説明

オレフィン生成物の調製のための方法

一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブを含む含酸素化合物転化触媒の存在下、酸素結合メチル基を有する含酸素化合物種を含む含酸素化合物供給原料とオレフィン共供給材料を反応させて、オレフィン反応流出物を調製するステップであって、オレフィン共供給材料が、C5+炭化水素種10重量%未満を含むステップ、オレフィン反応流出物を分画して、少なくとも、エチレンを含む軽質オレフィン画分、ならびにC4オレフィンおよび10重量%未満のC5+炭化水素種を含むより重いオレフィン画分を得るステップ、より重いオレフィン画分の少なくとも一部を再循環させるステップ、ならびに軽質オレフィン画分の少なくとも一部をオレフィン生成物として取り出すステップを含む、オレフィン生成物を調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン生成物、具体的にはエチレンおよび/またはプロピレンなどの低級オレフィンを含むオレフィン生成物を調製する方法に関する。より具体的には、本発明は、含酸素化合物をオレフィンに転化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含酸素化合物からオレフィンを調製する方法は当分野で知られている。
【0003】
US 6 797 851は、含酸素化合物供給材料からエチレンおよびプロピレンを製造する方法を記載している。この方法は、2種の異なる含酸素化合物転化触媒を用いて2段階で行われ、第1段階において含酸素化合物を軽質オレフィン流に転化し、第2段階において、第1段階で生成されたC4+オレフィンを追加のエチレンおよびプロピレンに転化する。第1段階で用いられる触媒は、ZSM−5含有含酸素化合物転化触媒である。第2段階の触媒は10員環ゼオライトであり、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48が挙げられている。ZSM−35が好ましい。別の反応域で第1および第2段階触媒を用いる反応系の種々の実施形態が論じられている。実施形態を開示することなく、2種の触媒を混合できることが一般的に述べられている。
【0004】
この既知の方法において、相当量の芳香族化合物が生成される。大部分の芳香族化合物は、ZSM−5ゼオライト上での含酸素化合物の転化によって第1段階で生成され、ひとたび形成されると、芳香族化合物は第2段階でオレフィンに転化される可能性は低い。
【0005】
実施例2において、ZSM−5およびZSM−35を用いて得られた、第2段階後の最終生成物は、芳香族化合物11重量%を含有する。
【0006】
メタノールまたはジメチルエーテルのC2からC4オレフィン含有生成物への転化における芳香族化合物の好ましい影響が米国特許明細書第6 046 372号に記載されている。この既知の方法では、芳香族化合物の存在下、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含有する供給材料を多孔質結晶性材料を含む触媒、具体的にはゼオライトZSM−5と接触させることによって転化が起こる。すべてZSM−5を用いて行われた実施例において、メタノールおよび/またはジメチルエーテル供給材料に芳香族化合物を添加することによって、エチレンに対する転化反応の選択性が増大することが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6 797 851号
【特許文献2】米国特許第6 046 372号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
含酸素化合物供給原料からの特にエチレンに対する高い選択性を有する、軽質オレフィンの生成を最大にすることのできる新しい方法の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、オレフィン生成物を調製する方法が提供され、この方法は、
a)含酸素化合物転化触媒中の総モレキュラーシーブに対して、一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブ少なくとも50重量%を含む含酸素化合物転化触媒の存在下、酸素結合メチル基を有する含酸素化合物種、好ましくはメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む含酸素化合物供給原料とオレフィン共供給材料を反応させて、オレフィン反応流出物を調製するステップであって、オレフィン共供給材料が、C5+炭化水素種10重量%未満を含むステップ、
b)オレフィン反応流出物を分画して、少なくとも、エチレンを含む軽質オレフィン画分、ならびにC4オレフィンおよびC5+炭化水素種10重量%未満を含むより重いオレフィン画分を得るステップ、
c)ステップb)で得られたより重いオレフィン画分の少なくとも一部を再循環流としてステップa)に再循環させて、オレフィン共供給材料の少なくとも一部を形成するステップ、ならびに
d)軽質オレフィン画分の少なくとも一部をオレフィン生成物として取り出すステップを含む。
【0010】
本発明の方法は、例えばメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む含酸素化合物供給原料からの、エチレンおよび/またはプロピレン生成などのオレフィン生成を最大にすることを可能にする。一次元10員環チャネルを有する大多数のモレキュラーシーブ、およびより多次元のチャネルを有する少数のさらなるモレキュラーシーブを含む含酸素化合物転化触媒が、この目的のために、具体的には反応混合物が含酸素化合物に加えてオレフィン共供給材料を含む場合、特に有効であることが見出された。
【0011】
「モレキュラーシーブ」という語句は、小さい規則的な孔および/またはチャネルを含有し、含酸素化合物のオレフィンへの転化において触媒活性を示す材料の説明および請求の範囲において用いられる。一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブは、別の方向から他の8、10または12員環チャネルが交差していない、一方向の10員環チャネルのみを有するモレキュラーシーブであると理解される。一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブおよび/またはより多次元のモレキュラーシーブは、具体的にはゼオライトであることができる。ゼオライトは、アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブであると理解される。説明および特許請求の範囲においてモレキュラーシーブが言及される場合、具体的にはゼオライトであり得る。
