説明

オフセット印刷用紙及びその製造方法

【課題】
古紙パルプを高配合した紙で、軽量であるにもかかわらず、インキ発色性に優れ、チラシ用途に適したオフセット印刷適性を有する印刷用紙及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】
次の(1)から(11)の条件を満たすオフセット印刷用紙である。(1)白色度60%以上、(2)不透明度85%以上、(3)平滑度30秒以上、平滑度表裏差5秒以下、(4)吸油度50秒以上、吸油度表裏差10秒以下、(5)坪量35〜50g/m、(6)全パルプ中機械パルプを20〜60質量%含有、(7)灰分5.0〜15%、(8)ホワイトカーボンを灰分として0.50〜2.5%含有、(9)紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量が0.035〜0.070cc、(10)澱粉系の表面処理剤を片面0.20〜1.0g/m塗布、(11)顔料を含む表面処理剤を塗布し、紙m当たり顔料の持つ吸油量が0.010〜1.0cc

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低坪量で、白色度が高く、印刷時のインキ発色性の良いオフセット印刷用紙及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙は、新聞、書籍、雑誌、ポスター、カレンダー、パンフレット、包装紙等、ほとんどの場合印刷を施されて使用されており、印刷用紙の種類および特性は、印刷方式や用途によって様々である。一例を挙げると、オフセット印刷方式は、版面に親油性の画線部(印刷しようとする部分)と親水性の非画線部とを作り、湿し水と呼ばれる水を薄く塗り、次にインキを塗ると水をはじいた画線部にだけインキが付着するので、これをブランケットに転写し、さらにこのブランケットから紙にインキを転移させる方式である。湿し水を使用するため、水に濡れたときブランケットに付着して紙粉として取られないように、用紙には表面強度が重視される。また、グラビア印刷方式は、版上の凹部にインキを盛り紙に転写する方式であるため、版と紙とが均一に接し網点の抜け(スペックル)が起こらないように、表面に微小な凹凸がなく平滑性が高いことが要求される。
【0003】
スーパーやホームセンター等のチラシに使用される印刷用紙は、坪量49.0〜54.2g/mの微塗工紙が中心になっている。微塗工紙は顔料と接着剤を含む塗布液を塗布して、インキ着肉性を向上させたもので、一般の塗工紙に比べ少ない塗布量でチラシ用途に必要な印刷適性を付与したものである。このチラシに使用される印刷用紙は通常オフセット輪転印刷機により印刷されている。
昨今、低コスト化の動きが顕著になっており、用紙をグレードダウンする動きがある。具体的には、低坪量化、上質紙から中質紙や下級紙への変更、塗工紙から非塗工紙への変更が進んでいる。チラシ用途においても、微塗工紙から非塗工紙へ変更する動きがある。ここで非塗工紙とは、顔料を塗布していない印刷用紙を指し、日本製紙連合会「紙・板紙統計年報」の「紙・板紙の品種分類表」にある上級印刷紙、中級印刷紙、下級印刷紙等に分類されるものを指す。
ところが、非塗工紙は微塗工紙に比べて、インキ発色性が劣るため、チラシに必要とされる、消費者の目を引く美麗な印刷仕上がりは望めない。特に多色印刷のチラシに非塗工紙を用いると、微塗工紙を用いた場合と比べてインキ発色性が悪く、印刷仕上がりの差が顕著なものとなる。そこで、非塗工紙におけるインキ発色性の向上が課題となっている。
【0004】
印刷用紙の一種に、スーパーカレンダー紙(通称SC紙:Super Calendered Paper)と呼ばれるものがあり、欧米では近年、雑誌や宣伝用のチラシ、カタログ等として、オフセット印刷あるいはグラビア印刷等によるカラー印刷に使用されている。このスーパーカレンダー紙は、通常の新聞用紙、印刷用紙等の非塗工紙と微塗工紙との中間に位置する非塗工紙であり、非塗工紙でありながら微塗工紙並みの光沢性や平滑性を付与した用紙である。
【0005】
スーパーカレンダー紙は、軽量でかつ光沢度を高くするために、線圧のかかった多数のロール間のニップを通過させており、紙が潰れることは避けられず高い不透明度と高いこし(剛度)を得ることは難しい。また、通常、主原料は不透明度が高くなりやすいグラウンドウッドパルプやサーモメカニカルパルプ等の機械パルプであり、古紙を高配合することは困難となっている。
【0006】
非塗工紙の白色度、不透明度、印刷適性向上を課題とした技術として、以下のような出願がある。
