説明

オンライン不純物除去装置及び方法

【課題】移動相由来の有機不純物、装置、配管由来の有機不純物を長期間確実に安定して除去でき、グラジエント溶出法による分析において、システムを停止することなく、長期間運営でき、特に薬品の品質管理作業等において安定した状態を長期間キープできる不純物除去装置及び方法の提供。
【解決手段】移動相として極性溶媒を使用する液体クロマトグラフィーにおいて、ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、移動相貯槽とインジェクターの間の流路所望箇所に連結したことを特徴とするオンライン不純物除去装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィーにおけるオンライン不純物除去装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーは、充填剤を詰めたカラム(固定相)に水や有機溶媒などの液体溶離液(移動相)を流しながら、移動相にサンプルを導入し、固定相を通過させることで、サンプル中の成分分離を行い、各種検出器で分析する装置である。
【0003】
通常、移動相として使用する水は、イオン交換法や、蒸留法などにより不純物を取り除いて精製した水、いわゆる純水を用いる。不純物が存在すると、分析成分ピークと不純物由来のバックグランドピークが重なって正しい測定の妨げになったり、またその不純物そのものがカラム自体を汚染し、カラム寿命を短くしたりなどの弊害があるためである。また分析の必要度により、超純水という不純物を各種の方法を組み合わせることで限りなく除去した水も使用されている。
【0004】
出願人は、移動相純水中に含まれる不純物を除去するべく、液体クロマトグラフィーシステムのオンライン上で使用できる装置を提案している。該装置は、移動相である水系溶離液の他に洗浄液を用い、送液ポンプでそれらの液体を送液する先にミキサーを設けて接続し、そのさらに下流側に、不純物を吸着可能な除去カラム、その下流に切換バルブを接続する。
そして、除去カラムの吸着が限界に達した時点で、溶離液の送液を停止させ、切換バルブをドレイン側に切換える。洗浄液は、不純物が除去カラムから流れ出すために適当な性質を有しているため、不純物は除去カラムから、その洗浄液とともに、その下流に接続されている切換バルブを通って系外に流れ、カラムは清浄化されるものである(特許文献1参照。)。
【0005】
また、移動相由来不純物だけでなく、移動相の送液に不可欠な装置や配管などの接続に由来する不純物の混入を避ける装置も提案されている。たとえば、不純物は、送液ポンプのプランジャーシールの削りかすや、デガッサーのチューブ配管に使用されるテフロン(登録商標)の染み出しなどがその主な原因と考えられている。疎水性基充填剤が充填されたカラムをトラップカラムとして使用し、デガッサーと試料注入器の間に配置した不純物除去装置であり、デガッサーのチューブ自体にも前記充填剤を配置し、テフロン(登録商標)由来の不純物を効率よく除去する装置である(特許文献2参照。)。
【0006】
【特許文献1】特許第2739527号
【特許文献2】特許第3434916号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的な逆相液体クロマトグラフィーに用いられる疎水性充填剤を詰めて除去カラムとすると、有機物の保持力が弱く、グラジエント溶出法による分析において有機溶媒の濃度が高くなると不純物も一緒に溶出してしまう欠点があり、グラジエント条件に一定の制限があった。さらには、洗浄や自動再生が行えるとは言え、常に移動相中を流れている不純物を吸着しているため除去カラムが飽和状態に達するのが比較的早く、その都度にシステム全体を一旦停止し、清浄後、再開始するのは手間のかかる作業であった。特に、薬品の品質管理作業などにおいては、常に安定した状態を長期間キープできることが重要課題であった。
【0008】
一方、活性炭は、大部分の炭素の他、酸素、水素、カルシウムなどからなる多孔質の物質であり、その微細な穴に多くの物質を吸着させる性質があり、有機物を選択的に吸着しやすいことは、良く知られており、脱臭、水質浄化、毒物中毒における毒の吸着等に用いられている素材である。
しかし、活性炭は後述する理由による微粉の発生、耐圧の問題、デッドボリューム影響を受け易いなどの種々問題があり、これまで液体クロマトグラフィーの移動相の不純物除去に用いられていなかった。
【0009】
そこで、本発明は、簡易に、液体クロマトグラフィー装置にオンラインで組み込むことができ、しかも長期間確実に安定して移動相由来の有機不純物、さらには装置、配管由来の有機物不純物を除去できる装置及び方法を提供することを目的とする。
