説明

オートヒッチ

【課題】副作業機が脱落しないオートヒッチを提供する。
【解決手段】トラクタ(自走式作業機)の後部に取り付け、畦塗り機(副作業機)Dに備えるロワーピン(引掛部)d2を取り付けて連結するオートヒッチCにおいて、ロワーピンd2を取り付けるための下部取付部25を備え、その下部取付部25が、ロワーピンd2を挿入する軸受部(取付開口部)30Aと、その軸受部30Aを開閉するフック31と、そのフック31で軸受部30Aを閉じた状態に保持するロック部32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式作業機の後部に取り付け、副作業機に備える引掛部を取り付けて連結するオートヒッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなど自走式作業機の後部に畦塗り機などの副作業機を接続するオートヒッチの下部取付部は、図6に示すように、ロワーリンク101の先端に、凹状の軸受部102aの形成されたヒッチブラケット102が設けられている。この軸受部102aには、作業機のピン103が挿入されて、フック104によってロックされて軸受部102aに保持される。このフック104は、回動軸102bにてヒッチブラケット102に回動自在に取り付けられ、不図示のコイルバネにより反時計回りに付勢されている(例えば、非特許文献1)。この下部ロック機構105は、トップリンクの上部取付部および反対側のロワーリンク101に設けられた下部取付部105とともにフレーム106に固設されている。
【0003】
【非特許文献1】松山株式会社 二プロフレンズクラブ事務局、「日農工標準オートヒッチの話」、[online]、ニプロ作業機講座 2000年春号、[平成16年7月8日検索]、インターネット<URL: HYPERLINK "http://www.niplo.co.jp/nfc/lec/lec3.html" http://www.niplo.co.jp/nfc/lec/lec3.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように構成されたオートヒッチに例えば畔塗り機など2箇所の下部取付部105に不均等に荷重(片荷重)のかかる副作業機をトラクタに取り付けて、作業を行うと、一方の下部取付部105には図7(a)に示すようにフック104を外側に押し付けるように副作業機のピン103が作用するとともに、他方の下部取付部105には図7(b)に示すようにピン103が回転運動する。この回転運動によって、ピン103がコイルバネに抗してフック104を徐々に押し下げて、図8のように開いたフック104を乗り越えてピン103が下部取付部105から外れて副作業機が脱落してしまうという問題があった。
そこでこの発明の目的は、副作業機が脱落しないオートヒッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、自走式作業機の後部に取り付け、副作業機に備える引掛部を取り付けて連結するオートヒッチにおいて、
前記副作業機に備える引掛部を取り付けるための取付部を備え、
該取付部が、前記引掛部を挿入する取付開口部と、
該取付開口部を開閉するフックと、
該フックで前記取付開口部を閉じた状態に保持するロック部とを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のオートヒッチにおいて、前記取付部を一対備え、該一対の取付部にそれぞれ備える前記フックが同期して前記取付開口部を開閉することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のオートヒッチにおいて、フック操作部材とロック操作部材を備え、前記自走式作業機の運転席にて、前記フック操作部材を介して前記フックを操作し前記取付開口部を開閉するとともに、前記ロック操作部材を介して前記ロック部材を操作し前記取付開口部を閉じた状態に保持することを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、自走式作業機の後部に取り付け、副作業機に備える引掛部を取り付けて連結するオートヒッチにおいて、
前記副作業機に備える引掛部を取り付けるための取付部を備え、
該取付部が、前記引掛部を挿入する取付開口部と、
該取付開口部を開閉するフックと、
