説明

オレフィン系重合体の製造方法、及びオレフィン系重合体

【課題】高分子量でかつ分子量分布が狭いオレフィン系重合体(特に、脂環構造を有するオレフィン系重合体)を生産性よく得ることができるオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素をカチオン重合触媒の存在下で重合させてオレフィン系重合体を製造する方法であって、前記カチオン重合触媒1モルに対し、0.01モル以上10モル未満の芳香族炭化水素を共存させることを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。
【化1】


(式(1)中、R1〜R3は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R4は、水素原子又は炭化水素基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体の製造方法、及びオレフィン系重合体に関する。より詳しくは、医療用器材、電気絶縁材料、耐熱性や耐薬品性に優れた電子部品処理用器材などに使用可能なオレフィン系重合体の製造方法、及び、該オレフィン系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和二重結合を有する炭化水素(オレフィン系炭化水素)を重合させることによって得られるオレフィン系重合体は、不純物の溶出や薬剤成分の吸着が起こりにくく、さらに電気絶縁性、高周波特性、耐熱性、耐薬品性等の各種物性に優れるため、医療用器材、電気絶縁材料、電子部品処理用器材などの各種用途に有用であることが知られている。上記オレフィン系重合体の中でも、脂肪族環状構造を有するオレフィン系炭化水素(オレフィン系脂環式炭化水素)を重合させることによって得られるオレフィン系重合体は、その脂肪族環(脂環)構造に起因する高度な耐熱性や透明性等を有するため、特にその有用性は高い。
【0003】
上記オレフィン系重合体として、例えば、4−ビニルシクロヘキセンを(イソプロピリデン−9−フルオレニル−シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロライド(カミンスキー触媒)の存在下、アニオン重合させることによって得られるポリ−4−ビニルシクロヘキセンが開示されている(特許文献1、2参照)。しかしながら、上記製造方法により得られるオレフィン系重合体は分子量が低く、機械強度等の物性が劣るという問題を有していた。また、上記製造方法では、得られるオレフィン系重合体の収率は十分でなく、生産性の向上が難しいという問題を有していた。
【0004】
また、上記オレフィン系重合体として、例えば、ビニルシクロヘキサンを塩化アルミニウム(触媒)の存在下、カチオン重合させることによって得られるポリビニルシクロヘキサンが開示されている(非特許文献1参照)。しかしながら、上記製造方法では、モノマーであるビニルシクロヘキサンの転化率が低いという問題があった。また、上記オレフィン系重合体として、例えば、4−ビニルシクロヘキセンをトリフルオロボラン(触媒)の存在下、カチオン重合させることによって得られるポリ−4−ビニルシクロヘキセンが開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、上記製造方法により得られるオレフィン系重合体は、数平均分子量が1000以下と低く、機械強度等の物性が劣るなどの問題を有していた。さらに、上記オレフィン系重合体の中でも、比較的数平均分子量が比較的高い(例えば、500以上)ものについては、分子量分布が広いため光学物性に劣る等の問題も生じていた。
【0005】
即ち、高い分子量を有し、なおかつその分子量分布が狭いオレフィン系重合体(特に、脂環構造を有するオレフィン系重合体)を、高い生産性で生成させることができるオレフィン系重合体の製造方法が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3360335号明細書
【特許文献2】特許3997121号明細書
【特許文献3】国際公開第9633147号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.P.KENNEDY,et al.“Intramolecular Hydride Shift Polymerization by Cationic Mechanism.IV.Cationic Isomerization Polymerization of Vinylcyclohexane”,JOURNAL OF POLYMER SCIENCE:PART A,1964,2,p.5029−5038.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、高分子量でかつ分子量分布が狭いオレフィン系重合体(特に、脂環構造を有するオレフィン系重合体)を生産性よく得ることができるオレフィン系重合体の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高分子量で分子量分布が狭く、生産性が高いオレフィン系重合体(特に、脂環構造を有するオレフィン系重合体)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、オレフィン系炭化水素をカチオン重合触媒の存在下で重合させる際に、上記カチオン重合触媒に対して特定量の芳香族炭化水素を共存させることによって、高分子量で分子量分布が狭いオレフィン系重合体を、短時間かつ高収率で(即ち、高い生産性で)生成させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、下記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素をカチオン重合触媒の存在下で重合させてオレフィン系重合体を製造する方法であって、前記カチオン重合触媒1モルに対し、0.01モル以上10モル未満の芳香族炭化水素を共存させることを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【化1】

(式(1)中、R1〜R3は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R4は、水素原子又は炭化水素基を示す。)
【0011】
さらに、前記式(1)におけるR4が脂環式炭化水素基である前記のオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【0012】
さらに、前記式(1)におけるR1〜R3がいずれも水素原子である前記のオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【0013】
さらに、前記カチオン重合触媒が、塩化ガリウム又はエチルジクロロアルミニウムである前記のオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【0014】
さらに、前記芳香族炭化水素が、下記式(2)で表される化合物である前記のオレフィン系重合体の製造方法を提供する。
【化2】

