説明

オリゴラムノシドの直接合成法、オリゴラムノシド含有組成物および医薬としてのその使用

本発明は、オリゴラムノシドの調製法であって、ラムノースの保護または脱保護反応を行わない、アセトニトリル中でのワンポット反応を含む方法に関する。本発明はまた、前記方法を用いて得ることができる、2〜12のラムノース単位を有するオリゴラムノシドの混合物を含んでなる組成物に関する。本発明はさらに、好ましくは炎症性機序を調節することを目的とする、前記組成物を含んでなる、医薬および化粧処置方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、オリゴラムノシド(oligorhamnoside)の直接合成法に関する。合成法は、ラムノースの保護または脱保護反応を行わない、アセトニトリル中でのワンポット反応からなる。得られるオリゴラムノシド混合物は抗炎症活性を示す。
【0002】
炎症反応は、ウイルスもしくは細菌などの病原体によるかまたは化学的もしくは物理的攻撃によるそれらの細胞または血管組織に対する攻撃に直面した生物の免疫系による応答である。痛みを伴うことの多い炎症は一般に治癒応答である。しかしながら、ある場合(関節リウマチ、クローン病、自己免疫疾患など)において、それが最初の刺激より深刻な結果をもたらすことがある。
【0003】
接触過敏反応は、細胞病変または炎症反応の起始部の細胞上または組織中に存在する抗原に対して向けられる特異的免疫反応である。これらの過敏反応は、病原微生物に対する防御機構の枠組みの中でまたはアレルギー反応の場合において発現する可能性がある。それらの反応は、炎症反応において主たる役割を担う内皮細胞は言うまでもなく、種々のタイプの細胞、特に皮膚細胞および特定の白血球を利用する。
【0004】
介在する細胞間相互作用には、一般にリガンドと受容体間の特異的認識現象が含まれる。過去20年間に、フコースおよびラムノースのような特定の糖により特異的認識を確実にすることが可能なタンパク質などの多くの細胞表面受容体が同定された。
【0005】
レクチンは、特に炎症プロセス時の細胞間の接着および認識現象において極めて重要な役割を果たす真核細胞の膜内に埋め込まれているタンパク質である。膜レクチンは、特にエンドサイトーシス、複合糖質の細胞内輸送および内皮透過性に関与している。さらに、これらのタンパク質、多くの場合、膜貫通型タンパク質は、特異的抗原認識(細胞外ドメイン)および細胞活性化(細胞内ドメイン)にも寄与している。レクチンは、特定の糖、特にラムノースを特異的に認識することができる。
【0006】
オリゴラムノシドの研究および治療上の使用では、これまで以上にこれらの生成物の大量での入手可能性を必要とする。残念なことに、それらの生成物はミクロ不均質混合物として存在するという事実から、生細胞から均質型で単離することが難しい。可能な場合でも、このような化合物の精製は難しく、一般に収率は非常に悪い。これらの制約より、簡易で効率的なオリゴラムノシド合成法が望まれていることが示される。
【0007】
20世紀中、多くの研究者が独自のオリゴ糖合成法を提供するよう試みた。最初のものはFischer, Koenigs and Knorr, Lemieuxが着手した(糖単位の活性化および保護の概念を導入した、Lemieux, R. U., Morgan, A. R., The preparation and configurations of tri-O-acetyl-alpha-D-glucopyranose 1, 2-(orthoesters). Canadian journal of chemistry, 1965. 43: p. 2199-2204)。次に、Paulsen(Paulsen, H., Kutschker, W., Lockhoff, O., Building units for Oligosaccharides, XXXIII: synthesis of beta-glycosidically linked disaccharides of L-rhamnose. Chemical Berstein, 1981. 114: p. 3233-3241)、つい最近では、Schmidt and Seeberger(Seeberger, P. H. H. W. C, Solid-phase oligosaccharide synthesis and combinatorial carbohydrate libraries. Chemical reviews, 2000. 100 (no. 12): p. 4349-4393; Seeberger, P. H., Plant, O. J., Synthesis of Oligosaccharides, reagents and methods related thereto. 2001, MIT(Cambridge MA): United States, p. 50)が、反応収率および特異性を高めるために、固相支持体でのより複雑な方法を提案した。オリゴ糖の合成には、新規治療用物質を発見するために、目的としてそれらの生体適合性の活用があった。しかしながら、これらの方法は糖の保護および脱保護工程の総てを必要とする戦略に基づく。従って、これらの合成法は扱いにくく、残念なことに、収率も非常に低い(その低い収率によって工業生産の可能性が低下する)。従って、これらの化合物の合成を反応工程を最小限に抑えて可能にする好適な独自の方法を見つけることが極めて重要である。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、驚くべきことに、ラムノースの保護または脱保護反応を行わずに、アセトニトリル中でオリゴラムノシドを直接合成する(ワンポット合成(one-pot synthesis))ことが可能であることに気付いた。
【0009】
単一工程反応でのこの合成にはアセトニトリル中でのラムノースの特異的溶解特性(ラムノースは冷アセトニトリルに極めて不溶性であり、温アセトニトリルに対してはやや溶解度が高い)を利用する。
【0010】
