説明

オンラインIMRT検証の方法および装置

本発明は、標的への放射線治療のデリバリー中、放射線治療装置のエラーを監視および/またはシグナリングする方法に関し、前記放射線治療装置は、ビーム形成装置(MLC)を用いる所定の放射線治療に対して構成される。前記方法は、前記放射線治療の測定される検出器応答(70)を供給し、前記ビーム形成装置と前記標的との間に放射線透過アレイ検出器(T2D)を設けるステップと、前記放射線治療の連続回数に対して予測される検出器応答(60)を決定するステップと、前記放射線治療の対応する連続回数に対して放射線ビームによって生じる、前記測定される検出器応答(70)を測定するステップと、前記測定された検出器応答(70)と前記対応する予測された検出器応答(60)との間で比較を行うステップ(S300)と、前記比較で所定の閾値を越える差が得られた場合、短い応答時間でエラーをシグナリングするステップ(S400)とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線をデリバリーするために使用される強度変調放射線治療(IMRT)に関する。さらに詳細には、本発明は、IMRT検証の方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IMRTは、放射線量を腫瘍の形状に密接に近づけるように形成する原体照射の一種である。さらに詳細には、それは、悪性腫瘍または腫瘍内の特定領域に対して正確な放射線量をデリバリーするために、コンピュータ制御のX線または電子ビームを適用する、最先端の高精度放射線治療である。腫瘍に対してはできるだけ大きい放射線量を集中させるのと同時に、健康な周辺組織に対しては放射線暴露を最小化するというような方法で、放射線ビームの強度を変調または制御することによって、放射線量は、腫瘍の3次元(3D)形状に適合するように設定される。IMRTは、標的を横断する放射線ビーム強度を変化させることができるマルチリーフコリメータ(MLC)を通常使用する。したがって、健康な周辺組織は、腫瘍への放射線量よりも小さい放射線量を受ける。線量変調は、様々な腫瘍領域の放射線感受性を考慮するため、腫瘍に対してより高い放射線量を、標的体積内のより良好な均一性だけなく、所望の不均一性も実現するように使用することができる。治療は、腫瘍の形状に対して線量を最良に適合するビーム横断面強度パターンを見つけ出すように、コンピュータ化された線量計算と併せて、患者の3D計算トモグラフィー(CT)画像を用いて、慎重に計画される。典型的に、様々なビーム方向に由来する、いくつかの強度変調領域の組み合わせは、腫瘍への線量を最大化する一方で、さらに隣接する正常な組織を保護するように、特別に適合された放射線量を生成する。IMRT手法を用いて、より大きくかつ効果的な放射線量は、従来の放射線治療技術に比べてより小さい副作用で、腫瘍に対して安全にデリバリーされる。IMRTは、さらに、線量が増大されなかった場合でも、治療毒性を低減する可能性を有している。
【0003】
IMRTの治療計画は、従来の放射線治療よりも明らかに複雑であり、各患者に必要な治療計画時間が延びている。治療デリバリーの複雑性は、従来のデリバリーと異なり、デリバリー中、計画された照射の連続から起こる可能性のあるずれをオペレータが検出するのを困難にしている。
【0004】
治療の計画の前に、身体検査および病歴の確認が行われる。さらに、放射線腫瘍医がそこから腫瘍および正常組織の3次元形状を特定する、CTスキャンを含む、治療シミュレーションセッションが同様に行われる。線量測定士、および診療放射線技師は、この情報を使用して、治療計画を選択する。ポジトロン断層法(PET)および磁気共鳴画像法(MRI)を含む、いくつかの追加的なスキャン手続きが、さらに、IMRTの計画に必要になる場合もある。これらの診断画像は、放射線腫瘍医が腫瘍標的の正確な位置を決定するのを支援する。典型的に、IMRTセッションは、シミュレーションの約1週間後に開始する。典型的に、患者は、6〜10週間中、1週間に5日IMRTセッションが予定される。
【0005】
放射線治療の効果は、線量デリバリーの精度に依存し、その結果、線量測定エラーの検出に使用される品質保証手続きが、非常に重要である。そのような手続きの例は、治療計画システムによって計算され計画された線量のデリバリーの精度を検証するための測定と、治療マシンのアイソセンタに対して正確な患者の位置決めを保障する直交ポータル画像(orthogonal portal image)の取得である。
【0006】
IMRTは、これらの検証手続きに対する要求をさらになお強くするとともに、それらをさらになお重要にする。IMRTにおける高い線量勾配は、実質的に不均一な線量分布の検証に対して単一のポイント線量測定を不十分にする。治療計画システムによって計算された、個別のIMRTビーム線量分布においてエラーが生じる場合がある。たとえば、マルチリーフコリメータ(MLC)の内部漏洩は、これを考慮するには正確ではないからである。治療計画コンピュータから記録・検証システムへのMLCリーフ連続ファイルの転送と、ビームデリバリー中の、MLCリーフ移動の機械的精度とにおけるシステムエラーの可能性は、正確なIMRT検証ストラテジーの使用をさらに必要とする。
