説明

オニウム亜硫酸アルキル塩の製造方法

本発明は、オニウム亜硫酸アルキル塩の製造方法であって、オニウムハロゲン化物またはオニウムカルボン酸塩の、対称的に置換された亜硫酸ジアルキルとの、または非対称的に置換された亜硫酸ジアルキルとの、0〜70℃の温度における反応による、前記方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オニウム亜硫酸アルキル塩の製造方法であって、オニウムハロゲン化物またはオニウムカルボン酸塩の、対称的に置換された亜硫酸ジアルキルとの、または非対称的に置換された亜硫酸ジアルキルとの、0〜70℃の温度における反応による、前記方法、およびこの方法により製造された亜硫酸アルキル塩類に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のオニウム塩、例えば硫酸アルキル塩類は、イオン性液体である。これらの特性により、イオン性液体は、現代の研究における有機合成のための伝統的な揮発性有機溶媒に対する有効な代替物である。イオン性液体を新規な反応媒体として用いることは、さらに溶媒排出およびまた触媒の再処理における問題の両方に対する実際的な解決法であり得る(R. Sheldon, Chem. Commun., 2001, 2399〜2407頁)。
【0003】
イオン性液体または液体塩は、有機カチオンおよび一般的に無機アニオンからなるイオン性種である。これらは、いかなる中性分子も含まず、通常373Kより低い融点を有する。しかし、融点はまた、すべての適用領域における当該塩の有用性を制限せずに、一層高くてもよい。有機カチオンの例は、特に、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム、N−アルキルピリジニウム、1,3−ジアルキルイミダゾリウムまたはトリアルキルスルホニウムである。多数の好適なアニオンの中で、例えば、BF、PF、SbF、NO、CFSO、(CFSO、アルキルSO、アリールSO、CFCO、CHCOまたはAlClを挙げることができる。
【0004】
亜硫酸アルキルアニオンまたは亜硫酸アリールアニオンを有するイオン性液体は、知られていない。亜硫酸メチルアニオンを有するオニウム塩が、時折文献中に記載されているに過ぎず、例えばトリメチルフェニルアンモニウム亜硫酸メチル塩(W. VossおよびE. Blanke, Justus Liebigs Ann. Chem., 485 (1931), 258〜279頁)またはテトラブチルアンモニウム亜硫酸メチル塩(M. Juliaら、Tetrahedron, 42 (1986), 3841〜3850頁)である。さらに、オニウム亜硫酸アルキル塩の製造のための一般的な方法はない。
【発明の開示】
【0005】
したがって、本発明の目的は、カチオンおよびアニオン中で自由に選択可能な置換パターンを有する亜硫酸アルキル塩類を生成するオニウム亜硫酸アルキル塩を製造するための方法を提供すること、並びにオニウム亜硫酸アルキル塩を提供することにある。
【0006】
この目的は、本発明の方法により達成される。したがって、本発明は、オニウム亜硫酸アルキル塩の製造方法であって、オニウムハロゲン化物またはオニウムカルボン酸塩の、対称的に置換された亜硫酸ジアルキルとの、または非対称的に置換された亜硫酸ジアルキルとの、0〜70℃の温度における反応による、前記方法に関する。本発明の方法は、アルキル基が、用いる亜硫酸塩からカチオンに移動せず、従ってカチオン中の置換パターンが、亜硫酸アルカンアニオンの選択には依存しないという利点を有する。さらに、用いる亜硫酸ジアルキルは、硫酸アルキルエステルよりも毒性が低い。本発明の方法において得られる副産物は、ハロゲン化アルキルまたはエステルであり、これを、これら自体で、有用な試薬として用いることができる。オニウムハロゲン化物を用いる際に副産物として生成するハロゲン化アルキルは、さらに、一般的にはガスまたは容易に揮発性の化合物であり、これを、主要なプロセス工学的試行を伴わずに反応混合物から除去することができる。
【0007】
1〜10個のC原子を有する対称的に置換された亜硫酸ジアルキル、または1〜10個のC原子を有する非対称的に置換された亜硫酸ジアルキル、またはさらには一層高度にアルキル化された出発物質を共に本発明の方法において用いることが当然可能である。
【0008】
本発明の方法に適するオニウムハロゲン化物は、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、ハロゲン化チオウロニウム、ハロゲン化グアニジニウムまたは複素環式カチオンとのハロゲン化物であり、ここでハロゲン化物を、フッ化物、塩化物または臭化物の群から選択することができる。ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、ハロゲン化グアニジニウムまたは複素環式カチオンとのハロゲン化物を、好ましくは本発明の方法において用いる。
【0009】
