオン交換膜21の表面の水をこの渦流で巻き込み、渦流は陽イオン交換膜21の表面にまで達して陽イオン交換膜21の表面に局所的に沿う流れを惹起し、陽極電極22と陽イオン交換膜21の表面とのわずかな間隙部位にも水が淀むことなく流れることになる。
このように精製水が複雑な迷路状の流路を通ることは攪拌力による気液接触頻度を確保するもので、また渦流は陽イオン交換膜21の表面、特に陽極電極22とのごく狭い間隙に発生したオゾン気泡をいち早く水中に取り込んで溶解させることによってオゾン水を生成し、陽極電極22と陽イオン交換膜21との間(正確には陽極電極22と陰極電極23との間)に電流が多く流れる状態を確保することになる。
そして、生成されたオゾン水は第一の流路31から流出管42へと流れる。
【0024】
一方、第二の流路32においても流入管41から流出管42へと水流が発生しているため、陰極電極23側において、水流は陽極電極22と同様に陰極電極23の凹凸によって流れの方向が変わるが、陽極電極22よりも目の粗い電極であるので、流れの方向が陽極電極22ほど複雑に変わることはない。そのため、陰極電極23で発生した水素気泡はある程度の大きさになった後、ゆっくりと陰極電極23から離されてその浮力によって、水面へと上昇し、水素ガスとして系外に放出されるか、あるいは一部は流水中に取り込まれて水素懸濁水として第二の流路32から第一の流路31へと流れ、オゾン水と混合される。
【0025】
また、通電中に、同時に濃度検出器5Aによって水槽1内の溶液の濃度が測定され、オゾン濃度が予め設定されたオゾン濃度となるように電源装置の陽極電極22及び陰極電極23間の電圧が制御される。
【0026】
なお、上記第一の実施の形態において、陰極電極23で発生した水素を第二の流路32から第一の流路31に流れないように第二の流路32に別の流路を形成して、第一の流路31を流れるオゾン水と混合しないように構成しても構わない。
【0027】
以上、本発明の第一の実施の形態によれば、陽極電極22に白金被覆金属を使用し、陰極電極23に塩化銀を使用し、水槽1内に精製水を流入管41から流出管42へと一方向に常に流すことによって、第一の流路31を流れる精製水を陽極電極22に接触させ、精製水の一部を第二の流路32に流して陰極電極23にも供送し、陽極電極22と陰極電極23との間に直流電流を印加する。これによって精製水が陽極電極22で電気分解され、水素が陽イオン交換膜21を通って陰極電極23に迅速に到達し、水分子より水素が引き抜かれた結果、陽極電極22において酸素とオゾンが発生する。発生したオゾンは、精製水に容易に溶解しオゾン水化する。このように電気抵抗率の高い精製水を使用した場合でも、陰極電極23に電導性の高い食塩水やクエン酸水溶液などを用いる必要がないので、カソード水の廃棄やその交換作業にかかる手間を省くことができ、容易にオゾン水を生成することができる。
また、第二の流路32に精製水の一部を流すことによって陰極電極23にも精製水を供送するので、陽極電極22と陰極電極23とにおける水流のバランスを調整することができる。
【0028】
次に、上述のオゾン水生成装置100を使用して精製水のような高電気抵抗の純粋な水を原料としてオゾン水を生成する方法について実施例を挙げて説明する。
[実施例]
本発明の一実施例として、図1及び図2に示すような水槽1の突出部分11(第一の流路31と第二の流路32との間)に、幅30mm、長さ100mmの白金が被覆された陽極電極22と、デュポン製陽イオン交換膜ナフイオン21、さらに陽極電極22と同一面積の塩化銀が被覆された銀製の陰極電極23とを圧接した触媒電極2を設置し、精製水を陽極電極22側に毎分4L、陰極電極23側に同じく精製水を毎分1Lとなるように流した。陽極電極22と陰極電極23との間に直流電流を印加し、電圧の上昇と発生したオゾン水濃度との関係を図3に示した。
図3に示すように、約7.5Vの架電でオゾン水濃度は約1ppmを示し、その時の電流値は10A、さらに約9.0Vの架電でオゾン水濃度は2ppmを示し、その時の電流値は14Aであった。さらに、電圧を上げていくと、10.5Vで約3ppm、17Aとなり、12Vで約4ppm、20A、最後に13.5Vで5ppm、23Aという高濃度を達成した。