【0012】
オレフィン共供給材料は、C5+オレフィン10重量%未満、具体的にはC5+オレフィンおよびパラフィン10重量%未満、より具体的にはC5+炭化水素種10重量%未満を含む。C5+は、5個以上の炭素原子を有する炭化水素を示す。
【0013】
特定の仮説または理論に拘束されることを望むものではないが、MTT型モレキュラーシーブおよび/またはTON型モレキュラーシーブなどの一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブは、メタノールおよび/またはジメチルエーテルなどの酸素結合メチル基を有する含酸素化合物種の転化において、C4オレフィンを含む共供給材料と併せて、特に有効であると出願人は現在考えている。具体的には、このようなモレキュラーシーブでは、オレフィンのアルキル化、およびこれに続く熱分解が好都合な様式で起こり、芳香族化合物、飽和物(saturate)、C5+炭化水素種、メタン、炭素酸化物などの副生成物の生成は少なく、貴重なエチレンを相当部分含む高収率の軽質オレフィンを生じると出願人は考えている。より具体的には、最適な反応経路には、含酸素化合物種のメチル基によるC4オレフィンのアルキル化、これに続く得られたC5オレフィンのエチレンおよびプロピレン分子への熱分解が含まれると現在考えられている。本発明によれば、このような高級オレフィンのアルキル化、これに続く熱分解はエチレンに対する低い選択性をもたらすため、反応の供給材料中のC5+オレフィンの量は限定されるべきである。
【0014】
さらに本発明によれば、オレフィン共供給材料は、C4オレフィンを含む適切な画分を再循環させることによって、少なくとも部分的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を図式的に示す。
【図2】反応ネットワークを図式的に示す。
【図3】本発明の別の実施形態を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一実施形態において、ステップa)のオレフィン共供給材料の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも99重量%は、通常の操作中、ステップc)の再循環流によって形成される。もっとも好ましくは、オレフィン共供給材料は、通常の操作中、再循環流によって形成され、従ってこの方法は、外部オレフィン流を必要とすることなく、含酸素化合物供給原料を主として軽質オレフィンに転化する。通常の操作中というのは、たとえば本方法の連続操作過程において、流れ時間(time on stream)の少なくとも70%を意味する。オレフィン共供給材料は、反応流出物がC4オレフィンを含むより重い画分を含まないか、不十分であるとき、この方法の開始時、触媒熱分解装置またはナフサクラッカーなどの外部供給源から得る必要のある可能性がある。
【0017】
好ましい実施形態において、より重いオレフィン画分は、C4オレフィン少なくとも50重量%、およびC4炭化水素種少なくとも合計70重量%を含む。適切には、より重いオレフィン画分は、オレフィン反応流出物のC4画分として、少なくとも部分的に得られる。C4画分はC4オレフィンを含有するが、相当量の他のC4炭化水素種、具体的にはC4パラフィンも含有することができ、これはC4オレフィンとパラフィンを蒸留などによって経済的に分離するのが困難であるためである。より重いオレフィン画分は、具体的には、C4炭化水素種少なくとも合計90重量%を含有できる。好ましい実施形態において、オレフィン共供給材料は、C5+オレフィン5重量%未満、好ましくはC5+オレフィン2重量%未満、より好ましくはC5+オレフィン1重量%未満を含み、再循環流も同様である。再循環流は、再循環流中の総炭化水素に対して、C5+オレフィン5重量%未満、好ましくはC5+オレフィン2重量%未満を含むことができる。他の好ましい実施形態において、オレフィン共供給材料は、C5+炭化水素種5重量%未満、好ましくはC5+炭化水素種2重量%未満、より好ましくはC5+炭化水素種1重量%未満を含み、再循環流も同様である。
【0018】
より重いオレフィン画分は、プロピレンも含むことができる。これは特にエチレンの高生産が望まれるときに好ましく、従って生成されたプロピレンの一部または全部がC4オレフィンと共に再循環される。
【0019】
適切には、オレフィン反応流出物は、C6−C8芳香族化合物10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満を含む。芳香族化合物の任意の生成は含酸素化合物を消費し、従って含酸素化合物は低級オレフィンに転化されないため、少量の芳香族化合物が生成されることが望ましい。
【0020】
適切には、ステップa)の反応は、温度450℃超、好ましくは温度460℃以上、具体的には480℃以上、より好ましくは温度490℃以上で行われる。より高い温度で、より高いエチレン選択性が認められる。
【0021】
好ましい実施形態において、一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブ(「一次元モレキュラーシーブ」)は、MTT型および/またはTON型のモレキュラーシーブの少なくとも1つを含む。MTTの例はZSM−23であり、TONの例はZSM−22である。
【0022】
好ましくは、一次元モレキュラーシーブは、1から500の範囲、好ましくは10から200の範囲のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する。SARは、モレキュラーシーブの組成に相当するSiO/Alのモル比として定義される。
【0023】
ZSM−22の場合、40から150の範囲、具体的には70から120の範囲のSARが好ましい。活性および選択性の点から良好な性能はSAR約100で認められた。