(式(2)中、R5は直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、nは0〜6の整数である。)
【0015】
また、本発明は、前記のオレフィン系重合体の製造方法により得られる、数平均分子量が2000以上、分子量分布[重量平均分子量/数平均分子量]が1.18未満であることを特徴とするオレフィン系重合体を提供する。
【0016】
さらに、前記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素を2種以上含むモノマー成分より構成された共重合体である前記のオレフィン系重合体を提供する。
【0017】
また、本発明は、下記式(3)で表されるオレフィン系脂環式炭化水素を必須成分として含むモノマー成分より構成され、数平均分子量が2000以上、分子量分布[重量平均分子量/数平均分子量]が1.18未満であることを特徴とするオレフィン系重合体を提供する。
【化3】

(式(3)中、R1〜R3は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、Xは脂環式炭化水素基を示す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は上記構成を有するため、該方法によると、高分子量でかつ分子量分布が狭いオレフィン系重合体を生産性よく製造することができる。特に、上記方法により得られる、高分子量で分子量分布が狭い脂環構造を有するオレフィン系重合体は、優れた光学物性、耐熱性、機械強度等を発揮できる。さらに、上記製造方法は、例えば、オレフィン系重合体のモノマー成分として、脂環構造中に二重結合を有するオレフィン系脂環式炭化水素(例えば、ビニルシクロヘキセンなど)を用いることにより、エポキシ樹脂の原料としてのオレフィン系重合体(例えば、ポリビニルシクロヘキセンなど)を得ることができる点でも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1で得られたポリビニルシクロヘキサンの13C−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、下記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素をカチオン重合触媒の存在下で重合させてオレフィン系重合体を製造する方法であって、上記カチオン重合触媒1モルに対し、0.01モル以上10モル未満の芳香族炭化水素を共存させることを特徴としている。
【化4】

(式(1)中、R1〜R3は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R4は、水素原子又は炭化水素基を示す。)
【0021】
即ち、本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、カチオン重合触媒、及び該カチオン重合触媒1モルに対して0.01モル以上10モル未満の芳香族炭化水素の存在下、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素を必須成分として含むモノマー成分(単量体成分)を、重合(カチオン重合)することによってオレフィン系重合体(「本発明のオレフィン系重合体」と称する場合がある)を製造する方法である。上記モノマー成分の重合は、溶媒の存在下(共存下)で実施することが好ましい。
【0022】
[式(1)で表されるオレフィン系炭化水素]
上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素は、本発明のオレフィン系重合体の必須のモノマー成分である。
【0023】
上記式(1)におけるR1〜R3(R1、R2、R3)は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。上記炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ブチル基(n−ブチル基)、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。中でも、R1〜R3としては、重合性の観点で、水素原子が好ましく、特に、R1〜R3がいずれも水素原子であることがより好ましい。
【0024】
上記式(1)におけるR4は、水素原子又は炭化水素基を示す。上記炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらが2以上結合した炭化水素基などが挙げられる。上記脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基などが挙げられる。上記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基や、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基、トリシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環系の炭化水素基(例えば、橋かけ環式基);フェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基などが挙げられる。また、上記炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基)が2以上結合した基としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;メチルフェニル基等のアルキル基置換フェニル基などが挙げられる。
【0025】
具体的には、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブテン(イソブチレン)、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−へプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−イコセン等のα−オレフィン系単量体(例えば、炭素数1〜20のα−オレフィン単量体); ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどの鎖状共役ジエン系単量体;ビニルシクロペンタン、イソプロペニルシクロペンタン等のビニルシクロペンタン系単量体や、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテン等のビニルシクロペンテン系単量体などの五員環を有するオレフィン系炭化水素;ビニルシクロヘキサン、4−メチルビニルシクロヘキサン、3−メチルビニルシクロヘキサン、2−メチルビニルシクロヘキサン、1−メチルビニルシクロヘキサン、3−メチルイソプロペニルシクロヘキサン、イソプロペニルシクロヘキサン、イソプロペニル−3−メチルシクロヘキサン等のビニルシクロヘキサン系単量体、4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン等のビニルシクロヘキセン系単量体、モノテルペン(β−ピネン、d−リモネンなど)、ジテルペン等のテルペン系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、4−フェニルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のスチレン系単量体などの六員環を有するオレフィン系炭化水素;ビニルシクロへプタン、イソプロペニルシクロヘプタン等のビニルシクロヘプタン系単量体、4−ビニルシクロへプテン、4−イソプロペニルシクロへプテン等のビニルシクロへプテン系単量体などの七員環以上の環構造を有するオレフィン系炭化水素などが挙げられる。上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
中でも、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素としては、オレフィン系重合体の機械強度等の物性向上の観点で、上記式(1)におけるR4が脂環式炭化水素基である、下記式(3)で表されるオレフィン系脂環式炭化水素が好ましい。
【化5】

