説明

オゾン発生装置、およびオゾン発生装置の製造方法

【課題】誘電体管の温度分布をより均一にし、その結果放電電力密度を増大させることが出来、ひいては装置の小型化、あるいは大容量化を実現できるオゾン発生装置を提供する。
【解決手段】気密密閉容器の内部を3つの空間に仕切るように平行に設置された2枚の管板と、この2枚の管板の穴同士を連結するように設けられた接地電極管と、外壁と接地電極管内壁とが所定の間隙距離を有するように接地電極管内部に保持され、内部に金属電極を備えた誘電体管とを備え、間隙を流れる酸素を含む原料ガスを放電させてオゾンを発生させるとともに、2枚の管板と接地電極管外壁、および密閉容器内壁とで区切られた空間に冷却水を流して冷却するように構成されたオゾン発生装置において、管板に対向する間隙部分の放電電力密度が、所定の間隙距離の部分の放電電力密度よりも小さくなるよう、管板に対向する間隙部分の間隙距離を、所定の間隙距離よりも広くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無声放電を利用してオゾンを発生するオゾン発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理などに用いられているオゾン発生装置は、無声放電を利用したものが多い。無声放電を利用したオゾン発生装置の基本構成は、内面に金属膜が形成された円筒状の誘電体管を円筒状の金属管内に、この金属管内壁と誘電体管外壁とが所定の間隙を有する寸法となるよう挿入した構成になっている。この間隙に、酸素を含む原料ガス(空気、あるいは酸素ガスなど)を流して、金属管と誘電体管内面の金属膜の間に高圧の交流電圧を印加し、誘電体管の誘電体を介して間隙に交流電界を発生させることにより原料ガスを放電させ、原料ガス中の酸素をオゾン化することでオゾンを発生させる。このような構造のオゾン発生装置にあって、誘電体管端部付近の沿面放電や金属間の直接放電を防止するために誘電体管端部付近に絶縁物を設けるなどの工夫がなされている。(例えば特許文献1)
【0003】
一方、特に大量の水処理に用いられるようなオゾン発生装置においては、近年、処理量の増大化に伴い、装置を大型化せずに処理量を増大させることが求められている。このような要求を満足させるためには、装置寸法当たりのオゾン発生量を増大させる必要があり、このためには放電電力密度を上げる必要がある。しかしながら、放電電力密度の増大に伴い、熱的な問題も増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−338503号公報
【特許文献2】特開2010−269950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱的な問題は、冷却の不均一性や、投入電力の不均一性すなわち放電の不均一性など、種々の原因が考えられる場合が多く、放電電力密度が小さい従来のオゾン発生装置では、明確になっていない問題も多かった。
【0006】
このほど、発明者らの詳細な検討により、金属管の端部付近に対向する誘電体管の、冷却の不均一性により発生する熱的な問題が明らかとなった。
【0007】
この発明は上記のような発明者らにより明らかにされた、金属管の端部付近の冷却の不均一性の問題を解決するためになされたものである。従来は金属管の端部付近に対向した誘電体管の温度が他の部分よりも高くなり、この部分の温度により放電電力密度の上限が決まっていた。本発明では、誘電体管の温度分布を従来よりも均一にし、全体として放電電力密度を増大させることが出来、ひいては装置の小型化、あるいは大容量化を実現できるオゾン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るオゾン発生装置は、気密密閉容器と、穴が開いた導電金属板であって、気密密閉容器の内部を3つの空間に仕切るように平行に設置された2枚の管板と、この2枚の管板の穴同士を連結するように設けられた接地電極管と、外壁と接地電極管内壁とが所定の間隙距離を有するように接地電極管内部に保持され、内部に金属電極を備えた誘電