また、送液ポンプ後の高圧状態でも、そうでない低圧状態でもどちらの場合でも区別無く等しく使用することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために発明者らは、ビーズ状の活性炭を、乾式または湿式で充填した除去カラムを移動相貯槽とインジェクターの間の流路に連結してオンラインで使用することが非常に有効であることを見出し、発明を完成するに至った。
【0011】
上記課題を解決するための手段としての本発明は、移動相として極性溶媒を使用する液体クロマトグラフィーにおいて、ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、移動相貯槽とインジェクターの間の流路所望箇所に連結したことを特徴とするオンライン不純物除去装置である。
【0012】
又、ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、送液ポンプとインジェクターの間の流路に連結したことを特徴とするオンライン不純物除去装置である。
【0013】
又、ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、ミキサーとインジェクターの間の流路に連結したことを特徴とするオンライン不純物除去装置である。
【0014】
又、ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、移動相貯槽と送液ポンプの間の流路に連結したことを特徴とするオンライン不純物除去装置である。
【0015】
又、ビーズ状活性炭が充填されたカラムをカートリッジとしたことを特徴とするオンライン不純物除去装置である。
【0016】
又、ビーズ状活性炭が充填されたカラムを直列連結したことを特徴とするオンライン不純物除去装置である。
【0017】
又、ビーズ状活性炭の粒径が、20〜800μm、耐圧が2MPa以上であることを特徴とするオンライン不純物除去装置である。
【0018】
又、オンライン不純物除去装置を用いて、液体クロマトグラフィーにおけるバックグランドピークを除去する方法である。
【0019】
又、オンライン不純物除去装置を用いたことを特徴とする液体クロマトグラフィーである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の除去カラムは、ビーズ状活性炭を用いているために、従来から問題となっていた活性炭微粉の生成を防ぐことができた。さらに、そのビーズを種々サイズのカラムに充填することによって、目的成分分析に応じて、自由なサイズのカラムを選択したり、直列にカラム同士を連結したりするなどができるようになった。さらに、カラムをカートリッジ化することによって簡単に取り外しできるようになった。
【0021】
実施例に示したように、従来からある疎水性充填剤の充填された除去カラムと異なり、有機溶媒濃度の影響は受けず、さらにイオン性成分の除去もでき、より多くの不純物が長期に渡って安定に除去でき、且つバックグランドピークを排除できる。そのため、連結位置も自由に選定することができる。
【0022】
従って、液体クロマトグラフィーシステムに依存する各種の要素、移動相流速や有機溶媒濃度、分析カラムサイズ、検出器種類などの影響を受けない、安定した液体クロマトグラフィー用不純物除去装置及び方法である。
【0023】
その除去効果は、活性炭の微細な穴効果と思われるが、分析カラムの耐久回数1000回のグラジエント溶出でも低下が見られず、耐久性・実用性も十分な確認を行うことができた。HPLCは、カラム内径に応じた最適流量が決まっているものであるため、不純物除去のための装置を使用することは、カラムの大きさや流速に影響され、成分分析に不安定要素を加えるものであるが、本願発明において使用される装置においては、問題となる空間容量は算定でき、遅れ時間も想定内に押さえられ、極めて正確、最適なサイズのカラムにより安定した不純物除去、正確な分析が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を適用したオンライン不純物除去装置は、ビーズ状活性炭が充填されてなる不純物除去カラムを移動相貯槽とサンプル導入インジェクターの間の流路に連結したことを特徴とする。ビーズ状活性炭とは、樹脂や精製された石油ピッチを原料にするもので、粒径1mm以下の真球状で、高強度を持つものである。炭化の条件により、比表面積に影響を与える細孔のサイズをコントロールすることができるため、分子ふるい効果などが期待でき、通常、無機ガスのガスクロマトグラフィー分析の充填剤として使用されているものなどが好適である。