挿入した前記引掛部の動きを規制する規制手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のオートヒッチにおいて、前記取付部が前記取付開口部の形成された平板状の取付部材を有し、
前記規制手段が規制部材とピンとを有し、
前記引掛部が挿入されたときに該引掛部を囲むように前記取付開口部に沿って前記規制部材を設けるとともに、前記ピンを前記規制部材に貫入して前記引掛部の前記取付開口部内での動きを規制することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のオートヒッチにおいて、前記取付部が前記取付開口部の形成された平板状の取付部材を有するとともに、
前記規制手段が前記引掛部を挿入するための挿入孔の形成された平板状の規制部材と回動部材を有し、前記規制部材が前記回動部材を介して前記取付部材に回動自在に取り付けられ、かつ、前記規制部材を前記取付部材と平行になるように回動したときに前記挿入孔に前記引掛部が挿入されるように設けることを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項4に記載のオートヒッチにおいて、前記引掛部が棒状に形成され、
前記取付部が前記取付開口部の形成された平板状の取付部材を有し、
前記規制手段が、前記引掛部の前記取付開口部内での動きを規制するための突起が先端部に形成された規制部材を有するとともに、該規制部材の前記先端部を前記取付部材から一定距離を隔てて回動自在に備えるための台座とを有し、
前記引掛部が前記取付開口部に挿入されたときに該規制部材の回動軸と前記引掛部の中心軸とが略一致するように設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、自走式作業機の後部に取り付け、副作業機に備える引掛部を取り付けて連結するオートヒッチにおいて、副作業機に備える引掛部を取り付けるための取付部を備え、その取付部が、引掛部を挿入する取付開口部と、その取付開口部を開閉するフックと、そのフックで取付開口部を閉じた状態に保持するロック部とを備えるので、引掛部の回転運動が発生するような、取付部に不均等に荷重(片荷重)のかかる副作業機を自走式作業機に取り付けて作業を行うときにも、取付開口部を閉じた状態しているフックを引掛部によって徐々に押し下げて取付開口部を開き、引掛部が取付部から外れることを防止する。したがって、副作業機が脱落しないオートヒッチを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、取付部を一対備え、その一対の取付部にそれぞれ備えるフックが同期して取付開口部を開閉するので、自走式作業機に副作業機を容易に着脱することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、フック操作部材とロック操作部材を備え、自走式作業機の運転席にて、フック操作部材を介してフックを操作し取付開口部を開閉するとともに、ロック操作部材を介してロック部材を操作し取付開口部を閉じた状態に保持するので、運転席にいながらフック操作およびロック操作をすることができ、運転者が運転席から降りてフック操作およびロック操作をする必要がなく、効率よく副作業機の着脱作業ができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、自走式作業機の後部に取り付け、副作業機に備える引掛部を取り付けて連結するオートヒッチにおいて、副作業機に備える引掛部を取り付けるための取付部を備え、その取付部が、引掛部を挿入する取付開口部と、その取付開口部を開閉するフックと、挿入した引掛部の動きを規制する規制手段とを備えるので、引掛部の回転運動が発生するような、取付部に不均等に荷重(片荷重)のかかる副作業機を自走式作業機に取り付けて作業を行うときにも、引掛部が閉じた状態の取付開口部内を回転運動することを規制して、フックを回転運動する引掛部によって徐々に押し下げて取付開口部を開き、引掛部が取付部から外れることを防止する。