体管と、接地電極管と金属電極との間に交流の高電圧を印加するための交流高圧電源とを備え、3つの空間のうち両端にある空間の一方の空間から、少なくとも間隙を通って両端にある空間の他方の空間に酸素を含む原料ガスを流し、誘電体管内部の金属電極を高電位、接地電極管および管板を接地電位として、間隙を流れる原料ガスを放電させてオゾンを発生させるとともに、2枚の管板と接地電極管外壁、および密閉容器内壁とで区切られた空間に冷却水を流して冷却するように構成されたオゾン発生装置であって、管板に対向する間隙部分の放電電力密度が、所定の間隙距離の部分の放電電力密度よりも小さくなるよう、管板に対向する間隙部分の間隙距離を、所定の間隙距離よりも広くしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、管板に対向する間隙部分を広げて、管板に対向する間隙部分の放電電力密度が、所定の間隙距離の部分の放電電力密度よりも小さくなるようにした。そのため管板に対向する部分の誘電体管の温度上昇が、従来に比較して小さくすることができ、誘電体管の温度分布を従来よりも均一にできる。その結果全体として放電電力密度を増大させることが出来、ひいては装置の小型化、あるいは大容量化を実現できるオゾン発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の概略構成を示す側面断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の主要部を示す拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の動作を説明する線図である。
【図4】本発明の実施の形態2によるオゾン発生装置の主要部を示す拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2によるオゾン発生装置の主要部を示す図4のA−A位置の拡大断面図である。
【図6】本発明の実施の形態4によるオゾン発生装置の概略構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1によるオゾン発生装置を図1、図2に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態1によるオゾン発生装置の概略構成を示す側面断面図であり、図2は本発明の主要部を示す拡大断面図である。
【0012】
図1において、気密密閉容器1は、原料ガス入口2側の空間(第一の空間)100を仕切る第一の管板11、および、オゾン化ガス出口3側の空間(第二の空間)200を仕切る第二の管板12を備えている。円筒状の金属管である接地電極管4が、第一の管板11に開けられた穴と第二の管板12に開けられた穴との間に、第一の管板11(以後単に管板11とも記載する)および第二の管板12(以後単に管板12とも記載する)に気密を保つように固定接続されている。管板11と管板12の間の空間13内は冷却水で満たされ、冷却水が流れる。接地電極管4内には、接地電極管4と同軸状に、金属電極となる金属膜6を内壁に有する円筒状の誘電体管5が設けられている。交流高圧電源10から、高圧碍子9を通して、給電素子7によって金属膜6に交流高電圧が給電される。誘電体管5と金属電極となる金属膜6とをあわせて高圧電極管50と記載することもあり、一対の接地電極管4と高圧電極管50を放電管と称することもある。実際のオゾン発生器は多数本の接地電極管4と誘電体管5と給電素子7が配置された構造となっているが、図1では接地電極管4や高圧電極管50と管板11などの詳細構造が解り易いように、1本の放電管のみが配置された構造を図示している。
【0013】
次に動作について説明する。原料ガスは酸素や空気など、オゾンの原料となる酸素を含むガスであり、原料ガスは気密密閉容器1の原料ガス入口2から供給される。誘電体管5は、原料ガスが供給される側の端部が開放し、他端は閉鎖された円筒状に形成されている。通常、交流高圧電源10から金属膜6への給電は、図1のように、誘電体管5の開放された原料ガス入口側の空間100側から高圧碍子9のような絶縁碍子を通して給電素子7により金属膜6に電気的に接触させて行われる。また、誘電体管5は一方が閉鎖されているため、原料ガスは、誘電体管5と接地電極管4との間の間隙を通過する。金属膜6と接地電極管4の間に印加される交流高電圧により、間隙には誘電体管5を介して交流高圧電界が発生し、原料ガスは間隙を通過する間に無声放電によりオゾン化される。オゾン化されたガスは、オゾン化ガス出口3からオゾン処理装置(図示せず)に供給される。誘電体管5を形成する誘電体としては、斯界で周知されているように高比誘電率を有する材料、例えばガラス、セラミックス、石英、ホーローなどが例示される。誘電体管5の外壁と、接地電極管4の内壁との間には所定の寸法の間隙20が形成されており、この間隙20は、例えば0.3mm以下といった狭い寸法に保たれている。