【0024】
ZSM−23の場合、20から120の範囲、具体的には30から80の範囲のSARが好ましい。活性および選択性の点から良好な性能はSAR約50で認められた。
【0025】
一実施形態において、含酸素化合物転化触媒は、含酸素化合物転化触媒中の総モレキュラーシーブに対して、10員環チャネルを有する一次元モレキュラーシーブ50重量%超、少なくとも65重量%を含むことができる。このような大多数のモレキュラーシーブの存在は、主たる反応経路を強く決定する。
【0026】
特定の実施形態において、含酸素化合物転化触媒は、含酸素化合物転化触媒中の総モレキュラーシーブに対して、より多次元のチャネルを有するさらなるモレキュラーシーブ少なくとも1重量%、具体的には少なくとも5重量%、より具体的には少なくとも8重量%を含む。含酸素化合物転化触媒における少数部分のより多次元のモレキュラーシーブの存在は、安定性(長期間の実行中、不活性化を遅らせる。)および水熱安定性を著しく向上させることが見出された。特定の仮説または理論に拘束されることを望むものではないが、これは、一次元モレキュラーシーブによって生成され、この方法を用いない場合にはコークを形成するより大きい分子が、より多次元のモレキュラーシーブによって転化される可能性によるものであると現在考えられている。さらなるモレキュラーシーブは、たとえば、ZSM−5などのMFI型モレキュラーシーブ、またはSAPO−34などのSAPO型モレキュラーシーブであることができる。一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブとより多次元のチャネルを有するさらなるモレキュラーシーブとの重量比は、1:1から100:1の範囲であることができる。
【0027】
好ましくは、さらなるモレキュラーシーブは、シリカ対アルミナ比SAR少なくとも60、より好ましくは少なくとも80、さらに好ましくは少なくとも100、さらに好ましくは少なくとも150を有する、MFI型モレキュラーシーブ、具体的にはゼオライトZSM−5である。SARがより高いとき、生成される総C4中のC4飽和物率は最小限に抑えられる。特定の実施形態において、含酸素化合物転化触媒は、含酸素化合物転化触媒中の総モレキュラーシーブに対して、さらなるモレキュラーシーブ35重量%未満、具体的には20重量%未満、より具体的には18重量%未満、さらに具体的には15重量%未満を含むことができる。
【0028】
本発明の方法は、この方法を用いない場合には扱いにくいことがある一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブ上での含酸素化合物供給材料のオレフィンへの転化を可能にする。このことはEP−A0485145の表2Bに例示されており、この表は、TON型のゼオライトなどの10員環チャネルを有する一次元ゼオライトが、任意のオレフィンの不在下、適切な速度で含酸素化合物を転化できないことを示している。さらに、本発明の方法は、高いエチレン収率を提供する。
【0029】
オレフィン生成物、生成物画分、画分、流出物、反応流出物などのオレフィン組成物またはオレフィン流は、明確に別段の指示のないかぎり、1種以上のオレフィンを含む組成物または流れであると理解される。他の種も存在できる。オレフィン組成物またはオレフィン流は、1つの型のオレフィンまたはオレフィン混合物を含むことができる。
【0030】
オレフィンによって、二重結合で結合された少なくとも2つの炭素原子を含有する有機化合物であると理解される。
【0031】
具体的には、オレフィン共供給材料は、オレフィンの混合物を含有できる。オレフィンの他に、オレフィン共供給材料は、例えばパラフィン化合物などの他の炭化水素化合物を含有することができる。好ましくは、オレフィン共供給材料は、オレフィン部分50重量%超、より好ましくは60重量%超、さらに好ましくは70重量%超を含み、オレフィン部分はオレフィンからなる。オレフィン共供給材料は、本質的にオレフィンからなることもできる。
【0032】
オレフィン共供給材料中の任意の非オレフィン化合物は、好ましくはパラフィン化合物である。このようなパラフィン化合物は、好ましくは0から50重量%の範囲、より好ましくは0から40重量%の範囲、さらに好ましくは0から30重量%の範囲の量で存在する。
【0033】
オレフィンは、1つの二重結合を有するモノオレフィン、または2つ以上の二重結合を有するポリオレフィンであることができる。好ましくは、オレフィン共供給材料に存在するオレフィンは、モノオレフィンである。ブテン(1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、および/またはブタジエン)とも呼ばれるC4オレフィン、具体的にはC4−モノオレフィンは、オレフィン共供給材料の好ましい成分である。好ましくは、オレフィン共供給材料および再循環流のオレフィン部分は、C4オレフィン少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも99重量%を含む。共供給材料としてのブテンは、高いエチレン選択性にとって特に有益であることが見出されている。
【0034】
特に適切な1つの再循環流は、本質的に、即ち少なくとも99重量%の1−ブテン、2−ブテン(シスおよびトランス)、イソブテン、n−ブタン、イソブテン、ブタジエンからなる。当業者は、蒸留などによって、オレフィン反応流出物からこのような画分を得る方法を承知している。
【0035】
含酸素化合物供給原料は、メタノール、ジメチルエーテルなどの酸素結合メチル基を有する含酸素化合物種を含む。好ましくは、含酸素化合物供給原料は、メタノールおよび/またはジメチルエーテル少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、もっとも好ましくは少なくとも90重量%を含む。含酸素化合物供給原料は、メタノールを少なくとも部分的にジメチルエーテルに転化する予備反応器(prereactor)から得ることができる。この方法では、含酸素化合物をオレフィンに転化する工程で水の形成が少なく、これは工程設計に有利であり、触媒が暴露される水熱条件の苛酷さを低減する。含酸素化合物供給原料は、ある量の水、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満を含むことができる。好ましくは、含酸素化合物供給原料は、本質的に含酸素化合物以外の炭化水素を含有せず、即ち、5重量%未満、好ましくは1重量%を含有する。
