説明

オリゴマー化反応の生成物の分岐度を制御する方法

【課題】オリゴマー生成物が特定の目的のための、特に特定の可塑剤又は洗浄剤級のアルコールの製造における出発物質として用いられる場合、望ましい生成物の分岐度を与える方法を提供する。
【解決手段】オリゴマー化条件下で、1乃至100容量ppmの硫黄化合物を含有するオレフィン系供給原料を、TON構造種(典型的にはZSM−22)及びMFS構造種(典型的にはZSM−57)を有する篩から選ばれる少なくとも1つの結晶質分子篩を含有する触媒と接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴマー化による、より低い分子量物質、特にオレフィン類、から、より高い分子量の有機分子を製造するための方法、その方法における使用に適する結晶質分子篩、及びそのような反応におけるそのような分子篩の使用に関する。本発明は、又、製造されたオリゴマー、及びさらなる反応のための供給原料としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの種類の分子篩触媒が多くの化学的方法に使用されるか又は使用のために提示されている。商業的には、分子篩触媒は、例えば、炭化水素脱蝋、水素化分解、トルエン不均化反応及び芳香族化合物のアルキル化において用いられている。文献において提示されている方法のなかで、低級オレフィン類、例えばアルケン類、の、例えば、C乃至Cのオレフィン類、特に、C乃至Cのオレフィン類、の、C乃至C12範囲の、及び時にはそれより高級の、オレフィン類へのオリゴマー化による変換がある。
【0003】
オリゴマー化のための触媒として結晶質分子篩を用いる提示の例は、欧州特許第625132号に記載されているものであり、その特許では、水和されたオレフィン系供給原料はゼオライト触媒によりオリゴマー化され、供給原料の水含量は、0.05乃至0.25モル%である。その方法は、より高い分子量のアルケン類の収量における増加をもたらし、反応を比較的低温において行うことができるという付加的な利点を有すると記載されている。そのような提示の他の例は、欧州特許第746538号に記載されているものであり、その特許では、酸形態における構造種MFI、TON、及びMFSがプロペン及びブテンのオリゴマー化に使用されており、それらの構造種系の特別なものは、ZSM−5、ZSM−22、及びZSM−57である。前記特許は、下流製造方法における使用のための二量体、三量体及びより高度のオリゴマーの望ましい割合、又はそれらに対する望ましい選択性を得るためにオリゴマー化の含量を制御することに関する。本特許において、三量体収量を改良する方法が記載されており、より高い変換率は、より低い分岐度を有するオリゴマー混合物を製造するという観察がなされている。
【0004】
しかし、触媒としての結晶質分子篩の使用は、実施において特定の制限を受けることが見出されている。使用される供給原料は、しばしば精油所生成物であり、硫黄化合物を含有し得る。例えば、芳香族化合物のアルキル化及びトルエン不均化のような、そのような供給原料を慣例として用いる商業的な方法において、供給原料が触媒と接触する前に、硫黄は除去されなくてはならない。例外的に、供給原料が、例えば、脱蝋及び水素化分解におけるように、水素を含有する場合、存在する水素は、触媒を安定化するようなので、硫黄除去は必要ではない。
【発明の概要】
【0005】
本願発明の発明者らの実験では、分子篩触媒によるオレフィンオリゴマー化のために通常用いられる条件下では硫黄含有供給原料は触媒活性度及び寿命を低減し得ることが示された。しかし、予測しないことに、硫黄の存在は、反応プロセスそれ自体に悪影響を有しないようであることが見出された。実際に、オリゴマー化が、他の場合に、関連する反応のために選ばれるであろう温度よりも高い温度で行われると、触媒の活性度及び寿命における作用が弱まる、最小になる又は好都合にさえある。
【0006】
硫黄化合物の不利な作用を弱めるために適切な温度は、用いられる触媒、オリゴマー化されるオレフィン種、1種の又は複数種の特定の硫黄化合物及び供給原料中に存在するそれらの割合に依存して変わる。しかし、適する最低温度は、日常的な実験により容易に特定され得る。
【0007】
従って、本発明は、オリゴマー化条件下で、高温において、硫黄含有化合物を含有するオレフィン系供給原料を、TON及びMFS構造種を有する篩から選ばれる少なくとも1つの結晶質分子篩を含有する触媒と接触させること、及び少なくとも1つのオレフィンオリゴマーを含有する生成物を回収すること、を含む、オレフィン系供給原料のオリゴマー化のための方法を提供する。