【0014】
また、誘電体管5は、原料ガス入口側の管板11から原料ガス入口側の空間100内に所定の寸法突き出しており、この部分の内壁にも金属膜6が形成されている。この突き出している寸法は、高圧電位となっている誘電体管5の内壁に設けられた金属膜6と、接地電位となっている管板11との間が、誘電体管5の外面を通って沿面放電が生じない距離となる寸法となっている。また、給電素子7を管板11の位置よりも外側、すなわち原料ガス入口側の空間(第一の空間)の位置に設けるため、管板11に対向する誘電体管5の内壁部にも金属膜6が形成されている構成になっている。
【0015】
図2に、管板11付近の接地電極管4および誘電体管5の拡大した断面図を示す。図2では、接地電極管4や誘電体管5の中心軸に対して片側のみを示している。本実施の形態1では、接地電極管4が冷却水に接している部分(以下、主放電部と称する)に対応する間隙20の間隙距離d1は、上記のように例えば0.3mmといった狭い寸法であり、原料ガス入口2が設けられている空間100を仕切る管板11に対向する部分の間隙21の間隙距離d2は、例えば約1.5mmと、主放電部の間隙20の間隙距離よりも大きくしている。管板11に対応する位置の間隙距離が主放電部の間隙距離と同じ距離になっている従来のオゾン発生装置では、管板11に対応する位置の間隙を通過する原料ガスも放電するが、本実施の形態1によれば、管板11に対応する位置の間隙は広いために放電が発生し難く、放電電力密度が小さくなる構成となっている。一方、第二の管板12、すなわちオゾン化ガス出口側に設けられた管板12に対向する誘電体管5の内壁部には金属膜6は形成されていないため、この部分の間隙では放電が生じない。したがって、オゾン化ガス出口3側の管板12に対向する部分の間隙距離は主放電部の間隙距離と同じでも良いし、異なっていても良く、どのような間隙距離になっていても良い。
【0016】
ここで、間隙距離と放電との関係について説明する。図3は間隙距離と放電電力密度との関係について説明した図である。図3は、図1、図2で示すような、主放電部の間隙距離d1に対して、一部間隙距離d2が広い部分がある場合に、広い間隙距離の部分の放電電力密度がどうなるかをシミュレーションにより求めた結果を示すものである。曲線aは、主放電部の間隙距離d1=0.15mm、曲線bはd1=0.2mm、曲線cはd1=0.3mmの場合を示している。図3に示すように、d2をd1より大きくすると、d2の部分の放電電力密度は一旦増大する。すなわち、d2をd1より単に拡げただけでは、d2の部分の放電電力密度が小さくなるわけではないことが解った。
【0017】
図3より、主放電部の間隙距離d1によらず、d2が約0.8mmで放電電力密度が最大
となる。図3において、a、b、cそれぞれの曲線の左端の点は、主放電部の放電電力密
度を示している。また、a、b、cいずれの曲線も、Pで示すd2=0.8mmの直線に対
してほぼ対称となっている。よって、d2における放電電力密度がd1における放電電力密度よりも小さくなるのは、概略、
d2>0.8+(0.8−d1)=(1.6−d1)mm (1)
の条件を満足する場合である。すなわち、管板11に対向する部分の間隙21の間隙距離d2を1.6mm−d1より大きくしておけば、間隙21の部分の放電電力密度が、主放電部の放電電力密度よりも小さくなり、管板11に対向する部分の誘電体管5の温度上昇が抑えられる。なお、式(1)の条件でd2を決定できるのは、主放電部の間隙距離d1が0.4mm以下の場合である。
【0018】
図3から解るように、d2を1.8mm以上とすれば放電電力密度が0、すなわち放電が発生しなくなるため、より好ましい。また、誘電体管5や接地電極管4の製造上のばらつきや設置精度などを考慮すると、さらにd2を大きくしておく方がより効果が大きい。ただし、d2を大きくすれば、放電管を複数配置した場合に、同一の大きさの気密密閉容器に配置できる放電管の数が減少する。このため、d2はできるだけ小さい方が良く、これらを総合的に考慮すると、2mm以下であることが好ましい。
