説明

オフセット印刷用ロール、およびその製造方法

【課題】繊維抜けによるヒッキートラブルが発生しないばかりか、ヒッキー除去性能を長期にわたって維持するオフセット印刷用ロール、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ベースゴム中に該ゴムと硬度の異なるゴムチップが分散されてなる表面層を有することを特徴とするオフセット印刷用ロール。ベースゴムを形成するための未加硫ゴムおよび加硫ゴムチップを含む混合物を混練りし、未加硫ゴムベース生地を調製する工程;該未加硫ゴムベース生地を圧延して、生地シートを形成する工程;該生地シートを、ロール母材を有する被積層体に積層する工程;および積層物を加熱して、未加硫ゴムを加硫せしめる工程を含むオフセット印刷用ロールの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオフセット印刷用ロール、特に刷版表面に存在するヒッキーを掻き取るのに適したオフセット印刷用ヒッキーロール、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷において印刷物に生じる問題の一つにヒッキー疵と呼ばれるものがある。ヒッキー疵は、インキ乾燥皮膜の破片、印刷紙から発生する紙粉、工場内に浮遊している粉塵等のヒッキーと呼ばれる異物(ゴミ)が刷版に付着している場合に発生する。従ってヒッキー疵を解消するには、刷版に付着しているヒッキーを除去すればよい。
【0003】
版面のゴミを除去するゴミ取りロールとして、繊維片またはカット繊維を表面に突起させたロールが提案されている(特許文献1)。そのようなロールは、繊維片またはカット繊維を練り込んだゴムを加圧加熱下で加硫し、そのゴムロール表面を切削処理することにより得られる。
【0004】
しかしながら、そのようなロールは、版面との摩擦によりロール表面に突起している繊維が脱落または削り取られてしまい、ヒッキー除去性能が低下するばかりか、ヒッキートラブルの原因となった。また、再度ゴミ取り効果を復活させるには、サンドペーパーでゴムロール表面を削るか、もしくは再研磨を行わなければならない。しかも、当該ロールは、版面に接し、版面の回転に追従して回転するインキ着けロールを兼ねている為、それをインキの切替時に洗浄する際、それに付着・保持されているインキの量が多く、洗浄に長時間を有する。
【特許文献1】特許第2720315号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような繊維抜けによるヒッキートラブルが発生しないばかりか、ヒッキー除去性能を長期にわたって維持するオフセット印刷用ロール、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベースゴム中に該ゴムと硬度の異なるゴムチップが分散されてなる表面層を有することを特徴とするオフセット印刷用ロールに関する。
【0007】
本発明はまた、
ベースゴムを形成するための未加硫ゴムおよび加硫ゴムチップを含む混合物を混練りし、未加硫ゴムベース生地を調製する工程;
該未加硫ゴムベース生地を圧延して、生地シートを形成する工程;
該生地シートを、ロール母材を有する被積層体に積層する工程;および
積層物を加熱して、未加硫ゴムを加硫せしめる工程
を含む上記オフセット印刷用ロールを製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオフセット印刷用ロールは、ロール表面の硬度差によってヒッキーを掻き取るので、ヒッキートラブルが発生しないばかりか、ヒッキー除去性能を長期にわたって維持できる。本発明のオフセット印刷用ロールは、軸芯方向に摺動させて使用されなくてもヒッキー除去性能を発揮できるが、軸芯方向に摺動させて使用されることにより、ヒッキー除去性能をより一層、有効に発揮できる。
しかも、本発明のオフセット印刷用ロールにおいて起こりうる模様残りは、ベースゴムとゴムチップとの硬度差およびゴムチップの粒径をそれぞれ特定範囲内とすることにより、より有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に係るオフセット印刷用ロール(以下、単に「ロール」という)は特定の表面層を有するものである。