【0008】
本明細書において、「構造種」という用語は、Structure Type Atlas,Zeolite 17,1996に記載されている意味で用いられる。TON構造種のゼオライトの例には、ZSM−22、ISI−1、Theta−1、Nu−10及びKZ−2が含まれ、MFSには、ZSM−57が含まれ、すべて、好ましくは、それらのH形態又は酸形態である。
【0009】
結晶質分子篩は、有利には、ZSM−22又はZSM−57である。ZSM−22及びその製造は、例えば、米国特許第4,556,477号及びPCT特許出願公開WO93/25475に記載されており、ZSM−57及びその製造は欧州特許出願公開第174121号及び米国特許第4,973,870号に記載されており、それらのすべての開示を引用により本明細書に組み込む。2つ以上の分子篩の混合物、例えば、ZSM−22及びZSM−57の混合物が用いられ得る。
【0010】
有利には5μm以下の、好ましくは0.05乃至5μmの範囲の、より特定すると0.05乃至2μmの範囲の、最も好ましくは0.1乃至1μmの範囲の、分子篩微結晶サイズが用いられ得る。分子篩は、担持されていても担持されていなくてもよく、例えば、粉末形態でもよく、適するバインダーでの押出物として用いられてもよい。合成されたままの分子篩を、有利には、本発明の方法における使用の前に、例えば、酸処理、例えば、HClによる酸処理、又はアンモニウムイオン交換、それに続くか焼により、酸形態に変換する。か焼された物質に、蒸熱によるような後処理をし得る。本発明は、ゼオライトについて完全に記載されるが、本技術分野で知られているように、珪素及びアルミニウムが、全部又は部分において、他の元素により置換されており、珪素は、より特定するとゲルマニウム又は燐により置換されており、アルミニウムは、より特定すると硼素、ガリウム、クロム及び鉄により置換されている物質を用いることもでき、そのような置換格子元素を有する物質もゼオライトと称され、その用語は、本明細書ではより広い意味で用いられる。
【0011】
オレフィン供給原料は、有利には、2乃至12の炭素原子、好ましくは2乃至6の炭素原子、を有するオレフィン類を含有し、有利には、アルケン含有供給原料である。供給原料それ自体が、オリゴマー、特に二量体、特に生成物流れの一部を再循環することにより供給されるもの、であり得るか又はそれを含有し得る。供給原料は、好ましくは、プロペン、ブテン類、ペンテン類及び/又はヘキセン類を含有し、特に、プロペン及びブテンオリゴマー化に適用できる。
【0012】
先に示したように、供給原料は、硫黄含有化合物を含有する。供給原料は、有利には、1乃至100容量ppmの範囲の、より有利には、50容量ppm以下の、なおより有利には30容量ppm以下の、好ましくは20容量ppm以下の、より好ましくは5容量ppm以下の、なおより好ましくは2容量ppm以下の、そのような化合物を含有する。挙げた範囲のいずれかの上限より多い割合、例えば、約200ppm、から、いずれかの範囲内の割合までに硫黄化合物の割合を低減させることは、又、より好ましくない範囲の割合から、より好ましい範囲までに低減させることも、本発明の範囲内である。典型的に遭遇する供給原料は、1乃至30容量ppm又は2乃至20容量ppmの硫黄化合物を有し得て、本発明は、そのような供給原料によく適合する。
【0013】
硫黄含量は、COS標準に関して標準化されたピーク面積を用いるガスクロマトグラフ分析により、便利に確認される。
【0014】
硫黄含有化合物の例として、より特定すると飽和脂肪族化合物、例えば、チオール類、環式硫化物を含む硫化物類及び二硫化物が記載され得る。典型的な化合物には、例えば、、硫化水素、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化エチルメチル、硫化n−プロピル、1−プロパンチオール及び2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、1,1−メチルエチルチオール、二硫化エチルメチル、二硫化ジメチル及びテトラヒドロチオフェンが含まれる。
【0015】
本発明の方法のための反応条件は、温度及び一種又は複数種の硫黄化合物の存在を除いて、一種又は複数種の同じオレフィンのオリゴマー化のための先行技術の方法で操作される条件による。
【0016】
オレフィン系供給原料は、液体における又は好ましくは超臨界相における反応域に供給され得る。供給原料は、供給原料物質から存在する又は添加による、水を含有し得る。
