オルニチンならびにフェニルアセテートまたはフェニルブチレートを含む、肝性脳症を治療するための組成物
本発明は、肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも1つと組み合わせて使用する薬剤の製造における、オルニチンの使用に関する。本発明は、肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、オルニチンと組み合わせて使用する薬剤の製造における、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓の代償不全または肝性脳症の予防または治療に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性肝臓病は、長期に亘って肝組織が徐々に破壊されることに特徴があり、それによって健康に再生する肝組織が徐々に瘢痕組織および壊死組織に置換される。これは肝硬変として知られている。正常な肝機能が損なわれ、瘢痕組織により肝臓を経由する血流量が徐々に減少する。正常に再生する肝組織が失われるので、栄養素、ホルモン、薬物および毒物はもはや効果的に処理されることはない。
【0003】
このことは結果的に、アンモニアの蓄積に至る、腸管を経て吸収されたタンパク質の異常なクリアランス;血中へのビリルビンの蓄積に至り、黄疸を生じさせる異常な排出;腹部における液体の蓄積(腹水症)に至る類洞の血圧の上昇;および門脈の血圧の上昇および食道静脈瘤に至る、瘢痕が生じた肝組織が血流を障害するものとして機能する門脈圧亢進症(および門脈体静脈シャント)を含む症状になり得る。
【0004】
慢性肝臓病に罹患している患者はかなり安定した臨床状態であり得、症状をほとんどまたは全く現さない。しかしながら、このような患者にはその状態が急激に悪化するリスクがあり、アキュート・オン・クロニック(acute-on-chronic)肝不全に至る可能性がある。「代償的」状態、すなわちレベルが低下したにも関わらず肝臓が機能することができる状態、から「非代償的」状態、すなわち肝機能が喪失した状態へのこの移行は、誘発事象(precipitating event)の作用に関与する。慢性肝臓病に関係する誘発事象は、消化管の出血、感染症(敗血症)、門脈血栓症および脱水症を含む。
【0005】
たとえば、肝硬変に罹患している患者の肝臓の50%に食道静脈瘤があり、これらの患者の三分の一では、診断から二年以内に食道静脈瘤が破裂し、消化管の出血が生じることになる(Grace ND (1992) Gastroenterol Clin North Am 21: 149-161)。上部消化管の出血により、生命に関わる合併症、たとえば細菌性腹膜炎、敗血症、腎不全および肝性脳症が起こりやすくなることが知られており(Teran et al. (1997) Gastroenterology 112: 473-482; Garden et al. (1985) Br J Surg 72: 91-95; Pauwels et al. (1996) Hepatology 24: 802-806; Bleichner et al. (1986) Br J Surg 73: 724-726)、出血を適切に制御しても、約30%の患者が死亡する結果となる(Grace 1992 上掲)。
【0006】
肝性脳症(HE)は、様々な臨床状態、たとえば急性または慢性の肝臓病および自発性の門脈体静脈シャントにおいて生じる神経精神医学上の複雑な障害である。肝性脳症の初期段階では、精神的なわずかな変化、たとえば集中力の低下、混乱および方向感覚の喪失が生じる。重篤なケースでは、肝性脳症は昏迷、昏睡状態、脳腫脹(脳浮腫)および死に至る可能性がある。慢性肝臓病の結果としてHEに進行した患者のケースにおいては、多くの場合、HEの発症は臨床的に誘発事象、たとえば消化管の出血、敗血症(感染症)、門脈血栓症または脱水症の結果である。
【0007】
消化管の出血および門脈体静脈シャントによって、有害物質(これは通常肝臓で代謝される)が肝臓を迂回し、体循環に入り、そして血液脳関門を乗り越えることが可能となり、中枢神経系に直接的または間接的な神経毒性作用を与える。アンモニアの蓄積は、肝性脳症および多臓器不全(呼吸不全、心血管不全、腎不全)の進行において重要な役割を果たすものと考えられる。アンモニアに加えて、さらに消化管の出血の直後に発症する敗血症(または細菌性腹膜炎)も肝性脳症の要因である可能性が高い。
【0008】
肝臓の代償不全は次いで多臓器不全および肝性脳症に至る可能性がある。肝性脳症の初期段階においては、精神的なわずかな変化、たとえば集中力の低下すなわち簡単な物体を組み立てる能力が無いことが生じる。重篤なケースでは、肝性脳症が昏迷、昏睡状態、脳腫脹および死亡に至ることもあり得る。
【0009】
慢性肝臓病に罹患している患者についての予後を予測することは難しい。なぜなら、その状態には多数の原因があるからである。代償的状態から非代償的状態への進行を最小化するための予防対策としては、状態を悪化させるであろう原因物質をさらに避けることが挙げられ、たとえばアルコールを完全に絶つこと、ならびにA型肝炎およびB型肝炎に対するワクチンの接種がある。
【0010】
しかしながら、肝臓の代償不全が一度でも生じると、生存する可能性が低下し、そして肝臓移植が寿命を延ばすことができる唯一の治療である。これは推定寿命の短縮につながる肝臓の代償不全であるので、肝臓の代償不全の発生を予防することが非常に望ましい。
【0011】
肝性脳症に罹患している患者に対する一般的な治療法には、アンモニアの濃度を低下させる計画が必要である。これらには、食事性タンパク質の摂取の制限;ラクツロース、ネオマイシン、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩(LOLA)または安息香酸ナトリウムの投与;および浣腸による洗浄が挙げられる。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、患者において肝臓の代償不全または肝性脳症(HE)を予防または治療するための、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用に関する。たとえば消化管の出血に起因し得るイソロイシン欠乏症を有するこれらの患者に、さらにイソロイシンを投与してもよい。従って、本発明は次のものを提供する:
−肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つと組み合わせて使用する薬剤の製造における、オルニチンの使用;
−肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、オルニチンと組み合わせて使用する薬剤の製造における、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用;
−肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための薬剤の製造における、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用;
−肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、同時使用、分離(separate)使用または連続使用を行うためにオルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む生成物;
−オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む医薬組成物;
−オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む、肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための薬剤;ならびに
−肝臓の代償不全または肝性脳症を有するかまたはそのリスクを有する患者を治療する方法であって、有効量のオルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを当該患者に投与することを含む方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本明細書および添付の請求の範囲の全体に亘って、「comprise」および「include」という用語、ならびに「comprises」、「comprising」、「includes」および「including」などの変形物は、包括的に解釈されるべきである。すなわち、これらの用語は、文脈が認める場合において、明確には列挙されていないその他の要素または整数を包含する可能性を伝えることを意図するものである。
【0014】
本発明は、肝臓病に罹患している患者を早期に、肝臓の代償不全に進行する前に、従って肝性脳症が生じる前に治療して、肝臓の代償不全の発症を予防することまたは遅延させることに関する。あるいは、本発明は、アンモニアの濃度を効果的に低下させ、好中球の機能を維持することによる肝性脳症の治療に関する。
【0015】
治療される対象
本発明は、肝臓の代償不全または肝性脳症の予防または治療に関する。従って、対象の肝臓は代償的状態であってもよい。対象は慢性肝臓病であってもよい。対象は肝硬変であってもよい。対象は急性肝不全であってもよい。治療される対象は肝性脳症であってもよい。
【0016】
急性および慢性の肝臓病の発症は、生体異物性の原因によるものであってもよい。たとえば、対象が肝臓に障害を与える化学物質、薬物またはその他のいくつかの物質にさらされていてもよい。対象が肝臓に障害を与える市販の薬物、処方された薬物または「気晴らしのための(recreational)」薬物に対して反応してもよい。対象が肝臓に障害を与えると考えられるRezulin(商標)(トログリタゾン;Parke-Davis社)、Serzone(商標)(ネファゾドン;Bristol-Myers Squibb社)またはその他の薬物を摂取していてもよい。対象が特定の薬物を過剰摂取した者、すなわち肝臓に障害を与え得る薬物の推奨された投与量を超えて摂取した者でもよい。たとえば、対象がパラセタモールを過剰量摂取していてもよい。対象が肝臓に障害を与え得る化学物質に、たとえば彼らの職場でさらされていてもよい。たとえば、対象が工業上の事情または農業上の事情におけるこのような化学物質にさらされていてもよい。対象が肝臓に障害を与え得る化合物を含む植物を食べていてもよい。特にこのことは、対象が動物、たとえば草食動物である場合に起こり得る。たとえば、対象がピロリジジンアルカロイドを含む植物、たとえばサワギクを食べていてもよい。対象が環境中にある、肝臓病を引き起こすと考えられる毒物にさらされていてもよい。
【0017】
薬物に関連する肝臓毒性は、急性肝臓病(急性肝不全)に罹患しているすべての患者のうちの50%を超える患者を含む。アセトアミノフェン(パラセタモールおよびN−アセチル−p−アミノフェノールとしても知られている)の毒性は、合衆国および英国における急性肝不全の最も一般的な原因である。アセトアミノフェンを治療目的でまたはいくぶん過剰に摂取する、長期間に亘ってアルコールを中程度〜大量に消費する者は、重篤な肝損傷のリスクを有し、急性肝不全になるかもしれない。アルコールの摂取により、アセトアミノフェンが毒として作用することになり得る。特異体質性薬物毒性も急性肝不全の一因である。特異体質性薬物毒性は、対象が薬理学的に異常なやり方で薬物に反応するという過敏な反応であると考えられる。この異常な反応は、急性肝不全につながり得る。
【0018】
急性肝不全または慢性肝臓病が、病原性生物による感染症によって引き起こされたものでもよい。たとえば、肝臓病がウイルスの感染症が原因でもよい。とりわけ、対象が肝炎を引き起こすウイルスに感染しているか、または以前に感染していてもよい。対象が慢性のウイルス性肝炎であってもよい。このウイルスは、たとえばB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはD型肝炎ウイルスであってもよい。いくつかのケースでは、および特に対象がウイルス性肝炎のケースでは、その対象がHIV−IまたはIIに感染していてもよい。対象がAIDSであってもよい。対象が肝臓病を引き起こすその他の生物、特にそれらのライフサイクルのいくつかの段階において肝臓内に存在する生物に感染したか、感染しているかもしれない可能性がある。たとえば、対象が肝吸虫に寄生されているか、または以前に寄生されていてもよい。
【0019】
対象が、慢性肝臓病を引き起こすか、またはそのリスクを高める遺伝病であってもよい。たとえば、対象が一またはそれ以上の肝ヘモクロマトーシス、ウィルソン病またはα−1−抗トリプシン欠乏症であってもよい。対象が、肝線維症の可能性を高める、肝臓における構造上または機能上の何らかの異常を引き起こす遺伝性疾患を有していてもよい。対象が、肝臓を損ない、それによって肝線維症の一因となり得る自己免疫疾患に遺伝的に進行しやすくなり得る。
【0020】
慢性肝臓病がアルコール誘導性のものであってもよい。治療を受ける男性または女性は、アルコール中毒患者であっても、または以前にそうであってもよい。彼または彼女が、一週間あたり、平均で50単位もしくはそれ以上のアルコールを、60単位もしくはそれ以上のアルコールを、75単位もしくはそれ以上のアルコールを、さらには100単位もしくはそれ以上のアルコールを消費しても、または以前に消費していてもよい。この男性または女性が、一週間あたり、平均で最大100単位のアルコールを、最大150単位のアルコールを、さらには最大200単位のアルコールを消費しても、または以前に消費していてもよい。一単位のアルコールの計量は国によって異なる。本明細書では、英国の基準に従って、一単位は8グラムのエタノールに相当する。
【0021】
この男性または女性が、このようなレベルのアルコールを、5年もしくはそれ以上、10年もしくはそれ以上、15年もしくはそれ以上または20年もしくはそれ以上消費していてもよい。対象が、このようなレベルのアルコールを、最大10年間、最大20年間、最大30年間、さらには最大40年間消費していてもよい。アルコール誘導性肝硬変のケースにおいては、対象の年齢が、たとえば25歳もしくはそれ以上、35歳もしくはそれ以上、45歳もしくはそれ以上、またはさらには60歳もしくはそれ以上であってもよい。
【0022】
対象は男性でも女性でもよい。女性は男性よりもアルコールの悪影響を受けやすいようである。女性は男性よりも、より短い期間でおよびより少量のアルコールでアルコール性慢性肝臓病に進行する可能性がある。これらのことは、女性におけるアルコール性肝障害に対する感受性が高まっていることの原因が単一の要素ではないようであるが、ホルモンがアルコールの代謝に与える影響が重要な役割を果たしているのかもしれない。
【0023】
本発明のその他の実施形態においては、対象が、肝障害、たとえば原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性慢性活動性肝炎および/または住血吸虫症(寄生生物の感染)などに至ることが知られている一またはそれ以上の多数のその他の状態であってもよい。対象が、胆管の閉塞を有する者または以前に有していた者でもよい。いくつかの場合においては、慢性肝臓病の潜在的な原因が知られていなくてもよい。たとえば、対象が原因不明性肝硬変を有する者として診断されていてもよい。一つの実施形態においては、対象が本明細書に列挙された状態の任意のものを有すると推測されればよい。
【0024】
慢性肝臓病、急性肝不全および肝性脳症を診断するための方法は、当業者、特に本分野における臨床医および獣医には周知である。肝臓病および肝性脳症であるものとして、たとえば医学または獣医学の専門家によって診断されたであろう対象が好ましい。対象は、肝臓病に関係する一またはそれ以上の症状、たとえば一またはそれ以上の黄疸、腹水症、皮膚の変化、体液貯留、爪の変化、内出血ができやすくなること(easy bruising)、鼻血、食道静脈瘤を示してもよく、男性の対象においては乳房の肥大もあり得る。対象は、極度の疲労、倦怠感、食欲の喪失、吐き気、脱力感および/または体重の減少を示してもよい。対象はさらに、肝性脳症に関係する一またはそれ以上の症状、たとえば混乱、方向感覚の喪失、認知症、昏迷、昏睡状態、脳浮腫、多臓器不全(呼吸不全、心血管不全または腎不全)、筋肉硬直/固縮、発作または発語障害の一またはそれ以上を示してもよい。治療を受ける対象は、肝臓病を治療するためのその他の薬物を摂取していてもよく、摂取していなくてもよい。治療を受ける対象は、肝性脳症に進行するリスクがあるかもしれない。
【0025】
肝臓病は、超音波などの技術を含む健康診断によって確認されたものでもよく、または確認されるものでもよい。肝生検は、線維、壊死細胞、細胞の変性および/または炎症およびその他の肝臓病に特有の特徴の発達を探すために行われていてもよい。肝機能は、対象において肝機能が易感染性であるかどうかを決定するためにその対象内で評価されてきたかもしれない。肝臓病の本質的な原因および潜在的な原因をキャラクタライズしてもよい。肝臓病の原因物質にさらされてきたあらゆる経歴を割り出してもよい。
【0026】
治療を受ける対象は、肝性脳症の症状が発症するリスクを有していてもよく、たとえば肝移植、外科手術を待つ患者および/または門脈圧亢進症の患者であってもよい。肝性脳症の症状が発症するリスクを有する人物は、肝性脳症の症状の発症に苦しんだことがない人物、または長期間(約12週間かそれ以上)に亘って肝性脳症の症状の発症に苦しんだことはないが、肝性脳症の症状が発症するリスクを生じさせる障害もしくは病状を有する人物である。肝性脳症の症状の発症とは、肝臓病または肝機能障害に罹患している患者において脳機能障害が見られることに特徴がある臨床状態である。肝性脳症においては、極めて軽微な場合は主要な影響が生活の質の低下であることから、明示的には昏睡状態および最終的に死亡に至るまでの広範囲の精神障害が存在する。
【0027】
スコアリングシステムを用いて、肝臓病および肝性脳症の重症度、ならびに対象の予後をも評価してもよい。Child−Pugh、West Haven基準、Glasgow Coma Scaleまたは修正Child−Pughスコアリングシステムを用いてもよい。あるいは、(APACHE) IIスコアリングシステムを用いてもよい。血清ビリルビンレベル、血清アルブミンレベルを含むパラメータ、および腹水症または脳障害の存在を含む徴候に点数が割り当てられる。治療を受ける対象は、Child−PughのクラスA、クラスBまたはクラスCに分類され得る。一般的に、治療を受ける対象はChild−PughのクラスCに分類される。
【0028】
治療を受ける男性または女性の年齢は、たとえば25〜80歳であってよい。一つの実施形態においては、男性または女性の年齢は45〜70歳である。別の実施形態においては、男性または女性の年齢は25〜44歳である。さらなる実施形態においては、男性または女性の年齢は65歳を超える。
【0029】
しかしながら、本発明は獣医学上の用途をも有する。治療を受ける対象は、家畜、たとえば雌ウシもしくは雄ウシ、ヒツジ、ブタ、雄ウシ、ヤギもしくはウマであってもよく、または家庭内の動物、たとえばイヌもしくはネコであってもよい。対象は肝臓病についての動物モデルであってもよく、それでなくてもよい。動物はどのような年齢でも構わないが、成長した成体の対象であることが多い。
【0030】
製剤
本発明において用いられるアミノ酸は、純粋な結晶アミノ酸であってよい。一般的に、アミノ酸はD−型ではなくL−型であるか、またはD−型とL−型との混合物である。アミノ酸の単離された形態のものが通常用いられる。アミノ酸のあらゆる活性型を用いて、肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療してもよい。医薬的に許容され得るアミノ酸の形態を用いてもよい。アミノ酸を遊離アミノ酸として、またはアミノ酸塩もしくは誘導体として用いてもよい。
【0031】
オルニチンは純粋な結晶アミノ酸の形態であってもよい。一般的に、オルニチンはD−型ではなくL−型であるか、またはD−型とL−型との混合物である。オルニチンの単離された形態のものが通常用いられる。オルニチンのあらゆる活性型を用いてもよく、またはオルニチンの医薬的に許容され得る形態のものを用いてもよい。オルニチンを遊離アミノ酸として、またはアミノ酸塩もしくは誘導体として用いてもよい。
【0032】
通常、オルニチンは単一のモノマーアミノ酸として用いられる。オルニチンを塩の形態、たとえば塩酸オルニチンで用いてもよい。オルニチンを遊離型の生理学的に許容され得る塩の形態で用いてもよい。従って、オルニチンまたはオルニチン塩は通常、その他のあらゆる物質と化学的に結合、または共有的に結合していない。
【0033】
オルニチンの誘導体を用いてもよい。たとえば、オルニチンのケトアナログまたはヒドロキシアナログを、ナトリウム塩またはカルシウム塩として投与してもよい。オルニチンのケト酸としては、ケトグルタル酸オルニチン、オルニチン・ケトロイシンおよびオルニチン・ケトバリンが挙げられる。オルニチンの塩または誘導体を、遊離オルニチンに代えてまたはそれに加えて用いてもよい。
【0034】
フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを用いてもよい。フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートは、生理学的に許容され得る塩の形態、たとえばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であってもよい。塩はソディウムフェニルアセテートまたはソディウムフェニルブチレートであってもよい。フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの塩の形態は遊離型であってもよい。従って、フェニルアセテートおよびフェニルブチレート、またはフェニルアセテート塩およびフェニルブチレート塩は通常、その他のあらゆる物質と化学的に結合、または共有的に結合していない。
【0035】
必要に応じてイソロイシンを用いる。イソロイシンは純粋な結晶アミノ酸の形態であってもよい。一般的にイソロイシンはD−型ではなくL−型であるか、またはD−型とL−型との混合物である。イソロイシンの単離された形態のものが通常用いられる。イソロイシンのあらゆる活性型を用いてもよく、またはイソロイシンの医薬的に許容され得る形態のものを用いてもよい。イソロイシンを遊離アミノ酸として、またはアミノ酸塩もしくは誘導体として用いてもよい。
【0036】
通常、イソロイシンは単一のモノマーアミノ酸として用いられる。イソロイシンを塩の形態、たとえば塩酸イソロイシンで用いてもよい。イソロイシンは遊離型の生理学的に許容され得る塩の形態であってもよい。従って、イソロイシンまたはイソロイシン塩は通常、その他のあらゆる物質と化学的に結合、または共有的に結合していない。
