説明

オートフォーカス制御方法

【課題】簡易に撮影でき、かつ適切に目的の被写体に合焦させることができるオートフォーカス制御方法を提供する。
【解決手段】撮像エリア500のうち中心領域501および周辺領域502を除いたリング状の領域をフォーカスエリア503としてプリセットしておく。レンズおよびCCD回路を介して画像信号を取得する。取得された画像信号に基づいて、プリセットされたフォーカスエリア503の合焦度を示すコントラスト値を算出する。このフォーカスエリア503においてコントラスト値が極大になるレンズ位置を合焦位置とする。オートフォーカス処理に当たって、まず顔検出を行い、顔検出に成功した場合には顔領域をフォーカスエリアとし、顔検出に失敗した場合には前記プリセットされたフォーカスエリアに基づいてフォーカス合わせを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置のフォーカス合わせを自動で行うオートフォーカス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機はカメラ機能を有し、カメラ付き携帯電話機と呼ばれている。
このような携帯電話機に設けられているカメラは、簡易に撮影できることが求められるので、オートフォーカス機能が組み込まれている。
すなわち、ユーザーが被写体にレンズを向けて構えると、フォーカス合わせが自動的に実行され、ユーザーがシャッターボタンを押せばフォーカスが合った撮像データが取得されるようになっている。
【0003】
フォーカス合わせに際しては、可動レンズを連続的または間欠的に移動させる。
このとき、レンズを介してイメージセンサに結像した像の輝度信号に含まれる高周波成分を一定の時間間隔で抽出し、この高周波成分を撮像エリア全体で積分することによって撮像エリア全体の平均的な画像のコントラスト値を得る。そして、このコントラスト値が最も高くなるようにレンズ位置を微調整することでフォーカスが最も合う位置を求めている。
【0004】
これは、イメージセンサ(CCD、CMOS)の集積密度が低く、画素数が少なかったので、撮像エリア全体でコントラスト値の評価を行うことで十分な性能が得られていたためである。
【0005】
ところが、近年、イメージセンサ(CCD、CMOS)の画素数が増加してきており、撮影の簡易さを保ちつつ、より高機能なフォーカス合わせが望まれるようになっている。
このようなニーズに対応すべく、例えば、特許文献1(特開2006−208443号公報)、特許文献2(特開2008−299164号公報)に、顔検出機能を備えたカメラが開示されている。
これら特許文献1、2はいずれも、図15に示すように、撮像した画像から被写体の顔を検出した領域をフォーカスエリア10に設定し、レンズの移動に際し顔画像のコントラストに基づいて合焦位置を決定する技術である。
このように被写体を自動的に認識し、撮像領域内の特定領域で合焦するようにレンズ位置を制御することにより、被写体にフォーカスが合った鮮明な画像が得られる。
【0006】
しかしながら、例えば、逆光であったり、被写体がマスクやサングラスをかけている場合などには顔検出に失敗する可能性が高くなる。
このように顔検出に失敗した場合のリカバリー処理としては、撮像エリア全体でのフォーカス合わせが行われることが一般的であり、やはりユーザーが期待する目的物にフォーカスが合っていない画像しか得られなかった。
すなわち、遠景を背景とした人物撮影を行う場合において、顔検出に失敗してしまうと、手前の人物にフォーカスを合わせて撮影したいにも関わらず、エリア全体で最適なフォーカス合わせが行われてしまう。その結果、背後の遠景の方にフォーカスが合ってしまい、撮影目的である人物はピンボケになる場合がある。
【0007】
または、目的の被写体は撮像エリアの中心部分にある場合が多いことを前提とし、顔検出に失敗した場合には、撮像エリアの中央領域(図16の領域11)をフォーカスエリアとして設定し、この中央領域11が最大コントラストになるようにフォーカス合わせを実行するというリカバリー処理も行われている。
しかし、図16のように人物が並んでいる場合に中央領域11をフォーカスエリアとしてしまうと、被写体である人物ではなく、背後の遠景にフォーカスが合ってしまい、人物がピンぼけとなった画像が得られてしまうこととなる。
【0008】
上記のような問題を解決し、被写体にフォーカスが合うようにする技術として、例えば、特許文献3(特開H6−6659号公報)、特許文献4(特開2007−133301号公報)に開示されたフォーカス制御方法がある。
このフォーカス制御方法においては、例えば図17のように撮影画面内に複数のフォーカスエリア12A、12B、12Cを設定し、フォーカスエリア12A、12B、12Cごとにコントラスト値が最高になるレンズ位置をそれぞれ求める。
