オゾン生成装置とオゾン生成方法
【課題】無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置とオゾン生成方法に関して、オゾン生成効率のより一層の向上を図る。
【解決手段】このオゾン生成装置1は、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路30内に、高電圧が印加される触媒電極12と、該触媒電極12に対して電気的に絶縁された触媒金属体13とを備える。これらは、ガス流路30の上流側から順に、触媒電極12、次いで触媒金属体13の順に配置されている。触媒電極12および触媒電極体13を構成する触媒は、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物である。
【解決手段】このオゾン生成装置1は、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路30内に、高電圧が印加される触媒電極12と、該触媒電極12に対して電気的に絶縁された触媒金属体13とを備える。これらは、ガス流路30の上流側から順に、触媒電極12、次いで触媒金属体13の順に配置されている。触媒電極12および触媒電極体13を構成する触媒は、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無声放電および/又は沿面放電によりオゾンを生成するオゾン生成装置およびオゾン生成方法に関し、特にオゾン生成効率の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオゾン生成技術の従来例として、高電圧電極を接地電極の反りや曲がりに順応させてオゾン発生効率の向上を図ったもの(特許文献1)、酸素原子発生部の圧力を大気圧以下の所定の低圧力としたもの(特許文献2)、あるいは電極の表面に10重量%以上の酸化チタンを含有させた誘電体を積層させたもの(特許文献3)などがある。しかし、これら各特許文献に記載のオゾン生成技術は、放電部分のメカニズムとオゾン生成のメカニズムについて十分に考慮されたものではなく、オゾンを効率良く生成することはできない。
【0003】
具体的には、特許文献1などのように、空気中にて放電を行う場合には、空気に含まれる窒素ガスに対しても放電が行われるため、NOxなどの副産物が生成されやすく、オゾンの生成効率が低下することが避けられない。放電のために多くの電力が必要で、生成コストが多大に掛かる点でも不利がある。
特許文献2の発明方法では、低圧条件下において酸素原子を発生させるため、酸素原子の供給量を増大させることが難しく、オゾン生成効率の向上を図ることが困難である。
特許文献3の発明方法では、生成効率が酸化チタン層に含まれる窒素量に左右されやすく、長期に渡って安定的にオゾンを生成することができない。
【0004】
このように、特許文献1乃至3に記載の従来のオゾン生成技術では、実用上十分なオゾン生成能を得ることが不可能であった。
【0005】
以上のような従来のオゾン生成技術が有する問題を解消することを目的として、本発明者等は、先に非特許文献1を提案した。図11に、当該非特許文献1にかかるオゾン生成装置の構成を示す。この装置101では、セラミックス誘電体120a・120bで区画された放電空隙111内に触媒電極112を配置し、当該放電空隙111内に酸素を含む原料ガスを送り込みながら、触媒電極112に対して高電圧を印加することにより、触媒電極112の表面で無声放電と沿面放電の複合放電を生じさせて、オゾンを生成している。
【0006】
装置101の外殻を構成するハウジング110の上部には原料ガスの供給口126が設けられ、ハウジング110の下部には生成されたオゾンを送り出すための送出口127が設けられている。放電空隙111には、これら供給口126から送出口127に至るガス流路130が形成されており、供給口126から装置101内に送り込まれた原料ガスは、触媒電極112に接触しながらガス流路130を通って送出口127から装置101外に送り出される。触媒電極112を構成する触媒としては、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物(以下、これを第三体と記す)が用いられている。
【0007】
かかる装置101において、酸素ガスの供給下において触媒電極112により放電が行われると、電極表面(触媒表面)に存在する酸素分子にエネルギーが与えられて、酸素分子は基底状態から励起状態に移行する。そして、励起状態とされた酸素分子に、酸素原子が結合することによりオゾンが生成される。
このとき、酸素分子と酸素原子とが結合した結果与えられたエネルギーが、オゾンの生成に必要なエネルギーを上回ると、オゾンが不安的な励起状態となって分解されやすく、オゾン生成効率が低下するおそれがある。
その点、非特許文献1に係る発明方法・装置のように、電極の表面に第三体を配置していると、酸素分子と酸素原子とが結合した結果与えられたエネルギーが、オゾンの生成に必要なエネルギーを上回った場合でも、余分なエネルギーを第三体に直ちに伝達させることができるので、生成されたオゾンが不安定な励起状態に留まることを確実に防ぐことができる。これにより、生成されたオゾンを安定化させることができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2003−146622号公報
【特許文献2】特開平9−86904号公報
【特許文献3】特開平11−21110号公報
【非特許文献1】金属触媒によるオゾン生成法の考察(平成17年電気学会全国大会、平成17年3月17日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、上下水道のオゾン処理に、先の非特許文献1に係るオゾン生成方法および装置を適用することを考えている。しかし、この種の上下水道のオゾン処理においては、莫大な量のオゾンを消費するため、実用上十分なオゾン生成能を得るためには、オゾン生成効率のより一層の向上が望まれ、その点に改良の余地があった。
【0009】
