説明

オペレーティングシステム起動管理装置

【課題】起動時にモジュール実行に異常が発生しても、オペレーティングシステムの起動を完了させることのできるオペレーティングシステム起動管理装置を提供する。
【解決手段】実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置は、モジュール実行制御部2が、モジュール実行管理テーブル1に記載された実行順序に従って、モジュールの実行の順序を制御し、モジュールタイマ3が、実行中のモジュールの実行時間を計測し、モジュール実行判定部4が、実行終了時の実実行時間が期待実行時間以下のときは実実行時間を実行管理テーブル1へ書き込み、実実行時間が期待実行時間を超えたときは、異常発生フラグを実行管理テーブル1へ書き込む。モジュール実行制御部2は、実行管理テーブル1に異常発生フラグが書き込まれたときは、現在実行中のモジュールの実行を中止し、次のモジュールの実行を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、オペレーティングシステム起動管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータのオペレーティングシステム(OS)を作成する手法の1つとしてモジュール化がある。モジュール化OSでは、予め用意されたモジュールを適宜組み合わせることにより、個々のシステムに最適な、カスタマイズされたOSを作成することが可能である。
【0003】
一方、このようなモジュール化OSの問題点として、システム動作中にあるモジュールの機能に障害が発生すると、システム全体が機能停止してしまうことが挙げられる。この問題に対して、従来、関数実行中の障害を検出する障害検出工程を設けて、関数実行中に障害が発生した場合、障害検出後、障害を起こした機能を縮退させて、障害を起こした機能を利用する直前に戻って連続運転を行うようにした障害対処方法が提案されている。
【0004】
しかし、上述のような障害対処方法は、OSの起動後に有効となるものであり、OSの起動時に異常が発生してCPUがハングアップ等を起こした場合など、OSが起動しない場合には、対処できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−109635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、起動時にモジュール実行に異常が発生しても、オペレーティングシステムの起動を完了させることのできるオペレーティングシステム起動管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置は、モジュール実行制御手段が、モジュール実行管理テーブルに記載された実行順序に従って、モジュールの実行の順序を制御し、実行時間計測手段が、実行中のモジュールの実行時間を計測し、モジュール実行判定手段が、実行終了時の実実行時間が期待実行時間以下のときは実実行時間を実行管理テーブルへ書き込み、実実行時間が期待実行時間を超えたときは、異常発生フラグを実行管理テーブルへ書き込む。モジュール実行制御手段は、実行管理テーブルに異常発生フラグが書き込まれたときは、現在実行中のモジュールの実行を中止し、次のモジュールの実行を開始する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の構成の例を示すブロック図。
【図2】モジュールの処理実行とエントリーポイントおよびリターンポイントとの関係を示す図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置における実実行時間の書き込みの例を示す図。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の処理の流れを示すフロー図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置における期待実行時間設定方法の例を示すフロー図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の構成の例を示すブロック図。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の処理の流れを示すフロー図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の構成の例を示すブロック図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の処理の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図中、同一または相当部分には同一の符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の構成の例を示すブロック図である。