(式(3)中、R1〜R3は前記に同じ。Xは、脂環式炭化水素基を示す。)
【0027】
上記Xとしては、上述の脂環式炭化水素基(1以上の炭化水素基が結合した脂環式炭化水素基も含む)が挙げられる。中でも、上記式(3)で表されるオレフィン系脂環式炭化水素としては、オレフィン系重合体の機械強度等の物性向上の観点で、ビニルシクロヘキセン(特に、4−ビニルシクロヘキセン)、ビニルシクロヘキサンが好ましい。
【0028】
本発明のオレフィン系重合体を構成する単量体成分(モノマー成分)における、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素の含有量は、特に限定されないが、上記オレフィン系重合体を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、1〜100重量%が好ましく、より好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%である。上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素の含有量が1重量%未満であると、耐熱性が低下する場合がある。なお、本発明のオレフィン系重合体のモノマー成分として、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素を2種以上組み合わせて使用する場合には、これらの合計量が上記範囲を満たせばよい。
【0029】
即ち、本発明のオレフィン系重合体における、上記(1)で表されるオレフィン系炭化水素に由来する構造単位(繰り返し構造単位)の含有量(割合)は、1〜100重量%が好ましく、より好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%である。
【0030】
[その他のモノマー]
本発明のオレフィン系重合体は、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素の他に、該オレフィン系炭化水素以外のモノマー(「その他のモノマー」と称する場合がある)が共重合された共重合体であってもよい。
【0031】
上記その他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−シクロペンタジエン、5,5−ジメチルシクロペンタジエン等のシクロペンタジエン系単量体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、インデンなどの環状オレフィン系単量体;フラン、チオフェン、1,3−シクロヘキセンなどの環状共役ジエン系単量体;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、トリオキサン、ジオキサン、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニル−2−ピロリドン等の複素環含有ビニル化合物系単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン等のビニルシラン類;アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、アリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン等のアリルシラン類;3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロイルオキシシラン類;3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロイルオキシシラン類;β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、α、α−ジメチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、β、β−ジメチル−β−プロピオラクトン等のラクトン類などが挙げられる。
【0032】
本発明のオレフィン系重合体を構成するモノマー成分における、上記その他のモノマーの含有量は、特に限定されないが、上記オレフィン系重合体を構成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、95重量%以下(例えば、0〜95重量%)とすることが好ましい。上記その他のモノマーの含有量が95重量%を超えると、オレフィン系重合体の耐熱性等が低下する場合がある。
【0033】
[カチオン重合触媒]
本発明のオレフィン系重合体の製造方法において用いられるカチオン重合触媒としては、公知乃至慣用のカチオン重合触媒を用いることができ、特に限定されないが、例えば、塩化アルミニウム(AlCl3)、臭化アルミニウム(AlBr3)、フッ化ホウ素(BF3)、塩化ホウ素(BCl3)、フッ化ホウ素−ジエチルエーテル錯体(BF3・OEt2)、四塩化チタン(TiCl4)、臭化チタン(TiBr4)、塩化第一鉄(FeCl2)、塩化第二鉄(FeCl3)、塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl4)、TiCl4/Cl3CCOOH、SnCl4/Cl3CCOOH、六塩化タングステン(WCl6)、塩化モリブデン(MoCl5)、塩化ガリウム(GaCl3)、塩化ニオブ(NbCl5)、エチルジクロロアルミニウム(エチルアルミニウムジクロライド、EtAlCl2)、エチルアルミニウムセスキクロリド(C615Al2Cl3)、ジエチルアルミニウムクロリド(Et2AlCl)、塩化ジルコニウム(ZrCl4)、塩化ハフニウム(HfCl4)、塩化インジウム(InCl3)等のハロゲン化金属;Pd(CH3CN)2Cl2、Pd(C65CN)2Cl2、Pd(CH3CN)4(BF42等のパラジウム触媒(Pd触媒);HCl、HF、H2SO4、H3BO3、HClO4、CF3COOH、CCl3COOH等の水素酸(プロトン酸)などが挙げられる。上記カチオン重合触媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、塩化ガリウム(GaCl3)、エチルジクロロアルミニウム(EtAlCl2)、四塩化チタン(TiCl4)が好ましい。
【0034】
上記カチオン重合触媒の使用量(添加量)は、特に限定されないが、上記オレフィン系重合体を構成するモノマー成分全量100モルに対して、0.01〜20モルが好ましく、より好ましくは0.1〜10モルである。カチオン重合触媒の使用量が0.01モル未満であると、オレフィン系重合体の収率が低くなる場合がある。一方、カチオン重合触媒の使用量が20モルを超えると、触媒除去の観点から問題となる場合がある。
【0035】
[共触媒]
本発明のオレフィン系重合体の製造方法においては、上記カチオン重合触媒に対して、共触媒を併用してもよい。上記共触媒としては、公知乃至慣用の共触媒を使用することができ、特に限定されないが、具体的には、水、アルコール(例えば、t−ブタノール、2−フェニル−プロパノール等)、酸、エーテル化合物(例えば、1,4−ビス(2−メトキシ−2−フェニルプロパン)、1,4−ビス(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン等)、ハロゲン化アルキル(例えば、t−ブチルクロライド等)などの化合物が挙げられる。中でも、ハロゲン化アルキルが好ましい。
【0036】
上記共触媒の使用量(添加量)は特に限定されないが、例えば、上記カチオン重合触媒に対して、0.1〜10モル倍の範囲から適宜選択することができる。
【0037】
[芳香族炭化水素]
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素を上記カチオン重合触媒の存在下で重合(カチオン重合)させるに際し、上記カチオン重合触媒に対して特定量の芳香族炭化水素を共存させることを特徴としている。このように、芳香族炭化水素を共存させることによって、生成するオレフィン系重合体の分子量を高くすることができ、さらには、その分子量分布[重量平均分子量/数平均分子量]を狭くすることができる。
【0038】
上記芳香族炭化水素としては、特に限定されず、単環系の芳香族炭化水素[例えば、ベンゼン環を有する芳香族炭化水素]を用いることもできるし、縮合環系の芳香族炭化水素[例えば、ナフタレン環、フェナントレン環、フルオレン環、インデン環などを有する芳香族炭化水素]を用いることもできる。また、上記芳香族炭化水素は、芳香環上に置換基を有していてもよい。なお、上記芳香族炭化水素には、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素は含まれないものとする。
【0039】
上記置換基(上記芳香族炭化水素の芳香環上の置換基)としては、例えば、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子などが挙げられる。なお、上記芳香族炭化水素が有する芳香環上の置換基の数は、特に限定されない。
【0040】
即ち、上記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン(1,3,5−トリメチルベンゼン)、プソイドクメン(1,2,4−トリメチルベンゼン)、テトラメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、エチルキシレン、ジエチルキシレン、プロピルトルエン、モノクロロベンゼン(クロロベンゼン)、ジクロロベンゼン、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、モノブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、アントラセン、ビフェニル、テルフェニル、などが挙げられる。
【0041】
中でも、上記芳香族炭化水素としては、オレフィン系重合体の収率、分子量、分子量分布等の観点で、下記式(2)で表される化合物(アルキル置換ベンゼン)が好ましい。
【化6】