本発明の方法に適するオニウムカルボン酸塩は、カルボン酸アンモニウム、カルボン酸ホスホニウム、カルボン酸チオウロニウム、カルボン酸グアニジニウムまたは複素環式カチオンとのカルボン酸塩であり、ここでカルボン酸塩を、炭酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロパン酸塩または酪酸塩の群から選択することができる。カルボン酸アンモニウム、ホスホニウム、グアニジニウムまたは複素環式カチオンとのカルボン酸塩、特に酢酸アンモニウム、ホスホニウム、グアニジニウムまたは複素環式カチオンとの酢酸塩を、好ましくは本発明の方法において用いる。
【0010】
オニウムハロゲン化物を、好ましくは本発明の方法において用いる。
オニウムハロゲン化物またはオニウムカルボン酸塩は、一般的に、商業的に入手できるか、または文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, StuttgartもしくはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において知られている合成方法により、製造することができる。またここで、それ自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いてもよい。
【0011】
ハロゲン化アンモニウムまたはホスホニウムを、例えば式(1)
[XR Hal (1)
により記載することができ、式中、
Xは、N、Pを示し、
Halは、F、ClまたはBrを示し、および
Rは、各々の場合において互いに独立して、
H(ここですべての置換基Rは、同時にはHであってはならない)、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル
を示し、
【0012】
ここで、1つまたは2つ以上のRは、Cl、Brおよび/またはCNにより部分的に、またはF、もしくはFおよびCl、もしくはFおよびBr、もしくはF、ClおよびBrにより部分的に、もしくは完全に置換されていてもよいが、ここで、4つすべてまたは3つのRは、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、
およびここで、αまたはω位にはないRの1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい。
【0013】
したがって、4つすべて、または3つの置換基Rがハロゲンにより完全に置換されている、式(1)で表される化合物、例えば塩化トリス(トリフルオロメチル)メチルアンモニウム、塩化テトラ(トリフルオロメチル)アンモニウムまたは塩化テトラ(ノナフルオロブチル)ホスホニウムは除外される。
【0014】
ハロゲン化グアニジニウムを、例えば式(2)
[C(NR)(NR)(NR)] Hal (2)
により記載することができ、式中、
Halは、F、ClまたはBrを示し、および
〜Rは、各々、互いに独立して、
水素またはCN、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル
を示し、
【0015】
ここで、置換基R〜Rの1つまたは2つ以上は、NO、CN、Clおよび/またはBrにより部分的に、F、またはFおよびCl、またはFおよびBrまたはF、ClおよびBrにより部分的にまたは完全に置換されていてもよいが、ここで、N原子上のすべての置換基は、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、
ここで、置換基R〜Rは、単結合または二重結合により互いに対になって結合していてもよく、および
ここで、置換基R〜Rにおいて、ヘテロ原子に直接結合しておらず、ω位にはない1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい。
【0016】
ハロゲン化チオウロニウムを、例えば式(3)
[(RN)−C(=SR)(NR)] Hal (3)
により記載することができ、式中、
Halは、ClまたはBrを示し、および
〜RおよびRは、各々、互いに独立して、
水素またはCN(ここで水素は、Rについては除外される)
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル
を示し、
【0017】
ここで、置換基R〜RおよびRの1つまたは2つ以上は、F、Clおよび/またはBr、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、またはCNにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、N原子上のすべての置換基は、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、
ここで、置換基R〜RおよびRは、単結合または二重結合により互いに対になって結合していてもよく、およびここで、置換基R〜RおよびRにおいて、ヘテロ原子に直接結合しておらず、ω位にはない1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい。
【0018】
複素環式カチオンとのハロゲン化物を、例えば式(4)
[HetN] Hal (4)
により記載することができ、式中、
Halは、ClまたはBrを示し、および
HetNは、
【化1】