【0011】
本実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置は、オペレーティングシステムを構成するモジュールの実行順序および各モジュールの期待実行時間が記載されたモジュール実行管理テーブル1と、モジュール実行管理テーブル1に記載された実行順序に従って、モジュールの実行の順序を制御するモジュール実行制御部2と、実行中のモジュールの実行時間を計測するモジュールタイマ(MT)3と、各モジュールの実行終了時に、モジュールタイマ3で計測された実実行時間がそれぞれの期待実行時間以下のときは、モジュール実行が正常に終了したと判定して計測された実実行時間をモジュール実行管理テーブル1へ書き込み、モジュールタイマ3で計測中の実行時間が期待実行時間を超えても実行が終了しないときは、モジュール実行に異常が発生したと判定して異常発生フラグをモジュール実行管理テーブル1へ書き込むモジュール実行判定部4と、を備える。
【0012】
モジュール実行制御部2は、モジュール実行管理テーブル1に異常発生フラグが書き込まれたときは、現在実行中のモジュールの実行を中止し、次のモジュールの実行を開始する。
【0013】
本実施形態では、モジュール実行管理テーブル1は、不揮発性メモリ100に格納されており、電源が遮断されても、モジュール実行管理テーブル1に書き込まれたデータは保持される。
【0014】
モジュール実行管理テーブル1には、オペレーティングシステムを構成するモジュールの実行順序に従って、それぞれのモジュール名が記載されている。すなわち、図1に示す例では、モジュール1、モジュール2、・・・の順に、モジュールnまでのn個のモジュールが実行される。
【0015】
ここで、各モジュールは、エントリーポイントと、リターンポイントとを必ず有しており、モジュールの処理は、エントリーポイントから実行が開始され、実行終了時にリターンポイントを必ず通過するものとする。
【0016】
そこで、モジュール実行管理テーブル1には、モジュールの実行を制御する情報として、各モジュールのエントリーポイント(entry)e1、e2、・・・、enと、リターンポイント(return)r1、r2、・・・、rnが記載されている。
【0017】
また、モジュール実行管理テーブル1には、各モジュールの期待実行時間および実実行時間の記載欄がある。期待実行時間記載欄には、各モジュールの処理時間への期待値(許容値)が記載され、実実行時間記載欄には、各モジュールの実際の実行時間が書き込まれる。なお、実実行時間記載欄には、初期値として‘N’が記載されている。
【0018】
モジュール実行制御部2は、比較部21およびモジュールカウンタ(MC)22を備えている。
【0019】
比較部21は、モジュール実行管理テーブル1に記載されたエントリーポイントの値とPC(プログラムカウンタ)1000の値(PC値)とを比較する。比較部21がPC値と一致するエントリーポイントを検出すると、モジュール実行制御部2は、そのエントリーポイントを有するモジュールの実行を開始させる。また、モジュール実行制御部2は、モジュールタイマ3へ、モジュールの実行時間の計測開始を指示する。
【0020】
モジュールカウンタ22は、比較部21が一致を検出するごとにカウント値を1ずつ進め、実行が開始されたモジュールの数をカウントする。モジュールカウンタ22のカウント値が実行すべきモジュールの総数に達したときに、モジュール実行制御部2は、オペレーティングシステムの起動を完了させる。
【0021】
図2に、モジュールの処理実行とエントリーポイントおよびリターンポイントとの関係を示す。すなわち、PC値がエントリーポイントe1と一致すると、モジュール1に記述された文の処理が実行され、その実行が終了すると、リターンポイントr1へPC値が変化する。同様に、PC値がエントリーポイントe2と一致すると、モジュール2が実行され、PC値がエントリーポイントe3と一致すると、モジュール3が実行される。
【0022】
モジュールタイマ3は、モジュール実行制御部2からの指示を受けて、モジュールの実行時間の計測を行う。
【0023】
モジュール実行判定部4は、モジュールの実行中、モジュールタイマ3で計測中の実実行時間とモジュール実行管理テーブル1に記載された期待実行時間とを所定の時間間隔で比較し、モジュール実行が正常終了したか、モジュール実行に異常が発生したか、を判定する。
【0024】
モジュール実行判定部4は、モジュールの実行終了時に、モジュールタイマ3で計測された実実行時間が期待実行時間以下のときは、モジュール実行が正常に終了したと判定し、モジュールタイマ3で計測された実実行時間をモジュール実行管理テーブル1へ書き込む。
