説明

オートバイ

下側の端部に前輪(7)が支承されるフォーク状のホイールキャリヤ(2)と、当該ホイールキャリヤ(2)を走行の間に操舵方向に左ないしは右に操舵できるようにするためのハンドル(11)と、当該ハンドル(11)を前記ホイールキャリヤ(2)に連結する伝達装置(13〜16)とを有しており、前記伝達装置(13〜16)が、前記ハンドル(11)に加えられた操舵力を前記ホイールキャリヤ(2)に伝達して、これを当該操舵位置に移動させるように構成されているオートバイ。前記ホイールキャリヤ(2)が所定の操舵位置において前記ハンドル(11)に対して少なくとも或る程度まで操舵方向に相対的に移動可能であるように、前記ホイールキャリヤ(2)が前記ハンドル(11)に対して揺動自在に配置されていることを特徴とする、オートバイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分(所謂おいて部分、プリアンブル部分)に記載のオートバイに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両には、たとえば車輪回転数、横加速度、ヨーレートなどの様々な走行状態信号に基づき実際の走行状態を常時監視して、危険な走行状態が検出されるとブレーキおよび/またはアクセルへの能動的な制御介入により車両を安定化させる、いわゆるスタビリティコントロールシステムが装備されることが多い。四輪車両部門から知られているこのスタビリティコントロールシステムをオートバイへ転用することは不可能である。オートバイが横向きの力により不安定な状態にある場合、ブレーキへの制御介入により車両を安定化させることは、一般には不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、危険な走行状況においては電子制御の介入による走行状態の安定化が可能であるように構想されたサスペンションを搭載したオートバイを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は請求項1の特徴により解決される。本発明の有利な構成形態および展開構成例については、従属請求項から察知することができる。
【0005】
本発明の出発点は、下側の端部に前輪が支承されるフォーク状のホイールキャリヤを有するオートバイである。この「ホイールキャリヤ」という用語は、極めて広範な解釈を許すものであって、これには特に、たとえばBMWが開発した「テレレバー・コンセプト」で使用されるようなテレスコピックフォークとならび、ほかにも、たとえばBMWオートバイにより知られている「デュオレバー・フロントサスペンション」で知られているような、たとえば鋳物部品の形態で一体型に製造されるフォーク状のホイールキャリヤも含まれている。従来のオートバイの場合と同様に、走行の間にホイールキャリヤを操舵方向、すなわち左または右に向かって操舵できるようにするために利用されるハンドルが備えられている。このハンドルは、「伝達装置」を利用してホイールキャリヤに連結されている。この伝達装置は、運転者によりハンドルに加えられる操舵力をホイールキャリヤに伝達して、これを当該操舵位置に移動させるように構成されている。
【0006】
本発明の核心は、ホイールキャリヤがハンドルに関して揺動自在に配置される点にある。揺動自在とは、この関係では、ホイールキャリヤが所定の操舵位置において少なくともある程度までハンドルに対して相対的に操舵方向、すなわち左または右に向かって旋回可能であることを意味している。新たに追加されるこの自由度により、走行の間には、スタビリティコントロールシステムにより、すなわちステビリティコントロールエレクトロニクスにより制御された操舵への介入、すなわちホイールキャリヤの操舵位置の「修正」が、運転者により与えられたハンドルの位置の変更を不要として、実現されることになる。したがって操舵介入の際には、ハンドルの同時運動を不要としている。
【0007】
本発明の展開構成例においては、伝達装置が、ホイールキャリヤを走行の間にハンドルに関して旋回できるようにするために利用されるアクチュエータを有している。このアクチュエータは、たとえば油圧シリンダ、空気圧シリンダ、電動モータ、またはその他の急速かつ高精度で応答するアクチュエータであるとよい。
【0008】
そのような操舵介入は、オートバイの走行の間に少なくとも一つの、しかし好ましくは、たとえば車輪回転数、ヨーレート、横傾斜角、ピッチ角などの複数の走行状態量を監視して、危険な走行状態が検出されると、アクチュエータの動作制御を通じて走行状態を安定化させる操舵介入を実行するようになっている監視エレクトロニクスにより制御されるとよい。
【0009】