の群から選択される複素環式カチオンを示し、
【0019】
ここで、置換基
1’〜R4’は、各々、互いに独立して、
水素もしくはCN、
1〜20個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニル、
1〜4個のC原子を有し、しかしこれらは複素環のヘテロ原子に結合していないアルキル基を含むジアルキルアミノ、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル
またはアリール−C〜Cアルキル
を示し、
【0020】
ここで、置換基R1’およびR4’は、F、Clおよび/またはBr、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にまたは完全に置換されていてもよいが、ここで、R1’およびR4’は、同時にはCNではなく、または同時にはFもしくは他のハロゲンにより完全に置換されていてはならず、
ここで、置換基R2’およびR3’は、F、Clおよび/またはBr、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、またはNOもしくはCNにより部分的に置換されていてもよく、およびここで、置換基R1’〜R4’において、ヘテロ原子に直接結合しておらず、ω位にはない1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい。
【0021】
〜C20アルキル基は、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシルまたはテトラデシル、随意にフッ素化されたアルキル基、例えばジフルオロメチル、トリフルオロメチル、テトラフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルまたはノナフルオロブチルである。
【0022】
2〜20個のC原子を有し、ここで複数の二重結合がまた存在してもよい直鎖状または分枝状アルケニルは、例えば、ビニル、アリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C17、−C1019〜−C2039;好ましくはビニル、アリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらにまた好ましくは4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
【0023】
2〜20個のC原子を有し、ここで複数の三重結合がまた存在してもよい、直鎖状または分枝状アルキニルは、例えば、エチニル、1−もしくは2−プロピニル、2−もしくは3−ブチニル、さらに4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C15、−C1017〜−C2037、好ましくはエチニル、1−もしくは2−プロピニル、2−もしくは3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルまたはヘキシニルである。
本発明の目的のために、完全に不飽和のシクロアルキルはまた、芳香族置換基を意味するものと解釈される。
【0024】
したがって、3〜7個のC原子を有する非置換の飽和した、または部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニルであり、この各々は、C〜Cアルキル基により置換されていてもよく、ここでシクロアルキル基またはC〜Cアルキル基により置換されているシクロアルキル基は、次にまたFまたはFおよびClにより置換されていてもよい。しかし、シクロアルキル基は同様に、さらなる官能基により、例えばCN、SOR’、SOOR’、SONH、C(O)NHまたはC(O)OR’により置換されていてもよい。R’はここでは、以下に定義する意味を有する。
【0025】
アリール−C〜Cアルキルは、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルを示し、ここでフェニル環およびまたアルキレン鎖は共に、上記のように、FまたはFおよびClにより部分的にまたは完全に置換されていてもよく、特に好ましくはベンジルまたはフェニルプロピルである。しかし、フェニル環またはアルキレン鎖もまた、同様に、他の官能基、例えばCN、SOR’、SOOR’、SONH、C(O)NHまたはC(O)OR’により置換されていてもよい。
【0026】
R’は、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、またはパーフルオロ化されているC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、非置換の、または置換されているフェニルを示す。R’において、C〜Cシクロアルキルは、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
【0027】
R’において、置換フェニルは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、SCF、SOCF、SOCH、COOR’’、SOX’、SONR’’またはSOR’’により置換されているフェニルを示し、ここでX’は、F、ClまたはBrを示し、R’’は、R’について定義したように、フッ素化されていない、または部分的にフッ素化されているC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキル、例えばo−、m−もしくはp−メチルフェニル、o−、m−もしくはp−エチルフェニル、o−、m−もしくはp−プロピルフェニル、o−、m−もしくはp−イソプロピルフェニル、o−、m−もしくはp−ニトロフェニル、o−、m−もしくはp−メトキシフェニル、o−、m−もしくはp−エトキシフェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチル)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル、o−、m−もしくはp−フルオロフェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−ブロモフェニル、o−、m−もしくはp−ヨードフェニル、さらに好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5−トリメチルフェニルを示す。
【0028】
置換基R、R〜RまたはR1’〜R4’において、ヘテロ原子に直接結合しておらず、ω位にはない1個または2個の隣接していない炭素原子はまた、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい。
【0029】
一般性を限定せずに、このようにして改変された置換基R、R〜RおよびR1’〜R4’の例は、以下のものである:
−OCH、−OCH(CH、−CHOCH、−CH−CH−O−CH、−COCH(CH、−CSC、−CSCH(CH、−S(O)CH、−SOCH、−SO、−SO、−SOCH(CH、−SOCHCF、−CHSOCH、−O−C−O−C、−CF、−C、−C、−C、−CFCFH、−CFCHFCF、−CFCH(CF、−CN(C)C、−CHF、−CHCF、−C、−CFH、−CH、−CHC(O)OCH、−CHC(O)CH、−CHまたは−C(O)C
【0030】
置換基R〜Rは、各々、互いに独立して、好ましくは1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基である。式(2)および(3)で表される化合物中の置換基RおよびR、RおよびR並びにRおよびRは、ここでは同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
〜Rは、特に好ましくは、各々、互いに独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、フェニルまたはシクロヘキシル、極めて特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルまたはn−ブチルである。しかし、置換基RおよびR〜Rは同様に、他の官能基により、例えばCN、SOR’、SOOR’、SONH、SONR’、C(O)NH、C(O)NR’またはC(O)OR’により置換されていてもよい。R’はここで、上記で定義した意味を有する。
【0032】
本発明において、式(4)で表される化合物の好適な置換基R1’〜R4’は、水素以外には、好ましくは以下のものである:CN、C〜C20、特にC〜C12アルキル基、および各々がC〜Cアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、または不飽和の、即ちまた芳香族のC〜Cシクロアルキル基、特にフェニルまたはアリール−C〜Cアルキル。
【0033】
置換基R1’およびR4’は、各々、互いに独立して、特に好ましくはCN、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニル、フェニルプロピルまたはベンジルである。これらは、極めて特に好ましくはメチル、CN、エチル、n−ブチルまたはヘキシルである。ピロリジニウムまたはピペリジニウム化合物において、2つの置換基R1’およびR4’は、好ましくは異なっている。
【0034】
置換基R2’またはR3’は、各々の場合において、互いに独立して、特に水素、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである。R2’は、特に好ましくは水素、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはジメチルアミノである。R2’およびR3’は、極めて特に好ましくは水素である。
【0035】
1つの態様において、式(4)で表される複素環式カチオンの置換基R並びにR〜R並びにR1’およびR4’としてのアルキル基は、オニウム亜硫酸アルキル塩中のアニオンのアルキル基とは異なる。
しかし、本発明に従って製造したオニウム亜硫酸アルキル塩はまた、アニオン中のアルキル基と同一であるが、本発明に従ってアルキル化により導入されていない、カチオン中のアルキル基を有していてもよい。
【0036】
グアニジニウムカチオン[C(NR)(NR)(NR)]の4つまでの置換基はまた、単環式、二環式または多環式カチオンが生成するように、対になって結合していてもよい。
【0037】
一般性を制限せずに、このタイプのグアニジニウムカチオンの例は、以下のものである:
【化2】

