説明

オレフィン系重合体ペレットの製造方法

【課題】耐互着性が良好なペレットの製造方法であって、経済性に優れる製造方法を提供すること。
【解決手段】オレフィン系重合体を押出機によりダイスノズルより溶融状態で押出し、押出されたオレフィン系重合体をペレット状に切断および冷却水で固化するオレフィン系重合体ペレットの製造方法であって、冷却水に、JIS K2249に規定された25℃における比重が1以下であるシリコーンオイルを5〜2000wtppm含有する水を用いるオレフィン系重合体ペレットの製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体ペレットの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非晶性あるいは低結晶性であるオレフィン系重合体、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、エチレン−プロピレン−共役ジエン共重合体等は、ペレット状で用いた場合、ペレットの自重や外気温の影響によってペレットが互着し、保管中に袋内でペレットが固まりとなり、袋から出しにくくなること、成形加工の際に、押出機のホッパーに充填されたペレットが、シリンダーへ安定的に供給されないことなどがあった。
【0003】
互着防止されたペレットの製造方法としては、特許文献1には、ペレットを製造し、その後、ポリエチレン微粒子などの互着防止剤をペレットに付着させる方法が提案されている。また、特許文献2には、非晶性ゴムシートの両面に結晶性ポリプロピレンのフィルムを貼合した積層体を成形し、次に、該積層体をペレット状に切断する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−52335号公報
【特許文献2】特開2000−52336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のペレットの製造方法では、積層体を製造する工程やペレットを製造した後に互着防止剤をペレットに付着させる工程が必要であり、経済性に十分満足のいくものではなかった。
かかる状況のもの、本発明が解決しようとする課題は、耐互着性が良好なペレットの製造方法であって、経済性に優れる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、オレフィン系重合体を押出機によりダイスノズルより溶融状態で押出し、押出されたオレフィン系重合体をペレット状に切断および冷却水で固化するオレフィン系重合体ペレットの製造方法であって、冷却水に、JIS K2249に規定された25℃における比重が1以下であるシリコーンオイルを5〜2000wtppm含有する水を用いるオレフィン系重合体ペレットの製造方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、耐互着性が良好なペレットの製造方法であって、経済性に優れる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
オレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、エチレン−プロピレン−共役ジエン共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、プロピレン−1‐ブテン共重合体、エチレン−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などがあげられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0009】
オレフィン系重合体のJIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートは、好ましくは、30〜1000g/10分であり、より好ましくは50〜500g/10分である。
【0010】
オレフィン系重合体は、好ましくは、示差走査熱量計により融点が観測されないものであるか、または、好ましくは示差走査熱量計により測定される融点が80℃以下である。
【0011】
シリコーンオイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイルや変性シリコーンオイルなどがあげられる。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどがあげられる。また、変性シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイルなどがあげられる。
【0012】
シリコーンオイルの比重(25℃)は1以下である。該比重が高すぎると耐互着性が低下することがある。好ましくは0.98以下であり、より好ましくは0.97以下である。また該比重は、通常、0.75以上である。該比重は、温度25℃の条件で、JIS K2249に規定された方法で測定される。
【0013】
シリコーンオイルの25℃での動粘度は、作業性を高める観点から、好ましくは0.1〜10000000mm2/Sであり、より好ましくは0.2〜5000000mm2/Sである。該動粘度は、温度25℃の条件で、JIS K2283に規定された方法で測定される。
【0014】