本発明は以上のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置とオゾン生成方法に関して、オゾン生成効率のより一層の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題について鋭意研究を行った結果、上記の第三体を具備する電極(以下、触媒電極と記す)よりも下流側に、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体を配置すれば、触媒電極の最終部分で生成された酸素原子をオゾン生成に寄与させることができ、これにてオゾン生成効率の格段の向上を図ることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置であって、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが、該ガス流路の上流側から順に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の本発明は、無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置であって、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが配置されており、前記触媒金属体が前記触媒電極の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3のように、前記触媒電極および前記触媒電極体を構成する触媒が、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物(第三体)とすることができる。
すなわち、気体吸着により、窒素、アルゴンの1種若しくは両者を電極等に含ませてなるものを触媒電極や触媒金属体として採用してもよいし、アンチモンを真空蒸着してなるもの(アンチモン電極)を触媒電極や触媒金属体として採用することもできる。
かかる触媒は、触媒電極や触媒金属体を構成する電極本体上において、均一若しくは間欠状に、触媒層として形成することができる。格子状のパターンで構成してもよい。
触媒層の形成方法としては、蒸着、貼り付け、合金化などの方法を挙げることができる。
【0014】
具体的には、請求項4のように、前記触媒電極が、アンチモンが蒸着されたチタン電極であり、前記触媒金属体が、アンチモンが蒸着された金属多孔体とすることができる。金属多孔体の具体例としては、金属網であるメッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタルなどを挙げることができる。
【0015】
請求項5記載の本発明に係るオゾン生成方法は、無声放電若しくは沿面放電によるオゾン生成方法であって、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが、該ガス流路の上流側から順に配置されており、前記ガス流路内において、前記原料ガスを前記触媒電極、次いで前記触媒金属体に順に経由させるようにしていることを特徴する。
【0016】
請求項6のように、前記触媒電極および前記触媒電極体を構成する触媒が、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物(第三体)とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のように、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とを、該ガス流路の上流側から順に配置してあると、無声放電および/又は沿面放電により触媒電極の最終部分で生成された酸素原子を、触媒金属体上に存する酸素分子と結合させることができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。つまり、従来においては、オゾン生成に寄与することなく、未反応の原料ガス等とともに排出されていた酸素原子を、触媒金属体上に存する酸素分子と結合させて、オゾンの生成に活用することができ、したがって、オゾン生成効率の格段の向上を図ることができる。
【0018】
本発明におけるオゾン生成効率の向上効果は、原料ガスの供給量を多くしたときに、顕著に発揮される(図9、図10参照)。したがって、本発明に係るオゾン生成方法・装置は、オゾンの大量生産に適しており、特に、上下水道の処理用のオゾン生成装置に適している。
【0019】
また、本発明に係るオゾン生成装置は、実質的に非特許文献1に係る図11に示した装置に触媒金属体を付与するだけで得ることができる。従って、構造が簡単で安価に製造することができる点でも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明に係るオゾン生成装置の構成を模式的に示す側面断面図、図2はオゾン生成装置を含むオゾン発生システムの全体構成図、図3はオゾン生成装置の側面図、図4はオゾン生成装置の正面図、図5はオゾン生成装置の分解側面図、図6はオゾン生成装置を構成する触媒電極および触媒金属体の組み付け位置を説明するための図である。
【0021】
図2に示すように、このオゾン発生システムは、電離室となるオゾン生成装置1、原料ガスとなる高濃度酸素が充填された酸素ガスボンベ2、酸素ガスボンベ2から送出された原料ガスのガス流量をコントロールして、原料ガスをオゾン生成装置1に供給するガス流量制御装置3、オゾン生成装置1に高電圧を印加するための高電圧電源4、オゾン生成装置1を水冷するための冷却装置5、冷却装置5からオゾン生成装置に供給される冷却水の温度を測定する温度計7などで構成される。符号8は、オゾン生成装置1から送出されるオゾンガスの濃度を測定する濃度モニタを示す。
【0022】
図1、図3、図5および図6に示すように、オゾン生成装置1の外殻を構成するハウジング10は、前後一対の金属製のプレート9a・9bと、両プレート9a・9bの間に介在される一枚のスペーサ15とを構成要素とし、これらプレート9a・9bおよびスペーサ15の三者を不離一体的にボルト止め固定してなる。ハウジング10の内部には放電空隙11が形成されており、この放電空隙11内に触媒電極12と触媒金属体13とが組み付けられている。両プレート9a・9bは長方形状の金属板であり、ハウジング10は、上下に長い四角扁平状を呈している。図6に示すように、スペーサ15は長方四角枠状の金属板であり、その盤面中央に開口部16を備える。そして、プレート9a・9bによって前後方向が区画された開口部16が放電空隙11とされる。
【0023】