【0042】
上記式(2)中、R5は直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示す。上記R5としては、特に限定されないが、例えば、炭素数が1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数が1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0043】
上記式(2)中、nは0〜6の整数を示す。上記nとしては、特に限定されないが、例えば、1〜4が好ましく、さらに好ましくは1〜3である。なお、上記式(2)におけるnが2以上(2〜6)の場合、それぞれのR5(直鎖又は分岐鎖状のアルキル基)は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
即ち、上記式(2)で表される化合物(芳香族炭化水素)としては、特に、上記オレフィン系重合体の収率、分子量、分子量分布等の観点で、トルエン、キシレン、メシチレンが好ましい。
【0045】
上記芳香族炭化水素の使用量(添加量)は、上記カチオン重合触媒1モルに対して、0.01モル以上、10モル未満であり、好ましくは0.1〜9.9モル、より好ましくは0.1〜8モルである。芳香族炭化水素の使用量が0.01モル未満であると、反応が進行しなかったり、生成するオレフィン系重合体の分子量分布が広くなり過ぎる傾向がある。一方、芳香族炭化水素の使用量が10モル以上であると、生成するオレフィン系重合体の分子量が小さくなり過ぎる傾向がある。
【0046】
[溶媒]
本発明のオレフィン系重合体の製造方法においては、必要に応じて、溶媒を使用することもできる。上記溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン(ジクロロメタン)、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン、1−クロロブタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒などが挙げられる。溶媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、オレフィン系重合体やカチオン重合触媒等の溶解性の観点で、塩化メチレン、1−クロロブタンが好ましく、より好ましくは塩化メチレンと1−クロロブタンの混合溶媒である。
【0047】
上記溶媒の使用量は、特に限定されないが、カチオン重合触媒及び生成するオレフィン系重合体の溶解度の観点で、オレフィン系重合体を構成するモノマー成分全量100重量部に対し、10〜2000重量部が好ましく、より好ましくは100〜1500重量部である。
【0048】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法における重合温度(反応温度)としては、カチオン重合が通常実施される反応温度を採用することができ、特に限定されないが、例えば、−100〜50℃が好ましく、より好ましくは−80〜0℃である。重合温度が−100℃未満であると、低温を保持する設備を要するためコスト面で不利になる場合がある。一方、重合温度が50℃を超えると、生成するオレフィン系重合体の分子量分布が広くなり過ぎる場合がある。また、重合温度は常に一定とする必要はなく、例えば、上記温度範囲で適宜変更(例えば、段階的に変更)してもよい。
【0049】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法における重合時間(反応時間)は、特に限定されないが、例えば、15秒〜12時間が好ましく、より好ましくは5分〜6時間である。
【0050】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、特に限定されず、空気中、不活性ガス雰囲気等のいずれの雰囲気においても実施することができる。中でも、反応性の観点で、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
【0051】
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、上記のように、カチオン重合触媒に対して特定量の芳香族炭化水素を共存させた状態で、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素を必須成分として含むモノマー成分を重合することを特徴とする。これにより、オレフィン系重合体を構成するモノマー成分を短時間かつ高転化率で重合させることができ、高い生産性で高分子量かつ分子量分布が狭いオレフィン系重合体を得ることができる。その理由は、特定量の芳香族炭化水素をカチオン重合触媒と共存させることによって、両者が錯体等の複合体を形成し、当該複合体が高活性で、なおかつ長寿命の生長カチオンを生成させる重合触媒として機能するためと推測される。また、本発明のオレフィン系重合体の製造方法においては、芳香族炭化水素の使用量が比較的少ない(具体的には、カチオン重合触媒1モルに対して0.01モル以上、10モル未満)ため、トルエンやキシレン等を溶媒として使用する重合方法等と比較して、環境保護の面でも有益である。
【0052】
[オレフィン系重合体]
本発明のオレフィン系重合体の製造方法により、本発明のオレフィン系重合体が得られる。本発明のオレフィン系重合体は、上記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素を必須のモノマー成分として構成される重合体である。また、本発明のオレフィン系重合体の製造方法において、上記(1)で表されるオレフィン系炭化水素を2種以上含むモノマー成分を用いた場合には、これら2種以上のオレフィン系炭化水素を必須のモノマー成分とする共重合体(オレフィン系重合体)が得られる。さらに、本発明のオレフィン系重合体の製造方法において、上記式(3)で表されるオレフィン系脂環式炭化水素を用いた場合には、脂環構造を有するオレフィン系重合体が得られる。
【0053】
本発明のオレフィン系重合体(特に、脂環構造を有するオレフィン系重合体)の重量平均分子量は、特に限定されないが、機械物性等の観点で、2000〜100000が好ましく、より好ましくは2000〜50000である。
【0054】
本発明のオレフィン系重合体(特に、脂環構造を有するオレフィン系重合体)の数平均分子量は、特に限定されないが、機械物性等の観点で、2000以上(例えば、2000〜100000)が好ましく、より好ましくは2000〜50000である。
【0055】
本発明のオレフィン系重合体(特に、脂環構造を有するオレフィン系重合体)の分子量分布[重量平均分子量/数平均分子量]は、特に限定されないが、機械物性や光学物性等の観点で、1.18未満(例えば、1.00以上1.18未満)が好ましく、より好ましくは1.00〜1.15、さらに好ましくは1.00〜1.13である。
【0056】
本発明のオレフィン系重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、例えば、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)により、標準ポリスチレン換算値で算出することができる。
【0057】
中でも、本発明のオレフィン系重合体の特に好ましい具体的構成として、下記式(4)で表される構造単位(繰り返し構造単位)と、下記式(5)で表される構造単位(繰り返し構造単位)とを少なくとも有するオレフィン系重合体が挙げられる。
【化7】

