説明

オリーブオイルを直接組み込まれた、全筋肉組織からの肉製品の製造方法

オリーブオイルを直接組み込まれ、動物性脂肪が最大限に置換された、全筋肉組織からの肉製品の製造方法であって、この方法は塩可溶性肉蛋白質を抽出した後オリーブオイルを添加することによって達成される。この方法は、(a)適切なブラインを注入した肉をタンブリング装置内でタンブリングし、(b)オリーブオイルを加え、(c)オリーブオイルが完全に組み込まれるまでタンブリングを続け、(d)製品の容器詰め、熱処理、包装を行う工程を含む。この方法により製造されるオリーブオイルを組み込まれた肉ベースの製品は構造の観点(コンシステンシー)から優れた安定性を与え、これら製品に含まれるオリーブオイルの物理的及び化学的特性は変化せずに維持される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、
1.オリーブオイルを使用すること、
2.オリーブオイルの最大限可能な吸収を達成するために、加工工程の間に公知の技術工程及び肉の公知の性質を使用すること、
3.下記:
・筋肉蛋白質/水/オリーブオイルからなるエマルジョンの基本系においてオリーブオイルの組み込み及びその安定なブレンド並びにその後の蛋白質の凝固を目的として適切な熱処理に供されることができる安定な組成及び構造の安定なエマルジョン−肉ペーストを達成すること、
・差別化要因(オリーブオイル)の感覚受容性の、物理的及び化学的並びに栄養学的な特性及び性質を最大限可能に維持することを達成すること、
を目的として開発された適切な技術的工程及び処理を実行すること、
を主な特徴とする全筋肉組織からの肉製品の製造に関する。
【0002】
全肉組織からの製品(ハム、ターキーヒレ肉など)は、良好なコンシステンシー、柔軟性、及びそれらが薄くスライスされることができるという事実によって差別化される多くの種類(items)の肉からの緻密な塊から構成される。その製品を製造するために、ある量のブライン(水、塩、調味料、ニトレートなど)をその肉の筋肉組織に注入し、続いて収縮性のある筋肉蛋白質を活性化することを目的として機械的にタンブリングし、肉の種類の表面上にそれが出るようにこれの膨張及び抽出を行う。こうして、肉の柔軟化と共に熱又は熱処理後のそれらの間の結合が起きる。
【0003】
これら製品の安定性は基本的には機械的タンブリングの間の肉の抽出された蛋白質に依存する。それは、それに加えられたブラインの量を保持し、肉の表面上に接着性物質を形成し、肉片の結合能力をかなり増加させる。脂肪を混合することは、肉片の周りに脂肪層が存在していることに起因して、様々な塩(例えば、ニトライト類)の注入及び蛋白質の抽出をかなり妨害し、これによってそれらが結合するのを妨害する。
【0004】
製品にオリーブオイルを組み込むことは、慣用の技術においてこれが試みられて以来、通常、オイル分離現象を引き起こす未加工肉塊及び熱処理された最終製品の両者に関して、安定性がないという問題又は安定性が低下する傾向を連想させる。
【0005】
植物油を間接的に組み込む保証された技術が既に知られている。しかし、これら技術は、例えば、以下のようなものである。
・安定なエマルジョンを生成するために水及びミルクプロテインを混合して少なくとも100℃の温度レベルで油を予備加熱処理することを含む。このエマルジョンは、製品に応じた小さな立方体中に形成され、肉ベースの製品に加えられ、こうして動物性脂肪が完全に置換される。
【0006】
安定なエマルジョンを生成するためにミルクプロテインを使用して油の液体状態から固体状態への転換を目的とする以前の方法は、肉ベースの製品、例えば、
・全筋肉(例えば、ハム、チキンヒレ肉、ターキーヒレ肉など)からの調理した又は乾燥硬化した肉製品、
・補助ミルクプロテインの使用が許されない高品質製品(例えば、ハムクイットスペリオール(ham cuit superieur)、ルラードスペリオール(roulade superieur)、など)