図5に示すように、スペーサ15の開口部16に臨む両プレート9a・9bの対向面19a・19bには、セラミック誘電体20a・20bが層状に形成されている。両プレート9a・9bのセラミック誘電体20a・20bは、放電空隙11を挟んで対向状に配置され、これらセラミック誘電体20a・20bの間に、触媒電極12および触媒金属体13が配置される。スペーサ15の開口部16には、触媒電極12および触媒金属体13の位置決め用のパッキン21が装着されている。パッキン21は、長方形状の開口部22を有する角枠状の樹脂成形品であり、この中空開口部22内に触媒電極12および触媒金属体13が遊動不能に装着される。
【0024】
触媒電極12は、金属多孔体41の表面に、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスにいずれか一種、或いはこれらの中から選択される複数種類の混合物(第三体)を蒸着してなるものである(図8参照)。かかる第三体は、触媒層40として、貼り付け、合金化などの方法により、金属多孔体と一体化することができる。
【0025】
金属多孔体の具体例としては、金属板に穿孔(パンチング)を施したパンチングメタルや、金属板を引き伸ばし、網目状にしたエキスパンドメタルなどを挙げることができる。本実施形態では、台形状のチタン製のエキスパンドメタルの表面にアンチモンを真空蒸着してなるアンチモン電極を触媒電極12として採用している。
【0026】
触媒金属体13は、表面が触媒で被覆された金属多孔体である。かかる金属多孔体の具体例としては、金属網であるメッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタルなどを挙げることができる。触媒の具体例としては、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスなどの第三体を挙げることができる。これら触媒は、蒸着、貼り付け、合金化などの方法で金属多孔体と一体化することができる。本実施形態では、台形状のステンレスメッシュにアンチモンを真空蒸着して触媒金属体とした。
【0027】
図6に示すように、パッキン21は、その中空開口部22の左右の幅寸法が、下方向に行くに従って漸次幅広となる下拡がりのテーパー状に形成されている。また、この中空開口部22のテーパー形状に対応して、触媒電極12は、その左右の幅寸法が下方向に行くに従って漸次幅広となる下拡がりのテーパー形状(台形形状)に形成されている。触媒金属体13は、長方形状に形成されている。
【0028】
図6において、符号25は、触媒電極12に接続された電極線を放電空隙11から引き出すことを目的として、プレート9aに開設された導出口を示す。かかる導出口25から引き出された電極線を介して、高電圧電源4から触媒電極12に対して高電圧が印加される。
【0029】
図1、図5および図6に示すように、一方のプレート9a(前側のプレート9a)の上部には、原料ガスの供給口26が設けられ、プレート9aの下部には、生成されたオゾンガスを送り出すための送出口27が設けられている。放電空隙11には、これら供給口26から送出口27に至るガス流路30が形成されており、供給口26から装置1の放電空隙11内に送り込まれた原料ガスは、触媒電極12と触媒金属体13に接触しながらガス流路30を通って、送出口27から装置1外に送り出される。送出口27から送り出されたガスに含まれるオゾンガスの濃度は、濃度モニタ8で測定することができる。
【0030】
図1、図3および図4に示すように、各プレート9a・9bの上下の中央部分には、オゾン生成装置1を水冷するための冷却ジャケット31a・31bがボルト止め固定されている。冷却ジャケット31a・31bの内部には、冷却装置5から送られてきた冷却水を流すための冷却水通路が蛇行状に形成されており、それぞれの冷却ジャケット31a・31bの上部には、冷却水通路の入口ノズル32(32a・32b)と出口ノズル33(33a・33b)とが張り出し形成されている。
これら冷却装置5と二つの冷却ジャケット31a・31bとの間には、冷却水の循環経路が形成されている。すなわち、冷却装置5から送られてきた冷却水は、前方側の冷却ジャケット31aの入口ノズル32aから冷却水通路内に流入したのち、出口ノズル33aからチューブ34を介して後方側の冷却ジャケット31bの入口ノズル32bに送られる。そして、冷却ジャケット31bの冷却水通路を流れて出口ノズル33bから冷却装置5に回収される。
【0031】
そのうえで、本実施形態においては、ガス流路30内において、触媒金属体13が触媒電極12よりも下流寄りに、しかも該触媒電極12から電気的に絶縁した状態で配置されている点が着目される。すなわち、送出口27の近傍にかかるガス流路30の最下流位置に、触媒電極12から所定間隔を置いて、触媒電極12に対して電気的に絶縁された状態で触媒金属体13が配置されている。繰り返すが、この触媒金属体13には、高電圧は印加されていない。
【0032】
ここで図7および図8を用いて、触媒金属体13の働きについて説明する。
図7は酸素ガスの放電生成物のエネルギー状態を示す図、図8は触媒電極上におけるオゾンの生成反応を説明するための図である。電気放電による酸素気体中の放電生成物としては、図7に示すようなO2+、O2(E、F)、O(1D)、O、O2(b1Σg+)、O−、O2(a1Δg)、O2−を挙げることができる。これらの内、オゾンの生成エネルギーに近い生成エネルギーを有するO(1D)、O、O2(b)、O2(a)等の粒子が、主にオゾンの生成に関与すると考えられている。
【0033】
ここで、図7に示すように、O2(b)の酸素分子からの生成エネルギーが1.63、O2(a)の酸素分子からの生成エネルギーが0.93、Oの酸素分子からの生成エネルギーが、3.0であると、O2(b)とOもしくは、O2(a)とOによりオゾンが生成されると、そのエネルギーはそれぞれ4.63、3.93となり、オゾンの生成に必要なエネルギー2.6を上回る。そのため、生成されたオゾンが不安的な励起状態となって分解されやすくなり、オゾン生成効率が低下するおそれがある。
【0034】
以上のような不具合は、先の非特許文献1において本発明者等が提案したように、電極にオゾン生成を促進する第三体(窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスのいずれか1種、もしくはこれらから選択される複数種の物質の混合物)である触媒を担持させることで解決することができる。つまり、本実施形態のような触媒電極12を採用することで解決できる。