【0036】
一実施形態において、含酸素化合物は、合成ガスの反応生成物として得られる。合成ガスは、例えば、天然ガスもしくは油などの化石燃料から、または石炭のガス化から生じ得る。この目的のための適切な方法は、例えば、Industrial Organic Chemistry、Klaus WeissermehlおよびHans−Jurgen Arpe、第3版、Wiley、1997、13から28頁に論じられている。この書物は、28から30頁に合成ガスからのメタノールの製造も記載している。
【0037】
他の実施形態において、含酸素化合物は、発酵などによって、生物材料から得られる。例えば、DE−A−10043644に記載されている方法による。
【0038】
含酸素化合物供給原料中の含酸素化合物とオレフィン共供給材料中のオレフィンの好ましいモル比は、用いられる特定の含酸素化合物、およびそこに含まれる反応性酸素結合アルキル基の数によって決まる。好ましくは、総供給材料中の含酸素化合物とオレフィンのモル比は、10:1から1:10の範囲、より好ましくは5:1から1:5の範囲、さらに好ましくは3:1から1:3の範囲である。
【0039】
含酸素化合物が、メタノールなど、1つのみの酸素結合メチル基を含む好ましい実施形態において、モル比は、好ましくは5:1から1:5の範囲、より好ましくは2.5:1から1:2.5の範囲である。
【0040】
含酸素化合物が、例えばジメチルエーテルなど、2つの酸素結合メチル基を含む別の好ましい実施形態において、モル比は、好ましくは5:2から1:10の範囲、より好ましくは2:1から1:4の範囲である。もっとも好ましくは、このような場合のモル比は、1.5:1から1:3の範囲である。
【0041】
本方法のステップa)は、一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブの存在下で行われる。これらのモレキュラーシーブは、別の方向から他の8、10、または12員環チャネルが交差していない、一方向の10員環チャネルのみを有するモレキュラーシーブであると理解される。
【0042】
好ましくは、モレキュラーシーブは、TON型(たとえば、ゼオライトZSM−22)、MTT型(たとえば、ゼオライトZSM−23)、STF型(たとえば、SSZ−35)、SFF型(たとえば、SSZ−44)、EUO型(たとえば、ZSM−50)、およびEU−2型モレキュラーシーブ、またはこれらの混合物の群から選択される。
【0043】
MTT型触媒は、より詳細には、例えばUS−A−4,076,842に記載されている。本発明の目的のために、MTTはこのアイソタイプ、例えばZSM−23、EU−13、ISI−4およびKZ−1を含むものとみなされる。
【0044】
TON型モレキュラーシーブは、より詳細には、例えばUS−A−4,556,477に記載されている。本発明の目的のために、TONはこのアイソタイプ、例えばZSM−22、Theta−1、ISI−1、KZ−2およびNU−10を含むものとみなされる。
【0045】
EU−2型モレキュラーシーブは、より詳細には、例えばUS−A−4,397,827に記載されている。本発明の目的のために、EU−2はこのアイソタイプ、例えばZSM−48を含むものとみなされる。
【0046】
さらなる好ましい実施形態において、ZSM−23などのMTT型、および/またはZSM−22などのTON型のモレキュラーシーブが用いられる。
【0047】
モレキュラーシーブおよびゼオライトの型は、例えばCh.BaerlocherおよびL.B.McCusker、Database of Zeolite Structures:http:/www.iza−structure.org/databases/に定義されており、このデータベースはInternational Zeolite AssociationのStructure Commisiion(IZA−SC)のために設計および実装され、Atlas of Zeolite Structure Types(W.M.Meier、D.H.OlsonおよびCh.Baerlocher)の第4版のデータに基づくものである。
【0048】
本発明の方法は、一次元10員環チャネルを有する1つ以上のモレキュラーシーブのみ、具体的には一次元10員環チャネルを有するただ1つの型のモレキュラーシーブの存在下で行うことができる。
【0049】
好ましくは、含酸素化合物転化触媒において水素形態のモレキュラーシーブが用いられ、たとえばHZSM−22、HZSM−23、およびHZSM−48、HZSM−5である。好ましくは、用いられるモレキュラーシーブの総量の少なくとも50w/w%、より好ましくは少なくとも90w/w%、さらに好ましくは少なくとも95w/w%、もっとも好ましくは100%が水素形態である。モレキュラーシーブが有機カチオンの存在下で調製されるとき、モレキュラーシーブは、不活性または酸化雰囲気で加熱して有機カチオンを除去することによって、たとえば温度500℃超で1時間以上加熱することによって活性化することができる。ゼオライトは典型的に、ナトリウムまたはカリウム形態で得られる。その後、アンモニウム塩とのイオン交換手順、これに続くたとえば不活性または酸化雰囲気中、温度500度超で1時間以上のさらなる熱処理によって、水素形態を得ることができる。イオン交換後に得られたモレキュラーシーブも、アンモニウム形態であるとみなされる。
【0050】
モレキュラーシーブは、これ自体または製剤として、たとえばいわゆる結合剤材料および/または充填剤材料、ならびに場合によりさらに活性マトリクス成分との混合物または組み合わせなどとして用いることができる。他の成分も製剤に存在できる。1種以上のモレキュラーシーブがこれ自体として用いられる場合、具体的には結合剤、充填剤、または活性マトリクス成分が用いられないとき、モレキュラーシーブ自体が含酸素化合物転化触媒とみなされる。製剤において、結合剤および/または充填剤材料などの他の混合物の成分と組み合わせたモレキュラーシーブは、含酸素化合物転化触媒とみなされる。
【0051】