表面層は、ベースゴム中に該ゴムと硬度の異なるゴムチップが分散されてなるものであり、そのような硬度差に基づいて刷版表面のヒッキーを掻き取ることができる。具体的には、例えば、表面層がベースゴム中に該ゴムより硬度の高いゴムチップが分散されてなる場合(A)、および表面層がベースゴム中に該ゴムより硬度の低いゴムチップが分散されてなる場合(B)とが挙げられる。
【0010】
表面層が上記(A)の構成を有する場合、比較的硬度の低いベースゴム中に、比較的硬度の高いゴムチップが分散されている。そのような表面層1は内部だけでなく、その最表面2においてもゴムチップ3が存在するので、本発明のロールは刷版とのニップ形成時において、当該ゴムチップ部分が他の部分と比較して強く刷版表面を押圧する。その結果、ロール表面と刷版表面との接触面間においてゴムチップによる強圧力部分が分布するようになり、これによって刷版表面のヒッキーを効果的に掻き取ることができる。
【0011】
表面層が上記(B)の構成を有する場合、比較的硬度の高いベースゴム中に、比較的硬度の低いゴムチップが分散されている。そのような表面層1は内部だけでなく、その最表面2においてもゴムチップ3が存在するので、本発明のロールは刷版とのニップ形成時において、当該ゴムチップ部分が他の部分と比較して弱く刷版表面を押圧する。その結果、ロール表面と刷版表面との接触面間においてベースゴムによる強圧力部分が分布するようになり、これによって刷版表面のヒッキーを効果的に掻き取ることができる。
【0012】
ベースゴムとゴムチップとの硬度差は、表面層が上記いずれの構成を有する場合であっても、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、JIS−Aゴム硬度で10〜70が好ましく、20〜60がより好ましい。以下、特記しない限り、表面層が上記(A)および(B)のいずれの構成を有する場合にも共通した記載である。
【0013】
本明細書中、硬度はJIS−Aゴム硬度で示すものとし、デュロメータ タイプA型硬度計で測定した値を用いている。詳しくは、JIS−K−6253に規定されるデュロメーター硬さ試験、より詳しくはタイプAデュロメーター硬さ試験で測定された硬度を用いている。
【0014】
ベースゴムの硬度は、通常10〜70であるが、特に表面層が上記(A)の構成を有する場合、ベースゴムの硬度は20〜50であることが好ましい。表面層が上記(B)の構成を有する場合、ベースゴムの硬度は30〜70であることが好ましい。
【0015】
ゴムチップの硬度は、ヒッキー除去性能および模様残り防止性能の観点から、10〜90が好ましい。特に表面層が上記(A)の構成を有する場合、ゴムチップの硬度は30〜80であることがより好ましい。表面層が上記(B)の構成を有する場合、ゴムチップの硬度は10〜50であることがより好ましい。
【0016】
ゴムチップの粒径は通常、0.5〜5mmであり、好ましくは1〜3mmである。
ゴムチップの粒径を上記の好ましい範囲とするとともに、ベースゴムとゴムチップとの硬度差を上記のより好ましい範囲とすることにより、模様残りを有効に防止できる。すなわち、本発明においてはベースゴムとゴムチップとの間に硬度差を設けるので、印刷物にそのような硬度差に基づく模様残りが発生し易い。しかし、本発明においてはゴムチップ粒径および硬度差を上記範囲内とすることによって、模様残りを有効に防止できる。
【0017】
ゴムチップの含有量は通常、ベースゴムに対して5〜50重量%であり、好ましくは20〜40重量%である。
【0018】
ベースゴムおよびゴムチップは加硫物であって、従来よりオフセット印刷用ロールの分野で当該ロールの弾性層に使用されている材料が使用される。例えば、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムおよび塩化ビニル樹脂等が挙げられる。ベースゴムおよびゴムチップの材料はそれぞれ独立してそれらの材料からなる群から選択されてよい。本明細書中、ベースゴムは特記しない限り、加硫後のゴムを意味するものとする。
【0019】
表面層の厚みは通常、1〜8mmであり、好ましくは2〜4mmである。
表面層の表面におけるマトリックスゴムとゴムチップとの段差は、印刷物への模様残りの観点から、0〜100μm、特に40〜80μmが好ましい。表面層が上記(A)の構成を有する場合、ゴムチップ部の高さは通常、マトリックス部と同じか、または高い。表面層が上記(B)の構成を有する場合、ゴムチップ部の高さは通常、マトリックス部と同じか、または低い。後述するローラの製造方法において、通常行う切削処理によって、硬度が低い方が切削され易いためである。
【0020】