【0035】
具体的には、図8に示すように、酸素ガスの供給下において触媒電極12で無声放電と沿面放電の複合放電が行われると、酸素分子にエネルギーが与えられて、該触媒電極12上において、酸素分子は基底状態からエネルギー励起状態(O2(b)、O2(a):図7参照)に移行する。そして、励起状態の酸素分子に、放電生成物である酸素原子が結合することにより、オゾンが生成される。そして、オゾン生成の際に付与された過剰なエネルギーが、触媒層40、すなわち第三体に伝達されることにより、生成されたオゾンを基底状態に移行させて、当該オゾンを安定化させることができる。
【0036】
しかし、この形態では、触媒電極12の最終部分(原料ガスの流れ方向において最下流となる部分)で生成された酸素原子が、オゾン生成に寄与せず、オゾン生成効率の低下を招く不利がある。そこで、本実施形態においては、図1のように、ガス流路30内に触媒電極12と該触媒電極12に対して電気的に絶縁された触媒金属体13とを上流側から順に配置するとともに、原料ガスを触媒電極12、次いで触媒金属体13に順に経由させるようにした。
【0037】
以上のようなオゾン生成方法、装置によれば、触媒電極12の最終部分で生成された酸素原子を、触媒金属体13上に存する酸素分子と結合させることができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。つまり、従来においては、オゾン生成に寄与することなく、未反応の原料ガス等とともに放出されていた酸素原子を、触媒金属体13上に存する酸素分子と結合させて、オゾンの生成に活用することができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。
【実施例】
【0038】
以下の実施例においては、触媒電極と触媒金属体とを併用したことによる、オゾン生成効率の向上効果を確認することを目的とする。
【0039】
この実施例においては、上記実施形態に示したオゾン生成装置およびシステムを用いて実験を行った。触媒電極12としては、チタン製のエキスパンドメタルの表面にアンチモンを蒸着してなるアンチモン電極を用いた。触媒金属体13としては、ステンレスメッシュにアンチモンを蒸着してなるアンチモンメッシュを用いた。
【0040】
図9に、触媒金属体(アンチモンメッシュ)を併用した場合と、併用しなかった場合におけるオゾン収率の挙動を示す。つまり、図9のA群は、放電空隙11内に触媒電極12(アンチモン電極)と触媒金属体13(アンチモンメッシュ)とを組み付けた場合のオゾン収率の挙動を示している。B群は、触媒金属12(アンチモン電極)のみを放電空隙11内に組み付けた場合のオゾン収率の挙動を示している。そこでは、0.5〜4(Nl/min)の範囲の4段階で、原料ガスの装置への流量(酸素の流量)を変更し、各流量におけるオゾンの収率を測定した。
また、図10(a)に、触媒電極体12と触媒金属体13を併用したときのオゾン濃度の挙動を、図10(b)に、チタン電極のみをつかってオゾンを生成したときのオゾン濃度の挙動を示す。
【0041】
図9のA群とB群との比較より明らかなように、酸素流量が2Nl/min以下の場合には、触媒金属体13の有無によっては、オゾン収率に殆ど差は認められないが、4Nl/minにおいて、触媒電極のみの形態に比べて、5%以上収率が向上することが確認できた。
【0042】
また、図10(a)(b)の結果より明らかなように、触媒電極12と触媒金属体13を併用した形態(図10(a))のほうが、第三体を具備しないチタン電極のみの形態(図10(b))に比べて、オゾン濃度が格段に向上することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るオゾン生成装置の構成を模式的に示す側面断面図。
【図2】オゾン生成装置を含むオゾン発生システムの全体構成図。
【図3】オゾン生成装置の側面図。
【図4】オゾン生成装置の正面図。
【図5】オゾン生成装置の分解側面図。
【図6】オゾン生成装置を構成する触媒電極および触媒金属体の組み付け位置を説明するための図。
【図7】酸素ガスの放電生成物のエネルギー状態を示す図。
【図8】電極上におけるオゾンの生成反応を説明するための図。
【図9】触媒金属体の有無によるオゾン収率の挙動を示す図。
【図10】(a)は、触媒電極体と触媒金属体とを併用したときのオゾン濃度の挙動を示す図、(b)は、チタン電極のみをつかってオゾンを生成したときのオゾン濃度の挙動を示す図。
【図11】従来のオゾン生成装置の構成を模式的に示す側面断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 オゾン生成装置
12 触媒電極
13 触媒金属体
26 供給口
27 送出口
30 ガス流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、無声放電および/又は沿面放電によりオゾンを生成するオゾン生成装置およびオゾン生成方法に関し、特にオゾン生成効率の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のオゾン生成技術の従来例として、高電圧電極を接地電極の反りや曲がりに順応させてオゾン発生効率の向上を図ったもの(特許文献1)、酸素原子発生部の圧力を大気圧以下の所定の低圧力としたもの(特許文献2)、あるいは電極の表面に10重量%以上の酸化チタンを含有させた誘電体を積層させたもの(特許文献3)などがある。しかし、これら各特許文献に記載のオゾン生成技術は、放電部分のメカニズムとオゾン生成のメカニズムについて十分に考慮されたものではなく、オゾンを効率良く生成することはできない。
【0003】
具体的には、特許文献1などのように、空気中にて放電を行う場合には、空気に含まれる窒素ガスに対しても放電が行われるため、NOxなどの副産物が生成されやすく、オゾンの生成効率が低下することが避けられない。放電のために多くの電力が必要で、生成コストが多大に掛かる点でも不利がある。
特許文献2の発明方法では、低圧条件下において酸素原子を発生させるため、酸素原子の供給量を増大させることが難しく、オゾン生成効率の向上を図ることが困難である。
特許文献3の発明方法では、生成効率が酸化チタン層に含まれる窒素量に左右されやすく、長期に渡って安定的にオゾンを生成することができない。