そして、特定のフォーカスエリアで合焦するようにレンズ位置を決定する。
この場合、どのフォーカスエリアで合焦させるかについては、あらかじめ優先度が設定されていてもよく、最至近の被写体に合焦するようにしてもよく、あるいは、ユーザーが画面を見ながら選択するようになっていてもよい。
例えば、人物M1と人物M2とが並んだ構図を撮影するにあたり、図17のようにフォーカスエリア12A、12B、12Cが設定されているとする。
図17において、向かって左側の人物M1は左側のフォーカスエリア12Aに入り、向かって右側の人物M2は右側のフォーカスエリア12Cに入っている。
中央のフォーカスエリア12Bには被写体はなく、背後の遠景がエリアに入っている。
この状態でフォーカスエリア12A、12B、12Cごとにレンズ位置とコントラスト値との関係を算出すると、図18のようになる。
すなわち、フォーカスエリア12Aに対しては、図18(A)のように、人物M1に合焦するレンズ位置でコントラスト値がピークを示す。
同じように、フォーカスエリア12Cに対しては、図18(C)のように、人物M2に合焦するレンズ位置でコントラスト値がピークを示す。
領域12Bに対しては図18(B)のように遠景に合焦するレンズ位置でコントラスト値がピークを示す。
よって至近距離にある被写体にフォーカスを合わせるようにレンズ位置を点Pに移動制御すれば被写体にフォーカスを合わせた画像が得られる。
たしかに、このようなフォーカス制御方法を適用することにより、被写体にフォーカスが合った画像が取得できる可能性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−208443号公報
【特許文献2】特開2008−299164号公報
【特許文献3】特開平6−6659号公報
【特許文献4】特開2007−133301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記フォーカス制御方法を実行するためには、異なる複数のエリア12A、12B、12Cごとに合焦レンズ位置を求める必要がある。
異なる複数のエリア12A、12B、12Cごとに合焦レンズ位置をそれぞれ求めるには、可動レンズを複数回にわたって往復移動させる必要があり、かなりの時間を要す。
これにより、ユーザは、被写体に向けてレンズを構えた状態のままフォーカス合わせに要する長時間にわたって静止姿勢を強いられることになる。
しかしながら、実際の使用状況においてユーザーが長い時間にわたって静止姿勢を維持することは難しい。また、実際には手ぶれの問題もある。
ここで、フォーカスエリア12A、12B、12Cのうちからユーザーが画面を見ながら被写体が入っているエリアを選択してフォーカスエリアを設定できるようにするという方法もある。この方法であれば、選択されたフォーカスエリアだけでフォーカス合わせを行えばよいのでフォーカス合わせに要する時間は短くて済む。
しかしながら、画面を見ながらフォーカスエリアを選択することをユーザーに要求すると、撮影操作が複雑になり、時間もかかる。
携帯電話機などの小型携帯機器に搭載されているカメラは、簡易に撮影できることが望まれており、上記フォーカス制御方法を採用することは現実的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のオートフォーカス制御方法は、
被写体に合焦するようにレンズの位置を調整するオートフォーカス制御方法であって、
撮像エリアのうち中心領域を除いたリング状の領域が合焦度を判定するフォーカスエリアとしてプリセットされており、
前記レンズおよび撮像手段を介して画像信号を取得し、
取得された前記画像信号に基づいて前記フォーカスエリアの合焦度を示すコントラスト値を算出し、
前記フォーカスエリアにおいてコントラスト値が極大になる位置を前記レンズの合焦位置とする
ことを特徴とする。
【0012】
このような構成において、撮像エリアから中央領域を除いたリング状領域がフォーカスエリアとして設定されている。
このフォーカスエリアのコントラスト値が極大になるようにフォーカス合わせを実行する。
これにより、撮影目的である被写体に対して簡便かつ適切にフォーカス合わせを行うことができる。
すなわち、被写体が人物一人の場合でも二人以上の人物が並んでいる場合でもフォーカスエリアの多くの領域を目的に被写体が占めるので、目的の被写体にフォーカスを合わせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中心領域のみにフォーカスエリアを設定したり、撮像エリア全体でフォーカス合わせを行う場合に比べ、簡便でありながらも適切にフォーカス合わせを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)はカメラ付き携帯電話機の操作面側を示す図であり、(B)はカメラ付き携帯電話機の背面側を示す図である。