本発明の意味において、「オリゴラムノシド」とは、αまたはβ立体配置のグリコシド結合によって互いに結合された、左旋性または右旋性、有利には左旋性立体配置のラムノースモチーフからなるオリゴマーを意味すると理解される。前記のオリゴマーは直鎖または分枝状のものであり得る。
【0011】
本発明は、オリゴラムノシドの調製法であって、次の連続工程:
a)酸触媒の存在下、アセトニトリル中にて、単一反応工程でラムノースを自己縮合させて、その自己縮合により生成したオリゴラムノシドを沈殿させ、次いで
b)工程a)後に得られるオリゴラムノシドを含む沈殿物を濾過により回収する
ことを含んでなる方法に関する。
【0012】
該方法の独自性は、アセトニトリル中でのラムノースの自己縮合反応が、ラムノースの水酸基の予備的保護工程を行わず、同様にラムノースの水酸基の連続的脱保護工程を行わずに直接実施されるということにある。
【発明の具体的説明】
【0013】
前記の工程a)中、オリゴラムノシドの迅速な沈殿を確実に行うために飽和状態で作業する一方で、最終的な粗生成物における過剰のラムノースを制限するために、作業は有利には均質媒質中で行われる。従って、アセトニトリル溶液は、有利にはラムノースで飽和している。
【0014】
ラムノース、アセトニトリルおよび酸触媒の混合物は、有利には加熱下、場合によっては攪拌下、温度20℃〜120℃、さらに有利には35℃〜75℃にて反応させる。自己縮合温度は糖が分解しないように120℃を超えてはならない。有利な形では、加熱温度は大気圧にて約65℃である。ラムノース、アセトニトリルおよび酸触媒の混合物は、有利には5分〜24時間、さらに有利には3時間混合する。
【0015】
糖の化学では、グリコシド結合の形成を有利に進めるために酸触媒を使用することは極めて古典的である。本発明の範囲内において、酸触媒は、有利には塩酸、硫酸、リン酸、オルト−、メタ−およびパラ−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、置換ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ルイス酸(特に塩化亜鉛および塩化第二鉄)、粘土酸(clay acid)(特にモンモリロナイトK−10)、合成樹脂酸、ゼオライトならびにそれらの組合せからなる群から選択される。
【0016】
置換ベンゼンスルホン酸は、有利にはオルト−、メタ−およびパラ−ブロモベンゼンスルホン酸である。
【0017】
ルイス酸は、例えば、塩化亜鉛、塩化第二鉄もしくはその他の金属、メタロイドまたはハロゲン化ランタニドである。
【0018】
合成樹脂酸の例としては、特にタイプ「Amberlyst(商標)」、「Amberlite(商標)」および「Dowex(商標)」が挙げられる。
【0019】
反応が非常に迅速であるため、触媒の量を制御しなければならない。反応をさらに制御するためには、その速度を落とす必要がある。酸触媒の添加量は、有利には一定にする。触媒の添加量は、有利には1モルのラムノースに対して約0.1モルの触媒とする。
【0020】
工程a)の自己縮合反応中に生成する水は、有利には物理的にまたは化学的に排除される。合成中に生成する水を排除するための物理技術の例としては、特に蒸留または吸着剤の使用が挙げられる。合成中に生成する水を排除するための化学技術の例としては、特に乾燥剤の使用が挙げられる。
【0021】
本発明の有利な変形によれば、工程a)の自己縮合反応中に生成する水は、炭酸塩、硫酸塩、塩化カルシウム、五酸化リン、モレキュラーシーブスまたはこれらの種々の乾燥剤の組合せからなる群から選択される乾燥剤によって排除する。乾燥剤は、反応媒質に直接加えることができるし、「ソックスレー型」(Soxhlet-type)固体/液体抽出カートリッジ内に溶媒蒸気のレベルで存在していてもよい。
【0022】
本発明の変形によれば、工程a)の自己縮合反応は不活性ガス(例えば、アルゴンまたは窒素)雰囲気下、大気圧にて実施する。
【0023】
本発明のもう1つの変形によれば、工程a)の自己縮合反応は減圧にて(好ましくは約260mbar)、有利にはオートクレーブ内で実施する。
【0024】
試薬は、反応が常に最も有利なモル比で実施されるように、分割してまたは連続して入れることができる。
工程b)の前に反応混合物を、有利には縮合反応温度〜0℃の間の範囲の温度まで、さらに有利には周囲温度まで、すなわち、約20℃まで冷却する。
この追加冷却工程により、工程a)中に生成するオリゴラムノシドの沈殿を有利に進める。
【0025】
工程b)中に回収される沈殿物を沈殿物(P1)と呼ぶ。この沈殿物は、有利には濾過(例えば、ブフナー濾過)により回収する。
【0026】
前記沈殿物(P1)を、有利にはアセトニトリルで洗浄する。工程b)後に得られた濾液を減圧蒸発させて、未反応のラムノース、さらに溶液中に入った沈殿物(P1)のラムノシル化誘導体を含有する第2の沈殿物((P2))を回収する。
【0027】
反応中のオリゴラムノシドの沈殿物は溶媒分子(アセトニトリル)を放出する。そのため、最小塊の可溶化が可逆的に生じ、このような理由でアセトニトリル相の蒸発により得られる沈殿物(P2)が高割合のラムノースとわずかな合成オリゴラムノシドを含有している。
【0028】
得られたオリゴラムノシドは、12に等しい、有利には2〜9の間の範囲の最大重合度を示す。
【0029】
操作条件の変更は、塊の分布に変化をもたらさないが、オリゴラムノシドの形成速度論に変化をもたらさないだけであると考えられている。実際に、特定の大きさから始め、オリゴマーがアセトニトリルにもはや溶けず、沈殿すると考えられる場合には、この現象は別の2つの正反対の基礎現象を伴う。第1の現象は、その後、最も小さいオリゴマーをさらに可溶化することが可能な溶媒分子の放出であり、第2の現象は共沈現象である。十分に大きな塊のオリゴマーは、反応媒質に不溶性となった場合に、より小さなその同族体の沈殿を引き起こす可能性がある。
【0030】
これらの3つの現象、沈殿、共沈および再溶解が、おそらく塊分布の定性的均一性の原因であると思われる。
【0031】