【0004】
このように、特許文献1乃至3に記載の従来のオゾン生成技術では、実用上十分なオゾン生成能を得ることが不可能であった。
【0005】
以上のような従来のオゾン生成技術が有する問題を解消することを目的として、本発明者等は、先に非特許文献1を提案した。図11に、当該非特許文献1にかかるオゾン生成装置の構成を示す。この装置101では、セラミックス誘電体120a・120bで区画された放電空隙111内に触媒電極112を配置し、当該放電空隙111内に酸素を含む原料ガスを送り込みながら、触媒電極112に対して高電圧を印加することにより、触媒電極112の表面で無声放電と沿面放電の複合放電を生じさせて、オゾンを生成している。
【0006】
装置101の外殻を構成するハウジング110の上部には原料ガスの供給口126が設けられ、ハウジング110の下部には生成されたオゾンを送り出すための送出口127が設けられている。放電空隙111には、これら供給口126から送出口127に至るガス流路130が形成されており、供給口126から装置101内に送り込まれた原料ガスは、触媒電極112に接触しながらガス流路130を通って送出口127から装置101外に送り出される。触媒電極112を構成する触媒としては、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物(以下、これを第三体と記す)が用いられている。
【0007】
かかる装置101において、酸素ガスの供給下において触媒電極112により放電が行われると、電極表面(触媒表面)に存在する酸素分子にエネルギーが与えられて、酸素分子は基底状態から励起状態に移行する。そして、励起状態とされた酸素分子に、酸素原子が結合することによりオゾンが生成される。
このとき、酸素分子と酸素原子とが結合した結果与えられたエネルギーが、オゾンの生成に必要なエネルギーを上回ると、オゾンが不安的な励起状態となって分解されやすく、オゾン生成効率が低下するおそれがある。
その点、非特許文献1に係る発明方法・装置のように、電極の表面に第三体を配置していると、酸素分子と酸素原子とが結合した結果与えられたエネルギーが、オゾンの生成に必要なエネルギーを上回った場合でも、余分なエネルギーを第三体に直ちに伝達させることができるので、生成されたオゾンが不安定な励起状態に留まることを確実に防ぐことができる。これにより、生成されたオゾンを安定化させることができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。
【特許文献1】特開2003−146622号公報
【特許文献2】特開平9−86904号公報
【特許文献3】特開平11−21110号公報
【非特許文献1】金属触媒によるオゾン生成法の考察(平成17年電気学会全国大会、平成17年3月17日)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、上下水道のオゾン処理に、先の非特許文献1に係るオゾン生成方法および装置を適用することを考えている。しかし、この種の上下水道のオゾン処理においては、莫大な量のオゾンを消費するため、実用上十分なオゾン生成能を得るためには、オゾン生成効率のより一層の向上が望まれ、その点に改良の余地があった。
【0009】
本発明は以上のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置とオゾン生成方法に関して、オゾン生成効率のより一層の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題について鋭意研究を行った結果、上記の第三体を具備する電極(以下、触媒電極と記す)よりも下流側に、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体を配置すれば、触媒電極の最終部分で生成された酸素原子をオゾン生成に寄与させることができ、これにてオゾン生成効率の格段の向上を図ることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の本発明は、無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置であって、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが、該ガス流路の上流側から順に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の本発明は、無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置であって、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが配置されており、前記触媒金属体が前記触媒電極の近傍に配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3のように、前記触媒電極および前記触媒電極体を構成する触媒が、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物(第三体)とすることができる。
すなわち、気体吸着により、窒素、アルゴンの1種若しくは両者を電極等に含ませてなるものを触媒電極や触媒金属体として採用してもよいし、アンチモンを真空蒸着してなるもの(アンチモン電極)を触媒電極や触媒金属体として採用することもできる。
かかる触媒は、触媒電極や触媒金属体を構成する電極本体上において、均一若しくは間欠状に、触媒層として形成することができる。格子状のパターンで構成してもよい。
触媒層の形成方法としては、蒸着、貼り付け、合金化などの方法を挙げることができる。
【0014】
具体的には、請求項4のように、前記触媒電極が、アンチモンが蒸着されたチタン電極であり、前記触媒金属体が、アンチモンが蒸着された金属多孔体とすることができる。金属多孔体の具体例としては、金属網であるメッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタルなどを挙げることができる。
【0015】
請求項5記載の本発明に係るオゾン生成方法は、無声放電若しくは沿面放電によるオゾン生成方法であって、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが、該ガス流路の上流側から順に配置されており、前記ガス流路内において、前記原料ガスを前記触媒電極、次いで前記触媒金属体に順に経由させるようにしていることを特徴する。
