説明

オーバーヘッドコンベア

【課題】互いに隣り合う作業工程エリア間の一搬送距離を必要時に変更する作業が比較的容易で、しかも、管理が比較的容易でメンテナンスの頻度も比較的低いオーバーヘッドコンベアを提供する。
【解決手段】走行レール1に懸架されたハンガー装置2と、その上部より突設された搬送力受け部材3と、走行レール1の近傍に並列配備された駆動レール4と、前記駆動レール4に支持されるバー状主部材5とラック6とで形成されると共にレール長手方向Xに長い搬送力伝達杆7と、ラック6に噛合するピニオンギヤ8を駆動することで搬送力伝達杆7を一搬送距離S1の間で往復走行させる駆動手段9と、バー状主部材5の長手方向での所定箇所に締結され、搬送力伝達杆7の往動時に搬送力受け部材3を係止してハンガー装置2を一搬送距離S1だけ搬送させ、搬送力伝達杆7の復動時に離脱変位して搬送力伝達杆7を戻り移動させる係脱手段11と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品、例えば車両を生産する生産工場に配備されるオーバーヘッドコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の製品を生産するにあたり生産工場では、製品を完成するまでの製造ラインを複数の生産工程に区分けし、各生産工程でそれぞれ担当する組立て中間組立製品を組立て、最終的に製品を完成し、送り出している。このような生産工場は製品の種類、作業特性、作業量等を考慮して各生産工程の作業工程エリアの数や作業時間を設定し、各作業工程エリアに組立て中の中間組立製品を順次被搬送物として搬送するよう搬送施設を配備している。
【0003】
この搬送施設である、例えば、オーバーヘッドコンベアは互いに隣り合う作業工程エリア間の一搬送距離の間を所定移動時間かけて、被搬送物を載せた移動体であるハンガーを搬送移動させる。その上で各作業工程エリアにおいて搬送されてきた被搬送物である中間組立製品に対し所定の組立て作業を加えて完成度を高め、所定の作業時間の経過後に、再度、完成度を高めた中間組立製品を載せた移動体であるハンガーが次の作業工程エリアに向けて移動するという搬送作動を順次行っている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開平1−181615号公報)には、パワーチェーン方式を採用した搬送設備が開示される。ここには走行可能に案内されているパワーチェーンコンベア用レールと、このパワーチェーンコンベア用レールの下方に平行して延在されるパワーチェーンにより駆動する移動体であるトロリを案内するトロリ用レールとを備えたオーバーヘッドコンベアが開示される。
ここで、パワーチェーンは生産工場内の全作業エリアに順次対向するよう環状を成して連続配備され、駆動源により移動操作されることで、併設された走行レール側を走行するトロリに搬送力を加え、走行操作している。
【0005】
更に、特許文献2(特開2003−306143号公報)には、レール装置に支持案内され移動自在な移動体と、その上方に設けられた逆U字状の支持枠体と、その支持枠体の一方の下端部分に駆動部側の出力軸に取り付けられ移動体の受動面に当接可能な摩擦ローラと、支持枠体の他方の下端部分に取り付けられ移動体の他方の受動面に当接可能な受けローラと、を備えたローラ駆動方式の吊り下げ搬送設備が配備されている。
ここでの吊り下げ搬送設備で使用されている摩擦ローラはトロリ側の上部の受動面を受けローラと協働して挟持し、駆動源により回転駆動される摩擦ローラの回転により、トロリ側の上部に摩擦による搬送力を加え、これにより、トロリを生産工場内の複数の作業エリアに順次搬送するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−181615号公報
【特許文献2】特開2003−306143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のようにパワーチェーンを用いて移動体であるトロリに搬送力を加えるパワーチェーン方式のオーバーヘッドコンベアでは、生産工場内の複数の作業工程エリアと順次対向するようチェーンが環状を成して連続配備されることとなり、互いに隣り合う作業工程エリア間の一搬送距離を変更する必要が生じた場合に、変更作業に要する時間とコストが嵩みやすい。しかも、搬送力がチェーンを介してトロリ側に加わるため、経時的にチェーンに伸び変形が生じ、各生産工程での作業工程エリアに対する停止位置が経時的にずれ、メンテナンスの頻度が増えるという問題もある。