式中、置換基R〜RおよびRは、前述の、または特に好ましい意味を有することができる。
【0038】
上記に示したグアニジニウムカチオンの炭素環または複素環はまた、随意に、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、SCF、SOCF、SOCH、CN、COOR’’、SONR’’、SOX’もしくはSOR’’により置換されていてもよく、ここでX’は、F、ClもしくはBrを示し、R’’は、R’について定義したように、フッ素化されていない、もしくは部分的にフッ素化されているC〜CアルキルもしくはC〜Cシクロアルキルを示し、または置換もしくは非置換フェニルにより置換されていてもよい。
【0039】
チオウロニウムカチオン[(RN)−C(=SR)(NR)]の4つまでの置換基はまた、単環式、二環式または多環式カチオンが生成するように、対になって結合していてもよい。
【0040】
一般性を制限せずに、このタイプのカチオンの例を以下に示す:
【化3】

式中、Y=Sであり、置換基R、RおよびRは、前述の、または特に好ましい意味を有することができる。
【0041】
上記に示したチオウロニウムカチオンの炭素環または複素環はまた、随意に、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、NO、F、Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、SCF、SOCF、SOCH、COOR”、SONR”、SOX’もしくはSOR”により置換されていてもよく、ここでX’は、F、ClもしくはBrを示し、R”は、R’について定義したように、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、もしくはパーフルオロ化されているC〜CアルキルもしくはC〜Cシクロアルキルを示し、または置換もしくは非置換フェニルにより置換されていてもよい。
【0042】
しかし、置換基R1’〜R4’は、同様に、他の官能基により、例えばCN、SOR’、SOOR’またはCOOR’により置換されていてもよい。R’はここでは、上記で定義した意味を有する。
【0043】
式(4)のHetNは、好ましくは、
【化4】

であり、ここで、置換基R1’〜R4’は、各々、互いに独立して、上記の意味を有する。
【0044】
HetNは、特に好ましくは、上記で定義したように、イミダゾリウム、ピロリジニウムまたはピリジニウムであり、ここで、置換基R1’〜R4’は、各々、互いに独立して、上記の意味を有する。
【0045】
上記の式(1)〜(4)において、Halは、上記で定義したように、本発明において、カルボン酸イオンにより置換されていてもよい。アニオンの選択により、カチオンの選択は制限されない。
【0046】
本発明の方法において用いる対称的に置換された亜硫酸ジアルキルは、好ましくは、1〜10個のC原子を有する、好ましくは1〜4個のC原子を有する、特に好ましくは1〜2個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を含む亜硫酸ジアルキルである。アルキル基は、好ましくは、1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチルである。アルキル基は、好ましくはメチルまたはエチルである。
【0047】
対称的に置換された亜硫酸ジアルキルの例は、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル、亜硫酸ジ(n−プロピル)、亜硫酸ジ(イソプロピル)、亜硫酸ジ(n−ブチル)または亜硫酸ジ(sec−ブチル)である。好ましいのは、亜硫酸ジメチルまたは亜硫酸ジエチルを用いることである。
【0048】
用いる対称的な亜硫酸ジアルキルは、一般的には、商業的に入手できるか、あるいは文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, StuttgartもしくはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において、またはW. VossおよびE. Blanke, Justus Liebigs Ann. Chem., 485 (1931), 258〜279頁による記事から知られている合成方法により、製造することができる。またここで、それ自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いることができる。
【0049】
用いる非対称的に置換された亜硫酸ジアルキルは、好ましくは、1〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基および第2のアルキル基としてメチルまたはエチル基を含む、好ましくは3〜8個のC原子を有するアルキル基を含む亜硫酸ジアルキルである。非対称的に置換された亜硫酸ジアルキルの例は、亜硫酸メチルプロピル、亜硫酸メチルブチル、亜硫酸エチルブチル、亜硫酸メチルペンチル、亜硫酸エチルペンチル、亜硫酸メチルヘキシル、亜硫酸エチルヘキシル、亜硫酸メチルヘプチル、亜硫酸エチルヘプチル、亜硫酸メチルオクチルまたは亜硫酸エチルオクチルである。
【0050】
用いる非対称的な亜硫酸ジアルキルは、文献から、例えば標準的な学術書、例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, StuttgartもしくはRichard C. Larock, Comprehensive Organic Transformations, 第2版、Wiley-VCH, New York, 1999において、またはW. VossおよびE. Blanke, Justus Liebigs Ann. Chem., 485 (1931), 258〜279頁による、もしくはV.M. Pavlov, J. Gen. Chem. USSR (英訳)、41 (1971), 2559〜2561頁による記事から知られている合成方法により製造することができる。またここで、それ自体公知であり、ここでは一層詳細に述べない変法を用いることができる。
【0051】
一般的なスキームが、本発明の方法を要約し、ここで生成するアルキル−ハロゲン化合物の場合における矢印は、化合物の揮発性についての記号を表す:
【化5】