【0037】
医薬組成物
オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートは通常、医薬的に許容され得る担体または希釈剤と共に投与することを目的として処方される。従って、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを、薬学分野で日常的に見られるような医薬的に許容され得る標準的な担体および/または賦形剤を含む薬剤として処方してもよい。処方の正確な性質は、いくつかの要素、たとえば所望の投与経路に左右される。通常、経口投与、静脈内投与、胃内投与、血管内投与または腹腔内投与用に、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを処方する。
【0038】
薬剤用の担体または希釈剤は、たとえば等張液、たとえば生理食塩水であってもよい。液体の経口剤形では、活性な化合物とともに、希釈剤、たとえばラクトース、デキストロース、ショ糖、セルロース、コーンスターチまたはバレイショデンプン;潤滑剤、たとえばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウムおよび/またはポリエチレングリコール;結合剤;たとえばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;凝固防止剤、たとえばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウム;発泡性混合物;染料;甘味料;加湿剤、たとえばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;ならびに一般的に医薬製剤に用いられる非毒性で薬理学的に不活性な物質を含んでもよい。このような医薬製剤は公知の方法、たとえば混合、顆粒化、打錠、糖衣化またはフィルムコーティングといった処理によって製造され得る。
【0039】
経口投与のための分散液は、シロップ、エマルジョンまたは懸濁液であってもよい。シロップは、担体として、たとえばショ糖またはグリセリンを含むショ糖および/またはマンニトールおよび/またはソルビトールを含んでもよい。
【0040】
懸濁液およびエマルジョンは、担体として、たとえば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含んでもよい。筋肉注射用の懸濁液または溶液は、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つと一緒に、医薬的に許容され得る担体、たとえば滅菌水、オリーブオイル、オレイン酸エチル、グリコール類、具体的にはプロピレングリコールを含んでもよく、必要に応じて適量の塩酸リドカインを含んでもよい。
【0041】
本発明の薬剤は、唯一のアミノ酸成分としてオルニチンを含むことができる。本発明の薬剤は、唯一のアミノ酸成分としてオルニチンおよびイソロイシンを含むことができる。この薬剤は、本質的にオルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つからなってもよい。この薬剤は、本質的にオルニチン、イソロイシンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つからなってもよい。
【0042】
薬剤は、本質的にオルニチン、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートおよび医薬的に許容され得る担体からなってもよい。従って、このような薬剤はオルニチン以外のその他のアミノ酸を実質的に含まない。薬剤は、本質的にオルニチン、イソロイシン、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートおよび医薬的に許容され得る担体からなってもよい。従って、このような薬剤は、オルニチンおよびイソロイシン以外のその他のアミノ酸を実質的に含まない。
【0043】
フェニルアセテートは、オルニチンの重量の5〜100重量%の量、たとえば10〜50重量%または20〜40重量%の量が存在すればよい。フェニルブチレートは、オルニチンの重量の5〜100重量%の量、たとえば10〜50重量%または20〜40重量%の量が存在すればよい。
【0044】
しかしながら、この薬剤は通常、微量の遊離のアスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンを非ペプチド型で含んでもよい。一般的に、アスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンの重量が、オルニチンの重量を超えることはない。微量とは、アスパラギン酸、グルタミン酸もしくはアルギニンまたはこれらのアミノ酸を組み合わせたものの重量が、オルニチンの20重量%を超えないことを意味する。従って、薬剤がアスパラギン酸を実質的に含まなくてもよい。一つの実施形態においては、組成物はアスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンを含まない。ごく微量のアスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンが組成物に存在していてもよい。ごく微量とは、アスパラギン酸、グルタミン酸もしくはアルギニンまたはこれらのアミノ酸を組み合わせたものの重量が、オルニチンの1重量%を超えないことを意味する。アスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンの重量が、オルニチンの0.5重量%を超えないことが好ましい。
【0045】
別の実施形態においては、組成物がさらにその他のアミノ酸を非ペプチド型で、通常は遊離アミノ酸または生理学的に許容され得るその遊離型の塩として含んでもよい。これらのその他のアミノ酸の量は一般的に、オルニチンの重量を超えることはない。たとえば、その他のアミノ酸は、オルニチンの重量の最大20重量%、たとえば5〜20重量%存在してもよい。組成物に存在してもよいこのようなその他のアミノ酸としては、必須アミノ酸および非必須アミノ酸が挙げられる。組成物はその他の分岐鎖アミノ酸(BCAAs)を含んでもよい。BCAAsとしてはイソロイシン、バリンおよびロイシンが挙げられる。従って、本発明の組成物は、イソロイシンおよび/またはバリンおよび/またはロイシンをさらに含んでもよい。
【0046】
治療
肝臓の代償不全または肝性脳症の発症を予防するかまたは遅延させるために、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて対象に投与する。従って、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与し、対象、たとえば誘発事象の後の慢性肝臓病に苦しむ対象、の状態を改善させることができる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって対象の症状、たとえば誘発事象の後の対象における慢性肝臓病に関係する症状、を軽減させる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝臓の代償不全または肝性脳症の発症に対抗するかまたは遅延させる。
【0047】
肝性脳症を治療するために、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて対象に投与してもよい。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症に苦しむ患者の状態を改善させる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症に関係する症状を軽減させる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症に対抗する。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症が発症するリスクを有する人物における初期の肝性脳症の症状の発現を予防する。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症の症状が発現するリスクを有する人物における初期の肝性脳症の症状の発現の重症度を低下させる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症の症状が発症するリスクを有する人物における初期の肝性脳症の発症を遅延させる。
【0048】
肝臓の代償不全および肝性脳症の進行(development)には、「誘発事象」(または「急性の発作」)を必要とする。このような誘発事象は、消化管の出血、感染症(敗血症)、門脈血栓症および脱水症を含む。このような急性の発作の発症は入院に至ることが多い。患者はこれらの急性の発作またはこれらの急性の発作を組み合わせたものの一つに苦しむかもしれない。
【0049】
急性の発作を経験した対象または経験したことが疑われる対象を、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを組み合わせて用いる本発明に従って治療し、肝臓が非代償的状態に進行することを予防する。従って、本発明は、肝臓の代償不全の医学上の帰結、たとえば肝性脳症を予防することができる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを用いて、肝機能を維持してもよい。従って、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを用いて、肝臓病に罹患している患者の余命を伸ばせるかもしれない。一つの実施形態においては、消化管の出血が代謝された帰結、たとえば高アンモニア血症、低イソロイシン血症および出血後のタンパク質の合成の低下が予防される。
【0050】
通常、誘発事象(急性の発作)の発症またはその擬似的な発症からできるだけ早く対象の治療を始めてもよい。急性の発作が繰り返される前に対象の治療を始めることが好ましい。最初の急性の発作の後に対象の治療を始めることがより好ましい。
【0051】
治療は通常、急性の発作が始まった直後から行われる。急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が、医療従事者、たとえば医師、救急救命士または看護師によって検出された後に、治療を開始してもよい。対象の入院時に治療を開始してもよい。従って、急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が検出されてから6時間以内、3時間以内、2時間以内または1時間以内に治療を開始してもよい。従って、急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が検出されてから1〜48時間の間、たとえば1〜36時間または1〜24時間の間に対象の治療を開始してもよい。
【0052】
急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が検出されてから最大8週間、たとえば最大6週間、最大4週間または最大2週間、治療を行ってもよい。従って、急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が検出されてから最大48時間、たとえば最大36時間または最大24時間、治療を行ってもよい。通常、急性の誘発事象からの回復が明白になった時点まで治療を行う。
【0053】
対象は、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートで治療を受ける。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを、組み合わせて単一の薬剤で、または個別に二もしくは三種の異なる薬剤で投与してもよい。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを一体化された薬剤で投与する予定の場合、その一体化物を投与直前に調製してもよく、または一体化された薬剤として貯蔵してもよい。
【0054】
オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを分離して投与する予定の場合、薬剤を一定の期間に亘って同時にまたは連続して投与してもよい。二種または三種の個別の薬剤を一定の期間に亘って投与してもよい。
【0055】
二種の薬剤を投与する場合には、オルニチンを最初に投与し、次いでフェニルアセテートおよびフェニルブチレート、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを投与してもよい。あるいは、フェニルアセテートおよびフェニルブチレート、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを最初に、次いでオルニチンを投与してもよい。別の実施形態においては、オルニチンとフェニルアセテートとの組み合わせを最初に投与し、次いでフェニルブチレートを投与してもよい。あるいは、オルニチンとフェニルブチレートとの組み合わせを最初に投与し、次いでフェニルアセテートを投与してもよい。別の実施形態においては、フェニルアセテートを最初に投与し、次いでオルニチンとフェニルブチレートとの組み合わせを投与してもよい。あるいは、フェニルブチレートを最初に投与し、次いでオルニチンとフェニルアセテートとの組み合わせを投与してもよい。
【0056】
三種の薬剤を投与する場合には、オルニチン、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートを別個の時点で投与する。オルニチンを最初に、二番目にまたは三番目に投与してもよい。オルニチンを最初に投与する場合には、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを二番目に投与し、次いでフェニルブチレートまたはフェニルアセテートを投与すればよい。オルニチンを二番目に投与する場合には、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを最初に投与し、フェニルブチレートまたはフェニルアセテートを三番目に投与する。オルニチンを三番目に投与する場合には、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを最初に投与し、フェニルブチレートまたはフェニルアセテートを二番目に投与する。
【0057】
最初の薬剤の投与後、二番目の薬剤を5時間以内に、たとえば2時間以内または1時間以内に投与すればよい。従って、二番目の薬剤を、最初の薬剤の投与から15分間〜5時間の間、たとえば30分間〜4時間の間または1時間〜3時間の間に投与することができる。
【0058】
二番目の薬剤の投与後、三番目の薬剤を5時間以内に、たとえば2時間以内または1時間以内に投与すればよい。従って、三番目の薬剤を、二番目の薬剤の投与から15分間〜5時間の間、たとえば30分間〜4時間の間または1時間〜3時間の間に投与することができる。
【0059】
本発明の薬剤は、同一の部位にまたは異なる部位に投与されてもよい。同一の経路または異なる経路を介して、本発明の薬剤を投与してもよい。任意の適切な経路によって本発明の薬剤を投与してもよい。好ましくは、経口、静脈内、胃内、腹腔内または血管内の経路によって投与する。たとえば、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを別個に投与する場合、これらの全てを経口投与してもよく、もしくはこれらの全てを静脈内に投与してもよく、もしくはオルニチンを経口投与し、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを静脈内に投与してもよく、またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを経口投与し、オルニチンを静脈内に投与してもよい。
【0060】
治療上有効量のオルニチン、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートならびに随意のイソロイシンを対象に投与する。オルニチン、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートならびにイソロイシンの投与量を、種々のパラメータ、たとえば年齢、体重および治療を受ける対象の状態;肝臓病のタイプおよび重症度;投与経路;ならびに必要とされる投与計画に従って決定することができる。
【0061】
オルニチン、フェニルアセテートもしくはフェニルブチレート、またはイソロイシンの通常の投与量は体重1kgあたり0.02〜1.25g、たとえば、0.1〜0.5gであり、このようなパラメータに左右される。その結果、オルニチン、フェニルアセテートもしくはフェニルブチレートまたはイソロイシンの投与量は、1g〜50g、たとえば5g〜30gであってよい。オルニチンの投与量は10〜30gであってよい。イソロイシンの投与量は5〜15gであってよい。オルニチンおよびフェニルアセテート/フェニルブチレートを、10:1〜1:10の重量比、たとえば5:1〜1:5または2:1〜1:2または約1:1で投与してもよい。医師であれば、任意の特定の対象のために、オルニチンおよびフェニルアセテートまたはフェニルブチレートならびに随意のイソロイシンの必要な投与量を決定することができる。
【0062】
オルニチンを単回投与ならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを単回投与してもよい。場合により、イソロイシンを単回投与してもよい。あるいは、オルニチンおよび/またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートおよび/または随意のイソロイシンを複数回投与、たとえば二回、三回、四回または五回投与してもよい。このような複数回投与を一ヶ月の期間に亘って、または二週間もしくは一週間に亘って行ってもよい。別の実施形態においては、オルニチンおよび/またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートの単回投与または複数回投与、たとえば二回、三回、四回もしくは五回投与を毎日投与してもよい。
【0063】
その他のアミノ酸を、上記のように対象に投与してもよい。そのアミノ酸またはそのようなその他のそれぞれのアミノ酸を、オルニチンおよび/またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートと同一の薬剤に投与してもよく、または分離して投与してもよい。分離して投与する場合、そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸を、オルニチンおよび/またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートの投与と同時に投与してもよく、またはその投与と異なる時間、たとえば最大5時間、最大2時間もしくは最大1時間前もしくは後で投与してもよい。そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸は通常、経口でまたは静脈内に投与される。
【0064】
治療上有効量のそのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸を対象に投与する。投与量は、種々のパラメータ、たとえばオルニチン、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートについて上記に記載されたものに左右される。そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸の通常の投与量は、体重1kgあたり0.02〜1.25g、たとえば0.1〜0.5gである。従って、そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸の投与量は、1g〜50g、たとえば5g〜30gであってよい。
【0065】
そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸を単回投与してもよい。あるいは、複数回投与量、たとえば二回、三回、四回または五回投与を行ってもよい。このような複数回投与を、一ヶ月の期間に亘ってまたは二週間もしくは一週間に亘って行ってもよい。別の実施形態においては、単回投与または複数回投与、たとえば二回、三回、四回もしくは五回投与を毎日行ってもよい。
次の実施例によって、本発明を例証する。
【実施例1】
【0066】
好中球の機能は肝硬変に罹患している患者において変化し、肝臓病の重症度を増しさらに悪化させる
(好中球のファゴサイトーシスおよび酸化的バーストを測定するための方法)
ファゴテスト:ヘパリン処理した全血を、オプソニン化したFITC−ラベル化E coliおよびCD16と共にインキュベートした。次いでこれらの細胞を、前方散乱および側方散乱によって開閉するフローサイトメトリー(FACScan Becton Dickinson社)で分析し、次いでR−フィコエリトリン(PE)[Immunotech社、マルセイユ、フランス]蛍光色素の発色に基づいて評価してCD16陽性細胞を特定した。次いで、開閉された(gated)細胞集団を、FITC−ラベル化細菌が存在するかどうかについて評価した。
【0067】
ファゴバースト:ヘパリン処理した全血をオプソニン化E coli懸濁液と共にインキュベートして、酸化的バーストを刺激した。基質溶液を添加して、ジヒドロローダミン(DHR)123が蛍光性化合物のローダミン(R) 123に変換することを測定した。この反応を停止させ、陽性の好中球を特定するためのCD16抗体とインキュベートする前に固定した。次いで、フローサイトメトリーによって分析を実施した。
【0068】
好中球走化性:ケモキネシスを刺激するためにインターロイキン−8を走化性因子として利用する修正Boydenチャンバー法を用いて、好中球走化性を測定した。
【0069】
(患者および方法)
我々は、30名の肝硬変に罹患している患者(アルコール性肝硬変;平均年齢53.2(SEM 4.6)および20名の健康なボランティアについて試験を行った。肝硬変に罹患している患者を、混合型アルコール性肝炎に罹患している者(AH+)、および非代償的肝臓または代償的肝臓を有する者のように分類した。ファゴテストを利用して貪食能を測定し、ファゴバーストを利用して、E coliに接触した時に細胞が酸化的バーストを生じさせ得るかどうかを測定した。
【0070】
(結果)