上述の医療用などの用途には4〜5ppmという濃度は、十分殺菌や手術用患部洗浄水としての必要濃度と認められている。
比較例として、陰極電極23に従来使用されている白金被覆チタン電極を取り替えて使用したところ12V以下では殆ど電流が流れなかった。従って、オゾン水濃度も0ppmであり、12Vでようやく約13A、オゾン水は0.3ppmとなり、さらに13.5Vで約5A、オゾン水は0.6ppmを示した。
以上の結果から、精製水を原料水としてオゾン水を発生する方法としては、本発明のように陰極電極23として塩化銀を使用することによって、その効果が明らかであることがわかる。
【0029】
[第二の実施の形態]
図4は、本発明の第二の実施の形態におけるオゾン水生成装置100Aの斜視図、図5は、オゾン水生成装置100Aの側断面図、図6は、オゾン水生成装置100Aの平断面図である。
図4〜図6に示すように、本発明の第二の実施の形態におけるオゾン水生成装置100Aでは、第一の実施の形態の水槽1と異なる水槽1Aを使用している。第二の実施の形態の水槽1Aは略円筒形状であって、その上端部近傍まで精製水で満たされている。この水槽1Aの下側には、水槽1Aの内壁面に沿って円弧状に触媒電極2Aが配設されている。
【0030】
触媒電極2Aは、陽イオン交換膜21Aの一方の面に陽極電極22Aを密着させ、他方の面に陰極電極23Aを密着させてなるものである。陽イオン交換膜21A、陽極電極22A及び陰極電極23Aの構成材料等は、円弧状に形成した以外は第一の実施の形態の陽イオン交換膜21、陽極電極22及び陰極電極23からなる触媒電極2と同様であるためその説明を省略する。
円弧状の触媒電極2Aは、水槽1Aの中心部側に陽極電極22Aが配置され、外側に陰極電極23Aが配置されるように水槽1A内に固定されている。
水槽1A内の固定方法としては、例えば、水槽1Aの内壁面から陰極電極23Aに向けて所定箇所に棒状の取付部材(図示しない)を設けて、これによって支持するように固定しても良い。ここで使用する取付部材は、耐オゾン性の材料からなるものが好ましい。また、その他、水槽1Aの底面に触媒電極2Aを直接固定しても良く、特に限定しない。
【0031】
また、オゾン水生成装置100Aは、円筒中心部に向けて水槽1A内に旋回水流を発生させるための回転子6A及び攪拌装置からなる旋回水流発生手段を備えている。
攪拌装置としては、マグネットスターラ7A(図5のみ図示)を使用することが好ましく、装置本体71Aと、装置本体71A内のモータ72Aと、このモータ72Aの回転軸に連結されて回転する磁石73Aから構成されており、マグネットスターラ7Aの上面に載置された水槽1A内のマグネット回転子6Aを所望の回転数で回転させることができるようになっている。このように攪拌装置はマグネットにより攪拌する非接触式の装置であるので、水槽1A内の底部に貫通穴を設けて直接、回転子6Aを回転させて旋回水流を発生させる接触式の装置に比べて、貫通穴付近にパッキン処理をする必要もなく、パッキンによるオゾン水の劣化が生じることもない。その他の旋回水流発生手段としては、ポンプで駆動するインペラを使用することができる。
【0032】
なお、水槽1A内には、第一の実施の形態で説明した濃度検出器5A(図5のみ図示)や通電制御手段を備えるものとする。
また、図7に示すように、水槽1A内には、陰極電極23Aから発生した水素を旋回水流によって陰極電極23Aから離して水面又は外気に放出させる水素誘導路8Aを設けても良い。この水素誘導路8Aは、水槽1A内において触媒電極2Aの上方から水槽1Aの上端部に延在する円筒状部材81Aを配設することによって、水槽1Aの内周面と円筒部材81Aとの隙間に形成する。このように水素誘導路8Aを設けることによって、陰極電極23Aから発生した水素気泡を、水素誘導路8Aを介して水面又は外気に放出することができる。円筒状部材81Aの水槽1Aへの固定方法は、例えば、上方から円筒状部材81Aを吊り下げる構成としても良いし、水槽1A内の内面に、円筒状部材81Aを挟み込んで支持する棒状の部材を設けて固定する構成としても良く、特に限定しない。図7中、図6と同様の構成部分については同様の符号を付した。