式(1)〜(8)で表される化合物の置換基R、R〜RおよびHetNは、上記の意味に相当する。
【0052】
亜硫酸ジアルキルとの反応は、0〜70℃の温度にて、好ましくは20〜60℃の温度にて、また特に好ましくは室温にて行う。最適な反応温度の選択は、ここでは過剰の亜硫酸ジアルキルのレベル並びに用いるハロゲン化物および亜硫酸ジアルキルのタイプに依存する。一般的に、比較的長いアルキル鎖を含む亜硫酸ジアルキルの場合においては、一層高い温度および一層長い反応時間が必要である。
【0053】
溶媒は必要ではない。しかし、溶媒、例えばジメトキシエタン、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、プロピオニトリル、ジクロロメタンまたは互いの混合物を用いることも可能である。
【0054】
反応は、過剰の、または等モル量の亜硫酸ジアルキルを用いて行う。
あるいはまた、亜硫酸アルキルアニオンとのオニウム塩を、有機塩基の亜硫酸ジアルキルを用いた直接のアルキル化により製造することができる。亜硫酸ジメチルを用いたジメチルアニリンおよびピリジンのアルキル化、これと共に対応するメチルスルホン酸塩の生成についての実験は、W. VossおよびE. Blanke, Justus Liebigs Ann. Chem., 485 (1931), 258〜279頁による記事中に記載されている。低い収率でのメチル亜硫酸塩の対応する生成が推測されるが、証明されていない。この方法の欠点は、カチオンとアニオンとの両方中に同一のアルキル基を有し、従って置換パターンの可能な多様性を制限するオニウム化合物が生成することである。
【0055】
本発明は同様に、本発明の方法により製造されたオニウム亜硫酸アルキル塩に関する。当該化合物の数種は知られている。本発明の方法を用いると、これらの化合物への接近手段が単純化され、従ってこれらの化合物の利用の可能性が増大する。
【0056】
さらに、本発明は同様に、式(9)
[Kt][alkyl−O−SO (9)
式中、
Ktは、非対称テトラアルキルアンモニウム、対称および非対称ホスホニウム、グアニジニウム、チオウロニウムカチオンまたは複素環式カチオンを示し、ここで亜硫酸N−メチルピリジニウムは除外される、
で表されるオニウム亜硫酸アルキル塩であって、本発明の方法により得られる、前記オニウム亜硫酸アルキル塩に関する。対応するカチオンは、すでに好適なオニウムハロゲン化物の記載中で述べられている。
【0057】
当業者にはいうまでもないが、前述のすべての置換基、例えばH、N、O、Cl、Fは、対応する同位体により置換され得る。
【0058】
本発明は同様に、本発明の式(9)で表される化合物の、溶媒、溶媒添加剤、伝熱媒体、還元剤、酸化防止剤、相間移動触媒、抽出剤、添加剤、界面活性物質、電気化学電池における電解質、改質剤、または可塑剤としての使用に関する。
【0059】
さらに、式(9)で表される化合物はまた、硫酸アルキルアニオンを有するオニウム塩の酸化による合成のための出発物質として適する。この方法は、硫酸アルキルアニオンを有するオニウム塩の製造のための有利な代替法を表し、これは、高度に毒性の硫酸ジアルキルを用いることが不必要であるという、硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチルを用いる有機塩基の慣用の直接のアルキル化にまさる利点を有する。この反応における好適なオキシダントは、当業者に知られているすべてのオキシダント、例えば酸素である。
【0060】
溶媒または溶媒添加剤として用いる場合には、本発明の化合物は、当業者に知られているすべてのタイプの反応、例えば遷移金属、酵素または他の生体触媒により触媒される反応、例えばヒドロホルミル化反応、オリゴマー化反応、C−C結合形成反応、例えばHeckカップリング、しかしまたエステル化、異性化反応またはアミド結合を形成するための反応に適する。
【0061】
さらなるコメントを伴わなくても、当業者は、前述の記載を最も広い範囲において用いることができると推測される。従って、好ましい態様および例は、単に記載的開示であり、これはいかなる方法においても絶対に限定的ではないと見なされるべきである。
【0062】
例において他に示さない限りは、NMRスペクトルを、20℃で、重水素ロックを伴う5mmのH/BB広帯域ヘッドを有するBruker ARX 400分光計において、重水素化溶媒に溶解した溶液について測定した。種々の核の測定周波数は、以下の通りである:H:400.13MHzおよび31P:161.98MHz。参照方法を、各々のスペクトルまたは各々のデータの組について別個に示す。
【0063】
例:
例1:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム亜硫酸メチル塩
【化6】