我々は、肝硬変の患者由来の好中球の細菌を貪食する能力が顕著に低下したことを観察した。我々はさらに、酸化的バーストの発生割合が増加した(図1)という点で、肝硬変に罹患している患者のE coliによる好中球の刺激に対する応答能力が低下したことをも見出した。肝臓病の重症度と関連する能力のこのような低下は、肝臓病のステージが進行すればするほど、感染症に対応する能力およびそれに対抗する能力が減少することを示している。
【実施例2】
【0071】
アンモニアは好中球の貪食能を低下させる
(好中球のファゴサイトーシスおよび酸化的バーストを測定するための方法)
実施例1のとおり。
(患者および方法)
健康なボランティア(n=15)から血液を採取し、アンモニアの濃度を徐々に増加させたものと共に1時間インキュベートした。好中球が細菌を貪食する能力を、ファゴテストおよび好中球走化性アッセイを利用して測定した。好中球走化性アッセイには、10ng/mlのIL−8を用いた。
【0072】
(結果)
インキュベートするアンモニアの濃度が高くなるにつれて、好中球のファゴサイトーシスが顕著に低下(図2)し、好中球走化性も顕著に低下(図3)した。
【実施例3】
【0073】
アンモニアが好中球のファゴサイトーシスに与える影響は、治療行為によって覆すことができる
(好中球のファゴサイトーシスおよび酸化的バーストを測定するための方法)
実施例1のとおり。
(患者および方法)
健康なボランティア(n=15)から血液を採取し、アンモニアおよび選択されたアミノ酸と共に1時間インキュベートした。好中球が細菌を貪食する能力を、ファゴテストアッセイを利用して測定した。
【0074】
(結果)
我々は、アンモニアにより誘導される好中球のファゴサイトーシスの減少は、オルニチンおよびグルタミンによってその一部を覆すことができること(図4)を観察した。しかしながら、アンモニアをアスパラギン酸と共に共インキュベートすることによって、好中球のファゴサイトーシスが悪化したが、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩と共に行った場合は変化しないままであった。
【実施例4】
【0075】
模擬的な消化管の出血により、イソロイシンの投与により部分的に覆すことができる好中球走化性が低下する
(方法)
一晩絶食させた、代謝的には安定した、生検によって肝硬変であることが確認された十名の患者[9名が男性で1名が女性;平均49.6歳(SEM 9.1);平均Child−Pughスコアが7.8(SEM 1.2)]について、ヘモグロビン分子を模倣した75グラムのアミノ酸混合物(Nutricia社、キーク(Cuijk)、オランダ)を経口投与する前、および経口投与から二時間後に試験を行った。その他の七名の患者[4名が男性で3名が女性;平均51.4歳(SEM 6.7);平均Child−Pughスコアが8.1(SEM 1.4)]においては、そのアミノ酸混合物の投与後に、イソロイシンを静脈内に2時間かけて(40mg/lのイソロイシンを含む等浸透圧の溶液を100ml/hrの速度で)投与した。末梢静脈血サンプルの好中球走化性(方法については実施例1を参照すること)および血漿アンモニアを測定した。
【0076】
(結果)
年齢を一致させた対照(53.3 SEM 4.6)と比較すると、これらの肝硬変の患者における好中球走化性は顕著に低下し、模擬的な出血後では31(±4.2)から8(±5.4)細胞/高倍率視野に顕著に低下した(p<0.0001)(図5)。アンモニアの血漿濃度は75.1(±4.2)から124(±8.5)に顕著に増加した(p<0.001)。アンモニアの濃度の変化は好中球走化性の変化と相関があった(r=0.65および<0.05)。模擬的な出血に伴って観察される好中球走化性の低下は、イソロイシンで治療を受けた患者群、25.4(±6.0)細胞/高倍率視野、では破棄された。
【実施例5】
【0077】
模擬的な出血によりタンパク質の合成が減少し、イソロイシンの不適切な酸化が刺激される
(方法)
一晩絶食させた肝硬変に罹患している五名の患者を募集した。バックグラウンドの同位体が濃縮されることを測定するための安定同位体の注入を始める前に、血液サンプルを採取し、呼気をサンプリングした。次いで、実験が終了するまで(t=480分間)、患者は、準備刺激された(primed)[1−13C]−イソロイシン(1mg/kg bw/h)の持続的な静脈内注入を受けた。
【0078】
(結果)
図6は、生理食塩水(黒色のバー)およびアミノ酸(灰色のバー)の注入の最後の時間の間に、イソロイシン(Wb Ra)およびイソロイシンの酸化が全身に現れる平均速度(値は平均値±SEM;#はp<0.05であることを示す)を示す。肝硬変に罹患している患者における上部消化管の出血は、イソロイシンが減少し、全身でのタンパク質合成が顕著に低下するという結果を招いた。酸化に用いられたイソロイシンの流れの割合は、模擬的な出血の後でも変化が無かったが、BCAAの拮抗効果の発生を示すところのイソロイシンの濃度の顕著な低下が生じた。
【実施例6】
【0079】
模擬的な出血が生じている間にイソロイシンを投与することでタンパク質の合成が促進されるが、アンモニアの濃度は低下しない
(方法)
代謝的に安定した十六名の患者であって、生検によって肝硬変であることが確認された患者について試験を行った。4時間に亘る模擬的な出血の間に、患者を、イソロイシン(40mg/L溶液;50ml/時間)を追加したもの、またはプラセボのいずれかについて無作為化した。(準備刺激されたL−[リング−2H5]フェニルアラニンの持続的注入を利用して測定した)タンパク質の合成、L−[リング−2H4チロシンおよびL−[リング−2H2チロシン)ならびにアンモニア。
【0080】
(結果)
この結果から、肝硬変に罹患している患者が模擬的に出血している間にイソロイシンを注入すると、肝臓および筋肉での損なわれたタンパク質の合成が回復し、これらの臓器における正味のタンパク質同化の状態に導くことが示された(表1)。アンモニアの濃度は両方の群で顕著に増加したが、イソロイシンまたはプラセボを投与した群の間に有意な差は無かった(図7)。
【実施例7】
【0081】
進行した肝硬変に罹患している患者にL−オルニチンL−アスパラギン酸塩を注入した後のアスパラギン酸塩の蓄積
(方法)
肝臓移植を待っている、進行した肝硬変に罹患している5名の患者(年齢:59;3名の男性、ChildクラスCの疾患、重篤な腹水症、クレアチニンは102umol/L)に、40g/日のL−オルニチンL−アスパラギン酸塩での治療を施した。
【0082】
(結果)
3日間の期間に亘って、基準値から5倍に増加するという顕著かつ漸増的なアスパラギン酸の濃度の増加が見られた(表2)。
データは、nmol/kg体細胞重量/分で表された平均±SEMである。終了時の値は、アミノ酸注入の最後の時間の平均値を意味する。肝臓および腎臓のタンパク質の合成のデータが、ヒドロキシル化について修正されている(方法を参照すること)。統計値:群内の差異についてのMann−Whitney Uテストについてのp値;群間において有意な差異は見られなかった
【実施例8】
【0083】
LOLAの投与によりアンモニアの濃度が低下するがアンモニアの再生成が可能になる
(患者および方法)
肝硬変に罹患している八名の患者(年齢56(5.6)、5M、ALD−6;グレード2 HE:4;グレード3−4 HE:4)を、LOLAの注入(8時間に亘って40g)によって治療した。アンモニアおよびグルタミンを測定するために、血液をサンプリングした。
【0084】
(結果)
この結果から、LOLAの投与が、グルタミンの濃度の上昇を伴ったアンモニアの濃度の顕著な低下を結果的に招くことが示された(図8)。アンモニアのこの減少は、HEの重症度に有益な効果をもたらした。しかしながら、LOLAを停止すると、循環しているアンモニアのレベルが反発的に増加し、改善した6名の患者のうち3名においてHEが再発するという結果を招いた。
【実施例9】
【0085】
グルタミンを能動的に除去することで、アンモニアの濃度の第二の上昇が防がれる
(患者および方法)
血液ろ過(CVVH)を受けた3名の患者(年齢は45(4.1) 2M、ALD、すべてHE グレード3、HRSはすべてが3)を、LOLAの注入(8時間に亘って40g)によって治療した。アンモニアおよびグルタミンを測定するために、血液をサンプリングした。
【0086】
(結果)
この結果から、LOLAがアンモニアの濃度の低下を結果的に招くが、透析を追加することで、付随するグルタミンの濃度の上昇を防いだことが示された(図9)。従って、我々はアンモニアの濃度の低下を持続できたことを確信している。
【実施例10】
【0087】
フェニルアセテートがグルタミンと結合して排出可能な化合物が作り出され、アンモニアの第二の上昇が防がれる
(患者および方法)
急性肝不全および重篤な脳障害(グレード3−4)に罹患している6名の患者(5名が非A非B型肝炎)を、LOLAおよびフェニルアセテート(8時間に亘って40g/日)によって治療した。
【0088】
(結果)
グルタミンの濃度の有意な増加は見られず、アンモニアのレベルは併用治療によって減少した(図10)。アンモニアの反発的な増加は見られなかった。
【実施例11】
【0089】
肝性脳症に罹患しているヒト患者におけるオルニチンおよびフェニルブチレートの効果
(患者)
1.群−一群あたり3名の患者。合計12名。
【0090】
2.試験対象の患者の基準
−成人の患者で18−80歳、−組織学または臨床上の基準によって立証された肝硬変
−HEタイプC、−アンモニア濃度>80umol/L、インフォームド・コンセント/承知済み
【0091】
3.臨床試験除外基準
−その他の付随する神経疾患、−アンモニアを減少させる別の特定の薬物の使用、−機械的な換気および鎮静剤を必要とする呼吸不全、−制御できない消化管の出血、−変力作用薬を必要とする低血圧症、明白な腎不全(クレアチニン>2mg/dl)、血液透析、−体外での肝補助、任意の試験薬物に対しての公知の過敏症、−妊婦。
(精神状態の評価)
【0092】
(方法)
非盲検の試験において、われわれは8名の肝硬変および高アンモニア血症に罹患している患者を含めた。彼らは同等の肝臓病の重症度であった(表3を参照すること)。3日間の間、次の療法の一つによって彼らを治療し、5日間観察を行った。この試験の群は次の通り:
(i) プラセボ:5%のデキストロースを4時間;
(ii) オルニチンのみ:0800と1200との間で、500mlの5%デキストロース中の20g;
(iii) フェニルブチレート:一日に10gを二回、経口(0800および1600);ならびに
(iv)オルニチン+フェニルブチレート:0800と1200との間で、500mlの5%デキストロース中に20g+一日に10gを二回、経口(0800および1600)。
【0093】
深夜の0000から午前0800まで患者を一晩絶食させた。0800に開始する1g/Kgのタンパク質食および深夜に終了することを含めて、彼らの胃内に25KCal/Kgの食物を供給した。血液を午前0730にサンプリングし、次いで1800時にアンモニアおよびグルタミンの測定を行った。副作用について、患者を厳密に監視した。それぞれの群において、薬物は十分に許容され、有害事象は見られなかった。
SBP:自発性細菌性腹膜炎、非アルコール性脂肪性肝炎、ICU:集中的な治療補助を必要とする、HRS:肝腎症候群
【0094】
(結果)
図11は、プラセボ群においては、治療期間にわたってアンモニアの平均レベルは大きく変化すること無く維持されていることを示す。L−オルニチンおよびフェニルブチレート群においては、アンモニアの濃度はベースラインの値から増加していた。L−オルニチンおよびフェニルブチレートの両方で治療した群においては、アンモニアが実質的に減少した。OP治療した動物においては、アンモニアの濃度が低下したことに加えて、食後のアンモニアの増加が減少した。OP群における両方の患者は、3日目までに脳障害スコアが2グレード分まで改善された。このことは、その他の6名の患者のいずれにも見られなかった。
【0095】
図12は、OP群においては、アンモニアが減少したのにもかかわらず、治療期間に亘ってグルタミンの平均レベルは大きく変化すること無く維持されていることを示す。フェニルブチレート群では、グルタミンが減少していたが、このことは恐らくかなり有害である。L−オルニチンおよびプラセボ群においては、グルタミンの濃度が上昇した。このことは食後の状態において特に目立った。
【0096】
図13は、プラセボ、O、PおよびOPで治療された群における精神状態の変化を示す。
【実施例12】
【0097】
肝性脳症に罹患しているヒトの患者におけるオルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンの効果
(患者)
1.群−一群あたり2名の患者。合計6名
【0098】
2.試験対象の患者の基準
−成人の患者で18−80歳、組織学または臨床上の基準によって立証された肝硬変、Child BまたはC、静脈瘤からの消化管の出血が最近あった(<発症から6時間)、インフォームド・コンセント/承知済み。
【0099】
3.臨床試験除外基準
−その他の付随する神経疾患、アンモニアを減少させる別の特定の薬物の使用、機械的な換気および鎮静剤を必要とする呼吸不全、制御できない消化管の出血、変力作用薬を必要とする低血圧症、明白な腎不全(クレアチニン>2mg/dl)、血液透析、体外での肝補助、任意の試験薬物に対しての公知の過敏症、妊婦/授乳期。
【0100】
(方法)
非盲検の試験において、我々は6名の肝硬変に罹患している患者を含め、彼らは静脈瘤出血を管理するために入院した。彼らは同等の肝臓病の重症度であった(表4を参照すること)。3日間の間、次の療法のひとつによって彼らを治療し、5日間観察を行った。この試験の群は次のとおり:
i.プラセボ:5%のデキストロースを4時間(250ml)かけて投与
ii.イソロイシンのみ:250mlの5%デキストロース中の10グラムのIVを2時間かけ、二回に分けて投与。
iii.イソロイシン+オルニチン+フェニルブチレート:イソロイシン:250mlの5%デキストロース中の10グラムのIVを2時間かけ、二回に分けて投与;オルニチン:250mlの5%デキストロース中の20g(t=0;24、48時間);フェニルブチレート:一日に10gを二回、経口(t=0、12、24、36、48時間)。
【0101】
深夜の0000から午前0800まで患者を一晩絶食させた。0800に開始する1g/Kgのタンパク質食および深夜に終了することを含めて、彼らの胃内に25KCal/Kgの食物を供給した。午前0730に血液をサンプリングし、次いで1800時にアンモニアおよびグルタミンを測定した。副作用について、患者を厳密に監視した。それぞれの群において、薬物は十分に許容され、有害事象は見られなかった。開始時の内視鏡検査で患者に鎮痛剤を与えたので、精神状態の評価を判断することはできなかった。プラセボ群およびイソロイシン群のそれぞれにおいて、病院内で多臓器不全のために一人の患者が死亡した。残りの患者は生存していた。
SBP:自発性細菌性腹膜炎、非アルコール性脂肪性肝炎、ICU:集中的な治療補助を必要とする、HRS:肝腎症候群
【0102】
(結果)
図14は、プラセボ群およびイソロイシン群におけるアンモニアの濃度には顕著な変化がないことを示す。OIPで治療した群においては、アンモニアの濃度が実質的に減少した。
【0103】
図15は、グルタミンのレベルは、イソロイシン、プラセボまたはOIPのいずれかの投与によっても顕著に変化しないことを示す。OIP群のみにおいて、アンモニアが実質的に減少した。
【0104】
図16は、OIPが作用するであろう代替物(alternative)が、アンモニアを生じさせるアミノ酸であるグリシンを減少させると考えられることを示す。グリシンの実質的な減少はOIP群のみにおいて見られる。
【0105】
図17は、群のそれぞれにおいて始まるイソロイシンのレベルは極めて低いが、イソロイシンで治療した群では正常値の二倍にまで増加することを示す。プラセボ群における濃度は低いままで変化がない。
【0106】
図18は、治療過程の間の患者におけるオルニチンのレベルの変化を示し、オルニチンの濃度の上昇が顕著に維持されたことを示す。薬物を停止した時点で基準値にむけて顕著に低下し、このことは、異なる組織で取り込みが行われていることを示す。
【実施例13】
【0107】
胆管が結紮されたラットにおけるオルニチンおよびフェニルブチレートの効果
(方法)
胆管結紮(BDL)による肝硬変の誘導
この手法のために、オスのSprague−Dawleyラット(200−250g)を用いた。麻酔処理の後、正中開腹術を行った。胆管を暴露し、4.0の絹製縫合糸で三重に結紮し、第二の結紮および第三の結紮の間で切断した。吸収性縫合糸で層を作ることで傷口を閉じ、動物の飼育場所に戻す前に、隔離室でこの動物を回復させた。一定の温度(20℃)で12時間の明/暗サイクルにて、水および標準的なげっ歯類用の固形飼料の摂取は自由とした中で動物を保持した。
【0108】
BDL(またはシャム手法)から五週間後に、動物はげっ歯類用の固形飼料から、ヘモグロビンの組成ををまねたアミノ酸混合物(2.8g/Kg/日、Nutricia キーク(Cuijk)、オランダ、製品番号24143)が添加された完全な液体食物(Liquidiet、Bio-Serv、フレンチタウン ニュージャージー、USA)に変更した。六週間目に、麻酔下で右頸動脈にカテーテルを挿入し、血液サンプルを繰り返し採取するために用いた。試験製剤をIP注入によって投与する前に、この手法に従ってベースラインのサンプルを集めた。試験群は次のようであった:BDL対照+生理食塩水(n=5)、生理食塩水IP中のBDL+オルニチン(0.22g/Kg、n=6)、生理食塩水IP中のBDL+フェニルブチレート(0.3g/Kg、n=7)、生理食塩水IP中のBDL+OP(0.22g/Kg / 0.3g/Kg、n=7)。
【0109】
予め冷却しておきヘパリン処理した試験管内に血液サンプルを集め、処理の前に氷上で冷却した。遠心分離(3,000rpm、10分間)の後で血漿を集め、分析の前に−80℃で貯蔵した。
【0110】
COBAS Mira Sを用いて、製造メーカーの説明書に従って、アンモニア、グルコース、乳酸塩および尿素を測定した。蛍光検出を伴ったHPLCでアミノ酸を定量した。
【0111】
(結果)
肝硬変の胆管を結紮したラットのモデルにおいて、動脈の血漿アンモニアのレベル(205±11 μモル/L、平均±SEM)は、健康な対照(25.6±2μモル/L、p<0.001、データは示さず)と比較して実質的に増加している。このモデルでは、我々は、生理食塩水処理したプラセボ群において、三時間の間に動脈のアンモニアのレベルは変化しなかったことを見出した。
【0112】
図19は、生理食塩水(BDL対照、n=5)、オルニチン(Orn、0.22g/Kg、n=6)、フェニルブチレート(PB、0.3g/Kg、n=7)およびオルニチン、フェニルブチレート(OP、0.22g/Kg + 0.3g/Kg、n=7)のIP注入後の、BDL肝硬変のラットにおける動脈の血漿アンモニアのレベルの変化を示す。*は、3時間の時点でのOP対Ornについてpが0.05未満(p<0.05)であることを示す(2 way ANOVA)。
【0113】
この図は、オルニチンで治療した動物において、アンモニアの濃度のかすかな低下が検出されたことを示すが、これはプラセボと異なっていたことは見出せなかった。フェニルブチレートで治療された群においては、血漿アンモニアの顕著な増加が1時間後に見出された(その他のすべての群に対してp<0.01)が、三時間の時点ではこの違いがより小さくなることが分かった。この発見は、フェニルブチレート(フェニルアセテート)が、グルタミンの濃度の上昇を伴った対象に対して唯一効果的であるという仮説に適合する。代謝されてグルタミンを形成することができるオルニチンを追加しなかった動物においては、Pのみの効果は望ましくなく、有害でさえあり得る。オルニチン+フェニルブチレート(OP)で治療された群では、アンモニアのレベルの顕著な低下が見られた。これらの動物においては、試験期間中の三時間に亘ってアンモニアの減少が継続することが測定され、このレベルは試験の終了時においては、オルニチンのみの群のレベルよりもはるかに少ないことが分かった(p<0.05)。
【0114】
このことは、OPの組み合わせは、O単独またはP単独のいずれかよりもはるかに血漿アンモニアを減少させる効果があることを明白に実証している。さらに、Pのみで治療した動物においては、アンモニアの血漿のレベルの上昇は有害であるかもしれない。
【0115】
サンプルのサブセットについて、我々はOまたはOPのIP投与後のオルニチンの血流への取り込みについて試験した。図20は、追加された群における動脈のオルニチンの濃度を示す。両方の群において、IP注入から1時間後の時点で、血漿オルニチンの濃度は顕著に増加し、続いてこのオルニチンは体内で代謝されるので、3時間の時点で減少することが明らかであり得る。これらの群の間では、任意の時点において血漿オルニチンの濃度の有意な差は見出せなかった。
【0116】
選択された投与方法がこれらの動物内でオルニチンを効果的に送達することが実証されたので、この発見は重要である。さらに、迅速な取り込みおよび観察される血漿レベルの減少は、このアミノ酸の活性代謝が生じていることを示唆する。
【実施例14】
【0117】
胆管結紮ラットにおけるオルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンの効果
(方法)
オスのSprague−Dawleyラット(200−250g)をこの手法のために用いた。屠殺する前の48時間、動物を標準的なげっ歯類用の固形飼料から、ヘモグロビンの組成をまねたアミノ酸混合物(2.8g/Kg、Nutricia キーク(Cuijk)、オランダ、製品番号24143)を添加した完全な液体食物(Liquidiet、Bio-Serv、フレンチタウン ニュージャージー、USA)に変更した。屠殺する24時間前に、生理食塩水中のガラクトサミン(1g/Kg、Sigma、Poole UK)のIP注入によって急性肝不全(ALF)を誘導した(それぞれの群においてn=5)。屠殺する三時間に、OIP(生理食塩水IP中のオルニチン0.22g/Kg、イソロイシン0.25g/Kg、フェニルブチレート0.3g/Kg)の製剤または生理食塩水対照のいずれかで動物を処理した。実験の最後において、予め冷却しておきヘパリン処理した試験管内に動脈血を採取し、処理するまで氷上で保持した。血漿を集め、上記のように保持した。アンモニアを上記のように測定した。
【0118】
(結果)
動脈のアンモニアのレベルが、プラセボ対照と比較してOIPで治療された急性肝不全ラットにおいて顕著に低下したことを見出した(図21)。この試験は、イソロイシンをオルニチンおよびフェニルブチレート(フェニルアセテート)と組み合わせたものが血漿アンモニアを効果的に減少させ得るかどうかを試験するために設計された。ヒトでの試験において、イソロイシン単独ではアンモニアのレベルに影響を与えられないことは既に実証されているが、OおよびPと組み合わせた効果については以前より調べられていない。
【0119】