【0019】
誘電体管5の冷却については、接地電極管4の外壁を流れる冷却水により接地電極管4が冷却され、その接地電極管4により間隙20を流れるガスが冷却され、そのガスを介して誘電体管5の冷却が行われる。管板11に対向した誘電体管5の部分は、冷却水に接する管板11からこの管板11に対向した間隙を介して冷却されるので、接地電極管4から間隙を介して冷却される部分よりも冷却水から遠い位置にあるため、冷却能力が低い。このため、誘電体管5の管板11に対向する部分は、誘電体管5の他の部分よりも温度が上昇し易い。本実施の形態1では、管板11に対向する部分の間隙21では、主放電部よりも放電電力密度が小さい。このため、冷却能力が低くても誘電体管5の温度上昇が少なく、他の部分と同じ、あるいは他の部分よりも少ない温度上昇にできる。もし間隙21が主放電部の間隙20と同じ間隙距離の場合は、誘電体管5のうち、この管板11に対向した部分の温度上昇が他の部分よりも大きくなるため、この部分の温度が、誘電体管5の許容上限温度以下となる放電電力しか投入できなかった。一方、本実施の形態1の場合は、管板11に対向する部分の温度は他の部分と同じか低いため、この部分の温度により放電電力の上限が限られることがない。よって、主放電部が従来と同じ寸法の高圧電極管50と接地電極管4を用いた場合、従来に比較して放電管全体に電力を多く投入でき、同じ寸法の高圧電極管50と接地電極管4であっても、大容量のオゾン発生装置とすることができる。また、より小型で、従来と同じオゾン発生量のオゾン発生装置とすることができる。
【0020】
ここで、本発明において、「管板に対向する」とは、管板11の幅(厚み)を延長した範囲に含まれる部分を指す。ただし、加工誤差その他により、多少前後するものを含む。さらに得られる効果をより確実にするために、意図的に管板11に対向する部分に加えて冷却水に対向する部分にも数cm以内でまたがった範囲とすることもありうる。このように本発明は、少なくとも管板に対向する部分は、間隙を、上記で説明した広い間隙にするものである。
【0021】
以上のようなオゾン発生装置、特に接地電極管の製造方法の一例を説明する。あらかじめ、管板11に対向した部分について、接地電極管単体で部分的に内径を拡大する加工を行う。このような加工は、所定の外径(接地電極管の内径より大きい)を有する円筒状の治具等を接地電極管の片端から接地電極管内部に所定の距離だけ圧入することにより容易に実現できる。
【0022】
このように、接地電極管単体で部分的に内径の大きい接地電極管4を作製したのち、一般的に行われる管板11と接地電極管4との接合方法を用いて、オゾン発生装置を構成す
る。一般的に行われる管板11と接地電極管4との接合方法とは、溶接、あるいは拡管(管板に固定するための拡管)、さらにはOリング等により固定する方法などがある。なお、拡管加工で固定する場合は、万一、上記接地電極管単体での加工(管板11に対向する部分の内径を大きくする)において、接地電極管内面に傷等凹凸が生じた場合に、拡管ツールで表面を圧接することより、当該凹凸をある程度平坦化する効果がある。またオゾン側の管板12と接地電極管4との接合においても、どのような接合方法を用いても良い。ただし、この部分の接合を、酸素側の管板11と接地電極管4とが固定された状態で行う場合は、接地電極管のオゾン側を拡管すると接地電極管が延びて曲がるため、拡管は避けた方が良い。
【0023】
なお、通常の熱交換器あるいは従来のオゾン発生装置において一般的に行われている、管板11または管板12と接地電極管4を固定およびシールするための拡管加工においても、結果的に管板に対向する部分のみ接地電極管4の内径を広げることになるが、当該拡管加工における内径の拡大は、0.3mmないし0.6mm程度、半径(間隙に相当)では0.15mmないし0.3mm程度である。この程度の接地電極管4の拡大であれば、図3で示したように、管板に対向する部分で、かえって放電電力密度が増大する可能性がある。従って、本発明での接地電極管4の内径拡大は、通常の拡管加工とは、目的も寸法もまったく異なるものである。
【0024】
実施の形態2.
