説明

オブジェクト選択装置

【課題】カーソルによってオブジェクトを選択する際、軌跡バッファに蓄積したカーソル位置座標が成すカーソル軌跡を用いることで、迅速かつ正確なオブジェクト選択を目的とする。
【解決手段】表示画面部14上におけるカーソル位置座標を蓄積する軌跡バッファ部30を設け、軌跡バッファ部30に蓄積されるカーソル位置座標から、カーソル軌跡の交差を交差判定部31において判定し、交点制御部32において交点座標を算出し、算出された座標上に存在するオブジェクトを選択することを特徴とする。これにより、ユーザーは、表示画面部14上にカーソルを用いてカーソル軌跡を描画することで、操作対象のオブジェクトとカーソルを静止状態で重ねなくとも、操作対象のオブジェクトを選択することができ、正確かつ迅速にオブジェクトの選択が可能となる効果が達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの操作対象となるオブジェクトと、ユーザーが操作するポインティングデバイスの動きに応じて移動するカーソルとを表示画面部上に配置するウインドウシステムにおいて、カーソルによってオブジェクトを選択する際、軌跡バッファ部に蓄積したカーソル位置座標が成すカーソル軌跡を用いることで、迅速かつ正確なオブジェクト選択を可能にするオブジェクト選択装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに、ポインティングデバイスを接続し、ポインティングデバイスの動きに応じて移動するカーソルと、ユーザーの選択対象となるオブジェクトとを表示画面部上に表示するウインドウシステムでは、カーソルの先端部分に設けられたセンシング部と、目的とするオブジェクトの反応領域とが重なる必要がある。そのため、他のオブジェクトと重なり合っているオブジェクトや、他のオブジェクトよりも小さい形状のオブジェクト、又は細長い形状のオブジェクトへ、迅速かつ正確にカーソルを合わせ目的の操作を行うことは困難である。
【0003】
この問題に対して、所定の操作を検出した場合に、当該選択に対するオブジェクトの反応領域又は、カーソルのセンシング範囲を変更する構成を設けることで、オブジェクトの選択精度を向上させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−5878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では特定の操作を行うことでカーソルのセンシング範囲又はオブジェクトの反応領域を数ドット分拡大できるが、当該センシング範囲又は当該オブジェクトの反応領域を拡大するためには、ポインティングデバイス等に具備されたボタンを押す操作が必要となる。このような押圧操作を行う場合では、ポインティングデバイスがぶれ、所望とは異なる場所にカーソルがずれてしまうという課題がある。
【0005】
また、オブジェクトの選択を行う場合ではカーソルのセンシング領域とオブジェクトの反応領域とを重ねる必要があるため、二以上のオブジェクトが重なっている場合や、微小のオブジェクトを対象とする場合では、オブジェクトの選択に対する迅速性が失われてしまう。
【0006】
そこで本発明は、ポインティングデバイスによってオブジェクトを選択する際、ポインティングデバイス等に具備されたボタンを押すことなくオブジェクトの選択を可能にするものであり、二以上のオブジェクトが重なっている場合や、オブジェクトの大きさが異なる場合でも、迅速かつ正確に対象とするオブジェクトを選択することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、一つ以上のオブジェクトを表示し、前記一つ以上のオブジェクトの中から一つのオブジェクトを、カーソルを用いて選択するオブジェクト選択装置であって、ポインティングデバイスによる信号を検知する入力部と、前記入力部によって検知された信号から、前記カーソルの位置座標及び、所定の操作に対応する信号とを検出し出力するカーソル制御部と、前記カーソルの位置座標を蓄積する軌跡バッファ部と、前記軌跡バッファ部に蓄積されたカーソル位置座標が成すカーソル軌跡の交差を判定する交差判定部と、前記交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、前記軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標から所定の特徴量を算出し、当該特徴量について所定の条件を満たすオブジェクトを選択する操作制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ユーザーは、表示画面部上にカーソルを用いてカーソル軌跡を描画することで、操作対象のオブジェクトとカーソルを静止状態で重ねなくとも、操作対象のオブジェクトを選択することができる。
【0009】