【0025】
一方、モジュールタイマ3で計測中の実行時間が期待実行時間を超えてもモジュールの実行が終了しないときは、モジュール実行判定部4は、モジュール実行に異常が発生したと判定、異常発生フラグをモジュール実行管理テーブル1へ書き込む。本実施形態では、異常発生フラグとして‘0’を用いる。
【0026】
図3に、モジュール実行管理テーブル1への実実行時間の書き込みの例を示す。図3に示す例では、モジュール1、モジュール2、モジュール3は、期待実行時間以下でモジュールの実行が終了したので、実実行時間記載欄に、それぞれの実実行時間が書き込まれている。それに対して、モジュール4は、期待実行時間を超えてもモジュールの実行が終了しなかったので、実実行時間記載欄に、異常発生フラグである‘0’が書き込まれている。
【0027】
次に、図4を用いて、本実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置におけるOS起動処理の動作について説明する。
【0028】
図4は、本実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置の処理の流れを示すフロー図である。
【0029】
OSの起動が開始されると、モジュール実行制御部2は、モジュールカウンタ(MC)22の値mをm=0に初期化し、モジュール実行管理テーブル1からモジュールの総数nを取得する(ステップS01)。
【0030】
その後、比較部21がPC値とモジュールmのエントリーポイントemの一致(PC=em)を検出するまで待つ(ステップS02)。比較部21がPC=emを検出すると(Yes)、モジュールカウンタ22は、カウント値mを1増加させてm=m+1とする。また、モジュールタイマ(MT)3は、モジュールの実実行時間TをT=0に初期化する(ステップS03)。
【0031】
また、モジュール実行制御部2は、モジュール実行管理テーブル1からモジュールmの期待実行時間tmを取得し(ステップS04)、さらに、モジュール実行管理テーブル1の実実行時間欄に、過去の実行履歴として‘0’が記載されているかどうかをチェックする(ステップS05)。
【0032】
もし、実実行時間欄に‘0’が記載されていれば(Yes)、モジュールmの実行で異常が発生することが予想される。そこで、ここでは、モジュールmの実行をスキップし、モジュール実行管理テーブル1に記載されているモジュールmのリターンポイントrmをPC1000に代入して(ステップS06)、ステップS02へ戻る。
【0033】
一方、実実行時間欄に‘0’が記載されていなければ(No)、モジュールタイマ(MT)3が、モジュール実行制御部2からの指示を受けて、モジュールmの実実行時間Tの計測を開始する(ステップS07)。
【0034】
実実行時間Tの計測中、モジュール実行判定部4は、所定の時間間隔で、実実行時間Tが期待実行時間tm以下(T≦tm)であるかどうかをチェックする(ステップS08)。
【0035】
T≦tmであれば(Yes)、続いて、モジュール処理が終了しているかどうかをチェックする(ステップS09)。モジュール処理が終了していれば(Yes)、モジュール実行判定部4は、モジュールmの実行が正常に終了したと判定して、計測された実実行時間Tをモジュール実行管理テーブル1のモジュールmの実実行時間欄へ書き込む(ステップS10)。
【0036】
次に、モジュール実行制御部2は、モジュールカウンタ22のカウント値mがモジュールの総数nに達した(m=n)かどうかをチェックする(ステップS11)。m=nであれば(Yes)、モジュール実行制御部2は、オペレーティングシステムの起動を完了させる。
【0037】
これに対して、m=nでなければ(No)、モジュール実行制御部2は、ステップS02へ戻って、次のモジュールの処理に備える。
【0038】
一方、ステップS08において、T≦tmでなければ(No)、すなわち、実実行時間Tが期待実行時間tmを超えていれば、モジュール実行判定部4は、モジュールmの実行に異常が発生したと判定し、異常発生フラグである‘0’を、実行管理テーブル1のモジュールmの実実行時間欄へ書き込む(ステップS12)。
【0039】
この場合、モジュール実行制御部2は、ハードウェアをリセットさせて(ステップS13)、OSを再起動させる。
【0040】
このような本フローの処理によれば、モジュールの実実行時間が期待実行時間を超えると、モジュール実行に異常が発生したと判断して、ハードウェアをリセットさせて、OSを再起動させる。これにより、CPUのハングアップなどの異常の発生を防止することができる。また、OSの再起動後は、実行管理テーブル1の実実行時間欄を参照して、異常発生フラグの‘0’が書き込まれたモジュールの実行をスキップする。これにより、異常発生の履歴のあるモジュールが実行されないので、OSの起動を正常に完了させることができる。
