説明

オルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜、および該塗膜で被覆された船舶、水中構造物

【課題】汚染防除性に優れたオルガノポリシロキサン系フィニッシュコート、および、その下面に塗装されるタイコートからなる複合塗膜であって、層間剥離強度に優れ、かつ何れの塗膜(層)にも防汚剤を含有せず環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜を提供すること。
【解決手段】タイコート(B)、およびオルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)が、基材側から表面に向かってこの順序(基材/(B)/(C))で積層して形成されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜であって、
上記タイコート(B)が、
(b1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン、および/または、
(b2)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、体質顔料とを、加熱下または非加熱下に、接触処理して形成された硬化性組成物
を含んでなる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物より形成される塗膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサン系防汚塗膜用タイコート、複合塗膜、および該塗膜で被覆された船舶、水中構造物に関する。
さらに詳しくは、本発明は、防汚剤を実質上含有せず環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚塗膜を基材や下塗塗膜等(これらをまとめて基材等ともいう。)の表面に形成するに先立って、基材等の表面に予め形成されるタイコート(結合塗膜、プライマーコート)であって、タイコートの下面に位置する基材等との付着性および、タイコートの上面に位置するオルガノポリシロキサン系防汚塗膜との付着性に優れているようなタイコート、並びに基材表面に2層以上の塗膜(層)から構成され、表面に位置する最外層が上記オルガノポリシロキサン系防汚塗膜からなる環境への負荷の低減された複合塗膜に関する。
【0002】
また、本発明は、修繕塗装または塗り直し塗装として、古い防汚塗膜(旧防汚塗膜)の上に塗装することにより形成される新旧複合塗膜であり、該複合塗膜は厚膜化可能であり、古い塗膜とその表面に形成された新防汚塗膜との付着性に優れ、かつ防汚性に優れたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜、該塗膜で被覆された船舶、水中構造物に関する。
【背景技術】
【0003】
船底、水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされるため、その表面に、カキ、イガイ、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の植物類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖することが多く、そのため、外観が損ねられ、船底、水中構造物等の有する機能が害されることが多い。
【0004】
とくに船底にこのような水棲生物が付着または繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招くことがある。また、バクテリア類、スライム(ヘドロ状物)あるいは大型の付着生物などが水中構造物に付着すると腐敗を生じたり、腐食防止用の塗膜などを損傷するため、その水中構造物の強度や機能が低下し寿命が著しく低下する等の被害が生ずるおそれがある。したがって、このような水棲生物を船底から取り除く必要がある。しかし、その作業には、多大な労力、作業時間が必要とされる。
【0005】
そこで、こうした被害を防止すべく、船底、水中構造物などには各種防汚塗料が塗装される。なかでも、重合性不飽和カルボン酸シリルエステル成分単位含有共重合体を含む防汚塗料にて形成された塗膜は、長期にわたり防汚性能に優れるため有用であり、頻繁に使用される。
【0006】
例えば、本願出願人がこれまでに提案した防汚塗料としては、加水分解型のシリルエステル共重合体系防汚塗料、加水分解型の架橋型金属塩共重合体系防汚塗料などが挙げられる。
【0007】
加水分解型のシリルエステル共重合体系防汚塗料は、防汚剤を実質上含有しておらず、該防汚塗料を基材表面に塗布し硬化させると、上記以外の従来の防汚塗料からなる塗膜に比して、塗膜の表面自由エネルギー(表面張力)が小さく、環境負荷が少ない防汚塗膜を形成でき、防汚性能を発揮させることができるという効果を有するが、該防汚塗膜には、基材や下塗塗膜等との付着性の点でさらなる改良の余地があった。
【0008】
ところで、防汚塗料は、長期にわたって使用していると、しだいに、消耗、破損したり、塗装が古くなり、剥がれ落ちたり等するため、防汚性能を維持するためには、定期的に塗装の修繕または塗り直しをする必要がある。
【0009】
このような修繕塗装または塗り直し塗装に先立って、予め基材表面の古くなった塗膜を取り除く作業をすると、余分な手間や費用がかかるため、経済性、作業効率などの面から、古い塗膜の上に、直接新たな塗料を修繕塗装することが望まれる。このような古くなった塗膜表面に、新たに塗料を重ねて塗る場合、新たに使用する塗料と古い塗膜との付着性が問題となる。また、近年では環境負荷への一層の配慮・低減が叫ばれている。特に、修繕すべき古くなった塗膜が、上記重合性不飽和カルボン酸シリルエステル系の防汚塗膜では、スポンジ状のスケルトン層を形成している場合もあり、この塗膜上に新たに環境負荷のより低減可能なオルガノポリシロキサン系防汚塗料を塗装しようとしても、このような防汚塗料からなる塗膜は、表面エネルギーが小さいため、直接塗布しても十分な付着性能などが発揮できないなどの問題があった。
【0010】
そこで、本発明者らは、上記したような種々の問題を解決するために、鋭意研究を行った結果、
基材や下塗り塗膜の表面に、最外層となるオルガノシロキサン系防汚塗膜を形成するに先立って、予めタイコートとして、(b1)特定のオルガノポリシロキサン及び/又は(b2)このオルガノポリシロキサンと特定の体質顔料とを特定の処理をしてなる硬化性組成物を含んでなる湿気硬化型の組成物からなる塗膜を設けておくと、基材や下塗塗膜との接着性に優れ、タイコート表面に設けられる最外層のオルガノポリシロキサン系防汚塗膜との接着性(密着性)にも優れることなどを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
また、修繕塗装については、修繕塗装すべき基材あるいは塗膜付き基材の表面に、特定のシーラーと特定のタイコートとを順次塗設しておいて、その表面に最外層となる特定のオルガノポリシロキサン系フィニッシュコートを積層してなる複合塗膜が、古くなった上記重合性不飽和カルボン酸シリルエステル系の防汚塗膜(旧防汚塗膜)との付着性に優れるだけでなく、さらには、(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体を含む防汚塗料からなる旧防汚塗膜、あるいはオルガノポリシロキサン系防汚塗料からなる旧防汚塗膜との付着性にも著しく優れるとともに、しかも厚膜化可能であり、かつ防汚性にも優れることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
なお、これまでに提案されているシリコーンゴム系または樹脂系防汚塗膜(層)を有する複合塗膜あるいはその形成方法としては、下記のようなものが挙げられる。
(1) 米国特許第6013754号明細書(特許文献1)には、基材に対して適用(塗布)される塗料組成物であって、室温で硬化可能なシリコーンゴム系汚染防除型塗料(fouling-release coating)の基材への付着を促進するプライマー塗料組成物、および基材が汚染環境に晒される前に、基材に対して適用される室温硬化可能(RTV)なシリコーンゴム系汚染防除型塗料の基材への付着を促進するために、下記の方法により基材をプライマー処理する方法が開示されている。
【0013】
すなわち、該方法では、基材が汚染環境に晒される前に、
特定のポリヒドロオルガノポリシロキサン、ポリジオルガノポリシロキサンから選択される室温硬化可能なポリシロキサン;
シラノール、シラン、有機酸、アルコール、有機金属触媒の不存在下に室温で縮合反応促進可能なヒドロキシ末端のシロキサンから選択される、縮合反応可能な基を有する化合物;
アミノシラン、塩素化ポリオレフィン、機能性シラン、顔料、鉱物充填材、チクソトロピック剤、安定剤、界面活性剤、抗酸化剤、可塑剤および乾燥剤の群から選択される添加物;
を必須成分とする塗料組成物を該基材に塗布する工程と、
上記組成物を、基材上で硬化可能ならしめる工程と、
からなるプライマー処理を行うことが開示されている。
【0014】
また、該特許明細書では、不活性雰囲気下でポリジメチルシロキサンをオキシイミノシランと混合し、一まとめの配合物(パッケージ)を形成する工程;
触媒の非存在下に大気中でこの配合物を基材に塗布する工程;
および、その配合物を硬化させる工程;
からなるプライマー処理を行うことが開示されている。
【0015】
しかしながら、船体や海洋構造物の海水接触面に、該公報に記載のプライマー処理を行った後、室温で硬化可能なシリコーンゴム系汚染防除型塗料からなる防汚塗膜を形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0016】
(2) 国際公開98/39391号パンフレット(特許文献2)には、
汚染環境下に晒す前に、下記組成物を基材に適用(塗布)することにより、汚染環境下での基材の汚染防止方法が開示されている。
【0017】
すなわち、
(A)側鎖および/または末端硬化可能な官能基を有するポリマーが、少なくともポリマー(A)の繰返し単位の主割合がシロキサンユニット以外の繰返し単位を有するものであり、
(B)1種またはそれ以上のポリシロキサンが、硬化可能なオルガノ水素ポリシロキサンとポリジオルガノシロキサンのうちから選択される、側鎖および/または末端硬化可能な官能基を有し、成分(B)における該硬化可能な官能基が、成分(A)中で硬化可能な官能基の存在下に硬化反応を行うことができるものであり、そして、
適用(塗布)された、成分(A)と(B)、および必要により併用される架橋剤とからなる組成物を適用することにより、硬化させる工程;
その後で、(C)硬化可能なオルガノ水素ポリシロキサンまたはポリジオルガノシロキサンと、塗布された層を必要により架橋剤と共同して硬化させる架橋剤とからなる層を適用する工程;
からなる、汚染環境下における、基材の汚染防止方法が開示されている。
【0018】
しかしながら、このような方法で、船体や海洋構造物の海水接触面に、該公報に記載の組成物からなる防汚塗膜を形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0019】
(3)特表平7−506599号公報(特許文献3)には、
(A) (A)のポリマー中における反復単位の少なくとも主割合がシロキサン単位以外のものであり、側鎖および/または末端硬化性官能基を含有する該ポリマー、および
(B)硬化性オルガノ水素ポリシロキサンまたはポリジオルガノシロキサン
を含有し、成分(A)中における硬化性官能基が成分(B)と硬化反応を行うことができるものであることを特徴とする保護塗膜の生成用に好適な組成物が開示され、油田掘削装置の汚染防止用に好適である旨記載されている。
【0020】
しかしながら、船体や油田掘削装置などの海洋構造物の海水接触面に、該公報に記載の保護塗膜を形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
(4)米国特許第5192603号明細書(特許文献4)には、
エラストマー性下塗塗膜(層)と、室温硬化性シリコーンゴム製の表面塗膜(層)(トップコート)とで基材を保護することにより、水中生物汚染から堅固な基板を保護する方法が開示されている。
【0021】
しかしながら、船体や海洋構造物の海水接触面に、該公報に記載のエラストマー性下塗層を形成し、次いで、室温硬化性シリコーンゴム製のトップコートを形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0022】
(5)特表平5−507955号公報(特許文献5)には、
オルガノポリシロキサン組成物を含んでなる、水中生物による汚染に対して耐性を有する塗料組成物であって、該塗料組成物は、ポリジオルガノシロキサン(A)と架橋剤(B)などとを混合してなり、水分中でエラストマーへと硬化し、また、上記ポリジオルガノシロキサン(A)は、特定の粘度を有し、特定の式で表されるジオルガノシロキサン単位を再硬化させることにより形成され、該化合物(A)には、珪素に結合している加水分解性基および/または水酸基が末端付加しており、また、上記架橋剤(B)は、珪素に結合している加水分解性基を有しており、
かつ、該塗料組成物は水中表層(例:船体、発電所の冷却水入出口等の表面)に塗布する前に混合される2種の別包装品中に包装されており、第1の包装品は、ポリジオルガノシロキサン(A)と架橋剤(B)とを含んでなり、
第2の包装品は、特定の粘度を有し、特定の式で表されるジオルガノシロキサン単位を再硬化させることにより形成されるα、ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンを含んでなり、架橋剤を含まず、珪素に結合している加水分解性基と水酸基との架橋用の触媒を含まない塗料組成物が開示されている。
【0023】
しかしながら、該公報に記載の塗料組成物を用いて、船体や海洋構造物の海水接触面に、上記組成物からなる塗膜を形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0024】
(6)特表平5−505845号公報(特許文献6)には、
室温加硫性シリコーンゴムコーティングの接着を促進するために基材へ塗布されるプライマー組成物であって、
(A)アミノシラン材料と、(B)塩素化ポリオレフィンと、(C)室温硬化性ポリジオルガノシロキサンを含み、
上記アミノシラン材料(A)が、(i)1級アミン官能性シラン(式[I]:(RO)X(3-X)SiR1NHR2 )、この1級アミン官能性シラン(i)と、エポキシ官能性シラン([II]:A−Si(B)a(OB)(3-a))との反応物(ii)または、1級アミン官能性シラン([I])とα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン([III]:HO(Si(CH32O)yH)との反応生成物(iii)であるプライマー組成物が開示されている(符号の定義:省略)。
【0025】
また、室温硬化性ポリジオルガノシロキサン(C)が、ケトイミノキシシラン硬化剤と併用される態様も記載されている。
しかしながら、該公報に記載の水中表面汚染の抑制方法を用いて、船体や海洋構造物の海水接触面に、必要により、タイコートで前処理した後、上記被覆組成物からなる塗膜を形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0026】
(7)特開平1−249707号公報(特許文献7)には、
水中表面汚染の抑制方法であって、
(A)硬化性ポリオルガノシロキサン、
(B)シリコーンエラストマーに前記成分(A)を硬化し得る硬化剤、
(C)ポリイソシアネート、
(b4)成分(C)と反応してポリウレタン、ポリ尿素または、ポリ(ウレタン−尿素)を形成し得る、1を超える活性水素基を有する化合物(D.1)または(D.1)に加水分解し得る化合物(D.2)の何れか、を含んでなる被覆組成物を前記表面に適用する方法が開示され、汚染に対して改良され抵抗性を示す旨記載されている。
【0027】
また該公報には、上記被覆組成物の適用に先立ち、シリコーンゴムに良好な粘着性を有するタイコートで前処理でき、アミノシラン(商標「Intersleek Tie-coat」)のような粘着促進剤を含有するシリコーン樹脂を主材とするものが挙げられている。また、タイコートは、白色または着色顔料を用いて着色できる旨記載されている。また、上記被覆組成物には、シリカ、特に疎水性熱分解性シリカのような強化顔料を含むことができる旨記載されている。
【0028】
しかしながら、該公報に記載の水中表面汚染の抑制方法を用いて、船体や海洋構造物の海水接触面に、必要により、タイコートで前処理した後、上記被覆組成物からなる塗膜を形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0029】
(8)特開平1−222908号公報(特許文献8)には、
型に硬化性樹脂層を供給する工程およびその型内で前記樹脂を硬化させる工程を含んでなる船殻またはその一部の建造方法であって、殺生物性でない抗汚染性材層が船殻の最外層を形成するように殺生物性でない抗汚染性材層を型に供給する方法が開示されている。
【0030】
また、上記抗汚染性材として、ヒドロキシル末端基を有する室温加硫化シリコーンゴム、アシロキシ基、アルコキシ基末端基を有する硬化性有機ポリシロキサンなどの有機ポリシロキサンが挙げられ、無反応性流体ポリ有機シロキサンなどを含んでもよい旨記載されている。また、これらシリコーンゴムには、シリカ充填剤を含有する市販品よりも、透明で充填剤を含まないシリコーンゴム組成物の方が、抗汚染性の点で好ましい旨記載されている。
【0031】
さらに、室温加硫化シリコーンゴム層に直接隣接する樹脂層として、シリコーン樹脂、アミノシラン粘着促進剤を含んでなるタイコートが挙げられている。
しかしながら、該公報に記載の船殻等の建造方法を用いて、船体や海洋構造物の海水接触面に、上記抗汚染性材からなる塗膜を形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0032】
(9)特許第2533887号公報(特許文献9、対応:特開昭63−69870号公報)には、1分子当たり2個より多くの環状カルボン酸無水物基を官能基として含む無水物重合体(A)と、上記重合体(A)中の無水物基と反応性の、1分子当たり少なくとも2個の官能基を含む重合体(B)とを含んでなる被覆組成物であって、重合体(B)がシリコーンなどの柔軟性重合体鎖(i)と、その重合体鎖(i)の末端基としてヒドロキシルアルキルアミノ基あるいはヒドロキシ−置換アシロキシアルキルアミノ基を含む被覆組成物が開示され、
上記被覆組成物を基材に適用(塗布)し室温付近の温度で硬化させると、強靭な不粘着性フィルムを形成可能である旨記載されている。
【0033】
しかしながら、該公報に記載の被覆組成物からなるフィルム(層)を、船体や海洋構造物の海水接触面に形成しても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。(10)特表昭55−500623号公報(特許文献10)には、
海洋構造物の水中表面に、その最も外側の表面がシリコーンゴムの層である被覆されたたわみ性シート材料を、ニトリルゴムやエポキシ接着剤などで固定させて、海洋構造物の汚損を防止する方法が開示されている。また、シリコーンゴム層の下側に内部層として天然ゴムなど、シリコーンゴム以外の層を形成する態様や、シリコーンゴム層にメチルフェニルシリコーン油等を配合する態様も記載されている。
【0034】
しかしながら、該公報に記載のシート材料を、船体や海洋構造物の海水接触面に設け、あるいはその下面に内部層をさらに設けても、シート材料と接着剤との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0035】
(11)特公昭56−26272号公報(特許文献11)には、
ヒドロキシル両末端基を有するオリゴマー状シリコーンゴムを、特定の分子量と粘度のシリコーン油の存在下に低温硬化させて得られるシリコーンゴム−シリコーン油の混合物のフィルムで以って、海水接触面を被覆することを特徴とする、海水接触面が海水に晒されている間に該面上に海洋生物が蓄積することを防止、減少させる方法が開示されている。また、上記フィルムは、毒性化合物、例えば、毒性有機金属化合物を含む付着防止組成物からなる塗装の上に設けられていてもよい旨記載されている。また該フィルム用混合物に、エアロジルなどが配合された態様も記載されている。
【0036】
しかしながら、該公報に記載のフィルムを船体の海水接触面に設けられ、あるいはその下面に付着防止組成物からなる層がさらに設けられていても、基材との層間接着性が不十分であるという問題点がある。
【0037】
このように、船体や海洋構造物の海水接触面に、必要により、上記(1)〜(11)等に記載のプライマー処理を行った後、シリコーンゴム系汚染防除型塗料等からなる防汚塗膜を形成しても、基材との層間接着性が不十分であるなどという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】米国特許第6013754号明細書
【特許文献2】国際公開98/39391号パンフレット
【特許文献3】特表平7−506599号公報
【特許文献4】米国特許第5192603号明細書
【特許文献5】特表平5−507955号公報
【特許文献6】特表平5−505845号公報
【特許文献7】特開平1−249707号公報
【特許文献8】特開平1−222908号公報
【特許文献9】特許第2533887号公報(対応:特開昭63−69870号公報)
【特許文献10】特表昭55−500623号公報
【特許文献11】特公昭56−26272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、基材や下塗層と、最外層となるオルガノポリシロキサン系防汚塗膜とを強固に結合できるタイコートを提供することを目的としている。
また本発明は、上記特性に加えて、特に、(イ)タレ止め性に優れしかも厚膜化を図る上で好適である(膜厚性に優れる)か、(ロ)塗布作業性と膜厚均一性に優れたタイコートを提供することを目的としている。
【0040】
また本発明は、汚染防除性(fouling-release)に優れたオルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(finish coat)、および、その下面に塗装されるタイコート(tie coat、プライマーコート)からなる複合塗膜であって、層間剥離強度に優れ、かつ何れの塗膜(層)にも防汚剤を含有せず環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜を提供することを目的としている。
【0041】
また、本発明は、修繕塗装または塗り直し塗装として、古い防汚塗膜(旧防汚塗膜)の上に塗装することにより形成される新旧複合塗膜であり、該複合塗膜は厚膜化可能であり、古い塗膜とその表面に形成された新防汚塗膜との付着性に優れ、かつ防汚性に優れたオルガノシロキサン系防汚複合塗膜、その塗膜で被覆された船体、水中構造物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明に係るオルガノポリシロキサン系防汚塗膜用タイコートは、
オルガノポリシロキサン系防汚塗膜を形成するに先立って基材あるいは下塗塗膜の表面に形成されるタイコートであって、
該タイコートが、
(b1)「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン」および/または、
(b2)「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、
シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれた体質顔料とを、加熱下または非加熱下に、接触処理して形成された硬化性組成物」、
を含んでなる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物により形成されていることを特徴としている。
【0043】
上記シリカとしては、疎水性シリカおよび/または親水性シリカが好ましい。
本発明に係る第1のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(第1の複合塗膜)は、タイコート(B)、
およびフィニッシュコート(C)が、基材側から表面に向かってこの順序[基材/タイコート(B)/フィニッシュコート(C)]で、密着した状態で積層して形成されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜であって、
上記タイコート(B)が、
(b1)「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン」、および/または、
(b2)「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、
シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれた体質顔料とを、加熱下または非加熱下に、接触処理して形成された硬化性組成物」
を含んでなる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物より形成される塗膜(層)であり、かつ
上記フィニッシュコート(C)が、
(c1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む主剤、(c2)テトラアルコキシシリケートまたはその縮合物を含む硬化剤成分、および(c3)金属化合物を含む硬化促進剤成分から形成される3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物からなる塗膜(層)である、
ことを特徴としている。
【0044】
本発明に係る第2のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(第2の複合塗膜)は、
(A)エポキシ系防食塗膜、(B)タイコート、および(C)オルガノポリシロキサン系フィニッシュコートが、基材側から表面に向かってこの順序で密着した状態で積層して形成されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜[基材/(A)/(B)/(C)]であって、
上記タイコート(B)が、
(b1)「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン」、および/または、
(b2)「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、
シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれた体質顔料とを、加熱下または非加熱下に、接触処理して形成された硬化性組成物」
を含んでなる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物より形成される塗膜(層)であり、かつ、
上記フィニッシュコート(C)が、
(c1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む主剤、(c2)テトラアルコキシシリケートまたはその縮合物を含む硬化剤成分、および(c3)金属化合物を含む硬化促進剤成分から形成される3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物からなる塗膜(層)である、
ことを特徴としている。
【0045】
本発明に係る第3のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜は、
基材表面上に、修繕塗装または塗り直し塗装すべき古い防汚塗膜である(G)旧防汚塗膜、(A)エポキシ系シーラーコート、(B)タイコート、および(C)オルガノポリシロキサン系フィニッシュコートが、基材側から表面に向かってこの順序で、密着した状態で積層して形成されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜[基材/(G)/(A)/(B)/(C)]であって、
上記タイコート(B)が、
(b1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンおよび/または、
(b2)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンと、
シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれた体質顔料とを、加熱下または非加熱下に、接触処理して形成された硬化性組成物