8.81g(50.4mmol)の塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムおよび5.56g(50.5mmol)の亜硫酸ジメチルの混合物を、室温で72時間、不活性ガス雰囲気(窒素)の下で密閉した100mlの反応容器中で攪拌する。反応の終了を、NMR測定により決定する。生成物を、真空において13.3Paおよび60℃(油浴の温度)で1時間にわたりポンプで除去して、11.8gの液体1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム亜硫酸メチル塩を得る。収率は、事実上定量的である。生成物を、NMR分光法により調査する。
【0064】
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 0.88 t (CH3); 1.28 m (CH2); 1.79 m (CH2); 3.17 s (CH3O); 3.86 s (CH3); 4.19 t (CH2); 7.54 d,d (CH); 7.56 d,d (CH); 9.66 br. s. (CH); 3JH,H = 7.1 Hz; JH,H = 1.5 Hz.
【0065】
例2:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム亜硫酸エチル塩
【化7】

6.38g(36.5mmol)の塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムおよび6.66g(48.2mmol)の亜硫酸ジエチルの混合物を、60〜70℃(油浴の温度)で48時間、不活性ガス雰囲気(窒素)の下で大気圧よりも1〜1.5bar高い圧力についての圧力バルブを有する密閉した反応容器中で攪拌する。反応の終了を、NMR測定により決定する。生成物を、真空において13.3Paおよび60℃(油浴の温度)で2時間にわたりポンプで除去して、8.82gの液体1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム亜硫酸エチル塩を得る。収率は、事実上定量的である。生成物を、NMR分光法により調査する。
【0066】
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 0.89 t (CH3); 1.06 t (CH3); 1.28 m (CH2); 1.79 m (CH2); 3.56 q (CH2O); 3.87 s (CH3); 4.18 t (CH2); 7.47 m (CH); 7.51 m (CH); 9.56 br. s. (CH); 3JH,H = 7.1 Hz.
【0067】
例3:1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム亜硫酸エチル塩
【化8】

3.14g(18.0mmol)の塩化1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムおよび4.97g(36.0mmol)の亜硫酸ジエチルの混合物を、60〜70℃(油浴の温度)で30時間、不活性ガス雰囲気(窒素)の下で大気圧よりも1〜1.5bar高い圧力についての圧力バルブを有する密閉した反応容器中で攪拌する。反応の終了を、NMR測定により決定する。生成物を、真空において13.3Paおよび60℃(油浴の温度)で14時間にわたりポンプで除去して、4.41gの液体1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム亜硫酸エチル塩を得る。収率は、事実上定量的である。生成物を、NMR分光法により調査する。
【0068】
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 0.89 t (CH3); 1.06 t (CH3); 1.28 m (CH2); 1.79 m (CH2); 3.56 q (CH2O); 3.87 s (CH3); 4.18 t (CH2); 7.47 m (CH); 7.51 m (CH); 9.56 br. s. (CH); 3JH,H = 7.1 Hz.
【0069】
例4:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム亜硫酸メチル塩
【化9】

4.90g(33.4mmol)の塩化1−エチル−3−メチルイミダゾリウムおよび5.67g(41.0mmol)の亜硫酸ジエチルの混合物を、60℃(油浴の温度)で60時間、不活性ガス雰囲気(窒素)の下で大気圧よりも1〜1.5bar高い圧力についての圧力バルブを有する密閉した反応容器中で攪拌する。反応の終了を、NMR測定により決定する。生成物を、真空において13.3Paおよび60℃(油浴の温度)で2時間にわたりポンプで除去して、7.23gの液体1−エチル−3−メチルイミダゾリウム亜硫酸エチル塩を得る。収率は、事実上定量的である。生成物を、NMR分光法により調査する。
【0070】
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 1.06 t (CH3); 1.43 t (CH3); 3.56 q (CH2O); 3.87 s (CH3); 4.22 q (CH2); 7.47 m (CH); 7.53 m (CH); 9.49 br. s. (CH); 3JH,H = 7.3 Hz.
【0071】
例5:テトラブチルアンモニウム亜硫酸メチル塩
【化10】

1.84g(6.1mmol)の酢酸テトラブチルアンモニウムおよび0.672g(6.1mmol)の亜硫酸ジメチルの混合物を、室温で91時間、不活性ガス雰囲気(窒素)の下で密閉した反応容器中で攪拌する。反応の終了を、NMR測定により決定する。生成物を、真空において13.3Paおよび室温で2時間にわたりポンプで除去して、1.98gの液体テトラブチルアンモニウム亜硫酸メチル塩を得る。収率は、事実上定量的である。生成物を、NMR分光法により調査する。
【0072】
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 0.95 t (4CH3); 1.34 t,q (4CH2); 1.60 m (4CH2); 3.10 m (4CH2); 3.15 s (CH3O); 3JH,H = 7.4 Hz.
【0073】
例6:テトラブチルアンモニウム亜硫酸エチル塩
【化11】

