説明

オフセット輪転印刷用塗工紙

【課題】本発明は、オフセット輪転印刷の熱乾燥工程におけるひじわの発生を抑制し、かつ印刷ムラの少ないオフセット輪転印刷用塗工紙を提供する。
【解決手段】原紙上にポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂等のカチオン性樹脂を有する下塗り層を片面あたり0.5〜4g/m2(乾燥質量)塗工し、その上に顔料および接着剤を主成分とする印刷用塗工層を設けることを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット輪転印刷用塗工紙に関するものであり、さらに詳しくはオフセット輪転印刷時の熱乾燥工程後に発生するひじわを抑制し、かつ優れた印刷適性を有したオフセット輪転印刷用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフセット印刷の分野では、増大する印刷物の需要や省力化にあわせ、印刷の同時多色化や高速化が進められており、印刷用紙に対する操業性および印刷品質の要望がますます厳しくなっている。特に、オフセット輪転(以後、オフ輪と称する)印刷では生産性を重視するため印刷速度がより高速になり、それに伴っていわゆるピッキング、ひじわ、およびブリスター等のトラブルに対応する技術が求められている。
【0003】
これらの発生原因については、これまで多くの研究がなされている。ブリスターは、塗工紙にオフセット印刷を施した場合、高温強制乾燥時に塗工原紙に含まれていた水分が急激に蒸発して、塗工層が膨れた状態のことである。これは、印刷部においては蒸気の逃げ場が十分ではないために、蒸気が紙層強度に勝り、紙層を剥離して膨張したものである。ブリスターの発生に関わる要因は、塗工紙の水蒸気透過性や紙層間強度などが関係するといわれている。
【0004】
一方、ひじわは、塗工紙にオフ輪印刷後、紙上のインキを高温で強制乾燥する際に発生する紙の流れ方向の波うち状のしわであり、印刷物の外観品質を著しく損なうものである。この原因については、2つの考え方がある。一つは、テンションじわであり、オフ輪印刷時に用紙にテンションが加わるために発生したしわが、オフセットインキにより固定化するという考え方である。もう一つは、オフ輪印刷の乾燥工程において、印刷部と非印刷部の乾燥収縮量の差によりしわが発生する考え方である。インキで覆われた印刷部と非印刷部では、熱乾燥時、非印刷部のほうが紙中水分の蒸発速度が速いため、先に収縮が始まり、両者の収縮量に差が生じるのである。
【0005】
この様なひじわの現象を抑制するために、いくつかの手法が提案されている。オフ輪印刷用塗工紙における原紙のパルプのフリーネスを特定範囲に保持すると共に、当該原紙の透気度も通気性の良い領域に規制する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、フリーネスと透気度は逆相関することから、生産コスト内での操業性を考慮すると調節は困難である。
【0006】
また、原紙の内部層間強度と巻取り水分を規定し、ひじわを軽減する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)が、内部層間強度を下げることはブリスターの発生を助長することになる。これを防ぐには塗工紙水分を低くする必要があるが、その後の折り工程で塗工層の表面が割れる現象が発生しやすくなる。また、巻き取り水分は多くの要因により変動しやすく、これを調整することは製造上困難である。
【0007】
さらに、特定のケン化度のポリビニルアルコール(以下、PVAと称する)を規定量塗工した原紙を使用することでオフ輪印刷における熱乾燥時の収縮を抑制し、ひじわを軽減する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、特定の粘度を有するPVA水溶液を原紙に塗布するなどして、オフ輪用塗工紙の乾燥収縮力を特定範囲内に収めることでひじわを軽減する方法等も提案されている(例えば、特許文献4参照)。これらの方法は、PVAの樹脂皮膜で原紙を被覆することにより、該塗工紙の印刷後に施される熱乾燥時に、非印刷部からの水分の蒸発を抑制し、印刷部と非印刷部の乾燥収縮差を解消することを目的としている。しかしながら、このようなオフ輪印刷用塗工紙は、ひじわの抑制には効果的である反面、吸油着肉の悪化に伴い印刷ムラが発生しやすくなったり、上塗り層に特徴的な細孔が発生するなどして、印刷品質が損なわれることがある。また、PVAは蒸煮が必要であり、粘度が極めて高く、例えば、85モル%以上のケン化度で重合度500のPVAの30質量%のB型粘度(60rpm、液温20℃)は、10000mPa・s以上であり、ハンドリングや実操業が困難となる。なお、該PVA水溶液の粘度を下げるため、希釈して濃度を下げると、塗工時の乾燥負荷が大きくなり、生産性の低下に繋がる。
【特許文献1】特開昭58−186700号公報
【特許文献2】特開平9−291496号公報
【特許文献3】特開平11−350391号公報
【特許文献4】特開2000−45199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、オフ輪印刷の熱乾燥工程におけるひじわの発生を抑制し、かつ印刷ムラの少ないオフ輪印刷用塗工紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記のごとき現状を踏まえて鋭意検討した結果、本発明のオフ輪印刷用塗工紙を発明するに至った。
【0010】
すなわち、本発明のオフ輪印刷用塗工紙は、原紙上にカチオン性樹脂を有する下塗り層を設け、その上に顔料および接着剤を主成分とする印刷用塗工層を設けることを特徴とするものである。
【0011】
上記発明において、カチオン性樹脂がポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂が好ましい。
【0012】