を含んでなる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物により形成された塗膜であり、かつ、
上記フィニッシュコート(C)が、
(c1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む主剤、(c2)テトラアルコキシシリケートまたはその縮合物を含む硬化剤成分、および(c3)金属化合物を含む硬化促進剤成分から形成される3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物からなる塗膜である、
ことを特徴としている。
【0046】
本発明では、修繕塗装または塗り直し塗装すべき古い防汚塗膜である旧防汚塗膜(G)が、下記の防汚塗膜(g1)、(g2)、(g3)、(g4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の防汚塗膜であることが好ましい。
(g1)不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜、
(g2)(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜、
(g3)有機錫ポリマー(例:トリブチル錫ポリマー)系防汚塗膜、および
(g4)ロジン及びその誘導体のうちから選択される1種または2種以上の水溶性樹脂を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜。
【0047】
本発明では、旧防汚塗膜(G)が、
(g4)ロジン及びその誘導体から選択される1種または2種以上の水溶性樹脂(イ)と、
塩化ビニル樹脂、変性ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体および不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体から選択される1種または2種以上の水難溶性樹脂(ロ)と、
を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜であることも望ましい。
【0048】
本発明では、上記不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜(g1)が、シリル(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−SiR234
(式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2、R3およびR4はアルキル基を示す。)から誘導された成分単位を含有するシリルエステル共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜であることが好ましい。
【0049】
本発明では、上記(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜(g2)が、有機一塩基酸金属(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−M−O−CO−R2
(式中、Mは2価の金属を示し、R1は水素またはメチル基を示し、R2は有機一塩基酸残基を示す。)から誘導された成分単位を含有する共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜であることが好ましい。
【0050】
本発明では、上記(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜(g2)が、金属ジ(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−M−O−CO−C(R1)=CH2
(式中、Mは2価の金属を示し、2つのR1は、それぞれ独立に水素またはメチル基を示す。)から誘導された成分単位を含有する架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜であることが好ましい。
【0051】
また、本発明では、オルガノポリシロキサン系防汚塗膜(g3)が、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを縮合させて形成された防汚塗膜であることが好ましい。
【0052】
本発明では、上記エポキシ系シーラーコート(A)がシランカップリング剤を含有することが好ましい。
本発明においては、上記タイコート、上記第1〜第3の複合塗膜の何れの場合も、タイコートを形成する上記湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物が、さらにシランカップリング剤(b3)を含有していてもよく、好ましくはアミノシラン化合物が望ましい。
【0053】
本発明においては、上記タイコート、複合塗膜の何れの場合も、上記タイコートを形成する湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は、さらに着色顔料(b4)を含有していてもよい。
【0054】
本発明においては、上記湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物が、さらに硬化性触媒として金属化合物(b5)を含有していることが好ましく、金属化合物(b5)は、スズ化合物またはチタン化合物であることが望ましい。
【0055】
本発明においては、上記タイコート、複合塗膜の何れの場合も、上記分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)が、脱オキシムタイプの縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン、すなわち、縮合性官能基として、脱オキシム反応が生ずることにより硬化するタイプ(脱オキシム硬化タイプ)の「縮合性官能基」を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0056】
本発明においては、上記タイコート、複合塗膜の何れの場合も、上記体質顔料、好ましくはシリカまたは炭酸カルシウム、特に好ましくはシリカが、上記分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、加熱処理されていることが好ましく、その場合、100℃以上の温度で加熱処理されていることが望ましい。
【0057】
本発明においては、上記タイコート、複合塗膜の何れの場合も、硬化性組成物(b2)あるいは湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物が、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンと、上記体質顔料とを、上記加熱下に接触処理して形成された硬化性組成物(j)と、これらを非加熱下に接触処理して形成された硬化性組成物(k)との何れか一方を含んでいてもよいが、両方を含んでいると層間接着強度に優れ、その上タレ止め性、レベリング性にもバランス良く優れるためより好ましい。
【0058】
本発明においては、上記タイコート、複合塗膜の何れの場合も、上記ポリマーとしての成分(b2)を、上記成分(b1)100重量部に対して1〜100重量部の量で含有することが好ましい。
【0059】
本発明においては、上記タイコート、複合塗膜の何れの場合も、上記接触処理物成分(b2)以外に、さらに上記体質顔料が1種又は2種以上含まれていることが望ましく、上記体質顔料のうちでも、シリカ、炭酸カルシウムが望ましい。
【0060】
本発明においては、上記タイコート、複合塗膜の何れの場合も、上記シリカが、疎水性シリカ(イ)と親水性シリカ(ロ)とを含み、疎水性シリカ(イ)と親水性シリカ(ロ)とを重量比((イ)/(ロ))=1/99〜99/1で含有することが好ましい。
【0061】
本発明においては、上記タイコート、複合塗膜の何れの場合も、上記シリカが、疎水性シリカ(イ)のみを含有することが好ましい。
本発明に係る上記第1〜第3のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜では、フィニッシュコート(C)を形成する3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物中の金属化合物(c3)が有機スズ化合物であることが好ましい。
【0062】
本発明に係る上記第1〜第3のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜では、フィニッシュコート(C)を形成する3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物中の(c1)成分、(c2)成分または(c3)成分のうちの少なくとも1成分には、さらに、縮合性官能基を有しないオルガノポリシロキサン(c4)が含有されていることが好ましい。
【0063】
本発明に係る船舶または水中構造物は、上記タイコートを用いて形成されているか、又は、上記何れかに記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜で被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、防汚剤を実質上含有せず環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚塗膜を基材や下塗塗膜等の表面に形成するに先立って、これら基材等の表面に予め特定のタイコート(結合塗膜、プライマーコート)を形成しているので、タイコートの下面に位置する基材や一次防錆塗膜などの下塗層と、最外層(finish coat)となる、防汚剤を含有せず環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚塗膜とを強固に結合でき、しかも、タイコート(tie-coat)自体がある程度の厚みを有し、また、環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系塗料から形成されているから、フィニッシュコートをそのタイコート表面に設けることにより、厚肉で、防汚性を有する複合塗膜を容易に形成できる。
【0065】
本発明においては、特に、上記成分(b2)が、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、シリカなどの体質顔料とを、加熱下(例:100℃以上〜配合成分の分解温度未満)に接触処理してなる硬化性組成物であると、 層間接着性に優れ、しかも、(イ)タレ止め性に優れしかも厚膜化に好適である(膜厚性に優れる)傾向があり、また、
上記成分(b2)がオルガノポリシロキサン(b1)とシリカなどの体質顔料とを非加熱下(=室温程度)に接触処理してなる硬化性組成物であると、層間接着性に優れ、しかも(ロ)塗布作業性と膜厚均一性に優れたタイコートとなる傾向がある。
【0066】
また本発明によれば、基材や下塗塗膜等の表面に、上記タイコートと、オルガノポリシロキサン系防汚塗膜(フィニッシュコート)とを順次積層して複合塗膜を形成しているので、基材や下塗塗膜(層)とフィニッシュコート間を強固に結合・付着させることができ、かつ、表面の防汚塗膜(層)は、汚染防除性(fouling-release)に優れ、その上に、
何れの塗膜(層)にも実質上、防汚剤を含有しないため、環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜が提供される。
【0067】
本発明に係る第3のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(第3の複合塗膜とも言う。)は、修繕塗装または塗り直し塗装として、古い防汚塗膜(旧防汚塗膜)の上に塗装することにより形成される新旧複合塗膜であり、該複合塗膜は新防汚塗膜の選択により厚膜化可能であり、古い塗膜とその表面に形成された新防汚塗膜との付着性に優れ、かつ防汚性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、本発明に係るオルガノポリシロキサン系防汚塗膜用タイコート、オルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(積層塗膜ともいう。)、その塗膜で被覆された船体、水中構造物等について具体的に説明する。
【0069】
なお、以下の説明において、タイコート、フィニッシュコート、シーラーコート、プライマーコートなどというときは、硬化塗膜(すなわち塗膜)や複合(積層)塗膜中の硬化した層、処理層の意味で用いるとともに、これらの硬化塗膜形成用の未硬化の塗料(塗料組成物)などの意味でも用いる。
【0070】
<基材および下塗塗膜>
はじめに、上記本発明のタイコート(B)が塗設されるベースである基材あるいは下塗塗膜(層)について説明する。
【0071】
上記タイコート(B)は、基材あるいは下塗塗膜(層)の表面に設けられるが、基材としては、鋼板、アルミ板などの材質からなる客船、貨物船、タンカーなどの船体の外表面;船舶以外の鋼構造物としては、原子力発電所の冷却水給排水路、塔、橋梁、石油掘削プラントその他の各種プラント、海中展望台の海洋構造物;等が挙げられる。これら船舶、海洋構造物等の材質は、上記鋼材の他、コンクリート、FRP、木等でもよい。
【0072】
また、下塗塗膜としては、タイコートの形成に先立って、予め上記基材の表面に塗設される、エポキシ系ジンクリッチプライマー、エポキシ系防錆用プライマー等の下塗塗料からなる塗膜が挙げられる。
【0073】
ここで、さらにこの下塗塗膜との関連で詳説すると、下塗塗膜を形成するには、本願出願人が先に提案した特開2001−46957号公報の[0018]〜[0025]欄に記載のジンク系ショッププライマー(ジンク系一次防錆塗料、ジンク系一次防食塗料とも言う。)、エポキシ樹脂系防食塗料などと称されるものが防錆性、溶接性、基材との密着性、該下塗塗膜表面に形成されるタイコートとの密着性、などにバランス良く優れる点で好適に用いられる。
【0074】
ジンク系ショッププライマー(ジンク系一次防錆塗料)は、有機系、無機系の何れであってもよく、有機ジンク系一次防錆塗料としては、たとえばエポキシ系ジンクプライマーなどが挙げられ、無機ジンク系一次防錆塗料としては、シリケート系結合剤等の無機結合剤、特にシリケート系結合剤を用いた無機ジンク一次防錆塗料を用いるのが好ましい。
【0075】
特に有機ジンク系一次防錆塗料を用いると、膜厚が均一で防食性に優れた塗膜が得られ、かつ、この一次防錆塗膜表面に塗布すべき塗料の量を節減することができる。また、無機ジンク系一次防錆塗料を用いると、溶接性に優れ、膜厚が均一で防食性に優れた塗膜が得られる。これらのジンク系ショッププライマーの内では、無機ジンク系一次防錆塗料が特に好ましい。
【0076】
上記エポキシ系ジンクプライマーとしては、容量不揮発分が25〜35%であり、塗膜中亜鉛重量濃度が50〜90%であることが好ましい。また、無機ジンク系一次防錆塗料としては、シリケート系結合剤と防錆顔料としての亜鉛末を含有してなり、容量不揮発分が17〜27%であり、塗膜中亜鉛重量濃度が20〜95%であることが好ましい。
【0077】
本発明において、ショッププライマーとして、ジンク系ショッププライマー以外の防錆塗料を用いると、戻り錆が発生し易いが、上記のようなジンク系ショッププライマー、特にシリケート系結合剤含有の無機ジンク系一次防錆塗料からなるプライマー膜(層)を鋼材の表面に形成しておくと、このプライマー膜(層)に傷が付いても、亜鉛の防食効果により戻り錆が発生しにくくなる。
【0078】
上記のようなジンク系ショッププライマーの塗装方法は、特に制限はなく、従来公知の塗装方法を採用することができる。ジンク系ショッププライマーの塗装は、通常、鋼材表面にショットブラスト処理を施してスケールを除去した後に、行なわれる。
【0079】
これらプライマーが塗設されてなる下塗塗膜(層)の厚さは、特に限定されない。
なお、この下塗塗膜、例えば、エポキシ系シーラーコートにも、後述するシランカップリング剤が含まれていてもよい。
【0080】
上記エポキシ樹脂系防食塗料には、通常、樹脂分のエポキシ系防食樹脂、エポキシ樹脂用アミン系硬化剤(e2)が含まれ、その他に、必要により、体質顔料(e3)、タレ止め剤(e4)などが含まれていてもよい。
【0081】
上記エポキシ系防食樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、エポキシ化油系エポキシ樹脂などを用いることができる。中でも、ビスフェノールAタイプ、Fタイプなどのビスフェノール型エポキシ樹脂は、得られる防食塗膜の基材への付着力および耐食性に優れるため好ましい。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0082】
このようなエポキシ樹脂は、溶剤等を含む防食塗料組成物中に、通常10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%の量で、また防食塗料組成物[i]の固形分100重量%に対して、通常10〜70重量%、好ましくは10〜60重量%の量で含まれていることが、塗膜の耐食性に優れるため望ましい。
なお、エポキシ樹脂(e1)は上市されているものを用いることができる。例えば、
ビスフェノール型エポキシとして「エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート807、エピコート4004P、エピコート4007P」(ジャパンエポキシレジン製)などが挙げられる。
【0083】
エポキシ樹脂用アミン系硬化剤(e2)
上記防食塗料組成物[i]に含有されるエポキシ樹脂用アミン系硬化剤(e2)としては、例えば、フェノール類とホルマリンとアミン化合物とのマンニッヒ縮合反応で形成されたマンニッヒ変性アミン類、および/または脂肪族ポリアミン類を用いることができるが、塗料の取り扱いが容易となる、塗料の可使時間が好適な範囲となるなどの点で、主としてダイマー酸とポリアミンの縮合により生成し、分子中に反応性の第1および第2アミノ基を有するポリアミドアミンを用いることが好ましい。
【0084】
エポキシ樹脂用アミン系硬化剤(e2)は、理論的にはエポキシ樹脂(e1)中のエポキシ基数と、アミン系硬化剤(e2)中のアミノ基数とが等しくなる量(当量)用いればよいが、本発明では、エポキシ基1当量に対してアミノ基が0.35〜0.9当量、好ましくは0.4〜0.8当量となるよう用いればよい。また、エポキシ樹脂(e1)100重量部に対してアミン系硬化剤(e2)を例えば10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部の範囲の割合で用いることができる。
【0085】
このようなエポキシ樹脂用アミン系硬化剤(e2)は上市されているものを用いることができる。例えば、「ラッカマイドTD966」(大日本インキ(株)製)、「サンマイド 307D−60」(三和化学(株)製)などが挙げられる。
【0086】
体質顔料(e3)
上記防食塗料組成物[i]に含有されうる体質顔料(e3)としては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、カーボンブラックなど、従来公知のものを使用できるが、なかでもタルク、硫酸バリウム、マイカ、酸化チタン、カーボンブラックが本発明において好適に用いられる。これらの体質顔料は、単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。この体質顔料(e3)は、例えば、防食塗料組成物[i]の固形分100重量%に対して、20〜100重量%の範囲で含有することができる。
【0087】
タレ止め剤(e4)
上記防食塗料組成物[i]に含有されうるタレ止め剤(e4)としては、例えば、有機粘土系Al、Ca、Znのアミン塩、ステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等、従来公知のものを使用できるが、なかでもポリアマイドワックスが本発明において好適に用いられる。このタレ止め剤(e4)は、例えば、防食塗料組成物[i]100重量%に対して0〜5重量%の範囲で含有される。
【0088】
以上のような各種成分は、上市されている製品などを用いて、常法により、エポキシ樹脂系塗料組成物[i]の調製の際にそれぞれ上記のような割合で配合すればよい。さらに、上記成分以外にも、例えば溶剤、液状炭化水素樹脂、界面活性剤、防錆顔料などの、エポキシ樹脂系防食塗膜に用いられている各種の成分を必要に応じて適量、添加してもよい。このようなエポキシ樹脂系塗料組成物は、エポキシ樹脂(e1)を含む主剤成分と、アミン系硬化剤(e2)を含む硬化剤成分との2液型の組成物として提供されることもある。
【0089】
[オルガノポリシロキサン系防汚塗膜用タイコート(B)]
本発明に係るオルガノポリシロキサン系防汚塗膜用タイコート(B)は、
上記した基材あるいは下塗塗膜(層)(まとめて基材等ともいう。)の表面に、オルガノポリシロキサン系防汚塗膜(層)を形成するに先立って、基材等の表面に形成されるタイコート(結合塗膜、プライマーコートともいう。)であって、該タイコートは、下記のような特定の湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物を塗布、硬化させることにより形成されている。
【0090】
この湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は、「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)」、および/または、「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、特定の体質顔料(無機充填剤)とを、加熱下または非加熱下に、接触処理(例:混合)して形成された硬化性組成物(b2)」、を含んでなっている。
【0091】
本発明においては、タイコート、後述する複合塗膜中のタイコートの何れの場合も、上記接触処理物成分(b2)以外に、(接触処理に供されていない)上記体質顔料が、さらに1種又は2種以上含まれていてもよい。
上記体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれたものが用いられ、好ましくはシリカまたは炭酸カルシウムが用いられ、特に好ましくはシリカが用いられる。
【0092】
この湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物としては、本願出願人らが先に、特開2001−181509号公報(特願2000−236694号)、特開2001−139816号公報(特願平11−327507号)にて提案した硬化性組成物、コーティング用組成物、塗料などを好適に使用できる。
【0093】
この湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物を基材等の表面に塗布し硬化してなる、本発明に係るタイコートは、このタイコートの下面に位置する基材等と、最外層(finish coat)となる後述するオルガノポリシロキサン系防汚塗膜とを強固に結合できる。その結果、タイコート表面に塗布硬化して積層される、環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚塗膜(層)の優れた防汚性能を長期間、継続的に発揮させることができる。
【0094】
上記タイコート(硬化物)の厚みは、特に限定されないが、通常、50〜500μm(厚)、好ましくは50〜300μm(厚)程度である。
なお、タイコートの組成、タイコートを形成する際に用いられる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物、およびその塗装法などについて以下に詳述する。
【0095】
<湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物>
本発明では、上記タイコート(B)、および、後述する複合塗膜中のタイコート(B)層は、上記したように、特定の湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物からなるタイコートであることが、基材や下塗されたエポキシ系一次防錆塗膜との層間接着強度、タイコート(B)の上面に形成されるフィニッシュコート(C)との層間接着強度などにバランスよく優れる点で好適である。
【0096】
この湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は、前述したように、下記成分(b1)と、下記硬化性組成物である成分(b2)のうちの何れか一方、または両者を含んでなる。
すなわち、この湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は、
(b1)「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン」、および/または、
(b2)「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、
シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれた体質顔料(好ましくはシリカ又は炭酸カルシウム、特に好ましくはシリカ)とを、加熱下または非加熱下に、混合に代表される接触処理を施して形成された硬化性組成物」
を含んでなる。
【0097】
本発明には、上記(b1)の一部または全部に代えて、(b2)中の体質顔料と同様の体質顔料を1種又は2種以上含む態様も包含される。
ここでシリカは、疎水性シリカおよび/または親水性シリカが好ましい。
また、上記硬化性組成物(b2)は、特定のオルガノポリシロキサン(b1)と体質顔料とを非加熱下に接触処理してなる硬化性組成物(b2−1)であってもよく、特定のオルガノポリシロキサン(b1)と体質顔料とを室温などの加熱下に接触処理してなる硬化性組成物(b2−2)であってもよく、さらには、これら非加熱下で得られた硬化性組成物(b2−1)と、加熱下で得られた硬化性組成物(b2−2)とを組合わせて用いてもよい。
【0098】
上記の接触処理は、加熱下、例えば、100℃程度以上〜配合成分の分解温度未満の温度または非加熱下(=室温程度の温度である、15〜25℃程度の温度)で、体質顔料例えばシリカと、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン[例:ジメチルポリシロキサンと、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シランとの反応物]とを混合することにより行うことが望ましい。このような条件下での接触処理により、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)[例:実施例中の式(i)]と、体質顔料例えばシリカとが緊密に接触処理されたものであることが塗料のタレ止め性に優れ、膜厚の厚い(厚膜性に優れた)塗膜が得られるなどの点で望ましい。
【0099】
なお、上記の接触処理は、加熱下または非加熱下で、体質顔料例えばシリカと、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(ポリマー)製造用の原料[例:ジメチルポリシロキサンと、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン]とを混合し、ジメチルポリシロキサンと、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シランを反応させることにより、シリカと生成ポリマーとの緊密接触を行うこともできる。
【0100】
なお、上記オルガノポリシロキサン(b1)形成用原料には、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)を形成し得る限り、分子量の大きいマクロモノマー(例:ジメチルポリシロキサン)なども含まれる。
【0101】
オルガノポリシロキサン(b1)
このオルガノポリシロキサン(b1)は、上記特開2001−181509号公報等におけるオルガノポリシロキサン(A)と同様のものであって、分子(鎖状分子あるいは分子主鎖)の両末端が縮合反応性基(縮合性官能基)である。
【0102】
上記オルガノポリシロキサン(b1)としては、特許第2522854号に記載されているようなオルガノシリコーンの主成分となる縮合反応性の重合体、特に好ましくは液状重合体が用いられる。
このようなオルガノポリシロキサン(b1)としては、下記式[α]:
【0103】
【化1】