サーモメカニカルパルプを45質量%以上含有し、軽質炭酸カルシウムおよび軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物を含有し灰分15%以上とするというもの。(特許文献1)紡錘凝集型軽質炭酸カルシウムまたは、針状凝集型軽質炭酸カルシウムを填料として配合し、6ニップ以上のソフトニップカレンダーで処理するというもの。(特許文献2)2ニップ以上のホットソフトニップカレンダーで処理する前および/または処理している間に金属ロール処理面の表面に水分を付与するというもの。(特許文献3)その他、印刷適性、及び製本適性に優れた低米坪印刷用紙として、摩擦係数、縮率、填料の吸油量、紙1gあたりに含まれる内添填料が持つ吸収量等を特定したものがある。(特許文献4)
しかし、いずれもインキ発色性について十分な検討はされていない。
【0007】
最近は、いわゆるフリーペーパーやフリーマガジンと呼ばれる、広告収入を元に対象読者を性別や年齢層に応じて特定した無料の情報誌や各種広告の発行部数が増えており、このような、塗工紙ほど強い光沢や印刷効果は求めないものの、軽量でかつ従来の非塗工紙に比べて印刷品質に優れる用紙に対する要望は、今後ますます高まっていくと予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−248451号公報
【特許文献2】特開2008−274517号公報
【特許文献3】特開2008−274518号公報
【特許文献4】特許第4052083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、古紙パルプを高配合した紙で、軽量であるにもかかわらず、インキ発色性に優れ、チラシ用途に適したオフセット印刷適性を有する印刷用紙及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、インキ発色性と、紙表層に現れている填料及び顔料によるインキ吸収能力の関係について検討した結果、印刷用紙の白色度、不透明度、平滑度、吸油度、坪量、機械パルプの含有率、灰分、使用する填料の種類と含有率、填料が持つ吸油量、表面処理剤の塗布量、表面処理剤に含まれる顔料の持つ吸油量を特定することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
請求項1に係る発明は、以下の(1)から(11)の条件を満たすオフセット印刷用紙である。
(1)白色度60%以上
(2)不透明度85%以上
(3)平滑度30秒以上、平滑度表裏差5秒以下
(4)吸油度50秒以上、吸油度表裏差10秒以下
(5)坪量35〜50g/m
(6)全パルプ中機械パルプを20〜60質量%含有
(7)灰分5.0〜15%
(8)ホワイトカーボンを灰分として0.50〜2.5%含有
(9)紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量が0.035〜0.070cc
(10)澱粉系の表面処理剤を片面0.20〜1.0g/m塗布
(11)顔料を含む表面処理剤を塗布し、紙m当たり顔料の持つ吸油量が0.010〜1.0cc
請求項2に係る発明は、全パルプ中機械パルプを20〜60質量%含有するパルプスラリーを原料として抄紙するオフセット印刷用紙の製造方法であって、ホワイトカーボンを灰分として0.50〜2.5%含有させるとともに、ホワイトカーボンを除く填料を含有させて、灰分5.0〜15%、紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量が0.035〜0.070cc、顔料を含む表面処理剤を塗布し、紙m当たり顔料の持つ吸油量が0.010〜1.0ccとなるように調整することを特徴とするオフセット印刷用紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオフセット印刷用紙及びその製造方法によれば、低坪量で、白色度が高く、印刷時のインキ発色性の良いオフセット印刷用紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の印刷用紙の製造には、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、リールパートの各工程からなる抄紙機を用いる。抄紙機の型式は特に限定はなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等を適宜使用できるが、オントップ型やギャップフォーマ型のツインワイヤー抄紙機が望ましく、特に両面から脱水するギャップフォーマー型抄紙機が望ましい。ギャップフォーマー型抄紙機で抄造することで、填料が紙の表層に分布し、印刷時にインキが表層の填料に保持され紙層内部への浸透が抑えられるので、インキ発色性が良くなる。長網抄紙機の場合には、パルプ繊維や填料の表裏差が出るために、印刷適性の表裏差が発生しやすい。
【0014】