【0041】
次に、本実施形態における期待実行時間の設定方法について説明する。本実施形態では、手動もしくは自動により、期待実行時間の設定を行う。自動で設定する場合は、過去の実行履歴(すなわち、実行管理テーブル1の実実行時間欄)を参照して、期待実行時間の設定を行う。この期待実行時間の設定方法について、図5のフロー図を参照しながら説明する。
【0042】
図5のフローで、期待実行時間の設定の開始にあたっては、まず、手動で設定するか、自動で設定するかを決定する(ステップS21)。手動で設定する場合は、実行管理テーブル1の期待実行時間欄へ期待実行時間を直接書き込み(ステップS22)、期待実行時間の設定は完了する。
【0043】
一方、自動で設定する場合は、許容時間(実実行時間に対して超過を許容できる時間)kと、初期値(モジュール実行に必要と見込まれる最大時間)t0を設定する(ステップS23)。
【0044】
次に、実行管理テーブル1のモジュールmの実実行時間欄に実実行時間Tmが記載されているかどうかをチェックする(ステップS24)。
【0045】
実実行時間Tmが記載されていれば(Yes)、モジュールmの期待実行時間tmを
tm=Tm+k
に設定し、実行管理テーブル1のモジュールmの期待実行時間欄に書き込み(ステップS25)、期待実行時間の設定を完了する。
【0046】
一方、実実行時間Tmが記載されていなければ(No)、すなわち、モジュールmの実実行時間欄に‘N’または‘0’が記載されているときは、期待実行時間tmを
tm=t0
に設定して、実行管理テーブル1のモジュールmの期待実行時間欄に書き込み(ステップS26))、期待実行時間の設定を完了する。
【0047】
このような本実施形態によれば、オペレーティングシステムの起動時に、モジュール実行に異常が発生したモジュールがある場合は、オペレーティングシステムを再起動させ、再起動時には異常の発生したモジュールの実行をスキップすることにより、オペレーティングシステムの起動を正常に完了させることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、モジュール実行に異常が発生したモジュールがある場合は、オペレーティングシステムを再起動させたが、本実施形態では、オペレーティングシステムを再起動させる必要のないオペレーティングシステム起動管理装置の例を示す。
【0049】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の構成の例を示すブロック図である。本実施例のオペレーティングシステム起動管理装置は、図1に示した第1の実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置に、システム情報取得部5を追加したものである。そこで、図1に示したブロックと同一あるいは同等の機能を有するブロックについては、図1と同一もしくは類似の符号を付し、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0050】
システム情報取得部5は、モジュール実行制御部2がモジュール実行に関する判定を行うごとに、その時点のシステム情報を取得して保存する。システム情報としては、PC値、レジスタの値、ステータスレジスタの値、メインメモリの値などが、取得される。
【0051】
システム情報取得部5は、モジュール実行が正常に終了する度に、システム情報の内容を更新する。したがって、システム情報取得部5には、モジュール実行が正常に終了したときの最新のシステム情報(正常終了システム情報)が保存されている。
【0052】
一方、モジュール実行に異常が発生したときは、システム情報取得部5は、異常が発生したときのシステム情報(異常発生システム情報)を総て保存する。このとき、実行管理テーブル1には、モジュール実行判定部4により、該当のモジュールの実実行時間欄に、異常発生フラグである‘0’が書き込まれる。
【0053】
また、システム情報取得部5は、異常発生システム情報を外部へ出力することができる。したがって、OS起動完了後、異常発生システム情報を解析して、モジュール実行に異常が発生した原因を探求することができる。
【0054】
本実施形態では、実行管理テーブル1に異常発生フラグである‘0’が書き込まれると、モジュール実行制御部2Aは、システム情報取得部5により保存された正常システム情報に記載された状態にシステムを復原し、次のモジュールの実行を開始する。
【0055】