【0017】
供給原料は、有利には、供給原料の総炭化水素含量に基いて、0.05乃至0.25モル%の、好ましくは0.06乃至0.20モル%の、より好ましくは0.10乃至0.20モル%の、水を含有する。望ましい又は必要な場合、例えば、サーモスタットが装備された水サチュレーターを通過させることにより、供給原料の天然の水含量が増加され得る。供給原料を飽和させるのに必要な水の量は、供給原料の温度及び組成に依存するので、水含量の制御は、供給原料の温度の適切な制御により達成され得る。
【0018】
供給原料は又、不活性の稀釈剤、例えば、飽和炭化水素を含有し得る。その他の炭化水素は、水含量の計算の目的のために炭化水素含量に含まれる。
【0019】
オレフィンオリゴマー化のための操作温度は、80乃至350℃であると、文献において種々に報告されている。その範囲の上限近く及び上限より上の温度で、脱オリゴマー化速度が増大し、オリゴマー化反応を上回り得るので、実際の操作に対する上限を規定する。
【0020】
先に記載したように、当業者が本発明を入手したら、所定の供給原料及び触媒について、100℃乃至350℃の一般的な範囲、特に135℃乃至350℃、さらに特に150℃乃至300℃、の範囲内の操作のための最低で最適の温度を確認することは、日常的な実験の問題である。一般的には、少なくとも160℃の温度が有利であると見出された。後記の組合わせは、例示としてのみ与えられている。
【0021】
MFS(典型的にはZSM−57)による触媒作用による反応において、少なくとも160℃で約220℃以下の操作温度が有利であり、少なくとも170℃が好ましく、少なくとも200℃がより好ましい。供給原料がプロペンであり、目的のオリゴマー類がノネン類である場合、MFS触媒が好ましい。
【0022】
TON(典型的にはZSM−22)による触媒作用による反応において、少なくとも190℃の、好ましくは少なくとも200℃の、操作温度は有利であり、少なくとも220℃が好ましく、少なくとも250℃がより好ましい。有利な上限は350℃であり、好ましい上限は、300℃である。供給原料がブテンであり、目的のオリゴマー類が低分岐オクテン類である場合、TON触媒が好ましい。
【0023】
望ましい変換率を維持することが認識され、触媒が操作中である時間とともに反応温度を増大させることは有利であり得る。
【0024】
圧力は、有利には5乃至10MPaの、好ましくは6乃至8MPaの、範囲である。オレフィン毎時空間速度は、有利には、0.1乃至20時間−1の、好ましくは1乃至10時間−1の、より好ましくは1.5乃至7.5時間−1の、範囲である。
【0025】
オリゴマー生成物が特定の目的のための、特に特定の可塑剤又は洗浄剤級のアルコールの製造における、出発物質として用いられる場合、生成物の分岐度を最小にすることが望ましい。
【0026】
オレフィンオリゴマーの分岐度は、操作温度により、ある程度制御され得て、通常、より高い温度は、より低い分岐度(分枝度)をもたらす。オレフィン分枝度は、いずれかの下流生成物、例えば、オリゴマーオレフィン類からオキソ法により生成される、例えば可塑剤又は清浄剤級のアルコールの分枝度を大きく決定する。そのような生成物の、ひいてはそれらの下流の生成物の、例えば、可塑剤エステル類の、ユーザー達は、供給者達が満たさなければならない種々の特性ための厳格な仕様書を有し、それらの仕様書は、典型的には、分枝度が、規定された範囲内に、通常、低い範囲内に、あることを要求している。
【0027】
しかし、オリゴマー化操作が、新しい触媒を用いて開始される場合、触媒は非常に活性であり、又、オリゴマー化は発熱的であるので、反応器の無制御の深刻なリスクが生じる。従って、最初は、低温で操作し、実質的な量の生成物が生成される長期間の間、望ましい操作温度に達するに過ぎないことが、通常、必要である。生成物のこの部分は、後に生成される生成物の分枝度より大きな分枝度を有し、それによって、生成物の平均分枝度を増大させ、顧客の仕様書に合致させる困難さを増大させる。
【0028】
本明細書に記載されているように、硫黄含有供給原料を用いることは、初期の触媒の過活性度を何らかの方法で制御し、反応が望ましい操作温度で又はその付近で開始されることを可能にする。
【0029】
従って、本発明は、又、TON及びMFS構造種の篩から選ばれる少なくとも1つの結晶質分子篩を、硫黄化合物含有オレフィン系供給原料と接触させることを含む、オリゴマー化反応における、前記篩を含有する触媒の活性度を制御する方法を提供する。
【0030】