【化8】

【0058】
上記式(4)及び式(5)におけるYは、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素環(脂環)を示す。なお、上記式(4)及び式(5)のそれぞれに表される「C」は、Yである脂肪族炭化水素環の環骨格を構成する炭素原子である。上記脂肪族炭化水素環としては、特に限定されないが、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環等の炭素数4〜10のシクロアルカン環;シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロへプテン環等の炭素数4〜10のシクロアルケン環;アダマンタン基、ノルボルナン環、ノルボルネン環、ボルナン環、イソボルナン環、ビシクロヘプタン環、ビシクロノナン環、ビシクロデカン環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、トリシクロ[4.2.2.12,5]ウンデカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環等の二環系、三環以上の多環系の炭化水素環(例えば、炭素数6〜20程度の橋かけ炭化水素環など)などが挙げられる。中でも、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環が好ましい。
【0059】
また、上記置換基(上記脂肪族炭化水素環が有していてもよい置換基)としては、特に限定されないが、例えば、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;アダマンチル基、ノルボルニル基等の橋かけ環式基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等の炭素数1〜10のアシル基;シアノ基;ニトロ基;オキソ基などが挙げられる。
【0060】
即ち、上記具体的構成のオレフィン系重合体は、ビニルシクロヘキサン及び/又はビニルシクロヘキセン(特に、4−ビニルシクロヘキセン)を必須成分として含むモノマー成分より構成された重合体であることが好ましく、より好ましくは実質的にビニルシクロヘキサン及び/又はビニルシクロヘキセン(特に、4−ビニルシクロヘキセン)のみからなるモノマー成分(例えば、オレフィン系重合体を構成するモノマー成分全量に対する、ビニルシクロヘキサン及びビニルシクロヘキセン(特に、4−ビニルシクロヘキセン)の含有量が98重量%以上のモノマー成分)より構成された重合体である。特に、上記具体的構成のオレフィン系重合体が、ビニルシクロヘキセン(特に、4−ビニルシクロヘキセン)に由来する構造単位を有する場合には、かかるシクロヘキセン環内の二重結合を変性する(例えば、エポキシ化)ことによって、各種の機能性材料(例えば、エポキシ樹脂)を得ることができるため、好ましい。
【0061】
上記具体的構成のオレフィン系重合体における、上記式(4)で表される構造単位と上記式(5)で表される構造単位の割合(含有量)[式(4)で表される構造単位(モル)/式(5)で表される構造単位(モル)]は、例えば、重合温度や溶媒等により制御することができる。なお、上記式(4)で表される構造単位と上記式(5)で表される構造単位の割合(含有量)は、例えば、1H−NMR、13C−NMR等により測定、算出することができる。
【0062】
なお、上記具体的構成のオレフィン系重合体における上記式(5)で表される構造単位は、モノマー成分の重合の際に生成する生長カチオン(カルボカチオン)の異性化に起因する構造であると推測される。即ち、上記式(5)で表される構造単位は、オレフィン系重合体がカチオン重合により生成したことを示す構造である。従来は、カチオン重合により得られるオレフィン系重合体(脂環構造を有するオレフィン系重合体)として、高分子量でかつ分子量分布が狭いものを得ることはできなかった。これに対し、本発明では、上述の本発明のオレフィン系重合体の製造方法により、上記式(5)で表される構造単位を有し、数平均分子量が2000以上、かつ分子量分布が1.18未満であるオレフィン系重合体を得ることが可能となった。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0064】
なお、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)、及びNMRは、以下の機器及び条件にて測定した。
GPC:東ソー(株)製TSKguardcolumn HXL−L、TSKgel G4000HXL、G3000HXL、G20000HL、ポリスチレン換算、溶媒;クロロホルム
NMR:JEOL製、「ECA−500 125MHz」、測定法;重クロロホルム希釈
【0065】
実施例1
シュレンク管に、ジクロロメタン70mL、n−ブチルクロリド30mL、ビニルシクロヘキサン8.09g、及びt−ブチルクロリドのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.0mLを加え、よく攪拌して均一にした後、−78℃に冷却した。ここに、同温度に冷却した塩化ガリウムのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.5mLとトルエン23mgの混合溶液を攪拌しながら加え、重合を開始した。さらに、同温度にて24時間攪拌後、アンモニア水を0.1wt%含むメタノール溶液を大過剰加えて重合を停止させた。重合反応停止後の反応溶液をヘキサンで希釈後、5wt%の希塩酸で3回、次いでイオン交換水、0.6N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、pHが中性になるまでイオン交換水で洗浄した。有機層を減圧留去した後、さらに、バキュームオーブンで60℃に加熱し、2時間以上減圧乾燥した。乾燥させると6.5gの固体(ポリビニルシクロヘキサン)が得られた。
得られた固体の分子量をGPCで測定すると、数平均分子量(Mn)は4200であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.33であった。
また、得られた重合体の13C−NMRスペクトルにおいて、下記式(6)で表される構造単位(1,2−ユニット;上記式(4)で表される構造単位に対応する)に加え、下記式(7)で表される構造単位(1,3−ユニット;上記式(5)で表される構造単位に対応する)が存在することを確認した。図1には、上記ポリビニルシクロヘキサンの13C−NMRスペクトルを示す。図1の13C−NMRスペクトルにおけるピークには、下記式(6)、式(7)で表される構造単位中のそれぞれの炭素原子に対応する符号を付した。
【化9】

