説明

オンボード診断装置

内燃機関用の、触媒で被覆されたモノリス基材(10)、該モノリス基材は、複数の実質的に平行な通路を備えてなり、各通路が、上流末端から下流末端に至る長さを有し、及び該モノリス基材の外壁により部分的に限定された孔(16)の中に配置された第一センサーを備えてなる排気システムであって、該モノリス基材が、該上流末端から伸びる通路の長さの少なくとも一部における触媒組成物が、該モノリス基材の残りの部分(14)における触媒組成物と比較して、該触媒組成物が意図する反応に対する活性が増加している部分(12)を備えてなり、該センサーが、活性を増加させた該触媒組成物と最初に接触した排ガスとのみ実質的に接触するように配置されている、排気システム。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用の、触媒で被覆されたモノリス基材、該モノリス基材は複数の実質的に平行な通路を備えてなり、各通路が、上流末端から下流末端に至る長さを有し、及び該モノリス基材の外壁により部分的に定められた(define:限定された;画定された)孔の中に配置された第一センサーを備えてなる排気システムに関する。
【0002】
自動車の分野における「オンボード診断」は、好適な電子管理機構に接続されたセンサーのネットワークにより与えられる、自己診断及び車両機構の報告能力を説明する一般的な用語である。OBD機構の初期の例は、問題が検出された時に機能不調を指示する照明を単に点灯するだけで、問題の性質に関する情報は与えなかった。より近代的なOBD機構は、標準化されたデジタル接続口を使用し、迅速に問題を識別し、車両機構を分析できるようにする標準化された診断故障コード及びリアルタイムデータの選択に関する情報を与えることができる。
【0003】
現在のOBD必要条件では、排気システムの、基準を超える放出物を引き起こす故障または劣化の場合に、運転者に知らせる必要がある。例えば、ディーゼル乗用車(70/156/EECにより規定されているカテゴリーM車両)に関するEuro 4: 98/69/ECのOBD限界は、一酸化炭素(CO)−3.2 g/km、炭化水素(HC)−0.4 g/km、窒素酸化物(NO)−1.2 g/km、及び粒子状物質(PM)0.18 g/kmである。ガソリン乗用車では、Euro 4限界は、CO−3.2 g/km、HC−0.4 g/km、NO−0.6 g/km、及びPM-限界無しである。
【0004】
将来の、特に米国及びヨーロッパにおける車両放出物規則は、排気システム後処理触媒の放出物規則に適合する能力を連続的に監視するための診断機能における、より高い感度を求めている。例えば、Euro 5: 715/2007/ECに関するOBD限界の現在の草稿は、圧縮点火(ディーゼル)乗用車では、CO−1.9 g/km、非メタン炭化水素(NMHC)−0.25 g/km、NO−0.54 g/km、PM−0.05 g/km、ポジティブイグニッション(ガソリン)乗用車では、CO−1.9 g/km、NMHC−0.25 g/km、NO−0.54 g/km、及びPM−限界無しである。
【0005】
米国では、ガソリン/火花点火エンジンの触媒監視に関するOBD II規則(Title 13, California Code Regulations, Section 1968.2、2004年及びその後に続くモデル年の乗用車、軽負荷トラック及び中負荷車両及びエンジンに対する機能不良及び診断機構条件)は、触媒機構の監視部分のNMHC転化効率が、平均Federal Test Procedure (FTP)試験で50%未満に低下した場合の機能不良信号を要求している。
【0006】
触媒排ガス後処理装置に対する現在のOBD機構は、排ガスセンサーによる信号の分解能が限られている。これには、排気システムが圧縮点火またはポジティブインジェクション車両用であるかに応じて、電子的ノイズ、センサーの感度が温度及び設定点を中心とする動揺により変化することを包含する多くの理由がある。この問題に対する重大な理由は、信号:ノイズ比が低すぎることである。しかし、新しい規則は、触媒活性における比較的小さな変化の検出を求めている。
【0007】