表面層には上記成分以外に、加硫剤、可塑剤、補強剤、加工助剤、老化防止剤等の添加剤が含有されてもよい。それらの添加剤は従来よりオフセット印刷用ロールの分野で使用されているものであれば特に制限されることなく使用可能である。
【0021】
本発明のロールの構成は、最表面に上記表面層を有する限り、特に制限されず、例えば、ロール母材の周面に表面層が積層されてなる構成であってもよいし、またはそのような構成においてロール母材と表面層との間に他の層を有する構成であってもよい。ロール母材とは剛性を有する材料からなる芯材のことである。
【0022】
ロール母材と表面層との間に形成されてもよい他の層として、接着層、クッション層等の下巻き層が挙げられる。
例えば、本発明のロールはロール母材の周面に下巻き層を有し、該下巻き層の周面に前記表面層を有する構成とすることができる。
【0023】
下巻き層は通常、硬度は特に制限されるものではなく、例えば10〜70、特に20〜40であってよい。
【0024】
下巻き層を構成する材料は特に制限されず、例えば、ベースゴムおよびゴムチップの材料として例示した材料と同様のものが使用可能である。具体的には、下巻き層はアクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムおよび塩化ビニル樹脂からなる群から選択されるポリマーで形成される。下巻き層材料は、ベースゴムおよびゴムチップの材料から独立して選択されればよいが、表面層との接着性の観点から、表面層のベースゴムと同種類の材料であることが好ましい。
【0025】
下巻き層の厚みは特に制限されず、例えば、1〜8mm、特に6〜8mmが好適である。
下巻き層には、表面層に含有されてもよい添加剤として例示した同様の添加剤が含有されてもよい。
【0026】
本発明のロールにおける表面層は以下の工程を含む方法によって製造できる;
未加硫ゴムおよび加硫ゴムチップを含む混合物を混練りし、未加硫ゴムベース生地を調製する工程;
該未加硫ゴムベース生地を圧延して、生地シートを形成する工程;
該生地シートを、ロール母材を有する被積層体に積層する工程;および
積層物を加熱して、未加硫ゴムを加硫せしめる工程。
【0027】
生地調製工程において、未加硫ゴムはベースゴムを形成するための原料であり、形成されるべきベースゴムの種類に応じて適宜選択されればよい。未加硫ゴムは、加硫によってゴムチップと所定の硬度差を達成するものが使用される。すなわち未加硫ゴムは後述の加硫工程によって前記硬度を有するベースゴムを形成する。
【0028】
ゴムチップは加硫されたものが使用され、前記した範囲内のゴムチップ硬度を既に達成したものを使用する。そのような加硫ゴムチップの硬度は、後述の加硫工程によってもほとんど変わらない。
ゴムチップは前記硬度を有する市販のゴムを粉砕することによって入手してもよいし、または市販のゴム粉砕物として入手してもよい。
【0029】
混合物には前記添加剤が含有されてもよい。
特に架硫剤としては、例えば、硫黄、過酸化物等が挙げられ、使用される未加硫ゴムの種類に応じて適宜選択されればよい。
架硫剤の含有量は未加硫ゴム100重量部に対して1〜10重量部が好適である。
【0030】
混練りは、架橋が起こらない程度に加熱して行う。通常、30〜120℃、特に50〜100℃が好適である。
【0031】
生地シート形成工程において、生地は圧延され、例えば厚み1〜3mm程度の生地シートが形成される。
【0032】
積層工程においては、生地シートを所定の被積層体の周面に巻き付ける。被積層体はロール母材であってもよいし、または周面に所定の層を有するロール母材であってもよい。生地シートを巻き付けるに際しては、所定の表面層厚みが達成されるように、巻き付け回数を調整すればよく、例えば、ロール母材の周面に1周だけ巻き付けても良いし、または2周以上巻き付けても良い。生地シートを2周以上巻き付けた場合、生地シート間の境界は後述の加硫工程によって消失される。
【0033】
加硫工程では、積層物を加熱して、未加硫ゴムの加硫を達成する。シート間剥離、エアーがみ等の観点から、好ましくは加熱とともに、加圧を行う。加熱は通常、130〜170℃、加圧は0.2MPa〜0.7MPaが好適である。
【0034】