(式[α]中、Wは、縮合性官能基としての、水酸基(−OH)または加水分解性基を示し、R1、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜12の非置換または置換の1価炭化水素基を示し、複数のR1、Rは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、nは5以上の整数を示し、aは0、1または2を示す。)で表されるものが望ましい。
【0104】
この式[α]において、a=0、1である場合には、Wは加水分解性基であり、a=2である場合には、Wは水酸基(−OH)であることが望ましい。本発明においては、上記式[α]中のWが水酸基であり、かつaが2である場合には、このような成分(b1)と、上記成分(b2)とに加えて、さらに、後述する(b3)シランカップリング剤などを用いることができる。
【0105】
上記式[α]中のwが加水分解性基である場合、このような加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、イミノキシ基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基等が挙げられ、イミノキシ基(ケトオキシム基)、アルコキシ基が好ましい。
【0106】
上記アルコキシ基としては、総炭素数が1〜10のものが望ましく、また炭素原子間に1箇所以上酸素原子が介在していてもよく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等が挙げられる。アシロキシ基としては、式:RCOO−(式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12の芳香族基)で示される脂肪族系または芳香族系のものが望ましく、例えば、アセトキシ基、プロピオノキシ基、ブチロキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0107】
アルケニルオキシ基としては、炭素数3〜10程度のものが望ましく、例えば、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等が挙げられる。
【0108】
イミノキシ基(R'R''=C=N−O−、オキシイミノ基、ケトオキシム基とも言う。)としては、炭素数3〜10程度のものが望ましく、例えば、ケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンタノキシム基、シクロヘキサノキシム基等が挙げられる。
【0109】
アミノ基としては、炭素数1〜10のものが望ましく、例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等が挙げられる。アミド基としては、総炭素数2〜10のものが望ましく、例えば、N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等が挙げられる。
【0110】
アミノオキシ基としては、総炭素数2〜10のものが望ましく、例えば、N,N−ジメチルアミノオキシ基、N,N−ジエチルアミノオキシ基等が挙げられる。R1、Rは、それぞれ独立に、炭素数が1〜12、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜8の非置換または置換の1価炭化水素基を示し、このような1価炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アラルキル基等が挙げられる。
【0111】
上記アルキル基としては、直鎖状、分岐状または脂環状の何れタイプのアルキル基であってもよく、その炭素数が1〜10、好ましくは1〜8程度の直鎖状または分岐状アルキル基;炭素数が3〜6のシクロアルキル基;が好ましい。このような直鎖状あるいは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基、特に好ましくはメチル基が挙げられ、脂環状のアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0112】
アルケニル基としては、炭素数が2〜10、好ましくは2〜8程度のものが望ましく、例えば、ビニル基、ヘキセニル基、アリル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数が6〜15、好ましくは6〜12程度のものが望ましく、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基等が挙げられ、特にフェニル基が好ましい。
【0113】
シクロアルキル基としては、炭素数3〜8のものが望ましく、例えば、シクロヘキシル基等が挙げられる。アラルキル基としては、総炭素数が7〜10、好ましくは7〜8程度のものが望ましく、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基等が挙げられる。これらの基R1中の炭素原子に結合した水素原子の一部あるいは全部は、F、Cl、Br、I等のハロゲン原子、シアノ基等で置換されていてもよく、ハロゲン化アルキル基としては、例えば、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2−シアノエチル基等が挙げられる。
【0114】
なお、式[α]中のRとしては、なかでも未置換の1価炭化水素基が好ましく、特にメチル基、フェニル基が好ましい。なお、このような式[α]で表されるオルガノポリシロキサン(b1)中に、複数個のR1、複数個のRが存在する場合、これら複数個のR1同士、複数個のR同士、あるいはR1とRとは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0115】
このようなオルガノポリシロキサン(b1)の25℃における粘度は、得られる組成物の塗装性、得られる組成物を溶剤希釈した時のタレ防止などの観点を考慮すると、通常、25mPa・s〜1,500,000mPa・s(150万mPa・s)、好ましくは25〜500,000mPa・s、さらに好ましくは500〜200,000mPa・s、特に好ましくは1,000〜100,000mPa・sであることが望ましい。
【0116】
本発明では、上記分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)は、脱オキシム反応により硬化するタイプの縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0117】
このような成分(b1)、特に脱オキシム硬化タイプのシリコーンゴムは、湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に、通常20〜80重量%、好ましくは40〜70重量%の量で含まれていることが、塗装作業効率の向上などの点から望ましい。
【0118】
<硬化性組成物(b2)>
この硬化性組成物(b2)は、オキシム基含有オルガノポリシロキサン(b0)に代表される上記分子両末端に縮合性官能基含有するオルガノポリシロキサン(b1)と、シリカに代表される前記体質顔料とを一緒にして、加熱下または非加熱下に、混合等の接触処理をすることにより形成されている。なお本発明では、この(b2)の製造に際しては、ポリマーとしての成分(b1)に代えて、成分(b1)形成用原料を用いてもよい。
【0119】
このように成分(b1)と、シリカなどの体質顔料との接触を加熱下又は非加熱下に行うと、成分(b1)とシリカなどとのより緊密な接触物が得られ、塗料のタレ防止や、塗膜の厚膜化に有利となる傾向がある。
【0120】
前記体質顔料としては、シリカの他、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムなどが挙げられ、シリカ、炭酸カルシウムが好ましく、特にシリカが得られる塗料の塗装作業性、塗料の取扱い性の点で望ましい。これら体質顔料は1種又は2種以上併用してもよい。
【0121】
これらのうちで体質顔料として好ましく用いられるシリカは、上記特開2001−181509号公報あるいは特開2001−139816号公報に記載のシリカと同様のものであり、また硬化性組成物(特に加熱接触処理物)もこれら公報に記載の成分(B)と同様のものである。
【0122】
すなわち、シリカには、湿式法シリカ(水和シリカ)、乾式法シリカ(フュームドシリカ、無水シリカ)等の親水性シリカ(表面未処理シリカ);
疎水性湿式シリカ、疎水性フュームドシリカ等の表面処理された疎水性シリカ;がある。
【0123】
本発明では、シリカ成分として、疎水性シリカと親水性シリカとを併用してもよく、疎水性シリカを単独で用いてもよい。
本発明では、疎水性シリカと親水性シリカとを併用する場合には、これらのうちの少なくとも親水性シリカは、上記成分(b1)の一部または全部と共に熱処理されていることが好ましく、さらには、親水性シリカと疎水性シリカとの両者が、上記成分(b1)の一部または全部と共に熱処理されていることが望ましい。
【0124】
また、本発明では、疎水性シリカを単独で用いる場合には、疎水性シリカは、上記成分(b1)の一部または全部と共に熱処理されている。
これらのシリカのうちで、湿式法シリカは、通常、吸着水分含量(水分含量とも言う。)が4〜8%程度であり、嵩密度は200〜300g/Lであり、1次粒子径は10〜30mμであり、比表面積(BET表面積)は、10m2/g以上であればよいが、好ましくは50〜800m2/g、さらに好ましくは100〜300m2/g程度である。
【0125】
乾式法シリカ(フュームドシリカ)は、水分含量が通常、1.5%以下である。
なお、この乾式法シリカは、製造直後など初期の水分含量は例えば、0.3%以下と低いが、放置しておくと次第に吸湿して水分含量が増加し、製造後数ヶ月経過後の時点では、例えば、0.5〜1.0%程度になる。またこのような乾式法シリカの嵩密度はその種類により異なり一概に決定されないが、例えば、50〜100g/Lであり、1次粒子径は8〜20mμであり、比表面積(BET表面積)は、10m2/g以上であればよいが、好ましくは100〜400m2/g、さらに好ましくは180〜300m2/g程度である。
【0126】
疎水性フュームドシリカは、乾式法シリカをメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の有機珪素化合物で表面処理したものであり、経時的な水分吸着は少なく、水分含量は通常0.3%以下、多くの場合0.1〜0.2%であり、比表面積は10m2/g以上であればよいが、好ましくは100〜300m2/g、さらに好ましくは120〜230m2/gであり、1次粒子径は5〜50mμであり、嵩密度は50〜100g/Lである。
【0127】
なお、成分(b1)と共に熱処理された疎水性フュームドシリカ(熱処理疎水性ヒュームドシリカ)では、疎水性シリカの表面に吸着されている水分が物理的に低減・除去されており、水分含量が通常、0.2%以下、好ましくは0.1%以下、特に0.05〜0.1%であり、嵩密度等のその他の物性値は、上記疎水性シリカと同様である。
【0128】
このような成分(b2)(硬化性組成物(b2))は、上記成分(b1)100重量部に対し、通常、1〜100重量部、好ましくは2〜50重量部、特に好ましくは5〜30重量部の量で湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物に含有されていることが望ましい。
【0129】
このような量で硬化性組成物(b2)が上記湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に含まれていると、塗膜強度、塗膜硬度に優れ、チクソ性が良好で、適度の粘度を有し、良好に塗装特にスプレー塗装でき、例えば、垂直に起立した基材面等であっても1回の塗装で塗膜(タイコート)の厚膜化を図ることができ、一回の塗装でもある程度厚塗りできるため、塗装効率の向上を図ることができ、省力化できるため好ましい。
【0130】
また、このような成分(b2)は、湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に、通常1〜40重量%、好ましくは10〜20重量%の量で含まれていることが、一回の塗装での厚塗化が可能となり、塗装作業効率の向上を図ることができるなどの点から望ましい。
【0131】
なお、上記成分(b2)が上記範囲より少ないと、十分な塗膜強度、塗膜硬度が得られず、所望のチクソ性が得られず1回の塗装特にスプレー塗装で所望の厚膜化が図れないことがあり、また、上記成分(b2)が上記範囲より多いと塗料の粘度が過度に高くなり、塗装に適した適正粘度までシンナーなどの溶剤で希釈する必要が生じ、1回のスプレー塗装による塗膜の厚膜化が図れないことがある。
【0132】
また、本発明では成分(b2)すなわち硬化性組成物(b2)として、上記疎水性フュームドシリカ等の疎水性シリカ(イ)と、表面未処理シリカ等の親水性シリカ(ロ)とを組合わせて用いる場合には、その重量比((イ)/(ロ))が1/99〜99/1、好ましくは20/80〜80/20、特に好ましくは30/70〜70/30となるような量でこれらを用いることが望ましい。このような量比で疎水性シリカ(イ)と親水性シリカ(ロ)とを併用すると、得られる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は、調製・保管・貯蔵時の塗料安定性に優れ、十分なチクソ性を有し、また該組成物を硬化して得られるタイコート(結合塗膜)は塗膜強度、塗膜硬度に優れる傾向がある。
【0133】
本発明に係るタイコートは、オルガノポリシロキサン系防汚塗膜と同様に、実質上、防汚剤を含んでいないことが好ましい。
【0134】
<シランカップリング剤(b3)>
本発明においては、上記タイコートを形成する際に用いられる上記湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物には、層間接着強度を向上させる上で、さらにシランカップリング剤(b3)が含有されていてもよい。
【0135】
シランカップリング剤(b3)としては、例えば、特開2001−181509号公報[0051]〜[0054]欄に記載の「オルガノシランまたはその部分加水分解物(C)」、あるいは特開2002−80564号公報(特願2000−268207号明細書)の[0031]〜[0032]欄に記載の「付着強化剤(シラン化合物)」、特表平5−505845号公報の請求の範囲1の(A)成分、より具体的にはその第3頁左上欄第9行〜第3頁左下欄下から第5行に記載の「アミノシラン材料」などを用いることができる。
【0136】
本発明においては、前記分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン成分(b1)が前記式[α]で表され、式[α]中のWが水酸基であり、かつaが2である場合には、このような成分(b1)と、上記成分(b2)とに加えて、さらに、シランカップリング剤(b3)が含有されていることが好ましい。
【0137】
シランカップリング剤(b3)としては、上記特開2001−181509号公報に記載の式[I]:R1aSiX4-a(式[I]中、R1は炭素数1〜8の非置換または置換の前記式[α]中のR、R1等と同様の1価炭化水素基を示し、Xは前記式[α]中のWと同様の加水分解性基を示し、aは0または1を示す。)で示されるオルガノシランまたはその部分加水分解物などが挙げられる。
【0138】
すなわち、本発明においては、上記成分(b1)として、その分子(鎖状分子、分子鎖)の両末端が水酸基(−OH)であるオルガノポリシロキサン、具体的には、分子鎖両末端がシラノール基(≡Si−OH)で封鎖された硬化性オルガノポリシロキサンを用いる場合には、このような成分(b1)と架橋剤・硬化剤などとしての成分(b3)とを併用することが特に好ましい。
【0139】
また例えば、上記成分(b1)として、その分子両末端が加水分解性基で封鎖された硬化性オルガノポリシロキサンを用いる場合には、硬化剤成分(b3)が存在しなくとも充分に硬化可能であるが、このような場合にも成分(b3)を含むことがより好ましい。
【0140】
上記Xは、前記式[I]におけるWと同様の加水分解性基である。このような式[I]で表されるオルガノシランまたはその(部分)加水分解物としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリプロペニルオキシシラン、メチルトリアセトキシシラン及びこれらのシラン化合物のメチル基をビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基等で置換したシラン化合物(例:ビニルトリメトキシシラン)、さらにはこれらの部分加水分解物が挙げられる。この場合加水分解性基としてはケトオキシム基が好ましい。
【0141】
これらのシランカップリング剤(b3)例えば、「オルガノシランまたはその加水分解物」(b3)は、上記オルガノポリシロキサン(b1)100重量部に対して、1〜60重量部の量で使用可能であるが、通常、1〜20重量部の量で、好ましくは2〜10重量部の量で湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に含まれていることが望ましい。このような量でオルガノシランまたはその加水分解物(b3)が上記組成物中に含まれていると、成分(b1)の架橋反応が良好に進行し、得られた塗膜(タイコート)は、適度の硬度を有し、経済性に優れる傾向がある。
【0142】
このようなシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、「KBE 1003」(ビニルトリエトキシシラン、信越化学工業(株)製)、「KBM403」(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0143】
このようなシランカップリング剤は、湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に、通常、0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%となるような量で、一次防錆塗膜との接着性向上等の観点から用いられる。
【0144】
シランカップリング剤(b3)としては、また、上記したようにアミノシラン化合物を用いてもよい。係るアミノシラン化合物としては、上記特表平5−505845号公報(特許文献6)に「アミノシラン材料(A)」として記載されているものが挙げられる。
【0145】
具体的には、このアミノシラン材料(アミノシラン化合物)としては、下記(i)、(ii)、(iii)で示されるものが挙げられる。
(i)式[I]で表される1級アミン官能性シラン;
式[I]:(RO)X(3-X)SiR1NHR2 )・・・・・[I]
(式[I]中、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、C1〜12で、所望によりエーテル結合を含む一価炭化水素基であり、R1はC2〜4のアルキレン基又はC3〜8の二価脂肪族エーテル基であり、R2はHまたは1級アミン基であり、Xは2または3である。)
(ii) この1級アミン官能性シラン(i)と、下記式[II]で表されるエポキシ官能性シランとの反応物;
式[II]:A−Si(B)a(OB)(3-a))・・・・・[II]
(式[II]中、AはC4〜12のエポキシド置換一価炭化水素基であり、複数のBは互いに同一でも異なっていてもよく、C1〜4のアルキル基であり、aは0または1である。)
または、上記(i)の1級アミン官能性シランと、下記式[III]で表されるα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンとの反応生成物;
式[III]:HO(Si(CH32O)yH)・・・・・[III]
(式[III]中、γは2〜60の数である。)
上記公報(特許文献6)に記載されているように上記1級アミン官能性シラン(i)としては、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン[(C25O)3Si−(CH2)3−NH2、商品名「KBM−903」]、(CH3O)Si(CH2)3NH(CH2)NH2などが挙げられ、また上記反応物(ii)としては、例えば、
(C2H5O)3Si(CH2)3-NH-CH2-CH(OH)-CH2-O(CH23Si(OCH33などが挙げられる。
【0146】
このようなアミノシラン化合物は、上記「オルガノシランまたはその加水分解物」の場合と同様な量で用いられる。
【0147】
<シリコーンオイル(c4)>
本発明で用いられる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は、前述したようなシリコーンオイル(c4)、すなわち、本願出願人らが先に提案した特開2001−181509号公報の[0058]〜[0071]欄に記載したような、上記シリコーンオイル(c4)を含んでいてもよい。
【0148】
本発明においては、このようなシリコーンオイル(c4)、好ましくは、シリコーンオイル[II]、シリコーンオイル[III]及びシリコーンオイル[IV]のうちの何れか1種または2種以上が、上記成分(b1)100重量部に対して、合計で、0.1〜200重量部、好ましくは20〜100重量部の量で含有されていてもよい。
【0149】
湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物の製造>
上記本発明に係るタイコート(B)あるいは、後述するような本発明に係る複合塗膜(C)のタイコート膜(層)を形成する際に用いられる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は、予め、成分(b1)すなわち分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)(またはその原料(b1))の一部または全部と、親水性シリカと疎水性シリカのうちの少なくとも親水性シリカ、好ましくは親水性シリカと疎水性シリカとの両者を(また、疎水性シリカを単独で用いる場合は、疎水性シリカを)、常圧下または減圧下に、加熱下(すなわち100℃以上で配合成分の分解温度以下、好ましくは100〜300℃、さらに好ましくは140℃〜200℃程度の温度)で、通常30分〜3時間程度加熱処理した後、残部の成分(b1と、(b2)と、必要により用いられる成分(b3)とに加えて、必要によりさらに非反応性のシコーンオイルである、縮合性官能基を有しないオルガノポリシロキサン(c4)を配合することによって製造することができる。
【0150】
なお、上記加熱下での処理に代えて、実質的に非加熱下(具体的には、室温下かそれより若干高い程度の温度下)に、1〜8時間程度接触処理してもよい。
また、従来より公知のオルガノシロキサン硬化触媒、防汚剤、チクソトロピー性付与剤、可塑剤、無機脱水剤(安定剤)、タレ止め・沈降防止剤(増粘剤)、着色顔料、染料、その他の塗膜形成成分、溶剤(例:キシレン)、殺菌剤、防カビ剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導改良剤、接着性付与剤などを所定の割合で一度にあるいは任意の順序で加えて撹拌・混合し、溶媒に溶解・分散することもできる。
【0151】
このようにシリカとして親水性シリカと疎水性シリカとを併用する場合には、少なくとも親水性シリカを、好ましくは親水性シリカと疎水性シリカの両者を、成分(b1)と加熱処理すると、得られる組成物中の成分(b1)と(b2)とは親和性に優れ、成分(b2)などの凝集がなく、例えば、得られる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は適度の流動性、チクソ性等を示し、垂直塗装面などに対しても、所望の充分な厚みの塗膜を1回塗りなどの少ない塗装回数で形成できる。
【0152】
なお、上記のような配合成分の攪拌・混合の際には、ロスミキサー、プラネタリーミキサー、万能品川攪拌機など、従来より公知の混合・攪拌装置が適宜用いられる。上記触媒(b5)としては、例えば、特許第2522854号公報に記載されているもの(例:チタン化合物、錫化合物などの金属化合物)を好適に使用でき、具体的には、例えば、ナフテン酸錫、オレイン酸錫等のカルボン酸錫類;ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫等の錫化合物類;テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチルグリコール等のチタン酸エステル類あるいはチタンキレート化合物;等の他、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物類;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アモノエチル)γ−アモノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン類;ヘキシルアミン、リン酸ドデシルドデシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物及びその塩類;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、臭酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩類;テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン類;等が挙げられる。
【0153】
これらのオルガノシロキサン硬化触媒のうちで、金属化合物(b5)が好ましく、さらには、この硬化性触媒として、上記錫化合物またはチタン化合物が好ましい。
これらの触媒は、成分(b1)100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下、さらには1重量部以下の量で用いられ、使用する場合の好ましい下限値は0.0001重量部以上(換言すれば、1ppm以上)、特に0.001重量部以上(換言すれば10ppm以上)である。
なお、この湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物には、防汚剤は、実質上、含まれていないことが好ましい。
【0154】
<可塑剤(塩素化パラフィン等)>
可塑剤としては、TCP(トリクレジルフォスフェート)、塩素化パラフィン、ポリビニルエチルエーテル、ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの可塑剤は、得られる塗膜(タイコート)の耐クラック性の向上に寄与する。
【0155】
<無機脱水剤>
無機脱水剤は、安定剤としても機能し、湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物の貯蔵安定性を一層向上させることができ、このような無機脱水剤としては、無水石膏(CaSO4)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、シリケート類等が挙げられ、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような無機脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0156】
このような無機脱水剤を含む湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物においては、この無機脱水剤は、該組成物中に、通常、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%程度の量で含まれていてもよい。
【0157】
<カルボン酸金属塩>
なお、この湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物には、さらに、カルボン酸金属塩が含まれていてもよい。
【0158】
カルボン酸金属塩としては、その分子量が通常50〜1000、好ましくは100〜600のものが用いられる。このようなカルボン酸金属塩を構成するカルボン酸としては、脂環構造を有するカルボン酸(例:ナフテン酸)、芳香環構造を有するカルボン酸(例:α−(2−カルボキシフェノキシ)ステアリン酸)、ロジン系樹脂酸、脂肪酸等が挙げられ、ナフテン酸、ロジン系樹脂酸、脂肪酸が好ましい。
【0159】
<タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)>
タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)としては、有機粘土系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘土系が用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200-20」等の他、「ディスパロンA630-20X」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
このようなタレ止め・沈降防止剤は、この湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に、例えば、0.1〜10重量%の量で配合される。
【0160】
<顔料>
顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料を用いることができる。
有機系顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、紺青等が挙げられる。無機系顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、バライト粉、シリカ、タンカル、タルク、白亜、酸化鉄粉等のように中性で非反応性のもの;亜鉛華(ZnO、酸化亜鉛)、鉛白、鉛丹、亜鉛末、亜酸化鉛粉等のように塩基性で塗料中の酸性物質と反応性のもの(活性顔料)等が挙げられる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。このような各種顔料は、湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に、例えば、合計で0.5〜45重量%、好ましくは3〜10重量%程度の量で配合される。
【0161】
<その他の塗膜形成成分>
塗膜形成成分としては、上記したオルガノポリシロキサン(b1)など以外の塗膜形成成分が本発明の目的に反しない範囲で含まれていてもよく、このような「その他の塗膜形成成分」としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ウレタン樹脂(ゴム)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム(樹脂)、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、トリアルキルシリルアクリレート(共)重合体(シリル系樹脂)、石油樹脂等の難あるいは非水溶性樹脂(以下、難/非水溶性樹脂ともいう)が挙げられる。
【0162】
<その他の充填剤、難燃剤、チクソトロピー性付与剤、熱伝導改良剤、接着成分など>
上記した以外の充填剤としては、けいそう土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物あるいはこれらの表面をシラン化合物で表面処理したもの;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;その他、アスベスト、ガラス繊維、カーボンブラック、石英粉、水酸化アルミ、金粉、銀粉、表面処理炭酸カルシウム、ガラスバルーン等が挙げられる。これらの充填剤は、1種または2種以上併用してもよい。
【0163】
チクソトロピー性付与剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びこれらの誘導体等が挙げられる。難燃剤としては、酸化アンチモン、酸化パラフィンなどが挙げられる。熱伝導改良剤としては、窒化ホウ素、酸化アルミニウム等が挙げられる。接着成分としては、アルコキシシリル基、エポキシ基、ヒドロシリル基、アクリル基、ヒドロキシシリル基等の基を1種または2種以上含有する物質あるいはこれらの物質の混合物が挙げられる。
【0164】
<溶剤>
本発明で用いられる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物には、溶剤が含まれていてもよく、また含まれていなくともよいが、上記のような各種成分は、必要に応じて、溶剤に溶解もしくは分散して用いることができる。ここで使用される溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系、ケトン系、エステル系、エーテル系、アルコール系など、通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。上記芳香族系溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、例えば、MIBK、シクロヘキサノン等が挙げられ、エーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAC)等が挙げられ、アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0165】
このような溶剤は、任意の量で使用可能であるが、上記成分(b1)100重量部に対して例えば、0.1〜9999重量部の量で、好ましくは1〜50重量部の量で用いられる。また、溶剤は、湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に1〜99重量%、好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%となるような量で用いられる。このような量で溶剤を含む湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物の粘度(25℃、B型粘度計、3号ローター)は、塗工性(タレ性)、1回塗りで得られる膜厚などを考慮すると、例えば、0.01〜500ポイズ/25℃、好ましくは0.1〜200ポイズ
/25℃程度である。換言すれば、1〜50,000mPa・s、好ましくは10〜20,000mPa・s程度である。
【0166】
次に、本発明に係る第1〜第3のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(複合塗膜)について説明する。
まず、第1〜第2の複合塗膜について説明する。
【0167】
[第1〜第2のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜]
本発明に係る第1のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(第1の複合塗膜)は、タイコート(B)、およびオルガノポリシロキサン系防汚塗料を塗布、硬化してなる下記フィニッシュコート(C)が、基材側から海水などと接する表面に向かってこの順序(基材/(B)/(C))で密着した状態で積層して形成されて成っている。
【0168】
このような構成の本発明に係る第1の複合塗膜では、従来例に比して基材とフィニッシュコート間の層間接着強度の向上が図られており、優れた防汚性能を有し、防汚剤を不含であるため環境への負荷が殆どないなどの効果を奏する。
【0169】
また本発明に係る第2のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(第2の複合塗膜)では、「基材/一次防錆塗膜/(B)/(C)」の順序で密着した状態で積層されており、上記タイコート(B)の基材表面への塗設(塗装)に先立ち、基材表面には、上記したように予め一次防錆塗料が塗布、硬化されてなる一次防錆塗膜、特にエポキシ系防食塗膜が設けられている点で、第1の複合塗膜と相違する。
【0170】
このように、一次防錆塗膜が設けられている第2の複合塗膜では、第1の複合塗膜と同様の効果すなわち基材表面の一次防錆塗膜とフィニッシュコート間の層間接着強度の向上、優れた防汚性能、防汚剤を不含であるため環境への負荷が殆どないなどの効果を奏する他に、第1の複合塗膜に比して、防錆性の向上の点で優れるため望ましい。
【0171】
<タイコート(B)>
この第1〜第2の複合塗膜を構成するタイコート(B)は、前述したタイコートと同様のものである。
【0172】
このような本発明に係る第1の複合塗膜では、各塗膜の膜厚は特に限定されないが、タイコート(B)の膜厚は、例えば、50〜250μm(厚)程度であり、フィニッシュコート(C)の膜厚は、75〜300μm(厚)程度であり、これら全体の膜厚は、例えば、150〜550μm程度である。
【0173】
また、本発明に係る第2の複合塗膜では、一次防錆塗膜の膜厚は特に限定されないが、例えば、100〜500μm(厚)程度であり、タイコート(B)の膜厚は、例えば、50〜200μm(厚)程度であり、フィニッシュコート(C)の膜厚は、75〜300μm(厚)程度であり、これら全体の膜厚は、例えば、250〜1000μm程度である。
【0174】
<フィニッシュコート(C)>
タイコート(B)の表面に形成される上記フィニッシュコート(C)は、オルガノポリシロキサン系防汚塗料を塗布、硬化してなるが、特にその好ましい態様では、
(c1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む主剤、(c2)テトラアルコキシシリケートまたはその縮合物を含む硬化剤成分、および(c3)金属化合物を含む硬化促進剤成分から形成される3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物が塗布、硬化されて形成されている。
【0175】
このフィニッシュコート(C)を形成する際に用いられる3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物には、
主剤(c1)中の上記オルガノポリシロキサン(c1)100重量部に対して、硬化剤成分(c2)中のテトラアルコキシシリケートまたはその縮合物からなる硬化剤は、通常0.5〜15重量部、好ましくは1〜10重量部の量で、および、
硬化促進剤成分(c3)中の金属化合物からなる硬化促進剤は、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部の量で含まれていることが望ましい。
【0176】
なお、上記配合比の説明では、オルガノポリシロキサン(c1)には、主剤(c1)中のシリカに代表される体質顔料、着色顔料、溶剤などは含まれない。また、テトラアルコキシシリケートまたはその縮合物からなる硬化剤には、硬化剤成分(c2)中の溶剤などは含まれない。また、金属化合物からなる上記硬化促進剤には、硬化促進剤成分(c3)中の溶剤などは含まれない。
【0177】
また、上記主剤(c1)と硬化剤成分(c2)と硬化促進剤成分(c3)との配合比は、
これらの合計(c1+c2+c3)100重量部中に、主剤(c1)が50〜85重量部の量で、硬化剤成分(c2)が10〜40重量部の量で、また硬化促進剤成分(c3)が1〜10重量部となる量で含まれていることが、塗装作業性などの点から望ましい。
【0178】
この3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物は、保存、管理、運搬に際しては、(c1)〜(c3)をそれぞれ別の容器に保管して自己縮合反応、架橋反応などの反応の進行を阻止し、使用時にこれら成分(c1)〜(c3)を一緒にして用いればよい。
【0179】
この3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物は、これら成分(c1)〜(c3)を一緒にすると、通常、加熱すれば勿論のこと、室温(15〜25℃)程度の温度でも硬化反応が進行するので、特に加熱の必要はないが、必要により加熱し反応をより促進させ、また、加熱、送風等を行うことにより強制的に溶剤を揮散、除去するようにしてもよい。
【0180】
また、基材表面へ一次防錆塗膜(A)、タイコート(B)、フィニッシュコート(c)などを設けるに際しては、これらの各塗膜(層)が完全に乾燥、硬化した後に、次の塗膜(層)を形成してもよいが、層間接着性を高める上では、例えば、タイコート(B)が、完全に硬化していない指触半硬化の段階で、フィニッシュコートを塗布し、硬化させると、各層の均一肉厚が確保でき、しかも層間接着強度を高めることができる点で、より好ましい。また各層は、1回〜複数回塗装することにより、所望の厚さになるようにしてもよい。
【0181】
なお、3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物の塗装に際しては、従来より公知の塗装機などを使用することができる。
以下、3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物を構成する各成分(c1)〜(c3)について説明する。
【0182】
(c1)主剤
(c1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む主剤は、湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中のオルガノポリシロキサンと同様に、後述する一般式[α]で表されるものに包含されるが、特に、そのうちでも下記式[c1]で表されるものが好ましい。
【0183】
【化2】