【0008】
一方、特許文献2のようにフリクションローラ式のオーバーヘッドコンベアでは、摩擦ローラや受けローラと移動体であるトロリ側の受動面との当接状態、磨耗状態が適正に維持されるように常に管理する必要があり、メンテナンスの頻度が増えるという問題がある。
【0009】
本発明は以上のような課題に基づきなされたもので、目的とするところは、互いに隣り合う作業工程エリア間の一搬送距離を必要時に変更する作業が比較的容易であり、しかも、駆動源側の送り移動装置の管理が比較的容易でメンテナンスの頻度も比較的低く、耐久性のあるオーバーヘッドコンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここでの本願請求項1の発明は、天井側に支持された走行レールに懸架され搬送物を積載搬送するハンガー装置と、前記ハンガー装置の上部に配備され搬送方向と直交する方向に突設された搬送力受け部材と、前記天井側に支持され前記走行レールの近傍に並列配備された駆動レールと、前記駆動レールに並列状を成して往復走行可能に支持されるバー状主部材及び該バー状主部材の側壁に一体結合されるラックとからなるレール長手方向に長い搬送力伝達杆と、前記ラックに噛合するピニオンギヤを回転駆動することで前記搬送力伝達杆を所定の一搬送距離の間で往復走行させる駆動手段と、前記バー状主部材の長手方向での所定箇所に締結され、搬送力伝達杆の往動時に前記搬送力受け部材を係止してハンガー装置を一搬送距離だけ搬送させ、搬送力伝達杆の復動時に搬送力受け部材から離脱変位して搬送力伝達杆を一搬送距離だけ戻り移動させる係脱手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本願請求項2の発明は、請求項1記載のオーバーヘッドコンベヤにおいて、前記バー状主部材の側壁に一体結合されるラックはレール長手方向に沿って所定長さの単体ラックを複数直列状に連結することで形成された、ことを特徴とする。
【0012】
本願請求項3の発明は、請求項1又は2記載のオーバーヘッドコンベヤにおいて、前記天井側に支持され前記走行レールの近傍に並列配備された補助レールと、前記ハンガー装置の上部枠部材に搬送方向と直交する方向に並列に枢支される補助ローラとを備え、前記ハンガー装置が走行レールに沿って走行すると同時に補助ローラが補助レールにころ接触して走行することを特徴とする。
【0013】
本願請求項4の発明は、請求項1、2又は3に記載のオーバーヘッドコンベヤにおいて、第1の搬送区間に配備された走行レールとレール長手方向が異なる第2の搬送区間に配備された走行レールとを湾曲区間に配備された湾曲走行レールにより連結し、前記湾曲区間における天井側に支持されると共に縦回転中心線回りに回転するアームを有したアーム回転装置を配備し、該アーム回転装置が前記第1の走行レールより湾曲区間の湾曲走行レールにハンガー装置が達するのを検知すると前記アームを回転駆動させてその回動端により搬送力受け部材に搬送力を加えることを特徴とする。
【0014】
本願請求項5の発明は、請求項1、2又は3に記載のオーバーヘッドコンベヤにおいて、第1の搬送区間に配備された走行レールとレール長手方向が異なる第2の搬送区間に配備された走行レールとを湾曲区間に配備された湾曲走行レールにより連結し、ハンガー装置の上部より走行レールの上方に突き出すように突状搬送力受け部材を形成し、前記天井側に支持され前記湾曲走行レールより上方に並列配備した湾曲ガイドレールに湾曲部チェーン駆動装置により送り移動される下向きの係合片を走行可能に支持し、前記湾曲部チェーン駆動装置が前記第1の走行レールより湾曲区間の湾曲走行レールにハンガー装置が達するのを検知すると前記下向きの係合片により突状搬送力受け部材に搬送力を加えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、駆動レールに支持される搬送力伝達杆のラックを駆動手段がピニオンギヤを回転駆動することで一搬送距離だけ往復走行させ、この際、係脱手段が搬送力受け部材を介して走行レールに懸架されているハンガー装置を搬送方向に一搬送距離だけ搬送させ、復動時に搬送力受け部材より離脱して搬送力伝達杆を一搬送距離だけ戻り移動させるという一搬送サイクルの送り駆動を行うようにした。このため、一搬送サイクルの送り駆動を所定経過時間ごとに繰り返すことでハンガー装置に積載する搬送物を一の作業工程区画から一搬送距離だけ離れた隣の作業工程区画に順次搬送することができる。