加硫後は、通常、表面を切削処理する。切削処理によって、表面層1は、例えば、図1または図2に示すような構造を有するようになる。すなわち、表面層がベースゴム中に該ゴムより硬度の高いゴムチップが分散されてなる場合(A)、図1に示すように、表面層1はゴムチップ3部分が最表面2よりも突出した構造を有するようになる。表面層がベースゴム中に該ゴムより硬度の低いゴムチップが分散されてなる場合(B)、図2に示すように、表面層1はゴムチップ3部分が最表面2よりも凹んだ構造を有するようになる。硬度が低い方が切削され易いためである。図1および図2は、ロール軸方向に対する垂直断面における表面層1の拡大模式図であり、図1および図2中、4はベースゴムを示す。
【0035】
ロールが下巻き層を有する場合、下巻き層は、未加硫ゴムベース生地の構成成分が異なること以外、上記表面層の製造方法と同様の方法により製造できる。
【0036】
本発明のロールは、オフセット印刷用ロールとして有用である。特に刷版の表面に直接的に接触して設置されるロールとして使用される。中でも、図3に示す印刷機10において、第1インキ着ロール11として使用されることが、ヒッキー除去性能および印刷物への模様残りの観点から好ましい。本発明のロールは、固定軸材に回転自在に設置され、刷版との接触部において同方向に回転するよう駆動する。ロールの周速は刷版の周速と同様であってもよいが、ヒッキー除去の観点からは、異なることが好ましい。本発明のロールは軸芯方向に摺動しないように設置されてよいが、ヒッキー除去の観点からは摺動自在に設置されることが好ましい。図3は、オフセット印刷機における刷版20近傍の拡大模式図であり、刷版の軸方向に対する垂直断面図である。
【0037】
図3において、刷版20は矢印の方向に回転され、第1インキ着ロール11、第2インキ着ロール12、第3インキ着ロール13および第4インキ着ロール14によってインキを供給されながら、同時に第1インキ着ロール11によってヒッキーを除去される。刷版20表面のインキ像はブランケット15に一旦、転写された後、圧胴16によって被記録材17に転写される。図3中、21はしめし水付与機構であり、刷版の非画像部へしめし水を供給するためのものである。
【実施例】
【0038】
(ベースゴムの硬度)
ゴムロールの各製造方法において、表面層のベースゴムの硬度は以下の方法により測定した。
表面層にゴムチップを含有させなかったこと以外、ゴムロールの各製造方法と同様の方法によりゴムロールを製造した。得られたゴムロール表面の硬度を測定した。
【0039】
(下巻き層の硬度)
ゴムロールの各製造方法において、下巻き層の硬度は以下の方法により測定した。
ゴムロールの各製造方法において得られたゴムロールから下巻き層を切り出し、当該サンプルの硬度を測定した。
【0040】
(硬度50のゴムチップの製造)
未加硫ゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム;日本ゼオン社製)100重量部および架硫剤(サルファックスPS;加藤産商社製)1.5重量部を100℃で混練りし、未加硫ゴムベース生地を調製し、当該生地をキャレンダーで厚み約3mm程度に圧延して、生地シートを形成した。プレス機を用いて、生地シートを170℃、20MPa、50分間加硫せしめ、2mm厚のシート状加硫物を得た。この加硫物をゴム粉砕機で粉砕しつつ、粉砕物を所定粒径の目を有するメッシュに通して、所定粒径のゴムチップを得た。
【0041】
(硬度90のゴムチップの製造)
架硫剤としてバルカー(東洋化学(株)製)を12重量部用いたこと以外、上記ゴムチップと同様の方法により、ゴムチップを得た。
【0042】
(ゴムロールAの製造方法)
・下巻き層の形成
未加硫ゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム;日本ゼオン社製)100重量部および架硫剤(サルファックスPS;加藤産商社製)1.5重量部を100℃で混練りし、未加硫ゴムベース生地を調製し、当該生地をキャレンダーで厚み約2mm程度に圧延して、生地シートを形成した。ロール母材の周面に熱硬化性接着剤を塗布し、その上に生地シートを巻き付けて積層物を得た。積層物を加圧加熱して、未加硫ゴムを加硫せしめた(150℃、4時間、0.4MPa)。ロール表面をゴム研磨機を用いて仕上げ外径よりもφ6(片肉3mm)小さい径に研削し、下巻き層を形成した。
【0043】
・表面層の形成