この分野で良く知られているように、ガソリン燃料が火花点火式内燃機関中で燃焼する時に排出される一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NO)の量は、燃焼シリンダーにおける空燃比により主として影響される。化学量論的にバランスがとれた組成を有する排ガスは、酸化性ガス(NO及びO)及び還元性ガス(HC及びCO)の濃度が実質的に適合しているガスである。化学量論的にバランスがとれた排ガスを形成する空燃比は、典型的には14.7:1である。
【0008】
理論的に、化学量論的にバランスがとれた排ガス組成物中でのO、NO、CO及びHCを、CO、HO及びNに完全燃焼させることは可能であり、これがいわゆる三元触媒の任務である。従って、理想的には、エンジンは、燃焼混合物の空燃比が化学量論的にバランスがとれた排ガス組成物を形成するように操作すべきである。
【0009】
酸化性ガスと還元性ガスとの間の組成バランスを決定するためのもう一つの方法は、等式(1)
実際のエンジン空燃比/化学量論的エンジン空燃比 (1)
により定義される排ガスのラムダ(λ)であり、ここで、ラムダ値1は、化学量論的にバランスがとれた(または化学量論的な)排ガス組成を表し、ラムダ値>1は、過剰のO及びNOを表し、この組成物は、「リーン」と呼ばれ、ラムダ値<1は、過剰HC及びCOを表し、この組成物は「リッチ」と呼ばれる。この分野では、空燃比が発生させる排ガス組成物に応じて、エンジンが作動する空燃比を、「化学量論的」、「リーン」または「リッチ」、従って、化学量論的に作動するエンジンまたはリーンバーンガソリンエンジンと呼ぶことも一般的である。
【0010】
無論、TWCを使用するNOのNへの還元は、排ガス組成が化学量論のリーンである場合には効果が低い。同様に、TWCは、排ガスがリッチ組成である場合には、COをHCに酸化する能力が低い。従って、TWC中に流れ込む排ガスの組成をできるだけ化学量論的組成に近く維持することが問題である。
【0011】
無論、エンジンが定常状態にある時は、化学量論的な空燃比を確保するのが比較的容易である。しかし、エンジンを使用して車両を推進する場合、運転者がエンジンに課する負荷要求に応じて、またはいわゆる「フュエルカット」作動(エンジン管理装置が、運転者がアクセルを引き上げたことを検出した時、エンジンへの燃料が遮断され、空気だけがエンジンシリンダー中に導入される)の際に、必要とされる燃料の量が過渡的に変化する。これによって、三元転化のために化学量論的排ガスが発生するように空燃比を制御することが、特に困難になる。実際には、空燃比は、排ガス酸素(EGO)(またはラムダ)センサーから排ガス組成に関する情報を受け取るエンジン制御装置、いわゆるクローズドループフィードバックシステム、により制御される。そのような装置の特徴は、空燃比の調節に関連する時間遅延があるために、空燃比が化学量論(または制御設定)点の僅かにリッチと僅かにリーンとの間で振動(または動揺)することである。この動揺は、空燃比及び応答周波数(Hz)の振幅によって特徴付けられる。
【0012】
典型的なTWCにおける活性成分は、高表面積酸化物上に担持された白金、パラジウム及びロジウムの組合せを含んでなる。
【0013】
排ガス組成物が設定点の僅かにリッチである場合、未反応CO及びHCを消費する、すなわち反応をより化学量論的にするための少量の酸素が必要である。反対に、排ガスが僅かにリーンになると、過剰の酸素を消費する必要がある。これは、動揺の際に酸素を放出または吸収する酸素貯蔵成分の開発により達成された。最新のTWCで最も一般的に使用される酸素貯蔵成分(OSC)は、酸化セリウム(CeO)またはセリウムを含む混合酸化物、例えばCe/Zr混合酸化物、である。
【0014】
最新のTWC用の典型的なセンサー配置は、第一ラムダセンサーをTWCの上流側で排ガスと接触させるために、第二ラムダセンサーをTWCの下流側で排ガスと接触させるために、すなわちTWCから離れる排ガスと接触させるために配置する。第一センサーは、クローズドループ制御により、センサーの読みをエンジン管理装置に入力することにより、エンジンの空燃比を制御するのに使用する。主として、第二センサーは2つの目的に、すなわち第一ラムダセンサーの主要目的であるエンジンの空燃比の制御を「整える(trim)」ために、及びオンボード診断に使用するために使用する。
【0015】