(式[c1]中、Wは縮合性官能基である水酸基(−OH)または加水分解性基、好ましくは水酸基を示し、Rは、それぞれ独立に炭素数1〜12の非置換または置換の1価炭化水素基を示し、複数のRは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、nは5以上、好ましくは8以上の整数を示す。)
【0184】
Wは、式[α]中のWと同様のものであり、このような加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アシロキシ基、アルケニルオキシ基、イミノキシ基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基等が挙げられる。
【0185】
Rは、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、ビニル基、アリル基などを示し、複数のRは、互いに同一でも異なっていてもよく、好ましい態様では、複数のRは、全て同一の基を示す。
【0186】
本発明では、上記式[c1]で表されるオルガノポリシロキサン(c1)を1種または2種以上組合わせて用いることができる。
このようなオルガノポリシロキサン(c1)として、具体的には、例えば、α,ω−ジヒドロキシジメチルポリシロキサン(n=5〜3000個)等が挙げられる。
【0187】
このようなオルガノポリシロキサン(c1)は、粘度が20〜20万mPa・s程度、好ましくは1000〜5万mPa・s程度、特に好ましくは2000〜2.5万mPa・s程度で、オリゴマー状あるいはポリマー状である。
【0188】
この主剤(c1)には、上記オルガノポリシロキサン(c1)の他に、シリカ(商品名「アエロジル」)等の充填剤、着色顔料、溶剤(例:キシレン)、後述するシリコーンオイル(c4)等が含まれていてもよい。
【0189】
なお、このような主剤(c1)中におけるオルガノポリシロキサン(c1)などの含有量は、特に限定されないが、例えば、通常、60〜80重量%程度で、充填剤は、5〜10重量%程度で、着色顔料は、通常10〜20重量%程度で、また溶剤は、通常、20〜40重量%程度で含まれている。
【0190】
(c2)硬化剤成分
(c2)硬化剤成分中のテトラアルコキシシリケート(テトラアルコキシシラン)またはその縮合物としては、そのアルキル基Rが、直鎖状、分岐状または脂環状の何れタイプのアルキル基であってもよく、その炭素数が1〜10、好ましくは1〜8程度の直鎖状または分岐状アルキル基;炭素数が3〜6のシクロアルキル基;が好ましい。このような直鎖状あるいは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基、特に好ましくはメチル基が挙げられ、脂環状のアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0191】
このようなテトラアルコキシシリケート中の複数のアルキル基Rは、互いに同一でも異なっていてもよいが、通常では、同一であることが望ましい。
このようなテトラアルコキシシリケート(テトラアルコキシシラン)としては、具体的には、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラ(2−エチルブトキシ)シラン、テトラオクトキシシラン、などが挙げられる。
【0192】
また、テトラアルコシキシランの縮合物としては、上記テトラアルコキシシランが、平均1.2〜5.0個程度縮合したものが挙げられる。
本発明においては、この硬化剤成分(c2)には、テトラアルコキシシリケート(テトラアルコキシシラン)またはその縮合物の他に、後述するシリコーンオイル(c4)、溶剤等が含まれていてもよい。
【0193】
なお、このような硬化剤成分(c2)中におけるテトラエトキシシランなどの硬化剤は、例えば、10〜20重量%の量で、メチルフェニルシリコーンオイル等の非縮合反応性のシリコーンオイルは、成分(b2)中に、30〜60重量%の量で、また
キシレンなどの有機溶剤は、成分(b2)中に、30〜60重量%の量で含まれていることが塗装作業性、塗料の取扱い性の点で望ましい。
【0194】
(c3)硬化促進剤成分
(c3)硬化促進剤成分中の金属化合物からなる硬化促進剤としては、好ましくは錫化合物類、具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫メチルカプチドなどの有機錫が望ましいが、後述する湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物の製造の際に必要により用いられるオルガノシロキサン硬化触媒を1種または2種以上組合わせて用いることもできる。
【0195】
本発明においては、上記(c1)〜(c3)のうちの何れか1種以上の成分に、縮合性官能基を有しない下記のオルガノポリシロキサン(c4)、(別名、シリコーンオイル)が含まれていてもよい。
【0196】
なお、このような硬化剤成分(c3)中におけるジブチルアセテートなどの硬化促進剤は、例えば、10〜20重量%の量で、アセチルアセトン等の有機溶剤は、成分(c3)中に、80〜90重量%の量で含まれていることが塗装作業性、塗料の取扱い性の点で望ましい。
【0197】
<シリコーンオイル(c4)>
本発明で用いられる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物は、本願出願人らが先に提案した特開2001−181509号公報の[0058]〜[0071]欄に記載したようなシリコーンオイル(c4)を含んでいてもよい。
【0198】
このようなシリコーンオイル(c4)としては、非反応性(非縮合性)のシリコーンオイル(例:シリコーンオイル[II]、[IV])や湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物の硬化物中からブリードアウトしていくシリコーンオイル(例:下記式[III] で示される基を有するシリコーンオイル)なら特に制限されないが、好ましくは下記式[II]、[IV]で示される非反応性のシリコーンオイルが望ましい。
【0199】
このようなシリコーンオイル(c4)のうちでシリコーンオイル[II]、[IV]は、前記成分(c1),(c2)などとの反応性や自己縮合性を示さず、塗膜表面(層)に防汚機能層(膜)を形成する働きを有していると考えられ、またシリコーンオイル[III]は、塗膜形成成分となる成分(c1)などと反応し、硬化塗膜を形成し、長期間海水に浸漬されていると経時的に加水分解され、末端基がアルコール性水酸基を有する基「≡Si−R4−OH」等となって次第に複合塗膜表面にブリードアウトし、海中生物付着防止効果を発揮するのであろうと考えられる。
【0200】
(R23SiO(SiR32O)nSi(R23 ・・・・・[II]
(式[II]中、複数個のR2は互いに同一または異なってもよく、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはフルオロアルキル基を示し、複数個のR3は互いに同一または異なってもよく、各R3は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはフルオロアルキル基を示し、nは0〜150の数を示す。)
≡SiR4OSiR5b3-b ・・・・・[III]
(式[III]中、R4は非置換または置換の2価炭化水素基またはエーテル結合を含む2価炭化水素基を表し、R5は非置換または置換の1価炭化水素基、Yは加水分解性基、bは0,1または2である。)
6xSi(R7−Z)y(4-x-y)/2 ・・・・・[IV]
(式[IV]中、R6は、水素原子、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、R7は、エーテル基、エステル基または−NH−が介在していてもよい炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基を示し、Zは、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基または末端が炭素数1〜6のアルキル基もしくはアシル基で封鎖されていてもよいポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール基である1価の極性基を示し、x、yは、それぞれ0.01≦x<3.99、0.02≦y<4であり、かつ、0.02≦x+y<4を示す。)。
【0201】
上記シリコーンオイル(c4)のうち、シリコーンオイル[II]としては、特開平10−316933号公報に記載されているようなものが使用でき、数平均分子量Mnが180〜20,000、好ましくは1,000〜10,000であり、粘度が20〜30,000mPa・s、好ましくは50〜3,000mPa・sであるものが望ましい。
【0202】
このようなシリコーンオイル[II]としては、例えば、R2、R3の全てがメチル基であるジメチルシリコーンオイル、これらのジメチルシリコーンオイルのメチル基の一部がフェニル基に置換されたフェニルメチルシリコーンオイルが挙げられ、なかでもメチルフェニルシリコーンオイルが好ましい。
【0203】
また、上記式[III]で示され基を有するシリコーンオイル(シリコーンオイル[III])としては、本願出願人らの提案した特許第2522854号公報に記載されているものが使用でき、数平均分子量が250〜20,000、好ましくは1,000〜10,000であり、粘度が20〜30,000mPa・s、好ましくは50〜3000mPa・sのものが望ましい。
【0204】
≡Si-R4-O-SiR5b3-b ・・・・・[III]
(式[III]中、R4は非置換または置換の2価炭化水素基またはエーテル結合を含む2価炭化水素基を表し、R5は非置換または置換の1価炭化水素基、Yは加水分解性基、bは0,1または2である。)
【0205】
上記R4としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキサメチレン基等のような非置換または置換の2価炭化水素基;または、「−(CH2p−O−(CH2q−」(式中、p、qはそれぞれ独立に1〜6の整数を示す。)等で示されるエーテル結合を含む2価炭化水素基;等が挙げられる。
【0206】
5としては、上記式[I]におけるR1と同様に、炭素数1〜8の非置換または置換の1価炭化水素基を示す。Yは、上記式[I]における加水分解性基Xと同様の基を示す。このような式[III]で示される基を少なくとも1個有するシリコーンオイル[III]としては、具体的には、例えば、上記特許第2522854号公報に記載されているような、(CH33SiO[(CH32SiO]m[R78SiO]n(CH32SiC36−OH、HO−C36−[(CH32SiO][(CH32SiO]m[R78SiO]n−(CH32Si−C36−OH、(CH33SiO[(CH32SiO]m[R78SiO]n[(CH3)(C36−OH)SiO]l[(CH32SiCH3]で表されるシリコーンオイルの水酸基を加水分解基で封鎖したもの等が挙げられる。但し、上記各式中、R7、R8としては、フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、β−フェニルエチル基等のアラルキル基;トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;等のように、R7、R8のうち少なくとも一方がメチル基以外の基から選択される非置換または置換の1価炭化水素基が挙げられる。m、n、lは何れも正数を示す。
【0207】
また、得られる組成物の保存安定性の点から、下記に例示するように、上記のシリコーンオイルを、式:「R5bSiY3-b」(R5、Y、bは式[III]の場合と同様。)で示されるオルガノシランと反応させたものでもよい。(CH33SiO[(CH32SiO]m[R78SiO]n(CH32SiC36−O−R5bSiY3-b、HO−C36−[(CH32SiO][(CH32SiO]m[R78SiO]n−(CH32Si−C36−O−R5bSiY3-b、(CH33SiO[(CH32SiO]m[R78SiO]n[(CH3)(C36−O−R5bSiY3-b)SiO]l[(CH32SiCH3]など。
【0208】
シリコーンオイル[IV]としては、具体的には、特開平10−316933号公報に記載されているようなものが使用でき、数平均分子量Mnが250〜30,000好ましくは1,000〜20,000であり、粘度が20〜30,000mPa・s好ましくは50〜3,000mPa・sであるものが望ましい。
【0209】
6xSi(R7−Z)y(4-x-y)/2 ・・・・・[IV]
(式[IV]中、R6は、水素原子、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基、アリール基またはアラルキル基を示し、R7は、エーテル基、エステル基または−NH−が介在していてもよい炭素数1〜10の2価脂肪族炭化水素基を示し、Zは、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基または末端が炭素数1〜6のアルキル基もしくはアシル基で封鎖されていてもよいポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール基である1価の極性基を示し、x、yは、それぞれ0.01≦x<3.99、0.02≦y<4であり、かつ、0.02≦x+y<4を示す。)。
【0210】
このようなシリコーンオイル[IV]としては、好ましくは、上記式[IV]において、R6が、メチル基またはフェニル基であり、R7が、メチレン基、エチレン基またはプロピレン基であるものが望ましい。またZとしては、末端が炭素数6以下のアルキル基もしくはアシル基で封鎖されていてもよいポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール基である場合、繰り返し単位としてのオキシエチレン、オキシプロピレンの数は10〜60が好ましい。また、末端封鎖用の上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、末端封鎖用の上記アシル基としては、ケトオキシム基、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
【0211】
具体的には、極性基Zがアミノ基であるシリコーンオイルとしては、「SF8417」(東レダウコーニング社製)、「ISI4700、ISI4701」(東芝シリコーン社製)、「FZ3712、AFL−40」(日本ユニカー社製)等が挙げられる。極性基Zがカルボキシル基であるシリコーンオイルとしては、「XI42−411」(東芝シリコーン社製)、「SF8418」(東レダウコーニングシリコーン社製)、「FXZ4707」(日本ユニカー社製)等が挙げられる。また極性基がエポキシ基であるシリコーンオイルとしては、「SF8411」(東レダウコーニングシリコーン社製)、「XI42−301」(東芝シリコーン社製)、「L−93,T−29」(日本ユニカー社製)等が挙げられる。極性基Zがアルキル基またはアシル基であるシリコーンオイルとしては、「ISI4460,ISI4445、ISI4446」(東芝シリコーン社製)、「SH3746、SH8400、SH3749、SH3700」(東レダウコーニングシリコーン社製)、「KF6009」(信越シリコーン社製)等が挙げられる。
【0212】
本発明においては、このようなシリコーンオイル(c4)、好ましくは、シリコーンオイル[II]、シリコーンオイル[III]及びシリコーンオイル[IV]のうちの何れか1種または2種以上が、上記成分(c1)中のオルガノポリシロキサン(c1)100重量部に対して、合計で、0.1〜200重量部、好ましくは20〜100重量部の量で、3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物中に含まれていることが望ましい。
【0213】
なおシリコーンオイル(c4)は、結果的に上記量で3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物中に含まれている限り、3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物中の主剤(c1)、硬化剤成分(c2)あるいは硬化促進剤成分(c3)の少なくとも何れか1つの成分に含有されていてもよく、また、2種以上の成分に含有されていてもよい。
【0214】
このシリコーンオイル(c4)量が上記範囲にあると、例えば、防汚性、塗膜強度共に優れた(防汚)塗膜すなわちフィニッシュコート(C)が得られる傾向があり、上記範囲より少ないと防汚性が低下し、また上記範囲を超えて多いと塗膜強度が低下することがある。
【0215】
[第3のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜]
本発明に係る第3のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(第3の複合塗膜とも言う。)は、基材表面上に存在し、修繕塗装又は塗り直し塗装すべき古い防汚塗膜である旧防汚塗膜(G)、及び該旧防汚塗膜(G)の表面に密着して形成された新防汚塗膜から構成されている。
【0216】
すなわち、この第3の複合塗膜では、[基材/旧防汚塗膜(G)/新防汚塗膜]の順で密着した状態で積層されており、前記第2の複合塗膜との主な相違点は、オルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(新防汚塗膜)が基材表面に残存・付着している旧防汚塗膜(G)表面に設けられる点にあり、このように旧防汚塗膜(G)表面に、前記本発明に係る新防汚塗膜である第2の複合塗膜((A)/(B)/(C))が形成される点以外は、前記第2の複合塗膜と同様である。
以下、新防汚塗膜のベースとなるこの旧防汚塗膜(G)の好適な態様についてはじめに説明する。
【0217】
<旧防汚塗膜(G)>
旧防汚塗膜(G)は、これから塗装しようとする船舶、水中構造物、漁具または漁網などの被塗物基材の表面、特に鋼製船舶の基材表面に既に形成され残存している塗膜であり、船舶を運行することによりまた、海水や淡水に洗われることなどに伴い塗膜に剥離、摩耗などが生じており、基材の保護や、基材表面への水中生物の付着防止を図る上で、修繕塗装や塗り直しが必要となっている塗膜である。
【0218】
本発明では、修繕塗装または塗り直し塗装すべき古い防汚塗膜である「旧防汚塗膜(G)」としては、例えば、下記の旧防汚塗膜(g1)〜(g4)の他に後述する旧防汚塗膜(g5)などが挙げられる。本発明では、これらのうちでも、その表面に塗装される後述する「新防汚塗膜」との層間剥離強度が大きく付着性に優れ、新防汚塗膜の厚膜化が可能であり、しかも環境にやさしい新防汚塗膜を選択可能であるなどの点を考慮すると、下記の旧防汚塗膜(g1)、(g2)、(g3)、(g4)からなる群から選ばれた少なくとも1種の防汚塗膜であることが好ましい。
【0219】
(g1)不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜、
(g2)(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜、
(g3)有機錫ポリマー系防汚塗膜、および
(g4)ロジン及びその誘導体のうちから選択される1種または2種以上の水溶性樹脂を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜。
以下、はじめに、旧防汚塗膜(g1)〜(g4)について詳説する。
【0220】
不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体を含む防汚塗料よりなる旧防汚塗膜(g1)
このような不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体を含む防汚塗料より形成された旧防汚塗膜(g1)としては、例えば、本願出願人が先に提案した特開2004−196957号公報、特開2003−261816号公報、特開2003−183567号公報、特開2002−256176号公報、特開2002−206069号公報等に記載の不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体などを含む防汚塗料を塗布、硬化して形成される防汚塗膜;あるいは、
日本油脂(株)等が提案した特開平11−279455号公報、特願2001−578566号に対応する国際公開番号:WO01/081489号パンフレットに記載の有機珪素エステル基含有重合体(具体的には、トリ有機珪素エステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体、マレイン酸エステル共重合体及びフマール酸エステル共重合体など。)などを含む防汚塗料を塗布、硬化して形成される防汚塗膜;
が挙げられる。
【0221】
このような旧防汚塗膜(g1)を形成する際に用いられる不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体の一つとして、特開2002−256176号公報の[0055]〜[0061]等に記載の重合性不飽和カルボン酸シリルエステル含有共重合体が挙げられる。
【0222】
すなわち、式(g10):A1−COO−Si(L123) ・・・・・(g10)
[式(g10)中、A1は、CH2=C(CH3)−、CH2=CH−、HOOC−CH=CH−、HOOC−CH=C(CH3)−等の不飽和結合含有有機基を示し、−COOHは金属塩またはエステルを形成していてもよい。L1、L2、L3は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数C1〜20の範囲にあり、鎖式アルキル基、脂環式アルキル基、芳香族炭化水素基、アラルキル基およびそれらの置換体のいずれかを示す。]で表わされる重合性不飽和カルボン酸シリルエステル単量体およびこれと共重合可能な不飽和単量体を共重合してなる共重合体が挙げられる。
【0223】
このような旧防汚塗膜(g1)を形成する際に用いられる不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体のうちでも、シリル(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−Si R234 ・・・・・(g1)
{式(g1)中、R1は水素またはメチル基を示し、R2、R3およびR4はそれぞれC1〜20のアルキル基を示す。}から誘導された成分単位を含有するシリルエステル共重合体であることが好ましい。
【0224】
(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体を含む防汚塗料よりなる旧防汚塗膜(g2)
(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体を含む防汚塗料より形成される旧防汚塗膜(g2)としては、例えば、本願出願人が先に提案した特開2002−256176号公報の[0021]〜[0032]等に記載の「金属原子に結合したヒドロキシ基不含の重合性不飽和カルボン酸金属塩成分単位含有共重合体」などを含む防汚塗料を塗布、硬化してなる防汚塗膜が挙げられる。
【0225】
すなわち、この旧防汚塗膜(g2)を形成する際に用いられる共重合体としては、式(g20):A1−COO−M−Ln ・・・・・(g20)
[式(g20)中、A1は、CH2=C(CH3)−、CH2=CH−、HOOC−CH=CH−、HOOC−CH=C(CH3)−のうちのいずれかの式で表わされる不飽和結合を含有する有機基を示し、−COOHは金属塩またはエステルを形成していてもよい。Mは金属原子を示し、Lは有機酸残基:−OCOR2を示し、R2はC1〜25の範囲にあり、鎖式アルキル基、脂環式アルキル基、芳香族炭化水素基、アラルキル基、あるいはCH2=C(CH3)−、CH2=CH−等の不飽和炭化水素基のいずれかを示し、nは金属Mの原子価数−1の数を示す。]で表わされる重合性不飽和カルボン酸金属塩から誘導される成分単位を分子内に有する共重合体が挙げられる。
【0226】
このような(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体のうちでも、旧防汚塗膜(G)を形成する際に用いられる共重合体は、有機一塩基酸金属(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−M−O−CO−R2・・・・・(g2)
{式(g2)中、Mは2価の金属を示し、R1は水素またはメチル基を示し、R2は有機一塩基酸残基を示す。}から誘導された成分単位を含有する共重合体であることが好ましい。
【0227】
また本発明では、旧防汚塗膜(G)を形成する際に用いられる、上記(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する架橋性共重合体が、金属ジ(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)-COO-M-O-CO-C(R1)=CH2・・・・・(g21)
{式(g21)中、Mは2価の金属を示し、2つのR1は、それぞれ独立に水素またはメチル基を示す。}から誘導された成分単位を含有する架橋性共重合体であることが好ましい。
【0228】
有機錫ポリマー系防汚塗膜(g3)
有機錫ポリマー系旧防汚塗膜を形成している樹脂成分の有機錫ポリマーとしては、特開平10−176125号公報の[0003]に記載の、有機錫含有不飽和単量体の単独重合体又は共重合体(特公昭40−21426号公報、特公昭44−9579号公報、特公昭46−13392号公報、特公昭49−20491号公報、特公昭51−11647号公報、特公昭51−12049号公報、特公昭52−48170号公報等参照)、特開平6−200189号公報([0010])、英国特許第1589246号明細書あるいは米国特許4021392号明細書に記載の有機錫(コ)ポリマー等が挙げられる。
【0229】
例えば、英国特許第1589246号明細書に記載の有機錫系コポリマーは、50〜80重量%の量の少なくとも1種のオレフィン不飽和カルボン酸のトリ−オルガノスズ塩成分単位と、残部量(20〜80重量%)の少なくとも1種のオレフィン不飽和コモノマーの成分単位が存在する有機スズ系コポリマーである。
【0230】
本発明ではこれら従来より公知の有機錫ポリマー系防汚塗膜のうちでは、トリアルキル有機錫コポリマー(アルキル基の炭素数:1〜10、好ましくは3〜6)が望ましく、特に、トリブチル錫ポリマーが従来最も多用されてきており、上塗される塗膜との付着性に優れる、塗膜強度に優れるなどの点で最も好ましい。
【0231】
水溶性樹脂を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜(g4)
防汚塗膜(g4)は、水溶性樹脂(イ)が含まれた防汚塗料から形成されている。
また、本発明では、この水溶性樹脂(イ)と、水に難溶性の樹脂(ロ)とが含まれた防汚塗料から形成されていても良い。該防汚塗膜における(イ)と(ロ)の配合比は特に限定されないが、通常、(イ)+(ロ)の合計100重量部中に、水溶性樹脂(イ)が10〜90重量部程度の量で含まれていることが多い。
【0232】
水溶性樹脂(イ)としては、例えば、ロジン及びその誘導体などが挙げられる。これらのロジン及びその誘導体としては、本願出願人が先に提案した特開2002−3776号公報の[0119]、特開2001−26729号公報の[0073]等に記載のロジンまたはその誘導体が挙げられる。
【0233】
すなわち、ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。ロジン誘導体としては、例えば、不均化ロジン、低融点不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、マレイン化ロジン、アルデヒド変性ロジン、ロジンのポリオキシアルキレンエステル、還元ロジン(ロジンアルコール)、ロジンの金属塩(ロジンの銅塩、亜鉛塩、マグネシウム塩など)、ロジンアミン等が挙げられる。これらのロジンおよびその誘導体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0234】
なお、このロジン等が樹脂分(ビヒクル、マトリックス)として含まれた防汚塗膜(g4)は、「溶解マトリックス型」または「水和分解型」の防汚塗膜である。また、上記(g1)、(g2)、(g3)は、加水分解型であり、塗膜表層のポリマーが海水と接触して加水分解反応することにより自己溶解し、表面更新されることで防汚性を発揮する。
【0235】
水に難溶性の樹脂(ロ)としては、具体的には、例えば、塩化ビニル樹脂、変性ビニル樹脂(例:酢酸ビニル系樹脂)、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体および不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体等が挙げられる。
【0236】
このような(g1)〜(g4)の如き旧防汚塗膜(G)の表面に、上記(A)エポキシ系シーラーコート、(B)タイコート、および(C)オルガノポリシロキサン系フィニッシュコートがこの順序で形成されていると、優れた防汚性、層間接着性などが発揮される。
【0237】
オルガノポリシロキサン系旧防汚塗膜(g5)
なお、上記(g1)〜(g4)以外の旧防汚塗膜としては、例えば、オルガノポリシロキサン系旧防汚塗膜(g5)がある。
【0238】
このオルガノポリシロキサン系旧防汚塗膜(g5)は、タイコート(B)およびフィニッシュコート(C)の何れとも付着性は良好である。しかし、旧防汚塗膜(g5)は、上記(A)エポキシ系シーラーコートとの付着性に劣る。そのため、このオルガノポリシロキサン系旧防汚塗膜(g5)の表面には、上記(A)エポキシ系シーラーコートを塗装することなく、層構成が[(g5)/(B)/(C)]、もしくは[(g5)/(C)]となるように、タイコート(B)およびフィニッシュコート(C)を順次設けると防汚性、付着性等に優れた防汚塗膜を形成できる。
【0239】
オルガノポリシロキサン系旧防汚塗膜(g5)としては、例えば、本願出願人らが先に提案した特許第2522854号公報、特開2001−181509号公報等に記載された、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを縮合させて形成された旧防汚塗膜;あるいは、
特開平9−176576号公報に記載されたオキシアルキレン基含有鎖状オルガノポリシロキサン(すなわちポリエーテル変性シリコーンオイル)を含む防汚剤組成物を塗布、硬化してなる旧防汚塗膜;
などが挙げられる。
【0240】
特に本発明では、上記オルガノポリシロキサン系旧防汚塗膜(g5)が、特開2001−181509号公報の[0029]〜[0042]に記載の「オルガノポリシロキサン(A)」である、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを縮合させて形成された防汚塗膜であることが好ましい。
【0241】
具体的には、この旧防汚塗膜(G)を形成する際に用いられるオルガノポリシロキサンは、前記タイコートを形成する際の湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物中に含まれるオルガノポリシロキサン[α]と同様に、下記式[α]:
【0242】
【化3】