シリコーンオイルの25℃での表面張力は、耐互着性を高める観点から、好ましくは10〜30mN/mであり、より好ましくは15〜25mN/mである。該表面張力は、温度25℃の条件で、JIS K2241に規定された方法で測定される。
【0015】
オレフィン系重合体を押出機によりダイスノズルより溶融状態で押出し、押出されたオレフィン系重合体をペレット状に切断および冷却水で固化する方法は、公知の方法が用いられる。例えば、押出された溶融オレフィン系重合体をカッター刃でペレット状に切断し、冷却水で固化するアンダーウォーターカット法、押出された溶融オレフィン系重合体を冷却水で固化してストランド状とし、該ストランドをカッター刃でペレット状に切断するコールドカット法をあげることができる。
【0016】
冷却水中のシリコーンオイルの含有量は、水に対して(水を1000000wtppmとする。)、5〜2000wtppmであり、より好ましくは10〜1000wtppmである。該含有量が少なすぎると耐互着性が低下することがある。また、該含有量が多すぎると経済性が低下することがあり、また、オレフィン系重合体の性能が低下することがある。
【0017】
ペレットの形状は、通常、球状、楕円球状あるいは円柱状であり、大きさは、通常、直径が1〜20mm、長さが1〜20mmである。
【0018】
本発明は、互着防止されたペレットの従来の製造方法に比べ、積層体を製造する工程を設ける必要がなく、また、ペレットを製造工程と互着防止剤をペレットに付着させる工程とを別ける必要がないので、経済性に優れる。
【0019】
本発明により得られたオレフィン系共重合体ペレットは、耐互着性に優れるので、本発明は、接着剤、塗料、プライマーなどの粘着材料用オレフィン系共重合体ペレットの製造に好適に用いられる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
重合体の性質は、下記の方法によって測定した。
【0021】
(1)示差操作熱量計による融点(Tm、単位:℃)、結晶化温度(Tc、単位:℃)
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製 SSC−5200)により、重合体約10mgを用いて、次の条件で示差走査熱量測定曲線を測定し、結晶化温度は降温時の示差走査熱量測定曲線から、融点は2回目の昇温時の示差走査熱量測定曲線から求めた。融点は−100℃から200℃の温度範囲に現れる吸熱ピークであってピーク高さが最大の吸熱ピークの温度とした。
<測定条件>
(1)昇温(1回目):室温から200℃まで10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持する。
(2)降温:(1)の操作後、直ちに200℃から−100℃まで10℃/分で降温し、−100℃で10分間保持する。
(3)昇温(2回目):(2)の操作後、直ちに−100℃から200℃まで10℃/分で昇温する。
【0022】
(2)メルトフローレート(MFR:単位g/10分)
温度190℃、荷重21.18Nの条件でJIS K7210に規定された方法で測定した。
【0023】
(3)極限粘度([η]:単位dl/g)
極限粘度[η]は、ウベローデ型粘度計を用い、テトラリンを溶媒として135℃で測定した。
【0024】
(4)重合体中のエチレン単位、ビニルシクロヘキサン単位含有量
カーボン核磁気共鳴法によって、次の測定条件により、重合体のカーボン核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定し、下記式より重合体中のエチレン単位およびビニルシクロヘキサン単位の含有量を算出した。
<測定条件>
装置:Bruker社製 ARX400
測定溶媒:オルトジクロロベンゼンとオルトジクロロベンゼン−d4の4:1
(容積比)混合液
測定温度:408K
測定方法:Powergate Decouping法
パルス角度:45度
測定基準:トリメチルシラン
<算出式>
エチレン単位含有量(mol%)=100×(B−3A)/(B−2A)
ビニルシクロヘキサン単位含有量(mol%)=100×A/(B−2A)
A:45ppm〜40ppmのシグナルの積分積算値
B:35ppm〜25ppmのシグナルの積分積算値
【0025】
(5)比重
シリコーンオイルの比重は、温度25℃の条件で、JIS K2249に規定された方法で測定した。
【0026】
(6)動粘度(単位:mm2/S)
シリコーンオイルの動粘度は、温度25℃の条件で、JIS K2283に規定された方法で測定した。
【0027】
(7)表面張力(単位:mN/m)
シリコーンオイルの表面張力は、温度25℃の条件で、JIS K2241に規定された方法で測定した。
【0028】
(8)耐互着性
図1に示すホッパー型の樹脂粒子流れ性評価装置(充填口の口径(a):100mm、抜出口の口径(b):18mm、全長(c):105mm、円筒部の長さ(d):33mm)を用い、抜出口を閉じて装置内にペレット50gを充填した。次に抜出口を開いて、ペレットの抜出速度を測定した。該速度が大きいほど耐互着性に優れる。
【0029】
参考例1