未加硫ゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム;日本ゼオン社製)100重量部、硬度50および粒径2mmのゴムチップ(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)20重量部、架硫剤(サルファックスPS;加藤産商社製)1.5重量部、可塑剤(DINP;新日本理化社製)40重量部、および補強剤(シリカ;東ソ社製)30重量部を100℃で混練りし、未加硫ゴムベース生地を調製し、当該生地をキャレンダーで厚み約2mm程度に圧延して、生地シートを形成した。下巻き層が形成されたロール母材の周面に熱硬化性接着剤を塗布し、その上に生地シートを巻き付けて積層物を得た。積層物を加圧加熱して、未加硫ゴムを加硫せしめた(150℃、4時間、0.4MPa)。ロール表面をゴムローラ研磨機(HWACHEON製 HL460X1500GN)を用いて主軸回転77rpm、ピッチ1.5mmおよび切り込み量φ3の条件で仕上げ外径71mmになるまで研削し、厚み3mmの表面層を形成した。
表面層のベースゴムの硬度は30であり、下巻き層の硬度は30であった。
【0044】
(ゴムロールBの製造方法)
硬度50および粒径7mmのゴムチップ(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)を用いたこと以外、ゴムロールAの製造方法と同様の方法により、ゴムロールBを製造した。
表面層のベースゴムの硬度は30であり、下巻き層の硬度は30であった。
【0045】
(ゴムロールCの製造方法)
硬度50および粒径2.5mmのゴムチップ(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)を用いたこと以外、ゴムロールAの製造方法と同様の方法により、ゴムロールCを製造した。
表面層のベースゴムの硬度は30であり、下巻き層の硬度は30であった。
【0046】
(ゴムロールDの製造方法)
硬度50および粒径1.5mmのゴムチップ(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)を40重量部で用いたこと以外、ゴムロールAの製造方法と同様の方法により、ゴムロールDを製造した。
表面層のベースゴムの硬度は30であり、下巻き層の硬度は30であった。
【0047】
(ゴムロールEの製造方法)
硬度90および粒径2mmのゴムチップ(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)を用いたこと以外、ゴムロールAの製造方法と同様の方法により、ゴムロールEを製造した。
表面層のベースゴムの硬度は30であり、下巻き層の硬度は30であった。
【0048】
(ゴムロールFの製造方法)
硬度90および粒径7mmのゴムチップ(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)を用いたこと以外、ゴムロールAの製造方法と同様の方法により、ゴムロールFを製造した。
表面層のベースゴムの硬度は30であり、下巻き層の硬度は30であった。
【0049】
(ゴムロールaの製造方法)
ゴムチップの代わりに、繊維長3mmおよび繊維太さ20デニールのナイロン繊維を20重量部で用いたこと以外、ゴムロールAの製造方法と同様の方法により、ゴムロールaを製造した。
表面層の硬度は55であり、下巻き層の硬度は30であった。
【0050】
(ゴムロールbの製造方法)
加貫ローラ社製ΣK30(1層巻き、硬度30、ゴムチップなし)を用いた。
【0051】
(実施例1)
ゴムロールAを、印刷機(小森製;リスロン426)に第1インキ着ロール11として設置した。
一方、刷版に塗布したインキをオーブンで一昼夜乾燥させた後、それを乳鉢で細かくし、#60のふるいにかけて、ゴミを製造した。
上記印刷機の刷版表面にゴミ0.01gを付着させ、全ベタ、水無し印刷をした。印刷条件は以下の項目以外、上記印刷機の標準条件と同様であった。
【0052】
使用インキ;エコピュアSOY(サカタインクス製)
紙;上質紙(菊半越;北越製紙社製)
刷版;傷・へこみのない捨て版
湿し水;使用せず
印刷速度;8000回転/時間
第1インキ着ロール;軸芯方向の摺動なし
【0053】
・ゴミ取り性能
印刷100枚時に刷版表面および印刷物を目視観察した。
◎;刷版表面からほとんどのゴミがなくなり、印刷物にヒッキー疵は全く発生しなかった;
○;刷版表面から半分以上のゴミがなくなり、印刷物にヒッキー疵は全く発生せず、実用上問題のない範囲内であった;
×;刷版表面に半分を越えるゴミが存在し、印刷物にヒッキー疵が発生し、実用上問題があった;
××;刷版表面からのゴミの減少が認められず、印刷物にヒッキー疵が著しく多数発生し、実用上問題があった。
【0054】
・模様残り
印刷100枚時に印刷物を目視観察した。