(式[α]中、Wは水酸基(−OH)または加水分解性基を示し、R1、Rは、それぞれ独立に炭素数C1〜12の非置換または置換の1価炭化水素基を示し、複数のR1、Rは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、nは5以上の整数を示し、aは0、1または2を示す。)で表されるものが望ましい。
【0243】
この式[α]において、a=0、1である場合には、Wは加水分解性基であり、a=2である場合には、Wは水酸基(−OH)であることが望ましい。
このオルガノポリシロキサン[α]は、前記タイコート形成用原料のオルガノポリシロキサン(b1)あるいは、後述する新防汚塗膜中のタイコート(B)中の「分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)」あるいは、前記フィニッシュコート(C)中の主剤成分(c1)を形成するものと同様のものである。このようなオルガノポリシロキサン系旧防汚塗膜と下記新防汚塗膜とは、同様のポリマー成分を含んでおり、密着性などに優れる傾向がある。
【0244】
<新防汚塗膜>
新防汚塗膜は、好ましくは上記旧防汚塗膜(G)の表面に形成されるが、この新防汚塗膜としては、前述したような層構成の本発明に係る第2のオルガノポリシロキサン系複合塗膜を形成している(A)層/(B)層/(C)層と同様のものであることが望ましい。
【0245】
すなわち、この新防汚塗膜は、エポキシ系シーラーコート(A)、タイコート(B)、およびオルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)からなり、これら各塗膜(層)が、基材側から主に海水と接触する面である表面に向かってこの順序(旧防汚塗膜(G)/(A)/(B)/(C):表面)で積層した状態で密着、接合して形成されている。
【0246】
また、この新防汚塗膜では、シーラーコート(A)の膜厚は特に限定されないが、例えば、50〜500μm(厚)程度であり、タイコート(B)の膜厚は、例えば、50〜200μm(厚)程度であり、フィニッシュコート(C)の膜厚は、75〜300μm(厚)程度であり、これら全体の膜厚は、例えば、250〜1000μm程度である。
【0247】
シーラーコート、特にエポキシ系シーラーコート(A)
この下塗塗膜(A)としては、前記<基材および下塗塗膜>の項で詳説したものがそのまま好適に適用される。
【0248】
すなわち、新防汚塗膜を構成し、旧防汚塗膜(G)と直接被着するシーラーコート(A)としては、前述したようなジンク系ショッププライマー、エポキシ樹脂系防食塗料などと称されるものが好ましい。
【0249】
タイコート(B)
このタイコートとしては、前記[オルガノポリシロキサン系防汚塗膜用タイコート]の項で詳説したものがそのまま好適に適用される。
【0250】
新防汚塗膜を構成する上記タイコート(B)は、結合塗膜、プライマーコートともいい、このタイコート(B)は、上記のシーラーコート(A)すなわち下塗塗膜(層A)の表面に、最外層のオルガノポリシロキサン系防汚塗膜(層C)を形成するに先立って、中塗層として形成される。
【0251】
該タイコート(B)は、前述したような特定の湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物を塗布、硬化させることにより形成される。
【0252】
フィニッシュコート(C)
タイコート(B)の表面に形成される上記フィニッシュコート(C)は、オルガノポリシロキサン系防汚塗料を塗布、硬化してなるが、特にその好ましい態様では、前記フィニッシュコート(C)の項で詳説したと同様のものがそのまま好適に適用される。
【0253】
[発明の効果]
本発明によれば、防汚剤を実質上含有せず環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚塗膜を基材や下塗塗膜等の表面に形成するに先立って、これら基材等の表面に予め特定のタイコート(結合塗膜、プライマーコート)を形成しているので、タイコートの下面に位置する基材や一次防錆塗膜などの下塗層と、最外層(フィニッシュコート)となる、防汚剤を含有せず環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚塗膜とを強固に結合でき、しかも、タイコート自体がある程度の厚みを有し、また、環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系塗料から形成されているから、フィニッシュコートをそのタイコート表面に設けることにより、厚肉で、優れた防汚性、層間接着強度を有する複合塗膜を容易に形成できる。
【0254】
また本発明によれば、基材や下塗塗膜等の表面に、上記タイコートと、オルガノポリシロキサン系防汚塗膜(フィニッシュコート)とを順次積層して複合塗膜を形成しているので、基材や下塗塗膜(層)とフィニッシュコート間を強固に結合・付着させることができ、かつ、表面の防汚塗膜(層)は、表面自由エネルギー(表面張力)が小さく、そのため海中生物の付着が抑制、阻止され、汚染防除性(fouling-release)に優れている。
【0255】
その上に、本発明の好ましい態様の複合塗膜では、何れの塗膜(層)にも実質上、防汚剤を含有しないため、環境への負荷が少なく、ヒトや動植物への安全性に優れている。
特に、基材表面に下塗塗膜、特にエポキシ系ジンクリッチプライマーなどの一次防錆塗膜が設けられている第2の複合塗膜では、第1の複合塗膜と同様の効果すなわち、基材とフィニッシュコート間の層間接着強度の向上、優れた防汚性能、防汚剤を不含であるため環境への負荷が殆どない、などの効果を奏する他に、第1の複合塗膜に比して、防錆性の向上などの点で優れる。
【0256】
また、上記タイコートや、複合塗膜を構成している各層などの形成の際に、各塗料中にシランカップリング剤が配合されてなるタイコートや複合塗膜では、基材あるいは下塗層とタイコート、タイコートとフィニッシュコートなどの各層同士は密着性(層間剥離強度)に一層優れる傾向がある。
また、タイコートやフィニッシュコートに非反応性のシリコーンオイルが含まれていると、経時的に、塗膜表面にシリコーンオイルが滲出してくるため、より一層、海中生物の付着を効率的に阻止でき防汚性に優れる傾向がある。なお、シリコーンオイル自体は、毒性がないため、環境への負荷が増すことはない。
【0257】
特に、本発明に係る第3の複合塗膜は、修繕塗装または塗り直し塗装として、古い防汚塗膜(旧防汚塗膜)の上に塗装することにより形成され、該複合塗膜は新防汚塗膜の選択により厚膜化可能であり、古い塗膜とその表面に形成された新防汚塗膜との付着性に優れ、かつ防汚性に優れている。
このような旧防汚塗膜(G)の膜厚は、その消耗度等により、また部位により異なり、一様でないことが多い。新防汚塗膜は、仕上がり外観が平滑で、かつ上記第2の複合塗膜と同様の膜厚及び層構成となるように形成されることが望ましい。
【0258】
[実施例]
以下、本発明に係るオルガノポリシロキサン系防汚塗膜用タイコートおよび複合塗膜などについて具体的に説明するが、本発明は、係る実施例により何ら限定されるものではない。
【0259】
<<本発明に係るタイコート及び第1〜第2の
オルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜の試験例>>
[1:供試塗料の作成]
[1.1:オルガノポリシロキサン系タイコート(B)の作成]
[試験例BA]
<ケトオキシム基含有オルガノポリシロキサン(b0-iii)、2万mPa・s>
分子両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン400gと、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン11gとを室温で混合して反応させ、粘度が20000mPa・sであり、下記式(b0)で表される、オキシム基が導入されたオルガノポリシロキサン(b0-iii):
【0260】
【化4】