3.69g(12.2mmol)の酢酸テトラブチルアンモニウムおよび0.672g(12.2mmol)の亜硫酸ジメチルの混合物を、室温で116時間、不活性ガス雰囲気(窒素)の下で密閉した反応容器中で攪拌する。反応の終了を、NMR測定により決定する。生成物を、真空において13.3Paおよび室温で3時間にわたりポンプで除去して、4.19gの液体テトラブチルアンモニウム亜硫酸エチル塩を得る。収率は、事実上定量的である。生成物を、NMR分光法により調査する。
【0074】
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 0.90 t (4CH3); 1.06 t (CH3); 1.33 t,q (4CH2); 1.60 m (4CH2); 3.13 m (4CH2); 3.52 q (CH2O); 3JH,H = 7.4 Hz.
【0075】
例7:テトラメチルアンモニウム亜硫酸エチル塩
【化12】

1.34g(14.4mmol)のフッ化テトラメチルアンモニウムおよび3.17g(28.8mmol)の亜硫酸ジメチルの混合物を、70℃(油浴の温度)で2時間、不活性ガス雰囲気(窒素)の下で大気圧よりも1〜1.5bar高い圧力についての圧力バルブを有する密閉した反応容器中で攪拌する。反応の終了を、NMR測定により決定する。過剰の亜硫酸ジメチルを、真空において13.3Paおよび100℃(油浴の温度)で2時間にわたりポンプで除去して、2.34gの固体テトラブチルアンモニウム亜硫酸エチル塩を得る。融点は、155〜157℃である。収率は、96.3%である。生成物を、NMR分光法により調査する。
【0076】
H NMR(基準:TMS;溶媒:DO)、ppm: 3.05 s (4CH3); 3.21 s (CH3O).
【0077】
例8:1,3−ジメチルイミダゾリウム亜硫酸メチル塩
【化13】

5.89g(71.7mmol)のN−メチルイミダゾールおよび7.90g(71.7mmol)の亜硫酸ジメチルの混合物を、室温で19日間、不活性ガス雰囲気(窒素)の下で密閉した丸底フラスコ(50ml)中で攪拌する。反応の終了を、NMR測定により決定する。生成物を、真空において13.3Paおよび室温で12時間にわたりポンプで除去して、13.63gの液体1,3−ジメチルイミダゾリウム亜硫酸メチル塩を得る。収率は、事実上定量的である。生成物を、NMR分光法により調査する。
【0078】
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 3.18 s (CH3O); 3.86 s (2CH3); 7.51 d (2CH); 9.45 br. s. (CH); 4JH,H = 1.6 Hz.
【0079】
例9:1,3−ジメチルイミダゾリウム亜硫酸メチル塩の酸化
【化14】