を製造するためには制限的要因であった。オリーブオイル(人体の栄養におけるその役割はシードオイルと他の植物油との間で明瞭であり、その個々の天然化合物の有利な特性は国際的に認められている(低コレステロールにおける脂肪酸及びその保護的役割、トコフェロール及びポリフェノール並びにそれらの役割を参照のこと。)。)を使用して初期の構造及び脂肪酸組成が保護されるために温和な加工処理が採用されなければならない。
【0007】
オリーブオイルを直接組み込んだ肉ベースの製品を製造する上記の方法並びにより最近の方法は、肉の細かい切り身からの調理品に制限されている。製造工程の間に施される技術と肉塊の挙動は肉製品のその他の群(ソーセージなど)とは異なる。結局、肉の蛋白質の抽出及び蛋白質格子の形成は製品の製造工程を変更する間に差別化される。未だに以前の方法では添加剤及びプロセス助材(フォスフェート、ミルクプロテイン、ベジタブルプロテインなど)を使用している。その使用は肉の蛋白質を補助するか又は置換することが目的である。更に、上記の補助成分はより高い水分保持性及び肉の乳化能力を目的とする。プロセス助材の使用の制限があり、報告されている補助材の使用が禁止されているような高品質(例えば、スペリオール)の肉製品の製造に使用できない。
【0008】
一方では、肉製品中の動物性脂肪を置き換える成分としてオリーブオイルを特別な保護条件下で使用して、その特性を最大限可能にホスト製品に転換することを保証することが適切であると考えられる。
【0009】
他方では、蛋白質、脂肪及び油の挙動及びそれらの結合性に基づく科学的データを系統的に考慮して、オリーブオイルの組み込みプロセスが肉製品の従来の製造技術に悪影響を与えないようにすることが適切であると考えられる。
【0010】
「肉エマルジョン」の安定性が、
・製品に組み込まれるオイルの源及び組成
・固体蛋白質格子の生成のための肉の蛋白質の抽出レベル
・例えば、
−脂肪酸プロファイル(種類及び飽和度)
−SFI(固体脂肪インデックス)
−様々な製造段階において与えられる温度でのPUFA(ポリ不飽和脂肪酸)、MUFA(モノ不飽和脂肪酸)/SFA(飽和脂肪酸)比
等の物理的及び化学的性質
によって有意に影響されることを考慮すべきである。
【0011】
技術的な視点から、豚脂肪とオリーブオイルとの違いは安定な肉ぺーストの調製において厳密に考慮されなければならないことが明らかである。
オリーブオイルの場合、その特性(敏感な化学的性質)は、以下に推奨される具体的な条件下で組み込まれることが必要である。
【0012】
−機械的なプロセスによってオイルの最大限可能な組み込みを行うこと(関連化合物の混合、タンブリング、均質化)。
−エマルジョンにおけるオイルの最大限可能な吸収及び安定化、同時に、添加された水分(脂肪/蛋白質/水分比)の最大限可能な吸収を保証するために、これら化合物の間の理想的な量比を計算すること。
【0013】
−混合工程の間に、ある均質度下で、選択された減圧及び温度条件下で、機械的プロセス(エネルギー)を施し、高温を避けて、抽出された肉蛋白質と添加されたオイルの脂肪相との間に確立された安定なエマルジョンを調製して、脂肪球の最大限可能な分散と寸法を得ること。
【0014】
最後に、以下の重要な条件が確保される。
・熱処理段階及びその後の製品の冷却段階でのエマルジョンの安定性。
・減圧条件下でのスライス及び包装処理における製品の挙動。
【0015】
・冷蔵下での貯蔵安定性。
本発明の目的は、オリーブオイルを低温で組み込むことを特徴とする全筋肉組織から肉ベースの製品を製造することである。このオリーブオイルの直接混合は、一方で、製品の従来の形式を変えず、他方では、ミルクプロテイン又は他のプロセス助材を使用せずに高品質の製品を製造することを可能にする。
【0016】
この目的は、以下により達成される。
−肉の蛋白質を抽出後に行うことが必要なオリーブオイルの混合(混合−タンブリング−乳化)。この特定の時点で肉の蛋白質、特に塩可溶性蛋白質ミオシン及びアクチンが抽出される。肉片の表面に抽出された蛋白質はオリーブオイルと安定なエマルジョンを形成することができる。
【0017】
−肉ペーストの結合能力を高めるために、関数として添加オリーブオイルの百分率を、抽出された肉蛋白質及び実際に使用された補助成分の百分率に応じて計算すること。従って、添加オリーブオイルの百分率は、抽出蛋白質の量又は利用可能な補助蛋白質の量に依存する。補助材料の混合無しで、全筋肉組織からの豚肉製品の典型的な例のための肉/オイル比(百分率)は、ほぼ95/5である。