図7は、本実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置の処理の流れを示すフロー図である。本実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置の処理の基本的な流れは、図4のフローと同一であるので、図7では、図4のフローと同一の処理には図4と同一のステップ番号を付し、図4と同一フロー部分の記載は省略し、本実施形態に特有の処理に関わる部分のみ記載する。
【0056】
モジュールmの実実行時間Tの計測を開始(ステップS07)した後、所定の時間間隔で、実実行時間Tが期待実行時間tm以下(T≦tm)であるかどうかをチェックし(ステップS08)、T≦tmであれば(Yes)、続いて、モジュール処理が終了しているかどうかをチェックする(ステップS09)。モジュール処理が終了していれば(Yes)、モジュール実行判定部4は、計測された実実行時間Tをモジュール実行管理テーブル1のモジュールmの実実行時間欄へ書き込む(ステップS10)。
【0057】
このとき、本実施形態では、システム情報取得部5が、正常終了システム情報を取得(最新情報へ更新)して保存し(ステップS31)、図4のフローのステップS02へ戻る。
【0058】
一方、ステップS08において、T≦tmでなければ(No)、モジュール実行判定部4は、異常発生フラグである‘0’を、実行管理テーブル1のモジュールmの実実行時間欄へ書き込む(ステップS12)。
【0059】
このとき、本実施形態では、システム情報取得部5が、異常発生システム情報を取得して保存する(ステップS32)。
【0060】
また、本実施形態では、モジュール実行制御部2Aが、システム情報取得部5により保存された正常システム情報に記載された状態にシステムを復原し(ステップS33)、図4のフローのステップS02へ戻る。
【0061】
ステップS02へ戻ることにより、本実施形態では、最後にモジュール実行が正常終了したときのシステムの状態に戻って、次のモジュールの実行が開始される。
【0062】
このような本実施形態によれば、モジュール実行に異常が発生したモジュールがある場合は、そのモジュールの実行をスキップし、それ以前にモジュール実行が正常終了したときの状態にシステムを復原して、次のモジュールの実行を行うことができる。これにより、オペレーティングシステムを再起動させることなく、オペレーティングシステムの起動を正常に完了させることができる。また、オペレーティングシステムの起動完了後、モジュール実行に異常が発生したときのシステム情報を読み出すことができるので、異常発生の原因を探求することができる。
【0063】
(第3の実施形態)
本実施形態では、予め設定した起動時間内にオペレーティングシステムを起動させることのできるオペレーティングシステム起動管理装置の例を示す。
【0064】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るオペレーティングシステム起動管理装置の構成の例を示すブロック図である。本実施例のオペレーティングシステム起動管理装置は、図6に示した第2の実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置に対して、モジュール実行管理テーブル1をモジュール実行管理テーブル1Aに変更し、モジュール実行制御部2Aをモジュール実行制御部2Bに変更したものである。なお、同様の変更を第1の実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置に対して施してもよい。
【0065】
本実施形態の実行管理テーブル1Aには、実行管理テーブル1の各項目に追加して、OS起動に対する期待起動時間at、および各モジュールの実行優先度p1〜pnが、記載されている。
【0066】
モジュール実行制御部2Bは、実行管理テーブル1Aへ書き込まれた実実行時間の総計が期待起動時間atを超えたときは、実行管理テーブル1Aに記載された実行優先度を参照して、実実行時間の総計が期待起動時間at以下になるまで、実行優先度の低いモジュールを実行対象から除外する。
【0067】
図9は、本実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置の処理の流れを示すフロー図である。
【0068】
OS起動開始にあたっては、まず、期待起動時間atを設定し、各モジュールの実行優先度p1〜pnとともに実行管理テーブル1Aに書き込む(ステップS41)。
【0069】
続いて、図7(または図3)に記載のフローを、OS起動完了直前まで実行し(ステップS42)、実行管理テーブル1Aに書き込まれた各モジュールの実実行時間の総計ATを算出する(ステップS43)。
【0070】