【化10】

【0066】
実施例2
シュレンク管に、ジクロロメタン70mL、n−ブチルクロリド30mL、ビニルシクロヘキサン8.09g、及びt−ブチルクロリドのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.0mLを加え、よく攪拌して均一にした後、−78℃に冷却した。ここに、同温度に冷却した塩化ガリウムのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.5mLとトルエン46mgの混合溶液を攪拌しながら加え、重合を開始した。さらに、同温度にて24時間攪拌後、アンモニア水を0.1wt%含むメタノール溶液を大過剰加えて重合を停止させた。重合反応停止後の反応溶液をヘキサンで希釈後、5wt%の希塩酸で3回、次いでイオン交換水、0.6N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、pHが中性になるまでイオン交換水で洗浄した。有機層を減圧留去した後、さらに、バキュームオーブンで60℃に加熱し、2時間以上減圧乾燥した。乾燥させると7.7gの固体(ポリビニルシクロヘキサン)が得られた。
得られた固体の分子量をGPCで測定すると、数平均分子量(Mn)は3800であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.30であった。また、13C−NMR測定により、上記ポリビニルシクロヘキサンには、上記式(6)で表される構造単位だけではなく、上記式(7)で表される構造単位が存在することが確認された。
【0067】
実施例3
シュレンク管に、ジクロロメタン70mL、n−ブチルクロリド30mL、ビニルシクロヘキサン8.09g、及びt−ブチルクロリドのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.0mLを加え、よく攪拌して均一にした後、−78℃に冷却した。ここに、同温度に冷却した塩化ガリウムのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.5mLとトルエン92mgの混合溶液を攪拌しながら加え、重合を開始した。さらに、同温度にて3時間攪拌後、アンモニア水を0.1wt%含むメタノール溶液を大過剰加えて重合を停止させた。重合反応停止後の反応溶液をヘキサンで希釈後、5wt%の希塩酸で3回、次いでイオン交換水、0.6N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、pHが中性になるまでイオン交換水で洗浄した。有機層を減圧留去した後、さらに、バキュームオーブンで60℃に加熱し、2時間以上減圧乾燥した。乾燥させると7.7gの固体(ポリビニルシクロヘキサン)が得られた。
得られた固体の分子量をGPCで測定すると、数平均分子量(Mn)は2800であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.11であった。また、13C−NMR測定により、上記ポリビニルシクロヘキサンには、上記式(6)で表される構造単位だけではなく、上記式(7)で表される構造単位が存在することが確認された。
【0068】
実施例4
シュレンク管に、ジクロロメタン70mL、n−ブチルクロリド30mL、ビニルシクロヘキサン8.09g、及びt−ブチルクロリドのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.0mLを加え、よく攪拌して均一にした後、−78℃に冷却した。同温度に冷却した塩化ガリウムのヘキサン溶液(200mM)2.5mLとメシチレン120mgの混合溶液を攪拌しながら加え、重合を開始した。さらに、同温度にて16分間攪拌後、アンモニア水を0.1wt%含むメタノール溶液を大過剰加えて重合を停止させた。重合反応停止後の反応溶液をヘキサンで希釈後、5wt%の希塩酸で3回、次いでイオン交換水、0.6N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、pHが中性になるまでイオン交換水で洗浄した。有機層を減圧留去した後、さらに、バキュームオーブンで60℃に加熱し、2時間以上減圧乾燥した。乾燥させると7.1gの固体(ポリビニルシクロヘキサン)が得られた。
得られた固体の分子量をGPCで測定すると、数平均分子量(Mn)は2100であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.16であった。また、13C−NMR測定により、上記ポリビニルシクロヘキサンには、上記式(6)で表される構造単位だけではなく、上記式(7)で表される構造単位が存在することが確認された。
【0069】
実施例5
シュレンク管に、ジクロロメタン70mL、n−ブチルクロリド30mL、ビニルシクロヘキサン8.09g、及びt−ブチルクロリドのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.0mLを加え、よく攪拌して均一にした後、−78℃に冷却した。ここに、同温度に冷却したエチルジクロロアルミニウムのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.5mLとトルエン92mgの混合溶液を攪拌しながら加え、重合を開始した。さらに、同温度にて15分間攪拌後、アンモニア水を0.1wt%含むメタノール溶液を大過剰加えて重合を停止させた。重合反応停止後の反応溶液をヘキサンで希釈後、5wt%の希塩酸で3回、次いでイオン交換水、0.6N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、pHが中性になるまでイオン交換水で洗浄した。有機層を減圧留去した後、さらに、バキュームオーブンで60℃に加熱し、2時間以上減圧乾燥した。乾燥させると7.7gの固体(ポリビニルシクロヘキサン)が得られた。