したがって、副作業機が脱落しないオートヒッチを提供することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、取付部が取付開口部の形成された平板状の取付部材を有し、規制手段が規制部材とピンとを有し、引掛部が挿入されたときにその引掛部を囲むように取付開口部に沿って規制部材を設けるとともに、ピンを規制部材に貫入して引掛部の取付開口部内での動きを規制するので、ピンを規制部材に貫入することにより引掛部の動きを規制することができ、簡単な構成のオートヒッチを提供することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、取付部が取付開口部の形成された平板状の取付部材を有するとともに、規制手段が引掛部を挿入するための挿入孔の形成された平板状の規制部材と回動部材を有し、規制部材が回動部材を介して取付部材に回動自在に取り付けられ、かつ、規制部材を取付部材と平行になるように回動したときに挿入孔に引掛部が挿入されるように設けるので、回動部材を介して規制部材を回動することにより引掛部の動きを規制することができ、操作が簡単でかつ構成が簡単なオートヒッチを提供することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、引掛部が棒状に形成され、取付部が取付開口部の形成された平板状の取付部材を有し、規制手段が、引掛部の取付開口部内での動きを規制するための突起が先端部に形成された規制部材を有するとともに、その規制部材の先端部を取付部材から一定距離を隔てて回動自在に備えるための台座とを有し、引掛部が取付開口部に挿入されたときにその規制部材の回動軸と引掛部の中心軸とが略一致するように設けるので、規制部材を回動することにより引掛部の動きを規制するので、操作が簡単でかつ構成が簡単なオートヒッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための第1の実施の形態について詳述する。
図1に示すAは、本発明に係るオートヒッチを備える農業用作業車の一例であるトラクタである。トラクタAは、車体フレーム3の前後に前輪1および後輪2を2つずつ備え、前輪1の上方にボンネット4を形成し、その内側には原動機部としてのディーゼルエンジンを備える。そして、ボンネット4の後部に連続して運転操作部6を設ける。運転操作部6はエンジンキー、ハンドル7、アクセルペダル13、クラッチペダル、ブレーキペダルなどを備える。運転操作部6の後方でかつ後輪2の上方には運転席5を設け、その左側部にはシフトレバー12を設ける。運転席5の後方には、一端を車体フレーム3に固定した左右一対のホルダ14を介して、門型の安全フレーム15が配設され、横転時などに作業者を保護するようになっている。また、安全フレーム15上部には雨や日差しなどを遮るキャノピー16を運転席5の上方に延設する。
【0020】
さらに、トラクタAの後部には、トップリンク23と左右一対のロワーリンク24を延設する。トップリンク23および左右一対のロワーリンク24の先端には、三点リンク式のオートヒッチCを取り付ける。オートヒッチCは、上部取付部26と一対の下部取付部25をフレーム27に取り付けてなる。上部取付部26はトップリンク23に取り付けられ、左右一対の下部取付部25は左右一対のロワーリンク24にそれぞれ取り付けられる。さらに、オートヒッチCを上下方向に昇降させる昇降部20の一端をロワーリンク24に、他端を車体フレーム3に取り付ける。昇降部20は、リフトアーム21とリフトロッド22を備え、油圧によってリフトロッド22を伸縮する。
なお、オートヒッチCは、後述する副作業機Dの上部係合部d1が上部取付部26に、また、一対のロワーピンd2が左右一対の下部取付部25に取り付けられることによって、副作業機DをトラクタAに連結するためのものである。
【0021】
この発明のオートヒッチCは、図2(a)に示すように構成されている。すなわち、一対の下部取付部25と上部取付部26とを備え、これらをフレーム27によって三角形状に取り付ける。なお、下部取付部25および上部取付部26はいずれもフレーム27に溶接により固設されている。
下部取付部25には、凹状の切り欠きにより軸受部(取付開口部)30Aが形成された鉄板のヒッチブラケット30外側面に鉄板でL字型に形成したステー31Bを溶接で固設し、貫入孔31bを形成する。
一方、鉄板を加工して先端が円弧状に形成され、後端側に貫入孔を形成したフック31をステー31Bに対して回動自在に設ける。詳しくは、貫入孔31bとフック31の貫入孔にレバーシャフト29Cを貫入して、レバーシャフト29Cとフック31とはロールピンなどによって固定する一方、貫入孔31bに対してレバーシャフト29Cは回動自在に設ける。さらに、フック31の後端には平坦部40を形成する。