次に、各モジュールの実実行時間の総計ATが期待起動時間at以下(AT≦at)であるかどうかをチェックする(ステップS44)。このとき、AT≦atであれば(Yes)、期待起動時間AT以内に各モジュールの実行が正常終了しているので、OS起動を完了する。
【0071】
一方、各モジュールの実実行時間の総計ATが期待起動時間atを超えていれば(No)、実実行時間TmがTm>0であって、実行優先度pmが一番低いモジュールmを抽出する。このとき、優先度が同じ値に設定されているモジュールが複数あるときは、実実行時間が最長のモジュールを抽出する(ステップS45)。
【0072】
次に、抽出されたモジュールmの実実行時間Tmを、Tm=0に書き換える(ステップS46)。この書き換えにより、以降のOS起動処理では、モジュールmの実行はスキップされる。
【0073】
最後に、ハードウェアのリセットを行い(ステップS47)、ステップS42へ戻る。このフィードバックにより、AT≦atとなるまで、実行優先度の低いモジュールから順次、実行対象から除外される。
【0074】
その結果、最終的には、オペレーティングシステムの起動時間を期待起動時間以下とすることができる。
【0075】
このような本実施形態によれば、各モジュールの実実行時間の総計が期待起動時間を超えるときは、実行優先度の低いモジュールを実行対象から順次除外することができる。これにより、実行優先度の高いモジュールで構成されたオペレーティングシステムを、予め設定された起動時間内に、起動させることができる。
【0076】
以上説明した少なくとも1つの実施形態のオペレーティングシステム起動管理装置によれば、起動時にモジュール実行に異常が発生しても、オペレーティングシステムの起動を完了させることができる。
【0077】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1、1A モジュール実行管理テーブル
2、2A、2B モジュール実行制御部
3 モジュールタイマ
4 モジュール実行判定部
5 システム情報取得部
21 比較部
22 モジュールカウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレーティングシステムを構成するモジュールの実行順序および各モジュールの期待実行時間が記載されたモジュール実行管理テーブルと、
前記モジュール実行管理テーブルに記載された前記実行順序に従って、前記モジュールの実行の順序を制御するモジュール実行制御手段と、
実行中のモジュールの実行時間を計測する実行時間計測手段と、
実行終了時の前記実実行時間が前記期待実行時間以下のときは、モジュール実行が正常に終了したと判定して前記実実行時間を前記実行管理テーブルへ書き込み、前記実実行時間が前記期待実行時間を超えても実行が終了しないときは、モジュール実行に異常が発生したと判定して異常発生フラグを前記実行管理テーブルへ書き込むモジュール実行判定手段と
を備え、
前記モジュール実行制御手段は、前記実行管理テーブルに前記異常発生フラグが書き込まれたときは、現在実行中のモジュールの実行を中止し、次のモジュールの実行を開始する
ことを特徴とするオペレーティングシステム起動管理装置。
【請求項2】
前記モジュール実行判定手段の判定が行われるごとにその時点のシステム情報を取得して保存するシステム情報取得手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のオペレーティングシステム起動管理装置。
【請求項3】
前記モジュール実行制御手段が、
前記実行管理テーブルに前記異常発生フラグが書き込まれたときは、その直前に正常終了と判定されたときに保存された前記システム情報に記載された状態にシステムを戻し、前記次のモジュールの実行を開始する
ことを特徴とする請求項2に記載のオペレーティングシステム起動管理装置。
【請求項4】
前記システム情報取得手段が、
前記異常発生フラグが書き込まれたモジュールの実行時に保存した前記システム情報を外部へ出力する
ことを特徴とする請求項2または3に記載のオペレーティングシステム起動管理装置。
【請求項5】
前記実行管理テーブルに期待起動時間および各モジュールの実行優先度がさらに記載されており、
前記モジュール実行制御手段は、
前記実行管理テーブルへ書き込まれた前記実実行時間の総計が前記期待起動時間を超えたときは、前記実実行時間の総計が前記期待起動時間以下になるまで、前記実行優先度の低いモジュールを実行対象から除外する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のオペレーティングシステム起動管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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