ラムダセンサーは高価であり、最近では、一方のラムダセンサーを除去し、TWC中に配置した単一センサーで装置を作動させることが提案されている(例えば、ここにその内容全体を参考として含める国際特許第WO 2005/064139号明細書参照)。これによって、装置全体が安価になるのみならず、単一ラムダプローブをTWCとより緊密に配置することにより、空燃比の調節に関連する時間遅延を少なくし、排ガスのラムダ値をより正確に制御し、それによって、転化効率を高めることができる、と考えられる。高価な貴金属活性成分の含有量を下げた、より小さなTWCを使用することさえ可能である。
【0016】
我々のPCT/GB2007/050087号明細書(ここにその内容全体を参考として含める)で、我々は、(a)複数の通路を備えてなり、各通路が入口末端から出口末端に伸びる長さを有するフロースルーモノリス基材上に塗布した、酸素貯蔵成分を包含する三元触媒組成物、及び(b)単一ラムダセンサーを備えてなる火花点火式内燃機関用の排気システムを開示しているが、該基材は、該複数の通路の、該入口末端から伸びる通路の長さの少なくとも一部で、TWC組成物が、基材の残りの部分におけるTWC組成物と比較して、酸素貯蔵活性が低いか、または酸素貯蔵活性が無く、該単一ラムダセンサーが、酸素貯蔵活性が低いか、または酸素貯蔵活性が無いTWCと最初に接触した排ガスとのみ実質的に接触するように配置されている。
【0017】
米国特許第2006/0165567号明細書(ここにその内容全体を参考として含める)は、PCT/GB2007/050087号明細書と異なった配置を開示しているが、そこでは、基材の前面から伸びる全ての通路及びそれらの壁−それらの単なる一部ではない−を含んでなる部分的体積が、より低い酸素吸収容量を有する。さらに、米国特許第2006/0165567号明細書では、部分的体積における酸素吸収容量が低い特徴は、PCT/GB2007/050087号明細書に開示されているようなウォッシュコートの異なった処方ではなく、ウォッシュコートを全く使用せずに与えることができる。
【0018】
リーン排ガスからNOを吸収し、貯蔵されたNOを、二窒素(N)に還元するための酸素が少ない雰囲気中に放出する装置を備えてなる車両用リーンバーン内燃機関(ディーゼルまたはガソリン)が、例えばヨーロッパ特許第0560991号明細書(ここにその内容全体を参考として含める)から公知である。そのようなNO吸収材は、典型的には一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化する触媒、例えば白金(Pt)、及び所望により、NOをNに還元する触媒、例えばロジウム、とも関連する。NO吸収材及びNO酸化触媒及び所望により使用するNO還元触媒を含んでなる触媒は、リーンNOトラップまたは単にNOトラップと呼ばれることが多い。
【0019】
典型的なNOトラップ処方におけるNO吸収材は、アルカリ金属、例えばカリウム及び/またはセシウム、の化合物、アルカリ土類金属、例えばバリウムまたはストロンチウム、の化合物、及び/または希土類金属、典型的にはランタン及び/またはイットリウム、の化合物を包含することができる。この処方のための、リーンエンジン作動の際のNO貯蔵に関して一般的に考えられる一つの機構は、第一段階で、NOが、Pt上の活性酸化箇所で酸素と反応し、NOを形成することである。第二段階では、貯蔵材料による、無機硝酸塩の形態におけるNOの吸着が関与する。
【0020】
濃縮された条件下で間欠的にエンジンが作動するか、または排ガスが高温にある場合、硝酸塩化学種は、熱力学的に不安定になり、分解し、NOまたはNOを形成する。濃縮された条件下では、これらのNOが、一酸化炭素、水素及び炭化水素により、Nに還元されるが、これは還元触媒上で起こる。
【0021】
無機NO貯蔵成分は、典型的には酸化物として存在するが、空気の、またはCO及びHOを含む排ガスの存在下では、炭酸塩または場合により水酸化物の形態にあってもよい。
【0022】
窒素系化合物、例えばアンモニアまたは尿素、によるNOの選択的接触還元(SCR)が、自動車排ガス処理における使用に提案されている。NHSCR装置では幾つかの化学反応が起こり、それらの全てが、NOを窒素に還元する望ましい反応を代表している。支配的な反応は、反応(2)により表される。
4NO+4NH+O → 4N+6HO (2)
【0023】
競合的な、酸素との非選択的反応は、二次的放出物を形成するか、またはアンモニアを非生産的に消費することがある。そのような非選択的反応の一つは、反応(3)に示すアンモニアの完全酸化である。
4NH+5O → 4NO+6HO (3)