【0033】
次に、上述の構成をなしたオゾン水生成装置100Aの作用について説明する。
まず、水槽1A内に精製水を満たし、攪拌装置を駆動させることによって回転子6Aを回転させて、水槽1A内に一定の速度の旋回水流を発生させておく。
そして、電源装置を駆動させることによって陽極電極22A及び陰極電極23A間に所定の電圧を印加する。ここで、陰極電極23Aに塩化銀を使用しているので、通電により陽極電極22Aと陰極電極23Aとの間に電路が形成されて、水槽1A内の中心部側を旋回する精製水が陽極電極22Aに接触することによって陽極電極22A上に酸素と多量のオゾンが発生し、発生したオゾンは旋回水流中に溶解してオゾン水化する。陰極電極23Aでは、水槽1A内の内壁面側を旋回する精製水が陰極電極23Aに接触することによって水素が生成される。
【0034】
また、第一の実施の形態と同様に、旋回水流によって陽極電極22A側ではわずかな陽極電極22Aの凹凸によって流れの方向が複雑に変わり、渦流が発生し、陽イオン交換膜21Aの表面に発生したオゾン気泡をいち早く水中に取り込んで溶解させることによってオゾン水を生成し、陽極電極22Aと陽イオン交換膜21Aとの間に電流が多く流れる状態を確保することになる。
【0035】
一方、陰極電極22A側でも陰極電極23Aの凹凸によって流れの方向が変わるが、陽極電極22Aよりも目の粗い電極であるので、流れの方向が陽極電極22Aほど複雑に変わることはなく、陰極電極23Aで発生した水素気泡はある程度の大きさになった後、ゆっくりと陰極電極23Aから離されてその浮力によって、水面へと上昇し、水素ガスとして系外に放出されるか、あるいは一部は流水中に取り込まれて水素懸濁水として、オゾン水と混合される。
【0036】
また、通電中に、同時に濃度検出器5Aによって水槽1A内の溶液の濃度が測定され、オゾン濃度が予め設定されたオゾン濃度となるように電源装置の陽極電極22A及び陰極電極23A間の電圧が制御される。
【0037】
以上、本発明の第二の実施の形態によれば、陽極電極22Aに白金被覆金属を使用し、陰極電極23Aに塩化銀を使用し、このような触媒電極2Aを陽極電極22Aが水槽1Aの円筒中心を向き、陰極電極23Aが円筒内周面を向くように配設し、旋回水流発生手段によって旋回水流を発生させて、陽極電極22Aに連続接触させ、陰極電極23Aにもその一部を供送する。そして、陽極電極22Aと陰極電極23Aとの間に直流電流を印加する。これによって精製水が陽極電極22Aで電気分解され、水素が陽イオン交換膜21Aを通って陰極電極23Aに迅速に到達し、水分子より水素が引き抜かれた結果、陽極電極22Aにおいて酸素とオゾンが発生する。発生したオゾンは、精製水に容易に溶解しオゾン水化する。このように電気抵抗率の高い精製水を使用した場合でも、従来のようにカソード水の廃棄やその交換作業にかかる手間を省くことができ、容易にオゾン水を生成することができる。
また、マグネットスターラ7A及び回転子6Aを有する旋回水流発生手段によって、触媒電極2Aと旋回水流との接触が良くなり、陽極電極22Aが円筒中心を向いており旋回水流に面するため旋回水流の遠心力で陽極電極22Aに衝突して微細な渦流が発生し、陽極電極22Aから発生したオゾン気泡をその中に巻き込んで精製水中に溶解させることができる。したがって、オゾン気泡の精製水への溶解効率を向上させることができる。また、水槽1A内に触媒電極2Aを配置することで、オゾン気泡が精製水中に溶解する溶解時間を十分に確保でき、この点においても溶解効率の向上を図ることができる。
【0038】
[第三の実施の形態]
図8は、本発明の第三の実施の形態におけるオゾン水生成装置100Bの平断面図である。