図21は、生理食塩水プラセボ(ALF)およびOIP処理されたもの(ALF+OIP)についての高アンモニア血症性の急性肝不全モデルにおける、動脈の血漿アンモニアのレベルを示す。p<0.01という有意なレベルがこれら二群間に見られた(T−Test)。
【0120】
この発見は、イソロイシンをオルニチンおよびフェニルブチレートと組み合わせたものは、アンモニアのレベルを効果的に低下させるという仮説を支持する。タンパク質の合成について既に記載されたイソロイシンの有益な効果とは別である。
【実施例15】
【0121】
血管を切除されたブタモデルにおけるオルニチンおよびフェニルブチレートの効果
(方法)
五頭のブタを、四群:急性肝不全(ALF)+プラセボ+プラセボ(n=2);ALF+オルニチン+プラセボ;ALF+フェニルブチレート+プラセボ;ALF+オルニチンおよびフェニルブチレートに無作為化した。このブタは、大腿動脈および静脈、門脈、腎静脈および肺動脈に挿入されたカテーテルを有していた。プラセボまたは治療薬の注入を開始した時の−1hrの時点で、この実験を開始した。
【0122】
1.プラセボ:5%のデキストロースを3時間かけて投与、経口で水のプラセボ
2.オルニチンのみ:0.3g/Kg、5%のデキストロースを3時間かけて静脈内に滴下
3.フェニルブチレート:0.3g/Kg、5%のデキストロースを3時間かけて胃内に供給
オルニチン+フェニルブチレート:0.3g/Kg、5%のデキストロースを3時間かけて静脈内に滴下し、0.3g/Kg、5%のデキストロースを3時間かけて胃内に供給した。
【0123】
門脈を下大静脈に吻合することでALFを誘導し、次いで肝臓動脈の結紮(血管切除)=0時間の時点;注入を停止した=+2時間の時点および実験を終了した=8時間の時点。局所的なアンモニアおよびアミノ酸の変化を測定するために、血液および尿のサンプルを0時間、1時間、3時間、5時間、7時間および9時間の時点で集めた。実験の最後に、ブレインウォーターの測定のために、前頭皮質の部分を取り出した。
【0124】
(結果)
オルニチンの注入後に、細胞内でのグルタミン酸の生成および胃内への複合化したフェニルアセテートの供給という結果に至ることは、肝不全のこの悲劇的なモデルにおける全アンモニアのレベルおよびグルタミンの利用性が劇的に変化することを示唆する。
【0125】
プラセボで処理された動物において血管切除した時から、動脈のアンモニアの濃度が経時的に一貫して上昇し(図22)、いくらか筋肉が生成し(図23)、そして多量のアンモニアが内臓からもたらされる(図24)。この動物は、少量の筋肉のグルタミンが放出され(図25)、かなりの内臓のグルタミンが取り込まれる(図26)ことを示す。
【0126】
オルニチン単独で動物を治療したケースにおいては、アンモニアの早期の上昇は当初は鈍いが、その後は実験の終了時において最も高くなる(図22)。この動物においては筋肉によって、筋肉から放出された類似の量のグルタミンと共に、アンモニアの正味の量が取り込まれ(図24)、−内臓によるグルタミンの取り込みの増加(図26)を伴うプラセボで処理された動物(図25)と比較される。
【0127】
フェニルブチレート単独でも、動脈のアンモニアのレベルが当初は鈍化することが示され、実験終了時のオルニチン単独に匹敵するレベルにまで直ぐに上昇するが(図22)、筋肉のアンモニアの取り込みにはほとんど変化がない(図23)。しかし内臓でかなりの量のアンモニアが生成する(図24)。興味深いことには、プラセボで処理された動物と比較して、フェニルブチレート単独での治療によって筋肉によりグルタミンが正味の量除去されるが(図25)、内臓のグルタミンの取り込みにほとんど影響を与えない(図26)。
【0128】
オルニチンとフェニルブチレートとの組み合わせは、動脈のアンモニアのレベルに最も大きな衝撃を与えた。実験の終了時に、その他のすべての動物と比較して、循環しているレベルを大幅に低下させた(図22)。アンモニアは、この動物の筋肉によって、血液から能動的に除去され(図23)、内臓のアンモニアの生成が大きく減少する(図24)。筋肉のグルタミンの放出が、プラセボおよびオルニチン単独で治療された動物の両者と比較して多いことに注目することは興味深い(図25)。筋肉におけるグルタミンの生成がこのように増加するにもかかわらず、内臓のグルタミンの取り込みは実質的に減少する(図26)。
【0129】
オルニチンで治療された動物における、循環しているオルニチンのレベルの増加を実証し、図27に示す。
【0130】
血管切除および治療行為が動脈のグルタミンに与える影響を図28に示す。オルニチンで治療した動物において、循環しているグルタミンのレベルは上昇するが、これはフェニルアセテートを同時投与することによって改善される。興味深い発見としては、オルニチンおよびフェニルブチレートの両方で治療された動物において、動脈のグリシンレベルの実質的な改善が見出されたことであった(図29)。
【0131】
実験の終了時において、脳の前頭皮質を取り出しブレインウォーターの含量を測定した(図30)。
【0132】
独立した病理学者が、これらの実験動物における脳の細胞解剖学について報告した。彼の報告を以下に要約する。
【0133】
ALF:小胞の周囲にある血管周囲に浮腫を伴う微細血管。小胞で取り囲まれ、壊死性の変化を伴うニューロン。
【0134】
ALF+O+P:小胞の周囲にある血管周囲に浮腫を伴う微細血管(ALF未満でありあらゆる治療を伴わない)。細胞内の浮腫。
【0135】
Sham:最小限の微細構造の変化を伴う脳組織=正常な脳組織。
【0136】
(結論)
本発明者らは、慢性肝臓病に関係する急性の発作のいくつかの症状を刺激すること、たとえばアンモニア濃度の上昇または消化管の出血を刺激することは、好中球の機能の低下を結果的に招くことを見出した。そしてこのような低下を、オルニチンまたはイソロイシンによって部分的に覆すことができることを見出した。オルニチンおよびイソロイシンの両者が好中球の機能を救うことは、肝臓の代償不全の進行において、共通する誘発因子である敗血症の予防において重要な役割を果たす。
【0137】
さらに、本発明者らは、イソロイシンは、模擬的な消化管の出血の後のアンモニアの濃度の上昇に影響を与えないことを見出した。従って、イソロイシンの投与時にタンパク質の合成が刺激されることによりアンモニアのレベルが低下するであろうという仮説に反して、アンモニアのレベルは影響を受けない。従って、イソロイシンをオルニチンと組み合わせて用いること(これによりアンモニアのレベルが低下することが知られている)は特に有利である。
【0138】
従って、オルニチンおよびイソロイシンを投与することによって、消化管の出血が代謝された帰結が予防される。アンモニアのレベルの上昇が鈍くなると、イソロイシンの欠乏が補正され、好中球の機能が救われる。従って、オルニチンおよびイソロイシンを併用することによって、誘発事象の後の患者に肝臓の代償不全が発生することを予防するための新たな治療法が提供される。
【0139】
本発明者らはさらに、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩(LOLA)(これは肝性脳症に罹患している患者におけるアンモニアを減少させるのに用いられる)はアンモニアの好中球の機能への影響を逆転させないことを見出した。従って、オルニチンのみを用いることは、LOLAを用いることよりもさらに有利である。というのは、オルニチンはアンモニアを減少させること、および好中球の機能を救うことの両方を行うことができるからである。さらに、LOLAのアスパラギン酸成分は体内で蓄積する。アスパラギン酸のこのような蓄積は、実際のところ患者にとって有害であろう。というのは、アスパラギン酸はアンモニアによる好中球の機能への影響を悪化させ、さらに好中球の機能を低下させるからである。それゆえ、オルニチンをイソロイシンと組み合わせて、好ましくはアスパラギン酸塩の不在下で用いることで、肝臓の代償不全の発症の予防または遅延を実現することができる。
【0140】
さらに、本発明者らは、肝性脳症(HE)に罹患している患者をL−オルニチンLアスパラギン酸塩(LOLA)で治療することによってアンモニアのレベルが減少し、結果としてグルタミンのレベルが増加したことを見出した。しかしながら、グルタミンは再循環し腎臓および小腸内でアンモニアが再生成し得ることから、これは一時的なアンモニアの緩衝物に過ぎない。従って、LOLAのみでの治療によりアンモニアのレベルの第二の上昇が導かれる可能性があり、さらには肝性脳症の病状の一因となる可能性がある。
【0141】
尿素回路に障害を持つ子供にフェニルアセテートまたはフェニルブチレートを用いることによって、異常に高いグルタミンのレベルが低下する。対照的に、実施例1に示されるように、アンモニアのレベルを低下させるがグルタミンのレベルを上昇させるLOLAで治療しない限り、HEに苦しむ患者のグルタミンのレベルは正常である。従って、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを使用することによってグルタミンの除去が可能となり、その結果HEに罹患している患者におけるアンモニアのレベルの第二の上昇が予防される。
【0142】
従って、オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つと、好ましくはアスパラギン酸塩の不在下で組み合わせて投与することによって、肝性脳症のための改善された治療を達成することができる。
【0143】
肝硬変に罹患している動物モデルさらにはヒトにおける我々の広範囲な調査によって、肝硬変に罹患している患者内のアンモニアを除去する主要な臓器は、アンモニアをグルタミンに変換する筋肉であり、グルタミン酸がそこで利用される反応であるという見解が支持される。肝不全においては、この反応を担う酵素、グルタミンシンテターゼが誘導され、グルタミン酸が供給されることによってアンモニアの無毒化が促進される。
【0144】
オルニチン、グルタミン酸の前駆体、はグルタミンに変化することによってアンモニアを無毒化する。しかしながら、我々の予備的な研究から、このグルタミンが再循環し、アンモニアが再生成することが示された。我々の発明は、アンモニアをグルタミンに無毒化するだけではなく、さらに生成される過剰のグルタミンを削減する新たな方法を提供する。従って、OPは、それぞれのもの単独よりも、肝硬変および高アンモニア血症に罹患している患者におけるアンモニアの濃度を極めて顕著に減少させる。この効果は相加的ではなく、明らかに相乗的である。さらに、OPの投与によって、食後のアンモニアの増加が抑制される。このことによって、非代償性肝硬変に罹患している患者に、高アンモニア血症のリスクを伴わないタンパク質に富む食物を供給することが可能となるかもしれない。アンモニアの減少は精神状態の改善に関係した。グルタミンの増加を防ぐことによって、アンモニアの濃度の低下が実現する。このことは、オルニチンは筋肉内でのグルタミンの生成を促進する(それによって1分子のアンモニアを捕捉する)が、このグルタミンが(もしかするとフェニルアセテートの付加物として)排出されてグルタミンの全身の増加を抑制し、それによって反発的な高アンモニア血症を防止する、という仮説と一致する。
【0145】
尿素サイクルの障害に罹患している高アンモニア血症の幼児において、フェニルアセテートがアンモニアを減少させるという立証された知識は、アンモニアがグルタミンに捕捉され、グルタミンがフェニルアセテートグルタミン付加物として排出するために腎臓を往復するということである。これらの幼児はアンモニアが高く、さらに重要なことにはグルタミンも高い。逆に言えば、肝硬変の患者はアンモニアが高く、グルタミンが正常〜少ない。上記のブタのモデルはグルタミンは上昇しておらず、肝臓を単離した後でアンモニアのレベルが劇的に上昇する。
【0146】
オルニチン単独での治療により血液のグルタミンが上昇するのに対して、アンモニアのレベルは影響を受けない。フェニルブチレート単独ではグルタミンがわずかに上昇し、そしてアンモニアのレベルへの影響は再び軽微である。まったく対照的に、高アンモニア血症をエスカレートさせるというこの破滅的なモデルでは、オルニチンおよびフェニルブチレート(OP)の両者の組み合わせにより、循環しているアンモニアがかなり減少し、オルニチン単独において見られたグルタミンの増加が改善する。グリシン、アンモニアを生じさせるアミノ酸、はすべての動物で増加するが、OPで治療した動物でのみ、このアミノ酸の増加は実質的に鈍かった。このことから、この形態の治療行為についてのさらなる利益が示唆される。高濃度のアンモニアの立証された結果は、脳の水分含量の増加としての脳腫脹ということである。オルニチンのみで治療されたブタからの脳から、水分含量がかなり増加する一方、オルニチンおよびフェニルブチレートを組み合わせたものによってブレインウォーターの含量が減少することが示される。組織学的には、プラセボで処理された動物と比較して、オルニチンおよびフェニルブチレートの併用治療が行われた動物の脳の微細構造には、明らかな傷がほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】好中球の機能が肝硬変に罹患している患者において変化し、肝臓病の重症度を増し悪化させることを示す。
【図2】アンモニアが好中球のファゴサイトーシスを減少させることを示す。
【図3】アンモニアが好中球走化性を減少させることを示す。
【図4】アンモニアが好中球のファゴサイトーシスに与える影響を治療行為によって覆すことが出来ることを示す。
【図5】模擬的な消化管の出血により、イソロイシンの投与により部分的に覆すことができる好中球走化性が減少されることを示す。
【図6】模擬的な出血によりタンパク質の合成が減少され、イソロイシンの不適切な酸化が刺激されることを示す。
【図7】模擬的な出血の間にイソロイシンを投与することでタンパク質の合成が高められるが、アンモニアの濃度は減少させないことを示す。
【図8】LOLAの投与によりアンモニアの濃度が減少するが、アンモニアの再生成が可能となることを示す。
【図9】グルタミンを能動的に除去することで、アンモニアの濃度の第二の上昇を防ぐことを示す。
【図10】フェニルアセテートがグルタミンと結合して排出可能化合物が作り出され、アンモニアの第二の上昇を防ぐことを示す。
【図11】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチンおよびフェニルブチレートがアンモニアのレベルに与える効果を示す。
【図12】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチンおよびフェニルブチレートがグルタミンのレベルに与える効果を示す。
【図13】プラセボ、O、PまたはO+Pで治療された患者の精神状態の変化を示す。
【図14】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがアンモニアのレベルに与える効果を示す。
【図15】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがグルタミンのレベルに与える効果を示す。
【図16】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがグリシンのレベルに与える効果を示す。
【図17】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがイソロイシンのレベルに与える効果を示す。
【図18】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがオルニチンのレベルに与える効果を示す。
【図19】胆管結紮ラットモデルにおける、オルニチンおよびフェニルブチレートが動脈のアンモニアに与える効果を示す。
【図20】胆管結紮ラットモデルにおける、オルニチンおよびフェニルブチレートが血漿オルニチンに与える効果を示す。
【図21】高アンモニア血症性急性肝不全ラットモデルにおける、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンが動脈の血漿アンモニアのレベルに与える効果を示す。
【図22】OPで治療された、血管を切除された急性肝不全のブタモデルにおける、動脈のアンモニアの控えめな上昇を示す。
【図23】OおよびOPで治療された動物において、筋肉によって血液からアンモニアが除去されたことを示す(大腿静脈−動脈からサンプルを取り出した)。対照的に、プラセボおよびP単独の動物は、筋肉によるアンモニアの生成の増加を示す。
【図24】OPで治療された動物以外のすべての動物において、内臓によってアンモニアが生成されることを示す(門脈系臓器−動脈からサンプルを取り出した)。
【図25】分離して用いたPではなくOによって、筋肉のグルタミンの放出が増加することを示す。OPにより、筋肉のグルタミンのより顕著な放出が生じた(それによって筋内でアンモニアがグルタミンとして補足される)。
【図26】内臓のグルタミンの取り込みがOによって促進されるが、OPによって減少されること(それによって内臓でのアンモニアの生成が減少される)を示す。
【図27】動脈のオルニチンレベルが、それが投与される二種の動物(O単独の群およびOP群)において増加することを示す。
【図28】動脈のグルタミンのレベルがOによって上昇するが、OPによってはそれほどでもないことを示す。
【図29】OPの組み合わせにより、アンモニアを生成するアミノ酸のグリシンの増加が抑制されることを示す。
【図30】オルニチン単独ではブレインウォーターの増加を生じさせ、フェニルアセテートによりブレインウォーターが若干減少する一方、これらの物質を組み合わせるとブレインウォーターが実質的に減少すること(対照%)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓の代償不全または肝性脳症の予防または治療に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性肝臓病は、長期に亘って肝組織が徐々に破壊されることに特徴があり、それによって健康に再生する肝組織が徐々に瘢痕組織および壊死組織に置換される。これは肝硬変として知られている。正常な肝機能が損なわれ、瘢痕組織により肝臓を経由する血流量が徐々に減少する。正常に再生する肝組織が失われるので、栄養素、ホルモン、薬物および毒物はもはや効果的に処理されることはない。
【0003】
このことは結果的に、アンモニアの蓄積に至る、腸管を経て吸収されたタンパク質の異常なクリアランス;血中へのビリルビンの蓄積に至り、黄疸を生じさせる異常な排出;腹部における液体の蓄積(腹水症)に至る類洞の血圧の上昇;および門脈の血圧の上昇および食道静脈瘤に至る、瘢痕が生じた肝組織が血流を障害するものとして機能する門脈圧亢進症(および門脈体静脈シャント)を含む症状になり得る。
【0004】
慢性肝臓病に罹患している患者はかなり安定した臨床状態であり得、症状をほとんどまたは全く現さない。しかしながら、このような患者にはその状態が急激に悪化するリスクがあり、アキュート・オン・クロニック(acute-on-chronic)肝不全に至る可能性がある。「代償的」状態、すなわちレベルが低下したにも関わらず肝臓が機能することができる状態、から「非代償的」状態、すなわち肝機能が喪失した状態へのこの移行は、誘発事象(precipitating event)の作用に関与する。慢性肝臓病に関係する誘発事象は、消化管の出血、感染症(敗血症)、門脈血栓症および脱水症を含む。
【0005】
たとえば、肝硬変に罹患している患者の肝臓の50%に食道静脈瘤があり、これらの患者の三分の一では、診断から二年以内に食道静脈瘤が破裂し、消化管の出血が生じることになる(Grace ND (1992) Gastroenterol Clin North Am 21: 149-161)。上部消化管の出血により、生命に関わる合併症、たとえば細菌性腹膜炎、敗血症、腎不全および肝性脳症が起こりやすくなることが知られており(Teran et al. (1997) Gastroenterology 112: 473-482; Garden et al. (1985) Br J Surg 72: 91-95; Pauwels et al. (1996) Hepatology 24: 802-806; Bleichner et al. (1986) Br J Surg 73: 724-726)、出血を適切に制御しても、約30%の患者が死亡する結果となる(Grace 1992 上掲)。
【0006】
肝性脳症(HE)は、様々な臨床状態、たとえば急性または慢性の肝臓病および自発性の門脈体静脈シャントにおいて生じる神経精神医学上の複雑な障害である。肝性脳症の初期段階では、精神的なわずかな変化、たとえば集中力の低下、混乱および方向感覚の喪失が生じる。重篤なケースでは、肝性脳症は昏迷、昏睡状態、脳腫脹(脳浮腫)および死に至る可能性がある。慢性肝臓病の結果としてHEに進行した患者のケースにおいては、多くの場合、HEの発症は臨床的に誘発事象、たとえば消化管の出血、敗血症(感染症)、門脈血栓症または脱水症の結果である。
【0007】
消化管の出血および門脈体静脈シャントによって、有害物質(これは通常肝臓で代謝される)が肝臓を迂回し、体循環に入り、そして血液脳関門を乗り越えることが可能となり、中枢神経系に直接的または間接的な神経毒性作用を与える。アンモニアの蓄積は、肝性脳症および多臓器不全(呼吸不全、心血管不全、腎不全)の進行において重要な役割を果たすものと考えられる。アンモニアに加えて、さらに消化管の出血の直後に発症する敗血症(または細菌性腹膜炎)も肝性脳症の要因である可能性が高い。
【0008】
肝臓の代償不全は次いで多臓器不全および肝性脳症に至る可能性がある。肝性脳症の初期段階においては、精神的なわずかな変化、たとえば集中力の低下すなわち簡単な物体を組み立てる能力が無いことが生じる。重篤なケースでは、肝性脳症が昏迷、昏睡状態、脳腫脹および死亡に至ることもあり得る。
【0009】
慢性肝臓病に罹患している患者についての予後を予測することは難しい。なぜなら、その状態には多数の原因があるからである。代償的状態から非代償的状態への進行を最小化するための予防対策としては、状態を悪化させるであろう原因物質をさらに避けることが挙げられ、たとえばアルコールを完全に絶つこと、ならびにA型肝炎およびB型肝炎に対するワクチンの接種がある。
【0010】
しかしながら、肝臓の代償不全が一度でも生じると、生存する可能性が低下し、そして肝臓移植が寿命を延ばすことができる唯一の治療である。これは推定寿命の短縮につながる肝臓の代償不全であるので、肝臓の代償不全の発生を予防することが非常に望ましい。
【0011】