【0025】
ビーズ状活性炭については、粒径20〜800μmが好適で、強度は、通常の液体クロマトグラフィーの送液ポンプの下流側にかかる2MPa程度の圧力に耐えられる強度が必要である。具体的には、球状モレキュラーシービングカーボンGC用充填剤である、粒子径180〜250μmのUnibeads C(60/80メッシュ)や、粒子径150〜180μmのUnibeads C(80/100メッシュ)、粒子径125〜150μmのUnibeads C(100/120メッシュ)(ジーエルサイエンス社製)などが適している。
【0026】
液体クロマトグラフィーにおいては、2液以上の移動相を使用し、溶出力の強い方向へとその移動相の組成を変化させて分析するグラジエント溶出法が広く用いられている。その際に、インジェクターまでのデッドボリュームが大きいと、迅速な組成変化に追従できず混合に遅れ時間が生じてしまうため、的確な分析は達成されない。従って、インジェクターまでのデッドボリュームは少ない方が良いと言われている。不純物除去を目的としたカラムの場合にも同様に、同じ理由でより小さいデッドボリュームが望まれる。また、充填粒子間に液体が流れることになるため、液体がそのせまい隙間を流れることで、抵抗圧力が生じる。装置システム全体としては、圧力は低い方が好ましいため、高い圧力が生じる小さな隙間が少ない方が良い。
【0027】
ビーズ状に比べて、破砕状やペレット状や繊維状ゲルなど不定形の活性炭では、隙間が不均一になってしまい、抵抗が生じ易いので、液体クロマトグラフィーのシステム圧力を高めるので適していない。当然、ビーズ状に比べて、全空間容量も大きくなりデッドボリュームが大きくなる。
破砕状での充填密度は、0.2〜0.4g/mL程度で、ビーズ状では0.5〜0.8g/mL程度であることが知られている。当然、粒子径やその物性によっても異なるが、単純に同一物性の同一大きさの活性炭を同じサイズのカラムに充填した場合を比較すると、形が真球状で均一であるビーズ状の方が約1.3〜4倍多く充填されることになる。不純物の除去効果は、同じ吸着能力であれば、充填量に比例して大きくなる。
【0028】
例えば、充填密度が0.3g/mLの破砕状活性炭と充填密度0.6g/mLのビーズ状活性炭を比較すると、充填量に比例し、ビーズ状の方が約2倍、除去効果は高いことになる。
逆に、空間容量は、細孔容積などを考慮せず単純に比較すると、ビーズ状に比べて、破砕状1.75倍になってしまう。
そこで、破砕状でビーズ状と同じ性能を得ようとすると、カラム容量を2倍にする必要があるが、この場合、同一不純物除去性能を持つビーズ状に比べて、3.5倍の空間容量となってしまう。HPLC分析においては、この空間容量が、ピーク遅れ時間の要因となってしまう。
即ち、ビーズ状を詰めた除去カラムで、1mLの空間容量がある場合、破砕状を詰めた除去カラムで同一除去性能を得ようとすると、3.5mLの全空間容量ができてしまう。従って、流速1mL/minで流す汎用HPLC分析においては、ビーズ状では1分の遅れで済むが、破砕状では3.5分の遅れとなる。HPLC分析は、8分程度で分析する場合が多く、トータル時間は1.5倍以上になってしまい、実際のHPLC分析に、用いることは困難である。ビーズ状の活性炭を用いることで、初めてHPLC用不純物除去装置として使用可能である。
【0029】
さらに、不定形の活性炭では、形状に不均一部分が生じてしまい、圧力に対して弱くなり破損することによる微粉が生じ、それがフィルターを通り抜けてカラム外に出てしまう。また、不均一の隙間が生じると移動相の置換効率も悪くなる。
本発明の除去カラムを液体クロマトグラフィーで使用するにおいて、活性炭がビーズ状であることが重要である所以である。
実際には、ビーズ状活性炭であっても、除去効果や空間容積は、活性炭の吸着能力や細孔容積や比重によって異なる。用いる流速に合わせて最適化が必要となるので、カラムを連結するなどで、除去効果及び空間容積を調整できる方がより使い易くなる。
【0030】
ビーズ状であっても、粒度分布が悪いと圧力が高くなったり、微粒子がカラム外に出てしまったりすることもあるので、±20%以内の粒度分布であることが推奨される。
ビーズ径においては、小さいほど空間が減り、デッドボリュームは小さくなるが、圧力は粒子径に2乗に反比例して高くなるので、カラム径や流速によって、粒子径を選択する必要がある。最も一般的な液体クロマトグラフィー条件である、流速0.2mL/min〜2mL/min範囲で使う内径2mm〜6mmのカラムの場合では、100〜300μm粒子が適している。
【0031】