また、フック31の後端近傍には、ロック部32を設ける。ロック部32は、矩形の板状に形成されたロック部材32Aとそのロック部材32Aを回動自在に取り付ける取付部材32Bとで構成されている。詳しくは、鉄板をコの字型に形成し、上下に貫通孔を形成するとともに溶接にてヒッチブラケット30外側面に固設する。一方、取付部材32Bの貫通孔と略同一の貫通孔をロック部材32Aにも形成し、両者の貫通孔にボルト32Cを貫通させてナットで取り付ける。なお、ロック部材32Aの一端には、別の貫通孔を形成し、後述するリンクバー28Eを例えばボルトとナットなどを用いて回動自在に取り付ける。
【0022】
このようにして、左右に同一形状の一対の下部取付部25を設ける。なお、レバーシャフト29Cにはリンク部材29Bをロールピンなどによって取り付ける。そして、リンク部材29Bの一端にリンクバー28Cをロールピンなどによって取り付ける一方、他端には、矩形のリンク部材28Dを固設する。なお、リンクバー28Cの他端はリンク部材28Dの略中央に固設する。そして、リンク部材28Dの両端には前述のリンクバー28Eを回動自在に取り付ける。
また、リンク部材29Bの別の端部には、フック操作レバー(フック操作部材)29Aを回動自在に取り付ける。
さらに、リンクバー28Cの中間部分には矩形のリンク部材28Bの一端を固設する。一方、リンク部材28Bの他端には、ロック解除レバー28Aを回動自在に取り付ける。
また、リンク部材29Bとフレーム27との間には不図示のコイルバネが取り付けられ、フック31が軸受部30Aを塞ぐ方向(図中半時計回り)に付勢している。
【0023】
このように構成されたトラクタAに作業機としての畔塗り機Dを取り付ける手順を図1を参照しつつ説明する。
まず、上部係合部d1と一対のロワーピンd2が、それぞれトラクタAの上部取付部26と左右一対の下部取付部25とに対向するように畦塗り機Dを配置する。次に、作業者が運転席5に乗り込み、トラクタAを後退操作させて畦塗り機Dに接近させる。このとき、上部係合部d1が上部取付部26に、また、一対のロワーピンd2が一対の下部取付部25にそれぞれ嵌り合うように昇降部20を操作してヒッチCを昇降させて高さ調節をしながら、畦塗り機DをトラクタAに取り付ける。
このとき、軸受部30Aに進入するロワーピンd2に対して、フック31が図中反時計回りに付勢されて軸受部30Aを閉塞しているので、ロワーピンd2がフック31の先端部分31tに当接する。その後、ロワーピンd2がフック31の先端部分31tを押してフック31を時計回りに回動させ、開口させながら軸受部30Aに進入する。ロワーピンd2がフック31の先端部分31tを完全に乗り越えると、フック31が軸受部30Aを再び閉塞して、下部取付部25がロワーピンd2を保持する。
他方の下部取付部25も同様の作用によりロワーピンd2を保持する。
【0024】
なお、一対の下部取付部25はレバーシャフト29Cに固設されているので、同期して軸受部30Aを開閉するようになっている。
そして、ロック解除レバー28Aを押し下げると、リンク部材28Aが半時計周りに回動し、それと同期してリンク部材28Dが反時計回りに回動して、リンクバー28Eを矢印方向に押す。すると、ロック部材32Aがピン32Cを中心として反時計回りに回動し、図2(b)に示すように、ロック部材32Aがフック31の平坦部40に沿って当接し、フック31が時計周りに回動することを阻止する。
なお、この例ではロック解除レバー28Aを押し下げると、リンク部材28Bがリンク部材29Bの一端に当接して、フック操作レバー29Aを引き上げることができなくなっており、フック操作をロックする機能を備えている。
次に、上部取付部26に上部係合部d1を取り付けて固定する。
その後、昇降部20によって、畦塗り機Dを持ち上げた状態とし、トラクタAを運転して、所望の耕作地に向かう。
【0025】
畦塗り機DをトラクタAから外すときは、前述の取り付け手順と逆に、持ち上げた状態の畦塗り機Dを下ろす。次に、上部取付部26に固定された上部係合部d1を取り外す。そして、ロック解除レバー28Aを引き上げると、リンク部材28B、リンクバー28C、リンク部材28D、リンクバー28Eを介してロック部材32Aを時計回りに回動させて、ロック部材32Aがフック31の平坦部40から離れ、フック31が時計周りに回動可能となる。
次に、フック解除レバー29Aを引き上げると、フック31が時計回りに回動し、軸受部30Aが開口する。この状態でトラクタAを前進させて、ロワーピンd2を下部取付部25から取り外す。