産業環境では、触媒はしばしば手荒い取扱いを受け、それにより触媒が粉末様材料に破壊される傾向があるため、良好な機械的強度および圧潰強度を有する触媒を提供することが望ましい。粉末様材料への破壊は処理において問題を引き起こす。従って好ましくは、モレキュラーシーブは結合剤材料に混入される。製剤中の適切な材料の例には、活性および不活性材料、および合成または天然ゼオライト、ならびに粘土、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、およびアルミノケイ酸塩などの無機材料が含まれる。シリカなどの低酸性度の不活性材料は、アルミナまたはシリカ−アルミナなどのより酸性の材料を用いる場合に起こり得る望ましくない副反応を防ぐ可能性があるため、本発明の目的のために好ましい。
【0052】
本発明の方法は、バッチ、連続、半バッチまたは半連続様式で行うことができる。好ましくは、本発明の方法は、連続様式で行われる。
【0053】
本方法が連続様式で行われる場合、本方法は、ステップa)でオレフィン共供給材料のために外部供給源から得られたオレフィンを用いて開始することができる。このようなオレフィンは、例えば、蒸気分解装置、接触分解装置、アルカン脱水素(例えば、プロパンまたはブタン脱水素)から得ることができる。さらに、このようなオレフィンは市場から得ることができる。
【0054】
特定の実施形態において、このような開始用のオレフィンは、オレフィン共供給材料を用いてまたは用いずに含酸素化合物をオレフィンに転化する前工程から得られる。このような前工程は、異なる場所に置くことができ、または以前の時点で行うこともできる。
【0055】
ZSM−5などのより多次元のモレキュラーシーブが含酸素化合物転化触媒に存在するとき、一次元モレキュラーシーブと比べて少数であっても、外部供給源からのオレフィン共供給材料なしに開始が可能である。たとえばZSM−5は、含酸素化合物をオレフィン含有生成物に転化することができ、従って再循環を確立できる。
【0056】
ステップa)で用いられる反応系は、当業者に知られている任意の反応器であってもよく、例えば、固定床、移動床、流動床、ライザー反応器などを含有することができる。ライザー反応器系、具体的には複数の連続して配置されたライザー反応器を含むライザー反応器系が好ましい。
【0057】
典型的に、含酸素化合物転化触媒は、本方法の過程で不活性化する。従来の触媒再生技法を用いることができる。本発明の方法に用いられる10員環チャネルを有する一次元モレキュラーシーブは、この目的に適していることが当業者に知られている任意の形状を有することができ、球体、錠剤、環状物、押出物などの形態で存在できる。押出触媒は、円柱および三葉体(trilobe)などの様々な形状で適用できる。所望であれば、使用した含酸素化合物転化触媒を再生し、本発明の方法に再循環できる。
【0058】
本方法のステップa)は、広範な温度および圧力にわたって実行できる。しかしながら適切には、含酸素化合物供給材料およびオレフィン共供給材料は、200℃から650℃の範囲の温度でモレキュラーシーブと接触させる。さらなる好ましい実施形態において、温度は、250℃から600℃の範囲、より好ましくは300℃から550℃の範囲、もっとも好ましくは450℃から550℃の範囲である。好ましくは、ステップa)の反応は、温度450℃超、好ましくは温度460℃以上、より好ましくは温度490℃以上で行われる。より高い温度で、より高い活性およびエチレン選択性が認められる。10員環チャネルを有する一次元ゼオライトは、8員環チャネルなどのより小さい孔またはチャネルを有するモレキュラーシーブとは対照的に、コーキングによる許容可能な不活性化を伴うこのような高温の含酸素化合物転化条件で操作できる。上述の温度は反応温度を表し、反応温度は反応域の種々の供給材料流および触媒の温度の平均であり得ることが理解される。
【0059】
含酸素化合物およびオレフィン共供給材料に加えて、第1ライザー反応器および/またはその後の任意のライザー反応器に希釈剤を供給することができる。希釈剤を用いずに、または最少量の希釈剤、例えば含酸素化合物供給材料の総量に対して希釈剤200重量%未満、具体的には100重量%未満、より具体的には20重量%未満を用いて操作するのが好ましい。このような目的に適していることが当業者に知られている任意の希釈剤を用いることができる。このような希釈剤は、例えばパラフィン化合物、または化合物の混合物であることができる。しかしながら、好ましくは、希釈剤は不活性ガスである。希釈剤は、アルゴン、窒素、および/または蒸気であることができる。これらのなかで、蒸気がもっとも好ましい希釈剤である。例えば、含酸素化合物供給材料、および場合によりオレフィン共供給材料を、例えば含酸素化合物供給材料1kg当たり蒸気0.01から10kgの範囲で、蒸気で希釈できる。
【0060】
一実施形態において、コークの形成を低減することによって触媒の安定性を向上させるために、少量の水をステップa)に添加する。
【0061】
本発明による方法のステップb)において、ステップa)のオレフィン反応流出物を分画する。当業者は、炭化水素の混合物を種々の画分に分離する方法、ならびにさらなる使用に所望の特性および組成を得るために画分をさらに後処理(work up)する方法を承知している。分離は、この目的に適していることが当業者に知られている任意の方法で行うことができ、例えば、気液分離(例えば、フラッシング)、蒸留、抽出、膜分離またはこのような方法の組み合わせによる。好ましくは、分離は、蒸留手段によって行われる。このような分離に到達するための、分画カラムの正しい条件を決定することは、当業者の技術の範囲内である。当業者は、特に分画温度、圧力、トレー、還流および再沸比に基づいて、正しい条件を選択することができる。
【0062】
少なくとも、エチレンを含む軽質オレフィン画分、ならびにC4オレフィンおよび10重量%未満のC5+炭化水素種を含むより重いオレフィン画分が得られる。好ましくは、水に富む画分も得られる。メタン、一酸化炭素、および/または二酸化炭素を含むより軽い画分、ならびにC5+炭化水素を含む1つ以上のより重い画分も得られる。このような重い画分は、たとえば、ガソリン混合成分として用いることができる。
【0063】