を得た。
【0261】
<加熱処理オルガノポリシロキサン(b2−2)>
次いで、第1の容器内に収容された上記ケトオキシム基含有オルガノポリシロキサン(b0-iii) 43重量部に、疎水性シリカ2重量部を添加して、150℃で2時間混合攪拌を行って、加熱処理オルガノポリシロキサン(b2−2)を得た。
【0262】
<ケトオキシム基含有オルガノポリシロキサン(b0-ii)、5000mPa・s>
一方、分子両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン400gと、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン11gとを室温で混合して反応させ、上記と同様にして得た、表1中の(b1)成分となる5000mPa・sのケトオキシム基含有オルガノポリシロキサン(b0-ii)を調製した。
【0263】
次いで、第2の混合容器(ディスパー、dispersing device)の中に、キシレン19.5重量部と、このケトオキシム基含有オルガノポリシロキサン(b0-ii)を31重量部入れて、十分に混合した。
【0264】
<タイコート用の湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物(BA)>
次いで、表1の試験例BAに示すように、第2の混合容器内のケトオキシム基含有オルガノポリシロキサン(b0-ii)のキシレン溶液中に、前記第1の容器内で予め調製された加熱処理オルガノポリシロキサン(b2−2)を加えて十分に混合した。
【0265】
その後、(c4)成分のポリジメチルシロキサン(1000mPa・s)を4重量部添加し十分に混合した。
次いで、(b3)成分の架橋剤(シランカップリング剤)であるメチルトリアセトキシシラン0.5重量部を添加し、配合成分が均一となるまで30分間混合して、タイコート用の湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物(BA)を得た。
【0266】
[試験例BB〜BL]
上記試験例BAにおいて、表1に示す成分を表に示す量(重量部)で用いた以外は、試験例BAと同様にしてタイコート用の湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物(BB〜BL)を得た。
【0267】
具体的には、あらかじめ、第1の容器内で、(b2−2)成分としての「加熱処理オルガノポリシロキサン」を上記と同様に調製した。
すなわち、第1の容器内で、上記と同様にして調製されたオキシム基含有オルガノポリシロキサン(b0-i:2000m・Pa・s)、(b0-ii:5000m・Pa・s)および(b0-iii:20000m・Pa・s)に、表1に示すように、疎水性シリカ及び/又は親水性シリカを所定量で添加し、150℃で2時間混合攪拌を行って、上記各加熱処理オルガノポリシロキサンを得た[(b2−2)成分]。
【0268】
一方、別の混合攪拌器である第2の(空の)混合容器内に、表1に示す量の溶剤を添加した。
次いで、この混合容器内に(b2−1)成分中の1成分である体質顔料(疎水性シリカ、炭酸カルシウム)、あるいは任意成分としての体質顔料(BDの場合)を表1に示す量で添加して室温下で十分に混合した。
【0269】
次いで、(b4)成分である着色顔料を添加して室温下で十分に混合した。
次いで、(b1)成分としての「オルガノポリシロキサン」を加えて室温下で十分に混合した。
【0270】
次いで、(b2−1)成分中の1成分であるオルガノポリシロキサン(非加熱用)を添加して室温下で十分に混合した。
次いで、第1の容器内で調製された(b2−2)成分としての前記「加熱処理オルガノポリシロキサン」を、この第2の混合容器内に添加して、室温下で十分に混合した。
【0271】
次いで、(b3)成分としてのシランカップリング剤を添加して室温下に十分混合した。
次いで、(C4)成分としてのシリコーンオイルを添加して室温下に十分に混合して、本発明に係るタイコート用の湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物(BB〜BL)を得た。なお、上記調製例で、表1中配合しないものは、その工程を省略すればよい。
【0272】
[1.2:オルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)の作成]
このフィニッシュコート(塗料)には、表2に示す配合組成を有し、下記のようにして調製した主剤(c1)、硬化剤成分(c2)、硬化促進剤成分(c3)が含まれている。
【0273】
主剤(c1)
分子両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(f01〜f03):
【0274】
【化5】