【0026】
このように、この発明のオートヒッチCは、ロワーピン(引掛部)d2を取り付けるための下部取付部25を備え、その下部取付部25が、ロワーピンd2を挿入する軸受部30Aと、その軸受部30Aを開閉するフック31と、そのフック31で軸受部30Aを閉じた状態に保持するロック部32とを備え、フック解除レバー(フック操作部材)29Aとロック解除レバー(ロック操作部材)28Aを備え、トラクタ(自走式作業機)Aの運転席5にて、フック解除レバー29Aを介してフック31を操作し、軸受部30Aを開閉するとともに、ロック解除レバー28Aを介してロック部材32Aを操作し、軸受部30Aを閉じた状態に保持する。
【0027】
(第2の実施の形態)
次に、この発明の第2の実施の形態としてのオートヒッチについて説明する。この実施の形態のオートヒッチは、自走式作業機の後部に取り付け、畦塗り機などの副作業機に備える引掛部を取り付けて連結するオートヒッチであって、自走式作業機としてのトラクタAは、第1の実施の形態にて説明したものと同様の構成・作用であるので説明を省略する。また、オートヒッチの構成・作用については、図2(a),(b)にて説明したものと比べて下部取付部の構成・作用のみが異なる。したがって、以下では下部取付部について詳細に説明する。
【0028】
この実施の形態の下部取付部45(図1に示す下部取付部25に相当)は、図3(a)〜(c)に示すように、トラクタAのロワーリンクLOの先端に下部取付部45を取り付ける。詳しくは、下部取付部45が凹状の切り欠きにより軸受部(取付開口部)50Aの形成された鉄板のヒッチブラケット(取付部材)50を有し、そのヒッチブラケット50の外側面に規制手段52を備える。規制手段52は、ロワーピン(引掛部)d2が挿入された状態でそのロワーピンd2を囲むようにコの字上に軸受部50Aに沿ってヒッチブラケット50から直角方向に設けられる規制部材54と、その規制部材54の上板部54aと下板部54bとを貫いて抜き差し自在のピン53と、そのピン53の先端にピン53を規制部材54に差した状態で抜けないように保持(ロック)するための係止部材55とを備える。ピン53は、規制部材54に差して軸受部50Aでのロワーピンd2の動きを規制する。
【0029】
なお、規制部材54は鉄板をL字型に加工して形成した上板部54aと、それに対向するように配置された鉄板を矩形に加工した下板部54bと、上板部54aと下板部54bとを接続する鉄板を矩形に加工した中継部54cとで構成される。そして、上板部54aの一端をヒッチブラケット50溶接して取り付けるとともに、下板部54bを中継部54cを介して上板部54aに溶接にて取り付ける。したがって、中継部54cと下板部54bはヒッチブラケット50には直接固定されていない。
【0030】
一方、鉄板を加工して先端が円弧状に形成され、後端側に貫入孔を形成したフック51を回動軸50Aに対して回動自在に設ける。詳しくは、ヒッチブラケット50に貫入孔を形成し、この貫入孔とフック51の貫入孔の位置を合わせて回動軸51Aを挿入してフック51をヒッチブラケット50に対して回動自在に取り付ける。なお、回動軸51Aは、ボルト、ワッシャ、ナットを組み合わせたものなど従来公知の技術を用いる。また、この回動軸51Aに前述のロワーリンク40を取り付けてもよい。さらに、フック51は回動軸51Aの周りに不図示のコイルバネなどの付勢手段によって軸受部50Aを閉塞する方向、すなわち半時計周りに付勢されている。
このような構成の下部取付部45をフレーム27を介して一対備えるとともに、第1の実施の形態にて説明した上部取付部26を備えてオートヒッチを構成する。なお、下部取付部45とフレーム27、および上部取付部26とフレーム27とは溶接にて取り付けられていることはいうまでもない。
【0031】
次に、このように構成されたオートヒッチを取り付けたトラクタAに作業機としての畔塗り機Dを取り付ける手順を図1を参照しつつ説明する。
まず、ピン53を規制部材54から抜いた状態で、上部係合部d1と一対のロワーピンd2が、それぞれトラクタAの上部取付部26と左右一対の下部取付部45とに対向するように畦塗り機Dを配置し、上部係合部d1が上部取付部26に、また、一対のロワーピンd2が一対の下部取付部45にそれぞれ嵌り合うように昇降部20を操作してヒッチCを昇降させて高さ調節をしながら、畦塗り機DをトラクタAに取り付ける。