肝性脳症に罹患している患者に対する一般的な治療法には、アンモニアの濃度を低下させる計画が必要である。これらには、食事性タンパク質の摂取の制限;ラクツロース、ネオマイシン、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩(LOLA)または安息香酸ナトリウムの投与;および浣腸による洗浄が挙げられる。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、患者において肝臓の代償不全または肝性脳症(HE)を予防または治療するための、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用に関する。たとえば消化管の出血に起因し得るイソロイシン欠乏症を有するこれらの患者に、さらにイソロイシンを投与してもよい。従って、本発明は次のものを提供する:
−肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つと組み合わせて使用する薬剤の製造における、オルニチンの使用;
−肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、オルニチンと組み合わせて使用する薬剤の製造における、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用;
−肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための薬剤の製造における、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用;
−肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、同時使用、分離(separate)使用または連続使用を行うためにオルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む生成物;
−オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む医薬組成物;
−オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む、肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための薬剤;ならびに
−肝臓の代償不全または肝性脳症を有するかまたはそのリスクを有する患者を治療する方法であって、有効量のオルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを当該患者に投与することを含む方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本明細書および添付の請求の範囲の全体に亘って、「comprise」および「include」という用語、ならびに「comprises」、「comprising」、「includes」および「including」などの変形物は、包括的に解釈されるべきである。すなわち、これらの用語は、文脈が認める場合において、明確には列挙されていないその他の要素または整数を包含する可能性を伝えることを意図するものである。
【0014】
本発明は、肝臓病に罹患している患者を早期に、肝臓の代償不全に進行する前に、従って肝性脳症が生じる前に治療して、肝臓の代償不全の発症を予防することまたは遅延させることに関する。あるいは、本発明は、アンモニアの濃度を効果的に低下させ、好中球の機能を維持することによる肝性脳症の治療に関する。
【0015】
治療される対象
本発明は、肝臓の代償不全または肝性脳症の予防または治療に関する。従って、対象の肝臓は代償的状態であってもよい。対象は慢性肝臓病であってもよい。対象は肝硬変であってもよい。対象は急性肝不全であってもよい。治療される対象は肝性脳症であってもよい。
【0016】
急性および慢性の肝臓病の発症は、生体異物性の原因によるものであってもよい。たとえば、対象が肝臓に障害を与える化学物質、薬物またはその他のいくつかの物質にさらされていてもよい。対象が肝臓に障害を与える市販の薬物、処方された薬物または「気晴らしのための(recreational)」薬物に対して反応してもよい。対象が肝臓に障害を与えると考えられるRezulin(商標)(トログリタゾン;Parke-Davis社)、Serzone(商標)(ネファゾドン;Bristol-Myers Squibb社)またはその他の薬物を摂取していてもよい。対象が特定の薬物を過剰摂取した者、すなわち肝臓に障害を与え得る薬物の推奨された投与量を超えて摂取した者でもよい。たとえば、対象がパラセタモールを過剰量摂取していてもよい。対象が肝臓に障害を与え得る化学物質に、たとえば彼らの職場でさらされていてもよい。たとえば、対象が工業上の事情または農業上の事情におけるこのような化学物質にさらされていてもよい。対象が肝臓に障害を与え得る化合物を含む植物を食べていてもよい。特にこのことは、対象が動物、たとえば草食動物である場合に起こり得る。たとえば、対象がピロリジジンアルカロイドを含む植物、たとえばサワギクを食べていてもよい。対象が環境中にある、肝臓病を引き起こすと考えられる毒物にさらされていてもよい。
【0017】
薬物に関連する肝臓毒性は、急性肝臓病(急性肝不全)に罹患しているすべての患者のうちの50%を超える患者を含む。アセトアミノフェン(パラセタモールおよびN−アセチル−p−アミノフェノールとしても知られている)の毒性は、合衆国および英国における急性肝不全の最も一般的な原因である。アセトアミノフェンを治療目的でまたはいくぶん過剰に摂取する、長期間に亘ってアルコールを中程度〜大量に消費する者は、重篤な肝損傷のリスクを有し、急性肝不全になるかもしれない。アルコールの摂取により、アセトアミノフェンが毒として作用することになり得る。特異体質性薬物毒性も急性肝不全の一因である。特異体質性薬物毒性は、対象が薬理学的に異常なやり方で薬物に反応するという過敏な反応であると考えられる。この異常な反応は、急性肝不全につながり得る。
【0018】
急性肝不全または慢性肝臓病が、病原性生物による感染症によって引き起こされたものでもよい。たとえば、肝臓病がウイルスの感染症が原因でもよい。とりわけ、対象が肝炎を引き起こすウイルスに感染しているか、または以前に感染していてもよい。対象が慢性のウイルス性肝炎であってもよい。このウイルスは、たとえばB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはD型肝炎ウイルスであってもよい。いくつかのケースでは、および特に対象がウイルス性肝炎のケースでは、その対象がHIV−IまたはIIに感染していてもよい。対象がAIDSであってもよい。対象が肝臓病を引き起こすその他の生物、特にそれらのライフサイクルのいくつかの段階において肝臓内に存在する生物に感染したか、感染しているかもしれない可能性がある。たとえば、対象が肝吸虫に寄生されているか、または以前に寄生されていてもよい。
【0019】
対象が、慢性肝臓病を引き起こすか、またはそのリスクを高める遺伝病であってもよい。たとえば、対象が一またはそれ以上の肝ヘモクロマトーシス、ウィルソン病またはα−1−抗トリプシン欠乏症であってもよい。対象が、肝線維症の可能性を高める、肝臓における構造上または機能上の何らかの異常を引き起こす遺伝性疾患を有していてもよい。対象が、肝臓を損ない、それによって肝線維症の一因となり得る自己免疫疾患に遺伝的に進行しやすくなり得る。
【0020】
慢性肝臓病がアルコール誘導性のものであってもよい。治療を受ける男性または女性は、アルコール中毒患者であっても、または以前にそうであってもよい。彼または彼女が、一週間あたり、平均で50単位もしくはそれ以上のアルコールを、60単位もしくはそれ以上のアルコールを、75単位もしくはそれ以上のアルコールを、さらには100単位もしくはそれ以上のアルコールを消費しても、または以前に消費していてもよい。この男性または女性が、一週間あたり、平均で最大100単位のアルコールを、最大150単位のアルコールを、さらには最大200単位のアルコールを消費しても、または以前に消費していてもよい。一単位のアルコールの計量は国によって異なる。本明細書では、英国の基準に従って、一単位は8グラムのエタノールに相当する。
【0021】
この男性または女性が、このようなレベルのアルコールを、5年もしくはそれ以上、10年もしくはそれ以上、15年もしくはそれ以上または20年もしくはそれ以上消費していてもよい。対象が、このようなレベルのアルコールを、最大10年間、最大20年間、最大30年間、さらには最大40年間消費していてもよい。アルコール誘導性肝硬変のケースにおいては、対象の年齢が、たとえば25歳もしくはそれ以上、35歳もしくはそれ以上、45歳もしくはそれ以上、またはさらには60歳もしくはそれ以上であってもよい。
【0022】
対象は男性でも女性でもよい。女性は男性よりもアルコールの悪影響を受けやすいようである。女性は男性よりも、より短い期間でおよびより少量のアルコールでアルコール性慢性肝臓病に進行する可能性がある。これらのことは、女性におけるアルコール性肝障害に対する感受性が高まっていることの原因が単一の要素ではないようであるが、ホルモンがアルコールの代謝に与える影響が重要な役割を果たしているのかもしれない。
【0023】
本発明のその他の実施形態においては、対象が、肝障害、たとえば原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性慢性活動性肝炎および/または住血吸虫症(寄生生物の感染)などに至ることが知られている一またはそれ以上の多数のその他の状態であってもよい。対象が、胆管の閉塞を有する者または以前に有していた者でもよい。いくつかの場合においては、慢性肝臓病の潜在的な原因が知られていなくてもよい。たとえば、対象が原因不明性肝硬変を有する者として診断されていてもよい。一つの実施形態においては、対象が本明細書に列挙された状態の任意のものを有すると推測されればよい。
【0024】
慢性肝臓病、急性肝不全および肝性脳症を診断するための方法は、当業者、特に本分野における臨床医および獣医には周知である。肝臓病および肝性脳症であるものとして、たとえば医学または獣医学の専門家によって診断されたであろう対象が好ましい。対象は、肝臓病に関係する一またはそれ以上の症状、たとえば一またはそれ以上の黄疸、腹水症、皮膚の変化、体液貯留、爪の変化、内出血ができやすくなること(easy bruising)、鼻血、食道静脈瘤を示してもよく、男性の対象においては乳房の肥大もあり得る。対象は、極度の疲労、倦怠感、食欲の喪失、吐き気、脱力感および/または体重の減少を示してもよい。対象はさらに、肝性脳症に関係する一またはそれ以上の症状、たとえば混乱、方向感覚の喪失、認知症、昏迷、昏睡状態、脳浮腫、多臓器不全(呼吸不全、心血管不全または腎不全)、筋肉硬直/固縮、発作または発語障害の一またはそれ以上を示してもよい。治療を受ける対象は、肝臓病を治療するためのその他の薬物を摂取していてもよく、摂取していなくてもよい。治療を受ける対象は、肝性脳症に進行するリスクがあるかもしれない。
【0025】
肝臓病は、超音波などの技術を含む健康診断によって確認されたものでもよく、または確認されるものでもよい。肝生検は、線維、壊死細胞、細胞の変性および/または炎症およびその他の肝臓病に特有の特徴の発達を探すために行われていてもよい。肝機能は、対象において肝機能が易感染性であるかどうかを決定するためにその対象内で評価されてきたかもしれない。肝臓病の本質的な原因および潜在的な原因をキャラクタライズしてもよい。肝臓病の原因物質にさらされてきたあらゆる経歴を割り出してもよい。
【0026】
治療を受ける対象は、肝性脳症の症状が発症するリスクを有していてもよく、たとえば肝移植、外科手術を待つ患者および/または門脈圧亢進症の患者であってもよい。肝性脳症の症状が発症するリスクを有する人物は、肝性脳症の症状の発症に苦しんだことがない人物、または長期間(約12週間かそれ以上)に亘って肝性脳症の症状の発症に苦しんだことはないが、肝性脳症の症状が発症するリスクを生じさせる障害もしくは病状を有する人物である。肝性脳症の症状の発症とは、肝臓病または肝機能障害に罹患している患者において脳機能障害が見られることに特徴がある臨床状態である。肝性脳症においては、極めて軽微な場合は主要な影響が生活の質の低下であることから、明示的には昏睡状態および最終的に死亡に至るまでの広範囲の精神障害が存在する。
【0027】
スコアリングシステムを用いて、肝臓病および肝性脳症の重症度、ならびに対象の予後をも評価してもよい。Child−Pugh、West Haven基準、Glasgow Coma Scaleまたは修正Child−Pughスコアリングシステムを用いてもよい。あるいは、(APACHE) IIスコアリングシステムを用いてもよい。血清ビリルビンレベル、血清アルブミンレベルを含むパラメータ、および腹水症または脳障害の存在を含む徴候に点数が割り当てられる。治療を受ける対象は、Child−PughのクラスA、クラスBまたはクラスCに分類され得る。一般的に、治療を受ける対象はChild−PughのクラスCに分類される。
【0028】
治療を受ける男性または女性の年齢は、たとえば25〜80歳であってよい。一つの実施形態においては、男性または女性の年齢は45〜70歳である。別の実施形態においては、男性または女性の年齢は25〜44歳である。さらなる実施形態においては、男性または女性の年齢は65歳を超える。
【0029】
しかしながら、本発明は獣医学上の用途をも有する。治療を受ける対象は、家畜、たとえば雌ウシもしくは雄ウシ、ヒツジ、ブタ、雄ウシ、ヤギもしくはウマであってもよく、または家庭内の動物、たとえばイヌもしくはネコであってもよい。対象は肝臓病についての動物モデルであってもよく、それでなくてもよい。動物はどのような年齢でも構わないが、成長した成体の対象であることが多い。
【0030】
製剤
本発明において用いられるアミノ酸は、純粋な結晶アミノ酸であってよい。一般的に、アミノ酸はD−型ではなくL−型であるか、またはD−型とL−型との混合物である。アミノ酸の単離された形態のものが通常用いられる。アミノ酸のあらゆる活性型を用いて、肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療してもよい。医薬的に許容され得るアミノ酸の形態を用いてもよい。アミノ酸を遊離アミノ酸として、またはアミノ酸塩もしくは誘導体として用いてもよい。
【0031】
オルニチンは純粋な結晶アミノ酸の形態であってもよい。一般的に、オルニチンはD−型ではなくL−型であるか、またはD−型とL−型との混合物である。オルニチンの単離された形態のものが通常用いられる。オルニチンのあらゆる活性型を用いてもよく、またはオルニチンの医薬的に許容され得る形態のものを用いてもよい。オルニチンを遊離アミノ酸として、またはアミノ酸塩もしくは誘導体として用いてもよい。
【0032】
通常、オルニチンは単一のモノマーアミノ酸として用いられる。オルニチンを塩の形態、たとえば塩酸オルニチンで用いてもよい。オルニチンを遊離型の生理学的に許容され得る塩の形態で用いてもよい。従って、オルニチンまたはオルニチン塩は通常、その他のあらゆる物質と化学的に結合、または共有的に結合していない。
【0033】
オルニチンの誘導体を用いてもよい。たとえば、オルニチンのケトアナログまたはヒドロキシアナログを、ナトリウム塩またはカルシウム塩として投与してもよい。オルニチンのケト酸としては、ケトグルタル酸オルニチン、オルニチン・ケトロイシンおよびオルニチン・ケトバリンが挙げられる。オルニチンの塩または誘導体を、遊離オルニチンに代えてまたはそれに加えて用いてもよい。
【0034】
フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを用いてもよい。フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートは、生理学的に許容され得る塩の形態、たとえばアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であってもよい。塩はソディウムフェニルアセテートまたはソディウムフェニルブチレートであってもよい。フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの塩の形態は遊離型であってもよい。従って、フェニルアセテートおよびフェニルブチレート、またはフェニルアセテート塩およびフェニルブチレート塩は通常、その他のあらゆる物質と化学的に結合、または共有的に結合していない。
【0035】
必要に応じてイソロイシンを用いる。イソロイシンは純粋な結晶アミノ酸の形態であってもよい。一般的にイソロイシンはD−型ではなくL−型であるか、またはD−型とL−型との混合物である。イソロイシンの単離された形態のものが通常用いられる。イソロイシンのあらゆる活性型を用いてもよく、またはイソロイシンの医薬的に許容され得る形態のものを用いてもよい。イソロイシンを遊離アミノ酸として、またはアミノ酸塩もしくは誘導体として用いてもよい。
【0036】
通常、イソロイシンは単一のモノマーアミノ酸として用いられる。イソロイシンを塩の形態、たとえば塩酸イソロイシンで用いてもよい。イソロイシンは遊離型の生理学的に許容され得る塩の形態であってもよい。従って、イソロイシンまたはイソロイシン塩は通常、その他のあらゆる物質と化学的に結合、または共有的に結合していない。
【0037】
医薬組成物
オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートは通常、医薬的に許容され得る担体または希釈剤と共に投与することを目的として処方される。従って、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを、薬学分野で日常的に見られるような医薬的に許容され得る標準的な担体および/または賦形剤を含む薬剤として処方してもよい。処方の正確な性質は、いくつかの要素、たとえば所望の投与経路に左右される。通常、経口投与、静脈内投与、胃内投与、血管内投与または腹腔内投与用に、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを処方する。
【0038】
薬剤用の担体または希釈剤は、たとえば等張液、たとえば生理食塩水であってもよい。液体の経口剤形では、活性な化合物とともに、希釈剤、たとえばラクトース、デキストロース、ショ糖、セルロース、コーンスターチまたはバレイショデンプン;潤滑剤、たとえばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウムおよび/またはポリエチレングリコール;結合剤;たとえばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;凝固防止剤、たとえばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウム;発泡性混合物;染料;甘味料;加湿剤、たとえばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;ならびに一般的に医薬製剤に用いられる非毒性で薬理学的に不活性な物質を含んでもよい。このような医薬製剤は公知の方法、たとえば混合、顆粒化、打錠、糖衣化またはフィルムコーティングといった処理によって製造され得る。
【0039】
経口投与のための分散液は、シロップ、エマルジョンまたは懸濁液であってもよい。シロップは、担体として、たとえばショ糖またはグリセリンを含むショ糖および/またはマンニトールおよび/またはソルビトールを含んでもよい。
【0040】
懸濁液およびエマルジョンは、担体として、たとえば天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含んでもよい。筋肉注射用の懸濁液または溶液は、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つと一緒に、医薬的に許容され得る担体、たとえば滅菌水、オリーブオイル、オレイン酸エチル、グリコール類、具体的にはプロピレングリコールを含んでもよく、必要に応じて適量の塩酸リドカインを含んでもよい。
【0041】
本発明の薬剤は、唯一のアミノ酸成分としてオルニチンを含むことができる。本発明の薬剤は、唯一のアミノ酸成分としてオルニチンおよびイソロイシンを含むことができる。この薬剤は、本質的にオルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つからなってもよい。この薬剤は、本質的にオルニチン、イソロイシンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つからなってもよい。
【0042】
薬剤は、本質的にオルニチン、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートおよび医薬的に許容され得る担体からなってもよい。従って、このような薬剤はオルニチン以外のその他のアミノ酸を実質的に含まない。薬剤は、本質的にオルニチン、イソロイシン、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートおよび医薬的に許容され得る担体からなってもよい。従って、このような薬剤は、オルニチンおよびイソロイシン以外のその他のアミノ酸を実質的に含まない。
【0043】
フェニルアセテートは、オルニチンの重量の5〜100重量%の量、たとえば10〜50重量%または20〜40重量%の量が存在すればよい。フェニルブチレートは、オルニチンの重量の5〜100重量%の量、たとえば10〜50重量%または20〜40重量%の量が存在すればよい。
【0044】
しかしながら、この薬剤は通常、微量の遊離のアスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンを非ペプチド型で含んでもよい。一般的に、アスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンの重量が、オルニチンの重量を超えることはない。微量とは、アスパラギン酸、グルタミン酸もしくはアルギニンまたはこれらのアミノ酸を組み合わせたものの重量が、オルニチンの20重量%を超えないことを意味する。従って、薬剤がアスパラギン酸を実質的に含まなくてもよい。一つの実施形態においては、組成物はアスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンを含まない。ごく微量のアスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンが組成物に存在していてもよい。ごく微量とは、アスパラギン酸、グルタミン酸もしくはアルギニンまたはこれらのアミノ酸を組み合わせたものの重量が、オルニチンの1重量%を超えないことを意味する。アスパラギン酸、グルタミン酸またはアルギニンの重量が、オルニチンの0.5重量%を超えないことが好ましい。
【0045】
