説明

オートサンプラ洗浄機構

【課題】洗浄液を送液する場合に、時間ロスをすることなく送液を維持することが可能なオートサンプラ洗浄機構を提供する。
【解決手段】本発明のオートサンプラ洗浄機構は、先端に試料注入用ニードル15を備えた試料計量用サンプルループ14と、計量ポンプ24と、マルチポートバルブ11aと、マルチポジションバルブ11bと、液供給バルブ11cとを備えている。マルチポジションバルブ11aのポートと液供給バルブ11bのポートの間にはダイアフラムポンプ25が備えられている。ダイアフラムポンプ25は、洗浄液26又は移動相20をサンプルループ14に送液するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体クロマトグラフ等の分析装置に試料を導入する試料導入装置に関し、特に全量注入方式のオートサンプラ洗浄機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全量注入方式は、試料びんからサンプリングニードルを介して計量した試料の全量をインジェクションポートから注入するものである。
試料量が微量の場合も多量の場合も精度の良い計量を行なえるようにした試料導入装置として、計量ポンプとマルチポジションバルブを備え、試料導入量が多い場合にはマルチポジションバルブの切替えと計量ポンプによる繰り返しのピストン動作によりサンプルループに試料を吸引できるようにしたものがある(特許文献1参照。)。
【0003】
また、試料導入量が多いとデッドボリューム等が大きくなってしまうことがあるので、インジェクションポートと流路切替えバルブとを配管を介することなく連結し、流路のデッドボリュームや遅れ容量を減少させた全量注入方式の液体クロマトグラフがある(特許文献2参照。)。
【0004】
また、試料が少量であっても高い計量精度を実現する全量注入方式のオートサンプラに、試料の前処理工程をも自動的に行なう機能を付した自動試料導入装置も知られている(特許文献3参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−170488号公報
【特許文献2】特開2003−215118号公報
【特許文献3】特開2006−242720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、洗浄液も計量部のポンプやシリンジのような機構を用いて送液される。
送液にポンプやシリンジのような機構を用いる場合、液吸引時や液吐出時に洗浄液が逆流しないよう、流路切り替えバルブを使用して逆止弁の働きをさせることが多い。この場合、液吸引時には洗浄液を送液することができないため、送液量を多くしようとしても液吐出時のみの送液では時間がかかってしまう。
また、逆止弁を使用した場合、計量の精度を維持するためには、正確に液体の流れを止める必要があるが、現実には微小な漏れ量があり、正確に液体の流れを止めることは困難である。
【0007】
そこで本発明は、洗浄液を送液する場合に、時間ロスをすることなく送液を維持することが可能なオートサンプラ洗浄機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のオートサンプラ洗浄機構は、先端に試料注入用ニードルを備えた試料計量用サンプルループと、計量ポンプと、サンプルループにつながるポート、カラムにつながるポート及び送液ポンプにつながるポートを備えてそれらのポート間の接続を切り替えるマルチポートバルブと、マルチポートバルブと流路を介してつながるポート、移動相を供給する流路につながるポート、洗浄液用ポート及び計量ポンプにつながる共通ポートを備えて前記共通ポートと他のポートとの間の接続を切り替えるマルチポジションバルブと、洗浄液を供給する流路につながる洗浄液ポート、上記又は他の移動相を供給する流路につながるポート及び共通ポートを備えて共通ポートとの間の接続を切り替える液供給バルブと、マルチポジションバルブの洗浄液用ポートと液供給バルブの共通ポートとの間に接続されたダイアフラムポンプと、を備えている。そして、上記ダイアフラムポンプは、洗浄液又は移動相をサンプルループに送液するものである。
【0009】
異なる洗浄液を供給するためには、液供給バルブに複数のポートを備えるようにすればよい。
【0010】
洗浄液の送液を調整するため、ダイアフラムポンプには圧力センサとダイアフラムポンプの送液を制御する制御部が接続されていることが好ましい。
【0011】