(n:繰り返し単位数。)
と、シリカとを室温で2時間混合し、室温処理オルガノポリシロキサン(f)を得た。
【0275】
さらに、上述の室温処理オルガノポリシロキサン(f)と、メチルフェニルシリコーンオイル(g)、着色顔料(h)、溶剤(i)とを表2に示す配合量で配合し、同上の攪拌装置で均一になるように十分に混合し、分散させて、フィニッシュコートの主剤(c1)とした。
【0276】
硬化剤成分(c2)
テトラエトキシシラン、およびその低次縮合物、メチルフェニルシリコーンオイル(g)、溶剤(i)を表2に示す配合量で配合し、攪拌装置で均一になるように十分に混合、分散させ、フィニッシュコート用の硬化剤(c2)とした。
【0277】
硬化促進剤成分(c3)
ジブチル錫ジラウレートと溶剤(i)とを表2に示す配合量で配合し、攪拌装置で均一になるように十分に混合、分散させ、フィニッシュコート用の硬化促進剤(c3)とした。
【0278】
塗装前処理
上述のようにして得られたフィニッシュコートの各成分を、塗装直前に混合し、攪拌装置で十分に分散して、オルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(CM〜CU)を得た。
【0279】
上記のようにして作成されたタイコート(BD)、フィニッシュコート(C)を用いて、下記に示すような方法で、複合塗膜[サンドブラスト鋼板/エポキシ系プライマー(A)/オルガノポリシロキサン系タイコート(BD)/オルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)が積層された複合塗膜]等を作成し、この複合塗膜について、下記の方法で、層間剥離強度、防汚性などを評価した。
【0280】
また、タイコート(B)についてもタレ止め性、レベリング性、層間接着性などを評価した。
【0281】
[2:供試塗料の塗装]
<2.1:エポキシ系プライマー(A)の塗装>
縦×横×厚み=30cm×10cm×2300μmであるサンドブラスト鋼板の表面に、「バンノー500」(中国塗料(株)製、エポキシ系防錆プライマー)を乾燥膜厚が125μm(厚)となるように室温で、スプレー塗装機(商品名:iwata WIDER SPRAY GUN、型番:W−77−2G)にて塗装した。その後、さらに同じ厚さとなるように、上記エポキシ系防錆プライマーを塗装し、プライマー総厚が250μm(厚)(=125μm×2度塗り)とした。
【0282】
<2.2:オルガノポリシロキサン系タイコート(BD)の塗装>
表1で示したオルガノポリシロキサン系タイコート(塗料)BDを、乾燥した上記エポキシ系プライマーの表面に、同上のスプレー塗装機にて、その乾燥膜厚が100μm(厚)となるように塗装し、フィニッシュコート形成に先立ちプライマー塗膜(層)すなわちタイコートを形成した。
【0283】
<2.3:オルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)の塗装>
表2で示したオルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(塗料)を、乾燥した(または半硬化の)上記タイコート(BD)の表面に、同上のスプレー塗装機にて、その乾燥膜厚が150μm(厚)となるように塗装した。
【0284】
[3:タイコートの評価方法]
[3.1:タイコートのタレ止め性の評価]
上記のように「バンノー500」を塗装した試験板を直立させ、表1に示す各タイコート組成物(BA〜BL)の乾燥膜厚が200μmになるようにそれぞれスプレー塗装を行い、各塗膜のタレを目視により確認した。
【0285】
[3.2:タイコートのレベリング性の評価]
基材表面にエポキシプライマーの「バンノー500」を125μm×2回=250μm厚となるように塗装してなるエポキシ系プライマー塗膜(A)の上に、表1に示すタイコートBA〜BLをそれぞれ200μmずつ塗装した。塗装直後の未乾燥塗膜を、直径2mmの針金で先端がバンノー500に達する程度の強さで引っかき、跡をつけた。この状態で塗膜を乾燥させ、塗膜のレベリング性を目視により評価した。
【0286】
[3.3:プライマー(層)/タイコート(層)間の層間剥離強度]
基材表面にエポキシプライマーの「バンノー500」を125μm×2回=250μm厚となるように塗装してなるエポキシ系プライマー塗膜(A)の上に、表1に示すタイコートBA〜BLをそれぞれ100μmずつ塗装した。
【0287】
タイコートに幅2mmの間隔で6本の切れ込みを平行に入れ、さらに、この切れ込みに対して90°(直角)の角度になるように、幅2mmの間隔で6本の切り込みを入れて、5×5=25個の格子状マス目を形成した。
【0288】
このマス目上に、シリコーン感圧力テープ[製造販売元:日東電工(株)製、型番:No.360UL]を貼り付けた後、引き剥がして、複合塗膜が残存しているマス目の数[残存マス目/25目中]でプライマー(層)/タイコート(層)間の付着強度(層間剥離強度)を評価した。[表1、本発明の試験例BA〜BL
結果を表1に示す。
【0289】
【表1】

[4:フィニッシュコートの評価方法]
[4.1:タイコート(層)/フィニッシュコート(層)間の剥離強度]
基材表面にエポキシプライマーの「バンノー500」を125μm×2回=250μm厚となるように塗装してなるエポキシ系プライマー塗膜(A)の上に、表1に示すタイコート(BD)をそれぞれ100μmずつ塗装した。
【0290】
次いで、タイコート(BD)の表面に、表2に示す組成のフィニッシュコート(CM〜CUのうちの何れか1種)をそれぞれ塗装し、複合塗膜を形成した。
複合塗膜に幅2mmの間隔で6本の切れ込みを平行に入れ、さらに、この切れ込みに対して90°(直角)の角度になるように、幅2mmの間隔で6本の切り込みを入れて、5×5=25個の格子状マス目を形成した。
【0291】
このマス目上に、シリコーン感圧力テープを貼り付けた後、引き剥がして、複合塗膜が残存しているマス目の数[残存マス目/25目中]でタイコート(層)/フィニッシュコート(層)間の付着強度(層間剥離強度)を評価した。
【0292】
[4.2:複合塗膜の防汚性]
複合塗膜を7日間乾燥した後、広島県の宮島湾にて30ヶ月間静置浸漬試験を行い、目視にて汚損生物の付着の状態から判断して防汚性の評価を行った。(本発明の試験例:CM〜CS、比較試験例:CT〜CU
結果を表2に示す。
【0293】
【表2】

[比較例S]
下塗り塗料として「バンノー500」を上記と同様に塗装(125μm(厚)×2回=250μm(厚))し、次いで、上述の表1の何れか1種のタイコートBA〜BL(組成物)を厚さ100μm厚になるように塗装した。(なお、表2のフィニッシュコートは塗装しなかった。)
次いで、23℃/55RH%の条件で1週間乾燥させたのち防汚性を確認したところ、いずれもスライム、ノリの付着が認められた。
【0294】
[比較例T]
下塗り塗料として「バンノー500」を上記と同様に塗装(125μm(厚)×2回=250μm(厚))し、次いで、上述のフィニッシュコートCM〜CU(組成物)を厚さ150μmになるように塗装した。(なお、表1のタイコートは塗装しなかった。)
ついで、23℃/55RH%の条件で1週間乾燥させたのち層間付着性を確認したところいずれも層間密着性に劣っていた。
【0295】
[比較例U]
実施例CMなどの場合と同様な複合塗膜を形成させる際に、フィニッシュコート(C)として(フィニッシュコートの主剤である)オルガノポリシロキサン(c1)を除いたフィニッシュコートを塗装したところ、フィニッシュコート組成物は非常にタレやすく、150μm厚の塗膜を形成することが困難であった。
【0296】
[比較例V]
実施例CMなどの場合と同様な複合塗膜を形成させる際、フィニッシュコート(C)として「テトラアルコキシシリケート、もしくはその縮合物を含む硬化剤成分(c2)」を除いたフィニッシュコートを塗装したところ、23℃/55RH%の条件で1週間乾燥させても塗膜が完全には硬化せず、塗料の取り扱いが困難であった。
【0297】
[比較例W]
実施例CMなどの場合と同様な複合塗膜を形成させる際、フィニッシュコート(C)として「硬化促進剤成分(ジブチル錫ジラウレートなどの金属化合物を含む)(c3)」を除いたフィニッシュコートを塗装したところ、23℃/55RH%の条件で1週間乾燥させても塗膜が完全には硬化せず、塗料の取り扱いが困難であった。
【0298】
<<旧防汚塗膜表面に形成された新防汚塗膜
(第3の複合塗膜)の試験例>>
[5.1:防汚剤溶出型塗料(Gc)の調製]
表3に示すように、亜鉛アクリレート樹脂もしくはシリルアクリレート樹脂と、亜酸化銅や有機防汚剤、着色顔料(チタン白)や体質顔料(タルク、亜鉛華)、各種添加剤(タレ止め剤、沈降防止剤)、溶剤(キシレン)を混合して、防汚剤溶出型塗料(Gc1〜Gc8)を調製した。
【0299】
なお、上記亜鉛アクリレート樹脂としては、以下に示すように、特開2004−196957号公報[0130]に記載の[製造例1]に準じて製造したものを用い、また、シリルアクリレート樹脂としては、同公報の[0152]に記載の[製造例30]に示す、「シリル(メタ)アクリレート共重合体(A2)の製造例」と同様にして製造したものを用いた。
【0300】
(亜鉛アクリレート樹脂合成用の金属含有単量体の製造)
本願出願人が先に提案した特開2004−196957号公報[0130]に記載の[製造例1]に示す、「金属含有単量体a1-1」と同様にして金属含有単量体を製造した。
【0301】
すなわち冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)85 .4部および酸化亜鉛40 .7部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸(MAA)43.1部、アクリル酸(AA)36.1部、水5部からなる混合物を3時間で等速滴下した。滴下終了後反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後プロピレングリコールメチルエーテルを36部添加して、金属含有単量体a1−1を含有する透明な混合物溶液Aを得た。得られた混合物溶液中における、塗膜(=固形物)を形成し得る成分、すなわち溶剤を除く成分(ここでは、固形分という。)である金属含有単量体(a1−1)は44.8重量%、また溶剤量は55.2重量%(全量100重量%)であった。
【0302】
(金属含有共重合体の1種である亜鉛アクリレート樹脂の製造)
本願出願人が先に提案した特開2004−196957号公報[0136]に記載の[製造例7]に示す、「金属含有共重合体A1−1の製造」と同様にして該共重合体を製造した。
【0303】
すなわち、冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル15部、キシレン57部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート1部、エチルアクリレート66.2部、2−メトキシエチルアクリレート5.4部、上記製造例で得た混合物溶液Aを52部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル、日本ヒドラジン工業(株))2.5部、AMBN(アゾビスメチルブチロニトリル、日本ヒドラジン工業(株))7部からなる透明な混合物を、6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後キシレンを4.4部添加して、淡黄色透明な樹脂組成物を得た。該樹脂組成物中の加熱残分(樹脂含量)は45.6%、ガードナー粘度はY、不溶解物はみられなかった。
【0304】
(シリル(メタ)アクリレート共重合体の製造例)
本願出願人が先に提案した特開2004−196957号公報[0152]に記載の[製造例30]に示す、「シリル(メタ)アクリレート共重合体(A2)の製造例」と同様にして該共重合体を製造した。
【0305】
すなわち、攪拌機、コンデンサー、温度計、滴下装置、窒素導入管、加熱・冷却ジャケットを備えた反応容器にキシレン100部を仕込み、窒素気流下で85℃の温度条件下に加熱攪拌を行った。同温度を保持しつつ滴下装置より、上記反応容器内にトリイソプロピルシリルアクリレート50部、メチルメタクリレート45部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート5部および重合開始剤の2,2'−アゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を2時間かけて滴下した。その後、同温度で4時間攪拌を行った後、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.4部を加え更に同温度で4時間攪拌を行い、シリル(メタ)アクリレート共重合体を含む無色透明の反応液を得た。
【0306】
【表3】

[5.2:シーラーコート(A)の調製]
表4に示すように、主剤成分として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂[ジャパンエポキシレジン(株)製、型番:エピコート♯834、♯1001]、体質顔料(タルク、アルミニウムペースト、硫酸バリウム、マイカ)、シランカップリング剤[信越化学工業(株)製、型番:KBM−403]、添加剤(沈降防止剤の粉末ポリアマイドワックス)、溶剤(キシレン、MIBK)を含むものと、
硬化剤成分としてポリアミド及び溶剤(n−ブタノール)を含むものと、
を混合して、シーラ−コート(A1〜A8)を調製した。
【0307】
【表4】