本発明の除去カラムには、ガラス、ピーク、チタン、ステンレスなどのパイプに、ビ−ズ状活性炭を充填して、ビーズが出ないように、両側をフィルターで止められる構造のカラムを使用することができる。
フィルターとしては、濾紙、焼結ガラス、テフロン(登録商標)、石英、焼結金属、メッシュフィルターなど粒子を止めることができれば適用できる。
ビーズの充填方法としては、乾式でも湿式充填でも適用できる。
【0032】
乾式充填としては、出口側にフィルターを設置し、振動を与えながらビーズを充填していき、フィルターで止める方法などが適用できる。湿式充填としては、ビーズをヘキシレングリコール含有イソプロピルアルコールなどのスラリーで分散させ、フィルターを設置したカラムに流し入れ、出口から減圧で引いて充填したり、メタノール加圧溶媒で、スラリーを10Mpa以上で高圧充填した後で、入口フィルターを設置したりすることでカラム化できる。
特に、充填方法は既定されないが、20〜100μm範囲のビーズでは、より最密充填ができる湿式充填が、100〜800μm範囲のビーズでは、簡単に充填できる乾式充填が適している。
液体クロマトグラフィーでは、一般的には、15MPa程度で使うことが多く、ステンレス材質に充填したカラムが本発明の除去カラムとしては最も適している。
【0033】
充填されるカラムは、着脱の簡便なカートリッジカラムを用いるのが好適である。ビーズ状の活性炭は吸着力が強いため溶媒などを流すことによる洗浄、再生が難しいため、ラインから簡単に抜き差しできる構造であることは重要である。
【0034】
カートリッジ方式カラムは、フィルターで止めた交換できるカートリッジカラム部分と何回も使用できるカラムジョイント部分に分かれて、カートリッジカラム部分だけを交換するのが一般的である。
カートリッジガードカラムEやGLカート(どちらもジーエルサイエンス社製)などの市販のカートリッジ方式のカラムならば、手締めで使えカートリッジカラム部分を簡単に交換でき、本発明カラムに適している。
【0035】
以下、本発明を適用したオンライン不純物除去装置及び方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、液体クロマトグラフィーにおいて高圧混合方式によりグラジエントを作製する分析を行う場合の、フロー図である。41,42は送液ポンプで、その上流側には吸入管21,22が、脱気装置3と連通した後、移動相貯槽11,12に連通してあり、送液ポンプ41,42は容器中の移動相組成を変化させつつ(いわゆるグラジエント溶出分析)送液する。送液ポンプは図では2台であるが、移動相の種類によって複数台設置可能である。
【0036】
また、送液ポンプの入り口側で混合した後にカラムへ送液する低圧混合方式の場合には、送液ポンプは1台の使用で可能となる。
高圧送液ポンプ41,42の下流側にはミキサー5が連通し、さらに試料導入用切換バルブインジェクター6、分析カラム7、検出器8が順に連通し、廃液管9よりシステム外に廃棄される。
【0037】
本発明の不純物除去カラムは、移動相貯槽とサンプル導入インジェクターの間の流路所望部分に連結されれば、場所は特に限定されない(図1の太線部分及び点線部分参照)。カラムはカートリッジ方式なので、どこでも簡単に設置が可能であり、耐圧性も備えているので、場所を選ばず設置することができる。
【0038】
移動相由来の不純物が問題となる場合は、図4の太線部分のように移動相貯槽と送液ポンプの間に連結することが推奨される。不純物は、何らかの方法で精製された純水に溶け込んでいたものが、グラジエント分析の結果濃度が上がる有機溶媒によって溶出されるものが主な原因とされているため、極性の強い移動相の送液ポンプの後に連結することが効率的である。また、脱気装置の内部の配管に連結することも可能である。
送液ポンプ由来の不純物、たとえばプランジャーの削りカスなども問題になってくる場合は、送液ポンプとミキサーの間に連結することが推奨される(図2の太線部分及び太い点線部分)。
【0039】
さらに、試料由来でないすべての要因による不純物を除去するためには、ミキサーとインジェクターの間の流路に除去カラムを連結することが推奨される(図3の太線部分)。
尚、不純物の量や必要度に応じて、複数の除去カラムを連結したり、また複数のカラムを複数箇所に連結したりすることは推奨される。カートリッジタイプのカラムであるのでシステムの組替えは非常に簡単である。
尚、送液ポンプの上流側で移動相を混合する低圧混合方式によりグラジエントを作成する分析を行う場合でも、場所を選ばずに設置できることは高圧方式の場合と同様である。
図5に2液の移動相を使用するシステムフロー図を示す。ポンプの上流側に、移動相のオンオフを制御する電磁弁10が設けられている他は、高圧方式と同様の構成である。