得られた固体の分子量をGPCで測定すると、数平均分子量(Mn)は3100であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.21であった。また、13C−NMR測定により、上記ポリビニルシクロヘキサンには、上記式(6)で表される構造単位だけではなく、上記式(7)で表される構造単位が存在することが確認された。
【0070】
比較例1
シュレンク管に、ジクロロメタン70mL、n−ブチルクロリド30mL、ビニルシクロヘキサン8.09g、及びt−ブチルクロリドのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.0mLを加え、よく攪拌して均一にした後、−78℃に冷却した。ここに、同温度に冷却した塩化ガリウムのヘキサン溶液(200mM)2.5mLを攪拌しながら加え、重合を開始した。さらに、同温度にて3時間攪拌後、アンモニア水を0.1wt%含むメタノール溶液を大過剰加えて重合を停止させた。重合反応停止後の反応溶液をヘキサンで希釈後、5wt%の希塩酸で3回、次いでイオン交換水、0.6N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、pHが中性になるまでイオン交換水で洗浄した。有機層を減圧留去した後、さらに、バキュームオーブンで60℃に加熱し、2時間以上減圧乾燥した。乾燥させると4.1gの固体(ポリビニルシクロヘキサン)が得られた。
得られた固体の分子量をGPCで測定すると、数平均分子量(Mn)は4900であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.50であった。
【0071】
比較例2
シュレンク管に、ジクロロメタン70mL、n−ブチルクロリド30mL、ビニルシクロヘキサン8.09g、及びt−ブチルクロリドのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.0mLを加え、よく攪拌して均一にした後、−78℃に冷却した。ここに、同温度に冷却した塩化ガリウムのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.5mLとトルエン460mgの混合溶液を攪拌しながら加え、重合を開始した。さらに、同温度にて3時間攪拌後、アンモニア水を0.1wt%含むメタノール溶液を大過剰加えて重合を停止させた。重合反応停止後の反応溶液をヘキサンで希釈後、5wt%の希塩酸で3回、次いでイオン交換水、0.6N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、pHが中性になるまでイオン交換水で洗浄した。有機層を減圧留去した後、さらに、バキュームオーブンで60℃に加熱し、2時間以上減圧乾燥した。乾燥させると8.09gの固体(ポリビニルシクロヘキサン)が得られた。
得られた固体の分子量をGPCで測定すると、数平均分子量(Mn)は1800であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は1.18であった。
【0072】
比較例3
シュレンク管に、ジクロロメタン70mL、n−ブチルクロリド30mL、ビニルシクロヘキサン8.09g、及びt−ブチルクロリドのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.0mLを加え、よく攪拌して均一にした後、−78℃に冷却した。同温度に冷却したエチルジクロロアルミニウムのヘキサン溶液(濃度:200mM)2.5mLを攪拌しながら加え、重合を開始した。さらに、同温度にて24時間攪拌後、アンモニア水を0.1wt%含むメタノール溶液を大過剰加えて重合を停止させた。重合反応停止後の反応溶液をヘキサンで希釈後、5wt%の希塩酸で3回、次いでイオン交換水、0.6N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した後、pHが中性になるまでイオン交換水で洗浄した。有機層を減圧留去した後、さらに、バキュームオーブンで60℃に加熱し、2時間以上減圧乾燥した。乾燥させると2.8gの固体(ポリビニルシクロヘキサン)が得られた。
得られた固体の分子量をGPCで測定すると、数平均分子量(Mn)は3500であり、[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)](分子量分布)は2.31であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素をカチオン重合触媒の存在下で重合させてオレフィン系重合体を製造する方法であって、
前記カチオン重合触媒1モルに対し、0.01モル以上10モル未満の芳香族炭化水素を共存させることを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。
【化1】