これにより、ユーザーが表示画面部を介して、カーソルによってオブジェクトの選択を行う際、所望とは異なる場所にカーソルがずれることなく、正確かつ迅速にオブジェクトの選択が可能となる効果が達成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ユーザーによる目的とするオブジェクトの選択操作を迅速かつ正確に行うことが可能となる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、一つ以上のオブジェクトを表示し、前記一つ以上のオブジェクトの中から一つのオブジェクトを、カーソルを用いて選択するオブジェクト選択装置であって、ポインティングデバイスによる信号を検知する入力部と、前記入力部によって検知された信号から、前記カーソルの位置座標及び、所定の操作に対応する信号とを検出し出力するカーソル制御部と、前記カーソルの位置座標を蓄積する軌跡バッファ部と、前記軌跡バッファ部に蓄積されたカーソル位置座標が成すカーソル軌跡の交差を判定する交差判定部と、前記交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、前記軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標から所定の特徴量を算出し、当該特徴量について所定の条件を満たすオブジェクトを選択する操作制御部という構成を有する。
【0012】
この構成によれば、ユーザーは、表示画面部上にカーソル軌跡を描画することで、操作対象のオブジェクトとカーソルを静止状態で重ねなくとも、操作対象のオブジェクトを選択することができる。
【0013】
これにより、ユーザーが表示画面部を介して、カーソルによってオブジェクトの選択を行う際、所望とは異なる場所にカーソルがずれることなく、正確かつ迅速にオブジェクトの選択が可能となる効果が達成できる。
【0014】
また、操作制御部は、交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される線分の交点座標を算出し、表示画面部上の当該交点座標に存在するオブジェクトの選択を行う構成にしてもよい。
【0015】
これにより、軌跡バッファ部に蓄積されるカーソル位置座標から算出される前記カーソル軌跡の交点が操作対象オブジェクトとなるように、ユーザーは表示画面部上にカーソル軌跡を描画することで、オブジェクトの選択が可能となる。そのためユーザーは、直感的に操作位置座標を認識でき、操作の正確性が向上するという効果を奏する。
【0016】
また、操作制御部は、交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される閉領域の幾何学的中心座標を算出し、表示画面部上の当該幾何学的中心座標に存在するオブジェクトの選択を行う構成にしてもよい。
【0017】
これにより、軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を線分によって結ぶことで形成される閉領域の中心が操作対象オブジェクトとなるように、ユーザーは表示画面部上にカーソル軌跡を描画することで、オブジェクトの選択が可能となる。そのため、さらに迅速かつ正確なオブジェクト選択が可能となる効果を奏する。
【0018】
また、操作制御部は、交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される閉領域と、オブジェクトとが重なる領域の面積を算出し、当該重なる領域の面積について所定の条件を満たすオブジェクトの選択を行う構成にしてもよい。
【0019】
これにより、操作対象オブジェクトに複数のオブジェクトが重なっている場合、カーソルを操作対象オブジェクトに厳密に重ねなくとも、カーソル軌跡によって囲むことで当該オブジェクトを選択することが可能となる。そのため、操作対象オブジェクトの選択に対しての迅速性、正確性をさらに向上できる効果を奏する。
【0020】
また、操作制御部は、交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される閉領域と、オブジェクトとが重なる領域の面積を算出し、当該重なる領域の面積が最大値となるオブジェクトの選択を行う構成にしてもよい。
【0021】
これにより、操作対象オブジェクトに小さいオブジェクトが重なっている場合、カーソルを操作対象オブジェクトに厳密に重ねなくとも、カーソル軌跡によって囲むことで当該オブジェクトを選択することが可能となる。そのため、操作対象オブジェクトの選択に対しての迅速性、正確性をさらに向上できる効果を奏する。
【0022】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1におけるオブジェクト選択装置について説明する。
【0023】
図1は、実施の形態1のオブジェクト選択装置の構成要素のブロック図である。本発明のオブジェクト選択装置は、入力部11、画面制御部12、アプリケーション部13、表示画面部14、カーソル制御部20、軌跡バッファ部30、交差判定部31、交点制御部32によって構成される。