【0007】
IMRTは、患者に対してデリバリーされ測定された光子フルエンスの詳細なデータベースをさらに必要とする。そのような測定は、腫瘍制御確率(tumor control probability)と、正常組織障害確率(normal tissue complication probability)との生物学的予測に関して、すなわちプロトコルの効果に関して、解析を行うために、放射線腫瘍医にとって必要である。
【0008】
全ての専用測定は、患者治療の前に、行われなければならない。アイソセンタ、またはその付近に配置され、本出願人によって製作された装置“MatriXX”などの2次元線量測定装置を用いて各領域の線量を記録するのと同時に、これらの予備検査は、患者なしで実際の治療計画を実行することによって、行われる場合がある。しかし、これらの測定は、単一領域におけるデリバリーエラーのみを検出することが可能であり、患者へもたらされる3次元線量を計算するのに使用することができない。さらに、そのような測定値は、統計的デリバリーエラーを検出することができないとともに、連続する患者の治療中に生じる異常示さない。
【0009】
さらに、フィルムベースの先行技術の手続きは全て、毎日のルーチンが非常に面倒であり、通常、フルエンスベースの検証は、治療と同じ時間かかる。したがって、この検証は、画分(fraction)毎というよりは、計画毎に一度行われる。この方法では、画分から画分への変化を検出することができない。増強されたマシンQAだけでは、治療の完全な品質を保証するのに非常に弱いと考えられるとともに、計算手続きは、論理的リーフ連続値、またはチェックされるシステムによって決定されるリーフ位置の値のみに依存する。したがって、これは、(少なくとも部分的に)トートロジー的手法であると考えられる。MLCの異常は、多くの場合、系統的なエラーというよりは統計的な特徴のものである。
【0010】
特許文献1の記載より、放射線治療デリバリーのためのシステムおよび方法は、すでに知られている。このシステムは、加速器とビームシールド装置401との間に配置され、前記加速器を出る放射線ビームの積分出力(監視ユニット)測定する測定チャンバ60を具備する。この方法によれば、測定チャンバ60は、ビームをオンおよびオフするように、制御ユニットを指示することによって加速器を直接制御する(図5のステップ520,522,524)。可能性があるエラーをオペレータに示すことなく、デリバリーシステムを直接的および自動的に変更するため、このシステムが、デリバリーの監視を提供しないことは明らかである。さらに、前記測定チャンバ60は、加速器とビームシールド装置401との間に位置するため、このシステムは、ビームシールド装置401の異常を検出およびシグナリングすることができない。その結果、このシステムは、MLCの異常によるエラーを同様に考慮する、前記放射線ビームのデリバリーの独立しかつ完全な監視を提供することができない。
【0011】
したがって、デリバリーを妨げない放射線治療のデリバリーのエラーを監視および/またはシグナリングする方法および装置が必要である。さらに詳細には、全ての予想されるエラーを検出するとともに、オペレータに通信し、デリバリーについて関連する全ての決断をリアルタイムで自由にオペレータにさせる、デリバリーの監視を提供することができる装置および方法が必要である。
【0012】
IMRTの常設のインビボ(in vivo)検証に適したシステム(非特許文献1)は、B. Poppeらによってすでに提供され、すでに知られている。このシステムは、患者が治療されている間、品質保証測定を行うこのシステムでは、平らで半透明のマルチワイヤイオン化チャンバが、患者の放射線入射側で、加速器の第2付属ホルダに配置されている。各検出ワイヤは、MLCリーフペアの投射線内に正確に配置され、各ワイヤの信号は、このワイヤに沿ったイオン化密度の線積分に比例する。IMRT計画の線量測定の後、このシステムによって測定された値は、毎日の治療中に測定された信号と比較するため、基準値として、使用および保存される。その結果、基準値として保存される、この信号の測定中に異常が起きた場合、続く比較の全ては、正しい基準値を使用しない。しかしながら、そのようなシステムの強い制限は、線積分の測定のみを提供することであり、したがって、単一リーフの位置というよりもMLCリーフペアの開口の測定のみを提供することである。したがって、リーフペアの両方のリーフが、同じ変位に、および同じ方向で誤ってシフトする、予想されるリーフの移動を、検出することができない。このシステムの別の制限は、所定の計画の正確なデリバリーのみを検査し、治療計画システム内部の不十分なモデリング、または治療計画システム(TPS)への誤った入力パラメータによって生じると予想されるエラーは検出しない。この制限は、デリバリーされた線量分布と計算された線量分布との間に有意な不一致を与える場合がある。そのようなエラーの典型例は、多数の区分を有する領域内の漏洩放射線の高い寄与によって生じうる、コリメータインタリーフの漏洩放射線の不十分なモデリングである場合がある。計算された計画とデリバリーされた計画との間のそのような不一致は、「David」システムでは検出されない。