また、上記発明において、カチオン性樹脂の塗工量は片面あたり0.5〜4g/m2(乾燥質量)が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オフ輪印刷の熱乾燥工程におけるひじわの発生を抑制し、かつ印刷ムラの少ないオフ輪印刷用塗工紙を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のオフ輪印刷用塗工紙について詳細に説明する。
【0015】
本発明のオフ輪印刷用塗工紙は、カチオン性樹脂を塗工した下塗り層を有する原紙を使用することにより、オフ輪印刷時のひじわが抑制され、更には印刷ムラのない優れた印刷適性が得られ、本発明を完成させるに至った。
【0016】
本発明に使用するカチオン性樹脂は、樹脂中に1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種のカチオン性の官能基を有しているポリマーであり、例えばポリアミン類および/またはポリアミド類とエピハロヒドリン類とを反応して得られる樹脂(例えば、ジメチルアミンエピクロロヒドリン樹脂)、カチオン性ビニルモノマーを単独で重合した樹脂(例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミン塩)、カチオン性モノマーと他の共重合モノマーとを共重合させた樹脂(例えば、カチオン性アクリルアミド系樹脂)、ポリビニルアミン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ホフマン変性を行ったアクリルアミド系樹脂、マンニッヒ変性を行ったアクリルアミド系樹脂、ポリアルキレンポリアミド系樹脂、ポリアミドポリ尿素系樹脂などが挙げられる。
【0017】
これらの中でも、カチオン性のエピハロヒドリン系樹脂が効果的であり、その中でもポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂がオフ輪印刷時に発生するひじわの軽減には好ましい。
【0018】
上記のカチオン性樹脂組成物を原紙上に塗工することによってひじわが軽減される理由は必ずしも明確ではないが、次のように推定される。即ちひじわは、オフ輪印刷の乾燥工程で非印刷部が水分蒸発に伴って収縮し、その収縮が固定化されることによって発生するが、該組成物は原紙上に塗工された直後、パルプ繊維に速やかに浸透し固着すると共に、乾燥工程での加熱によって硬化してフィルム化され、原紙面を被覆した結果、この原紙に顔料と接着剤を有する塗工層を設けたオフ輪用塗工紙においては、印刷後の熱乾燥時に該樹脂フィルムの効果により非印刷部においても水分蒸発が抑制され、非印刷部と印刷部の収縮率の差が小さくなるためひじわが発生しにくくなると考えられる。
【0019】
本発明に係わるカチオン性樹脂は、原紙上に設ける下塗り層として、片面あたり0.5〜4g/m2(乾燥質量)塗工することが必要である。塗工量が片面あたり0.5g/m2未満では、ひじわ抑制効果の発現が小さくなる。一方、塗工量が片面あたり4g/m2を超えて多い場合には、ひじわ抑制効果は大きくなるが、液コストの増加と塗工後の乾燥負荷が大きいという問題がある。
【0020】
本発明のカチオン性樹脂を原紙へ塗工するに際し、その水溶液の濃度は、特に限定するものではないが、例えば、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂を例にとると原液濃度が25質量%のものでもB型粘度(60rpm、液温度25℃)は約50〜250mPa・sの範囲にあり、該濃度でそのまま塗工可能である。尚、場合によっては塗工に適した液性となるように、希釈する事も増粘剤等を加えて増粘する事も可能であるが、乾燥負荷の軽減およびひじわの抑制のためには、極力高濃度で塗工する必要がある。よって、原液濃度が高く、かつ適正に塗工できる粘度領域のものを選択するのが好ましい。また塗工方法としては、一般の塗工紙製造分野で使用されるブレードコーター、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールサイズプレスコーター、フィルムメタリングサイズプレスコーター等が使用可能である。
【0021】
また、本発明に係わる下塗り層を形成するための塗工液は、塗工に際しての塗工適性を調節するために流動調節剤や消泡剤、および少量の顔料などを適宜組み合わせ混合しても良い。
【0022】
本発明において、印刷用塗工層としての塗工液に用いられる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、粉砕炭酸カルシウムなどの精製した天然鉱物顔料、サチンホワイト、リトポンなどの複合合成顔料、酸化チタン、沈降性炭酸カルシウム、水酸化アルミナなどの半合成顔料、プラスチック顔料などの合成顔料が挙げられる。
【0023】
印刷用塗工層の塗工液に用いられる澱粉としては、通常の澱紛、酸化澱紛、エーテル化澱紛、エステル化澱紛、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉が挙げられる。
【0024】
また、印刷用塗工層の塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0025】
印刷用塗工層の塗工液に用いられる澱粉以外のバインダーとしては、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの各種共重合体SBRラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。
【0026】
さらに、必要に応じて、分散剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤など、通常使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0027】
そして、印刷用塗工層の塗工液の下塗り層への塗工に際しては、一般の塗工紙製造に使用される塗工装置、例えばブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、サイズプレスコーター等によって塗工される。塗工時の印刷用塗工層の塗工液の固形分濃度は一般に40〜75質量%で、操業性を考慮すると45〜70質量%で調整され、塗工量としては乾燥質量で一般に片面あたり5〜20g/m2の範囲に調整するのがよい。