ラムノースモチーフにおいてそれらの水酸基の最大3個のものがグリコシド結合の形成に関与する。ラムノースモチーフが4個の水酸基を有している場合、理論的には4つのグリコシド結合を形成するはずである。しかしながら、本発明の方法の実施において、グリコシド結合の形成に関与するのはラムノースモチーフの水酸基のうちせいぜい3個であることが示されている。これは立体障害問題が原因であると考えられる。
【0032】
本発明の方法のオリゴラムノシド重量収率は、投入したラムノースの重量に対し30〜60%の間にある。
【0033】
本発明はまた、本発明の方法によって得られる可能性がある、2〜12のラムノースモチーフ、有利には2〜9のラムノースモチーフを含むオリゴラムノシドの混合物からなる組成物にも関する。
【0034】
オリゴラムノシドの重合度の関数としてのオリゴラムノシドの分布はポアソン分布にほぼ従う。
【0035】
ラムノースモチーフにおいてそれらの水酸基の最大3個のものがグリコシド結合の形成に関与する。グリコシド結合はαまたはβ結合であり得る。
【0036】
本発明はまた、本発明の組成物、すなわち、前述のようなオリゴラムノシドの混合物からなる医薬にも関する。
【0037】
本発明の医薬は、有利には炎症性機序を調節することを目的とする。
該医薬は、特に皮膚および/または粘膜のアレルギー、炎症もしくは免疫反応または病変の予防または処置を目的とする。本発明の医薬はまた、炎症ストレスに関連する免疫応答を抑制することも目的とする。
【0038】
本発明の医薬は、特に白血球(例えば、ヒト顆粒球、特にヒト好中球および肥満細胞)の活性化を抑制することを目的とする、前もって生成された、免疫反応のメディエーターの放出を妨げる医薬である。該医薬はまた、循環リンパ球と内皮細胞の接着抑制も可能にし、そうすることによってこれらの白血球の炎症部位への移行を抑制する。該医薬はさらに、白血球の補充および経内皮通過に寄与する、ケラチノサイトからのサイトカイン、Tリンパ球およびランゲルハンス細胞のアクチベーター(例えば、IL−1およびTNF−α)または接着分子(例えば、ICAM−1およびVCAM)の分泌抑制も可能にする。本発明の医薬はまた、ケラチノサイト過形成現象の抑制薬でもある。
【0039】
本発明の医薬はまた、皮膚の樹状細胞による抗原プロセシング、抗原提示細胞、すなわち、皮膚の樹状細胞およびランゲルハンス細胞の成熟、ならびにリンパ球と抗原提示細胞間の認識現象の抑制薬でもある。
【0040】
従って、本発明の医薬は、アトピー性および/または接触湿疹、炎症性皮膚疾患、刺激性皮膚炎、座瘡、自己免疫疾患、例えば、乾癬、光免疫抑制、白斑、粃糠疹、強皮症、関節リウマチ、クローン病および移植片拒絶からなる群から選択される疾病の予防または治療を目的とする。
【0041】
本発明の医薬はまた、加齢に伴う慢性的な炎症問題およびそれらの影響の予防および治療も目的とする。該医薬は、特にアナフィラキシー過敏症(anaphylactic sensitivities)、皮膚の色素異常症、皮膚の血管過剰増生(dermal hypervasculority)および炎症性亀裂からなる群から選択される疾病の予防または治療を目的とする。
【0042】
本発明の変形によれば、該医薬は組成物または香料のアレルゲン性および/または刺激性を低減することを目的とする。
【0043】
本発明の医薬は、有利には0.001重量%〜50重量%のオリゴラムノシドを含有する。
【0044】
本発明の医薬は、いずれの経路による投与に対しても製剤することができる。該医薬は、有利には局所、経口、皮下、注射、直腸および膣経路により投与することを目的として製剤される。
【0045】
医薬が経口経路により投与することを目的として製剤される場合、前記医薬は水溶液、エマルション剤、錠剤、ゼラチンカプセル剤、カプセル剤、散剤、粒剤、液剤または経口懸濁剤の形態で与えられる。
【0046】
医薬が皮下経路により投与することを目的として製剤される場合、前記医薬または前記組成物は注射用滅菌アンプル剤の形態で与えられる。
医薬が直腸の経路により投与することを目的として製剤される場合、前記医薬は坐剤の形態で与えられる。
【0047】
医薬が膣経路により投与することを目的として製剤される場合、前記医薬は膣坐剤の形態で与えられる。
【0048】
本発明の医薬は局所適用が好ましい。従って、該医薬は、例えば、水溶液、白もしくは有色のクリーム剤、ポマード、乳剤、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤、漿液、ペースト剤、泡沫剤、エアゾール剤またはスティック剤の形態となるように製剤される。
【0049】
本発明の医薬の投与量は、疾病の治療を受ける人の体重と年齢によって変動する。当然、各患者の用量は医師によっても調整される。
【0050】
本発明はまた、敏感であるか、炎症を起こしているか、耐性がないか、アレルギー体質であるか、老化しているか、危険な徴候を示しているか、皮膚バリア障害を示しているか、皮膚の発赤を示しているかまたは内因性老化、外因性老化もしくはホルモン老化に関連する非病理学的免疫学的不均衡(non-pathological immunological imbalance)を示している、皮膚および/または粘膜の化粧処置のための方法であって、皮膚および/または粘膜に、前述のようなオリゴラムノシドの混合物を含んでなる組成物を適用することからなる方法にも関する。
【0051】
本発明はまた、皮膚の自然老化を遅延させおよび/または外的攻撃を受けた皮膚の促進老化を予防するための、特に皮膚の光老化を予防するための化粧処置方法であって、皮膚および/または粘膜に、前述のようなオリゴラムノシドの混合物を含んでなる組成物を適用することからなる方法にも関する。
【0052】
化粧用途の範囲内において、本発明の組成物は、有利には組成物の総重量に対して0.001重量%〜50重量%のオリゴラムノシドを含有する。
【0053】
化粧料用組成物が局所経路により投与することを目的として製剤される場合、前記組成物は、例えば、水溶液、白もしくは有色のクリーム剤、ポマード、乳剤、ローション剤、ゲル剤、軟膏剤、漿液、ペースト剤、泡沫剤、エアゾール剤、シャンプー剤またはスティック剤の形態で与えられる。