本発明の印刷用紙は、原料パルプとして、クラフトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ等が使用できる。クラフトパルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等が使用できる。また、古紙パルプとしては、新聞古紙脱墨パルプ、上質古紙脱墨パルプ等の古紙脱墨パルプ(DIP)が使用できる。機械パルプとしては、ストーングラウンドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等を使用することができる。
【0015】
本発明の印刷用紙は、全パルプ中機械パルプを20〜60質量%含有している。20〜60質量%の含有率とすることで、嵩高さを得ることができ、低坪量でも剛度を高くすることが出来るとともに高い不透明度を得ることができる。配合するフレッシュな機械パルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は80〜150mlに調整されていることが好ましい。ろ水度が80mlより低いと高い剛度が得られず、150mlより高いと結束繊維が多くなり、インキ着肉性が劣ることになる。
また、本発明の印刷用紙は、古紙パルプを含有していることが好ましく、その配合率は高いほうが良いが、印刷適性、剛度を考慮すると20〜60質量%とするのが好ましい。
印刷用紙に含まれる機械パルプの含有率は、機械パルプの配合率とDIPの配合率を調整することで、前記範囲内におさめることができる。DIPは新聞古紙、雑誌古紙、上質古紙等の古紙から製造されるため、NBKP、LBKP等の化学パルプや前記記載の機械パルプの各パルプが混在している。しかし、使用する古紙の種類を一定とすれば、DIPに含まれる機械パルプの含有率も一定となり、DIPを配合しても、印刷用紙全体に含まれる機械パルプの質量比率の予測・調整は可能である。
【0016】
本発明の印刷用紙には、インキ発色性、インキ着肉性、不透明度、白色度向上を目的に填料を添加している。特に吸油性の高いホワイトカーボンを灰分として0.50〜2.5%含むように添加している。ホワイトカーボンの含有率が0.50%より低いと、後述する紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量を特定範囲にするには、吸油量の低い填料の含有率を高くする必要が生じ、この場合はパイリングの問題を起こしやすい。また、ホワイトカーボンの含有率が2.5%より高いと、見掛け比重の小さいホワイトカーボンは繊維間結合を弱くする傾向が強いので、この場合もパイリングの問題を起こしやすい。
ホワイトカーボン以外の填料の種類は特に限定されず、一般に印刷用紙に使用されている填料を使用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、クレー、シリカ等の無機填料やプラスチックピグメント等を使用することができる。
本発明の印刷用紙の灰分(JISP8251)としては5.0〜15%とするのが好ましい。灰分が5.0%より低いと不透明度や白色度が不足し、15%より高いとパイリングの発生が顕著となる。
【0017】
そして、ホワイトカーボンとその他の填料を含有させることにより、紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量(JISK5101−13−2:2004煮あまに油法による)が0.035〜0.070ccとなるようにしている。このような範囲にすることで、填料と接触したインキが紙表層に存在する填料にすみやかに吸収され、紙表層に留まることから、インキ発色性が良好となる。紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量が0.035ccより小さいと、インキが紙表層に存在する填料による吸収では不十分で、紙層内部に浸透するので、インキ発色性が悪くなる。紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量が0.070ccより大きくしても、インキ発色性は大きく向上せず、次のような弊害がある。
すなわち、紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量を大きくするには、吸油量の小さい填料の含有率を高くするか、吸油量の大きい填料を使用する必要が生じる。前者の場合は填料の存在により繊維間結合が少なくなり、パイリングの問題を起こしやすくなる。後者の場合は吸油量の大きい填料は見掛け比重が小さく、繊維間結合を弱くする傾向が強いので、比較的低い含有率でもパイリングの問題を起こしやすくなる。
【0018】
本発明で、紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量を特定した理由は、この値が紙表層に現れている填料によるインキ吸収能力の指標となっており、紙の単位体積あたりとすることで、坪量に依存することなく、インキ吸収能力を表わすことができるためである。単位面積あたりとしてもよいが、この場合は、坪量による換算が必要となる。