【0028】
本発明に用いられる原紙としては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、TGW、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0029】
使用される抄紙機としては、長網方式、円網方式、ツインワイヤー方式、ハイブリッド方式、ギャップフォーマー型、ロールフォーマー型などの各種形式の抄紙機を用いて抄造することができる。
【0030】
本発明の原紙においては、ノーサイズプレス原紙、澱紛、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた原紙(ただし本発明においてサイズプレス層は塗工層に含めない)などを用いることができる。また、必要とする原紙の密度、平滑度を得るために各種カレンダー処理を施す場合も有る。
【0031】
一連の操業で、塗工、乾燥された塗工紙は、必要に応じて各種カレンダー処理が施される。
【実施例】
【0032】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ質量部および質量%を示す。
【0033】
(実施例1)
<原紙配合>
・LBKP(濾水度440mlcsf) 70部
・NBKP(濾水度490mlcsf) 30部
【0034】
<内添薬品>
・市販軽質炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *8部
・市販カチオン化澱粉 1.0部
・市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し、坪量70g/m2の原紙を抄造した。
【0035】
<下塗り層形成用塗工液>
・市販ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂 100部
(WS4020、固形分濃度25%、星光PMC株式会社製)
【0036】
<印刷用塗工層形成用塗工液>
・市販中空顔料(粒子径1μm) 5部
・市販微粒カオリンクレー 45部
・市販一級カオリンクレー 20部
・市販重質炭酸カルシウム 30部
・市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
・市販SBRラテックスバインダー 10部
・市販燐酸エステル澱粉 5部
・水酸化ナトリウム pH9.6に調製
【0037】
上記により得られた原紙に対して、下塗り層形成用塗工液を2ロールサイズプレスコーターにより、塗工速度800m/分で塗工液を片面あたり2g/m2(両面合計で4g/m2)塗工し、乾燥して下塗り層塗工紙を得た。また、印刷用塗工層形成用塗工液を上記の配合により調整し、ファウンテンアプリケーション/ブレード方式塗工機を用いて、塗工速度1200m/分で塗工液を片面あたり10g/m2塗工し、乾燥して塗工紙を得た。
【0038】
得られた塗工紙に対し、オフラインでスーパーカレンダー装置(段数:10段、剛性ロール:外径400mmのチルドロール、弾性ロール:外径400mmのコットンロール、線圧:220kN/m)を用いてカレンダリング処理を施し、実施例1のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0039】
(実施例2)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液をポリアミン・エピクロロヒドリン樹脂(WS4010、固形分濃度20%、星光PMC株式会社製)に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして実施例2のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0040】
(実施例3)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液をカチオン性ポリアクリルアミド樹脂(ハリフィックスUF−570、固形分濃度10%、ハリマ化成株式会社製)に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして実施例3のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0041】
(実施例4)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液をポリアミドエポキシ樹脂(スミレーズレジン675A、固形分濃度25%、田岡化学工業株式会社製)に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして実施例4のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0042】
(実施例5)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液の塗工量を片面あたり0.5g/m2(両面合計で1g/m2)に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして実施例5のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0043】
(実施例6)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液の塗工量を片面あたり4.0g/m2(両面合計で8g/m2)に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして実施例6のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0044】