【0054】
本発明の他の特徴および利点は、以下に示す実施例での説明により明らかとなる。これらの実施例では、次の図面を参照する。これらの図面および実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、いかなる場合においてもその範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【実施例】
【0055】
実施例1:オリゴラムノシドの直接合成
乾燥剤(CaCl)トラップを備えた冷却器にセットされた100ml二口丸底フラスコに、アルゴン下、25mlのアセトニトリル(モレキュラーシーブ 3Aで乾燥させたもの)を入れる。ラムノース(360mg)を4等分量ずつ温(65℃)アセトニトリルに入れる(その際には完全溶解するのを待って次の分量を加える)。
【0056】
アルゴン下で維持した混合物に酸触媒p−トルエンスルホン酸(PTSA)0.6M溶液(重量比 0.1g/ラムノース1g)0.3mlを加える。その溶液を65℃にて40分間攪拌する(磁気攪拌装置)。
【0057】
反応後、攪拌を止め、その混合物を周囲温度にて30分間冷却する。
生成した沈殿物(P1)を多孔率4の焼結ガラスでの真空濾過により回収し、次いで、それをアセトニトリル、そして無水エーテルで洗浄した後、最小限の水に溶かし、凍結乾燥する。このようにして、126mgの白色粉末(オリゴラムノシドに相当する)を得ている(この場合の収率は35%である)。
【0058】
回収した濾液をロータリーエバポレーターで減圧蒸発させ(15mmHg)、このようにして234mgの固体(P2)(低分子量のラムノース/オリゴラムノシド混合物に相当する)を得る。合成オリゴ糖のサイズ分布および質量は、それぞれ、HPLCおよび質量分析により測定している。
【0059】
オリゴラムノシド(P1)および(P2)は、ガードカラム(60×10.0mm)を装着したPhenomex社製REZEX RSO−オリゴ糖カラム(200×10.0mm)での高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析している。溶離剤は100%HO、流速0.3ml/分、カラム温度80℃である。水中50mg/mlの濃度の注入サンプル10μlを示差屈折計を用いて検出する。これらの条件下、分析は50分間続き、この分析によってラムノース(保持時間47分間)とラムノシル化誘導体(保持時間15〜44分間)を分離することができる。
【0060】
オリゴラムノシド(P1)および(P2)の質量は、重合度1〜5の場合はエレクトロスプレー質量分析、重合度5〜12の場合はLSIMSにより決定する。これらの質量分析は最大重合度が12に等しいことを示す。総ての水酸基が反応したラムノースモチーフを除く、総てのグリコシド結合型が認められた。
【0061】
実施例2:オリゴラムノシドの直接合成
この方法は実施例1のプロトコールに従うが、この場合には、溶液を40℃にて、実施例1に従って40分間の間攪拌する。
実施例1に記載されているプロトコールと同じプロトコールに従って反応させ、処理した後、72mgの沈殿物(P1)を得る(この場合の収率は20%である)。
【0062】
この実施例における固体(P2)の回収重量は288mgである。
HPLCおよび質量分析による解析では、実施例1のプロトコールに従って得られた結果と同じ結果が得られた。
【0063】
実施例3:オリゴラムノシドの直接合成
この方法は実施例1および2のプロトコールに従うが、この場合には、溶液を65℃にて、ただし6時間の間攪拌する。実施例1および2に記載されているプロトコールと同じプロトコールに従って反応させ、処理した後、144mgの黄褐色沈殿物(P1)を得る(この場合の収率は40%である)。
【0064】
この実施例における固体(P2)の回収重量は216mgである。
HPLCおよび質量分析による解析では、実施例1および2のプロトコールに従って得られた結果と同じ結果が得られた。
【0065】
実施例4:オリゴラムノシドの直接合成
この方法は実施例1、2、3のプロトコールに従うが、この場合には、溶液を40℃にて6時間の間攪拌する。実施例1〜3に記載されているプロトコールと同じプロトコールに従って反応させ、処理した後、126mgの沈殿物(P1)を得る(この場合の収率は35%である)。
【0066】
この実施例における固体(P2)の回収重量は234mgである。
HPLCおよび質量分析による解析では、実施例1〜3のプロトコールに従って得られた結果と同じ結果が得られた。
【0067】
実施例5:オリゴラムノシドの直接合成
この方法は実施例1のプロトコールに従うが、この場合には、65℃のアセトニトリルに入れるラムノースの総量は200mgである。
実施例1〜4に記載されているプロトコールと同じプロトコールに従って反応させ、処理した後、30mgの沈殿物(P1)を得る(この場合の収率は15%である)。
【0068】
この実施例における固体(P2)の回収重量は170mgである。
HPLCおよび質量分析による解析では、実施例1〜4のプロトコールに従って得られた結果と同じ結果が得られた。
【0069】
実施例6:オリゴラムノシドの直接合成
この方法は実施例1のプロトコールに従うが、この場合には、触媒PTSAの量を増やし、重量比 0.2g/ラムノース1gである。
実施例1〜5に記載されているプロトコールと同じプロトコールに従って反応させ、処理した後、126mgの沈殿物(P1)を得る(この場合の収率は35%である)。
【0070】
この実施例における固体(P2)の回収重量は234mgである。
HPLCおよび質量分析による解析では、実施例1〜5のプロトコールに従って得られた結果と同じ結果が得られた。
【0071】
実施例7:オリゴラムノシドの直接合成
この方法は実施例1のプロトコールに従うが、アセトニトリルおよびラムノース重量を増やし、時間を延長している。