【0040】
以下に、本発明の効果を裏づける実施例について説明する。
【実施例1】
【0041】
本発明の除去カラムを連結した場合と、従来からの疎水性充填剤を充填した除去カラムを連結した場合と、除去カラムを使用しない場合で、液体クロマトグラフィーにおけるバックグランドピークを比較する実験を行った。
システムフロー図は図3に従った。
【0042】
液体クロマトグラフィーの実験条件は、以下に示すとおりである。
サンプル名:試料溶解液(アセトニトリル/25mmol/Lリン酸塩緩衝液)(75:25)
注入量 :20μL
検出器 :SPD-10AD_XR(210nm)
分析カラム:Phenomenex Synergi 4μ4.6mm I.D.×150mm
カラム温度:45℃
ホンプ :LC-ADvp
溶離液 :A:0.025mol/Lリン酸緩衝液(pH=4.0)/アセトニトリル(9:1)
B:アセトニトリル/水(9:1)
グラジエント条件:時間(min) 0.0 2.0 30.0 37.0 38.0 45.0 45.01
移動相B(%)0 0 100 100 0 0 終了
流量 :1.5mL/min
【0043】
図6は、除去カラムを使用しない場合のクロマトグラムである。210nmに吸収を示す成分は入っていないことから、検出されているピークは、何らかの移動相由来、またはシステム(装置または配管など)由来の不純物バックグランドピークと考えられる。これらのバックグランドピークは規則性があまり無く、溶出時間、ピーク強度ともに予想のつきにくいものであった(該実験における検出ピークを表示した表1参照。)。
【0044】
【表1】

【0045】
図7は、上記とまったく同じ実験条件で、水の多い移動相溶離液Aを送液するポンプの後に、従来から市販されている液体クロマトグラフィー除去カラムであるプレクリーンORG (ジーエルサイエンス社製)を連結した場合のクロマトグラムである。
従来の除去カラムでも、図6に比べて、バックグランドピークの数はかなり減り、ピーク強度も抑えられているものの、21.371、25.610、34.736に明らかなピークが見られてしまう。分析によっては、成分ピークがこれらのバックグランドピークと重なる場合も生じてくる。特に、最近は分析の高感度化要求が高まっており、その要求に答えるには従来の除去カラムでは除去が不十分である面があった(該実験における検出ピークを表示した表2参照。)。
【0046】
【表2】

【0047】
プレクリーンORGは、分析カラムより疎水性の高い充填剤を充填したカートリッジ式カラムである。すなわち、疎水性の高い成分の除去に適しているが、親水性の高い成分では保持されにくい。
今回の実施例においては、そのような親水性の高い成分が溶出していると考えられる。当然、分配原理での除去となるため、用いる移動相によってその除去効果は変化する。たとえば有機溶媒割合が高い移動相の場合では、その除去効果は下がってしまう。
今回の実施例の場合も、ミキサーの前、かつ有機溶媒の少ない側の送液ポンプの後に取り付ける必要がある。
ミキサーの後ろに取り付けると、グラジエント分析により有機溶媒割合が増えてきた際に、除去効果が低下することになる。従って、ポンプの入口側で混合する低圧グラジエント溶出法の場合には、取り付けられない。また、高圧グラジエント溶出法の場合でも、取り付けた除去カラム分のデッドボリュームが、ポンプからミキサー間の、取り付けた側だけに生じてしまい、移動相のグラジエント変化遅れをまねくなど好ましく無い。
【0048】
ビーズ状モレキュラーシービングカーボンであるUnibeads C(60/80メッシュ)を内径4.0mm×長さ20mmのカートリッジガードカラムEに、湿式充填した本発明の除去カラムを用意した。
図7とまったく同じ実験条件で、本発明の除去カラムをミキサーの後(下流側)に連結した場合のクロマトグラムが図8である。
ミキサーの後に設置したにも関わらず、図7に見られたバックグランドピークの発生が抑えられ、明らかに減っていることがわかる。従って、従来の疎水性充填剤を利用した場合より、本発明の除去カラムでは明らかに除去効果が高いことが確認された。
乾式で充填した本発明の除去カラムでも同じ結果が得られており、充填方法によらず除去効果があることが確認された。(該実験における検出ピークを表示した表3参照。)
【0049】
【表3】

【実施例2】
【0050】
本発明の除去カラムは、従来の除去カラムより不純物除去効率が非常に高いことが上記の実施例で確認された。一方、移動相から除去された不純物は、除去カラム中に時間を追ってトラップされていくことになり、その吸着能力が飽和に達すると除去効果が落ちる可能性が懸念された。そこで、そのシステム耐久性を検証する実験を行った。