従って、本発明は、又、オリゴマー化条件下で、硫黄化合物含有オレフィン系供給原料を、TON及びMFS構造種を有する篩から選ばれる少なくとも1つの結晶質分子篩を含有する触媒と接触させることを含む、オリゴマー化反応の生成物の分岐度を制御する方法を提供する。
【0031】
従って、本発明は又、オリゴマー生成物の分岐度を制御するための、そのような反応における高温の使用を提供する。
【0032】
有利には、供給原料の硫黄含量は、1乃至100容量ppmである。
【0033】
分岐度における影響は、供給原料がプロペンであるときに特に明白であり、ZSM−22では、三量体の分枝度は、非常に低減され、ZSM−57では、二量体及び三量体の両方の分枝度が低減される。
【0034】
本発明は又、それに吸収された又はそれに吸着された少なくとも1つの硫黄含有化合物を有する、TON又はMFS構造種の結晶質分子篩を提供する。有利には、結晶質分子篩はZSM−22及びZSM−57である。有利には、硫黄化合物は、先に特定された群の1つであるか又はその群の1つから誘導され、好ましくは先に特定された特定の化合物の1つであるかその化合物の1つから誘導される。有利には、それに吸収された又はそれに吸着された硫黄含有化合物を有する結晶質分子篩は、硫黄化合物含有供給原料のためのオリゴマー化触媒としての使用により得られるものであり、好ましくは、その使用により得られたものである。
【0035】
本発明の方法により生成されるオリゴマーは、異性体の独特の混合物であり、その構成物質は、
タイプI RCH=CH
タイプII RCH=CHR’
タイプIII RRC=CH
タイプIV RR’C=CHR’’
タイプV RR’C=CR’’R’’’
(式中、R、R’、R’’及びR’’’はアルキル基である)
である5種の骨格構造に分類される。オレフィン種は、プロトンNMR分析により特定される。特に、制御された平均分岐度と組み合わされて、本発明のオリゴマー生成物は、伝統的な、例えば、担持された燐酸触媒での方法により生成されたオリゴマー生成物より利点を有する。それらの利点は、主に、より低い平均分岐度及びタイプVオレフィンのより低い割合であり、オリゴマー組成物をオキソ法(ヒドロホルミル化)に付す場合の望ましい反応性のために、オリゴマー生成物を、その後の処理、より高級のアルコール、アルデヒド及び酸製造、のために、より適するものにさせる。
【0036】
本発明は又、0.95以下の平均分岐度、特に0.92乃至0.95の範囲の平均分岐度、及び6%、好ましくは5%のタイプVの最大含量を有するオリゴマーヘキセン混合物を提供する。
【0037】
本発明は、又、2.0以下の、有利には1.5乃至2.0の範囲の、好ましくは1.78乃至2.0の範囲の、より有利には、1.78乃至1.86の範囲の、平均分岐度を有し、14%以下の、好ましくは10乃至14%の範囲の、タイプVのオレフィン含量を有するオリゴマーノネン混合物、特に、ZSM−22による触媒作用によるオリゴマー化、特に硫黄の存在下でのオリゴマー化、により得られるオリゴマーノネン混合物、をさらに提供する。有利には、タイプIVオレフィン含量は、58乃至60%の範囲であり、有利には、タイプIIIオレフィン含量は、7.25乃至7.75%の範囲であり、有利には、タイプIIオレフィン含量は、18.5乃至20%の範囲であり、有利には、タイプIのオレフィン含量は1.2乃至2.2%の範囲である。
【0038】
本発明はさらに、2.75以下の、有利には2.70乃至2.75の範囲の、平均分岐度を有するオリゴマードデセン混合物を、有利には、19%以下の、好ましくは16乃至19%の範囲のタイプVのオレフィン含量を有するオリゴマードデセン混合物を、特に、ZSM−22触媒による、特にプロペンの、特に硫黄の存在下での、オリゴマー化により得られるオリゴマードデセン混合物を、提供する。有利には、タイプIVのオレフィン含量は、59乃至62%の範囲であり、有利には、タイプIIIのオレフィン含量は、4.8乃至5.7%の範囲であり、有利には、タイプIIのオレフィン含量は、14乃至15%の範囲である。
【0039】
先に示したように、本発明のオリゴマー類は、分別、水素化、ヒドロホルミル化、酸化、カルボニル化、エーテル化、エポキシ化及び水和の少なくとも1つを含む更なる処理のための供給原料として特に適している。水素化されたオリゴマーオクテン類は、例えば、12乃至15%の2−メチルヘプタン、22乃至28%の3−メチルヘプタン及び7乃至9%の4−メチルヘプタンを含有し得る。それらは、特に、ZSM−22を含有する触媒を用いるオリゴマー化により容易に得られる。