それに加えて、全ての収集ワイヤに対して共通の、空気で満たされたアクティブ体積(active volume)を有する、この装置の設計は、側方に散乱した2次電子によって与えられる散乱信号によるリーフ位置エラーの検出能力において内在的な制限を与える。さらに、ダイナミックIMRTでは、リーフ速度は数cm/sであり、したがって、1秒の取得サイクルの間に、1cm以上の位置エラーが生じる可能性があるのにかかわらず、1秒の取得速度は、この装置をステップアンドシュート(step and shoots)IMRTデリバリー技術のみに適するものにする。最後に、この装置の別の制限は、空気密度の自動収集を提供しないことであり、したがって、40×40の領域を、毎朝測定する必要がある。
【0013】
現在のシステムは、この種類のデリバリーエラーを検出するように構成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6038284号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】“DAVID-a ;translucent multi-wire transmission ionization chamber for in vivo verification of IMRT and conformal irradiation techniquies”, Phys. Med. Biol. 51 (2006) 1237-1248.
【非特許文献2】“A Pixel chamber to monitor the beam performances in hadron therapy”, Nuclear Instruments and Methods in Physics research, A 519 (2004) - 674-686.
【非特許文献3】“Beam Modeling for a Convolution/Superposition-Based Treatment Planning System”, Medical Dosimetry, Vol. 27, No.1, pp. 11-19, 2002.
【非特許文献4】“Investigation of the convolution method for polyenergetic spectra”, Med. Phys. 20 (5), 1993.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、現時点の技術の制限および欠点を克服するIMRT検証装置を提供することを目的とする。
【0017】
さらに、本発明の別の目的は、マシンデリバリーのエラーをシグナリングする装置および方法、すなわち、放射線治療のデリバリーの監視を提供する装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1態様によると、標的に対する放射線治療のデリバリー中、放射線治療装置のエラーを監視および/またはシグナリングする方法であって、
前記放射線治療装置は、ビーム形成装置(MLC)を用いる所定の放射線治療に対して構成され、
前記方法は、
・前記放射線治療の測定される(2D)検出器応答を供給する放射線透過(2D)アレイ検出器を、前記ビーム形成装置と前記標的との間に設けるステップと、
・前記放射線治療の連続回数に対して予測される(2D)検出器応答を決定するステップと、
・前記放射線治療の対応する連続回数に対して放射線ビームによって生じた、前記(2D)検出器の測定応答を測定するステップと、
・前記測定された検出器応答と、対応する前記予測された検出器応答との間で比較を行うステップと、
・前記比較の結果、所定の閾値を越える差が得られた場合、短い応答時間でエラーをシグナリングするステップと
を具備することを特徴とする方法が提供される。
【0019】
好ましくは、本発明の第1態様によると、
前記放射線治療の予測される検出器応答を前記決定するステップは、
・前記放射線治療装置のビームモデルを使用するステップをさらに具備し、
前記ビームモデルは、マシンパラメータのセットとモデルパラメータのセットとに基づき、
前記決定するステップは、
・治療計画システムから治療計画を取り込むことによってマシンパラメータのセットを供給するステップと、
・前記放射線治療装置に対するビームモデルパラメータのセットを供給するステップと、
・フルエンスアルゴリズムと、前記ビームモデルパラメータのセットと、前記ビームモデルと、前記治療計画によって取り込まれた前記マシンパラメータのセットとによって、予想されるフルエンスを得るステップと、
前記フルエンス、検出器モデル、および応答計算アルゴリズムによって、予測される(2D)検出器応答を得るステップと
をさらに具備する。
【0020】
本発明の第1態様によると、前記方法の別の実施例は、前記放射線治療の予測される検出器応答(60)を前記決定するステップは、モンテカルロシミュレーション技術によって実行される。
【0021】
本発明の第1態様によると、前記方法の別の実施例は、前記放射線治療の予測される検出器応答を前記決定するステップは、前記放射線治療の実際のデリバリーの前に、前記治療計画の放射線ビームの測定によって実行される。