本発明の第三の実施の形態におけるオゾン水生成装置100Bでは、第二の実施の形態のオゾン水生成装置100Aで使用した水槽1Aと同様の略円筒形状の水槽1Aを使用し、円弧状の触媒電極2Aが水槽1A内に陽極電極22Aが水槽1Aの中心部を向き、陰極電極23Aが外側を向くように配設されている。これらの構造は、第二の実施の形態と同様であるため、同様の構成部分については同様の符号を付してその説明は省略する。
そして、第三の実施の形態では、水槽1A内の精製水を吸引する吸引口を有する吸引管91Bと、精製水を触媒電極2Aに吹き付けるための吹き付け口を有する吹き付け管92Bと、これら吸引管91B及び吹き付け管92Bに連結されて精製水を加圧する循環ポンプ93Bとを備えている。
さらに、水槽1A内には、吹き付け管92Bから吹き付けられた精製水を陽極電極22Aへとガイドするガイドベーン94Bが設けられている。ガイドベーン94Bは、円弧状に形成された板状をなし、水槽1A内の吹き付け管92B近傍の内壁面から陽極電極22Aまで延在するように配されている。ガイドベーン94Bの先端と触媒電極2Aの一端部との間には若干の隙間が設けられており、陰極電極23A面側にも吹き付け管92Bから吹き付けられた精製水の一部が流れるようになっている。このような構成とすることにより、発生したオゾンの精製水への溶解を助長できるようになっている。
【0039】
次に、上述の構成をなしたオゾン水生成装置100Bの作用について説明する。
まず、水槽1A内に精製水を満たしておき、吸引管91Bから精製水を吸引し、循環ポンプ93Bによって加圧することにより吹き付け管92Bから精製水を陽極電極22Aに吹き付ける。ここで、吹き付け管92Bから吹き付けられた精製水はガイドベーン94Bにガイドされて、陽極電極22Aに接触し、水槽1A内の中心部を中心として旋回するとともに、その一部はガイドベーン94Bと触媒電極2Aとの間の隙間から陰極電極23Aと水槽1Aの内壁面との間の流路を流れて陰極電極23Aに接触し、同様に水槽1A内の中心部を中心として旋回する。
そして、電源装置を駆動させることによって陽極電極22A及び陰極電極23A間に所定の電圧を印加する。ここで、陰極電極23Aに塩化銀を使用しているので、通電により陽極電極22Aと陰極電極23Aとの間に電路が形成されて、水槽1A内の中心部側を旋回する精製水が陽極電極22Aに接触することによって陽極電極22A上に酸素と多量のオゾンが発生し、発生したオゾンは旋回水流中に溶解してオゾン水化する。陰極電極23Aでは、水槽1A内の内壁面側を旋回する精製水が陰極電極23Aに接触することによって水素が生成される。
【0040】
また、第一の実施の形態と同様に、旋回水流によって陽極電極22A側ではわずかな陽極電極22Aの凹凸によって流れの方向が複雑に変わり、渦流が発生し、陽イオン交換膜21Aの表面に発生したオゾン気泡をいち早く水中に取り込んで溶解させることによってオゾン水を生成し、陽極電極22Aと陽イオン交換膜21Aとの間に電流が多く流れる状態を確保することになる。
【0041】
一方、陰極電極23A側でも陰極電極23Aの凹凸によって流れの方向が変わるが、陽極電極22Aよりも目の粗い電極であるので、流れの方向が陽極電極22Aほど複雑に変わることはなく、陰極電極23Aで発生した水素気泡はある程度の大きさになった後、ゆっくりと陰極電極23Aから離されてその浮力によって、水面へと上昇し、水素ガスとして系外に放出されるか、あるいは一部は流水中に取り込まれて水素懸濁水として、オゾン水と混合される。
【0042】
また、通電中に、同時に濃度検出器5A(図8では図示しない)によって水槽1A内の溶液の濃度が測定され、オゾン濃度が予め設定されたオゾン濃度となるように電源装置の陽極電極22A及び陰極電極23A間の電圧が制御される。
【0043】
以上、本発明の第三の実施の形態によれば、水槽1Aに精製水を吸引する吸引管91Bと、吸引した精製水を循環ポンプ93Bで加圧して陽極電極22Aに吹き付ける吹き付け管92Bとが設けられているので、陽極電極22Aから発生したオゾン気泡を、吹き付けられた精製水中に確実に溶解させることができる。したがって、オゾン気泡の精製水への溶解効率を向上させることができる。また、水槽1A内に触媒電極2Aを配置することで、オゾン気泡が精製水中に溶解する溶解時間を十分に確保でき、この点においても溶解効率の向上を図ることができる。