【図2】カメラ付き携帯電話機のシステムブロック図。
【図3】カメラ部およびAF制御部の構成を示すブロック図。
【図4】プリセットフォーカスエリアを示す図。
【図5】コントラスト曲線の一例を示す図。
【図6】オートフォーカス処理の手順を示すフローチャート。
【図7】二人の人物が並んでいる場合を示す図。
【図8】コントラスト曲線の一例を示す図。
【図9】二人の人物が並んでいるシーンをプリセットフォーカスエリアを用いて撮像する様子を示す図。
【図10】人物が一人であるシーンをプリセットフォーカスエリアを用いて撮像する様子を示す図。
【図11】プリセットエリアの変形例を示す図。
【図12】プリセットエリアの変形例を示す図。
【図13】プリセットエリアの変形例を示す図。
【図14】第2実施形態のフローチャート。
【図15】背景技術において、顔位置をフォーカスエリアに設定した様子を示す図。
【図16】撮像エリアの中央領域をフォーカスエリアとして設定した様子を示す図。
【図17】背景技術において、複数のフォーカスエリアを設定した場合を示す図。
【図18】図17の各フォーカスエリアにおける合焦評価値の変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態としてカメラ付き携帯電話機を例に説明する。
図1にカメラ付き携帯電話機100の外観を示し、図2にカメラ付き携帯電話機100のシステムブロック図を示す。
カメラ付き携帯電話機100は、音声出力を行うスピーカ101と、画像情報を表示するメイン表示部102と、音声入力を行うマイク103と、操作入力を行う操作キー群104と、撮像手段としてのカメラ部200と、メイン表示部102よりも小さなサブ表示部105と、画像データ記憶部106と、無線部107と、制御回路300と、を備える。
【0016】
操作キー群104は、多数の操作キーからなり、少なくとも通話モードで使用されるテンキー、発話キー及び終話キーが含まれるとともに、カメラモードで使用されるカメラモードキー104Aおよびシャッターボタン104Bが含まれている。
ユーザーがカメラモードキー104Aを操作すると、携帯電話機100の動作モードがカメラモードに移行する。
すると、メイン表示部102をファインダーとして、カメラ部200により撮影を行うことができる。
【0017】
カメラ部200は、被写体を撮影して画像データを出力する撮像手段である。
カメラ部200の動作は制御回路300により制御され、携帯電話機100の動作モードがカメラモードの場合に、カメラ部200による撮影が行われ、撮影された画像データが制御回路300へ出力される。
図3にカメラ部200のブロック図を示す。
カメラ部200は、可動レンズ210と、CCD回路202と、CCDドライバ203と、露出制御部204と、信号増幅部205と、A/D変換器206と、画像処理部207と、レンズ駆動モータ208と、を備える。
被写体からの光は可動レンズ201を介して集光され、CCD回路202の受光面に結像する。
可動レンズ201は、CCD回路202に対して光軸方向に移動可能に設けられている。
可動レンズ201の移動によりCCD回路上の結像状態が変化する。
すなわち、可動レンズ201の位置を移動させることによりフォーカス合わせが行われる。
【0018】
CCD回路202は、画像データを生成するイメージセンサである。CCD回路202の受光面は多数の受光素子からなり、各受光素子には入射光量に応じた電荷が蓄積され、所定の露光時間内で蓄積された電荷を各受光素子から読み出すことにより画像データが得られる。
【0019】
CCDドライバ203は、CCD回路202に対しタイミングパルスを供給し、各受光素子に蓄積された電荷を消去するとともに、所定の露光時間が経過するまでに各受光素子に蓄積された電荷量を読み出すようにタイミング制御を行っている。
CCD回路202で生成された 画像データは、信号増幅部205で増幅され、A/D変換器206においてデジタル信号に変換された後、画像処理部207へ入力される。
画像処理部207は、画像データに対し、ズーム処理や圧縮処理などを行っており、処理後の画像データが制御回路300へ出力される。
【0020】
露出制御部204は、制御回路300からの露出条件に基づいて、CCD回路202における露光時間と、信号増幅部205における利得(ゲイン)を制御している。
また、レンズ駆動モータ208は、制御回路300からのレンズ駆動信号に基づいて、レンズ201を光軸方向に移動させる。
【0021】
メイン表示部102は、文字や画像を表示するための表示手段であり、通話モードの場合には、電話番号などの通話情報が表示される一方、カメラモードの場合には、カメラ部200からの画像データがモニター表示され、デジタルスチルカメラのファインダーとして使用される。
【0022】