【0024】
また、副反応により、好ましくない生成物、例えばNO、が、反応(4)により形成される場合がある。
4NH+5NO+3O → 4NO+6HO (4)
【0025】
典型的なSCR触媒は、遷移金属/ゼオライト、例えばCu/ZSM-5及びFe/ベータ、及び卑金属触媒、例えばバナジウム、例えばV/WO/TiO、を包含する(ここにその内容全体を参考として含めるヨーロッパ特許第1054722号明細書参照)。
【0026】
リーンNO触媒(LNC)は、文献中で、非選択的接触還元(NSCR)触媒、炭化水素選択的接触還元(HC-SCR)触媒、リーンNO還元触媒、「DeNOx触媒」及びNO吸蔵触媒と呼ばれることもある。
【0027】
リーンNO触媒では、炭化水素(HC)が、酸素(O)ではなく、NOと反応し、反応(5)により、窒素(N)、二酸化炭素(CO)及び水(HO)を形成する。
{HC}+NOx → N+CO+HO (5)
【0028】
酸素との競合的な非選択的反応は、反応(6)により表される。
{HC}+O → CO+HO (6)
【0029】
反応(5)を選択的に促進するための多くの触媒が公知であり、アルミナ(Al)上白金(Pt)、銅(Cu)置換されたゼオライト、例えばCu/ZSM-5及びAl上に担持された銀(Ag)(例えば、ここにその内容全体を参考として含めるヨーロッパ特許第0658368号明細書参照)を包含する。
【0030】
ディーゼル排ガスを処理するように設計された触媒系には、触媒作用を付与した煤フィルター(CFS)及びディーゼル酸化触媒(DOC)がある。
【0031】
CFS(例えば、ここにその内容全体を参考として含める米国特許第5,100,632号明細書参照)では、フィルター基材が、ディーゼル粒子状物質を燃焼させるための触媒材料で被覆されている。典型的なCFS触媒成分は、白金及びセシウムを包含する。
【0032】
DOC(例えば、ここにその内容全体を参考として含める米国特許第6,274,107号明細書参照)は、COをCOに、及びディーゼル粒子状物質の気相炭化水素(HC)及び有機画分(可溶性有機画分またはSOF)をCO及びHOに酸化するように設計されている。典型的なDOC成分は、アルミナ、シリカ-アルミナ及びゼオライトを包含する高表面積酸化物担体上の白金及び所望によりパラジウムも包含する。
【0033】
ここで我々は、センサーを触媒基材内に配置し、センサー周辺の触媒特性を最適化することにより、触媒OBD用途向けの信号:ノイズ比を増加する方法を開発した。本発明は、ディーゼルまたはガソリン排ガスの処理に使用する、あらゆる触媒系におけるOBDに使用することができる。
【0034】
一態様により、内燃機関用の、
(a)触媒で被覆されたモノリス基材、該モノリス基材は、複数の実質的に平行な通路を備えてなり、各通路が、上流末端から下流末端に至る長さを有し、及び
(b)該モノリス基材の外壁により部分的に限定された孔の中に配置された第一センサーを備えてなる排気システムであって、該モノリス基材が、該上流末端から伸びる通路の長さの少なくとも一部における触媒組成物が、該モノリス基材の残りの部分における触媒組成物と比較して、該触媒組成物が意図する反応に対する活性が増加している部分を備えてなり、該センサーが、活性を増加させた該触媒組成物と最初に接触した排ガスとのみ実質的に接触するように配置されている、排気システムを提供する。
【0035】
本発明の利点は、第一センサーが配置されている区域における触媒の活性を増加させることにより、センサーは、触媒活性をより良く分析(resolve)することができ、それによって、触媒の全体的な性能を損なうことなく、センサー:ノイズ比が増加することである。例えば、酸素貯蔵成分を含む三元触媒組成物に関して、モノリス基材中のOSC装填量を均質に増加することにより、燃費(fuel penalty)が増加することがあり、その場合、装置を最適作動に戻すために、フュエルカットに続いてOSC中に保持されている酸素の除去が必要になる。類似の理由から、過剰のOSC活性も、系がリーン走行条件に戻った後の酸素「突破」に対して検出された遅延時間と比較して、還元体「突破」を検出するためのリッチ除去の際の検出された遅延時間を使用するOBD系におけるNO吸収剤のOBDを損なうことがある。
【0036】
一実施態様では、モノリス基材の残りの部分の体積は、複数の通路の部分の体積に対して、過半数にある。
【0037】