【0024】
以上のように構成されたオブジェクト選択装置について、図面を参照しながら以下にその動作を説明する。
【0025】
入力部11は、ユーザーによって操作が行われるポインティングデバイスの動作に対応した信号を検知し当該動作に関する制御信号を出力する。さらに、ポインティングデバイスにボタン等が具備されている場合、ユーザーによる当該ボタンの押圧操作を検知し当該操作に関する制御信号を出力する。ポインティングデバイスは、マウスだけでなく、トラックボール、ジョイスティック、タブレット又は、撮像装置によって撮像したユーザーの手及び、指等を利用しても構わない。
【0026】
表示画面部14は、ユーザーが操作するポインティングデバイスと連動して動作するカーソルと、ユーザーの選択対象となるオブジェクトを表示する。表示画面部14は、文字や図形を表示するだけのディスプレイに限らず、ペンやユーザーの指などで表示画面部14上におけるカーソルの位置座標を直接指示可能な入力部11が具備されたタッチパネルディスプレイ等を利用しても構わない。
【0027】
カーソル制御部20は、入力部11によって検知されたポインティングデバイスの動作に対応した信号を基に、カーソルの表示画面部14上における位置座標を検知し出力する。ここで、カーソル制御部20で用いられる座標系は、原点からの距離を基にした絶対座標系に限らず、指定する地点からの距離を基にした相対座標系等を利用しても構わない。さらに、入力部11によって出力された制御信号に、起点又は終点となるユーザーの所定の操作に関する情報が含まれている場合、カーソル位置座標の蓄積開始又は、終了に関する制御信号を出力する。ここで、起点となる所定の操作とは、ユーザーが入力部11に具備されたボタンを押す動作だけに限らず、カーソルによって表示画面部14上に、例えば三角形や四角形などのような特定のパターンを描画することや、撮像装置によって撮像したユーザーの手又は、指等をポインティングデバイスとして用いる場合では、手を振る、指を用いて円を描く、腕を垂直方向に対して水平に支持する等のジェスチャー動作、さらにユーザーの音声を認識する音声認識装置を用いる場合では、“はじめ”や“スタート”、“軌跡”等の特定の音声情報を利用しても構わない。そして、終点となる所定の操作とは、ユーザーが入力部11に具備されたボタンを押すことだけに限らず、起点となる操作からユーザーによって押し続けられた入力部11に具備されたボタンを離す動作や、カーソルを表示画面部14上において静止させる動作を利用しても構わない。
【0028】
アプリケーション部13は、オブジェクトの位置座標、サイズ、表示する文字列、オブジェクトに割り当てられた関数を格納している。ここで、関数とは一定の目的のために、与えられたデータを処理し、その処理結果を戻す等の機能をいう。例えば、所定のウィンドウ画面の表示を行う目的のために、表示に関する制御信号が入力されると表示画面部14に所定のウィンドウ画面の表示を行う動作が関数に相当する。また、オブジェクトの選択に関する制御信号を検出すると、当該制御信号で指定されるオブジェクトに割り当てられた関数の選択処理を行う。
【0029】
画面制御部12は、カーソル及びオブジェクトの位置座標を検知し、オブジェクトとカーソルを表示画面部14上に描画する制御信号を出力する。また、表示画面部14において、カーソルによってオブジェクトが選択された場合、当該オブジェクトに割り当てられた関数を選択する制御信号を出力する。
【0030】
ここで、画面制御部12が生成する画面構成の例を図2に示す。
【0031】
表示画面部14上に表示される画面101は、カーソル102、オブジェクト104、105、106、107で構成される。なお、カーソルによって表示画面部14上に描画される軌跡をユーザーが認識しやすいように、表示画面部14におけるカーソル軌跡を着色する等、視認可能な表示形態にしてもよい。
【0032】
軌跡バッファ部30は、カーソル軌跡の位置座標をサンプリングし蓄積する。
【0033】
ここで、図3にカーソル軌跡の例を示す。図3では、蓄積されるカーソル位置座標数pとし、pを12個と既定した際の、軌跡バッファ部30に蓄積されるカーソル軌跡111と、サンプリングされたカーソル位置座標p(0)、p(1)、p(2)、…、p(11)及び、カーソル軌跡によって形成される交点112が示されている。新しい座標を蓄積する際には一番古い座標であるp(11)から順に削除され、新しい位置座標が追加される。新しい座標が追加された場合、カーソル位置座標p(0)、p(1)、p(2)、…、p(10)をp(1)、p(2)、p(3)、…、p(11)と再度設定し、p(0)に新しい位置座標を追加する。なお、軌跡バッファ部30の上限値はユーザーによって予め決定される一定値である。
【0034】
交差判定部31は、軌跡バッファ部30に蓄積されたカーソル位置座標からカーソル軌跡の交差を判定し、交差したと判断した場合、カーソル軌跡の位置座標を出力する。