一般の塗工紙の場合のインキ発色性の良否は、主に塗布層のインキ吸収能力によるが、後述するように本発明の印刷用紙は表面処理剤の塗布量が少ないので、紙表層の填料によるインキ吸収能力に大きく依存していると考えられる。
【0019】
本発明のオフセット印刷用紙では、原料パルプに硫酸バンド、サイズ剤、嵩向上剤、紙力増強剤等を添加することができる。サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸等のサイズ剤が使用できる。紙力増強剤としては、カチオン澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂等が使用できる。その他、必要に応じ、湿潤紙力増強剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料等の添加剤も使用することができる。
【0020】
本発明のオフセット印刷用紙では、前述した原紙の表裏両面に顔料と接着剤を含む表面処理剤を塗布し、片面の紙mあたり顔料の持つ吸油量{(顔料の吸油量[cc/100g]/100)×(顔料の片面塗布量[g/m])}が0.010〜1.0ccとなるようにしている。好ましくは、紙mあたり顔料の持つ吸油量は0.010〜0.50ccである。この際、吸油量が40〜120cc/100gの顔料を使用するのが好ましい。顔料の吸油量が120cc/100gより大きいと、接着剤を吸収して、パイリングの問題を起こしやすい。40cc/100gより小さいと、インキ発色性向上の効果が低い。使用する吸油量が40〜120cc/100gの顔料としては、カオリン、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、亜鉛華などが挙げられる。このなかで、カオリン、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウムを使用するのが、パイリング防止と入手が容易な点で好ましい。
【0021】
紙mあたり顔料の持つ吸油量が0.010ccより小さいとインキ吸収性が不足し、インキ発色性が悪くなる。紙mあたり顔料の持つ吸油量が1.0ccより大きくするには、吸油量の高い顔料を使用するか、顔料の塗布量を多くする必要が生じ、このようにするといずれもパイリングの問題を起こしやすい。
【0022】
すなわち、紙面に印刷されたインキは、原紙表面に塗布した顔料によって吸収されるが、一部は顔料に吸収されず、原紙層に浸透したインキはパルプ繊維と吸油性のある填料に吸収されることにより紙に定着する。このように、紙cmあたり填料の持つ吸油量と、紙mあたり顔料の持つ吸油量を特定することで、低坪量でかつ少ない塗布量の印刷用紙でも、高いインキ発色性を得ることができる。
【0023】
本発明のオフセット印刷用紙では、顔料の塗布量は片面あたり0.010〜1.0g/mとするのが好ましく、0.010〜0.50g/mとするのがさらに好ましい。顔料の塗布量が片面あたり0.010g/mより少ないと、インキ吸収性が不足し、顔料を塗布してもインキ発色性の向上効果が認められない。顔料の塗布量が片面あたり1.0g/mより多いと、パイリングの問題を起こす。
【0024】
本発明では表面処理剤に前記顔料とともに、接着剤を、顔料の接着能を向上させパイリングなどの表面強度に纏わるトラブルを回避するために配合する。表面強度と不透明度の両者を高めるための接着剤としては、澱粉類を含むことが好ましい。これらの接着剤は顔料との相溶性が良好で、塗布時に凝集などを起こし難いため、特に好ましく用いられる。
【0025】
澱粉類は、親水性である繊維との接着能力が高く、塗布量が少ない場合において紙表面から脱落し易い微細繊維なども強力に接着するため好ましい。前記澱粉類としては、酵素変性澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、疎水化澱粉などが例示される。なお、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース化合物、ポリビニルアルコール化合物やポリアクリルアミド類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類やラテックス類などの通常の塗工紙用接着剤を一種類以上併用しても良い。
【0026】
本発明においては、良好な印刷作業性と印刷品質を提供する上で、接着剤の塗布量は片面あたり0.20〜1.0g/mとするのが好ましく、より好ましくは0.20〜0.50g/mである。接着剤の塗布量が規定量より少ないとパイリングなどに代表される表面強度に纏わるトラブルが起こるおそれがあり、規定量より多いと不透明度を低下させる傾向がある。
【0027】