【0051】
図9は、下記の実験条件で、繰り返しグラジエント溶出を行い、ビーズ状モレキュラーシービングカーボンであるUnibeads C(80/100メッシュ)を内径4.0mmx長さ20mmのカートリッジガードカラムEに、湿式充填した本発明の除去カラムのシステム安定性を確認したクロマトグラムである。
除去カラムをまったく使用しない場合は、前実施例1と同じで、不純物ピークが数多く検出されている。
【0052】
本発明の除去カラムを使用すると、一回目はもちろん1000回でも問題なくバックグランドピークの発生が抑えられ、除去されている様子が確認された。
実試料での分析カラムの耐久性は、一般的に1000検体と言われている。その回数の分析には耐久性よく十分使用できることが確認された。
本発明におけるカートリッジ方式カラムを用いれば、分析カラム交換時に合わせて、配管を取り外すことなく、手締めで簡単に除去カラムも交換することができる。
サンプル名:水(1μL)
ホンプ,検出器 :LC-20AD_XR(210nm)
分析カラム:Inertsil ODS-3 5μm 3.0mm I.D.×150mm
カラム温度:40℃
溶離液 :A:水/アセトニトリル(9:1)
B:アセトニトリル/水(9:1)
グラジエント条件:時間(min) 0.0 20.0 21.0
移動相B(%)0 100 0 終了
流量 :0.4mL/min
【実施例3】
【0053】
粒径の小さい充填剤は、流速を上げても理論段数の低下が少なく高速分析が可能なファーストLC用充填剤として知られている。
上記実施例1と同様の本発明の除去カラムを使用し、ファーストLC用カラムを用いて、実施例2の分析条件より有機溶媒割合を増加させるグラジエント溶出条件で除去効果を検証する実験を行った。そのクロマトグラムを図10に示す。
サンプル名:水(1μL)
ポンプ,検出器 :LC-20AD_XR(210nm)
分析カラム:Inertsil ODS-3 2μm 2.1mm I.D.×50mm
カラム温度:40℃
溶離液 :A:水
B:アセトニトリル
グラジエント条件:時間(min) 0.0 5.0 6.0
移動相B(%)0 100 0 終了
流量 :0.4mL/min
【0054】
本発明の除去カラムは、分析条件や分析カラムの種類に影響を受けずに、確実に不純物バックグランドピークを除去していることが、除去カラム無しの場合と比較して確認された。
【実施例4】
【0055】
次に、上記実施例と同条件で、液体クロマトグラフィーにおいて、最も感度が高い質量分析装置を検出部に用いた場合のトータルイオンマスクロマトグラムを図11に示す(検出器:API4000 QT RAP)。明らかに、本発明の除去カラムを連結した場合には、なしの場合に比べて、バックグラウンドピークが少なくなっている。
トータルイオンマスクロマトグラムは、一般分析でよく検出に用いられる紫外部吸収によるものではなく、イオン化する成分はすべて検出され表示されるクロマトグラムである。
従って、本発明の除去カラムを用いると、イオン性不純物も除去されていることが確認された。
【0056】
実施例1,2,3における210nmの紫外部吸収での検出結果と、実施例4のトータルイオンマスクロマトグラムでの検出結果、の2つの結果によって、適用性の広い除去効果が確認された。従って、分析上問題となるほとんどの有機化合物に対して、本発明の除去カラムを連結することは有効であると考えられる。
【実施例5】
【0057】
ビーズ状活性炭 Unibeads C(80/100メッシュ)を7.6mm I.D.×30mm、4.0mm I.D.×20mm、4.6mm I.D.×5mmの3種のカートリッジカラムに乾式充填し、本発明の除去カラムとして準備した。
以下のとおりの実験条件で、グラジエント溶出を行い、そのバックグランドピークを確認した(図12)。
本発明の除去カラムを連結しない場合には、多くの不純物バックグランドピークが検出されている。バックグランドピークは、7.6mm I.D.×30mmのカラムを使用した場合、および4.0mm I.D.×20mmのカラムを2本直列連結させた場合が非常に少なく、4.0mm I.D.×20mmのカラム及び4.6mm I.D.×5mmのカラムをそれぞれ1本使用した場合、若干増加する結果となった。
ピークが増加傾向にあっても、分析成分ピークの溶出時間と重なるなど、妨害の可能性がなければ、十分使用可能と考えられる。
【0058】
ビーズ状活性炭の容量変化により、不純物除去効果もそれに対応して変化しているため、ビーズ状活性炭によって明らかに不純物が除去されていることが改めて確認された。