【0016】
請求項6のように、前記触媒電極および前記触媒電極体を構成する触媒が、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物(第三体)とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のように、酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とを、該ガス流路の上流側から順に配置してあると、無声放電および/又は沿面放電により触媒電極の最終部分で生成された酸素原子を、触媒金属体上に存する酸素分子と結合させることができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。つまり、従来においては、オゾン生成に寄与することなく、未反応の原料ガス等とともに排出されていた酸素原子を、触媒金属体上に存する酸素分子と結合させて、オゾンの生成に活用することができ、したがって、オゾン生成効率の格段の向上を図ることができる。
【0018】
本発明におけるオゾン生成効率の向上効果は、原料ガスの供給量を多くしたときに、顕著に発揮される(図9、図10参照)。したがって、本発明に係るオゾン生成方法・装置は、オゾンの大量生産に適しており、特に、上下水道の処理用のオゾン生成装置に適している。
【0019】
また、本発明に係るオゾン生成装置は、実質的に非特許文献1に係る図11に示した装置に触媒金属体を付与するだけで得ることができる。従って、構造が簡単で安価に製造することができる点でも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明に係るオゾン生成装置の構成を模式的に示す側面断面図、図2はオゾン生成装置を含むオゾン発生システムの全体構成図、図3はオゾン生成装置の側面図、図4はオゾン生成装置の正面図、図5はオゾン生成装置の分解側面図、図6はオゾン生成装置を構成する触媒電極および触媒金属体の組み付け位置を説明するための図である。
【0021】
図2に示すように、このオゾン発生システムは、電離室となるオゾン生成装置1、原料ガスとなる高濃度酸素が充填された酸素ガスボンベ2、酸素ガスボンベ2から送出された原料ガスのガス流量をコントロールして、原料ガスをオゾン生成装置1に供給するガス流量制御装置3、オゾン生成装置1に高電圧を印加するための高電圧電源4、オゾン生成装置1を水冷するための冷却装置5、冷却装置5からオゾン生成装置に供給される冷却水の温度を測定する温度計7などで構成される。符号8は、オゾン生成装置1から送出されるオゾンガスの濃度を測定する濃度モニタを示す。
【0022】
図1、図3、図5および図6に示すように、オゾン生成装置1の外殻を構成するハウジング10は、前後一対の金属製のプレート9a・9bと、両プレート9a・9bの間に介在される一枚のスペーサ15とを構成要素とし、これらプレート9a・9bおよびスペーサ15の三者を不離一体的にボルト止め固定してなる。ハウジング10の内部には放電空隙11が形成されており、この放電空隙11内に触媒電極12と触媒金属体13とが組み付けられている。両プレート9a・9bは長方形状の金属板であり、ハウジング10は、上下に長い四角扁平状を呈している。図6に示すように、スペーサ15は長方四角枠状の金属板であり、その盤面中央に開口部16を備える。そして、プレート9a・9bによって前後方向が区画された開口部16が放電空隙11とされる。
【0023】
図5に示すように、スペーサ15の開口部16に臨む両プレート9a・9bの対向面19a・19bには、セラミック誘電体20a・20bが層状に形成されている。両プレート9a・9bのセラミック誘電体20a・20bは、放電空隙11を挟んで対向状に配置され、これらセラミック誘電体20a・20bの間に、触媒電極12および触媒金属体13が配置される。スペーサ15の開口部16には、触媒電極12および触媒金属体13の位置決め用のパッキン21が装着されている。パッキン21は、長方形状の開口部22を有する角枠状の樹脂成形品であり、この中空開口部22内に触媒電極12および触媒金属体13が遊動不能に装着される。
【0024】
触媒電極12は、金属多孔体41の表面に、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスにいずれか一種、或いはこれらの中から選択される複数種類の混合物(第三体)を蒸着してなるものである(図8参照)。かかる第三体は、触媒層40として、貼り付け、合金化などの方法により、金属多孔体と一体化することができる。
【0025】
金属多孔体の具体例としては、金属板に穿孔(パンチング)を施したパンチングメタルや、金属板を引き伸ばし、網目状にしたエキスパンドメタルなどを挙げることができる。本実施形態では、台形状のチタン製のエキスパンドメタルの表面にアンチモンを真空蒸着してなるアンチモン電極を触媒電極12として採用している。
【0026】
触媒金属体13は、表面が触媒で被覆された金属多孔体である。かかる金属多孔体の具体例としては、金属網であるメッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタルなどを挙げることができる。触媒の具体例としては、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスなどの第三体を挙げることができる。これら触媒は、蒸着、貼り付け、合金化などの方法で金属多孔体と一体化することができる。本実施形態では、台形状のステンレスメッシュにアンチモンを真空蒸着して触媒金属体とした。
【0027】
図6に示すように、パッキン21は、その中空開口部22の左右の幅寸法が、下方向に行くに従って漸次幅広となる下拡がりのテーパー状に形成されている。また、この中空開口部22のテーパー形状に対応して、触媒電極12は、その左右の幅寸法が下方向に行くに従って漸次幅広となる下拡がりのテーパー形状(台形形状)に形成されている。触媒金属体13は、長方形状に形成されている。
【0028】
図6において、符号25は、触媒電極12に接続された電極線を放電空隙11から引き出すことを目的として、プレート9aに開設された導出口を示す。かかる導出口25から引き出された電極線を介して、高電圧電源4から触媒電極12に対して高電圧が印加される。