本発明の別の展開構成例においては、ホイールキャリヤが左側および右側のフォークアームを有しており、これらはそれぞれの上側の端部領域で「接続部」により、ないしはアッパフォークブリッジとも呼ぶことができる別体の「接続部材」により、互いに接続されている。フォークアームはいずれも、この接続部材ないしはこの「フォークブリッジ」に固定接続されている。これとは逆にハンドルは、フォークブリッジに関して揺動自在に配置されている。アクチュエータは、運動学的に見てハンドルとホイールキャリヤの間に配置されるが、それによりホイールキャリヤのハンドルに関する旋回を可能としている。ハンドルは、フォークブリッジに直接支承されたものであるとよい。
【0010】
既に言及したように、このホイールキャリヤは、二本のフォークスパーを有しており、そのそれぞれが入れ子式に変位可能な二つのフォークチューブを有しているテレスコピックフォーク、ないしは、たとえば鋳物部品の形態で製造された一体型のホイールキャリヤであるとよい。
【0011】
ホイールキャリヤは、市場に出回っている「テレレバー・フロントサスペンション」および「デュオレバー・フロントサスペンション」を搭載したBMWオートバイにより知られている方式と同様に、一つまたは二つのいわゆる「コントロールアーム」によりオートバイのその他のところに懸架されたものであるとよい。テレレバー・フロントサスペンションでは、テレスコピックフォークの下側の両フォークチューブが下側のフォークブリッジを介して互いに接続されており、またこの下側のフォークブリッジは、左右のフォークスパー間の領域の中央に配置されるボールジョイントを介して下側のコントロールアームに接続され、その後側の端部はフレームまたはエンジンハウジングに揺動自在に支承されている。左右のフォークスパーの上側のフォークチューブの端部は、それぞれボールジョイントを介して上側のフォークブリッジに支承され、この上側のフォークブリッジもまたオートバイのフレームに揺動自在に接続されている。
【0012】
デュオレバー・フロントサスペンションでは、下側および上側のコントロールアームを介してフレームないしはエンジンハウジングに旋回可能に懸架される、鋳物部品の形態で製造される一体型のホイールキャリヤが備えられている。
次に本発明を図面に関連付けて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にしたがったホイールキャリヤの見取り図である。
【図2】図1のホイールキャリヤの上側のフォークブリッジの領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、ここには詳しく示されていないオートバイの、左側および右側のフォークスパーを有するテレスコピックフォーク2を備えたフロントサスペンション1が示されている。左右のフォークスパーはいずれも、下側のフォークチューブ3、4と、これに対して相対的に変位可能な上側のフォークチューブ5、6とを一つずつ有している。下側の両フォークチューブ3、4の下側の端部には前輪7が支承されている。上側の両フォークチューブ5、6は、下側のフォークブリッジ8と上側のフォークブリッジ9とにより互いに接続されている。上下のフォークブリッジ8、9は、ここではいわゆる「ステリングチューブ」10を介して互いに接続されている。要するにテレスコピックフォーク2は、上側のフォークブリッジ9、および/または下側のフォークブリッジ8、および/またはステアリングチューブを介して、ここには詳しく示されていないオートバイのフレームに揺動自在に支承されている。
【0015】
基本的にテレスコピックフォーク2は、コントロールアームを介してオートバイのフレームないしはエンジンハウジングに支承されたものであってもよい。フォークがオートバイのその他のところにどのように懸架されるかは、本発明にとっては二義的な意味しかない。
【0016】
図1から明らかであるように、上側のフォークブリッジ9にはハンドル11が配置されている。ハンドル11は、ピボットジョイント12を介して上側のフォークブリッジ9に接続されている。したがってハンドル11は、上側のフォークブリッジ9ないしはテレスコピックフォーク2に対して相対的に旋回できるようになっている。
【0017】
ここに示される実施例においては、ハンドル11が前方に向かって延びるアーム13を有しており、これにピストンロッド14が接続されている。ピストンロッド14の左右両側の端部には、ここには詳しく示されていないピストンが一つずつ配置されている。これらのピストンは両方とも、それぞれに対して配置されるシリンダ15、16の内部で変位できるようになっている。ピストンロッド14、ピストン、およびシリンダ15、16により形成される配列は、テレスコピックフォーク2をハンドル11に対して相対的に旋回できるようにするために利用されるアクチュエータとして機能する。このアクチュエータの動作制御は、ここには詳しく示されていないエレクトロニクスにより行われるようになっている。このエレクトロニクスは、たとえば車輪回転数信号、ヨーレート、傾斜姿勢の角度など、様々な走行状態信号を監視する。監視される走行状態信号が、危険な走行状況の存在を示唆する場合は、このアクチュエータを利用して操舵への制御介入を実行することができる、すなわち、テレスコピックフォーク2を運転者により与えられた操舵位置に対して相対的に旋回させて、オートバイの走行状態を安定化させることができる。