別の実施形態においては、組成物がさらにその他のアミノ酸を非ペプチド型で、通常は遊離アミノ酸または生理学的に許容され得るその遊離型の塩として含んでもよい。これらのその他のアミノ酸の量は一般的に、オルニチンの重量を超えることはない。たとえば、その他のアミノ酸は、オルニチンの重量の最大20重量%、たとえば5〜20重量%存在してもよい。組成物に存在してもよいこのようなその他のアミノ酸としては、必須アミノ酸および非必須アミノ酸が挙げられる。組成物はその他の分岐鎖アミノ酸(BCAAs)を含んでもよい。BCAAsとしてはイソロイシン、バリンおよびロイシンが挙げられる。従って、本発明の組成物は、イソロイシンおよび/またはバリンおよび/またはロイシンをさらに含んでもよい。
【0046】
治療
肝臓の代償不全または肝性脳症の発症を予防するかまたは遅延させるために、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて対象に投与する。従って、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与し、対象、たとえば誘発事象の後の慢性肝臓病に苦しむ対象、の状態を改善させることができる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって対象の症状、たとえば誘発事象の後の対象における慢性肝臓病に関係する症状、を軽減させる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝臓の代償不全または肝性脳症の発症に対抗するかまたは遅延させる。
【0047】
肝性脳症を治療するために、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて対象に投与してもよい。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症に苦しむ患者の状態を改善させる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症に関係する症状を軽減させる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症に対抗する。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症が発症するリスクを有する人物における初期の肝性脳症の症状の発現を予防する。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症の症状が発現するリスクを有する人物における初期の肝性脳症の症状の発現の重症度を低下させる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを組み合わせて投与してもよく、それによって肝性脳症の症状が発症するリスクを有する人物における初期の肝性脳症の発症を遅延させる。
【0048】
肝臓の代償不全および肝性脳症の進行(development)には、「誘発事象」(または「急性の発作」)を必要とする。このような誘発事象は、消化管の出血、感染症(敗血症)、門脈血栓症および脱水症を含む。このような急性の発作の発症は入院に至ることが多い。患者はこれらの急性の発作またはこれらの急性の発作を組み合わせたものの一つに苦しむかもしれない。
【0049】
急性の発作を経験した対象または経験したことが疑われる対象を、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを組み合わせて用いる本発明に従って治療し、肝臓が非代償的状態に進行することを予防する。従って、本発明は、肝臓の代償不全の医学上の帰結、たとえば肝性脳症を予防することができる。オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを用いて、肝機能を維持してもよい。従って、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを用いて、肝臓病に罹患している患者の余命を伸ばせるかもしれない。一つの実施形態においては、消化管の出血が代謝された帰結、たとえば高アンモニア血症、低イソロイシン血症および出血後のタンパク質の合成の低下が予防される。
【0050】
通常、誘発事象(急性の発作)の発症またはその擬似的な発症からできるだけ早く対象の治療を始めてもよい。急性の発作が繰り返される前に対象の治療を始めることが好ましい。最初の急性の発作の後に対象の治療を始めることがより好ましい。
【0051】
治療は通常、急性の発作が始まった直後から行われる。急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が、医療従事者、たとえば医師、救急救命士または看護師によって検出された後に、治療を開始してもよい。対象の入院時に治療を開始してもよい。従って、急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が検出されてから6時間以内、3時間以内、2時間以内または1時間以内に治療を開始してもよい。従って、急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が検出されてから1〜48時間の間、たとえば1〜36時間または1〜24時間の間に対象の治療を開始してもよい。
【0052】
急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が検出されてから最大8週間、たとえば最大6週間、最大4週間または最大2週間、治療を行ってもよい。従って、急性の発作または擬似的な急性の発作の症状が検出されてから最大48時間、たとえば最大36時間または最大24時間、治療を行ってもよい。通常、急性の誘発事象からの回復が明白になった時点まで治療を行う。
【0053】
対象は、オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートで治療を受ける。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを、組み合わせて単一の薬剤で、または個別に二もしくは三種の異なる薬剤で投与してもよい。オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを一体化された薬剤で投与する予定の場合、その一体化物を投与直前に調製してもよく、または一体化された薬剤として貯蔵してもよい。
【0054】
オルニチンならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを分離して投与する予定の場合、薬剤を一定の期間に亘って同時にまたは連続して投与してもよい。二種または三種の個別の薬剤を一定の期間に亘って投与してもよい。
【0055】
二種の薬剤を投与する場合には、オルニチンを最初に投与し、次いでフェニルアセテートおよびフェニルブチレート、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを投与してもよい。あるいは、フェニルアセテートおよびフェニルブチレート、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを最初に、次いでオルニチンを投与してもよい。別の実施形態においては、オルニチンとフェニルアセテートとの組み合わせを最初に投与し、次いでフェニルブチレートを投与してもよい。あるいは、オルニチンとフェニルブチレートとの組み合わせを最初に投与し、次いでフェニルアセテートを投与してもよい。別の実施形態においては、フェニルアセテートを最初に投与し、次いでオルニチンとフェニルブチレートとの組み合わせを投与してもよい。あるいは、フェニルブチレートを最初に投与し、次いでオルニチンとフェニルアセテートとの組み合わせを投与してもよい。
【0056】
三種の薬剤を投与する場合には、オルニチン、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートを別個の時点で投与する。オルニチンを最初に、二番目にまたは三番目に投与してもよい。オルニチンを最初に投与する場合には、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを二番目に投与し、次いでフェニルブチレートまたはフェニルアセテートを投与すればよい。オルニチンを二番目に投与する場合には、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを最初に投与し、フェニルブチレートまたはフェニルアセテートを三番目に投与する。オルニチンを三番目に投与する場合には、フェニルアセテートまたはフェニルブチレートを最初に投与し、フェニルブチレートまたはフェニルアセテートを二番目に投与する。
【0057】
最初の薬剤の投与後、二番目の薬剤を5時間以内に、たとえば2時間以内または1時間以内に投与すればよい。従って、二番目の薬剤を、最初の薬剤の投与から15分間〜5時間の間、たとえば30分間〜4時間の間または1時間〜3時間の間に投与することができる。
【0058】
二番目の薬剤の投与後、三番目の薬剤を5時間以内に、たとえば2時間以内または1時間以内に投与すればよい。従って、三番目の薬剤を、二番目の薬剤の投与から15分間〜5時間の間、たとえば30分間〜4時間の間または1時間〜3時間の間に投与することができる。
【0059】
本発明の薬剤は、同一の部位にまたは異なる部位に投与されてもよい。同一の経路または異なる経路を介して、本発明の薬剤を投与してもよい。任意の適切な経路によって本発明の薬剤を投与してもよい。好ましくは、経口、静脈内、胃内、腹腔内または血管内の経路によって投与する。たとえば、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを別個に投与する場合、これらの全てを経口投与してもよく、もしくはこれらの全てを静脈内に投与してもよく、もしくはオルニチンを経口投与し、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを静脈内に投与してもよく、またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを経口投与し、オルニチンを静脈内に投与してもよい。
【0060】
治療上有効量のオルニチン、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートならびに随意のイソロイシンを対象に投与する。オルニチン、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートならびにイソロイシンの投与量を、種々のパラメータ、たとえば年齢、体重および治療を受ける対象の状態;肝臓病のタイプおよび重症度;投与経路;ならびに必要とされる投与計画に従って決定することができる。
【0061】
オルニチン、フェニルアセテートもしくはフェニルブチレート、またはイソロイシンの通常の投与量は体重1kgあたり0.02〜1.25g、たとえば、0.1〜0.5gであり、このようなパラメータに左右される。その結果、オルニチン、フェニルアセテートもしくはフェニルブチレートまたはイソロイシンの投与量は、1g〜50g、たとえば5g〜30gであってよい。オルニチンの投与量は10〜30gであってよい。イソロイシンの投与量は5〜15gであってよい。オルニチンおよびフェニルアセテート/フェニルブチレートを、10:1〜1:10の重量比、たとえば5:1〜1:5または2:1〜1:2または約1:1で投与してもよい。医師であれば、任意の特定の対象のために、オルニチンおよびフェニルアセテートまたはフェニルブチレートならびに随意のイソロイシンの必要な投与量を決定することができる。
【0062】
オルニチンを単回投与ならびにフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを単回投与してもよい。場合により、イソロイシンを単回投与してもよい。あるいは、オルニチンおよび/またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートおよび/または随意のイソロイシンを複数回投与、たとえば二回、三回、四回または五回投与してもよい。このような複数回投与を一ヶ月の期間に亘って、または二週間もしくは一週間に亘って行ってもよい。別の実施形態においては、オルニチンおよび/またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートの単回投与または複数回投与、たとえば二回、三回、四回もしくは五回投与を毎日投与してもよい。
【0063】
その他のアミノ酸を、上記のように対象に投与してもよい。そのアミノ酸またはそのようなその他のそれぞれのアミノ酸を、オルニチンおよび/またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートと同一の薬剤に投与してもよく、または分離して投与してもよい。分離して投与する場合、そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸を、オルニチンおよび/またはフェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートの投与と同時に投与してもよく、またはその投与と異なる時間、たとえば最大5時間、最大2時間もしくは最大1時間前もしくは後で投与してもよい。そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸は通常、経口でまたは静脈内に投与される。
【0064】
治療上有効量のそのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸を対象に投与する。投与量は、種々のパラメータ、たとえばオルニチン、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートについて上記に記載されたものに左右される。そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸の通常の投与量は、体重1kgあたり0.02〜1.25g、たとえば0.1〜0.5gである。従って、そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸の投与量は、1g〜50g、たとえば5g〜30gであってよい。
【0065】
そのアミノ酸またはその他のそれぞれのアミノ酸を単回投与してもよい。あるいは、複数回投与量、たとえば二回、三回、四回または五回投与を行ってもよい。このような複数回投与を、一ヶ月の期間に亘ってまたは二週間もしくは一週間に亘って行ってもよい。別の実施形態においては、単回投与または複数回投与、たとえば二回、三回、四回もしくは五回投与を毎日行ってもよい。
次の実施例によって、本発明を例証する。
【実施例1】
【0066】
好中球の機能は肝硬変に罹患している患者において変化し、肝臓病の重症度を増しさらに悪化させる
(好中球のファゴサイトーシスおよび酸化的バーストを測定するための方法)
ファゴテスト:ヘパリン処理した全血を、オプソニン化したFITC−ラベル化E coliおよびCD16と共にインキュベートした。次いでこれらの細胞を、前方散乱および側方散乱によって開閉するフローサイトメトリー(FACScan Becton Dickinson社)で分析し、次いでR−フィコエリトリン(PE)[Immunotech社、マルセイユ、フランス]蛍光色素の発色に基づいて評価してCD16陽性細胞を特定した。次いで、開閉された(gated)細胞集団を、FITC−ラベル化細菌が存在するかどうかについて評価した。
【0067】
ファゴバースト:ヘパリン処理した全血をオプソニン化E coli懸濁液と共にインキュベートして、酸化的バーストを刺激した。基質溶液を添加して、ジヒドロローダミン(DHR)123が蛍光性化合物のローダミン(R) 123に変換することを測定した。この反応を停止させ、陽性の好中球を特定するためのCD16抗体とインキュベートする前に固定した。次いで、フローサイトメトリーによって分析を実施した。
【0068】
好中球走化性:ケモキネシスを刺激するためにインターロイキン−8を走化性因子として利用する修正Boydenチャンバー法を用いて、好中球走化性を測定した。
【0069】
(患者および方法)
我々は、30名の肝硬変に罹患している患者(アルコール性肝硬変;平均年齢53.2(SEM 4.6)および20名の健康なボランティアについて試験を行った。肝硬変に罹患している患者を、混合型アルコール性肝炎に罹患している者(AH+)、および非代償的肝臓または代償的肝臓を有する者のように分類した。ファゴテストを利用して貪食能を測定し、ファゴバーストを利用して、E coliに接触した時に細胞が酸化的バーストを生じさせ得るかどうかを測定した。
【0070】
(結果)
我々は、肝硬変の患者由来の好中球の細菌を貪食する能力が顕著に低下したことを観察した。我々はさらに、酸化的バーストの発生割合が増加した(図1)という点で、肝硬変に罹患している患者のE coliによる好中球の刺激に対する応答能力が低下したことをも見出した。肝臓病の重症度と関連する能力のこのような低下は、肝臓病のステージが進行すればするほど、感染症に対応する能力およびそれに対抗する能力が減少することを示している。
【実施例2】
【0071】
アンモニアは好中球の貪食能を低下させる
(好中球のファゴサイトーシスおよび酸化的バーストを測定するための方法)
実施例1のとおり。
(患者および方法)
健康なボランティア(n=15)から血液を採取し、アンモニアの濃度を徐々に増加させたものと共に1時間インキュベートした。好中球が細菌を貪食する能力を、ファゴテストおよび好中球走化性アッセイを利用して測定した。好中球走化性アッセイには、10ng/mlのIL−8を用いた。
【0072】
(結果)
インキュベートするアンモニアの濃度が高くなるにつれて、好中球のファゴサイトーシスが顕著に低下(図2)し、好中球走化性も顕著に低下(図3)した。
【実施例3】
【0073】
アンモニアが好中球のファゴサイトーシスに与える影響は、治療行為によって覆すことができる
(好中球のファゴサイトーシスおよび酸化的バーストを測定するための方法)
実施例1のとおり。
(患者および方法)
健康なボランティア(n=15)から血液を採取し、アンモニアおよび選択されたアミノ酸と共に1時間インキュベートした。好中球が細菌を貪食する能力を、ファゴテストアッセイを利用して測定した。
【0074】
(結果)
我々は、アンモニアにより誘導される好中球のファゴサイトーシスの減少は、オルニチンおよびグルタミンによってその一部を覆すことができること(図4)を観察した。しかしながら、アンモニアをアスパラギン酸と共に共インキュベートすることによって、好中球のファゴサイトーシスが悪化したが、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩と共に行った場合は変化しないままであった。
【実施例4】
【0075】
模擬的な消化管の出血により、イソロイシンの投与により部分的に覆すことができる好中球走化性が低下する
(方法)
一晩絶食させた、代謝的には安定した、生検によって肝硬変であることが確認された十名の患者[9名が男性で1名が女性;平均49.6歳(SEM 9.1);平均Child−Pughスコアが7.8(SEM 1.2)]について、ヘモグロビン分子を模倣した75グラムのアミノ酸混合物(Nutricia社、キーク(Cuijk)、オランダ)を経口投与する前、および経口投与から二時間後に試験を行った。その他の七名の患者[4名が男性で3名が女性;平均51.4歳(SEM 6.7);平均Child−Pughスコアが8.1(SEM 1.4)]においては、そのアミノ酸混合物の投与後に、イソロイシンを静脈内に2時間かけて(40mg/lのイソロイシンを含む等浸透圧の溶液を100ml/hrの速度で)投与した。末梢静脈血サンプルの好中球走化性(方法については実施例1を参照すること)および血漿アンモニアを測定した。
【0076】
(結果)
年齢を一致させた対照(53.3 SEM 4.6)と比較すると、これらの肝硬変の患者における好中球走化性は顕著に低下し、模擬的な出血後では31(±4.2)から8(±5.4)細胞/高倍率視野に顕著に低下した(p<0.0001)(図5)。アンモニアの血漿濃度は75.1(±4.2)から124(±8.5)に顕著に増加した(p<0.001)。アンモニアの濃度の変化は好中球走化性の変化と相関があった(r=0.65および<0.05)。模擬的な出血に伴って観察される好中球走化性の低下は、イソロイシンで治療を受けた患者群、25.4(±6.0)細胞/高倍率視野、では破棄された。
【実施例5】
【0077】
模擬的な出血によりタンパク質の合成が減少し、イソロイシンの不適切な酸化が刺激される
(方法)
一晩絶食させた肝硬変に罹患している五名の患者を募集した。バックグラウンドの同位体が濃縮されることを測定するための安定同位体の注入を始める前に、血液サンプルを採取し、呼気をサンプリングした。次いで、実験が終了するまで(t=480分間)、患者は、準備刺激された(primed)[1−13C]−イソロイシン(1mg/kg bw/h)の持続的な静脈内注入を受けた。
【0078】
(結果)
図6は、生理食塩水(黒色のバー)およびアミノ酸(灰色のバー)の注入の最後の時間の間に、イソロイシン(Wb Ra)およびイソロイシンの酸化が全身に現れる平均速度(値は平均値±SEM;#はp<0.05であることを示す)を示す。肝硬変に罹患している患者における上部消化管の出血は、イソロイシンが減少し、全身でのタンパク質合成が顕著に低下するという結果を招いた。酸化に用いられたイソロイシンの流れの割合は、模擬的な出血の後でも変化が無かったが、BCAAの拮抗効果の発生を示すところのイソロイシンの濃度の顕著な低下が生じた。
【実施例6】
【0079】
模擬的な出血が生じている間にイソロイシンを投与することでタンパク質の合成が促進されるが、アンモニアの濃度は低下しない
(方法)
代謝的に安定した十六名の患者であって、生検によって肝硬変であることが確認された患者について試験を行った。4時間に亘る模擬的な出血の間に、患者を、イソロイシン(40mg/L溶液;50ml/時間)を追加したもの、またはプラセボのいずれかについて無作為化した。(準備刺激されたL−[リング−2H5]フェニルアラニンの持続的注入を利用して測定した)タンパク質の合成、L−[リング−2H4チロシンおよびL−[リング−2H2チロシン)ならびにアンモニア。
【0080】
(結果)
この結果から、肝硬変に罹患している患者が模擬的に出血している間にイソロイシンを注入すると、肝臓および筋肉での損なわれたタンパク質の合成が回復し、これらの臓器における正味のタンパク質同化の状態に導くことが示された(表1)。アンモニアの濃度は両方の群で顕著に増加したが、イソロイシンまたはプラセボを投与した群の間に有意な差は無かった(図7)。
【実施例7】
【0081】
進行した肝硬変に罹患している患者にL−オルニチンL−アスパラギン酸塩を注入した後のアスパラギン酸塩の蓄積
(方法)