【0059】
当然、活性炭容量が大きい方が除去効果も大きいが、液体クロマトグラフィーにおいては、グラジエント溶出における遅れ時間の問題があるため、大きければ良いとは単純に判断できない。分析目的成分の分離により、必要十分な除去カラムを選択する必要がある。
【0060】
本実施例では、除去カラムを連結しない場合、グラジエント溶出による移動相の組成変化により、バックグランドとなるベースラインが4分から上がり始めている。
4.0mm I.D.×20mmのカラム1本の場合、及び4.6mm I.D.×5mmのカラムの場合は、同じ時間からベースラインが上がり始めており、流速1mL/minの条件ではまったく遅れ影響が無いことが分かる。
4.0mm I.D.×20mmのカラム2本の直列連結の場合では、30秒程度遅れている。さらに、7.6mm I.D.×30mmでは、2分以上の遅れ時間となっている。
【0061】
本発明の除去カラムは、除去の程度を、カラムサイズと連結によって、変更することができるので、分析目的成分に応じて選択することで、最適な除去を行うことができる。
たとえば、本実施例の場合では、4.0mm I.D.×20mmカラムタイプをまず1本で使い、目的成分とピークが重なるようであれば、直列2本連結すれば回避できることになる。尚、直接直列でなく、必要により所望箇所に分けて、それぞれ連結させても効果は同様である。
サンプル:水(1μL)
ホンプ,検出器 :GL-7400(210nm)
分析カラム:Inertsil ODS-3 5μm 4.6mm I.D.×150mm
カラム温度:40℃
溶離液 :A;水
B:アセトニトリル
グラジエント条件:時間(min) 0.0 20.0 21.0
移動相B(%)10 90 10 終了
流量 :1.0mL/min
除去カラム:カートリッジガードカラムE
1、7.6mm I.D.×30mm
2、4.0mm I.D.×20mm 直列2本連結
3、4.0mm I.D.×20mm
4、4.6mm I.D.×5mm
【実施例6】
【0062】
分析カラムの内径をより小さい3.0mm I.D.に変更し、実施例5と同様の実験を行った結果を図13に示す。
最適流量は0.4mL/minとなり、上記実施例5の半分以下の流量となるが、バックグランドピークは良好に除去され、十分な効果が得られている。
この例の場合、流量は小さくなるが、4.0mm I.D.×20mmカラムを直列2本連結した場合でも、除去カラムを連結しない場合からわずか1分長の遅れ時間で完全に不純物が除去できることが確認された。
【0063】
本発明の除去カラムでは、用いる分析カラムの大きさや流量に影響されず、成分分析に最適なサイズのカラムを選ぶことで簡単に安定した不純物除去ができると考えられる。
HPLCはカラム内径に応じて、最適流量域が決まっている。内径10mmのセミ分取カラムでは5mL/min前後の流量で、内径4.6mmの汎用分析カラムでは1mL/min前後の流量で、内径2.1mmセミミクロカラムでは0.2mL/min前後である。
十分な除去効果を得るには、それぞれの流量に対応するビーズ容量が必要と考えられる。当然、ビーズ量が多い方が、その除去効果は高くなるが、空間容量も増えてしまう。そのため、なるべく少ない容量で高い除去効果を上げる除去カラムを選択する必要がある。
【0064】
十分な除去効果を得るためには、HPLCに用いる流量に比例して活性炭量を増やす必要がある。しかし、ビーズ状活性炭を用いる本発明では、実施検討の結果、HPLC分析の実用性ある遅れ時間が1分程度となるようなビーズ容量を用いると、十分な除去能力を持っていると考えられた。当然、成分によっては、より少ないビーズ容量でも効果が期待でき、高感度検出などでは、より多いビーズ容量を用いても良い。
【0065】
この実施例の内径4.6mm 長さ5mmの不純物除去カラムでは、ビーズ量0.05g程度でビーズ細孔内容積とビーズ間容積を合わせた実際の空間容積は0.1mL以下となり、内径4.0mm 長さ20mmの不純物除去カラムでは、ビーズ量0.2g程度で空間容積0.3mL以下となり、内径7.6mm 長さ30mmの不純物除去カラムでは、ビーズ量1g程度で空間容積2mL以下となる。
0.4mL/min程度が最適流量であるセミミクロカラムの場合では、内径4.0mm 長さ20mmの不純物除去カラムを1本または内径4.6mm 長さ5mmのカラムを3本連結すれば、十分な除去効果が得られて、遅れ時間も1分以内となる。
1mL/min程度が最適流量である汎用分析カラムでは、内径4.0mm 長さ20mmの不純物除去カラムを3本連結すれば、十分な除去効果が得られて、遅れ時間も1分以内となる。