【0018】
図2には、アクチュエータないしはハンドル11の領域のフロントサスペンションの拡大図が示されている。
【符号の説明】
【0019】
1 フロントサスペンション
2 ホイールキャリヤ/テレスコピックチューブ
3 下側フォークチューブ
4 下側フォークチューブ
5 上側フォークチューブ
6 上側フォークチューブ
7 前輪
8 下側フォークブリッジ
9 上側フォークブリッジ
10 ステアリングチューブ
11 ハンドル
12 ピボットジョイント
13 アーム
14 ピストンロッド
15 シリンダ
16 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートバイであって、
・下側の端部に前輪(7)が支承されるフォーク状のホイールキャリヤ(2)と、
・当該ホイールキャリヤ(2)を走行の間に操舵方向に左ないしは右に操舵できるようにするために利用されるハンドル(11)と、
・当該ハンドル(11)を前記ホイールキャリヤ(2)に連結する伝達装置(13〜16)とを有しており、
前記伝達装置(13〜16)が、前記ハンドル(11)に加えられた操舵力を前記ホイールキャリヤ(2)に伝達して、これを当該操舵位置に移動させるように構成されている、オートバイにおいて、
前記ホイールキャリヤ(2)が所定の操舵位置にて前記ハンドル(11)に対して少なくとも或る程度まで操舵方向に相対移動可能であるように、前記ホイールキャリヤ(2)が前記ハンドル(11)に関して揺動自在に配置されることを特徴とする、オートバイ。
【請求項2】
前記伝達要素(13〜16)が、前記ホイールキャリヤ(2)が走行の間に前記ハンドル(11)に関して旋回できるようにするために利用されるアクチュエータ(14〜16)を有することを特徴とする、請求項1に記載のオートバイ。
【請求項3】
オートバイの走行の間に少なくとも一つのオートバイ走行状態量を監視して、危険な走行状態が検出される際には前記アクチュエータ(14〜16)の動作制御を通じて走行状態を安定化させる操舵への制御介入を実行するエレクトロニクスが備えられることを特徴とする、請求項2に記載のオートバイ。
【請求項4】
前記ホイールキャリヤ(2)が、上側の端部領域でフォークブリッジ(9)により互いに接続されている左側と右側のフォークアーム(3、5;4、6)を有すること、前記ハンドル(11)が上側のフォークブリッジ(9)に関して揺動自在に配置されていること、および前記アクチュエータ(14〜16)が運動学的に見て前記ハンドル(11)と前記ホイールキャリヤ(2)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオートバイ。
【請求項5】
前記ハンドル(11)が前記フォークブリッジ(9)に直接支承されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のオートバイ。
【請求項6】
前記ホイールキャリヤ(2)が、いずれも上側と下側のフォークチューブ(5、6;3、4)により形成される左側と右側のフォークスパー(3、5;4、6)を有するテレスコピックフォークであること、および前記フォークブリッジ(9)が、前記上側の両フォークチューブ(5、6)を互いに接続することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のオートバイ。
【請求項7】
前記ホイールキャリヤ(2)が、左側と右側のフォークアームを有する鋳物部品であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のオートバイ。
【請求項8】
前記ホイールキャリヤ(2)が、少なくとも一つのコントロールアームを介して、オートバイのフレームまたはエンジンハウジングに旋回可能に懸架されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のオートバイ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−537389(P2009−537389A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511358(P2009−511358)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003848
【国際公開番号】WO2007/134703
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】