モノリス基材は、典型的には、セラミック材料または金属製の、好適なセル密度、例えば1平方インチあたり200〜1200セル、を有するフロースルー基材である。そのような被覆の配置を得るための装置及び方法は、例えば我々の国際特許第WO 99/47260号明細書(ここにその内容全体を参考として含める)から公知である。しかし、特定の用途では、モノリス基材は、フィルター、例えばウォール-フローフィルターまたは焼結させた金属もしくは部分フィルター(例えば国際特許第WO 01/80978号明細書またはヨーロッパ特許第1057519号明細書(ここにその内容全体を参考として含める)に開示されており、後者は、煤の通過を少なくとも一部遅らせる輪状に巻いた流路を備えてなる基材を記載している)でよい。特別な用途では、モノリス基材は、押出型SCR触媒である。
【0038】
特別な実施態様では、モノリス担体の被覆方法は、(a)収容手段をモノリス基材の上に配置する工程、(b)予め決められた量の液体成分を該収容手段の中に供給する工程、(a)に次いで(b)、または(b)に次いで(a)の順で、及び(c)真空を作用させることにより、該量の液体成分を担体の少なくとも一部の中に吸引し、循環させずに、該量の実質的に全てを担体中に保持する工程を含んでなる。この手順を、基材モノリスの第一末端からの「第一通し」が完了した後に、基材モノリスの第二末端から繰り返すことができる。
【0039】
区別被覆(differential coating)は、多くの手段により達成することができる。担体のある区域が隠れるように収容手段を成形し、これらの区域で被覆が行われないようにする。さらに、収容手段を内側で分割し、異なった被覆用液体を分離するか、またはある部分を隠し、被覆を阻止することができる。収容手段の基底部を変形し、所望の被覆輪郭を達成するか、または所望の製品を得ることも、本発明の範囲内に入る。例えば、基底部が様々な透過性を有し、特定の区域で流れ易くする、従って、被覆の堆積量を多くするか、または特定区域が大量の液体成分を含み、これが、基底部の下に配置した担体の対応する部分に直接移動するように、モノリスを機械加工することにより、基底部自体が輪郭のある収容手段として作用することもできる。
【0040】
モノリス基材を被覆した後またはその前に、センサーを受け入れる孔を形成することができる。
【0041】
一実施態様では、触媒組成物が三元触媒(TWC)である。典型的には、TWCは、二種類以上の白金族金属(PGM)の組合せ、一般的にはPt/Rh、Pd/RhまたはPt/Pd/Rh、を含んでなる。PGM装填量は、約2 gft−3〜300 gft−3、でよいが、Pt/Rh組成物中の総PGMは、一般的に<100 gft−3である。Pt/Rh系中の総PGM装填量は、より高く、例えば<300 gft−3でよい。OSC成分は、フロースルーモノリスを被覆するためのTWC組成物を含んでなるウォッシュコートの1000 gft−3セリウムまでを含んでなることができる。PGM及び使用する助触媒、例えばバリウム系化合物、は、OSC、例えばCe/Zr混合または複合酸化物、及び高表面積酸化物、例えばアルミナ、の一方または両方により担持される。
【0042】
本発明のTWC実施態様では、複数の通路の一部分におけるTWC組成物の酸素貯蔵活性を、モノリス基材の残りの部分におけるTWC組成物に対して、増加させる。
【0043】
幾つかの実施態様では、酸素貯蔵活性を増加させたTWC組成物は、
(i)モノリス基材の残りの部分におけるTWC組成物より、高い酸素貯蔵成分装填量、及び
(ii)モノリス基材の残りの部分におけるTWC組成物より、高い総白金族金属装填量の一方または両方を有する。
【0044】
独国特許第102005020963A1号明細書は、ガスセンサー用の切り取りソケットを備えたハウジングを有する自動車用触媒転化装置を開示している。このハウジングは、酸素吸収容量が不均質な触媒被覆を有する基材を収容している。本発明と対照的に、センサーの近くでは、触媒転化装置の他の部分より低い酸素吸収容量を有する。
【0045】
触媒組成物がTWC組成物である場合、好ましくは、第一センサーはラムダセンサーである。この実施態様は、場合によりリーン走行も取り入れた、化学量論的に作動するガソリン(火花点火式)エンジンに特に使用される。
【0046】