【0035】
交点制御部32は、カーソル軌跡の位置座標を検出した場合、カーソル軌跡によって形成される交点座標を算出し、表示画面部14上の当該交点座標に存在するオブジェクトに割り当てられた関数を選択する制御信号を出力する。
【0036】
図4はカーソル軌跡を用いたオブジェクトに割り当てられた関数の選択処理についてのフローチャートである。
【0037】
まず、入力部11はユーザーによって操作されるポインティングデバイスの動作に対応した信号を検出すると、当該動作に関する信号をカーソル制御部20へ出力する(ステップ401)。
【0038】
カーソル制御部20は、ポインティングデバイスの動作に関する信号を検出すると、当該信号に蓄積開始の信号の判定を行い、当該蓄積開始の信号であれば軌跡バッファ部30へ蓄積開始の制御信号を出力する(ステップ402)。なお、蓄積開始の制御信号を検出しない場合、軌跡バッファ部30への蓄積開始の制御信号は出力せず、カーソル軌跡を用いたオブジェクトに割り当てられた関数の選択処理をそのまま終了する。
【0039】
軌跡バッファ部30はカーソル制御部20において出力される蓄積開始の制御信号を検出すると、カーソル位置座標の蓄積を開始する(ステップ403)。
【0040】
次に、カーソル制御部20は、ポインティングデバイスの動作に関する信号を検出すると、当該信号に蓄積終了の信号の判定を行い、当該蓄積終了の信号であれば軌跡バッファ部30へ蓄積終了の制御信号を出力する(ステップ404)。なお、当該蓄積終了の信号でない場合、ステップ403に戻り再びカーソル位置座標の蓄積を開始する。
【0041】
軌跡バッファ部30は、カーソル制御部20において出力される蓄積終了の制御信号を検知した場合、カーソル位置座標の蓄積を終了し、カーソル位置座標を交差判定部31へ出力する(ステップ405)。
【0042】
さらに、交差判定部31はカーソル位置座標を検出すると、検出された位置座標を結ぶことで形成される線分を用いて、カーソル軌跡の交差の判定を行う(ステップ406)。カーソル軌跡が交差していると判定された場合は、カーソル軌跡の位置座標を交点制御部32へ出力する。なお、カーソル軌跡が交差しない場合は、カーソル軌跡を用いたオブジェクトに割り当てられた関数の選択処理を終了する。
【0043】
そして、交点制御部32はカーソル軌跡の位置座標を検出すると、カーソル軌跡の交点座標を算出し、当該交点座標上に存在するオブジェクトに割り当てられた関数を選択する制御信号をアプリケーション部13へ出力する(ステップ407)。なお、カーソル軌跡の交点座標が複数個存在する場合には、全ての交点座標上に存在するオブジェクトに割り当てられた関数を選択する制御信号をアプリケーション部13へ出力してもよい。また、複数の交点座標のうち、カーソルが軌跡を描画し始めてから最初に交差した交点座標上に存在するオブジェクトに割り当てられた関数を選択する制御信号をアプリケーション部13へ出力してもよい。
【0044】
そして、アプリケーション部13は当該制御信号を検出すると、当該制御信号で指定するオブジェクトに割り当てられた関数の選択処理を行う(ステップ408)。
【0045】
ここで、軌跡バッファ部30に蓄積されるカーソル位置座標数を12個と既定した場合の実施の形態1中の交差判定部31の動作について説明する。
【0046】
図5は交差判定部31の動作を表すフローチャートである。
【0047】
まず、交差判定部31は軌跡バッファ部30から出力されるカーソル位置座標を検知する(ステップ501)。
【0048】
検知されたカーソル位置座標から、p(0)及びp(1)の二点を通る直線方程式L(0,1)を算出し、設計変数mを1と設定する(ステップ502)。
【0049】
p(m)及びp(m+1)のカーソル位置座標を検知し、L(m、m+1)を算出する(ステップ503)。ここでは、mは1であるので、p(1)及びp(2)を検知し、L(1、2)を算出する。
【0050】
そして、p(1)及びp(2)をそれぞれ直線方程式L(0、1)に代入した際に得られる値の積t0及び、p(0)及びp(1)をそれぞれL(1、2)に代入した際に得られる値の積t1を算出する(ステップ504)。
【0051】
次に、t0及び、t1の符号を判定する(ステップ505)。
【0052】
さらに、p(m)及びp(m+1)を端点とする線分をS(m、m+1)とすると、積の値t0及びt1が共に負である場合、S(1、2)は、S(0,1)と交差しているため、カーソル位置座標を交点制御部32へ出力し動作を終了する(ステップ506)。
【0053】
なお、当該積の値が少なくとも一つは正である場合、p(m)が軌跡バッファ部30に蓄積されている最後のカーソル位置座標かどうかを判定する(ステップ507)。
【0054】
最後のカーソル位置座標であれば動作を終了し、そうでなければmに1を加算し、ステップ504に戻る(ステップ508)。
【0055】
なお、本発明の実施の形態1におけるカーソル軌跡の交差を判定する方法は、直線方程式と当該直線方程式によって分割された領域の数学的性質を用いた判定方法に限定されるものではなく、様々な線分の交差判定方法が該当する。