さらに、水槽1A内にはガイドベーン94Aが設けられているので、ガイドベーン94Aに沿って精製水を触媒電極2Aに効果的に吹き付けることができる。
また、第二の実施の形態と同様の構成部分については同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、本発明の第一〜第三の実施の形態は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない限り、適宜変更可能である。
例えば、上記第二及び第三の実施の形態の水槽1Aは径が略同じとなるように形成された円筒状であるとしたが、四角柱状であっても良い。
また、陽極電極22,22A及び陰極電極23,23Aはそれぞれグレーチング状又はパンチングメタル状に形成されているとしたが、板状のものであっても良い。また、陽極電極22,22Aの表面にラス網等の金網を設けるようにしても良い。このように金網を設けることによって、さらに、旋回水流に乱れが生じて速やかにオゾン気泡を原料水に溶かし込んでオゾン水を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一の実施の形態におけるオゾン水生成装置100の斜視図である。
【図2】オゾン水生成装置100の平断面図である。
【図3】印加電圧と生成オゾン水濃度との関係を示したグラフである。
【図4】本発明の第二の実施の形態におけるオゾン水生成装置100Aの斜視図である。
【図5】オゾン水生成装置100Aの側断面図である。
【図6】オゾン水生成装置100Aの平断面図である。
【図7】水素誘導路8Aが設けられたオゾン水生成装置100Aの平断面図である。
【図8】本発明の第三の実施の形態におけるオゾン水生成装置100Bの平断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1,1A 水槽
2,2A 触媒電極
6A 回転子(旋回水流発生手段)
7A マグネットスターラ(旋回水流発生手段)
21,21A 陽イオン交換膜
22,22A 陽極電極
23,23A 陰極電極
100,100A,100B オゾン水生成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換膜の一方の面に陽極電極を圧接し、他方の面に陰極電極を圧接してなる触媒電極を備え、前記陽極電極に精製水を接触させて、前記陽極電極と前記陰極電極との間に直流電流を印加してオゾン水を発生させるオゾン水生成装置において、
前記陽極電極に白金又は白金被覆金属を使用し、前記陰極電極に塩化銀層を有する銀又は銀被覆金属を使用し、
前記陰極電極に前記精製水の一部を供送することを特徴とするオゾン水生成装置。
【請求項2】
前記触媒電極は、前記精製水が満たされた水槽内に配置され、
前記水槽内に旋回水流を発生させて前記触媒電極に精製水を連続接触させる旋回水流発生手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水生成装置。
【請求項3】
前記触媒電極は、前記精製水が満たされた水槽内に配置され、
前記水槽内の精製水を吸引し加圧して前記触媒電極の陽極電極に吹き付けることを特徴とする請求項1に記載のオゾン水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−83174(P2007−83174A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275847(P2005−275847)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000226150)日科ミクロン株式会社 (29)
【出願人】(504438026)
【Fターム(参考)】