このとき、軸受部50Aに進入するロワーピンd2に対して、フック51が図3(b)中反時計回りに付勢されて軸受部50Aを閉塞しているので、ロワーピンd2がフック51の先端部分に当接する。その後、ロワーピンd2がフック51の先端部分を押してフック51を時計回りに回動させ、開口させながら軸受部50Aに進入する。ロワーピンd2がフック51の先端部分を完全に乗り越えると、付勢手段の作用によりフック51が軸受部50Aを再び閉塞して、下部取付部45がロワーピンd2を保持する。
他方の下部取付部45も同様の作用によりロワーピンd2を保持する。
【0032】
なお、一対の下部取付部45は不図示のレバーシャフトなどに固設されて同期して軸受部50Aを開閉するようにしてもよい。
次に、ピン53を規制部材54に形成した貫入孔に差し込んだ後、ピン53の先端に細い棒状の係止部材55を差し込んでピン53が規制部材54から抜けないようにする。このようにすることによって、ロワーピンd2が片荷重などにより振動してフック51を下方に押し下げようとする場合にも、ピン53がその振動を阻止し、フック51を下方に押し下げないようにして、ロワーピンd2が下部取付部45が脱落することを防止できる。
次に、上部取付部26に上部係合部d1を取り付けて固定する。
その後、昇降部20によって、畦塗り機Dを持ち上げた状態とし、トラクタAを運転して、所望の耕作地に向かう。
【0033】
畦塗り機DをトラクタAから外すときは、前述の取り付け手順と逆に、持ち上げた状態の畦塗り機Dを下ろす。次に、上部取付部26に固定された上部係合部d1を取り外す。そして、係止部材55をピン53から抜いた後、ピン53を規制部材54から抜き、不図示のフック解除レバーを操作して、フック51を時計回りに回動させ、軸受部50Aを開口させる。この状態でトラクタAを前進させて、ロワーピンd2を下部取付部45から取り外す。
【0034】
このように、この発明のオートヒッチは、ロワーピン(引掛部)d2を取り付けるための下部取付部45を備え、その下部取付部45が、ロワーピンd2を挿入する軸受部50Aと、挿入したロワーピンd2の軸受部50A内での動きを規制する規制手段52とを備える。
そして、下部取付部45が軸受部50Aの形成された平板状のヒッチブラケット(取付部材)50を有し、規制手段52が規制部材54とピン53とを有し、ロワーピンd2が挿入されたときにロワーピンd2を囲むように軸受部50Aに沿って規制部材54を設けるとともに、ピン53を規制部材54に貫入してロワーピンd2の軸受部50A内での動きを規制する。
【0035】
なお、下部取付部を図4(a)〜(c)に示すように構成してもよい。すなわち、下部取付部65が軸受部60Aの形成された鉄板製のヒッチブラケット(取付部材)60を有するとともに、規制手段62がロワーピンd2を挿入するための挿入孔64Aの形成された鉄板製の規制部材64とヒンジ(回動部材)63を有し、規制部材64がヒンジ63を介してヒッチブラケット60に回動自在に取り付けられ、かつ、規制部材64をヒッチブラケット60と平行になるように回動したときに挿入孔64Aにロワーピンd2が挿入されるように設けてもよい。
詳しくは、ヒッチブラケット60の軸受部(取付開口部)60Aの上方に2つのヒンジ63を溶接によって取り付け、そのヒンジ63をさらに溶接によって規制部材64に取り付け、規制部材64が図4(b)に示すように上方に向かって開閉自在となるようにする。このヒッチブラケット60のほぼ中央部には、縦長の開口を設けてロワーピンd2の挿入孔64Aとする。
【0036】
このように構成された下部取付部65にロワーピンd2を取り付けるには、軸受部60Aを覆っていた規制部材64を回動した状態で、畦塗り機DをトラクタAに取り付ける。すなわち、ロワーピンd2がフック61の先端部分に当接した後、ロワーピンd2がフック61の先端部分を押してフック61を時計回りに回動させ、開口させながら軸受部60Aの奥に進入する。ロワーピンd2がフック61の先端部分を完全に乗り越えると、付勢手段の作用によりフック61が軸受部60Aを再び閉塞して、下部取付部65がロワーピンd2を保持する。
そして、開いた状態にあった規制部材64を挿入孔64Aにロワーピンd2を挿入しながらヒッチブラケット60に平行になるように回動して閉じた状態とする。すると、軸受部60A上を規制部材64が覆って、ロワーピンd2が軸受部60Aから外に離脱することを防止できる。このようにして、畦塗り機DをトラクタAに取り付ける。