制御部は、また、ダイアフラムポンプへの印加電圧を上昇させても圧力センサの圧力値が上昇しない場合、又は印加電圧を下降させても圧力値が降下しない場合に送液を停止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、洗浄液の送液にダイアフラムポンプを用いるようにしたので、従来のポンプやシリンジ機構のように送液時に時間ロスすることなく送液を維持できる。
【0013】
また、ダイアフラムポンプの上流の液供給バルブに2種以上の洗浄液を供給するための複数のポートを備えるようにすると、多種類の洗浄液を選択し、送液することも可能となる。
【0014】
ダイアフラムポンプは一定電圧で使用することが多いが、その場合は送液の流量制御ができず、流路抵抗が高いときに液体の送液ができなくなることがあった。本発明ではダイアフラムに制御部を備えたので、流路にかかる圧力をモニタし、ダイアフラムポンプが送液できる範囲の圧力を維持し、送液を続けることができるようになり、従来のポンプやシリンジ機構のように送液時に時間ロスすることなく送液を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施例を説明する。
図1はオートサンプラ洗浄機構の概略構成図である。
マルチポートバルブ11aのポート1aにはサンプルループ14が接続され、サンプルループ14の先端には試料注入用ニードル15が設けられている。バルブ11aのポート5aはカラム16に接続され、バルブ11aのポート6aはポンプ17に接続されている。
【0016】
マルチポジションバルブ11bのポート1bとバルブ11aのポート2aの間には、流路19が設けられており、サンプルループ14内の試料と同等量を貯蔵できるようになっている。バルブ11bのポート5bには移動相20を送液ポンプ17により供給する移動相供給流路21が接続されている。また、バルブ11bのポート2b及びバルブ11bの共通ポート7bは計量ポンプ24に接続されており、液体の容量を計量できるようになっている。
【0017】
バルブ11bの洗浄液用ポート6bはダイアフラムポンプ25を介して液供給バルブ11cの共通ポート7cに接続されている。ダイアフラムポンプ25については後述する。
バルブ11cのポート6cは移動相20に接続されており、洗浄液ポート4cと洗浄液5cはそれぞれ洗浄液26,27に接続され、液供給バルブ11cの切り替えによりダイアフラムポンプ25に送液される液体が切り替えられる。
31はドレインであり、サンプルループ14などの洗浄等に用いられた後の廃液の廃棄に用いられる。
【0018】
32はニードル洗浄容器であり、流路28を介して洗浄液29及びポンプ30に接続されている。ニードル洗浄容器32はニードル15の移動可能範囲内に配置されており、ニードル15の外側を洗浄する際に用いられる。23は試料びんであり、試料が貯蔵されている。
また、バルブ11aのポート3aはストップジョイント(又はチェック弁)18に接続されており、栓をすることができるようになっている。
【0019】
図2はダイアフラムポンプ25とその制御機構を示したブロック図である。
ダイアフラムポンプ25には、圧力センサ41とA/Dコンバータ42と送液を制御する制御部43が接続されている。
圧力センサ41はダイアフラムポンプ25による送液圧力を測定するものである。測定された圧力値はコンバータ42によってA/D変換され、制御部43に送られる。
【0020】
図3はダイアフラムポンプ25の概略断面図である。ダイアフラムポンプ本体45には、チューブとの接続部にパッキン47を備えたジョイント46が2つ接続されている。ダイアフラムポンプ本体25とジョイント46はジョイント固定用バンド48で接続されている。
また、ダイアフラムポンプ25からの送液時にジョイント46からの漏れが生じないよう、ジョイント46とポンプ部分の間には耐薬品性が高いポリテトラフルオロエチレンやポリエチレンのような樹脂パッキン47が挟まれており、強く締め付ける構造にしてある。
【0021】
次に同実施例の洗浄動作を図1を参照しながら説明する。
(1)液供給バルブ11cのポート4cと共通ポート7cを接続する。マルチポジションバルブ11bのポート6bとポート1bを接続する。マルチポートバルブ11aのポート1aとポート2aを接続する。この状態でダイアフラムポンプ25を動作させることで、洗浄液26を、液供給バルブ11c、マルチポジションバルブ11b、流路19及びマルチポートバルブ11aを介してサンプルループ14に送液する。
ダイアフラムポンプ25は連続して送液できるため、洗浄液が大容量の場合にも、時間をロスすることなくサンプルループ14内を洗浄することができる。洗浄液はサンプルループ14以外の流路を洗浄することもできる。
【0022】
(2)洗浄液27を用いる場合は、液供給バルブ11cのポート4cをポート5cに切り替えることで選択できる。また、未使用時のポートはストップジョイント18などで栓をする。