【0022】
さらに好ましくは、本発明の第1態様によると、前記治療計画に対する変更を提示するステップをさらに具備する。
【0023】
本発明の第2態様によると、標的に対する放射線治療のデリバリー中、放射線治療装置のエラーを監視および/またはシグナリングする装置であって、
前記放射線治療装置は、所定の放射線治療に対して構成され、放射線源およびビーム形成装置を具備し、
前記監視および/またはシグナリングする装置は、
・前記ビーム形成装置と前記標的との間に配置され、前記放射線治療の連続回数に対して前記放射線治療の測定される検出器応答を供給する検出手段と、
・処理手段とを具備し、
前記処理手段は、
・前記放射線治療デリバリーの連続回数に対して測定される検出器応答をリアルタイムで取得する手段と、
・前記放射線治療の対応する連続回数に対して予測された検出器応答を保存するメモリと、
・前記測定された検出器応答と、対応する予測された検出器応答とをリアルタイムで比較する計算手段と、
・前記比較の結果、所定の閾値を越えた差が得られた場合、エラーをリアルタイムでシグナリングする手段と
を具備する装置が提供される。
【0024】
好ましくは、本発明の第2態様によると、前記処理手段は、
・標的に対する前記放射線治療の実際のデリバリーの前に、前記放射線治療デリバリーの連続回数に対して測定される検出器応答をリアルタイムで取得する手段と、
・前記放射線治療の対応する連続回数に対して予測された(2D)検出器応答を保存する前記メモリに、前記測定された検出器応答を保存する手段と
を具備する。
【0025】
さらに好ましくは、本発明の第2態様によると、前記処理手段は、治療計画に対する変更を提示する手段をさらに具備する。
【0026】
さらに好ましくは、本発明の第2態様によると、前記検出器は、線量に対して線形応答、および時空間分解能力を有する電子透過検出システムである。
【0027】
さらに好ましくは、本発明の第2態様によると、前記装置は、既存の放射線治療装置と協働するように適応される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による装置を示す概略図である。
【図2】本発明による方法を表すデータフロー図である。
【図3】本発明で使用する2次元検出器応答を予測する方法を表すデータフロー図である。
【図4】本発明で使用するビームモデルパラメータセットを決定する方法を表すデータフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、アイソセントリック型ガントリー線形加速器からの高エネルギーX線ビームをデリバリーするIMRT装置とともに、特に、マルチリーフコリメータ(MLC)などのビーム形成装置、ジョー(jaw)、または特定の開口などによって、ビーム変調が実現されるIMRT装置ととともに、使用されることを意図している。
【0030】
好適な実施形態によると、本発明は、放射線治療装置による、患者への放射線治療のデリバリーの監視を提供する方法に関し、前記放射線装置は、放射線源(ACC,MLC)を具備し、
前記方法は、
・放射線ビームのデリバリーのための放射線治療装置を設けるステップを具備し、
前記放射線治療装置は、所定の放射線治療に対して構成され、
前記方法は、
・治療ビームに対して垂直な平面における、前記放射線ビームの測定される2−D検出器応答(70)を供給する放射線透過2−Dアレイ検出器(T2D)を、前記患者と前記放射線源(ACC,MLC)との間に設けるステップと、
・前記放射線治療の連続回数に対して予測される2−D検出器応答(60)を決定するステップと、
・前記放射線治療の連続回数に対して放射線ビームによって生じた、前記検出器の測定応答(70)を測定するステップと、
・前記測定された検出器応答(70)と、対応する前記予測された検出器応答(60)との間で比較を行うステップ(S300)と、
・前記比較の結果、所定の閾値を越える差が得られた場合、短い応答時間でエラーをシグナリングするステップ(S400)と
を具備する。
【0031】
好ましくは、前記放射線治療の予測される検出器応答(60)を前記決定するステップは、
・前記放射線治療装置のビームモデル(20)を使用するステップをさらに具備し、
前記ビームモデル(20)は、マシンパラメータのセット(10)とモデルパラメータのセット(30)とに基づき、
前記決定するステップは、
・前記放射線治療装置の治療計画システム(TPS)から治療計画を取り込むことによってマシンパラメータのセット(10)を供給するステップと、
・前記放射線治療装置に対するビームモデルパラメータのセット(30)を供給するステップと、
・実施された全ての放射線品質のフルエンスアルゴリズム(40)と、前記ビームモデルパラメータのセット(30)と、前記ビームモデル(20)と、前記治療計画によって取り込まれた前記マシンパラメータのセット(10)とによって、予想されるフルエンス(50)を得る(S100)ステップと、
前記フルエンス(50)、検出器モデル(400)、および応答計算アルゴリズム(410)によって、予測される2−D検出器応答(60)を得るステップ(S200)と