画像データ記憶部106は、カメラ部200により撮影された画像データを保存するための記憶手段である。
無線部107は、図示しない無線基地局との間で無線通信を行ってデータ送受信を行う。
【0023】
制御回路300は、キー操作検出部310と、AF(オートフォーカス)制御部320と、マイクロプロセッサ(CPU)330と、表示制御部340と、音声I/F部350と、撮影処理部360と、を備える。
キー操作検出部310は、ユーザーによるキー操作を検出する。
キー操作検出部310は、シャッターボタンについて、「半押し」と呼ばれるストロークの浅い押下操作と、この半押し状態から「全押し」と呼ばれるストロークの深い押下操作と、を区別して検出することができる。
【0024】
AF制御部320は、カメラ部200に対しレンズ駆動信号を出力し、そのフォーカスを調整する。
カメラモードでは、随時、カメラ部200から画像データが出力されている。
この画像データがCPU330を介してAF制御部320へ入力されている。
AF制御部320は、シャッターボタン104Bの「半押し」を契機としてフォーカス制御を実行する。
AF制御部320は、画像データ中のコントラストに基づいてカメラ部200のレンズ位置を調整し、フォーカス合わせを行う。
図3にAF制御部320のブロック図を示す。
AF制御部320は、顔検出部321と、フォーカスエリア設定部322と、コントラスト算出部324と、フォーカス判定部325と、を備える。
【0025】
顔検出部321には、画像処理部207からの画像データ信号が入力される。
顔検出部321は、画像データに基づいて、画像データを構成する複数の画素の中から人の顔面の像を形成する光を受光している画素或いは画素の集合である顔面領域を検出する。
顔面領域の検出は、画像全体の中における肌色の検出、画像の中から人の顔における目、鼻、または口などの特徴点の検出、或いは顔の輪郭の抽出等の従来公知の顔面像の認識方法により検出される。
顔検出に成功した場合、検出された顔面領域に相当する顔位置データは、フォーカスエリア設定部322に出力される。
また、顔検出部321による顔検出処理において顔が検出できなかった場合、すなわち顔検出に失敗した場合には、顔検出に失敗した旨の顔検出エラー信号がフォーカスエリア設定部322に出力される。
【0026】
フォーカスエリア設定部322は、フォーカス合わせのためのフォーカスエリアを設定する。フォーカスエリア設定部322は、顔検出部321から顔位置データを受けた場合には、顔位置データに基づいて顔面領域をフォーカスエリアとして設定する。
顔面領域を含むフォーカスエリアの設定については、図15で説明した通りである。
【0027】
フォーカスエリア設定部322は、顔検出部321から顔検出エラー信号を受けた場合には、予め設定されたプリセットエリアをフォーカスエリアに設定する。
ここで、フォーカスエリア設定部322にはプリセットエリア記憶部323が付設されている。
プリセットエリア記憶部323には、図4に示すように、撮像エリア500から中央領域501と周辺領域502とを除いたリング状領域がプリセットフォーカスエリア503として設定記憶されている。
図4において、撮像エリアの幅方向Wおよび縦方向Hをそれぞれ5等分する。
そして、中央領域501と周辺領域502を除き、中心が抜けた四角環状の領域がプリセットフォーカスエリア503である。
フォーカスエリア設定部322は、顔検出部321から顔検出エラー信号を受けた場合には、プリセットエリア記憶部323からプリセットフォーカスエリアの設定情報(座標値等)を読み出し、フォーカスエリアとして設定する。
【0028】
コントラスト算出部324は、フォーカスエリア設定部322にて設定されたフォーカスエリアのコントラスト値を算出する。
算出されたコントラスト値は、フォーカス判定部325に出力される。
【0029】
フォーカス判定部325は、コントラスト値が最高値(極大値)であるか否かを判定し、コントラスト値が最も高くなるようにレンズ位置を調整する。
すなわち、レンズ駆動モータ208に駆動信号を印加して可動レンズ201を変位させる。このとき、レンズ変位に伴って変化するコントラスト値をコントラスト算出部324から順次取得し、コントラスト値が最高になるレンズ位置を判定する。
このようにレンズを変位させつつコントラスト値を順次取得すると、例えば、図5のようなコントラスト曲線が得られる。
このとき、点Pの位置のときにコントラストが最高(極大)であり、このレンズ位置で目的の被写体にフォーカスが合っていることが判定できる。
この場合、フォーカス判定部325は、レンズ駆動モータ208に駆動信号を印加して、フォーカスが合うようにレンズ201を点Pの位置に調整する。
フォーカスが合ったところでユーザーがシャッターボタン104Bを全押しすると、画像処理部207からの画像データがCPU330を介して撮影処理部360に取り込まれ、必要な場合には画像データ記憶部106に記憶される。