図4および図5は、本発明の実施の形態2の構成を示す図である。図4は、実施の形態2による主要部を示す拡大断面図であり、図5は図4のA−A部の断面図である。なお、図4は図2と同様、管板11に対向する付近であって、接地電極管4や誘電体管5の中心軸に対して片側のみを示している。
【0025】
本実施の形態2においては、管板11に対向する部分の間隙21に、位置決め部材30を設けたものである。位置決め部材30は誘電体管5の表面に、周方向4箇所貼付されている。位置決め部材30には例えばガラス繊維やテフロン(登録商標)のようなフッ素樹脂やポリエステル、アセテートなどの絶縁性や耐酸化性に富んだ材料を用い、粘着剤には粘着力に富んだものを用いる。さらに、SUSや銅にNIやZnメッキを施した耐酸化性に優れ
た金属材料であっても良い。
【0026】
本実施の形態2によれば、位置決め部材30により、間隙が大きくなった部分において、接地電極管4の中の誘電体管5の偏心が防止でき、管板に対向する部分での間隙を均一にでき、より確実にこの部分での放電電力密度を小さくできるという効果がある。
【0027】
なお、図5においては、位置決め部材30を周方向に4箇所設けた例を示したが、これに限らず、3箇所でも5箇所でもよい。また、ガスが通過するような構造(例えばハニカム状)、あるいは材料(例えば多孔質体)であれば、全周に設けられていてもよい。
【0028】
実施の形態3.
本実施の形態は、実施の形態1と構造はほとんど同じであるが、製造方法が異なるものである。実施の形態1においては、接地電極管4は単体で径を広げる加工を行うが、本実施の形態3においては、管板11への固定と同時に行う。管板11に開けられた接地電極管4を通すための穴の直径は実施の形態1においては接地電極管(一部径を大きくする加工後)の外径より0.2mm程度大きいものであるが、本実施の形態においては、接地電極
管(加工前)の外径よりも例えば約2.0mm大きくしておく。そして、通常(従来)の
オゾン発生装置において、管板11と接地電極管4を固定するための拡管ツールを用いて、接地電極管4の管板11に対向する部分の内径を2.2mm拡げると接地電極管4の肉厚が約0.1mm薄くなり、接地電極管4の当該部分の外径は約2.0mm拡大され、管板11の穴にほぼ接する。さらに、軸方向の位置を微調整しながら、接地電極管4の内径を約0.4mm拡げることにより接地電極管4が管板11の穴に強固に固着されシールが完了する。本実施の形態では、接地電極管4の当該部分の内径は、結果的に主放電部より2.2+0.4=2.6mm大きくなる。誘電体管5の外径はほぼ一定であるから、間隙の距離は、管板11に対向する位置だけ、主放電部よりも1.3mm大きくなることになる。なお、上記加工のうち、最初に接地電極管4の内径を約2.2mm広げる(管板の穴にほぼ接する)までの作業は、通常の拡管と異なり接地電極管4が軸方向に動いてしまうため、管板12側に接地電極管4が軸方向に移動しないようにするためのストッパを設けて実施する必要がある。
【0029】
本実施の形態3においても、実施の形態1と同様の理由で、管板11に対向する部分が電力密度の最大部分にならないため、電力密度の向上、ひいてはオゾン発生装置の小型化ができる効果がある。さらに、接地電極管の内径を大きくする加工と管板に固定する加工を同時(ほぼ一連の動作)としたため、加工工数を減らすことができる効果がある。
【0030】
実施の形態4.