肝臓移植を待っている、進行した肝硬変に罹患している5名の患者(年齢:59;3名の男性、ChildクラスCの疾患、重篤な腹水症、クレアチニンは102umol/L)に、40g/日のL−オルニチンL−アスパラギン酸塩での治療を施した。
【0082】
(結果)
3日間の期間に亘って、基準値から5倍に増加するという顕著かつ漸増的なアスパラギン酸の濃度の増加が見られた(表2)。
データは、nmol/kg体細胞重量/分で表された平均±SEMである。終了時の値は、アミノ酸注入の最後の時間の平均値を意味する。肝臓および腎臓のタンパク質の合成のデータが、ヒドロキシル化について修正されている(方法を参照すること)。統計値:群内の差異についてのMann−Whitney Uテストについてのp値;群間において有意な差異は見られなかった
【実施例8】
【0083】
LOLAの投与によりアンモニアの濃度が低下するがアンモニアの再生成が可能になる
(患者および方法)
肝硬変に罹患している八名の患者(年齢56(5.6)、5M、ALD−6;グレード2 HE:4;グレード3−4 HE:4)を、LOLAの注入(8時間に亘って40g)によって治療した。アンモニアおよびグルタミンを測定するために、血液をサンプリングした。
【0084】
(結果)
この結果から、LOLAの投与が、グルタミンの濃度の上昇を伴ったアンモニアの濃度の顕著な低下を結果的に招くことが示された(図8)。アンモニアのこの減少は、HEの重症度に有益な効果をもたらした。しかしながら、LOLAを停止すると、循環しているアンモニアのレベルが反発的に増加し、改善した6名の患者のうち3名においてHEが再発するという結果を招いた。
【実施例9】
【0085】
グルタミンを能動的に除去することで、アンモニアの濃度の第二の上昇が防がれる
(患者および方法)
血液ろ過(CVVH)を受けた3名の患者(年齢は45(4.1) 2M、ALD、すべてHE グレード3、HRSはすべてが3)を、LOLAの注入(8時間に亘って40g)によって治療した。アンモニアおよびグルタミンを測定するために、血液をサンプリングした。
【0086】
(結果)
この結果から、LOLAがアンモニアの濃度の低下を結果的に招くが、透析を追加することで、付随するグルタミンの濃度の上昇を防いだことが示された(図9)。従って、我々はアンモニアの濃度の低下を持続できたことを確信している。
【実施例10】
【0087】
フェニルアセテートがグルタミンと結合して排出可能な化合物が作り出され、アンモニアの第二の上昇が防がれる
(患者および方法)
急性肝不全および重篤な脳障害(グレード3−4)に罹患している6名の患者(5名が非A非B型肝炎)を、LOLAおよびフェニルアセテート(8時間に亘って40g/日)によって治療した。
【0088】
(結果)
グルタミンの濃度の有意な増加は見られず、アンモニアのレベルは併用治療によって減少した(図10)。アンモニアの反発的な増加は見られなかった。
【実施例11】
【0089】
肝性脳症に罹患しているヒト患者におけるオルニチンおよびフェニルブチレートの効果
(患者)
1.群−一群あたり3名の患者。合計12名。
【0090】
2.試験対象の患者の基準
−成人の患者で18−80歳、−組織学または臨床上の基準によって立証された肝硬変
−HEタイプC、−アンモニア濃度>80umol/L、インフォームド・コンセント/承知済み
【0091】
3.臨床試験除外基準
−その他の付随する神経疾患、−アンモニアを減少させる別の特定の薬物の使用、−機械的な換気および鎮静剤を必要とする呼吸不全、−制御できない消化管の出血、−変力作用薬を必要とする低血圧症、明白な腎不全(クレアチニン>2mg/dl)、血液透析、−体外での肝補助、任意の試験薬物に対しての公知の過敏症、−妊婦。
(精神状態の評価)
【0092】
(方法)
非盲検の試験において、われわれは8名の肝硬変および高アンモニア血症に罹患している患者を含めた。彼らは同等の肝臓病の重症度であった(表3を参照すること)。3日間の間、次の療法の一つによって彼らを治療し、5日間観察を行った。この試験の群は次の通り:
(i) プラセボ:5%のデキストロースを4時間;
(ii) オルニチンのみ:0800と1200との間で、500mlの5%デキストロース中の20g;
(iii) フェニルブチレート:一日に10gを二回、経口(0800および1600);ならびに
(iv)オルニチン+フェニルブチレート:0800と1200との間で、500mlの5%デキストロース中に20g+一日に10gを二回、経口(0800および1600)。
【0093】
深夜の0000から午前0800まで患者を一晩絶食させた。0800に開始する1g/Kgのタンパク質食および深夜に終了することを含めて、彼らの胃内に25KCal/Kgの食物を供給した。血液を午前0730にサンプリングし、次いで1800時にアンモニアおよびグルタミンの測定を行った。副作用について、患者を厳密に監視した。それぞれの群において、薬物は十分に許容され、有害事象は見られなかった。
SBP:自発性細菌性腹膜炎、非アルコール性脂肪性肝炎、ICU:集中的な治療補助を必要とする、HRS:肝腎症候群
【0094】
(結果)
図11は、プラセボ群においては、治療期間にわたってアンモニアの平均レベルは大きく変化すること無く維持されていることを示す。L−オルニチンおよびフェニルブチレート群においては、アンモニアの濃度はベースラインの値から増加していた。L−オルニチンおよびフェニルブチレートの両方で治療した群においては、アンモニアが実質的に減少した。OP治療した動物においては、アンモニアの濃度が低下したことに加えて、食後のアンモニアの増加が減少した。OP群における両方の患者は、3日目までに脳障害スコアが2グレード分まで改善された。このことは、その他の6名の患者のいずれにも見られなかった。
【0095】
図12は、OP群においては、アンモニアが減少したのにもかかわらず、治療期間に亘ってグルタミンの平均レベルは大きく変化すること無く維持されていることを示す。フェニルブチレート群では、グルタミンが減少していたが、このことは恐らくかなり有害である。L−オルニチンおよびプラセボ群においては、グルタミンの濃度が上昇した。このことは食後の状態において特に目立った。
【0096】
図13は、プラセボ、O、PおよびOPで治療された群における精神状態の変化を示す。
【実施例12】
【0097】
肝性脳症に罹患しているヒトの患者におけるオルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンの効果
(患者)
1.群−一群あたり2名の患者。合計6名
【0098】
2.試験対象の患者の基準
−成人の患者で18−80歳、組織学または臨床上の基準によって立証された肝硬変、Child BまたはC、静脈瘤からの消化管の出血が最近あった(<発症から6時間)、インフォームド・コンセント/承知済み。
【0099】
3.臨床試験除外基準
−その他の付随する神経疾患、アンモニアを減少させる別の特定の薬物の使用、機械的な換気および鎮静剤を必要とする呼吸不全、制御できない消化管の出血、変力作用薬を必要とする低血圧症、明白な腎不全(クレアチニン>2mg/dl)、血液透析、体外での肝補助、任意の試験薬物に対しての公知の過敏症、妊婦/授乳期。
【0100】
(方法)
非盲検の試験において、我々は6名の肝硬変に罹患している患者を含め、彼らは静脈瘤出血を管理するために入院した。彼らは同等の肝臓病の重症度であった(表4を参照すること)。3日間の間、次の療法のひとつによって彼らを治療し、5日間観察を行った。この試験の群は次のとおり:
i.プラセボ:5%のデキストロースを4時間(250ml)かけて投与
ii.イソロイシンのみ:250mlの5%デキストロース中の10グラムのIVを2時間かけ、二回に分けて投与。
iii.イソロイシン+オルニチン+フェニルブチレート:イソロイシン:250mlの5%デキストロース中の10グラムのIVを2時間かけ、二回に分けて投与;オルニチン:250mlの5%デキストロース中の20g(t=0;24、48時間);フェニルブチレート:一日に10gを二回、経口(t=0、12、24、36、48時間)。
【0101】
深夜の0000から午前0800まで患者を一晩絶食させた。0800に開始する1g/Kgのタンパク質食および深夜に終了することを含めて、彼らの胃内に25KCal/Kgの食物を供給した。午前0730に血液をサンプリングし、次いで1800時にアンモニアおよびグルタミンを測定した。副作用について、患者を厳密に監視した。それぞれの群において、薬物は十分に許容され、有害事象は見られなかった。開始時の内視鏡検査で患者に鎮痛剤を与えたので、精神状態の評価を判断することはできなかった。プラセボ群およびイソロイシン群のそれぞれにおいて、病院内で多臓器不全のために一人の患者が死亡した。残りの患者は生存していた。
SBP:自発性細菌性腹膜炎、非アルコール性脂肪性肝炎、ICU:集中的な治療補助を必要とする、HRS:肝腎症候群
【0102】
(結果)
図14は、プラセボ群およびイソロイシン群におけるアンモニアの濃度には顕著な変化がないことを示す。OIPで治療した群においては、アンモニアの濃度が実質的に減少した。
【0103】
図15は、グルタミンのレベルは、イソロイシン、プラセボまたはOIPのいずれかの投与によっても顕著に変化しないことを示す。OIP群のみにおいて、アンモニアが実質的に減少した。
【0104】
図16は、OIPが作用するであろう代替物(alternative)が、アンモニアを生じさせるアミノ酸であるグリシンを減少させると考えられることを示す。グリシンの実質的な減少はOIP群のみにおいて見られる。
【0105】
図17は、群のそれぞれにおいて始まるイソロイシンのレベルは極めて低いが、イソロイシンで治療した群では正常値の二倍にまで増加することを示す。プラセボ群における濃度は低いままで変化がない。
【0106】
図18は、治療過程の間の患者におけるオルニチンのレベルの変化を示し、オルニチンの濃度の上昇が顕著に維持されたことを示す。薬物を停止した時点で基準値にむけて顕著に低下し、このことは、異なる組織で取り込みが行われていることを示す。
【実施例13】
【0107】
胆管が結紮されたラットにおけるオルニチンおよびフェニルブチレートの効果
(方法)
胆管結紮(BDL)による肝硬変の誘導
この手法のために、オスのSprague−Dawleyラット(200−250g)を用いた。麻酔処理の後、正中開腹術を行った。胆管を暴露し、4.0の絹製縫合糸で三重に結紮し、第二の結紮および第三の結紮の間で切断した。吸収性縫合糸で層を作ることで傷口を閉じ、動物の飼育場所に戻す前に、隔離室でこの動物を回復させた。一定の温度(20℃)で12時間の明/暗サイクルにて、水および標準的なげっ歯類用の固形飼料の摂取は自由とした中で動物を保持した。
【0108】
BDL(またはシャム手法)から五週間後に、動物はげっ歯類用の固形飼料から、ヘモグロビンの組成ををまねたアミノ酸混合物(2.8g/Kg/日、Nutricia キーク(Cuijk)、オランダ、製品番号24143)が添加された完全な液体食物(Liquidiet、Bio-Serv、フレンチタウン ニュージャージー、USA)に変更した。六週間目に、麻酔下で右頸動脈にカテーテルを挿入し、血液サンプルを繰り返し採取するために用いた。試験製剤をIP注入によって投与する前に、この手法に従ってベースラインのサンプルを集めた。試験群は次のようであった:BDL対照+生理食塩水(n=5)、生理食塩水IP中のBDL+オルニチン(0.22g/Kg、n=6)、生理食塩水IP中のBDL+フェニルブチレート(0.3g/Kg、n=7)、生理食塩水IP中のBDL+OP(0.22g/Kg / 0.3g/Kg、n=7)。
【0109】
予め冷却しておきヘパリン処理した試験管内に血液サンプルを集め、処理の前に氷上で冷却した。遠心分離(3,000rpm、10分間)の後で血漿を集め、分析の前に−80℃で貯蔵した。
【0110】
COBAS Mira Sを用いて、製造メーカーの説明書に従って、アンモニア、グルコース、乳酸塩および尿素を測定した。蛍光検出を伴ったHPLCでアミノ酸を定量した。
【0111】
(結果)
肝硬変の胆管を結紮したラットのモデルにおいて、動脈の血漿アンモニアのレベル(205±11 μモル/L、平均±SEM)は、健康な対照(25.6±2μモル/L、p<0.001、データは示さず)と比較して実質的に増加している。このモデルでは、我々は、生理食塩水処理したプラセボ群において、三時間の間に動脈のアンモニアのレベルは変化しなかったことを見出した。
【0112】
図19は、生理食塩水(BDL対照、n=5)、オルニチン(Orn、0.22g/Kg、n=6)、フェニルブチレート(PB、0.3g/Kg、n=7)およびオルニチン、フェニルブチレート(OP、0.22g/Kg + 0.3g/Kg、n=7)のIP注入後の、BDL肝硬変のラットにおける動脈の血漿アンモニアのレベルの変化を示す。*は、3時間の時点でのOP対Ornについてpが0.05未満(p<0.05)であることを示す(2 way ANOVA)。
【0113】
この図は、オルニチンで治療した動物において、アンモニアの濃度のかすかな低下が検出されたことを示すが、これはプラセボと異なっていたことは見出せなかった。フェニルブチレートで治療された群においては、血漿アンモニアの顕著な増加が1時間後に見出された(その他のすべての群に対してp<0.01)が、三時間の時点ではこの違いがより小さくなることが分かった。この発見は、フェニルブチレート(フェニルアセテート)が、グルタミンの濃度の上昇を伴った対象に対して唯一効果的であるという仮説に適合する。代謝されてグルタミンを形成することができるオルニチンを追加しなかった動物においては、Pのみの効果は望ましくなく、有害でさえあり得る。オルニチン+フェニルブチレート(OP)で治療された群では、アンモニアのレベルの顕著な低下が見られた。これらの動物においては、試験期間中の三時間に亘ってアンモニアの減少が継続することが測定され、このレベルは試験の終了時においては、オルニチンのみの群のレベルよりもはるかに少ないことが分かった(p<0.05)。
【0114】
このことは、OPの組み合わせは、O単独またはP単独のいずれかよりもはるかに血漿アンモニアを減少させる効果があることを明白に実証している。さらに、Pのみで治療した動物においては、アンモニアの血漿のレベルの上昇は有害であるかもしれない。
【0115】
サンプルのサブセットについて、我々はOまたはOPのIP投与後のオルニチンの血流への取り込みについて試験した。図20は、追加された群における動脈のオルニチンの濃度を示す。両方の群において、IP注入から1時間後の時点で、血漿オルニチンの濃度は顕著に増加し、続いてこのオルニチンは体内で代謝されるので、3時間の時点で減少することが明らかであり得る。これらの群の間では、任意の時点において血漿オルニチンの濃度の有意な差は見出せなかった。
【0116】
選択された投与方法がこれらの動物内でオルニチンを効果的に送達することが実証されたので、この発見は重要である。さらに、迅速な取り込みおよび観察される血漿レベルの減少は、このアミノ酸の活性代謝が生じていることを示唆する。
【実施例14】
【0117】
胆管結紮ラットにおけるオルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンの効果
(方法)
オスのSprague−Dawleyラット(200−250g)をこの手法のために用いた。屠殺する前の48時間、動物を標準的なげっ歯類用の固形飼料から、ヘモグロビンの組成をまねたアミノ酸混合物(2.8g/Kg、Nutricia キーク(Cuijk)、オランダ、製品番号24143)を添加した完全な液体食物(Liquidiet、Bio-Serv、フレンチタウン ニュージャージー、USA)に変更した。屠殺する24時間前に、生理食塩水中のガラクトサミン(1g/Kg、Sigma、Poole UK)のIP注入によって急性肝不全(ALF)を誘導した(それぞれの群においてn=5)。屠殺する三時間に、OIP(生理食塩水IP中のオルニチン0.22g/Kg、イソロイシン0.25g/Kg、フェニルブチレート0.3g/Kg)の製剤または生理食塩水対照のいずれかで動物を処理した。実験の最後において、予め冷却しておきヘパリン処理した試験管内に動脈血を採取し、処理するまで氷上で保持した。血漿を集め、上記のように保持した。アンモニアを上記のように測定した。
【0118】
(結果)
動脈のアンモニアのレベルが、プラセボ対照と比較してOIPで治療された急性肝不全ラットにおいて顕著に低下したことを見出した(図21)。この試験は、イソロイシンをオルニチンおよびフェニルブチレート(フェニルアセテート)と組み合わせたものが血漿アンモニアを効果的に減少させ得るかどうかを試験するために設計された。ヒトでの試験において、イソロイシン単独ではアンモニアのレベルに影響を与えられないことは既に実証されているが、OおよびPと組み合わせた効果については以前より調べられていない。
【0119】
図21は、生理食塩水プラセボ(ALF)およびOIP処理されたもの(ALF+OIP)についての高アンモニア血症性の急性肝不全モデルにおける、動脈の血漿アンモニアのレベルを示す。p<0.01という有意なレベルがこれら二群間に見られた(T−Test)。
【0120】
この発見は、イソロイシンをオルニチンおよびフェニルブチレートと組み合わせたものは、アンモニアのレベルを効果的に低下させるという仮説を支持する。タンパク質の合成について既に記載されたイソロイシンの有益な効果とは別である。
【実施例15】
【0121】
血管を切除されたブタモデルにおけるオルニチンおよびフェニルブチレートの効果
(方法)
五頭のブタを、四群:急性肝不全(ALF)+プラセボ+プラセボ(n=2);ALF+オルニチン+プラセボ;ALF+フェニルブチレート+プラセボ;ALF+オルニチンおよびフェニルブチレートに無作為化した。このブタは、大腿動脈および静脈、門脈、腎静脈および肺動脈に挿入されたカテーテルを有していた。プラセボまたは治療薬の注入を開始した時の−1hrの時点で、この実験を開始した。
【0122】
1.プラセボ:5%のデキストロースを3時間かけて投与、経口で水のプラセボ
2.オルニチンのみ:0.3g/Kg、5%のデキストロースを3時間かけて静脈内に滴下
3.フェニルブチレート:0.3g/Kg、5%のデキストロースを3時間かけて胃内に供給
オルニチン+フェニルブチレート:0.3g/Kg、5%のデキストロースを3時間かけて静脈内に滴下し、0.3g/Kg、5%のデキストロースを3時間かけて胃内に供給した。
【0123】
門脈を下大静脈に吻合することでALFを誘導し、次いで肝臓動脈の結紮(血管切除)=0時間の時点;注入を停止した=+2時間の時点および実験を終了した=8時間の時点。局所的なアンモニアおよびアミノ酸の変化を測定するために、血液および尿のサンプルを0時間、1時間、3時間、5時間、7時間および9時間の時点で集めた。実験の最後に、ブレインウォーターの測定のために、前頭皮質の部分を取り出した。
【0124】
(結果)
オルニチンの注入後に、細胞内でのグルタミン酸の生成および胃内への複合化したフェニルアセテートの供給という結果に至ることは、肝不全のこの悲劇的なモデルにおける全アンモニアのレベルおよびグルタミンの利用性が劇的に変化することを示唆する。
【0125】
プラセボで処理された動物において血管切除した時から、動脈のアンモニアの濃度が経時的に一貫して上昇し(図22)、いくらか筋肉が生成し(図23)、そして多量のアンモニアが内臓からもたらされる(図24)。この動物は、少量の筋肉のグルタミンが放出され(図25)、かなりの内臓のグルタミンが取り込まれる(図26)ことを示す。
【0126】
オルニチン単独で動物を治療したケースにおいては、アンモニアの早期の上昇は当初は鈍いが、その後は実験の終了時において最も高くなる(図22)。この動物においては筋肉によって、筋肉から放出された類似の量のグルタミンと共に、アンモニアの正味の量が取り込まれ(図24)、−内臓によるグルタミンの取り込みの増加(図26)を伴うプラセボで処理された動物(図25)と比較される。
【0127】
フェニルブチレート単独でも、動脈のアンモニアのレベルが当初は鈍化することが示され、実験終了時のオルニチン単独に匹敵するレベルにまで直ぐに上昇するが(図22)、筋肉のアンモニアの取り込みにはほとんど変化がない(図23)。しかし内臓でかなりの量のアンモニアが生成する(図24)。興味深いことには、プラセボで処理された動物と比較して、フェニルブチレート単独での治療によって筋肉によりグルタミンが正味の量除去されるが(図25)、内臓のグルタミンの取り込みにほとんど影響を与えない(図26)。
【0128】
オルニチンとフェニルブチレートとの組み合わせは、動脈のアンモニアのレベルに最も大きな衝撃を与えた。実験の終了時に、その他のすべての動物と比較して、循環しているレベルを大幅に低下させた(図22)。アンモニアは、この動物の筋肉によって、血液から能動的に除去され(図23)、内臓のアンモニアの生成が大きく減少する(図24)。筋肉のグルタミンの放出が、プラセボおよびオルニチン単独で治療された動物の両者と比較して多いことに注目することは興味深い(図25)。筋肉におけるグルタミンの生成がこのように増加するにもかかわらず、内臓のグルタミンの取り込みは実質的に減少する(図26)。
【0129】
オルニチンで治療された動物における、循環しているオルニチンのレベルの増加を実証し、図27に示す。
【0130】
血管切除および治療行為が動脈のグルタミンに与える影響を図28に示す。オルニチンで治療した動物において、循環しているグルタミンのレベルは上昇するが、これはフェニルアセテートを同時投与することによって改善される。興味深い発見としては、オルニチンおよびフェニルブチレートの両方で治療された動物において、動脈のグリシンレベルの実質的な改善が見出されたことであった(図29)。
【0131】
実験の終了時において、脳の前頭皮質を取り出しブレインウォーターの含量を測定した(図30)。
【0132】
独立した病理学者が、これらの実験動物における脳の細胞解剖学について報告した。彼の報告を以下に要約する。
【0133】
ALF:小胞の周囲にある血管周囲に浮腫を伴う微細血管。小胞で取り囲まれ、壊死性の変化を伴うニューロン。
【0134】
ALF+O+P:小胞の周囲にある血管周囲に浮腫を伴う微細血管(ALF未満でありあらゆる治療を伴わない)。細胞内の浮腫。
【0135】
Sham:最小限の微細構造の変化を伴う脳組織=正常な脳組織。
【0136】
(結論)
本発明者らは、慢性肝臓病に関係する急性の発作のいくつかの症状を刺激すること、たとえばアンモニア濃度の上昇または消化管の出血を刺激することは、好中球の機能の低下を結果的に招くことを見出した。そしてこのような低下を、オルニチンまたはイソロイシンによって部分的に覆すことができることを見出した。オルニチンおよびイソロイシンの両者が好中球の機能を救うことは、肝臓の代償不全の進行において、共通する誘発因子である敗血症の予防において重要な役割を果たす。
【0137】