【0030】
表示制御部340は、メイン表示部102およびサブ表示部105の表示制御を行う。
カメラモードでは、随時、カメラ部200から画像データが出力されており、この画像データがCPU330を介して表示制御部340へ入力され、メイン表示部102に表示される。
ユーザーはメイン表示部102を見ることにより、画像データの構図を確認しながらシャッターボタン104Bを操作して撮影する。
【0031】
撮影処理部360は、シャッターボタン104Bの「全押し」を契機としてカメラ部200からの画像データを取り込んで画像データ記憶部106に格納する。
【0032】
このような構成を備えるカメラ付き携帯電話機100におけるオートフォーカス処理を、図6を参照して説明する。
まず、ユーザーがカメラモードキー104Aを操作することにより、カメラ200が起動される。
カメラ200が起動されると、レンズ201を通してCCD回路202に結像した像が画像データとして画像処理部207から制御回路300に送られる。
すると、画像データは表示制御部340によりメイン表示部102に表示される。
【0033】
ユーザーは、メイン表示部102に表示される画像を見ながらレンズ201を被写体に向けて構える。
構図が決まったところで、ユーザーはオートフォーカス機能を作動させるためにシャッターボタン104Bを半押しする。
キー操作検出部310によってシャッターボタン104Bの半押しが検出される(ST100)。
すると、CPU330からの指令によりAF制御部320が起動され、オートフォーカス処理が開始される(ST101)。
【0034】
オートフォーカス処理にあたって、まず、顔検出が実行される(ST102)。
すなわち、画像データのなかから顔検出部321により顔面像が検出される。
顔検出に成功した場合(ST103:YES)、顔検出部321から顔位置データがフォーカスエリア設定部322に出力される(ST104)。
すると、フォーカスエリア設定部322は、顔位置にフォーカスエリアを設定する(ST105)(図15参照)。
【0035】
このように設定された顔位置のフォーカスエリア10においてコントラスト値が最高になるようにフォーカス合わせを実行する(ST106)。
すなわち、レンズ201を移動させながらフォーカスエリア10のコントラスト値を順次取得し、コントラスト値の最大値(極大)が得られる位置を求める。
レンズ駆動モータ208に駆動信号を印加して、フォーカスが合う位置にレンズ位置を調整する。
【0036】
フォーカス合わせに成功した場合(ST107:YES)、オートフォーカス制御の処理を終了する。
この状態でユーザーがシャッターボタン104Bを全押しにすると、画像データが取り込まれる。
この場合、被写体の顔にフォーカスが合った画像データが得られることになる。
【0037】
ここで、顔検出に失敗した場合(ST103:NO)、顔検出部321は、顔検出エラー信号をフォーカスエリア設定部322に送る。
すると、フォーカスエリア設定部322は、プリセットエリア記憶部323にプリセットされているエリア503をフォーカスエリアとして設定する(図4参照)。
すなわち、フォーカスエリア設定部322は、プリセットエリア記憶部323にプリセットされているエリア503の情報を読み出し(ST108)、このエリア503をフォーカスエリアとして設定する。
これにより、中央領域501および周辺領域502を除いたリング状のエリア503(図4参照)がフォーカスエリアとして設定される。
【0038】
このように設定されたプリセットのフォーカスエリア503においてコントラスト値が最高(極大)になるようにフォーカス合わせを実行する(ST106)。
フォーカス合わせに成功した後(ST107)、この状態でユーザーがシャッターボタン104Bを全押しにすると、画像データが取り込まれる。
この場合、プリセットエリア内にある被写体にフォーカスが合った画像データが得られることになる。
【0039】
次に、本実施形態の効果について説明する。
本実施形態では、プリセットエリア記憶部323に図4に示すプリセットエリア503が設定されており、顔検出に失敗した場合にはこのプリセットエリア503のコントラスト値が最大(極大)になるようにフォーカス合わせを実行する。
この場合、コントラスト値の計算を行うのはこの一つのエリア503だけである。
したがって、顔検出に失敗した場合、異なる複数のエリアごとに合焦レンズ位置を求める既存技術に比べ、フォーカス合わせに要する時間は短時間で済む。
【0040】
また、本実施形態におけるプリセットエリア503は、図4に示すように中央領域501および周辺領域502を除いたリング状のエリア503である。
したがって、顔検出に失敗した場合であっても、撮影目的である被写体に適切にフォーカス合わせを行うことができる。
この効果について説明する。