【0040】
最終的な生成物は、例えば、ヒドロホルミル化及び水素化により製造される、アルコール類、そのアルコール類が、カルボン酸、特にポリカルボン酸、を含む無機酸又は有機酸とエステル化されるエステル類、ヒドロホルミル化生成物が酸化され、水素化されるアルデヒド類、酸類、及び多くの他の最終用途であり得る。
【0041】
ポリカルボン酸でのエステル類は、可塑剤として特に価値を有し、本発明は、さらに、そのエステルを含有する可塑剤組成物、そのエステルを含有するポリマー組成物、特に、ビニルポリマーのポリマー組成物、より特定するとPVCのポリマー組成物、並びに可塑化されたポリマー組成物から形成される造形構造物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
実施例
下記の実施例は本発明を例示し、部及び%は、他に示されていなければ、重量に基いている。
【0043】
それらの実施例において用いられたすべての供給原料は、25乃至40℃における水サチュレーターへの通過により水和された。
【0044】
オレフィンモノマー変換率は、内部標準として供給原料中のパラフィン類の総合計に対して標準化されたピーク面積を用いるクロマトグラフ分析から誘導され、変換は、
【数1】

[式中、Aは、生成物におけるクロマトグラフピーク面積(重量%)を表わし、Aは、供給原料中のクロマトグラフピーク面積(重量%)を表わし、o.m.は、一種又は複数種のオレフィンモノマーを表わす]
として表わされる。
【0045】
所定のオリゴマー(二量体、三量体等)の選択性は又、生成物流れの水素化の後のガスクロマトグラフピーク面積から決定される。
【0046】
実施例1
本実施例では、市販のZSM−22触媒[アルミナに担持されたZSM−22(75%)]で、6.8時間−1の毎時重量空間速度において、40℃における水に通過させることにより水和された、60乃至65%のブテン類/35乃至40%のブタン供給原料においてブテンオリゴマー化を行なった。反応器流体をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、供給原料及び生成物のオレフィン/パラフィン比を比較し、変換率を決定した。液体生成物を、オレフィン類をパラフィンに水素化するためのプラチナ触媒を有するGC装置で分析し、炭素数及び骨格を決定した。比較試料のC1及びC3において、純粋な(すなわち、硫黄非含有の)ブテン供給原料を用い、比較試料のC2及び実施例1において、20ppmの硫黄(16ppmの硫化ジメチル、1.5ppmの硫化ジエチル、残量は、硫化メチルエチル及びメルカプタン類)を含有する精油所供給原料を用いた。
【0047】
その結果を下記の表に示す。
【表1】

【0048】
比較試料1及び2は、より低い操作温度(約220℃)における硫黄の存在下により、触媒活性度が非常に低減されることを示しており、一方、比較試料3及び実施例1により、280℃において、硫黄のマイナス作用が回避されることが示されている。
【0049】
水素化の後の生成物の炭素骨格を下記の表に示す。
【表2】

【0050】
実施例2
本実施例は、プロペンオリゴマー化において、ZSM−57の活性度における硫黄の影響及びその影響における高温の作用を示す。
【0051】
50%のZSM−57/50%のアルミナ触媒を用いて、135℃において、2.02のWHSVで、50%のプロペン/50%のブタン類の硫黄非含有供給原料をオリゴマー化した。生成物流れは、88%の総変換率、1.99のノネン類の平均分岐度において、約73%のノネン類、9%のドデセン類及び7%のヘキセン類を含有していた。
【0052】
2ppmの二硫化ジメチルを供給原料に添加し、他は同じ条件下で実施を続けた。24時間の経過により、触媒は、5%への変換率の下落により示される、ほとんど完全な奪活化がされた。
【0053】
次に、触媒を回収し、変換率が95%に上昇したときに、温度は175℃に上がっていた。生成物流れは、約64%のノネン類、11重量%のドデセン類及び5%のヘキセン類を含有し、ノネン類の平均分岐度は、1.95であった。
【0054】
本実施例は、高温により、結晶質分子篩触媒の活性度における硫黄の悪影響が避けられ、高温は、奪活化した触媒を再活性化するのに有効であることを示した。
【0055】
実施例3
実施例2の純粋な供給原料に7ppmの硫化エチルを添加し、実施例2において用いられた触媒により、168℃において、オリゴマー化を行った。生成物流れは、約66%のノネン類、11%のドデセン類及び9重量%のヘキセン類を含有し、ノネン類の分岐度は2.0であった。変換率は93%であった。