(式(1)中、R1〜R3は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、R4は、水素原子又は炭化水素基を示す。)
【請求項2】
前記式(1)におけるR4が脂環式炭化水素基である請求項1に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記式(1)におけるR1〜R3がいずれも水素原子である請求項1又は2に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記カチオン重合触媒が、塩化ガリウム又はエチルジクロロアルミニウムである請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項5】
前記芳香族炭化水素が、下記式(2)で表される化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【化2】

(式(2)中、R5は直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、nは0〜6の整数である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のオレフィン系重合体の製造方法により得られる、数平均分子量が2000以上、分子量分布[重量平均分子量/数平均分子量]が1.18未満であることを特徴とするオレフィン系重合体。
【請求項7】
前記式(1)で表されるオレフィン系炭化水素を2種以上含むモノマー成分より構成された共重合体である請求項6に記載のオレフィン系重合体。
【請求項8】
下記式(3)で表されるオレフィン系脂環式炭化水素を必須成分として含むモノマー成分より構成され、数平均分子量が2000以上、分子量分布[重量平均分子量/数平均分子量]が1.18未満であることを特徴とするオレフィン系重合体。
【化3】

(式(3)中、R1〜R3は同一又は異なって水素原子又は炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を示し、Xは脂環式炭化水素基を示す。)

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−236865(P2012−236865A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104691(P2011−104691)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月14日に国立大学法人大阪大学により発行された、「大阪大学大学院理学研究科 博士前記課程 化学専攻 高分子科学専攻 第57回 業績発表会要旨集」のP71(MS−5)にて発表
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】