5mL/min程度が最適流量であるセミ分取カラムの場合では、内径7.6mm 長さ30mmの不純物除去カラムを3本連結しても、遅れ時間は1分以内(空間容量4mL)に抑えることができ、且つビーズ量として3本総量3gとなり、1mL/min程度が最適流量である汎用分析カラムの場合の約5倍となり、用いる流量に比例しているので十分な除去効率が期待できる。
当然、カラムサイズを変えれば種々できるので、これらのサイズに限定はしないが、このように、分析・分取カラムに応じた最適な不純物除去カラムサイズを選択または連結するだけで、簡単に不純物除去が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明一実施例装置の概要を示すシステムフロー説明図
【図2】本発明他実施例装置の概要を示すシステムフロー説明図
【図3】本発明他実施例装置の概要を示すシステムフロー説明図
【図4】本発明他実施例装置の概要を示すシステムフロー説明図
【図5】本発明他実施例装置の概要を示すシステムフロー説明図
【図6】本発明装置を使用しない従来装置を使用した実施例によるクロマトグラム
【図7】本発明装置を使用しない他の従来装置を使用した実施例によるクロマトグラム
【図8】図6、図7と同条件による本発明一実施例を使用した実施例によるクロマトグラム
【図9】本発明一実施例による繰り返しグラジエント溶出のクロマトグラム
【図10】本発明他実施例によるグラジエント溶出のクロマトグラム
【図11】本発明他実施例のトータルイオンマスクロマトグラム
【図12】本発明他実施例によるグラジエントのクロマトグラム
【図13】本発明他実施例によるクロマトグラム
【符号の説明】
【0067】
11 移動相貯槽
12 移動相貯槽
21 吸入管
22 吸入管
3 脱気装置
41 送液ポンプ
42 送液ポンプ
5 ミキサー
6 インジェクター
7 分析カラム
8 検出器
9 廃液管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相として極性溶媒を使用する液体クロマトグラフィーにおいて、ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、移動相貯槽とインジェクターの間の流路所望箇所に連結したことを特徴とするオンライン不純物除去装置。
【請求項2】
ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、送液ポンプとインジェクターの間の流路に連結したことを特徴とする請求項1に記載のオンライン不純物除去装置。
【請求項3】
ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、ミキサーとインジェクターの間の流路に連結したことを特徴とする請求項1に記載のオンライン不純物除去装置。
【請求項4】
ビーズ状活性炭が充填されたカラムを、移動相貯槽と送液ポンプの間の流路に連結したことを特徴とする請求項1に記載のオンライン不純物除去装置。
【請求項5】
ビーズ状活性炭が充填されたカラムをカートリッジとしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のオンライン不純物除去装置。
【請求項6】
ビーズ状活性炭が充填されたカラムを直列連結したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のオンライン不純物除去装置。
【請求項7】
ビーズ状活性炭の粒径が、20〜800μm、耐圧が2MPa以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載のオンライン不純物除去装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載のオンライン不純物除去装置を用いて、液体クロマトグラフィーにおけるバックグランドピークを除去する方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載のオンライン不純物除去装置を用いたことを特徴とする液体クロマトグラフィー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−112938(P2010−112938A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288182(P2008−288182)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(390030188)ジーエルサイエンス株式会社 (37)