乾燥剤(CaCl)トラップを備えた冷却器にセットされた100ml二口丸底フラスコに、アルゴン下、80mlの乾燥アセトニトリルを入れる。ラムノース(550mg)を少分量ずつ温(65℃)アセトニトリルに入れる。この場合には、溶液を65℃にて4時間の間攪拌する。
【0072】
実施例1〜6に記載されているプロトコールと同じプロトコールに従って反応させ、処理した後、137.5mgの沈殿物(P1)を得る(この場合の収率は25%である)。
この実施例における固体(P2)の回収重量は412.5mgである。
HPLCおよび質量分析による解析では、実施例1〜6のプロトコールに従って得られた結果と同じ結果が得られた。
【0073】
実施例8:オリゴラムノシドの直接合成
この方法は実施例1のプロトコールに従うが、p−トルエンスルホン酸(PTSA)の代わりにAmberlyst(商標)15dryなどの樹脂酸を用いる。
アルゴン下で維持した混合物にこの触媒(500mg)を加える。
【0074】
実施例1〜7に記載されているプロトコールと同じプロトコールに従って反応させ、処理した後、90mgの沈殿物(P1)を得る(この場合の収率は25%である)。
この実施例における固体(P2)の回収重量は270mgである。
HPLCおよび質量分析による解析では、実施例1〜7のプロトコールに従って得られた結果と同じ結果が得られた。
【0075】
実施例9:オリゴラムノシドの直接合成
抽出カートリッジを備えたソックスレー型固体/液体抽出器に100ml二口丸底フラスコをセットする(抽出器自体は、真空吸気口を備えた冷却器にセットされている)。乾燥塩化カルシウムをCaCl/ラムノース重量比20で抽出カートリッジに充填する(ガラスウールの上に置く)。
【0076】
そのフラスコに、アルゴン下、80mlのアセトニトリル(モレキュラーシーブ 3Aで乾燥させたもの)を入れる。
ラムノース(550mg)を4等分量ずつ温(65℃)アセトニトリルに入れる(その際には完全溶解するのを待って次の分量を加える)。
【0077】
アルゴン下で維持した混合物に酸触媒p−トルエンスルホン酸(PTSA)0.6M溶液(重量比 0.2g/ラムノース1g)1mlを加える。
次いで、アセンブリーを圧力調節器を備えた真空源(フィルターポンプ)と接続して、260mbarとする。一度、この圧力に達したら、その溶液を65℃にて(この温度は選択した圧力におけるアセトニトリルの還流に相当する温度である)攪拌する(磁気攪拌装置)。真空および温度を4時間維持する(この時間は抽出器の充填/吸引数サイクルに相当する)。
【0078】
反応後、真空および攪拌を止め、その混合物を周囲温度にて30分間冷却する。
実施例1〜8に記載されているプロトコールと同じプロトコールに従って反応させ、処理した後、275mgの沈殿物(P1)を得る(この場合の収率は50%である)。
【0079】
この実施例における固体(P2)の回収重量は275mgである。
HPLCおよび質量分析による解析では、実施例1〜8のプロトコールに従って得られた結果と同じ結果が得られた。
【0080】
実施例10:オリゴラムノシドの薬理学的解析
これらの炎症プロセスにおいて作用する種々の免疫細胞を研究した。それらの免疫細胞は皮膚の樹状細胞、内皮細胞、特定の白血球およびケラチノサイトである。
【0081】
1)細胞生存性の測定技術の原理
MTT[臭化3−(4,5−ジメチルジアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム]還元技術(Sigmaより販売)
この技術は、生存している、代謝的に活性な細胞の定量化を非放射性手法により可能にする比色試験である。MTTは、電位依存的にミトコンドリアの膜に結合するカチオン性分子である。ミトコンドリアレベルでは、MTTはミトコンドリアデヒドロゲナーゼによってホルマザンブルーに還元される。従って、死細胞は透明なままであるが、これとは対照的に生細胞は青色に染まる。生存度の測定は、この後、自動読取装置を使用した光学濃度の測定によって実施する。
【0082】
しかしながら、この解析方法は非接着細胞(単球および樹状細胞)よりも接着細胞(ケラチノサイトタイプ)に適しているように思われる。そのため、解析する分化細胞に対するオリゴラムノシドの細胞毒性について判断するために別の研究、すなわち、ヨウ化プロピジウムの存在下でのフローサイトメトリーが構想された。
【0083】
XTTテトラゾリウム塩還元技術
これは細胞増殖および生(代謝的に活性な)細胞数の定量化を放射性同位元素の取込みを行わずに可能にする技術である。XTT(黄色)は、MTTと同じく、電位依存的にミトコンドリアの膜に結合するカチオン性分子である。
【0084】
ミトコンドリアレベルでは、XTTはミトコンドリアテトラゾリウムレダクターゼによってホルマザン(橙色)に還元される。この方法は、MTT法よりもコストは高いが、そのプロトコールでは色素を放出するためのSDSによる細胞の溶解を必要としない。実際、還元生成物は細胞内で溶解している。従って、この方法はより迅速である。死細胞は無色のままであるが、これとは対照的に生細胞は処理を行っていない場合も行った場合も有色となる。ホルマザン生成物のレベルは分光光度計を波長450nmにて使用することによって検出され、そのレベルは代謝的に活性な細胞の数に正比例する。
【0085】
2)毒性試験
ヒト皮膚生検材料からケラチノサイトを単離し、培養下においた。同じ生成物濃度で処理した4ウェルの光学濃度(吸光度)測定値の平均をとった。この平均を4つの対照ウェルで得た測定値の平均と比較した(スチューデントt検定−平均値の比較−有意差 p<0.05の場合95%にて、p<0.01の場合99%)。
【0086】
処理した細胞の生存度を100%の対照(未処理の細胞)に対する割合として表す(OD 処理済/OD 対照×100)。
ラムノースは最高濃度のものでさえ細胞毒性を示していない(表1参照)。
【0087】
【表1】

【0088】
オリゴラムノシドは高濃度、5mg/mlを上回る濃度で毒性を示す(表2参照)。
【0089】
【表2】

【0090】
内皮細胞を培養下におき、不死化し、それらの表現型を安定させた。研究した細胞系は虫垂内皮細胞、脳微小血管内皮細胞、腸間膜リンパ節内皮細胞、末梢リンパ節内皮細胞および皮膚微小血管内皮細胞であった。