【0056】
硫黄非含有供給原料を用いて、255℃においてZSM−22によりプロペンをオリゴマー化することにより、40%の一分岐化異性体を含有する、1.57の分枝度のノネン生成物を得た。同様に、277℃においてZSM−22を用いて、硫黄非含有ブテン供給原料は、66%の一分岐化異性体を含有する、1.15の分枝度のオクテン生成物を生じた。硫黄含有供給原料は、同様の結果を生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴマー化の温度が350℃まで、TON構造種の篩については少なくとも190℃であり、MFS構造種の篩については、少なくとも160℃であり、5から10MPaの範囲の圧力、0.1から20時間−1の範囲のオレフィン毎時空間速度であるオリゴマー化条件下で、プロペン、ブテン類、ペンテン類及び、またはヘキセン類を含有し、かつ硫化水素、硫黄含有飽和脂肪族化合物、及びそれらの混合物から選ばれる、1乃至100容量ppmの、少なくとも1つの硫黄含有化合物を含有するオレフィン系供給原料を、TONとMFS構造種の篩から選ばれる少なくとも1つの結晶質分子篩を含有する触媒と接触させることを含む、オリゴマー化反応の生成物の分岐度を制御する方法。
【請求項2】
少なくとも200℃の温度においてTON構造種の分子篩を含有する触媒を用いて行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結晶質分子篩が、H−ZSM−22及びH−ZSM−57の混合物を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
供給原料をオリゴマー化に付す前に供給原料の硫黄含量が低減されている、請求項1乃至3のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項5】
硫黄含有化合物が、硫化水素、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化エチルメチル、硫化n−プロピル、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、1,1−メチルエチルチオール、二硫化エチルメチル、二硫化ジメチル及びテトラヒドロチオフェンから選ばれる少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1乃至4のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記回収した生成物がオリゴマーヘキセン混合物、オリゴマーノネン混合物及びオリゴマードデセン混合物から選ばれるオリゴマーオレフィン混合物を含有する、請求項1乃至5のいずれかの1請求項による方法。
【請求項7】
供給原料が、オリゴマーであるか又はオリゴマーを含有する、請求項1乃至6のいずれか1請求項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかの1請求項による方法であって、さらにオリゴマー化による生成物をヒドロホルミル化に付し、そのヒドロホルミル化生成物を水素化することによりアルコールを製造することを含む方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、さらに前記アルコールをエステル化に付しエステルを製造することを含む方法。
【請求項10】
請求項9に従う方法であって、前記アルコールのエステルはポリカルボン酸を加えることにより生成され、さらに該エステルを可塑剤組成物に含有させることを含む方法。
【請求項11】
請求項10に従う方法であって、さらにポリマー組成物に前記可塑剤組成物を含有させることを含む方法。

【公開番号】特開2011−42799(P2011−42799A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228704(P2010−228704)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【分割の表示】特願2003−538102(P2003−538102)の分割
【原出願日】平成14年10月23日(2002.10.23)
【出願人】(599134676)エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク (301)
【Fターム(参考)】