を具備する。
【0032】
好ましくは、前記放射線治療の予測される検出器応答を前記決定するステップは、モンテカルロシミュレーション技術によって実行される。
【0033】
好ましくは、前記放射線治療の予測される検出器応答を前記決定するステップは、前記放射線治療のデリバリーの前に、前記治療計画の放射線ビームの測定によって実行される。
【0034】
好ましくは、本発明の前記方法は、前記治療計画に対する変更を提示するステップをさらに具備する。
【0035】
別の好適な実施形態によれば、本発明は、放射線治療装置の検証装置に関し、
前記装置は、
・放射線透過2−Dアレイ検出器(T2D)と
・メインソフトウェア(MS)と
を具備し、
前記検出器(T2D)と前記メインソフトウェア(MS)とは、前記方法を実行するように構成されていることを特徴とする。
【0036】
好ましくは、前記検出器(T2D)は、線量に対して線形応答と、時空間分解能力(resolving in space and time)とを有する電子透過検出システムである。
【0037】
好ましくは、前記検出器(T2D)は、前記患者と前記放射線源(ACC,MLC)との間に配置される。
【0038】
図1に記載されている別の好適な実施形態によると、本発明は、線形加速器(ACC)、MLC、加速器制御システム、リーフシーケンサ(leaf sequencer)、および治療計画システム(TPS)などの一般的なIMRTコンポーネントとともに、追加的に使用されることを意図している。本発明による追加的な特徴を行うために、電子ポータルイメージング装置(EPID)、診断計算(diagnostic computed)トモグラフィー、リアルタイムイメージングシステムなどの他の従来コンポーネントが追加される。
本発明は、
・ビーム形成装置(MLC)と患者または標的との間に配置された2次元放射線透過検出器T2Dと、
・メインソフトウェアMSとを
具備し、
それらは、ドットパターンのブロックによって表されている。
【0039】
特に、本発明のこの好適な実施形態によれば、前記処理手段MSは、
・前記放射線治療デリバリーの連続回数に対して測定される検出器応答70をリアルタイムで取得する手段(そのような取得手段は、たとえば、INFEN(Istituto Nazionale di Fisica Nucleare, Torino)により、0.8μmCMOS技術チップ(TERA06)として開発されたリサイクリング積分器でもよい)と、
・前記放射線治療の対応する連続回数に対して予測された2−D検出器応答60を保存するメモリと、
・前記測定された検出器応答70と前記対応する予測された検出器応答60とをリアルタイムで比較する(S300)計算手段と、
・前記比較の結果、所定の閾値を越えた差が得られた場合、エラー(S400)をリアルタイムでシグナリングする手段と
を具備している。
【0040】
本発明の前記装置は、放射線治療装置の動作モードとインターフェースすることなく、アドオンとして既存の放射線治療装置に追加してもよい。2D透過検出器T2Dは、特有のアダプタによって既存の放射線装置へ容易に挿入することができる。このアダプタは、放射線装置に特有の装置を設置するために典型的に設けられるレールに配置される。メインソフトウェアMSは、オペレータによって監視することができるとともに、デリバリーに関する情報を(DICOMフォーマットなどの有用なフォーマットで)取得するために加速器に接続された、スタンドアローンコンピュータ上で実行する。
【0041】
2次元放射線透過検出器T2Dは、そのような検出器を横断した後、患者に与える治療ビームの有意な摂動を生じることなく、ビーム方向に対して直交する平面上の測定の2次元マップを供給するために使用される。したがって、本発明に適した、放射線透過2−Dアレイ検出器T2Dは、95%以上のビーム透過を可能にするとともに、2%以上のビーム変調を含まない。ハドロンビームに対してそのようなT2Dを実現するために使用される技術は、Boninらによる非特許文献2に記載されている。本明細書は、32×32ピクセルの正則行列で配置された1024個のイオン化チャンバの2−Dアレイによって作られた装置を記載している。この技術は、同様に、検出器の各チャンバに対して側方電子平衡を与えるように空気体積内に追加材料を供給することによって、光子ビームを用いて使用するように変更された、本出願人による製作の市販製品MatriXXで使用される。この技術を使用することによって、全チャンバの高速同時読み出しが可能である。1チャネル当たりの読み出し速度は、200nsである。全読み出しサイクル(1024ピクセル)は、500μsを要し、そのうち約300μsは、開始フェーズのオーバーヘッドによるものである。しかし、この検出器は、後方散乱およびビルドアップ材料を有するサンドイッチ構造の部分であるとともに、アイソセンタにおける線量測定に使用されるように意図されているため、最大透過を与えるように最適化されていない。したがって、この種類の装置の全体の厚さは、できるだけ小さく保たれているわけではなかった。本発明に適した放射線透過2−Dアレイ検出器T2Dを得るため、全体の厚さはさらに減少された。