なお、畦塗り機DをトラクタAから外す場合は、規制部材64を回動してロワーピンd2を規制部材64から外して軸受部60A上を開いた状態とし、不図示のフック解除レバーを操作して、フック61を時計回りに回動させ、軸受部60Aを開口させる。この状態でトラクタAを前進させて、ロワーピンd2を下部取付部65から取り外す。
【0037】
さらに、下部取付部を図5(a)〜(c)に示すように構成してもよい。すなわち、下部取付部75が軸受部(取付開口部)70Aの形成された鉄板製のヒッチブラケット(取付部材)70を有し、規制手段72が、棒状のロワーピン(引掛部材)d2の軸受部70A内での動きを規制するための突起73aが先端部に設けられた規制部材73を有するとともに、その規制部材73の先端部をロワーピンd2から一定距離Lを隔てて回動自在に備えるための台座74とを有し、ロワーピンd2が軸受部70Aに挿入されたときに規制部材73の回動軸R1とロワーピンd2の中心軸R2とが略一致するように設ける。
詳しくは、ヒッチブラケット70の軸受部70Aの外側に軸受部70Aを一部覆うように鉄板をコの字型に折り曲げて形成した台座74を溶接によってヒッチブラケット70に取り付ける。台座74の軸受部70Aが位置する付近には、貫通孔74Aを形成する。この貫通孔74Aを介して、突起73aを形成した円板状の係止部73bをボルトとナット73cなどを用いてツマミ73dに取り付けて、規制部材73とする。この規制部材73は貫通孔74Aに対して回動自在とする。
【0038】
このように構成された下部取付部75にロワーピンd2を取り付けるには、軸受部70Aを閉塞するように位置していた突起73aをツマミ73dを回動して開いた状態として、畦塗り機DをトラクタAに取り付ける。すなわち、ロワーピンd2がフック71の先端部分に当接した後、ロワーピンd2がフック71の先端部分を押してフック71を時計回りに回動させ、開口させながら軸受部70Aの奥に進入する。ロワーピンd2がフック71の先端部分を完全に乗り越えると、付勢手段の作用によりフック71が軸受部70Aを再び閉塞して、下部取付部75がロワーピンd2を保持する。
次に、開口した状態にあった突起73aがロワーピンd2に対して軸受部70Aを閉塞するように規制部材73を回動する(図5(c)中、破線で表示)。これによって、ロワーピンd2が軸受部70Aから外に離脱することを防止できる。このようにして、畦塗り機DをトラクタAに取り付ける。
なお、畦塗り機DをトラクタAから外す場合は、突起73aがロワーピンd2に対して軸受部70Aを開放するように規制部材73を回動する(図5(c)中、実線で表示)。そして、不図示のフック解除レバーを操作して、フック71を図5(a)中、時計回りに回動させ、軸受部70Aを開口させる。この状態でトラクタAを前進させて、ロワーピンd2を下部取付部65から取り外す。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の第1の実施の形態のオートヒッチを取り付けた自走式作業機としてのトラクタの概略構成図である。
【図2】図1に備えるオートヒッチの(a)はロック部材を開放した状態を示す図、(b)はロック部材をロックした状態を示す図である。
【図3】この発明の第2の実施の形態のオートヒッチに備える下部取付部の(a)は概略斜視図、(b)は側面図、(c)はX矢視側面図である。
【図4】この発明の第2の実施の形態の別のオートヒッチに備える下部取付部の(a)は概略斜視図、(b)はZ矢視側面図、(c)はY矢視側面図である。
【図5】この発明の第2の実施の形態のさらに別のオートヒッチに備える下部取付部の(a)は概略側面図、(b)はW矢視断面図、(c)は規制部材の拡大説明図である。
【図6】従来のオートヒッチの下部取付部の概略側面図である。
【図7】従来のオートヒッチに備える一対の下部取付部のうち、(a)は一方の下部取付部に取り付けたロワーピンの動きを示す図、(b)は他方の下部取付部に取り付けたロワーピンの動きを示す図である。
【図8】図7(b)の下部取付部に取り付けたロワーピンがフックから外れる状態を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 前輪
2 後輪
3 車体フレーム
4 ボンネット
5 運転席
6 運転操作部
7 ハンドル
12 シフトレバー
13 アクセルペダル
14 ホルダ