【0018】
−酸素の存在を無くし、肉塊中に空気泡が生成することを防ぐために、製造の間に減圧条件を施すこと。これにより、オリーブオイルの酸化及びその劣化が防止され、肉塊の良好な結合が達成される。
【0019】
−オリーブオイルを低温で混合すること。オイルの混合時の肉塊の温度は、低レベル、特に4℃以下であることが必要である。この温度では、オリーブオイルのSFI(固体フラクション)が飽和動物性脂肪のそれに比較的近い。
【0020】
−全製造工程の間低温が維持されることによって特徴付けられる特別の技術的処理を施すこと。理想的な温度は4℃である。
上述した説明に従い、本発明は、全筋肉組織からの肉製品の製造方法を提供する。上述したクリティカルな点に従って、添加剤(フォスフェート、ミルクプロテインなど)を使用して若しくは使用しないで、オリーブオイルを直接組み込んで、スモークされた、調理された、又はローストされた、肉製品が製造される。
【0021】
全筋肉組織からの肉製品の標準的な製造方法は以下のとおりである。
適切なブライン(水、塩、調味料など)を4℃で注入した全筋肉組織からなる肉をタンブリング装置に入れる。タンブリングの操作は、冷蔵下、減圧(900mbar)を施して、ハムの公知の製造方法に従って行われる。タンブリングの間、数種類の肉片は、タンブリング装置の適切なブレードによって圧縮され、膨張される。この機械的歪みが筋肉組織を緩和させ、筋肉繊維の細胞膜を破壊する。その結果、ブラインの成分の良好な吸収及び続く添加オイルの良好な吸収が達成される。タンブリングの終了時であって肉蛋白質の抽出後にオリーブオイルを加える。冷蔵減圧条件下、オリーブオイルが完全に組み込まれるまでタンブリングを続ける。続いて、熱処理の前に混合物の温度が4℃を超えないように特に注意しながら、公知の技術法(容器詰め、熱処理など)に従って製造工程を続ける。
【0022】
本発明により製造されるオリーブオイルを有する肉製品は、オリーブオイル/水のエマルジョンの生成及び抽出肉蛋白質に起因して、構造の観点(コンシステンシー)から優れた安定性を与える。オリーブオイルの物理的及び化学的特性は、製造工程の間低温及び減圧が施されているので悪影響を受けることがない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブオイルを低温で組み込むことを特徴とする全筋肉組織から肉ベースの製品を製造する方法であって、この方法はその肉の蛋白質を抽出した後オリーブオイルを添加することを特徴とし、
(a)適切なブライン(水、塩、調味料など)を低温で注入した全筋肉組織を装置に入れ、減圧条件下、4℃の内部温度に肉塊を維持しながら、公知の技術に従ってタンブリングに供し、
(b)タンブリングの終了時にオリーブオイルを加え、
(c)オリーブオイルが完全に組み込まれるまでタンブリングを続け、
(d)熱処理の前に混合物の温度が4℃に上昇しないように特に注意しながら、公知の技術(容器に詰め、熱処理し、包装する)に従って製造工程を続ける、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法によって製造された、オリーブオイルを直接組み込まれた、全筋肉組織からの肉製品。

【公表番号】特表2007−530070(P2007−530070A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505642(P2007−505642)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【国際出願番号】PCT/GR2005/000009
【国際公開番号】WO2005/094617
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(503297213)“クレタ・ファーム・アノニモス・ヴィオミチャニキ・アンド・エンポリキ・エタイレイア” (6)
【Fターム(参考)】