本発明によれば、透過検出器T2Dは、ピクセルイオンチャンバのアレイまたは行列によって作られている。各ピクセルイオンチャンバは、上電極、中間電極、および分割電極を有している。上電極は、2つのカーボン層によって両側を挟まれたポリイミド層を有している。上電極は、たとえば、別のプラスチック材料、グラファイト、または金属などの適用に応じて、任意の材料で作ることができる。好ましくは、ポリイミドは、約50μmの厚さである。好ましくは、カーボン層は、約25μmの厚さのカーボンがプリントされている。内側カーボン層は、中間層の穴に応じた構造であり、内側カーボン層の円周が、穴の円周よりも小さく、かつ適合するような大きさである。内側カーボン層の直径は、約4.4mmであるとともに、対応する中間層の穴の直径は、約4.5mmである。さらに、中間層は、純粋なポリカーボネートの平面で構成され、かつ約5mmの厚さであるが、チャンバの直径に応じてそれより大きいまたは小さいことが可能である。前記中間層の中心付近において、穴は中間層の全体の厚さを通して拡大する。穴は、好ましくは、直径が約4.5mmであるとともに、円筒を形成するように、中間層の水平面に対してほぼ垂直に拡大する。中間層の上端は、上電極のポリイミド層に対して接着剤で覆われている。好ましくは、接着剤は、厚さが約100μmの接着ドット形状である。接着材料は、好ましくは、約1〜2mmの直径を有するエポキシ樹脂である。中間層の下端は、同様に、分割電極の上層に対して、好ましくは接着ドット形状の接着剤によって覆われている。中間層が、上電極および分割電極に接着されると、チャンバは、中間層の穴に形成される。透過検出器T2Dの別の重要な特徴は、マルチリーフコリメータの移動によって変調された光子フルエンスを持続的に監視することが可能であることである。したがって、検出器ピクセルの2DアレイのピッチとMLCのリーフ幅との間の幾何学的対応は、実現される。このことは、たとえば、アイソセンタにおけるピクセルピッチの投射が、投射されるリーフ幅と同一である場合、またはその整数画分(integer fraction)である場合に、実現される。
【0042】
次に、図2を参照する。本発明によれば、第1に、遂次予想される検出器応答60の連続が計算される。次に、ビーム測定が、測定モードへの適用を設定することによって行われる。本発明では、2次元透過検出器T2Dは、患者の上流(前記患者と加速器の先端との間)に設けられる。放射線治療デリバリー中、連続した2−D検出器応答70は、10msの間隔で取得される。各測定は、保存されるとともに、オンラインで処理される。次の測定が保存される前に、S300に示されているように、測定された検出器応答70と、対応する予測された検出器応答60との比較が、行われるとともに、そのような比較は、全ての検出器ピクセルの測定応答の積分と予想応答の積分との比較から導かれた数列(sequence)に基づく。ステップアンドシュートデリバリー法を使用する場合、この比較は、連続したシュート間で行うことができる。対照的に、ダイナミックIMRTデリバリー法を使用する場合、この比較は、周期的にまたは制御点で行うことができるため、S400に示されているように、短い応答時間でエラーをシグナリングすることができる。
【0043】
ビームモデルは、一般に放射線治療装置の数学的記述であり、多数のパラメータを有している。これらのパラメータは、たとえば、加速器の特性(エネルギースペクトル、側方ビーム品質変動)、効果的な放射線源の形状および位置、ならびにビーム形成装置の形状および材料を考慮している。フルエンス計算アルゴリズムは、ビームモデルおよび所定のパラメターセットに応じてフルエンスの計算を可能にする数学的法則の集合である。計算されたフルエンス(単位、座標系)の表現は、検出器応答および/または与えられた線量を計算するための追加的な計算手続きに対して、互換性があるようなものである。基本的なビームモデリング技術の有用な記載は、たとえば、Wolfgang A. Tomeによる非特許文献3、または、Nikos Papanikolaouによる非特許文献4が、提供されている。
【0044】
所定の適用に対して、治療マシンのビームモデルは、選択される。さらに、初期のマシンパラメータセットの連続は、治療マシン(ビーム品質および線量、線量速度、MLCの位置)と、2D検出器透過システムとの設定に応じて選択され、後者は、適用される領域の2−D応答の測定を可能にする。
【0045】
本発明の好ましい実施形態による、予測される2D検出器応答60を決定する方法を、次に記載する。図3を参照すると、マシンパラメータのセット10は、治療計画システムから治療計画を取り込むことによって与えられ、その結果、線量/フルエンスエンジンを指向する。ステップS100に示されているように、1つは、ビームモデル20、前記放射線装置に対応するビームモデルパラメータのセット30によって、およびフルエンスアルゴリズム40によって、予想されるフルエンス50を計算する。ステップS200に示されているように、前記予想されたフルエンス50は、装置の形状を記述する検出器モデル400と、MU(監視ユニット)の所定数(たとえば1つのMU)によって決定された分解能で、照射に対する装置応答を記述する応答計算アルゴリズム410とを使用して、予測される検出器応答60を計算するために、使用される。分割されたデリバリーに対して、これは、この区分に対する監視ユニット数によって分割された区分の応答である。動的なデリバリーに対して、制御点Pにおけるリーフ位置と、制御点Pとにおけるリーフ位置との間のリーフ位置P(φ)は、次の式で与えられる。