【0091】
細胞毒性試験は、テトラゾリウム塩、MTTの変換による生化学的検査を利用して実施した。得られた結果は極めて明確であり、ペンチル−ラムノシドについては毒性が認められていない(図1および2参照)。生存度は、実際には常に85%を超えており、このことは研究した総ての細胞系に当てはまる。
図1:ラムノースの存在下での末梢リンパ節に由来する内皮細胞の生存度。
図2:オリゴラムノシドの存在下での末梢リンパ節に由来する内皮細胞の生存度。
【0092】
インキュベーションの4時間(タンパク質合成の開始に必要な時間である)に対応した刺激ピークが現れることに特に注目してほしい。このピークの存在は、細胞にはオリゴラムノシドに対して耐性があり(毒性がないということ)、それらを同化するということを示していることから、興味深い。これらの生成物は培養培地を富化させるように思われる。
これらの結果は他の内皮細胞系の場合でも同様である。
【0093】
3)前炎症性培地で培養したヒト細胞へのアルキル−ラムノシドの影響
樹状細胞について
3群の細胞を解析した:1)オリゴラムノシドまたは選択した活性化シグナルに曝露しなかったもの(陰性対照として使用する)2)活性化シグナルとともに24時間インキュベートしたもの(陽性対照として使用する)および3)オリゴラムノシドと24時間接触させていたもの。
【0094】
使用する培養培地は、10%FCS、グルタミン(2mM)ならびに抗生物質ペニシリンおよびストレプトマイシン(Bioproducts)を補給したRPMI 1640(Bioproducts)タイプの古典的な培地である。使用するリンス液はPIバッファー(Bioproducts)である。使用する細胞活性化剤はINFγ(SIGMA)である。
それらの結果は以下の表3に示す。
【0095】
【表3】

【0096】
生存度は、PIシグナルの割合を直接変換した死亡率から決定している。表3に示された結果は、細胞生存性(100−死亡率)、すなわち、研究した各ウェル中の生細胞の割合を反映している。
【0097】
アレルギー誘発作用は、樹状細胞の成熟およびCD86 B7.2受容体の発現に反映される。この受容体が多く示されるほど、成熟細胞の割合が高くなり、研究したラムノシル化誘導体のアレルギー誘発作用は強くなっている。
【0098】
オリゴラムノシドは、樹状細胞の細胞死も活性化または促進成熟も引き起こさない。実際に、研究した樹状細胞は、未成熟樹状細胞の特異的受容体を発現し続けるかまたは成熟に関する他の対照膜マーカーの発現の増加を示さない。特に、これらの結果では成熟樹状細胞に特徴的なCD86分子が高密度ではないことから、樹状細胞は試験したオリゴラムノシドを、未成熟DCを活性化または成熟DCへと促進するまたは変換することが可能な活性化シグナルとして見なしていなかった。
【0099】
アクチベーターIL−1β刺激によりケラチノサイトによって放出されるIL−8のアッセイ
IL−8のアッセイにより、オリゴラムノシドを、使用するアクチベーター、IL−1βと同時に添加した際のそれらの抗炎症性を評価することが可能である。このアッセイは処理後に回収した上清において実施する。実際には、アクチベーターIL−1βと接触させて置いた正常なヒトケラチノサイト(NHK)はIL−8を分泌し、細胞上清におけるその濃度は、未処理のNHKの場合の3.2pg/ml/μgタンパク質から活性化したものの場合の約32pg/ml/μgタンパク質まで変化する。
【0100】
サイトカインアッセイを精密化するために、さらなるアッセイ(細胞タンパク質についてのアッセイ)を実施する。このアッセイにより、各ウェルについての、細胞タンパク質1μg当たりのIL−8分泌量を示すことができる(実験の節に記載されているBCA法)。
【0101】
ケラチノサイトをオリゴラムノシドおよびアゴニストIL−1βで24時間処理する。24時間後、細胞上清中に放出されたサイトカインIL−8をELISA(酵素免疫測定法)により定量する。
【0102】
標準クラスの市販のキットにより、450nmで測定した吸光度とそれぞれの細胞上清に存在するIL−8の濃度(pg/ml)を関係付けることが可能である。
試験する種々の濃度を4ウェルの細胞で評価している。従って、各処理条件に対して4つの異なるIL−8濃度値(pg/ml)が得られる。これらの定量化は、ウェル当たりのタンパク質量として報告することができる。
【0103】
第1の試験は、IL−1βとオリゴラムノシドを一緒に24時間インキュベートすることからなる。以下の結果(表4参照)は、これらの4つの値の平均と標準偏差である。
【0104】
【表4】

【0105】
これらの結果は、オリゴラムノシドをアクチベーターと直接接触させて置いたことがその抑制に影響を与えていること(27%,1mg/ml)(表5参照)、そしてオリゴラムノシド濃度が低い場合にはこの効果が検出されないことを示している。
【0106】
第2の試験(NHKに対する8時間の事前処理にオリゴラムノシドを使用し、その後、IL−1βとオリゴラムノシドを一緒に24時間加える)を実施する。
以上のように、2つのアッセイを実施し(IL−8およびタンパク質)、それらの結果を以下の表に要約している(表5参照)。
【0107】
【表5】

【0108】
これらの結果は、NHKをオリゴラムノシドと接触させて置く事前処理が、抑制の増強(28%,1mg/ml)に本当の意味で影響を与えていないことを示しており、より低い濃度でもこの抑制が検出できる。このことから、オリゴラムノシドでの事前処理は上清へのIL−8放出の抑制を有利に進めるものであるという結論を下すことができる。
【0109】
オリゴラムノシドがケラチノサイトの反応部位を占有し、二次反応の抑制(IL−1β部位の遮断)をもたらすと推測できるが、本発明者らは炎症プロセス抑制機構について結論を下すことができない。
【0110】
PMAによるケラチノサイトの刺激後のプロスタグランジン(6−ケトPGF1α)のアッセイ