【0056】
次に、本発明の実施の形態1における交点制御部32の動作を説明する。
【0057】
図6は交点制御部32の動作を表すフローチャートである。
【0058】
まず、交点制御部32は交差判定部31から出力されるカーソル位置座標を検知する(ステップ601)。
【0059】
そして、当該カーソル位置座標を基に、カーソル軌跡の交点座標を算出する(ステップ602)。カーソル軌跡の交点座標は、例えば交差判定部31において線分S(0,1)と線分S(7,8)が交差していると判定された場合、直線方程式L(0,1)とL(7,8)を用いて当該交点座標が算出される。
【0060】
さらに、当該交点位置座標に対応したオブジェクトの関数を選択する制御信号をアプリケーション部13へ出力する(ステップ603)。
【0061】
そして、軌跡バッファ部30のカーソル位置座標をクリアした後、動作を終了する(ステップ604)。なお、算出されたカーソル位置座標上にオブジェクトが存在しない場合は、そのまま動作を終了する。
【0062】
なお、本発明の実施の形態1では、交差判定部31と交点制御部32とを別に構成したが、これらをまとめて一つの処理部として用いてもよい。また、画面制御部12とアプリケーション部13とをまとめて一つの処理部として用いてもよい。
【0063】
本発明の実施の形態1によれば、上記の構成により、軌跡バッファ部30に蓄積されるカーソル位置座標から算出されるカーソル軌跡の交点を用いることで、ユーザーは明確な操作位置座標を認識しながらカーソル軌跡を表示画面部14上に描画することができる。そのためユーザーは、直感的に操作位置座標を認識でき、操作の正確性が向上するという効果を奏する。
【0064】
(実施の形態2)
図7は、本発明のオブジェクト選択装置において、カーソル軌跡が交差した際に形成される閉領域の幾何学的中心点を用いてオブジェクト制御を行う場合のブロック図である。
【0065】
図7に示すオブジェクト選択装置において、実施の形態1と相違する点は、交点制御部32の部分を実施の形態2では中心点制御部42とした点である。
【0066】
中心点制御部42は、カーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される閉領域の幾何学的中心座標を算出し、表示画面部14上の当該中心点座標に存在するオブジェクトの選択又は当該オブジェクトに対応する関数を選択する制御信号を出力する。なお、カーソル位置座標の座標間は、線分を用いて結ぶ形式に限らず、曲線を用いて結ぶ形式でもよい。
【0067】
ここで、本発明の実施の形態2における中心点制御部42の動作を説明する。なお、軌跡バッファ部30に蓄積されるカーソル位置座標数を12個と既定し、S(0,1)とS(7,8)が交差しているものとする。さらに、カーソル制御部20で検出される表示画面部14上のカーソル位置座標は、表示画面部14上の中心を原点とするx軸、y軸を持つ絶対座標系とする。
【0068】
図8は、中心点制御部42の動作を表すフローチャートである。
【0069】
まず、中心点制御部42は、交差判定部31から出力されるカーソル位置座標を検出する(ステップ801)。
【0070】
次に、カーソル軌跡が形成する閉領域を構成する座標を検出する(ステップ802)。例えば、S(0,1)とS(7,8)が交差している場合、p(1)からp(7)までの座標とS(0,1)とS(7,8)の交点座標を検出する。
【0071】
さらに、検出した当該カーソル位置座標と当該交点座標に対して、x軸成分、y軸成分の最大値、最小値を算出する(ステップ803)。
【0072】
当該算出されたx軸成分の最大値と最小値及びy軸成分の最大値と最小値から、閉領域の中心点座標を算出する(ステップ804)。なお、x軸成分の最大値と最小値の加算平均を中心点座標のx成分とし、y軸成分の最大値と最小値の加算平均を中心点座標のy成分とする。
【0073】
そして、当該中心点座標に対応したオブジェクトの関数を選択する制御信号をアプリケーション部13へ出力する(ステップ805)。
【0074】
そして、軌跡バッファ部30のカーソル位置座標をクリアした後、動作を終了する(ステップ806)。なお、算出されたカーソル位置座標上にオブジェクトが存在しない場合は、そのまま動作を終了する。
【0075】
なお、本発明の実施の形態2におけるカーソル軌跡が形成する閉領域の中心点座標を算出する方法は、上記の方法に限定するものではなく、様々な閉領域の中心点座標を算出する方法が該当する。
【0076】
本発明の実施の形態2によれば、軌跡バッファ部30に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を線分によって結ぶことで形成される閉領域の中心が操作対象オブジェクトとなるように、ユーザーは表示画面部14上にカーソル軌跡を描画することで、オブジェクトの選択が可能となる。そのため、さらに迅速かつ正確なオブジェクト選択が可能となる効果を奏する。