図6は、本発明の実施の形態4によるオゾン発生装置の概略構成を示す側面断面図である。図6において、図1と同一符号は、同一または相当する部分を示す。上記実施の形態1〜3では、当該部分の接地電極管4の内径を大きくする例を示したが、本実施の形態4では、図5に示すように接地電極管4に内径は全ての部分で一定であり、誘電体管5の管板11に対向する位置から外側の部分51の外形を小さくした。
【0031】
このように、管板11に対向する部分の間隙21を、主放電部の間隙20よりも広くするために、誘電体管5の管板11に対向する部分の外径を、主放電部に対応する部分の外径よりも小さくしても良い。さらに、接地電極管4の管板11に対向する部分の内径を大きくするとともに、誘電体管5の管板11に対向する部分の外径を小さくして、管板11に対向する部分の間隙21を、主放電部の間隙20よりも広くしても良い。
【0032】
いずれにしても、本発明は、管板11に対向する部分における放電電力密度が、主放電部の放電電力密度よりも小さくなるよう、管板11に対向する部分の間隙21の間隙距離d2を、主放電部の間隙20の間隙距離d1よりも広くした。より好ましくは、管板11に対向する部分の間隙21の間隙距離d2を、1.6mm−d1以上となるようにした。こ
のため、管板11に対向する部分の間隙21における放電電力密度によって、投入電力の上限が決まることなく、主放電部における放電電力密度を増大でき、放電管への全投入電力を向上させることができる効果がある。
【0033】
以上の実施の形態1から4、すなわち本発明は、特に電力密度が大きいオゾン発生装置に効果がある。すなわち、放電する部分全体における平均的な電力密度が0.2W〜0.7W/cm2といった、高放電電力密度で特に効果があり、本発明によれば、このような高放電電力密度で放電させる場合でも、安定な動作ができるオゾン発生装置を提供できる。
【符号の説明】
【0034】
1:気密密閉容器 2:原料ガス入口
3:オゾン化ガス出口 4:接地電極管
5:誘電体管 6:金属膜(金属電極)
10:交流高圧電源 11:第一の管板(原料ガス入口側の管板)12:第二の管板(オゾン化ガス出口側の管板)
20:主放電部の間隙 21:管板11に対向する部分の間隙
30:位置決め部材 50:高圧電極管
100:原料ガス入口側の空間 200:オゾン化ガス出口側の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密密閉容器と、
穴が開いた導電金属板であって、上記気密密閉容器の内部を3つの空間に仕切るように平行に設置された2枚の管板と、
この2枚の管板の上記穴同士を連結するように設けられた接地電極管と、
外壁と上記接地電極管内壁とが所定の間隙距離を有するように上記接地電極管内部に保持され、内部に金属電極を備えた誘電体管と、
上記接地電極管と上記金属電極との間に交流の高電圧を印加するための交流高圧電源とを備え、
上記3つの空間のうち両端にある空間の一方の空間から、少なくとも上記間隙を通って両端にある空間の他方の空間に酸素を含む原料ガスを流し、上記誘電体管内部の金属電極を高電位、上記接地電極管および上記管板を接地電位として、上記間隙を流れる原料ガスを放電させてオゾンを発生させるとともに、上記2枚の管板と上記接地電極管外壁、および上記気密密閉容器の内壁とで区切られた空間に冷却水を流して冷却するように構成されたオゾン発生装置であって、
上記管板に対向する上記間隙部分の放電電力密度が、上記所定の間隙距離の部分の放電電力密度よりも小さくなるよう、上記管板に対向する上記間隙部分の間隙距離を、上記所定の間隙距離よりも広くしたことを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
上記所定の間隙距離をd1とし、d1が0.4mm以下であり、上記管板に対向する上記間隙部分の間隙距離d2を、1.6mm−d1より大きくしたことを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
上記接地電極管の内径が、上記管板に対向する部分で大きくなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
上記誘電体管の外径が、上記管板に対向する部分で小さくなっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
上記管板に対向する部分の上記間隙部分に、上記誘電体管を上記接地電極管と同軸になるよう配置する位置決め部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
請求項3に記載のオゾン発生装置の製造方法であって、上記接地電極管を単体で、上記接地電極管の端部の内径を拡げる工程の後、上記接地電極管を上記管板に固定する工程を行うことを特徴とする、オゾン発生装置の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載のオゾン発生装置の製造方法であって、上記接地電極管の端部の内径を拡げると同時に、上記接地電極管を上記管板に固定する工程を行うことを特徴とする、オゾン発生装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−18682(P2013−18682A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154594(P2011−154594)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】