プロスタグランジンI2(PGI)はアラキドン酸分解経路の不安定な代謝産物であり、プロスタグランジンE2同様、血管拡張作用を有する炎症メディエーターである。PGIの不安定性は、6−ケトプロスタグランジンF1α(6−ケトPGF1α)へのその迅速な変換(非酵素的水和)にある。従って、このプロスタグランジンをPGI合成についてのマーカーとして測定する。
【0111】
【表6】

PMA(ホルボール−12−ミリステート−13−アセテート)はプロテインキナーゼCのアクチベーターであり、IL−1βをはじめとするサイトカインのNHKへの効果に類似し、脂質分子、プロスタグランジン6−ケトPGF1αを放出するように細胞に働きかける非生理的アクチベーターである。このプロスタグランジンはELISAによりアッセイする。2つのアクチベーターIL−1βおよびPMAを使用する。インドメタシン(アスピリン系鎮痛薬)は、遊離アラキドン酸のトリグリセリドへの再取り込みを刺激してエイコサノイドの放出を減少させる抗炎症薬(NSAID)であり、6−ケトPGF1αの放出を抑制するためにこのインドメタシンを使用する。
【0112】
2つの試験を実施した。第1の試験は、NHKをオリゴラムノシドにより4時間事前処理した後、オリゴラムノシドの存在下でその刺激を2時間モニタリングすることからなる。それらの結果は上記表6に要約している。
【0113】
オリゴラムノシドによる事前処理を12時間に延長した第2の試験を実施した。それらの結果は以下の表7に要約している。
【0114】
【表7】

【0115】
これらの試験条件下、刺激を受けたNHKによるメディエーター 6−ケトPGF1αの放出は少ない。しかしながら、細胞を高濃度の(1mg/mlより高い)オリゴラムノシドで処理した場合にはこれがわずかに抑制されるようである。
【0116】
PMA刺激によりNHKによって放出されるPGEのアッセイ
オリゴラムノシドを、細胞上清へのPGE放出の抑制剤として評価した。これらの生成物をNHKと1ng/mlのPMAの同時存在下においた。4ウェルのNHKへの刺激について各試験条件を評価した。
【0117】
以下の表8に要約した結果は、各細胞上清(刺激したものまたは刺激していないもの)から得た処理24時間後の平均PGE濃度値(pg/ml)であり、細胞量(μgで表す)として報告している。
【0118】
【表8】

【0119】
オリゴラムノシドは、どちらかといえば高濃度:2mg/ml〜1mg/mlでPGEの放出を抑制し、平均抑制は50%〜60%である。より低濃度では、その抑制力が低下し、0.1mg/mlで無効となる。
【0120】
ヒト好中球によって放出される分子、LTBおよびPGEのアッセイ
正常ヒト血液から好中球を単離し、独自の方法により精製する。次いで、それらを、2種類の脂質分子(シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ経路より生じるアラキドン酸誘導体、すなわち、ロイコトリエン LTBおよびプロスタグランジン PGE)の放出を引き起こす刺激バッファーにより活性化する。この刺激バッファーは、特にCa2+およびMg2+イオンを含有している。これらのアッセイはELISAタイプの市販のアッセイキットにより実施する。
【0121】
オリゴラムノシドで処理した好中球の細胞生存性をトリパンブルーを使用して評価する。生存性は最高オリゴラムノシド濃度においてさえも申し分ない。
これらの結果は、同じ試験において刺激した細胞の2つの上清をアッセイした値の平均を示している。
脂質分子放出の抑制について得られた結果を以下の表9に要約している。
【0122】
【表9】

【0123】
インドメタシンをPGE放出の特異的抑制薬として、ノルジヒドログアイアレチン酸をLTB放出の特異的抑制薬として使用する。
この表から、オリゴラムノシドによる好中球の処理後に観察されるPGE放出の非常に弱い抑制(11%)があると結論付けることができる。しかしながら、濃度1mg/mlのオリゴラムノシドの存在下ではLTB放出の26%抑制が得られ、確認されている。
【0124】
最後に、濃度1mg/mlのオリゴラムノシドは、2つの独立試験においてNHKによるIL−8放出の27%〜28%抑制を確実に行うが、NHKによる6−ケトPGF1α放出については若干減少している。より高い濃度(1mg/ml〜2mg/ml)のオリゴラムノシドはNHKによるPGE放出を平均して50%〜60%抑制している。2つの独立試験では、これらの同じ分子の濃度1mg/mlのものが好中球によるLTB放出の21%および26%の抑制に影響を与えている。これらの分子はヒト好中球によるPGE放出には影響しない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ラムノースの存在下での末梢リンパ節に由来する内皮細胞の生存度。
【図2】オリゴラムノシドの存在下での末梢リンパ節に由来する内皮細胞の生存度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴラムノシドの調製法であって、次の連続工程:
a)酸触媒の存在下、アセトニトリル中にて、単一反応工程でラムノースを自己縮合させて、その自己縮合により生成したオリゴラムノシドを沈殿させ、次いで
b)工程a)後に得られるオリゴラムノシドを含む沈殿物を濾過により回収する
ことを含んでなる、方法。
【請求項2】