あるいは、触媒組成物は、ディーゼル酸化触媒、リーンNO触媒、選択的接触還元触媒、粒子状物質燃焼触媒またはNO吸収剤触媒でよい。これらの触媒組成物は、リーンバーン内燃機関、例えばリーンバーンガソリンエンジン、例えばGDI(ガソリン直噴式)またはDISIエンジン、もしくはHCCI型エンジンを包含するディーゼルエンジンから出る排ガスの処理に特に有用である。
【0047】
本発明で使用するセンサーは、炭化水素センサー、酸素センサー、窒素酸化物(NO)センサー、一酸化炭素センサー、温度センサー(例えば熱電対)または粒子状物質センサーでよい。これらのセンサーは、リーンバーン用途に特に使用できる。
【0048】
使用する車両管理装置の構成及び戦略に応じて、この装置を、ただ1個のセンサー(第一センサー)と好適な予想されるエンジン放出物(モデル作成)手段の組合せで操作することは可能である。しかし、特別な実施態様では、本発明の排気システムは、第二の、基準センサーを備えてなる。この第二の、基準センサーは、モノリス基材の上流にある排ガスと接触するように配置する。しかし、好ましくは、このセンサーを、モノリス基材の外壁により部分的に限定される孔の中に配置し、この孔は、複数の通路の、第一センサーと類似の長さに配置し、基準センサーを、活性を高めてある触媒組成物と最初に接触していない排ガスとのみ実質的に接触するように配置する。
【0049】
この後者の発明の利点は、上流と下流のセンサー間の温度遅延が少なくなるか、または回避されることである、すなわち第一センサー及び第二の、基準センサーの両方を通路全長に沿って同等の長さに配置することにより、センサーの温度差によるノイズを少なくするか、または回避することができる。共軸配置も、排ガス組成変化による信号変化を軽減する。
【0050】
さらに、第一及び第二センサーの共軸配置は、2個のセンサーを縦方向で分離した装置で観察される温度、排ガス成分及び圧力パルスセンサー信号の変動が少なくなるか、または回避される点で、有利である。さらに、センサー中に触媒被覆を使用することにより、装置全体の熱応力及びエージングに関連する診断信号が得られ、従って、装置中の何処か他の所にある触媒成分、例えば触媒作用を付与した煤フィルター、ディーゼル酸化触媒、NOトラップ及び三元触媒、の特性をより効果的に反映することができる。
【0051】
第二の態様で、本発明は、内燃機関及び本発明の排気システムを備えてなる装置を提供する。
【0052】
第三の態様により、本発明は、本発明の第二態様による装置を備えてなる車両を提供する。
【0053】
第四の態様により、本発明は、触媒組成物で被覆された複数の通路を備えてなり、各通路が、第一末端から第二末端に伸びる長さを有するモノリス基材であって、該複数の通路の一部における該第一末端から伸びる通路の長さの一部が、該モノリス基材の残りの部分における触媒組成物と比較して、該触媒組成物が意図する反応に対してより高い活性を有する触媒組成物で被覆されており、該基材の、該部分に関連する外壁が、センサーを中に受け入れるための孔を部分的に限定する、モノリス基材を提供する。
【0054】
本発明をより深く理解できるようにするために、本発明の代表的な実施態様を、添付の図面を参照しながら説明する。
【0055】
図1は、複数の通路が輪状であるTWC基材の2つの実施態様を示す。
【0056】
図2は、複数の通路がセグメント(segmental:部分の;分節;区分)されている(または縞状になっている)TWC基材の2つの実施態様を示す。
【0057】
図3は、本発明で使用するための基材及び触媒缶の配置を示す。
【0058】
図4は、第一及び第二の、基準センサーの位置を示す、半区分実施態様を示す、一部を切り取った状態を図式的に示す図である。
【0059】
図1に関して、本発明のTWC組成物で被覆したフロースルーモノリス基材の2つの実施態様を示し、左側では、複数の通路の輪状部分がそれらの全長にわたって、すなわち第一入口末端から第二出口末端まで、合計1600 gft−3(セリウム元素質量として)のセリア/ジルコニア混合酸化物OSC成分及びPGMを有するTWC組成物で被覆されている実施態様を示す。基材の残りの部分(円筒形に成形されたコア)は、PGM及び総元素セリウム質量350 gft−3のOSC成分を含んでなるTWC組成物で被覆されている。図中の黒点は、複数の通路の、OSC装填量を高くした部分に関連する基材外壁により部分的に限定された孔を表す。この、ラムダセンサーを受け入れるための孔は、中央の図から分かるように、第一入口末端と第二出口末端との間の基材通路の長さのほぼ半分の所に配置されている。