【0029】
図1、図5および図6に示すように、一方のプレート9a(前側のプレート9a)の上部には、原料ガスの供給口26が設けられ、プレート9aの下部には、生成されたオゾンガスを送り出すための送出口27が設けられている。放電空隙11には、これら供給口26から送出口27に至るガス流路30が形成されており、供給口26から装置1の放電空隙11内に送り込まれた原料ガスは、触媒電極12と触媒金属体13に接触しながらガス流路30を通って、送出口27から装置1外に送り出される。送出口27から送り出されたガスに含まれるオゾンガスの濃度は、濃度モニタ8で測定することができる。
【0030】
図1、図3および図4に示すように、各プレート9a・9bの上下の中央部分には、オゾン生成装置1を水冷するための冷却ジャケット31a・31bがボルト止め固定されている。冷却ジャケット31a・31bの内部には、冷却装置5から送られてきた冷却水を流すための冷却水通路が蛇行状に形成されており、それぞれの冷却ジャケット31a・31bの上部には、冷却水通路の入口ノズル32(32a・32b)と出口ノズル33(33a・33b)とが張り出し形成されている。
これら冷却装置5と二つの冷却ジャケット31a・31bとの間には、冷却水の循環経路が形成されている。すなわち、冷却装置5から送られてきた冷却水は、前方側の冷却ジャケット31aの入口ノズル32aから冷却水通路内に流入したのち、出口ノズル33aからチューブ34を介して後方側の冷却ジャケット31bの入口ノズル32bに送られる。そして、冷却ジャケット31bの冷却水通路を流れて出口ノズル33bから冷却装置5に回収される。
【0031】
そのうえで、本実施形態においては、ガス流路30内において、触媒金属体13が触媒電極12よりも下流寄りに、しかも該触媒電極12から電気的に絶縁した状態で配置されている点が着目される。すなわち、送出口27の近傍にかかるガス流路30の最下流位置に、触媒電極12から所定間隔を置いて、触媒電極12に対して電気的に絶縁された状態で触媒金属体13が配置されている。繰り返すが、この触媒金属体13には、高電圧は印加されていない。
【0032】
ここで図7および図8を用いて、触媒金属体13の働きについて説明する。
図7は酸素ガスの放電生成物のエネルギー状態を示す図、図8は触媒電極上におけるオゾンの生成反応を説明するための図である。電気放電による酸素気体中の放電生成物としては、図7に示すようなO2+、O2(E、F)、O(1D)、O、O2(b1Σg+)、O−、O2(a1Δg)、O2−を挙げることができる。これらの内、オゾンの生成エネルギーに近い生成エネルギーを有するO(1D)、O、O2(b)、O2(a)等の粒子が、主にオゾンの生成に関与すると考えられている。
【0033】
ここで、図7に示すように、O2(b)の酸素分子からの生成エネルギーが1.63、O2(a)の酸素分子からの生成エネルギーが0.93、Oの酸素分子からの生成エネルギーが、3.0であると、O2(b)とOもしくは、O2(a)とOによりオゾンが生成されると、そのエネルギーはそれぞれ4.63、3.93となり、オゾンの生成に必要なエネルギー2.6を上回る。そのため、生成されたオゾンが不安的な励起状態となって分解されやすくなり、オゾン生成効率が低下するおそれがある。
【0034】
以上のような不具合は、先の非特許文献1において本発明者等が提案したように、電極にオゾン生成を促進する第三体(窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスのいずれか1種、もしくはこれらから選択される複数種の物質の混合物)である触媒を担持させることで解決することができる。つまり、本実施形態のような触媒電極12を採用することで解決できる。
【0035】
具体的には、図8に示すように、酸素ガスの供給下において触媒電極12で無声放電と沿面放電の複合放電が行われると、酸素分子にエネルギーが与えられて、該触媒電極12上において、酸素分子は基底状態からエネルギー励起状態(O2(b)、O2(a):図7参照)に移行する。そして、励起状態の酸素分子に、放電生成物である酸素原子が結合することにより、オゾンが生成される。そして、オゾン生成の際に付与された過剰なエネルギーが、触媒層40、すなわち第三体に伝達されることにより、生成されたオゾンを基底状態に移行させて、当該オゾンを安定化させることができる。
【0036】
しかし、この形態では、触媒電極12の最終部分(原料ガスの流れ方向において最下流となる部分)で生成された酸素原子が、オゾン生成に寄与せず、オゾン生成効率の低下を招く不利がある。そこで、本実施形態においては、図1のように、ガス流路30内に触媒電極12と該触媒電極12に対して電気的に絶縁された触媒金属体13とを上流側から順に配置するとともに、原料ガスを触媒電極12、次いで触媒金属体13に順に経由させるようにした。
【0037】
以上のようなオゾン生成方法、装置によれば、触媒電極12の最終部分で生成された酸素原子を、触媒金属体13上に存する酸素分子と結合させることができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。つまり、従来においては、オゾン生成に寄与することなく、未反応の原料ガス等とともに放出されていた酸素原子を、触媒金属体13上に存する酸素分子と結合させて、オゾンの生成に活用することができるので、オゾン生成効率の向上を図ることができる。
【実施例】
【0038】
以下の実施例においては、触媒電極と触媒金属体とを併用したことによる、オゾン生成効率の向上効果を確認することを目的とする。
【0039】
この実施例においては、上記実施形態に示したオゾン生成装置およびシステムを用いて実験を行った。触媒電極12としては、チタン製のエキスパンドメタルの表面にアンチモンを蒸着してなるアンチモン電極を用いた。触媒金属体13としては、ステンレスメッシュにアンチモンを蒸着してなるアンチモンメッシュを用いた。
【0040】
図9に、触媒金属体(アンチモンメッシュ)を併用した場合と、併用しなかった場合におけるオゾン収率の挙動を示す。つまり、図9のA群は、放電空隙11内に触媒電極12(アンチモン電極)と触媒金属体13(アンチモンメッシュ)とを組み付けた場合のオゾン収率の挙動を示している。B群は、触媒金属12(アンチモン電極)のみを放電空隙11内に組み付けた場合のオゾン収率の挙動を示している。そこでは、0.5〜4(Nl/min)の範囲の4段階で、原料ガスの装置への流量(酸素の流量)を変更し、各流量におけるオゾンの収率を測定した。