【0041】
例えば、図7にように二人の人物が並んでいる場合、図16に示したように、中央領域11だけのコントラスト値に基づいてフォーカス合わせを実行してしまうと、背後の遠景にフォーカスが合うだけで被写体である人物はピンボケになってしまう。
これでは、顔検出に失敗してしまうと、ピンボケ画像しか得られないことになる。
【0042】
また、撮像エリア全体をフォーカスエリアとし、撮像エリア全体でコントラスト値が最大(極大)になるように合わせることも考えられる。
しかしこの場合、被写体である人物以外の影響が大きく、的確なフォーカス合わせができない場合も少なくない。
例えば、図7のように二人の人物が並んでいる場合、人物以外の背景の領域がかなり広く、背景の方が全体の半分以上を占める。
この場合において、レンズ201を移動させながらコントラスト曲線を得ることとすると、背景の影響が大きいので、例えば図8に示すように、極大に向けての立ち上がりが緩くなり、さらに、極大を過ぎてからの下がりも小さくなる。
これでは、人物に焦点が合う点Pを極大と認識できず、遠景にフォーカスが合う点Rにレンズ位置を調整してしまう恐れが高い。
さらに、遠景の影響を受けると、人物に的確にフォーカスが合う点Pよりも少し後ろに極大が来てしまい、仮にコントラスト曲線の極大が認識できたとしても、被写体である人物にフォーカスを合わせることは難しい。
【0043】
これに対し、本実施形態では、図4のように、中央領域501および周辺領域502を除いたリング状のプリセットエリア503をフォーカスエリアとする。
すると、図9に示すようにフォーカスエリア503の半分以上は被写体である人物で占められる。
この場合において、レンズを移動させながらコントラスト曲線を得ることとすると、背景の影響がないかまたは非常に少ないので、図5に示したように、撮影目的である人物にフォーカスが合うレンズ位置で明瞭な最大値(極大)を示す。
これにより、人物にフォーカスを合わせた画像を得ることができるようになる。
【0044】
従来技術においては、人物が二人並んだ状態で顔検出に失敗した場合に、ピンボケ写真になりやすいという問題があった。
この点、本実施形態では、中央領域だけをフォーカスエリアとしたり、撮像エリア全体でフォーカス合わせを行うのではなく、図4のプリセットエリア503をフォーカスエリアとするので顔検出に失敗した場合でも被写体である人物にフォーカスを合わせた良好な画像データを取得することができる。
しかも、フォーカスエリアは一つだけであるので、フォーカス合わせの処理にかかる時間も短時間で済む。
【0045】
なお、一人の人物を撮影しようとする場合には、中央領域だけをフォーカスエリアとして設定した方がフォーカス合わせを正確にできることも多いと考えられる。
しかし、中央領域だけをフォーカスエリアとして設定してしまうと、二人の人物が並んでいる場合には、人物にフォーカスが合わなくなってしまう。
これに対し、本実施形態のプリセットエリア503をフォーカスエリアとして設定した場合、例えば図10に示すように、人物が一人であってもフォーカスエリア503の半分以上は撮影目的である人物で占められるので、被写体である人物に的確にフォーカス合わせが行われた画像が得られる。
このように、本実施形態のようにプリセットエリア503を設定したことにより、どのような撮影対象でも的確にフォーカス合わせができるようになる。
【0046】
遠景の風景を撮りたい場合、図4のフォーカスエリアに撮影目的の風景が十分に含まれることはもちろんであり、やはり遠景でも図4のフォーカスエリアによって的確にフォーカスが合った画像が得られる。
【0047】
このように本実施形態によれば、顔検出に失敗した場合でも短時間で目的とする被写体に的確にフォーカスが合った画像を得ることができる。
【0048】
また、プリセットエリアとしては、撮像エリアを格子状に分割したうちの中心および周辺を除くようにしているので、プリセットフォーカスエリアは矩形で構成される。
このようにプリセットエリアを矩形で構成することにより、コントラスト値の演算処理が簡便になる。
【0049】
プリセットエリアの形状としては次のようにしてもよい。
上記第1実施形態においては、撮像エリアの幅方向Wおよび縦方向Hをそれぞれ5等分し、中央領域501と周辺領域502を除き、中心が抜けた矩形のリング状領域503をプリセットフォーカスエリアとした。
ここで、プリセットフォーカスエリアを撮像エリアから抽出するにあたり、撮像エリアから中心領域501を除くところ、この中心領域501は撮像エリアの25分の1以上であることが好ましい。
すなわち、撮像エリア500の幅方向Wおよび縦方向Hをそれぞれ5等分したときの中心領域以上である。
これは図4に示した通りである。
また、図11に示すように、前記中心領域501は撮像エリアの9分の1以下であることが好ましい。