【0060】
図1の右側に示す実施態様は、第一入口末端から伸びる長さの半分に、上記の実施態様と同様に被覆されている、すなわち輪状TWC組成物が、PGM及び1600 gft−3(セリウム元素質量として)のセリア/ジルコニア混合酸化物OSC成分装填量を含んでなり、中央の円筒形コアが、PGM及び350 gft−3(セリウム元素質量として)セリア/ジルコニア混合酸化物装填量のOSC成分を含んでなるTWC組成物を有する。他の (第二出口から伸びる) 半分は、PGM及び350 gft−3セリウム元素質量のOSC成分装填量を含んでなるTWC組成物で被覆されている。実際には、この基材の、セリウム元素質量OSC装填量がより高い輪状TWC組成物を含んでなる第一入口末端は、排気システム中の上流側を向いている。
【0061】
図2に関して、左側に示す実施態様は、基材の区分された部分が、通路の全長にわたって、1600 gft−3(セリウム元素質量として)のセリア/ジルコニア混合酸化物OSC成分の総装填量を含んでなるTWC組成物で被覆されている状態を示す。基材の残りの部分は、PGM及びOSCとして350 gft−3総元素状セリウム質量の混合セリア/ジルコニア混合酸化物装填量を含んでなるTWC組成物で被覆されている。上記のように、区分された部分に関連する黒点は、ラムダセンサーを受け入れる孔を表す。この実施態様は、「縞」実施態様と呼ばれる。
【0062】
右側に示す実施態様は、「半縞」実施態様であり、基材が、区分された部分における通路長さの約半分まで、PGM及び1600 gft−3元素質量のセリウムを含む混合セリア/ジルコニア混合酸化物OSC成分を含んでなるTWC組成物で被覆されており、基材の残りの部分が、PGM及び350 gft−3セリウム元素状質量の低い(セリア/ジルコニア混合酸化物として)装填量のOSCを含んでなるTWC組成物で被覆されている。使用の際、基材を、「半縞」末端が上流に面するように排気システム中に取り付ける。
【0063】
図3は、本発明のモノリス基材、及び基材の外壁でセンサー孔と整列させ、好適なラムダセンサーを受け入れるためのボスを包含する缶を示す。
【0064】
図4は、本発明のセラミックフロースルー基材モノリス10を示すが、モノリス基材の全長に沿って伸びる部分12が被覆されている。部分10は、基材モノリスの残りの部分14における触媒組成物と比較して、触媒組成物が意図する反応に対する活性を増加させてある触媒組成物被覆を含んでなる。この基材モノリスは、セラミック材料中にドリル加工した、好適なセンサーを受け入れるための孔16、18を包含する。センサー孔16は、部分12中に配置されており、センサーが、活性を増加させてある触媒組成物と最初に接触した排ガスとのみ実質的に接触するように配置されていることが分かる。センサー孔18は、活性を増加させてある触媒組成物と最初に接触していない触媒組成物、すなわち基材モノリスの残りの部分の触媒組成物、に対する第一センサーと同じ値、例えば酸素、炭化水素、を検出するための第二の、基準センサー用である。センサー16及び18は、モノリス基材の第一末端から測定して通路の類似の長さに配置され、信号ノイズに対する温度の影響を最小に抑えていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、複数の通路が輪状であるTWC基材の2つの実施態様を示す。
【図2】図2は、複数の通路がセグメントがあるTWC基材の2つの実施態様を示す。
【図3】図3は、本発明で使用するための基材及び触媒缶の配置を示す。
【図4】図4は、第一及び第二の基準センサーの位置、半区分実施態様を示す、一部を切り取った状態を図式的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用の排気システムであって、
(a)触媒で被覆されたモノリス基材(10)と、及び
(b)前記モノリス基材の外壁により部分的に限定された孔(16)の中に配置された第一センサーとを備えてなるものであり、
前記モノリス基材が、複数の実質的に平行な通路を備えてなり、各通路が、上流末端から下流末端に至る長さを有してなり、
前記モノリス基材が、複数の通路の部分(12)を備えてなり、
前記上流末端から伸びる通路の長さの少なくとも一部における触媒組成物が、前記モノリス基材の残りの部分(14)における触媒組成物と比較して、前記触媒組成物が意図した反応に対して高い活性を有してなり、