本発明のオフセット印刷用紙は、吸油度(旧JISP3001)は50秒以上で、吸油度の表裏差は10秒以下にするのが好ましい。吸油度が50秒未満であるとインキ吸収速度が速いのでインキが紙層内部に浸透し、裏抜けが目立つようになる。
吸油度の表裏差が10秒を超えると、表裏のインキ発色性が異なるので、見た目に違和感を与えることがある。
吸油度は、使用する填料の吸油量や添加率、表面処理剤の塗布量、カレンダー処理条件等により調整することができる。
【0028】
表面処理剤をオフセット印刷用紙原紙へ塗布するための装置としては、特に限定さないが、例えばツーロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのロールコーター、トレーリング、フレキシブル、ロールアプリケーション、ファウンテンアプリケーション、ショートドゥエルなどのベベルタイプやベントタイプのブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、グラビアコーターなどの公知公用の装置が適宜使用される。なお、表面処理剤組成物を塗布後の湿潤塗布層を乾燥する方法としては、例えば、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥などの各種方式が採用できる。
【0029】
本発明の印刷用紙の製造に際しては、ドライヤーで乾燥後に、カレンダー装置により平滑化処理する。カレンダー装置としては、チルドカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等の一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。要求される平滑度に応じて、ニップ数やニップ圧、ロール温度、ロール材質、ロール硬度等を設定するが、インキ着肉性を得るには、オフセット印刷用紙の平滑度(JISP8119)は30秒以上、平滑度の表裏差は5秒以下であることが望ましい。
【0030】
本発明の印刷用紙は、坪量(JISP8124)が35〜50g/mとされている。坪量が35g/mより小さいと剛度が不足する。坪量は大きいほど剛度には有利であるが、省資源という点から50g/m以下が好ましい。このようにして得られる印刷用紙は、白色度(JISP8148)60%以上、不透明度(JISP8149)85%以上とされる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例により、本発明の効果を具体的に表す。なお、%は特に断りのない限り質量%を表し、添加量は絶乾パルプに対する固形分または有効成分で表す。
【0032】
(実施例1)
LBKP25質量部(350mlCSF)、サーモメカニカルパルプ35質量部(110mlCSF)、新聞古紙脱墨パルプ40質量部(230mlCSF、機械パルプの含有率45質量%)からなるパルプ分散液に、填料としてホワイトカーボン(吸油量200cc/100g)を2.2質量%、軽質炭酸カルシウム(吸油量85cc/100g)を5.0質量%含むように添加し、歩留り向上剤(ハイモ社製、商品名:ND260)を対パルプ200ppm添加して抄紙した。ドライヤーパートで表面処理剤として酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、商品名:王子エースA)を塗布量が片面当たり0.50g/m、焼成カオリン(吸油量95cc/100g)を塗布量が片面当たり0.010g/mとなるように表裏同一塗布量でゲートロールコーターを用いて塗布、乾燥し、ソフトカレンダー処理(線圧70kN/m、温度80℃)し、坪量49.0g/m、水分6.0%のオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
ここで、紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量(cc)は、次式により求められる。
紙の密度[g/cm]×((100−水分[%])/100)×(灰分[%]/100)×填料の吸油量[cc/100g]/100
また、紙m当たり顔料の持つ吸油量は、{(顔料の吸油量[cc/100g]/100)×(顔料の片面塗布量[g/m])}である。
【0033】
(実施例2)
填料としてホワイトカーボンを1.5質量%、軽質炭酸カルシウムを5.0質量%含むように添加し、焼成カオリンを塗布量が片面当たり0.10g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0034】
(実施例3)
焼成カオリンを塗布量が片面当たり0.50g/mとなるようにした以外は実施例2と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0035】
(実施例4)