すなわち、図11に示すように、撮像エリアの幅方向Wおよび縦方向Hをそれぞれ3等分したときの中心領域以下である(図11参照)。
【0050】
また、撮像エリア500の周辺領域502を除くにあたっては、25分の16以上であることが好ましい。
すなわち、撮像エリア500の幅方向Wおよび縦方向Hをそれぞれ5等分したときの周辺領域以上である。
これは図4に示した通りである。
また、図12に示すように、前記周辺領域502は撮像エリアの9分の1以下であることが好ましい。
すなわち、図撮像エリアの幅方向Wおよび縦方向Hをそれぞれ3等分したときの中心領域以下である(図12参照)。
【0051】
上記実施形態では、撮像エリアから中心領域と周辺領域を除いてプリセットフォーカスエリアを設定する場合を例示したが、中心領域だけを除いたプリセットフォーカスエリアとしてもよい。
これによっても、人物が二人並んでいる場合に、中心の遠景に影響を受けてピンボケになるという不都合を解消することができる。
そして、好ましくは、周辺領域も除くことが好ましい。
撮像エリアの周辺領域に目的の被写体があることは少ないと想定されるので、周辺領域を除いたプリセットフォーカスエリアを設定することでより的確に撮像目標にフォーカスを合わせることができる。
【0052】
プリセットフォーカスエリアとしては、矩形の四角環状である場合を例示したが、例えば、図13に示すように、楕円形状から中心の楕円部分504を除き、円環状または楕円環状のプリセットフォーカスエリア505にしてもよい。
【0053】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を説明する。
第2実施形態の基本的構成は、第1実施形態に同様であるが、第2実施形態においてはシーン判別機能が付加されている点が異なる。
図14は、第2実施形態のフローチャートである。
第2実施形態においては、オートフォーカス処理が開始されると(ST101)、シーン判別を実行する(ST120)。
シーン判別は、被写体が遠景より手前にあるか否かを判別する機能であり、既存の技術によって実行できる。
そして、シーン判別において、被写体が遠景よりも手前にある場合には(ST121:YES)、顔検出に移行し、第1実施形態で説明したようにST102からST109が実行される。
【0054】
ここで、シーン判別(ST120)において、被写体が遠景より手前にない場合(ST121:NO)、フォーカスエリアを撮像エリア全体に設定する。
被写体が遠景より手前にないと判断される場合には、特定の被写体ではなく、撮像エリア全体が撮像目的であると考えられる。
このような場合、撮像エリア全体でコントラストが最適になるフォーカス合わせをすることがユーザーの目的に合致していると考えられるためである。
そして、撮像エリア全体でフォーカス合わせを行い(ST106)、フォーカスが合ったところで(ST107:YES)オートフォーカス処理を終了する。
【0055】
このような構成によれば、手前の被写体ではなく、遠景を撮影したい場合でも、自動的にユーザーの意図に適合したフォーカス合わせを行うことができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記第1実施形態および第2実施形態では、オートフォーカス処理に当たって、顔検出を実行する場合を例示したが、顔検出機能を備えていなくてもよい。
すなわち、オートフォーカス処理を行う場合には常にプリセットフォーカスエリアに基づくフォーカス合わせを実行するようにしてもよい。
もしくは、シーン判別を行って、遠景ではないものが被写体であると判定された場合には、常にプリセットフォーカスエリアに基づくフォーカス合わせを実行するようにしてもよい。
この場合、第1実施形態に比べ、顔検出の実行を開始してから顔検出の失敗が判明するまでの時間が必要なくなり、フォーカス合わせに要する時間がさらに短くなる。
そして、この場合でも、被写体である人物が一人であっても、被写体の人物が二人以上であっても、さらに、撮影目的が遠景であっても、被写体に対してほぼ適切にフォーカス合わせを行うことができる。
【0057】
撮像手段は、CCD回路に限らず、CMOSセンサであってもよいことはもちろんであり、その他のイメージセンサであってもよい。
カメラを搭載する小型電子機器は携帯電話機に限らない。例えば、携帯ゲーム機、PDA、携帯音楽プレーヤーなどであってもよいことはもちろんである。
シャッターキーの半押しによってオートフォーカス処理が開始される場合を例示したが、このような操作設定は各小型電子機器の仕様に応じて適宜決定されるものである。
【符号の説明】
【0058】