気体状酸素を、1.33gの1,3−ジメチルイミダゾリウム亜硫酸メチル塩を20mlのアセトニトリルに溶解した溶液を通して24時間吹き込む。固体生成物を濾別し、真空において13.3Paおよび50℃で1時間にわたりポンプで除去して、0.71gの固体生成物を得、これは、NMRおよび元素分析により1,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸水素塩であると示すことができる。
【0080】
13C NMR(基準:TMS外部;溶媒:DO)、ppm: 36.4 q (2CH3), 124.0 d (2CH), 137.2 d (CH), 1JC,H = 144 Hz, 1JC,H = 202 Hz,
1JC,H = 223 Hz.
元素分析:観測値、%:C 32.08;H 5.12;N 14.91;S 17.01;
10Sについての計算値、%:C 30.93;H 5.19;N 14.42;S 16.51。
【0081】
アセトニトリルを、ロータリーエバポレーターにより除去し、残留する生成物(0.5g)を、NMR分光法により調査する。スペクトルは、1,3−ジメチルイミダゾリウム硫酸メチル塩のスペクトルと同一である。
H NMR(基準:TMS;溶媒:CDCN)、ppm: 3.50 s (CH3O); 3.84 s (2CH3); 7.39 d (2CH); 8.86 br. s. (CH); 4JH,H = 1.5 Hz.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オニウム亜硫酸アルキル塩の製造方法であって、オニウムハロゲン化物またはオニウムカルボン酸塩の、対称的に置換された亜硫酸ジアルキルとの、または非対称的に置換された亜硫酸ジアルキルとの、0〜70℃の温度における反応による、前記方法。
【請求項2】
反応を、対称的に置換された亜硫酸ジアルキルと行い、ここでアルキル基が1〜10個のC原子を有することができることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応を、非対称的に置換された亜硫酸ジアルキルと行い、ここで1つのアルキル基が1〜10個のC原子を有することができ、第2のアルキル基がメチルまたはエチルを示すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ハロゲン化物が、ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、ハロゲン化チオウロニウム、ハロゲン化グアニジニウムまたは複素環式カチオンとのハロゲン化物であり、ここでハロゲン化物を、フッ化物、塩化物または臭化物の群から選択することができることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
カルボン酸塩が、酢酸アンモニウム、酢酸ホスホニウム、酢酸グアニジニウムまたは複素環式カチオンとの酢酸塩であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ハロゲン化物が、式(1)
[XR Hal (1)
式中、
Xは、N、Pを示し、
Halは、F、ClまたはBrを示し、および
Rは、各々の場合において互いに独立して、
H(ここですべての置換基Rは、同時にはHであってはならない)、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル
を示し、
ここで、1つまたは2つ以上のRは、Cl、Brおよび/またはCNにより部分的に、またはF、もしくはFおよびCl、もしくはFおよびBr、もしくはF、ClおよびBrにより部分的にもしくは完全に置換されていてもよいが、ここで、4つすべてまたは3つのRは、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、
およびここで、αまたはω位にはないRの1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい、
に適合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ハロゲン化物が、式(2)
[C(NR)(NR)(NR)] Hal (2)
式中、
Halは、F、ClまたはBrを示し、および
〜Rは、各々、互いに独立して、
水素またはCN、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル
を示し、
ここで、置換基R〜Rの1つまたは2つ以上は、NO、CN、Clおよび/またはBrにより部分的に、F、またはFおよびCl、またはFおよびBrまたはF、ClおよびBrにより部分的にまたは完全に置換されていてもよいが、ここで、N原子上のすべての置換基は、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、
ここで、置換基R〜Rは、単結合または二重結合により互いに対になって結合していてもよく、および
ここで、置換基R〜Rにおいて、ヘテロ原子に直接結合しておらず、ω位にはない1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい、
に適合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ハロゲン化物が、式(3)
[(RN)−C(=SR)(NR)] Hal (3)
式中、
Halは、ClまたはBrを示し、および
〜RおよびRは、各々、互いに独立して、
水素またはCN(ここで水素は、Rについては除外される)
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にまたは完全に不飽和のシクロアルキル
を示し、
ここで、置換基R〜RおよびRの1つまたは2つ以上は、F、Clおよび/またはBr、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、またはCNにより部分的に置換されていてもよいが、ここで、N原子上のすべての置換基は、ハロゲンにより完全に置換されていてはならず、
ここで、置換基R〜RおよびRは、単結合または二重結合により互いに対になって結合していてもよく、およびここで、置換基R〜RおよびRにおいて、ヘテロ原子に直接結合しておらず、ω位にはない1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい、
に適合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ハロゲン化物が、式(4)
[HetN] Hal (4)
式中、
Halは、ClまたはBrを示し、および
HetNは、
【化1】

の群から選択される複素環式カチオンを示し、
ここで、置換基
1’〜R4’は、各々、互いに独立して、
水素もしくはCN、
1〜20個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の二重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つもしくは2つ以上の三重結合を有する直鎖状もしくは分枝状アルキニル、
1〜4個のC原子を有するが、これらは複素環のヘテロ原子に結合していないアルキル基を含むジアルキルアミノ、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基により置換されていてもよい、飽和の、部分的にもしくは完全に不飽和のシクロアルキル
またはアリール−C〜Cアルキル
を示し、
ここで、置換基R1’およびR4’は、F、Clおよび/またはBr、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にまたは完全に置換されていてもよいが、ここで、R1’およびR4’は、同時にはCNではなく、または同時にはFもしくは他のハロゲンにより完全に置換されていてはならず、
ここで、置換基R2’およびR3’は、F、Clおよび/またはBr、特に−Fおよび/または−Clにより部分的にもしくは完全に、またはNOもしくはCNにより部分的に置換されていてもよく、
およびここで、置換基R1’〜R4’において、ヘテロ原子に直接結合しておらず、ω位にはない1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−C(O)−、−S−、−S(O)−または−SO−の群から選択された原子および/または原子団により置換されていてもよい、
に適合することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ハロゲン化物の亜硫酸ジアルキルとの反応を、溶媒を用いずに行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
式(9)
[Kt][alkyl−O−SO (9)
式中、Ktは、非対称テトラアルキルアンモニウム、対称および非対称ホスホニウム、グアニジニウム、チオウロニウムカチオンまたは複素環式カチオンを示し、ここで亜硫酸N−メチルピリジニウムは除外される、
で表されるオニウム亜硫酸アルキル塩であって、請求項1に記載の方法により得られる、前記オニウム亜硫酸アルキル塩。
【請求項12】
請求項11に記載の化合物の、溶媒、溶媒添加剤、伝熱媒体、還元剤、酸化防止剤、相間移動触媒、抽出剤、添加剤、界面活性物質、電気化学電池における電解質、改質剤、または可塑剤としての使用。
【請求項13】
請求項11に記載の化合物の、硫酸アルキルアニオンを有するオニウム塩の酸化による合成のための、出発物質としての使用。

【公表番号】特表2009−501167(P2009−501167A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520734(P2008−520734)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/005742
【国際公開番号】WO2007/006388
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】