【数1】

ただし、φは検出器応答である。
【0046】
測定された各フレームに対して、全ピクセル応答の積分は、予測された積分と比較される。測定された積分が、予測された積分と等しいまたはそれより大きい場合、測定応答と予測応答との形状の正確な比較を行うことができる。事実、測定が、予測と同期していない場合、所定の測定に対して、1つは、測定の前後のみで対応する予測を得ることができる。したがって、前記予測を得るために、1つは、同数の経過したMUを有する、2つの制御点に対応する2つの予測と予測との間を補間する必要がある。
【0047】
予測される2−D検出器応答が得られると、測定された応答と予測された応答との形状の正確な比較を行うことができるとともに、不可/許可基準が適用される。不可/許可基準の許容範囲は、定義可能なピクセル数を超えた平均に対する考慮を有するユーザ定義可能な割合の関数である。少なくともランダムピクセルの選択数に関する、予測された応答の積分と測定された応答の成分との差が、経過したMUの現在の数における許容範囲よりも上の場合、図2のS400に示されているように、エラーをシグナリングするように警告が発せられ、必要があれば、変調が行われる。
【0048】
前記検出器応答は、同様に、本発明の他の実施形態によって、たとえば、モンテカルロシミュレーション技術を使用することによって、または放射線治療のオフラインで測定を行うことによって、決定することができる。
【0049】
図4は、所定のデリバリーマシンおよびT2D検出器に最も良く適合するビームモデルパラメータセットを探索することによって、所定のデリバリーマシンにビームモデルを適応させるように、本発明の変形において実行される動作を表すデータフロー図である。ステップS1に示されているように、オペレータは、所定マシンの設定をいくつか選択する。次に、ステップS2およびS3に示されているように、モデリングされるデリバリーマシンは、前記マシン設定を使用してファントムを照射するために使用されるとともに、検出器手段を使用することによって、線量が測定される。ステップS4において、同様のデリバリーマシンに対するビームモデルパラメータセットが、選択されるとともに、使用され、線量は、測定時と同じ点で計算される。計算された線量および測定された線量は、ステップS5で比較される。テストS7で、ユーザが十分な一致を得た場合、現在のビームモデルパラメータセットは、デリバリーマシンを表していることが示される。そうでない場合、ステップS8に示されているように、ビームモデルパラメータセットは、手動または自動で変更されるともに、ステップS5に戻って、線量計算が実行される。
【0050】
本発明を用いることによって、1つは、TPSから予想された光子フルエンスにアクセスするとともに、予想された検出器応答と、測定された検出応答とを通して、それらをデリバリーされた光子フルエンスと比較することによって、患者領域のデリバリーのオンライン監視および検証を行うことができる。本発明によって提供される監視およびエラーシグナリングは、放射線治療装置の不測の異常をオペレータが検出するのを可能にする。エラーの場合、オペレータは、治療を一時中断することによって、療法士は、取得されたデータから、連続する画分に対して治療を適応させることができる。したがって、本発明の装置は、適用される治療を妨げることなく、治療のデリバリーの安全性を向上することができる。
【0051】
最後に、本発明を使用することによって実現される別の利点は、面倒でかつ長くかかる、現時点のIMRT検証・QA手続きを妨げることにより、要求される全体コストおよび時間を削減するIMRT検証システムを提供することである。
【符号の説明】
【0052】
10 マシンパラメータのセット
20 ビームモデル
30 ビームモデルパラメータのセット
40 フルエンスアルゴリズム
50 フルエンス
60 予測された2D検出器応答
400 検出器モデル
410 応答計算アルゴリズム
S100 予想されるフルエンスを計算するステップ
S200 予測される検出器応答を計算するステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的に対する放射線治療のデリバリー中、放射線治療装置のエラーを監視および/またはシグナリングする方法であって、
前記放射線治療装置は、ビーム形成装置(MLC)を用いる所定の放射線治療に対して構成され、
前記方法は、
・前記放射線治療の測定される検出器応答(70)を供給する放射線透過アレイ検出器(T2D)を、前記ビーム形成装置(MLC)と前記標的との間に設けるステップと、
・前記放射線治療の連続回数に対して予測される検出器応答(60)を決定するステップと、
・前記放射線治療の対応する連続回数に対して放射線ビームによって生じた、前記検出器の測定応答(70)を測定するステップと、