また、図10(a)に、触媒電極体12と触媒金属体13を併用したときのオゾン濃度の挙動を、図10(b)に、チタン電極のみをつかってオゾンを生成したときのオゾン濃度の挙動を示す。
【0041】
図9のA群とB群との比較より明らかなように、酸素流量が2Nl/min以下の場合には、触媒金属体13の有無によっては、オゾン収率に殆ど差は認められないが、4Nl/minにおいて、触媒電極のみの形態に比べて、5%以上収率が向上することが確認できた。
【0042】
また、図10(a)(b)の結果より明らかなように、触媒電極12と触媒金属体13を併用した形態(図10(a))のほうが、第三体を具備しないチタン電極のみの形態(図10(b))に比べて、オゾン濃度が格段に向上することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るオゾン生成装置の構成を模式的に示す側面断面図。
【図2】オゾン生成装置を含むオゾン発生システムの全体構成図。
【図3】オゾン生成装置の側面図。
【図4】オゾン生成装置の正面図。
【図5】オゾン生成装置の分解側面図。
【図6】オゾン生成装置を構成する触媒電極および触媒金属体の組み付け位置を説明するための図。
【図7】酸素ガスの放電生成物のエネルギー状態を示す図。
【図8】電極上におけるオゾンの生成反応を説明するための図。
【図9】触媒金属体の有無によるオゾン収率の挙動を示す図。
【図10】(a)は、触媒電極体と触媒金属体とを併用したときのオゾン濃度の挙動を示す図、(b)は、チタン電極のみをつかってオゾンを生成したときのオゾン濃度の挙動を示す図。
【図11】従来のオゾン生成装置の構成を模式的に示す側面断面図。
【符号の説明】
【0044】
1 オゾン生成装置
12 触媒電極
13 触媒金属体
26 供給口
27 送出口
30 ガス流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置であって、
酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが、該ガス流路の上流側から順に配置されていることを特徴とするオゾン生成装置。
【請求項2】
無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置であって、
酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが配置されており、
前記触媒金属体が前記触媒電極の近傍に配置されていることを特徴とするオゾン生成装置。
【請求項3】
前記触媒電極および前記触媒金属体を構成する触媒が、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物である請求項1又は2記載のオゾン生成装置。
【請求項4】
前記触媒電極が、アンチモンが蒸着されたチタン電極であり、
前記触媒金属体が、アンチモンが蒸着された金属多孔体である請求項1又は2記載のオゾン生成装置。
【請求項5】
無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成方法であって、
酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが、該ガス流路の上流側から順に配置されており、
前記ガス流路内において、前記原料ガスを前記触媒電極、次いで前記触媒金属体に順に経由させるようにしたことを特徴するオゾン生成方法。
【請求項6】
前記触媒電極および前記触媒金属体を構成する触媒が、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物である請求項5記載のオゾン生成方法。
【請求項1】
無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置であって、
酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが、該ガス流路の上流側から順に配置されていることを特徴とするオゾン生成装置。
【請求項2】
無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成装置であって、
酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが配置されており、
前記触媒金属体が前記触媒電極の近傍に配置されていることを特徴とするオゾン生成装置。
【請求項3】
前記触媒電極および前記触媒金属体を構成する触媒が、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物である請求項1又は2記載のオゾン生成装置。
【請求項4】
前記触媒電極が、アンチモンが蒸着されたチタン電極であり、
前記触媒金属体が、アンチモンが蒸着された金属多孔体である請求項1又は2記載のオゾン生成装置。
【請求項5】
無声放電および/又は沿面放電によるオゾン生成方法であって、
酸素を含む原料ガスが流れるガス流路内に、高電圧が印加される触媒電極と、該触媒電極に対して電気的に絶縁された触媒金属体とが、該ガス流路の上流側から順に配置されており、
前記ガス流路内において、前記原料ガスを前記触媒電極、次いで前記触媒金属体に順に経由させるようにしたことを特徴するオゾン生成方法。
【請求項6】
前記触媒電極および前記触媒金属体を構成する触媒が、窒素、アルゴン、アンチモン、ビスマスの一種、或いはこれらから選択される二以上の物質の混合物である請求項5記載のオゾン生成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図9】
【公開番号】特開2007−217229(P2007−217229A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−39691(P2006−39691)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】
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