乾燥窒素で置換したSUS製リアクター中にビニルシクロへキサン38.6kgとトルエン364kgを投入し、密閉状態にて50℃に昇温した。次に、水素を0.015MPa導入した。水素の導入が終了した後、エチレンを0.6MPa導入した。次に、トリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液[東ソー・アクゾ(株)製、トリイソブチルアルミニウム濃度 20wt%]1.0kgを仕込み、つづいてジエチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド 0.1gを脱水トルエン 8.7kgに溶解したものと、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 3gを脱水トルエン 12.2kgに溶解したものを投入し、重合を開始した。重合中は、重合液を撹拌し、エチレンの圧力が0.6MPaに保持されるように、リアクター中にエチレンを供給した。重合開始してから2時間後に、重合液中にエタノールを0.9kg添加した。次に、重合液に重合液と等量の2wt%塩酸水溶液を添加し、水層と有機層の分離を行った。有機層を回収し、大量のアセトン中に投じ、白濁した白色固体をロ取した。該固体をアセトンで洗浄し、減圧乾燥して重合体を得た。該重合体のエチレン単位の含有量は88mol%、ビニルシクロヘキサン単位の含有量は12mol%であった。また、融点は62℃、メルトフローレートは140g/10分、極限粘度[η]は0.5dl/gであった。
【0030】
実施例1
参考例1で得られた重合体を、40mmφ単軸押出機(設定温度50℃、メッシュ#100、#120各1枚使用)を用い、吐出量が10kg/hrになるようにコールドカット法により造粒を行った。冷却水に対して100ppmになるように、シリコーンオイル(信越化学工業(株)製KF−96−10cs、比重0.935、動粘度10mm2/S、表面張力20.1mN/m)を冷却水に添加した。得られたペレットの表面水分を除去し、耐互着性の評価を行ったところ、抜出速度は4000mg/秒であった。
【0031】
実施例2
シリコーンオイルとして、東レ・ダウコーニング(株)製SRX310(比重0.965、動粘度100mm2/S)を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたペレットの耐互着性の評価を行ったところ、抜出速度は5000mg/秒であった。
【0032】
実施例3
シリコーンオイルとして、信越化学工業(株)製KF−96−1000000cs(比重0.978、動粘度1000000mm2/S、表面張力21.3mN/m)を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたペレットの耐互着性の評価を行ったところ、抜出速度は200mg/秒であった。
【0033】
実施例4
冷却水へのシリコーンオイルの添加量を50ppmとした以外は実施例1と同様に行った。得られたペレットの耐互着性の評価を行ったところ、抜出速度は2000mg/秒であった。
【0034】
比較例1
シリコーンオイルとして、信越化学工業(株)製HIVAC F−5(比重1.097、動粘度160mm2/S、表面張力34.3mN/m)を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたペレットの耐互着性の評価を行ったところ、抜出速度は20mg/秒であった。
【0035】
比較例2
冷却水にシリコーンオイルを添加しなかった以外は実施例1と同様に行った。得られたペレットの耐互着性の評価を行ったところ、抜出速度は5mg/秒であった。
【0036】
比較例3
冷却水へのシリコーンオイルの添加量を1ppmとした以外は実施例1と同様に行った。得られたペレットの耐互着性の評価を行ったところ、抜出速度は10mg/秒であった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ホッパー型の樹脂粒子流れ性評価装置の側面図である。
【図2】ホッパー型の樹脂粒子流れ性評価装置を上面図である。
【符号の説明】
【0038】
1:充填口
2:抜出口
a:充填口の口径
b:抜出口の口径
c:全長
d:円筒部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系重合体を押出機によりダイスノズルより溶融状態で押出し、押出されたオレフィン系重合体をペレット状に切断および冷却水で固化するオレフィン系重合体ペレットの製造方法であって、冷却水に、JIS K2249に規定された25℃における比重が1以下であるシリコーンオイルを5〜2000wtppm含有する水を用いることを特徴とするオレフィン系重合体ペレットの製造方法。
【請求項2】
オレフィン系重合体が下記要件(a)および(b)を充足することを特徴とする請求項1に記載のオレフィン系重合体ペレットの製造方法。
(a)JIS K7210に規定された温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)が、30〜1000g/10分であること。
(b)示差走査熱量計により融点が観測されないまたは示差走査熱量計により測定される融点が80℃以下であること。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−246854(P2008−246854A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91210(P2007−91210)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】