【0023】
(3)計量ポンプ24内を洗浄する場合や、洗浄液の正確な量が必要な場合、マルチポジションバルブ11bを制御することで計量ポンプ24からも洗浄液を吸引、吐出することができる。例えば、バルブ11bのポート3bを介すことで、計量ポンプ24に洗浄液26を送液することができる。
(4)また、ニードル15の外側を洗浄するときは、ニードル15を洗浄液が溜められたニードル洗浄容器32に移動して洗浄してもよいし、隣のニードル洗浄容器31に浸漬して洗浄してもよい。
【0024】
次にダイアフラムの制御機構の動作について図2〜図3を参照しながら説明する。
(1)初回使用時などには「テストモード」で洗浄液を送液し、正常な通液に必要なダイアフラムポンプ25への印加電圧を測定し、この値を記憶する。洗浄液を送液する場合は、まずこの記憶した印加電圧用の値を開始電圧として印加し、圧力センサにて値をモニタし、一定圧力になるように印加電圧をPID(Proportional Integral Derivative)制御する。
【0025】
(2)ダイアフラムポンプ25への印加電圧を上昇させても圧力値が上昇しない場合は、流路からの漏れが発生していると考えられるため、エラーを表示し送液を停止する。
(3)印加電圧を落としても圧力値が降下しない場合は、流路が詰まっていると考えられるため、エラーを表示し送液を停止する。
なお、バルブの切り換え動作等を行なう際は瞬間的に圧力が上昇することもあるので、その場合は上述のエラー表示をしないようにする。
【0026】
次に試料注入の動作を簡単に説明する。
試料びん23から試料注入を行う場合、ニードル15を試料びん23に移動させ、計量ポンプ24で吸引し、注入ポート4aに移動させて、マルチポートバルブ11aを切り替えることで試料注入を行なう。
【0027】
上述の実施例では洗浄液の送液にダイアフラムポンプを用いることを特徴としたが、ダイアフラムポンプのみならず、印加電圧の制御により流量制御が可能であり、高流量送液の機能を有する送液装置を用いて送液するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は液体クロマトグラフ等の分析装置に試料を導入する試料導入装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】オートサンプラ洗浄機構の概略構成図である。
【図2】ダイアフラムポンプ25とその制御機構を示したブロック図である。
【図3】ダイアフラムポンプ25の概略断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1a〜6a,1b〜7b,1c〜7c ポート
11a マルチポートバルブ
11b マルチポジションバルブ
11c 液供給バルブ
14 サンプルループ
15 ニードル
16 カラム
17 送液ポンプ
24 計量ポンプ
25 ダイアフラムポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に試料注入用ニードルを備えた試料計量用サンプルループと、
計量ポンプと、
前記サンプルループにつながるポート、カラムにつながるポート及び送液ポンプにつながるポートを備えてそれらのポート間の接続を切り替えるマルチポートバルブと、
前記マルチポートバルブと流路を介してつながるポート、移動相を供給する流路につながるポート、洗浄液用ポート及び前記計量ポンプにつながる共通ポートを備えて前記共通ポートと他のポートとの間の接続を切り替えるマルチポジションバルブと、
洗浄液を供給する流路につながる洗浄液ポート、前記又は他の移動相を供給する流路につながるポート及び共通ポートを備えて共通ポートとの間の接続を切り替える液供給バルブと、
前記マルチポジションバルブの洗浄液用ポートと前記液供給バルブの共通ポートとの間に接続されたダイアフラムポンプと、を備えたオートサンプラ洗浄機構。
【請求項2】
前記液供給バルブには異なる洗浄液を供給するための複数のポートが備えられている請求項1に記載のオートサンプラ洗浄機構。
【請求項3】
前記ダイアフラムポンプには圧力センサと前記ダイアフラムポンプの送液を制御する制御部が接続されている請求項1又は2に記載のオートサンプラ洗浄機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−145112(P2008−145112A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328979(P2006−328979)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】