本方法では、相当量のプロピレンも生成される。プロピレンは、エテンを含む軽質オレフィン画分の一部を形成することができ、これを適切に種々の生成物成分にさらに分画できる。プロピレンはまた、C4オレフィンを含むより重いオレフィン画分の一部も形成できる。本明細書に言及される種々の画分および流れ、具体的には再循環流は、様々な段階での分画によって、また分画中に得られた流れを混合することによっても得ることができる。典型的に、輸出品質など所定の純度のエチレンおよびプロピレン流がこの方法から得られ、C4オレフィンおよび場合によりC4パラフィンを含むC4に富む流れも得られる。ステップc)の再循環流を形成する、C4オレフィンを含むより重いオレフィン画分は、多数の種々の分画流から構成できることが明らかであるはずである。従って、たとえば、いくらかの量のプロピレンに富む流れを、C4オレフィンに富む流れに混合できる。特定の実施形態において、C4オレフィンを含むより重いオレフィン画分の少なくとも90重量%、より具体的には少なくとも99%、または実質的にすべてを、この入口で脱プロパンカラムから底部流を受け入れる脱ブタンカラムからの塔頂流によって形成することができる。
【0064】
発明の態様を、図面を参照しながらより詳細におよび実施例を通じて解説する。ここで、
図1は本発明の1つの実施形態を図式的に示すものであり、ならびに
図2は反応の仕組みを図式的に示すものであり、ならびに
図3は本発明の別の実施形態を図式的に示すものである。
【0065】
図1に言及する。本明細書において上に明記した含酸素化合物供給原料を、ライン4を通して、反応器系1に供給する。本明細書において上に明記したオレフィン共供給材料を、ライン6を通して、同様に反応器系に供給する。反応器系1において、本明細書において上に明記した含酸素化合物転化触媒の存在下、含酸素化合物供給原料とオレフィン共供給材料を反応させて、ライン10のオレフィン反応流出物を調製する。
【0066】
オレフィン反応流出物を、分画部分20に送る。この実施形態において、分画部分が、軽質オレフィン画分としてライン24のエチレンに富む生成物流、および本明細書において上に明記したより重いオレフィン画分としてライン28のC4オレフィンに富む流れ、さらにメタンおよび/または炭素酸化物などのより軽い不純物を含む頂部のライン22のより軽い流れ、ライン26のプロピレンに富む流れ、およびライン29のC5+炭化水素に富む流れを生じることが示される。
【0067】
ライン28のより重いオレフィン画分の少なくとも一部を、ライン32を通して、反応器系1の入口に再循環させて、オレフィン共供給材料の少なくとも一部を形成する。所望であれば、より重いオレフィン画分の一部を、ライン33を通して取り出すことができる。これが10重量%未満、または具体的には5重量%未満など少量の放出(bleed)流にすぎない場合、実質的にすべてのより重いオレフィン画分が再循環されるとみなされる。再循環流に、プロピレンに富む流れ26またはC5+炭化水素に富む流れ29からなど、他の成分を混合することができる。後者は低級オレフィンの収率を増加させることができるが、そのためにエチレン選択性を犠牲にするため、あまり望ましくない。
【0068】
開始時など、特別の一般的には好ましくない実施形態において、オレフィン共供給材料の一部を、ライン35を通して外部供給源から得ることができる。そうでない場合、全工程によってライン4の含酸素化合物が主としてライン24および26の軽質オレフィンに転化される。
【実施例】
【0069】
これらの実施例において、さらに種々の反応器系のモデル計算の結果を示す。これらの計算は、図2に示した動的反応ネットワーク190に基づいた。この反応ネットワークは、ジメチルエーテル(DME)および/またはメタノール(MeOH)を含む含酸素化合物の存在下でのC2−C7オレフィンのアルキル化および熱分解を表わす。反応条件は、C7より高級なオレフィンがほとんど形成されず、無視することのできるような条件である。アルキル化において、DMEはオレフィンと反応し、メタノールを生じ、この2つのメタノール分子が脱水されてDMEになると仮定される。水はアルキル化の反応生成物として得られる。この循環はエチレンからプロピレンへのアルキル化に関して図2に示されているが、C3=以上のオレフィンのアルキル化ステップにも適用されることが明らかなはずである。C2−C4オレフィンは、広く行われている操作条件下では熱分解しない。1つのC5=分子の熱分解によって、1つのC2=分子および1つのC=3分子が生じ、C6=の熱分解によって2つのC3=分子が生じ、C7=の熱分解によって1つのC3=分子および1つのC4=分子が生じる。これは矢印192、193、194で例示される。
【0070】
反応ネットワーク190に基づいて動的モデルを確立し、このモデルのパラメータを、ZSM−23上での含酸素化合物(DMEおよび/またはMeOH)および種々のオレフィン供給材料転化の実験に基づいて決定した。その後、この動的モデルを以下に論じる種々の反応器モデルに用いた。この方法には、Aspen Custom Modellerを専有ソフトウェアルーチンと共に用いた。
【0071】
このモデルは、パラフィンの生成または転化を考慮していない。含酸素化合物転化触媒上でいくらかのパラフィンが形成されることが知られている。実践的関心の選択肢の1つは、反応生成物由来のC4=オレフィンを反応器系の入口に再循環することである。C4パラフィンからC4オレフィンを分離するのは困難であり、経済的に魅力的でない可能性のあることは知られている。従って、再循環流は、C4=と共にC4パラフィン(C4,0)を含有する可能性がある。ブタンなどのパラフィンは、典型的な含酸素化合物転化触媒上での典型的な酸素化条件で不活性であるとみなすことができ、従って一定レベルのパラフィン(ブタン)が蓄積される。以下の幾つかの実施例には、C4パラフィンの役割が含まれる。この方法でC4パラフィンの生成を模擬するために、少量の含酸素化合物供給材料を含め、相当する放出流を生成物画分から取り除いた。最終的な効果はこの方法におけるC4,0のレベルであり、これは不活性であるとさらに仮定される。
【0072】
(実施例1)