・前記測定された検出器応答(70)と、対応する前記予測された検出器応答(60)との間で比較を行うステップ(S300)と、
・前記比較の結果、所定の閾値を越える差が得られた場合、短い応答時間でエラーをシグナリングするステップ(S400)と
を具備することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記放射線治療の予測される検出器応答(60)を前記決定するステップは、
・前記放射線治療装置のビームモデル(20)を使用するステップをさらに具備し、
前記ビームモデル(20)は、マシンパラメータのセット(10)とモデルパラメータのセット(30)とに基づき、
前記決定するステップは、
・治療計画システム(TPS)から治療計画を取り込むことによって前記マシンパラメータのセット(10)を供給するステップと、
・前記放射線治療装置に対するビームモデルパラメータのセット(30)を供給するステップと、
・フルエンスアルゴリズム(40)と、前記ビームモデルパラメータのセット(30)と、前記ビームモデル(20)と、前記治療計画によって取り込まれた前記マシンパラメータのセット(10)とによって、予想されるフルエンス(50)を得る(S100)ステップと、
前記フルエンス(50)、検出器モデル(400)、および応答計算アルゴリズム(410)によって、予測される検出器応答(60)を得るステップ(S200)と
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射線治療の予測される検出器応答(60)を前記決定するステップは、モンテカルロシミュレーション技術によって実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射線治療の予測される検出器応答(60)を前記決定するステップは、前記放射線治療のデリバリーの前に、前記治療計画の放射線ビームの測定によって実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記治療計画に対する変更を提示するステップをさらに具備することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
標的に対する放射線治療のデリバリー中、放射線治療装置のエラーを監視および/またはシグナリングする装置であって、
前記放射線治療装置は、所定の放射線治療に対して構成され、放射線源(ACC)およびビーム形成装置(MLC)を具備し、
前記監視および/またはシグナリングする装置は、
・前記ビーム形成装置(MLC)と前記標的との間に配置され、前記放射線治療の連続回数に対して前記放射線治療の測定される検出器応答(70)を供給する検出手段(T2D)と、
・処理手段(MS)とを具備し、
前記処理手段は、
・前記放射線治療デリバリーの連続回数に対して前記測定される検出器応答(70)をリアルタイムで取得する手段と、
・前記放射線治療の対応する連続回数に対して予測された検出器応答(60)を保存するメモリと、
・前記測定された検出器応答(70)と、対応する前記予測された検出器応答(60)とをリアルタイムで比較する(S300)計算手段と、
・前記比較の結果、所定の閾値を越えた差が得られた場合、エラーをリアルタイムでシグナリングする(S400)手段と
を具備することを特徴とする装置。
【請求項7】
前記処理手段(MS)は、
・前記標的に対する前記放射線治療の実際のデリバリーの前に、前記放射線治療デリバリーの連続回数に対して前記測定される検出器応答(70)をリアルタイムで取得する手段と、
・前記放射線治療の対応する連続回数に対して前記予測された検出器応答(60)を保存する前記メモリに、前記測定された検出器応答(70)を保存する手段と
を具備することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記処理手段(MS)は、治療計画に対する変更を提示する手段をさらに具備することを特徴とする請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記検出手段(T2D)は、線量に対して線形応答、および時空間分解能力を有する電子透過検出システムであることを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
既存の放射線治療装置と協働するように適応されることを特徴とする請求項6から9のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−508107(P2010−508107A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535086(P2009−535086)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061836
【国際公開番号】WO2008/053045
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(509125981)
【出願人】(509125822)レイサーチ・メディカル・アーベー (2)
【Fターム(参考)】