15 安全フレーム
16 キャノピー
20 昇降部
21 リフトアーム
22 リフトロッド
23 トップリンク
24 ロワーリンク
25,45,65,75 下部取付部
26 上部取付部
27 フレーム
28A ロック解除レバー
28B,28D,29B リンク部材
28C,28E リンクバー
29A フック操作レバー
29C レバーシャフト
30,50,60,70 ヒッチブラケット
30A,50A,60A,70A 軸受部(取付開口部)
31,51,61,71 フック
31B ステー
31b 貫入孔
31t 先端部分
32 ロック部
32A ロック部材
32B 取付部材
32C ボルト
40 平坦部
51A 回動軸
52,62,72 規制手段
54,64,73 規制部材
54a 上板部
54b 下板部
54c 中継部
55 係止部材
63 ヒンジ(回動部材)
64A 挿入孔
73a 突起
73b 係止部
73c ナット
73d ツマミ
74 台座
74A 貫通孔
d1 上部係合部
d2 ロワーピン(下部係合部)
A トラクタ(自走式作業機)
C オートヒッチ
D 畦塗り機(副作業機)
LO ロワーリンク
R1 回動軸
R2 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式作業機の後部に取り付け、副作業機に備える引掛部を取り付けて連結するオートヒッチにおいて、
前記副作業機に備える引掛部を取り付けるための取付部を備え、
該取付部が、前記引掛部を挿入する取付開口部と、
該取付開口部を開閉するフックと、
該フックで前記取付開口部を閉じた状態に保持するロック部とを備えることを特徴とする、オートヒッチ。
【請求項2】
前記取付部を一対備え、該一対の取付部にそれぞれ備える前記フックが同期して前記取付開口部を開閉することを特徴とする、請求項1に記載のオートヒッチ。
【請求項3】
フック操作部材とロック操作部材を備え、前記自走式作業機の運転席にて、前記フック操作部材を介して前記フックを操作し前記取付開口部を開閉するとともに、前記ロック操作部材を介して前記ロック部材を操作し前記取付開口部を閉じた状態に保持することを特徴とする、請求項1に記載のオートヒッチ。
【請求項4】
自走式作業機の後部に取り付け、副作業機に備える引掛部を取り付けて連結するオートヒッチにおいて、
前記副作業機に備える引掛部を取り付けるための取付部を備え、
該取付部が、前記引掛部を挿入する取付開口部と、
該取付開口部を開閉するフックと、
挿入した前記引掛部の動きを規制する規制手段とを備えることを特徴とする、オートヒッチ。
【請求項5】
前記取付部が前記取付開口部の形成された平板状の取付部材を有し、
前記規制手段が規制部材とピンとを有し、
前記引掛部が挿入されたときに該引掛部を囲むように前記取付開口部に沿って前記規制部材を設けるとともに、前記ピンを前記規制部材に貫入して前記引掛部の前記取付開口部内での動きを規制することを特徴とする、請求項4に記載のオートヒッチ。
【請求項6】
前記取付部が前記取付開口部の形成された平板状の取付部材を有するとともに、
前記規制手段が前記引掛部を挿入するための挿入孔の形成された平板状の規制部材と回動部材を有し、前記規制部材が前記回動部材を介して前記取付部材に回動自在に取り付けられ、かつ、前記規制部材を前記取付部材と平行になるように回動したときに前記挿入孔に前記引掛部が挿入されるように設けることを特徴とする、請求項4に記載のオートヒッチ。
【請求項7】
前記引掛部が棒状に形成され、
前記取付部が前記取付開口部の形成された平板状の取付部材を有し、
前記規制手段が、前記引掛部の前記取付開口部内での動きを規制するための突起が先端部に形成された規制部材を有するとともに、該規制部材の前記先端部を前記取付部材から一定距離を隔てて回動自在に備えるための台座とを有し、
前記引掛部が前記取付開口部に挿入されたときに該規制部材の回動軸と前記引掛部の中心軸とが略一致するように設けることを特徴とする、請求項4に記載のオートヒッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−25712(P2006−25712A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210168(P2004−210168)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】