図1に示すとおり反応器系1のモデル計算を行い、ここで反応器系は等温反応器で形成した。このモデルで仮定された触媒量は5トンであった。触媒の40重量%がゼオライトであると仮定した。均一温度522℃および圧力1バールを仮定した。反応器モデルに、含酸素化合物供給原料(DME、MeOH、いくらかのHO)を、ライン4を通して供給し、C4オレフィンを、ライン6を通して供給した。分離系20でC4オレフィンから分離した後、生成物(エチレン、プロピレン、C5オレフィンおよび水)を取り出す。C4=を第1反応器に再循環させ、さらにC4飽和物C4,0を上記のとおり考慮する。
【0073】
図1の参照番号で示した種々の流れの組成を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
本発明による方法は、純粋な含酸素化合物供給材料を主としてエチレンおよびプロピレンに転化する。形成されたC4オレフィンは、本質的に完全に再循環される。このモデルでは、C4,0の蓄積を防ぐために、C4オレフィンならびに飽和物C4=およびC4,0に放出量5モル%を適用した。この方法のさらなる主な生成物(流出物)は水である。
【0076】
(比較実施例2)
C4オレフィン再循環を用いずに、反応全体の補完モデル計算を行った。ライン32(閉鎖)を通して流出物の画分を再循環させる代わりに、このモデルには、ライン35、6を通して、オレフィンおよび飽和物を含むC4供給材料流を含めた。さらなるパラメータは一定に保った。
【0077】
図1の参照番号で示した種々の流れの組成を表2に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
流入するC4流は最終的な効果においてほとんど転化されないことをこの実施例は例示している。C4オレフィンは主として、含酸素化合物から軽質オレフィンエチレンおよびプロピレンへの転化のテンプレートの役割を果たす。
【0080】
(比較実施例3)
オレフィン共供給材料の不在下、メタノール含有供給材料を、シリカ対アルミナ比48を有するMTTゼオライトZSM−23上で反応させた。反応器をアルゴン中、反応温度500℃に加熱し、アルゴン中8体積%メタノールからなる混合物を、大気圧において流速100ml/分で触媒に通した。総ガス流量に基づいて、ガス時空間速度(GHSV)は60000である。メタノール質量流量に基づいて、重量時空間速度(WHSV)は6.9メタノールg/触媒g/時である。反応器の流出物を質量分析によって分析して、生成物組成を求めた。結果を表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
上記からわかるように、いかなるオレフィン共供給材料も用いない場合、この方法はオレフィンへの転化率が低い。これはEP−A 0485145の教示を確認するものである。
【0083】
(実施例4aおよび4b)
これらの実施例では、ジメチルエーテル(DME)および1−ブテンを、それぞれMTT型およびTON型ゼオライト上で反応させた。ゼオライト粉末の試料を圧縮して錠剤にし、この錠剤を小片に砕き、ふるいにかけた。触媒試験のために、40〜60メッシュのふるい画分を用いた。反応に先立って、アンモニウム形態の新しい触媒を、600℃で2時間、空気中ex−situで処理した。
【0084】
反応は、内径3.6mmの石英反応管を用いて行った。触媒をアルゴン中、反応温度525℃に加熱し、N2中で平衡させた3体積%ジメチルエーテル、3体積%1−ブテン、2体積%蒸気からなる混合物を大気圧(1バール)で触媒に通した。ガス時空間速度は、触媒質量および時間当たりの総ガス流量に基づくものである(ml/(gcat・時))。定期的に、反応器からの流出物をガスクロマトグラフィ(GC)で分析して、生成物組成を求めた。組成は、分析したすべての炭化水素の重量ベースで算出した。
【0085】
【表4】

【0086】
表4および5において、総Cn(nは整数)の数値はn個の炭素原子を有するすべての炭化水素種を含み、総C6−C9は、C6−C8芳香族化合物を除く、6、7、8、または9個の炭素原子を有するすべての炭化水素を指す。
【0087】
これらの実施例は、一次元10員環チャネルを有する両方のゼオライトが、C4=共供給材料を含むDME供給材料から軽質オレフィンへの優れた転化特性を示すことを実証する。水(示していない。)およびC4オレフィンを除いて、非常に少量の副生成物が形成される。具体的には、形成される芳香族化合物の量は非常に少ない。さらに、少量のみのC4飽和物が形成され、従って、ブタン/ブテン分離を必要とせずに、本発明によるオレフィン共供給材料としてC4流を再循環させることができる。
【0088】
(比較実施例5)
実施例4aのMTTによる実験と同一のさらなる実験において、シリカ対アルミナ比SAR=55および280のMFIゼオライトZSM−5を用いた。結果を表5に示す。
【0089】
【表5】

【0090】
MFI含酸素化合物転化触媒は共に、実施例4aおよび4bより低い低級オレフィン(エチレン+プロピレン)総収率を示す。さらに、はるかに多量の副生成物が形成され、即ち、はるかに多量の芳香族化合物および他のC5+炭化水素種が形成される。総C4のC4飽和物の割合もはるかに高く、実際SAR55ゼオライトでは大幅に高い。従って、多次元チャネルを有するZSM−5ゼオライトからなる含酸素化合物転化触媒は、本発明の方法に適していない。
【0091】
(実施例6)
実施例1と同様のモデル計算を行ったが、ここでは3つの連続等温プラグ流反応器を含む反応器系201に関して行った。第3反応器213からの反応器流出物ライン251と共に、ライン228および230によって流体連結している3つの連続等温反応器211、212、213を含む反応器系201を図3に示す。この計算において、含酸素化合物供給原料(DME、MeOH)を、ライン234、235、236を通して供給し、C4オレフィンを、ライン238を通して第1反応器211に供給した。ライン274によって一般的に示したとおり、分離系270でC4オレフィンから分離した後、生成物(エチレン、プロピレンおよび水)を取り出す。C4=およびC4飽和物C4,0を第1反応器211に再循環させる。
【0092】
このモデルで仮定された触媒量は、反応器211、212、213でそれぞれ5、7.5、および12.5トンであった。触媒の40重量%がゼオライトであると仮定した。均一温度522℃および圧力1バールを仮定した。等温モデルでは、この系を通る実際の触媒の流量を考慮する必要はなく、従って触媒の分離および添加は示していない。
【0093】