100…携帯電話機、101…スピーカ、102…メイン表示部、103…マイク、104…操作キー群、104A…カメラモードキー、104B…シャッターボタン、105…サブ表示部、106…画像データ記憶部、107…無線部、200…カメラ部、201…可動レンズ、202…CCD回路、203…CCDドライバ、204…露出制御部、205…信号増幅部、206…A/D変換器、207…画像処理部、208…レンズ駆動モータ、210…可動レンズ、300…制御回路、310…キー操作検出部、320…AF制御部、321…顔検出部、322…フォーカスエリア設定部、323…プリセットエリア記憶部、324…コントラスト算出部、325…フォーカス判定部、340…表示制御部、350…音声I/F部、360…撮影処理部、500…撮像エリア、501…中央領域、502…周辺領域、503…プリセットフォーカスエリア、504…楕円部分、505…プリセットフォーカスエリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に合焦するようにレンズの位置を調整するオートフォーカス制御方法であって、
撮像エリアのうち中心領域を除いたリング状の領域が合焦度を判定するフォーカスエリアとしてプリセットされており、
前記レンズおよび撮像手段を介して画像信号を取得し、
取得された前記画像信号に基づいて前記フォーカスエリアの合焦度を示すコントラスト値を算出し、
前記コントラスト値が極大になる位置を前記レンズの合焦位置とする
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載のオートフォーカス制御方法において、
前記中心領域の面積は、撮像エリアの全体面積の25分の1以上である
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のオートフォーカス制御方法において、
前記中心領域の面積は、撮像エリアの全体面積の9分の1以下である
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のオートフォーカス制御方法において、
前記フォーカスエリアは、さらに、撮像エリアから周辺領域を除いた領域である
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載のオートフォーカス制御方法において、
前記周辺領域は、撮像エリアの幅方向および縦方向をそれぞれ5等分したときの周辺部の領域の面積以上である
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のオートフォーカス制御方法において、
前記周辺領域は、撮像エリアの幅方向および縦方向をそれぞれ3等分したときの周辺部の領域の面積以下である
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のオートフォーカス制御方法において、
オートフォーカス処理は、常に前記フォーカスエリアに基づいてフォーカス合わせを実行する
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のオートフォーカス制御方法において、
オートフォーカス処理開始後、画像データのなかから顔検出を行い、
顔検出に成功した場合には、前記顔の領域をフォーカスエリアとして設定してフォーカス合わせを実行し、
顔検出に失敗した場合には、前記プリセットされたフォーカスエリアに基づいてフォーカス合わせを行う
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のオートフォーカス制御方法において、
オートフォーカス処理開始後、被写体が遠景よりも手前にあるか否かを判別するシーン判別を行い、
前記シーン判別の結果、被写体が遠景よりも手前にないと判定された場合には、撮像エリア全体をフォーカスエリアとしてフォーカス合わせを行い、
前記シーン判別の結果、被写体が遠景よりも手前に被写体があると判定された場合には、前記プリセットされたフォーカスエリアに基づいてフォーカス合わせを行う
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載のオートフォーカス制御方法において、
前記シーン判別の結果、被写体が遠景よりも手前に被写体があると判定された場合には、顔検出を実行し、前記顔検出に失敗した場合には、前記プリセットされたフォーカスエリアに基づいてフォーカス合わせを行い、前記顔検出に成功した場合には、前記顔の領域をフォーカスエリアとしてフォーカス合わせを実行する
ことを特徴とするオートフォーカス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−141374(P2011−141374A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1210(P2010−1210)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】