◎;印刷物に模様残りは全く発生しなかった;
○;印刷物に模様残りがわずかに発生したものの、実用上問題のない範囲内であった;
×;印刷物に模様残りが多数発生し、実用上問題があった;
××;印刷物に模様残りが著しく多数発生し、実用上問題があった。
【0055】
第1インキ着ロールを軸芯方向で摺動させたこと以外、上記と同様の方法により印刷および評価を行った。
【0056】
(実施例2〜6および比較例1〜2)
表1に記載のゴムロールを第1インキ着ロールとして用いたこと以外、実施例1と同様の方法により印刷および評価を行った。
【0057】
全てのゴムロールについてゴムチップ部とベースゴム部との段差を、断面測定における最大山谷高さ(Py)として、触針式表面粗さ測定機(サーフテストSJ−301;Mitutoyo社製)により測定した。
【0058】
また摩耗試験を行った。
アクロン摩耗試験機(JIS K−6264)を用いた。詳しくは回転している砥石に荷重6ポンドの条件下でゴムロールを押し付け、従動回転させた。砥石には、サンドペーパー♯600を巻き付けて使用した。試験片の周面は、ゴム用旋盤を用い研磨し、予備刷りなしで使用した。
○;摩耗前後で表面状態に変化が無かった;
×;摩耗前後で表面状態に少し変化があった(表面の繊維が減少した);
××;摩耗前後で表面状態に大きな変化があった(表面の殆どの繊維が無くなった)。
【0059】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のオフセット印刷用ロールのロール軸方向に対する垂直断面における表面層の拡大模式図の一例。
【図2】本発明のオフセット印刷用ロールのロール軸方向に対する垂直断面における表面層の拡大模式図の一例。
【図3】本発明のオフセット印刷用ロールを適用可能な印刷機の概略構成図の一例。
【符号の説明】
【0061】
1:表面層、2:最表面、3:ゴムチップ、4:ベースゴム、10:印刷機、11:オフセット印刷用ヒッキーロール、20:刷版。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースゴム中に該ゴムと硬度の異なるゴムチップが分散されてなる表面層を有することを特徴とするオフセット印刷用ロール。
【請求項2】
ベースゴムとゴムチップとの硬度差がJIS−Aゴム硬度で10〜70である請求項1に記載のオフセット印刷用ロール。
【請求項3】
ゴムチップの含有量がベースゴムに対して5〜50重量%である請求項1または2に記載のオフセット印刷用ロール。
【請求項4】
ゴムチップの平均粒径が0.5〜5mmである請求項1〜3のいずれかに記載のオフセット印刷用ロール。
【請求項5】
ベースゴムおよびゴムチップがそれぞれ独立して、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムおよび塩化ビニル樹脂からなる群から選択される請求項1〜4のいずれかに記載のオフセット印刷用ロール。
【請求項6】
固定軸材に回転自在で、かつ軸芯方向に摺動自在に設置される請求項1〜5のいずれかに記載のオフセット印刷用ロール。
【請求項7】
ロール母材の周面に下巻き層を有し、該下巻き層の周面に前記表面層を有する請求項1〜6のいずれかに記載のオフセット印刷用ロール。
【請求項8】
下巻き層が、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴムおよび塩化ビニル樹脂からなる群から選択されるポリマーで形成される請求項7に記載のオフセット印刷用ロール。
【請求項9】
ベースゴムを形成するための未加硫ゴムおよび加硫ゴムチップを含む混合物を混練りし、未加硫ゴムベース生地を調製する工程;
該未加硫ゴムベース生地を圧延して、生地シートを形成する工程;
該生地シートを、ロール母材を有する被積層体に積層する工程;および
積層物を加熱して、未加硫ゴムを加硫せしめる工程
を含む請求項1〜8のいずれかに記載のオフセット印刷用ロールを製造する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−66764(P2009−66764A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234319(P2007−234319)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(390003344)株式会社加貫ローラ製作所 (9)
【Fターム(参考)】