図3の参照番号で示した種々の流れの組成を表6に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
本発明によるこの方法において、この場合にも含酸素化合物から軽質オレフィンへの非常に高い転化率が認められる。含酸素化合物の段階的添加に伴って、選択性がエチレンに移行する。得られたC2=/C3=のモル比は0.91である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン生成物を調製する方法であって、
a)含酸素化合物転化触媒中の総モレキュラーシーブに対して、一次元10員環チャネルを有するモレキュラーシーブ少なくとも50重量%を含む含酸素化合物転化触媒の存在下、酸素結合メチル基を有する含酸素化合物種、好ましくはメタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む含酸素化合物供給原料とオレフィン共供給材料を反応させて、オレフィン反応流出物を調製するステップであって、オレフィン共供給材料が、C5+炭化水素種10重量%未満を含むステップ、
b)オレフィン反応流出物を分画して、少なくとも、エチレンを含む軽質オレフィン画分、ならびにC4オレフィンおよび10重量%未満のC5+炭化水素種を含むより重いオレフィン画分を得るステップ、
c)ステップb)で得られたより重いオレフィン画分の少なくとも一部を再循環流としてステップa)に再循環させて、オレフィン共供給材料の少なくとも一部を形成するステップ、ならびに
d)軽質オレフィン画分の少なくとも一部をオレフィン生成物として取り出すステップを含む方法。
【請求項2】
ステップa)のオレフィン共供給材料の少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が、通常の操作中、ステップc)の再循環流によって形成され、もっとも好ましくは、オレフィン共供給材料が、通常の操作中、再循環流によって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
より重いオレフィン画分が、C4オレフィン少なくとも50重量%、およびC4炭化水素種少なくとも合計70重量%を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
より重いオレフィン画分が、さらにプロピレンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
オレフィン反応流出物が、流出物中の総炭化水素に対して、C6−C8芳香族化合物10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
オレフィン共供給材料が、オレフィン共供給材料中の総炭化水素に対して、C5+オレフィン5重量%未満、好ましくはC5+オレフィン2重量%未満を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップa)が、温度450℃超、好ましくは温度460℃以上、より好ましくは温度480℃以上で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
10員環チャネルを有する一次元モレキュラーシーブが、MTT型および/またはTON型のモレキュラーシーブの少なくとも1つを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
含酸素化合物転化触媒が、含酸素化合物転化触媒中の総モレキュラーシーブに対して、10員環チャネルを有する一次元モレキュラーシーブ50重量%超、好ましくは少なくとも65重量%を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
含酸素化合物転化触媒が、含酸素化合物転化触媒中の総モレキュラーシーブに対して、より多次元のチャネルを有するさらなるモレキュラーシーブ少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも8重量%を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
触媒組成物が、触媒組成物中のモレキュラーシーブの総重量に対して、さらなるモレキュラーシーブ35重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは18重量%未満、さらに好ましくは15重量%未満を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
さらなるモレキュラーシーブが、MFI型モレキュラーシーブ、具体的にはゼオライトZSM−5である、請求項112の10に記載の方法。
【請求項13】
ステップa)が、ライザー反応器を含む反応器系、好ましくは各段階からライザー反応器流出物を得るために、2つ以上の連続的に配置されたライザー反応器段階を含み、先行するライザー反応器段階のライザー反応器流出物の少なくとも一部が次のライザー反応器段階に供給されるように、各ライザー反応器段階が単一のライザー反応器または複数の平行するライザー反応器を含む反応器系で行われる、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップa)が、複数の連続反応域を含む反応器系で行われ、含酸素化合物が、連続反応域の少なくとも2つに添加される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
含酸素化合物が、合成ガスの反応生成物として、具体的には天然ガスもしくは油などの化石燃料から生じる合成ガスから、または石炭のガス化から得られる、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−503156(P2011−503156A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533618(P2010−533618)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065812
【国際公開番号】WO2009/065848
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】