工程a)中の反応混合物の温度が、20℃〜120℃の間、有利には35℃〜75℃の間にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸触媒が、塩酸、硫酸、リン酸、オルト−、メタ−およびパラ−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、置換ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ルイス酸(特に塩化亜鉛および塩化第二鉄)、粘土酸(特にモンモリロナイトK−10)、合成樹脂酸、ゼオライト、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)の自己縮合反応中に生成する水を、物理的にまたは化学的に排除する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水排除技術が、炭酸塩、硫酸塩、塩化カルシウム、五酸化リン、モレキュラーシーブまたはこれらの種々の乾燥剤の組合せからなる群から選択される乾燥剤の使用を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)が、アルゴンまたは窒素のような不活性ガス雰囲気下、大気圧にて実施される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)が、減圧にてオートクレーブ内で実施される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)の前に、反応混合物を縮合反応温度〜0℃の間の範囲の温度まで冷却する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
反応混合物を、周囲温度、有利には20℃まで冷却する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程b)後に回収される沈殿物を、アセトニトリルで洗浄する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)後に得られる濾液に含まれるアセトニトリルを蒸発させて、オリゴラムノシドを含有する第2の沈殿物を回収する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって得られうる、オリゴラムノシドの混合物を含んでなる、組成物であって、
オリゴラムノシドが、2〜12のラムノースモチーフ、有利には2〜9のラムノースモチーフを含む、組成物。
【請求項13】
オリゴラムノシドの重合度の関数としてのオリゴラムノシドの分布が、ポアソン分布にほぼ従う、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ラムノースモチーフにおいてそれらの水酸基の最大3個のものがグリコシド結合の形成に関与する、請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれか一項に記載の組成物を含有する、医薬。
【請求項16】
炎症性機序を調節するための、請求項15に記載の医薬。
【請求項17】
皮膚および/または粘膜のアレルギー、炎症もしくは免疫反応または病変を予防または処置するための、請求項15または16に記載の医薬。
【請求項18】
炎症ストレスに関連する免疫応答を抑制するための、請求項15〜17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項19】
白血球の活性化、ケラチノサイトからのサイトカインの分泌、ケラチノサイト過形成現象、皮膚の樹状細胞による抗原プロセシング、抗原提示細胞の成熟およびリンパ球と抗原提示細胞間の認識現象を抑制するための、請求項15〜18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項20】
アトピー性および/または接触湿疹、炎症性皮膚疾患、刺激性皮膚炎、座瘡、自己免疫疾患、例えば、乾癬、光免疫抑制、白斑、粃糠疹、強皮症、慢性関節リウマチ、クローン病および移植片拒絶からなる群から選択される疾病を予防または処置するための、請求項15〜19のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項21】
加齢に伴う慢性的な炎症問題およびそれらの影響を予防および処置するための、請求項15〜20のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項22】
アナフィラキシー過敏症、皮膚の色素異常症、皮膚の血管過剰増生および炎症性亀裂からなる群から選択される疾病を予防または処置するための、請求項21に記載の医薬。
【請求項23】
組成物または香料のアレルゲン性および/または刺激性を低減するための、請求項15〜22のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項24】
0.001重量%〜50重量%のオリゴラムノシドを含有する、請求項15〜23のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項25】
敏感であるか、炎症を起こしているか、耐性がないか、アレルギー体質であるか、老化しているか、危険な徴候を示しているか、皮膚バリア障害を示しているか、皮膚の発赤を示しているかまたは内因性老化、外因性老化もしくはホルモン老化に関連する非病理学的免疫学的不均衡を示している、皮膚および/または粘膜の化粧処置方法であって、
皮膚および/または粘膜に、請求項12〜14のいずれか一項に記載の組成物を適用することからなる、方法。
【請求項26】
皮膚の自然老化を遅延させおよび/または外的攻撃を受けた皮膚の促進老化を予防するための、特に皮膚の光老化を予防するための化粧処置方法であって、
皮膚に、請求項12〜14のいずれか一項に記載の組成物を適用することからなる、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−509912(P2007−509912A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537366(P2006−537366)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002793
【国際公開番号】WO2005/042553
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500166231)ピエール、ファブレ、デルモ‐コスメティーク (30)
【氏名又は名称原語表記】PIERRE FABRE DERMO−COSMETIQUE
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】