【0077】
なお、軌跡バッファ部30に蓄積されるカーソル位置座標数p(0)、…、p(m)のうち、閉領域を構成するカーソル位置座標のみの加算平均によって算出される重心点座標を用いてもよい。ここで、mは設計変数とする。
【0078】
(実施の形態3)
図9は、本発明のオブジェクト選択装置において、カーソル軌跡が交差した際に形成される閉領域の幾何学的中心点を用いてオブジェクト制御を行う場合のブロック図である。
【0079】
図9に示すオブジェクト選択装置において、実施の形態1と相違する点は、交点制御部32の部分を実施の形態3では面積制御部52とした点である。
【0080】
面積制御部52は、軌跡バッファ部30に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される閉領域と、表示画面部14に表示されているオブジェクトとが重なる領域の面積を算出し、重なる領域の面積について所定の条件を満たすオブジェクトに対応した関数を選択する制御信号を出力する。
【0081】
ここで、本発明の実施の形態3における面積制御部52の動作を説明する。なお、軌跡バッファ部30に蓄積されるカーソル位置座標数を11個と既定し、S(0,1)とS(7,8)が交差しているものとする。
【0082】
図10は、面積制御部52の動作を表すフローチャートである。
【0083】
まず、面積制御部52は、交差判定部31から出力されるカーソル位置座標を検出する(ステップ1001)。
【0084】
次に、カーソル軌跡が形成する閉領域を構成する座標を検出する(ステップ1002)。例えば、S(0,1)とS(7,8)が交差している場合、p(1)からp(7)までの座標とS(0,1)とS(7,8)の交点座標を検出する。
【0085】
そして、当該カーソル位置座標によって構成される線分S(0,1)、S(1,2)、…、S(9,10)と表示画面部14上に表示されているオブジェクトが交差する交点座標を算出する(ステップ1003)。
【0086】
さらに、当該位置座標を用い、カーソル軌跡と表示画面部14上に表示されるオブジェクトとが重なる閉領域の面積を三角形を用いた近似計算によって算出する(ステップ1004)。ここで、図11にカーソル軌跡の位置座標を基に三角形を用いた面積の近似方法を用いた例を示す。図11に示すように、オブジェクト1106と重なるカーソル軌跡によって形成される閉領域の面積は、三角形1101、1102、1103、1104の面積の和として近似計算され、オブジェクト1107と重なるカーソル軌跡によって形成される閉領域の面積は、三角形1105の面積として近似計算される。
【0087】
当該近似計算された面積に関する所定の条件を満たすオブジェクトに対し、当該オブジェクトに対応した関数を選択する制御信号をアプリケーション部13へ出力する(1005)。
【0088】
最後に、軌跡バッファ部30のカーソル位置座標をクリアした後、動作を終了する(ステップ1006)。なお、所定の条件を満たすオブジェクトが存在しない場合は、そのまま動作を終了する。
【0089】
なお、本発明の実施の形態3におけるカーソル軌跡によって形成される閉領域と、表示画面部14上に表示されているオブジェクトとが重なる領域の面積を算出する方法は、上記の方法に限定されるものではなく、様々な領域の面積算出方法が該当する。
【0090】
本実施の形態3においては、カーソル軌跡と表示画面部14上に表示されるオブジェクトとが重なる閉領域の面積の計算に三角形を用いた近似計算を用いた方法を記載したが、カーソル軌跡と表示画面部14上に表示されるオブジェクトとが重なる閉領域を微小な領域に分割し、当該オブジェクトに含まれる当該微小な領域の個数を用いた面積計算方法等を利用しても構わない。
【0091】
なお、当該面積に関する所定の条件として、カーソル軌跡と表示画面部14上に表示されるオブジェクトとが重なる閉領域の面積が最大値となるオブジェクトの選択を行うことを用いてもよい。この場合には、操作対象オブジェクトに小さいオブジェクトが重なっている場合、カーソルを操作対象オブジェクトに厳密に重ねなくとも、カーソル軌跡によって囲むことで当該オブジェクトを選択することが可能となる。そのため、操作対象オブジェクトの選択に対しての迅速性、正確性をさらに向上できる効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のオブジェクト選択装置は、カーソルの軌跡を基に、オブジェクトを選択することが可能であるため、二つ以上のオブジェクトが重なっている場合や、オブジェクトの大きさが異なっている場合でも、迅速かつ簡単に対象オブジェクトを選択することが可能となる。そのため、画面上に表されたオブジェクトを選択するオブジェクト選択装置等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態1におけるオブジェクト選択装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における画面に表示される画面構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態1におけるカーソル軌跡の説明図