[5.3:タイコート(B)の調製]
タイコート(B)としては、前記表1に示すBA〜BLを用いた。
【0308】
[5.4:オルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)の調製]
このフィニッシュコート(塗料)には、表2のCM〜Csに示すものを用いた。
上記のようにして作成された防汚剤溶出型塗料(Gc)、シーラーコート(A)、タイコート(B)、フィニッシュコート(C)を用いて、下記に示すような方法で、複合塗膜[サンドブラスト鋼板/エポキシ系プライマー(Ga)・ビニル系バインダー(Gb)・防汚剤溶出型塗料(Gc)/シーラーコート(A)/オルガノポリシロキサン系タイコート(B)/オルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)]等を作成し、この複合塗膜について、下記の方法で、種々の層間の層間剥離強度、フィニッシュコートの防汚性などを評価した。
【0309】
[6:供試塗料の塗装]
<6.1:防汚剤溶出型塗料システム(G)の塗装>
縦×横×厚み=30cm×10cm×2300μmであるサンドブラスト鋼板の表面に、「バンノー500」(中国塗料(株)製、エポキシ系防錆プライマー(Ga))を乾燥膜厚が200μm(厚)となるように室温で、スプレー塗装機(商品名:iwata WIDER SPRAY GUN、型番:W−77−2G)にて塗装した。
【0310】
その後、「シルバックスSQ−K」(中国塗料(株)製、ビニル系バインダー(Gb))を乾燥膜厚が50μm(厚)となるように塗装した。
さらに、表3に示した防汚剤溶出型塗料(Gc)を、乾燥した上記バインダーの表面に、同上のスプレー塗装機にて、その乾燥膜厚が150μmとなるように塗装し、鋼板の表面に3層構成(Ga/Gb/Gc)の防汚剤溶出型複合塗膜(旧防汚塗膜(G)に相当する。)を形成した。
【0311】
<6.2:シーラーコート(A)の塗装>
表4で示したシーラーコートを、上記防汚剤溶出型複合塗膜(G)の表面に、同上のスプレー塗装機にて、その乾燥膜厚が100μm(厚)となるように塗装し、シリコーン塗料付着の基礎となるシーラーコート(層)を形成した。
【0312】
<6.3:オルガノポリシロキサン系タイコート(B)の塗装>
表1で示したオルガノポリシロキサン系タイコート(塗料)を、乾燥した上記シーラーコート(A)の表面に、同上のスプレー塗装機にて、その乾燥膜厚が100μm(厚)となるように塗装し、フィニッシュコート形成に先立ち、そのプライマー塗膜(層B)すなわちタイコート(B)を形成した。
【0313】
<6.4:オルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)の塗装>
表2のCM〜CSで示したオルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(塗料)を、乾燥した(または半硬化の)上記タイコートの表面に、同上のスプレー塗装機にて、その乾燥膜厚が150μm(厚)となるように塗装した。
【0314】
[7:評価方法]
[7.1:複合塗膜の作成]
<旧防汚塗膜(G)>
鋼板の表面に上記防汚剤溶出型複合塗膜(G)が形成された状態の塗膜付き鋼板を、広島県の宮島湾に12ヶ月間静置浸漬試験した後、塗膜表面を15MPaの高圧清水で洗浄した。次いで該塗膜(旧防汚塗膜(G)、旧塗膜とも言う。)を乾燥させた。
【0315】
<新防汚塗膜(新複合塗膜)>
上記旧防汚塗膜(G)の乾燥後、表4に示すシーラーコート(A)をその乾燥膜厚が100μmになるようにスプレー塗装を行った。
【0316】
次いで、表1に示すタイコート(B)をその乾燥膜厚が100μmになるようにスプレー塗装し、次いで、表2に示すフィニッシュコート(C)を乾燥膜厚が150μmになるようにスプレー塗装した。
このようにして作成された新旧複合塗膜[防汚剤溶出型複合塗膜(G)/シーラーコート(A)/タイコート(B)/フィニッシュコート(C)]について、下記の方法で塗膜性能を評価した。
【0317】
[7.2:複合塗膜の規定膜厚保持性能]
旧塗膜(G)表面への新複合塗膜の形成にあたり、シーラーコート(A)、タイコート(B)、フィニッシュコート(C)の膜厚を上述の乾燥膜厚のそれぞれ2倍になるようにスプレー塗装を行った。この2倍膜厚の塗膜の膜厚保持性について目視により確認し、タレの有無から5段階評価した。
【0318】
なお、複合塗膜を構成する各塗膜の規定膜厚保持性能確認のための塗装仕様は以下のとおり。
(i)シーラーコートAの規定膜厚保持性能確認試験:
旧防汚塗膜Gc3/試験シーラーコート(A1〜A8の何れか1種)の順序で塗装。
【0319】
(ii)タイコートBの規定膜厚保持性能確認試験:
旧防汚塗膜Gc3/シーラーコートA2/試験タイコート(BA〜BLの何れか1種)の順序で塗装。
【0320】
(iii)フィニッシュコートCの規定膜厚保持性能確認試験:
旧防汚塗膜Gc3/シーラーコートA2/タイコートBD/試験フィニッシュコート(CM〜CSの何れか1種)の順序で塗装。
【0321】
結果を表5に示す。
【0322】
【表5】

[7.3:複合塗膜の層間付着性]
基材の鋼板の表面に複合塗膜(G)を形成した段階での鋼板−複合塗膜(G)間の付着強度、複合塗膜(G)の表面にシーラーコート(A)を塗布・形成した段階での(G)−(A)間付着強度、さらにその(A)層表面にタイコート(B)を塗布・形成した段階での(A)−(B)間付着強度、さらにその(B)層の表面にフィニッシュコート(C)を塗布・形成した段階での(B)−(C)間付着強度を測定した。なお、これら層間付着強度の測定に際しては、後述するような層構成の塗膜((i)〜(iv)参照)をそれぞれ基材表面に形成して付着強度を測定し、評価した。
【0323】
また、この層間付着強度の測定の際には、基材表面に形成されているそれぞれの複合塗膜に幅2mmの間隔で6本の切れ込みを平行に入れ、さらに、この切れ込みに対して90°(直角)の角度になるように、幅2mmの間隔で6本の切り込みを入れて、5×5=25個の格子状マス目を形成した。
このマス目上に、シリコーン感圧力テープ[製造販売元:日東電工(株)製、型番:No.360UL]を貼り付けた後、引き剥がして、元の複合塗膜が残存しているマス目の数[残存マス目/25目中]を数えて付着強度(層間剥離強度)を評価した。
【0324】
<積層塗膜の層間付着性の評価方法>
(i)基材/防汚剤溶出型塗料からなる塗膜(G)間の評価方法:
鋼材/Ga/Gb/Gc(表3のGc1〜Gc8の何れか1種)の順序で塗装して評価。(例えば、防汚剤溶出型塗料Gc1を塗布硬化させた塗膜をG1とも記す。)
(ii)塗膜(G)/シーラーコート(A)間の評価方法:
鋼材/Ga/Gb/Gc3/A(表4のシーラーコートA1〜A8の何れか1種)の順序で塗装して評価。(塗膜Aの表面に、塗膜(B),(C)は何れも存在しない。)
(iii)シーラ−コート(A)/タイコート(B)間の評価方法:
鋼材/Ga/Gb/Gc3/A2/B(表1のタイコートBA〜BLの何れか1種)の順序で塗装して評価。(塗膜(C)は存在しない。)
(iv)タイコート(B)/フィニッシュコート(C)間の評価方法:
鋼材/Ga/Gb/Gc3/A2/BD/C(表2のフィニッシュコートCM〜CSの何れか1種)の順序で塗装して評価。
【0325】
上記(i)〜(iv)に示すように鋼材の表面に各塗膜を積層・被着させ、シリコーン感圧テープを用いて上記の層間付着強度の測定(剥離試験)を行った。
結果を表6に示す。
【0326】
【表6】

なお、例えば、A−B間の付着性評価時に、G−A間で先に剥離してしまうこともあり得る(本試験では、実際はなし。)。その場合は、A−B間付着性良好と判断する。本試験では、上層付着性(A−B間の付着性)より下層付着性(G−A間の付着性)が劣ることのないように、例えば、旧防汚塗膜Gc3、シーラーコートA2、タイコートBDを選択している。
【0327】
[7.4:複合塗膜の防汚性]
複合塗膜を7日間乾燥した後、広島県の宮島湾にて30ヶ月間静置浸漬試験を行い、目視にて汚損生物の付着の状態から判断して防汚性の評価を行った。
結果を表7に示す。
【0328】
<複合塗膜の防汚性の評価方法>
(i)実施例に示す各複合塗膜の防汚性の評価方法:
鋼材/Ga/Gb/Gc3/A2/BD/C(表2のフィニッシュコートCM〜CSの何れか1種)の順序で塗装して防汚性を評価。
【0329】
(ii)比較例X−1:鋼材/Ga/Gb/Gc3/(A2塗装せず)/BD/C1の順序で塗装して防汚性を評価。
(iii)比較例X−2:鋼材/Ga/Gb/Gc3/A2/(BD塗装せず)/C1の順序で塗装して防汚性を評価。
【0330】
【表7】

[比較例X−1]
基材(鋼材)表面に、鋼材/Ga/Gb/Gc3/(A2塗装せず)/BD/CMの順序で塗装して防汚性を評価した。
【0331】
なお、上述のタイコートBDの乾燥膜厚は100μm、フィニッシュコートC1の乾燥膜厚は150μmになるように塗装した。(表4のシーラーコート(A)は塗装しなかった。)この塗装系を塗装後、23℃/55RH%の条件で1週間乾燥させたのち層間付着性を確認したところ、いずれも層間付着性に劣っていた。
【0332】
[比較例X−2]
基材(鋼材)表面に、鋼材/Ga/Gb/Gc3/A2/(BD塗装せず)/CMの順序で塗装して防汚性を評価した。
【0333】
なお、上述のシーラーコートA2の乾燥膜厚は100μm、フィニッシュコートCMの乾燥膜厚は150μmになるように塗装した。(表1のタイコート(B)は塗装しなかった)。この塗装系を塗装後、23℃/55RH%の条件で1週間乾燥させたのち層間付着性を確認したところ、いずれも層間付着性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0334】
本発明に係るタイコートは、基材あるいは下塗層と、最外層の上記オルガノポリシロキサン系防汚塗膜との間に介挿され、これらの基材と最外層、あるいは下塗層と最外層とを密着させることができ、しかも得られる複合塗膜の厚膜化に寄与できるので、船体や海洋構造物の外表面の防汚塗装を省力化できる。
また、本発明の複合塗膜は、基材や下塗塗膜等の表面に、上記タイコートと、オルガノポリシロキサン系防汚塗膜(フィニッシュコート)とを順次積層して形成されているので、基材や下塗塗膜(層)とフィニッシュコート間を強固に結合・付着させることができ、かつ、表面の防汚塗膜(層)は、表面自由エネルギー(表面張力)が小さく、そのため海中生物の付着が抑制、阻止され、汚染防除性(fouling-release)に優れている。
【0335】
その上に、この好ましい複合塗膜では、何れの塗膜(層)にも実質上、防汚剤が含有されていないため、環境負荷の少ないオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜が提供される。
【0336】
本発明によれば、修繕塗装または塗り直し塗装として、古い防汚塗膜(旧防汚塗膜)の上に塗装することにより形成される新旧複合塗膜が提供される。該複合塗膜は厚膜化可能であり、古い塗膜とその表面に形成された新防汚塗膜との付着性に優れ、かつ防汚性に優れている。よって、旧防汚塗膜(G)にて被覆された船舶、水中構造物の表面を、このような新防汚塗膜で被覆すれば、著しく旧防汚塗膜との付着性に優れて剥離しにくく、厚膜化可能であり、防汚性にも優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイコート(B)、およびオルガノポリシロキサン系フィニッシュコート(C)が、基材側から表面に向かってこの順序(基材/(B)/(C))で積層して形成されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜であって、
上記タイコート(B)が、
(b1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン、および/または、
(b2)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、
シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれた体質顔料とを、
加熱下または非加熱下に、接触処理して形成された硬化性組成物
を含んでなる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物より形成される塗膜であり、かつ
上記フィニッシュコート(C)が、
(c1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む主剤、(c2)テトラアルコキシシリケートまたはその縮合物を含む硬化剤成分、および、(c3)金属化合物を含む硬化促進剤成分から形成される3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物からなる塗膜である、
ことを特徴とするオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項2】
(A)エポキシ系防食塗膜、(B)タイコート、および(C)フィニッシュコートが、基材側から表面に向かってこの順序で積層して形成されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜(基材/(A)/(B)/(C))であって、
上記タイコート(B)が、
(b1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン、および/または、
(b2)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、
シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれた体質顔料とを、加熱下または非加熱下に、接触処理して形成された硬化性組成物
を含んでなる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物により形成された塗膜であり、かつ、
上記フィニッシュコート(C)が、
(c1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む主剤、(c2)テトラアルコキシシリケートまたはその縮合物を含む硬化剤成分、および(c3)金属化合物を含む硬化促進剤成分から形成される3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物からなる塗膜である、
ことを特徴とするオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項3】
基材表面上に、(G)旧防汚塗膜、(A)エポキシ系シーラーコート、(B)タイコート、および(C)オルガノポリシロキサン系フィニッシュコートが、基材側から表面に向かってこの順序で積層して形成されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜[基材/(G)/(A)/(B)/(C)]であって、
上記タイコート(B)が、
(b1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンおよび/または、
(b2)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)と、
シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、クレー、カオリンおよび硫酸バリウムからなる群から選ばれた体質顔料とを、加熱下または非加熱下に、接触処理して形成された硬化性組成物
を含んでなる湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物により形成された塗膜であり、かつ、
上記フィニッシュコート(C)が、
(c1)分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンを含む主剤、(c2)テトラアルコキシシリケートまたはその縮合物を含む硬化剤成分、および(c3)金属化合物を含む硬化促進剤成分から形成される3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物からなる塗膜である、
ことを特徴とするオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項4】
前記旧防汚塗膜(G)が、下記の防汚塗膜からなる群から選ばれた少なくとも1種の防汚塗膜であることを特徴とする請求項3に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
(g1)不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜、
(g2)(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜、
(g3)有機錫ポリマー系防汚塗膜、および
(g4)ロジン及びその誘導体から選択される1種または2種以上の水溶性樹脂を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜。
【請求項5】
前記旧防汚塗膜(G)が、
(g4)ロジン及びその誘導体から選択される1種または2種以上の水溶性樹脂(イ)と、
塩化ビニル樹脂、変性ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体および不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体から選択される1種または2種以上の水難溶性樹脂(ロ)とを含む防汚塗料から形成された防汚塗膜であることを特徴とする請求項3に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項6】
前記不飽和カルボン酸シリルエステル共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜(g1)が、シリル(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−SiR234
(式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2、R3およびR4はアルキル基を示す。)
から誘導された成分単位を含有するシリルエステル共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜であることを特徴とする請求項4に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する非架橋性または架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜(g2)が、有機一塩基酸金属(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−M−O−CO−R2
(式中、Mは2価の金属を示し、R1は水素またはメチル基を示し、R2は有機一塩基酸残基を示す。)
から誘導された成分単位を含有する共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜であることを特徴とする請求項4に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸金属塩単位を含有する架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜(g2)が、金属ジ(メタ)アクリレート:
CH2=C(R1)−COO−M−O−CO−C(R1)=CH2
(式中、Mは2価の金属を示し、2つのR1は、それぞれ独立に水素またはメチル基を示す。)
から誘導された成分単位を含有する架橋性共重合体を含む防汚塗料から形成された防汚塗膜であることを特徴とする請求項4に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項9】
前記フィニッシュコート(C)を形成する3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物中の金属化合物(c3)が有機スズ化合物であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項10】
前記フィニッシュコート(C)を形成する3液型オルガノポリシロキサン系硬化性組成物中の(c1)成分、(c2)成分または(c3)成分のうちの少なくとも1成分には、さらに、縮合性官能基を有しないオルガノポリシロキサン(c4)が含有されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項11】
前記タイコート(B)を形成する湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物が、さらにシランカップリング剤(b3)を含有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項12】
前記タイコート(B)を形成する湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物が、さらにシランカップリング剤(b3)としてアミノシラン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜11の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項13】
前記タイコート(B)を形成する湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物が、さらに着色顔料(b4)を含有することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項14】
前記タイコート(B)を形成する湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物が、さらに硬化性触媒として金属化合物(b5)を含有することを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項15】
前記タイコート(B)を形成する湿気硬化型オルガノポリシロキサン系組成物が、金属化合物(b5)としてスズ化合物またはチタン化合物を含有することを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項16】
前記分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)が、脱オキシムタイプの縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項17】
前記硬化性組成物(b2)がシリカと分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)とを加熱処理することにより形成された硬化性組成物である請求項1〜16の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項18】
前記硬化性組成物(b2)がシリカと分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサン(b1)とを100℃以上の温度で加熱処理されている請求項1〜17の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項19】
前記硬化性組成物(b2)が、分子両末端に縮合性官能基を有するオルガノポリシロキサンと、上記体質顔料とを、上記加熱下に接触処理して形成された硬化性組成物(j)と、これらを非加熱下に接触処理して形成された硬化性組成物(k)との両方を含むことを特徴とする請求項1〜18の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項20】
前記上記成分(b2)を、上記成分(b1)100重量部に対して1〜100重量部の量で含有する請求項1〜19の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項21】
上記シリカが、疎水性シリカ(イ)と親水性シリカ(ロ)とを含み、疎水性シリカ(イ)と親水性シリカ(ロ)とを重量比((イ)/(ロ))=1/99〜99/1で含有する請求項1〜20の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項22】
上記シリカが、疎水性シリカ(イ)のみを含有する請求項1〜20の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項23】
上記エポキシ系防食塗膜(A)またはエポキシ系シーラーコート(A)が、シランカップリング剤を含有していることを特徴とする請求項1〜22の何れか1項に記載のオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜。
【請求項24】
請求項1〜23の何れか1項に記載されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜で被覆された船舶。
【請求項25】
請求項1〜23の何れか1項に記載されたオルガノポリシロキサン系防汚性複合塗膜で被覆された水中構造物。

【公開番号】特開2010−270339(P2010−270339A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186322(P2010−186322)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【分割の表示】特願2007−512910(P2007−512910)の分割
【原出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】