(実施例7)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液の塗工量を片面あたり0.25g/m2(両面合計で0.5g/m2)に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして実施例7のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0045】
(実施例8)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液の塗工量を片面あたり5.0g/m2(両面合計で10g/m2)に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして実施例8のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0046】
(比較例1)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液を10%に糊化調整した市販の酸化澱粉に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして比較例1のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0047】
(比較例2)
実施例1において、下塗り層形成用塗工液を10%に糊化調整した市販ポリビニルアルコール(PVA)に変更した以外は、すべて実施例1と同様にして比較例2のオフ輪印刷用塗工紙を製造した。
【0048】
上記実施例1〜8および比較例1〜2により得られたオフ輪印刷用塗工紙について、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
【0049】
<ひじわ>
オフセット輪転印刷機(三菱重工業(株)製、リソピアBT−2−600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業(株)製、ウェブワールドテラスNの、黒、藍、紅、黄の各色)を使用し、ベタ印刷部分の流れ方向のひじわを目視評価した。ひじわの評価は以下のように記した。
◎:ほとんどひじわが発生しない。
○:軽度のひじわの発生が認められる。
△:ひじわの発生が認められるが、実用上耐えうるレベルである。
×:きついひじわの発生が認められる。
ただし、本発明においては△以上を許容範囲とした。
【0050】
<印刷ムラ>
オフセット輪転印刷機(三菱重工業(株)製、リソピアBT−2−600型)を用い、オフセット輪転用印刷インキ(大日本インキ化学工業(株)製、ウェブワールドテラスNの、黒、藍、紅、黄の各色)を使用し、ベタ印刷部分を目視評価した(10点満点)。
◎(非常に良好):10点
○(良好) :7〜9点
△(普通) :4〜6点
×(不良) :3点以下
ただし、本発明においては○以上を許容範囲とした。
【0051】
<塗工性>
塗工性については、下塗り層形成用塗工液の塗工濃度と塗工量の要因によるドライヤーの乾燥負荷、塗工液のハンドリングや作業性、塗工面のベタツキ等による塗工設備の汚れ等の状況を併せて下記基準で判定した。
○:塗工作業性(乾燥、汚れ、ハンドリング)は問題なく、生産性は良好。
△:塗工作業性に一部問題あるが、実用上生産可能。
×:塗工作業性に問題があり、生産性が大幅に悪化する。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示した結果から明らかなように、実施例1〜4では、カチオン性樹脂を塗工した下塗り紙を用いることで良好なひじわの抑制とムラのない印刷を実現している。その中でもひじわの抑制度と塗工性の観点からポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂が良好である。また、実施例5〜8の結果から、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂の塗工量は片面当たり0.5〜4g/m2(乾燥質量)が好適であることが判る。一方、比較例1は、カチオン性樹脂の替わりに酸化澱粉を用いているがひじわ抑制効果が劣り、比較例2では同様にカチオン性樹脂の替わりにPVAを用いているが、ひじわ抑制力は良好である反面、印刷ムラに問題があることがわかる。
【0054】
本発明により、原紙上に、カチオン性樹脂、好ましくはポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂を下塗り塗工層として片面当たり0.5〜4g/m2(乾燥質量)塗工することにより、オフ輪印刷の熱乾燥工程におけるひじわの発生を抑制し、かつ印刷ムラの少ないオフ輪印刷用塗工紙を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により得られたオフ輪印刷用塗工紙は、熱乾燥工程におけるひじわの発生を抑制し、かつ印刷ムラが少なく、従来品に比べ商品価値を一層高めることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙上にカチオン性樹脂を有する下塗り層を設け、その上に顔料および接着剤を主成分とする印刷用塗工層を設けることを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙。
【請求項2】
上記カチオン性樹脂がポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂ある請求項1記載のオフセット輪転印刷用塗工紙。
【請求項3】
上記カチオン性樹脂の塗工量が片面あたり0.5〜4g/m2(乾燥質量)である請求項1または2記載のオフセット輪転印刷用塗工紙。

【公開番号】特開2006−257575(P2006−257575A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75977(P2005−75977)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】