填料としてホワイトカーボンを1.0質量%、軽質炭酸カルシウムを7.0質量%含むように添加し、焼成カオリンを塗布量が片面当たり1.0g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0036】
(実施例5)
填料としてホワイトカーボンを1.0質量%、軽質炭酸カルシウムを5.0質量%含むように添加し、抄紙したことと、ドライヤーパートで表面処理剤として酸化澱粉を塗布量が片面当たり0.25g/m、顔料としてカオリン(吸油量45cc/100g)を使用し、塗布量が片面当たり0.10g/mとなるように塗布した以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0037】
(実施例6)
填料としてホワイトカーボンを1.0質量%、軽質炭酸カルシウムを7.0質量%含むように添加し、抄紙したことと、ドライヤーパートで表面処理剤として酸化澱粉を塗布量が片面当たり0.75g/m、顔料としてカオリン(吸油量45cc/100g)を使用し、塗布量が片面当たり0.10g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0038】
(実施例7)
坪量を43.0g/mとし、顔料としてカオリン(吸油量45cc/100g)を使用し、塗布量が片面当たり0.10g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0039】
(実施例8)
坪量を43.0g/mとし、顔料としてカオリン(吸油量45cc/100g)を使用し、塗布量が片面当たり0.10g/mとなるようにした以外は実施例2と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0040】
(実施例9)
坪量を43.0g/mとし、顔料としてカオリン(吸油量45cc/100g)を使用し、塗布量が片面当たり0.10g/mとなるようにした以外は実施例4と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0041】
(実施例10)
坪量を43.0g/mとした以外は実施例5と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0042】
(実施例11)
坪量を37.0g/m、填料としてホワイトカーボンを2.5質量%、軽質炭酸カルシウムを5.0質量%含むように添加し、抄紙したことと、ドライヤーパートで表面処理剤として酸化澱粉を塗布量が片面当たり1.0g/m、顔料としてカオリン(吸油量45cc/100g)を使用し、塗布量が片面当たり0.10g/mとなるようにした以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0043】
(比較例1)
填料としてホワイトカーボンを0.50質量%、軽質炭酸カルシウムを5.0質量%含むように添加し、顔料を塗布しなかった以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0044】
(比較例2)
填料としてホワイトカーボンを1.0質量%、軽質炭酸カルシウムを12.0質量%含むように添加し、顔料を塗布しなかった以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0045】
(比較例3)
填料としてホワイトカーボンを1.5質量%、軽質炭酸カルシウムを5.0質量%含むように添加し、顔料を塗布しなかった以外は実施例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0046】
(比較例4)
坪量を43.0g/mとし、顔料をホワイトカーボン(吸油量200cc/100g)とし、塗布量が片面当たり0.60g/mとなるようにした以外は比較例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0047】
(比較例5)
坪量を43.0g/mとした以外は比較例2と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0048】
(比較例6)
顔料としてタルク(吸油量34cc/100g)を使用し、塗布量が片面当たり0.020g/mとなるようにした以外は比較例1と同様にオフセット印刷用紙を得た。得られた印刷用紙の評価結果を表1、表2に示す。
【0049】
なお、試験方法と評価方法は次のとおりである。
(坪量)JISP8124:1998紙及び板紙−坪量測定方法
(厚さ)JISP8118:1998紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法
(吸油量)紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量は、それぞれの填料について次式により求め、合計した。なお、填料の吸油量は、JISK5101−13−2:2004煮あまに油法による。