前記センサーが、活性が増加させた前記触媒組成物と最初に接触した排ガスとのみ実質的に接触するように、配置されてなる、排気システム。
【請求項2】
前記モノリス基材の残りの部分の体積が、前記複数の通路の部分の体積に対して過半数を有する、請求項1に記載の排気システム。
【請求項3】
前記複数の通路の部分の形状が輪状である、請求項1又は2に記載の排気システム。
【請求項4】
前記複数の通路の部分(12)の形状がセグメントである、請求項1又は2に記載の排気システム。
【請求項5】
前記触媒組成物が、酸素貯蔵成分を包含する三元触媒(TWC)であり、
前記複数の通路の部分における前記TWC組成物の酸素貯蔵活性が、前記モノリス基材の残りの部分における前記TWC組成物と比較して増加してなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項6】
前記酸素貯蔵活性を増加させたTWC組成物が、
(i)前記モノリス基材の残りの部分における前記TWC組成物より高い酸素貯蔵成分装填量、及び
(ii)前記モノリス基材の残りの部分における前記TWC組成物より、高い総白金族金属装填量の一方又は両方を有するものである、請求項5に記載の排気システム。
【請求項7】
前記センサーがラムダセンサーである、請求項5又は6に記載の排気システム。
【請求項8】
前記触媒組成物が、ディーゼル酸化触媒、リーンNO触媒、選択的接触還元触媒、粒子状物質燃焼触媒、温度センサー又はNO吸収剤触媒である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項9】
前記モノリス基材がフィルターである、請求項8に記載の排気システム。
【請求項10】
前記センサーが、炭化水素センサー、酸素センサー、窒素酸化物(NO)センサー、一酸化炭素センサー又は粒子状物質センサーである、請求項8又は9に記載の排気システム。
【請求項11】
第二の、基準センサーを備えてなる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の排気システム。
【請求項12】
前記基準センサーが、前記モノリス基材の外壁により部分的に定められた孔(18)の中に配置されてなり、
前記孔が、前記第一センサーと同様に、前記複数の通路と同一の長さに配置されてなり、
前記基準センサーが、活性が増加された前記触媒組成物と最初に接触していない排ガスとのみ実質的に接触するように、配置されてなる、請求項11に記載の排気システム。
【請求項13】
内燃機関及び請求項1〜12のいずれか一項に記載の排気システムを備えてなる、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置を備えてなる、車両。
【請求項15】
モノリス基材(10)であって、
触媒組成物で被覆された複数の通路を備えてなり、
各通路が、第一末端から第二末端に至るまでの長さを有してなり、
前記複数の通路の一部(12)における前記第一末端から伸びる通路の長さの一部が触媒組成物で被覆されてなり、前記触媒組成物が、前記モノリス基材の残りの部分(14)における触媒組成物と比較して、前記触媒組成物が意図した反応に対してより高い活性を有してなるものであり、及び
前記部分に関連する前記基材の外壁が、センサーを受容する為の孔(16)を部分的に定めてなるものである、モノリス基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−538196(P2010−538196A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522455(P2010−522455)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050740
【国際公開番号】WO2009/027737
【国際公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(590004718)ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー (152)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】