【図4】本発明の実施の形態1におけるカーソル軌跡を用いたオブジェクトに対応する関数の選択処理のフローチャート
【図5】本発明の実施の形態1における交差判定部の動作を示すフローチャート
【図6】本発明の実施の形態1における交点制御部の動作を示すフローチャート
【図7】本発明の実施の形態2におけるオブジェクト選択装置の構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施の形態2における中心点制御部の動作を示すフローチャート
【図9】本発明の実施の形態3におけるオブジェクト選択装置の構成を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態3における面積制御部の動作を示すフローチャート
【図11】本発明の実施の形態3におけるカーソル軌跡の説明図
【符号の説明】
【0094】
11 入力部
12 画面制御部
13 アプリケーション部
14 表示画面部
20 カーソル制御部
30 軌跡バッファ部
31 交差判定部
32 交点制御部
42 中心点制御部
52 面積制御部
101 画面構成
102 カーソル
111 カーソル軌跡
112 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上のオブジェクトを表示し、前記一つ以上のオブジェクトの中から一つのオブジェクトを、カーソルを用いて選択するオブジェクト選択装置であって、
ポインティングデバイスによる信号を検知する入力部と、
前記入力部によって検知された信号から、前記カーソルの位置座標及び、所定の操作に対応する信号とを検出し出力するカーソル制御部と、
前記カーソルの位置座標を蓄積する軌跡バッファ部と、
前記軌跡バッファ部に蓄積されたカーソル位置座標が成すカーソル軌跡の交差を判定する交差判定部と、
前記交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、前記軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標から所定の特徴量を算出し、当該特徴量について所定の条件を満たすオブジェクトを選択する操作制御部と
を備えることを特徴とするオブジェクト選択装置。
【請求項2】
請求項1に記載のオブジェクト選択装置であって、
前記操作制御部は、前記交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、前記軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される線分の交点座標を算出し、前記表示部の当該交点座標に存在するオブジェクトを選択することを特徴とするオブジェクト選択装置。
【請求項3】
請求項1に記載のオブジェクト選択装置であって、
前記操作制御部は、前記交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、前記軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される閉領域の幾何学的中心座標を算出し、前記表示部の当該幾何学的中心座標に存在するオブジェクトを選択することを特徴とするオブジェクト選択装置。
【請求項4】
請求項1に記載のオブジェクト選択装置であって、
前記操作制御部は、前記交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、前記軌跡バッファ部に蓄積されているカーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される閉領域と、オブジェクトとが重なる領域の面積を算出し、当該重なる領域の面積について所定の条件を満たすオブジェクトを選択することを特徴とするオブジェクト選択装置。
【請求項5】
請求項4に記載のオブジェクト選択装置であって、
前記操作制御部は、前記交差判定部において前記カーソル軌跡が交差していると判定された場合、カーソル位置座標の座標間を結ぶことで形成される閉領域と、前記表示部に表示されているオブジェクトとが重なる領域の面積を算出し、当該重なる領域の面積が最大値となるオブジェクトを選択することを特徴とするオブジェクト選択装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−110135(P2009−110135A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279878(P2007−279878)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】