紙の密度[g/cm]×((100−水分[%])/100)×(灰分[%]/100)×填料の吸油量[cc/100g]/100
(灰分)JISP8251:2003紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法
(白色度)JISP8148:2001紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法
(不透明度)JISP8149:2000紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照射法
(平滑度)JISP8119:1998紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法
(吸油度)旧JISP3001:1995新聞巻取紙に準じて測定した。
(インキ発色性、パイリング評価)オフセット輪転印刷機を用い、印刷速度700rpm、紙面温度120℃で4色印刷(オフ輪用プロセスインキ 墨・紅・藍・黄)を行い、5千部印刷した。
インキ発色性は、◎優れる、○良い、×悪い の3段階で評価した。
パイリングは、ブランケットと印刷面を観察し、次の3段階で評価した。
◎:ブランケットにパイリングの発生がなく良好であった。
○:ブランケットにややパイリングの発生があるが、印刷面に問題のない程度であった。
×:ブランケットにパイリングが発生し、印刷面にカスレがみられた。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
表1、表2に示したように、本発明の実施例1〜11では、いずれもインキ発色性評価、パイリング評価ともに良好であることがわかる。
比較例1は、紙cmあたり填料が持つ吸油量が0.031ccと低く、しかも顔料を塗布していないので、インキ発色性評価が悪くなっている。
比較例2は、紙cmあたり填料が持つ吸油量が0.074ccと高く、しかも灰分が15.2%と高いので、インキ発色性評価は良いがパイリング評価が悪くなっている。
比較例3は、顔料を塗布していないので、インキ発色性評価が悪くなっている。
比較例4は、紙m当たり顔料の持つ吸油量が1.2ccと高く、インキ発色性評価は良いが、パイリング評価が悪くなっている。
比較例5は、紙cmあたり填料が持つ吸油量が0.076ccと高く、しかも灰分が15.2%と高いので、インキ発色性評価は良いがパイリング評価が悪くなっている。
比較例6は、紙cmあたり填料が持つ吸油量が0.031ccと低く、しかも紙m当たり顔料の持つ吸油量が0.0070ccと低いので、インキ発色性評価が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のオフセット印刷用紙は、チラシ用途に好適に使用されるほか、フリーペーパーやフリーマガジンの用紙として使用できる。印刷方式としては、ヒートセット型オフセット輪転印刷、コールドセット型オフセット輪転印刷にも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)から(11)の条件を満たすオフセット印刷用紙。
(1)白色度60%以上
(2)不透明度85%以上
(3)平滑度30秒以上、平滑度表裏差5秒以下
(4)吸油度50秒以上、吸油度表裏差10秒以下
(5)坪量35〜50g/m
(6)全パルプ中機械パルプを20〜60質量%含有
(7)灰分5.0〜15%
(8)ホワイトカーボンを灰分として0.50〜2.5%含有
(9)紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量が0.035〜0.070cc
(10)澱粉系の表面処理剤を片面0.20〜1.0g/m塗布
(11)顔料を含む表面処理剤を塗布し、紙m当たり顔料の持つ吸油量が0.010〜1.0cc
【請求項2】
全パルプ中機械パルプを20〜60質量%含有するパルプスラリーを原料として抄紙するオフセット印刷用紙の製造方法であって、ホワイトカーボンを灰分として0.50〜2.5%含有させるとともに、ホワイトカーボンを除く填料を含有させて、灰分5.0〜15%、紙cmあたりに含まれる填料が持つ吸油量が0.035〜0.070cc、顔料を含む表面処理剤を塗布し、紙m当たり顔料の持つ吸油量が0.010〜1.0ccとなるように調整することを特徴とするオフセット印刷用紙の製造方法。

【公開番号】特開2011−219887(P2011−219887A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88305(P2010−88305)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】