さらに、本発明者らは、イソロイシンは、模擬的な消化管の出血の後のアンモニアの濃度の上昇に影響を与えないことを見出した。従って、イソロイシンの投与時にタンパク質の合成が刺激されることによりアンモニアのレベルが低下するであろうという仮説に反して、アンモニアのレベルは影響を受けない。従って、イソロイシンをオルニチンと組み合わせて用いること(これによりアンモニアのレベルが低下することが知られている)は特に有利である。
【0138】
従って、オルニチンおよびイソロイシンを投与することによって、消化管の出血が代謝された帰結が予防される。アンモニアのレベルの上昇が鈍くなると、イソロイシンの欠乏が補正され、好中球の機能が救われる。従って、オルニチンおよびイソロイシンを併用することによって、誘発事象の後の患者に肝臓の代償不全が発生することを予防するための新たな治療法が提供される。
【0139】
本発明者らはさらに、L−オルニチンL−アスパラギン酸塩(LOLA)(これは肝性脳症に罹患している患者におけるアンモニアを減少させるのに用いられる)はアンモニアの好中球の機能への影響を逆転させないことを見出した。従って、オルニチンのみを用いることは、LOLAを用いることよりもさらに有利である。というのは、オルニチンはアンモニアを減少させること、および好中球の機能を救うことの両方を行うことができるからである。さらに、LOLAのアスパラギン酸成分は体内で蓄積する。アスパラギン酸のこのような蓄積は、実際のところ患者にとって有害であろう。というのは、アスパラギン酸はアンモニアによる好中球の機能への影響を悪化させ、さらに好中球の機能を低下させるからである。それゆえ、オルニチンをイソロイシンと組み合わせて、好ましくはアスパラギン酸塩の不在下で用いることで、肝臓の代償不全の発症の予防または遅延を実現することができる。
【0140】
さらに、本発明者らは、肝性脳症(HE)に罹患している患者をL−オルニチンLアスパラギン酸塩(LOLA)で治療することによってアンモニアのレベルが減少し、結果としてグルタミンのレベルが増加したことを見出した。しかしながら、グルタミンは再循環し腎臓および小腸内でアンモニアが再生成し得ることから、これは一時的なアンモニアの緩衝物に過ぎない。従って、LOLAのみでの治療によりアンモニアのレベルの第二の上昇が導かれる可能性があり、さらには肝性脳症の病状の一因となる可能性がある。
【0141】
尿素回路に障害を持つ子供にフェニルアセテートまたはフェニルブチレートを用いることによって、異常に高いグルタミンのレベルが低下する。対照的に、実施例1に示されるように、アンモニアのレベルを低下させるがグルタミンのレベルを上昇させるLOLAで治療しない限り、HEに苦しむ患者のグルタミンのレベルは正常である。従って、フェニルアセテートおよび/またはフェニルブチレートを使用することによってグルタミンの除去が可能となり、その結果HEに罹患している患者におけるアンモニアのレベルの第二の上昇が予防される。
【0142】
従って、オルニチンをフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つと、好ましくはアスパラギン酸塩の不在下で組み合わせて投与することによって、肝性脳症のための改善された治療を達成することができる。
【0143】
肝硬変に罹患している動物モデルさらにはヒトにおける我々の広範囲な調査によって、肝硬変に罹患している患者内のアンモニアを除去する主要な臓器は、アンモニアをグルタミンに変換する筋肉であり、グルタミン酸がそこで利用される反応であるという見解が支持される。肝不全においては、この反応を担う酵素、グルタミンシンテターゼが誘導され、グルタミン酸が供給されることによってアンモニアの無毒化が促進される。
【0144】
オルニチン、グルタミン酸の前駆体、はグルタミンに変化することによってアンモニアを無毒化する。しかしながら、我々の予備的な研究から、このグルタミンが再循環し、アンモニアが再生成することが示された。我々の発明は、アンモニアをグルタミンに無毒化するだけではなく、さらに生成される過剰のグルタミンを削減する新たな方法を提供する。従って、OPは、それぞれのもの単独よりも、肝硬変および高アンモニア血症に罹患している患者におけるアンモニアの濃度を極めて顕著に減少させる。この効果は相加的ではなく、明らかに相乗的である。さらに、OPの投与によって、食後のアンモニアの増加が抑制される。このことによって、非代償性肝硬変に罹患している患者に、高アンモニア血症のリスクを伴わないタンパク質に富む食物を供給することが可能となるかもしれない。アンモニアの減少は精神状態の改善に関係した。グルタミンの増加を防ぐことによって、アンモニアの濃度の低下が実現する。このことは、オルニチンは筋肉内でのグルタミンの生成を促進する(それによって1分子のアンモニアを捕捉する)が、このグルタミンが(もしかするとフェニルアセテートの付加物として)排出されてグルタミンの全身の増加を抑制し、それによって反発的な高アンモニア血症を防止する、という仮説と一致する。
【0145】
尿素サイクルの障害に罹患している高アンモニア血症の幼児において、フェニルアセテートがアンモニアを減少させるという立証された知識は、アンモニアがグルタミンに捕捉され、グルタミンがフェニルアセテートグルタミン付加物として排出するために腎臓を往復するということである。これらの幼児はアンモニアが高く、さらに重要なことにはグルタミンも高い。逆に言えば、肝硬変の患者はアンモニアが高く、グルタミンが正常〜少ない。上記のブタのモデルはグルタミンは上昇しておらず、肝臓を単離した後でアンモニアのレベルが劇的に上昇する。
【0146】
オルニチン単独での治療により血液のグルタミンが上昇するのに対して、アンモニアのレベルは影響を受けない。フェニルブチレート単独ではグルタミンがわずかに上昇し、そしてアンモニアのレベルへの影響は再び軽微である。まったく対照的に、高アンモニア血症をエスカレートさせるというこの破滅的なモデルでは、オルニチンおよびフェニルブチレート(OP)の両者の組み合わせにより、循環しているアンモニアがかなり減少し、オルニチン単独において見られたグルタミンの増加が改善する。グリシン、アンモニアを生じさせるアミノ酸、はすべての動物で増加するが、OPで治療した動物でのみ、このアミノ酸の増加は実質的に鈍かった。このことから、この形態の治療行為についてのさらなる利益が示唆される。高濃度のアンモニアの立証された結果は、脳の水分含量の増加としての脳腫脹ということである。オルニチンのみで治療されたブタからの脳から、水分含量がかなり増加する一方、オルニチンおよびフェニルブチレートを組み合わせたものによってブレインウォーターの含量が減少することが示される。組織学的には、プラセボで処理された動物と比較して、オルニチンおよびフェニルブチレートの併用治療が行われた動物の脳の微細構造には、明らかな傷がほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】好中球の機能が肝硬変に罹患している患者において変化し、肝臓病の重症度を増し悪化させることを示す。
【図2】アンモニアが好中球のファゴサイトーシスを減少させることを示す。
【図3】アンモニアが好中球走化性を減少させることを示す。
【図4】アンモニアが好中球のファゴサイトーシスに与える影響を治療行為によって覆すことが出来ることを示す。
【図5】模擬的な消化管の出血により、イソロイシンの投与により部分的に覆すことができる好中球走化性が減少されることを示す。
【図6】模擬的な出血によりタンパク質の合成が減少され、イソロイシンの不適切な酸化が刺激されることを示す。
【図7】模擬的な出血の間にイソロイシンを投与することでタンパク質の合成が高められるが、アンモニアの濃度は減少させないことを示す。
【図8】LOLAの投与によりアンモニアの濃度が減少するが、アンモニアの再生成が可能となることを示す。
【図9】グルタミンを能動的に除去することで、アンモニアの濃度の第二の上昇を防ぐことを示す。
【図10】フェニルアセテートがグルタミンと結合して排出可能化合物が作り出され、アンモニアの第二の上昇を防ぐことを示す。
【図11】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチンおよびフェニルブチレートがアンモニアのレベルに与える効果を示す。
【図12】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチンおよびフェニルブチレートがグルタミンのレベルに与える効果を示す。
【図13】プラセボ、O、PまたはO+Pで治療された患者の精神状態の変化を示す。
【図14】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがアンモニアのレベルに与える効果を示す。
【図15】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがグルタミンのレベルに与える効果を示す。
【図16】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがグリシンのレベルに与える効果を示す。
【図17】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがイソロイシンのレベルに与える効果を示す。
【図18】進行した肝硬変に罹患している患者における、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンがオルニチンのレベルに与える効果を示す。
【図19】胆管結紮ラットモデルにおける、オルニチンおよびフェニルブチレートが動脈のアンモニアに与える効果を示す。
【図20】胆管結紮ラットモデルにおける、オルニチンおよびフェニルブチレートが血漿オルニチンに与える効果を示す。
【図21】高アンモニア血症性急性肝不全ラットモデルにおける、オルニチン、フェニルブチレートおよびイソロイシンが動脈の血漿アンモニアのレベルに与える効果を示す。
【図22】OPで治療された、血管を切除された急性肝不全のブタモデルにおける、動脈のアンモニアの控えめな上昇を示す。
【図23】OおよびOPで治療された動物において、筋肉によって血液からアンモニアが除去されたことを示す(大腿静脈−動脈からサンプルを取り出した)。対照的に、プラセボおよびP単独の動物は、筋肉によるアンモニアの生成の増加を示す。
【図24】OPで治療された動物以外のすべての動物において、内臓によってアンモニアが生成されることを示す(門脈系臓器−動脈からサンプルを取り出した)。
【図25】分離して用いたPではなくOによって、筋肉のグルタミンの放出が増加することを示す。OPにより、筋肉のグルタミンのより顕著な放出が生じた(それによって筋内でアンモニアがグルタミンとして補足される)。
【図26】内臓のグルタミンの取り込みがOによって促進されるが、OPによって減少されること(それによって内臓でのアンモニアの生成が減少される)を示す。
【図27】動脈のオルニチンレベルが、それが投与される二種の動物(O単独の群およびOP群)において増加することを示す。
【図28】動脈のグルタミンのレベルがOによって上昇するが、OPによってはそれほどでもないことを示す。
【図29】OPの組み合わせにより、アンモニアを生成するアミノ酸のグリシンの増加が抑制されることを示す。
【図30】オルニチン単独ではブレインウォーターの増加を生じさせ、フェニルアセテートによりブレインウォーターが若干減少する一方、これらの物質を組み合わせるとブレインウォーターが実質的に減少すること(対照%)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも1つと組み合わせて使用する薬剤の製造における、オルニチンの使用。
【請求項2】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、オルニチンと組み合わせて使用する薬剤の製造における、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用。
【請求項3】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための薬剤の製造における、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用。
【請求項4】
前記肝臓の代償不全が慢性肝臓病に罹患している患者におけるものである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記予防または治療が肝臓の代償不全の発症を遅延させることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
患者が誘発事象を経験したかまたは経験したと疑われる、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記誘発事象が、消化管の出血、感染症、門脈血栓症または脱水症である、先行請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記誘発事象または擬似的な誘発事象の症状が検出されてから6時間以内に薬剤を投与する、請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
肝性脳症を慢性肝臓病または急性肝不全に罹患している患者において治療する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記オルニチンが、遊離のモノマーアミノ酸または生理学的に許容され得る塩として存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つが、ソディウムフェニルアセテートまたはソディウムフェニルブチレートとして存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記薬剤がイソロイシンをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記イソロイシンが、遊離のモノマーアミノ酸または生理学的に許容され得る塩として存在する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記薬剤がその他のアミノ酸を実質的に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
静脈内投与、腹腔内投与、胃内投与、血管内投与または経口投与用に薬剤を処方する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するために、同時使用、分離使用または連続使用を行うための併用製剤として、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む生成物。
【請求項17】
イソロイシンをさらに含む、請求項16に記載の生成物。
【請求項18】
その他のアミノ酸を実質的に含まない、請求項16または17に記載の生成物。
【請求項19】
オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む医薬組成物。
【請求項20】
イソロイシンをさらに含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
その他のアミノ酸を実質的に含まない、請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療する方法において用いるための、請求項19〜21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む、肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための薬剤。
【請求項24】
イソロイシンをさらに含む、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
肝臓の代償不全または肝性脳症を有するかまたはそのリスクを有する患者を治療する方法であって、有効量のオルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを前記患者に投与することを含む方法。
【請求項26】
有効量のイソロイシンを前記患者に投与することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、消化管の出血に起因し得るイソロイシン欠乏症を有する、請求項26に記載の方法。
【請求項1】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも1つと組み合わせて使用する薬剤の製造における、オルニチンの使用。
【請求項2】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための、オルニチンと組み合わせて使用する薬剤の製造における、フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用。
【請求項3】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための薬剤の製造における、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つの使用。
【請求項4】
前記肝臓の代償不全が慢性肝臓病に罹患している患者におけるものである、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記予防または治療が肝臓の代償不全の発症を遅延させることを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
患者が誘発事象を経験したかまたは経験したと疑われる、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記誘発事象が、消化管の出血、感染症、門脈血栓症または脱水症である、先行請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記誘発事象または擬似的な誘発事象の症状が検出されてから6時間以内に薬剤を投与する、請求項6または7に記載の使用。
【請求項9】
肝性脳症を慢性肝臓病または急性肝不全に罹患している患者において治療する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記オルニチンが、遊離のモノマーアミノ酸または生理学的に許容され得る塩として存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
フェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つが、ソディウムフェニルアセテートまたはソディウムフェニルブチレートとして存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記薬剤がイソロイシンをさらに含む、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
前記イソロイシンが、遊離のモノマーアミノ酸または生理学的に許容され得る塩として存在する、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記薬剤がその他のアミノ酸を実質的に含まない、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
静脈内投与、腹腔内投与、胃内投与、血管内投与または経口投与用に薬剤を処方する、先行請求項のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するために、同時使用、分離使用または連続使用を行うための併用製剤として、オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む生成物。
【請求項17】
イソロイシンをさらに含む、請求項16に記載の生成物。
【請求項18】
その他のアミノ酸を実質的に含まない、請求項16または17に記載の生成物。
【請求項19】
オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む医薬組成物。
【請求項20】
イソロイシンをさらに含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
その他のアミノ酸を実質的に含まない、請求項19または20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療する方法において用いるための、請求項19〜21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
オルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを含む、肝臓の代償不全または肝性脳症を予防または治療するための薬剤。
【請求項24】
イソロイシンをさらに含む、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
肝臓の代償不全または肝性脳症を有するかまたはそのリスクを有する患者を治療する方法であって、有効量のオルニチンならびにフェニルアセテートおよびフェニルブチレートの少なくとも一つを前記患者に投与することを含む方法。
【請求項26】
有効量のイソロイシンを前記患者に投与することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記患者が、消化管の出血に起因し得るイソロイシン欠乏症を有する、請求項26に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
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【図29】
【図30】
【公表番号】特表2008−521784(P2008−521784A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542118(P2007−542118)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004539
【国際公開番号】WO2006/056794
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507170192)ユーシーエル ビジネス ピーエルシー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004539
【国際公開番号】WO2006/056794
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(507170192)ユーシーエル ビジネス ピーエルシー (3)
【Fターム(参考)】
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