更に、バー状主部材に支持された係脱手段のそれぞれ互いに隣り合う係脱手段の間隔となる一搬送距離を修正変更する場合には、バー状主部材の一端の係脱手段に対して、順次隣り合う係脱手段との相対距離を変更前の距離に修正長さ分を増減した新しい一搬送距離を順次確保するように、複数の係脱手段の取り付け位置を修正し、バー状主部材に締結することで修正変更できる。さらにこれに伴い、ピニオンギヤの回転数を調整すればよく、一搬送距離の変更を比較的容易に行え、メンテナンス性が良好となる。
【0016】
請求項2の発明は、レール長手方向に長い搬送力伝達杆の要部をなすラックを製作する際に、比較的短く製作が容易な単体ラックを複数作製しておき、これをバー状主部材の側壁に直列状を成すように順次一体結合すればよく、比較的作業性よく製作できるし、部分的な経時劣化が生じた場合、容易に交換を行うことができる。
【0017】
請求項3の発明は、ハンガー装置が走行レールと補助レールとに荷重を分散させた状態で搬送方向に走行できるので、ハンガー装置の横揺れを抑えて前記係脱手段と搬送力受け部材との係脱状態を安定して保持できる。
【0018】
請求項4の発明は、ハンガー装置が第1の搬送区間から湾曲区間に移動されると、アーム回転装置が駆動してアームの回動端によりハンガー装置に搬送力を加え、湾曲区間の湾曲走行レールに沿ってハンガー装置を第2の搬送区間の走行レールに容易に方向転換して搬送できる。このため、第1、第2の搬送区間を互いに異なる方向に配備でき、工場内の搬送路のレイアウトを多様化できる。更に、第1、第2の搬送区間と湾曲区間のいずれでも搬送力受け部材に対して搬送力を加えることができ、搬送力受け部材を共用化できる。
【0019】
請求項5の発明は、ハンガー装置が第1の搬送区間から湾曲区間に移動されると、湾曲部チェーン駆動装置が湾曲走行レールに支持されたハンガー装置側に搬送力を加え、ハンガー装置を第2の搬送区間の走行レールに容易に方向転換して搬送できる。この場合、特に、湾曲走行レールの曲率を一定でなく、段階的に変更した曲率で形成しても良く、この点で下流側湾曲区間のレイアウト上の自由度が増す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1のオーバーヘッドコンベヤのハンガー装置の側面構成図である。
【図2】図1のオーバーヘッドコンベヤのハンガー装置の正面要部構成図である。
【図3】図1のオーバーヘッドコンベヤの要部である走行レール及び駆動手段の拡大要部側面図である。
【図4】図1のオーバーヘッドコンベヤの要部である駆動手段の拡大側面図である。
【図5】本発明の一実施形態としてのオーバーヘッドコンベヤの平面全体構成図である。
【図6】本発明の一実施形態としてのオーバーヘッドコンベヤの側面全体構成図である。
【図7】本発明の一実施形態としてのオーバーヘッドコンベヤで用いる搬送力伝達杆の全体構成図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図8】図1のオーバーヘッドコンベヤの搬送力伝達杆に取り付けられた係脱手段の挙動を説明する図で、(a)第1態様での要部側面図、(b)第2態様での要部側面図、(c)第3態様での要部側面図、(d)要部平面図である。
【図9】図1のオーバーヘッドコンベヤの下流側搬送区間での係脱手段と搬送力受け部材の挙動を示し、(a)第1態様での要部説明図、(b)第2態様での要部説明図、(c)第3態様での要部説明図である。
【図10】図1のオーバーヘッドコンベヤの下流側搬送区間での係脱手段を示し、(a)は拡大部分側面、(b)は部分切欠平面図である。
【図11】図1のオーバーヘッドコンベヤの湾曲走行レール部分でのアーム回転装置の概略構成図である。
【図12】本発明の他の実施形態としてのオーバーヘッドコンベヤで用いる湾曲走行レール部分の湾曲部チェーン駆動装置の概略構成図である。
【図13】図1のオーバーヘッドコンベヤで用いる昇降機であるホイスト装置の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には本発明の一実施形態としてのオーバーヘッドコンベヤを示した。このオーバーヘッドコンベヤは車両生産工場の搬送設備として採用されており、図5に全体構成を示した。
オーバーヘッドコンベヤは環状の搬送路Rを備え、その搬送路Rに沿って被搬送物としての組立て中の中間組立て車体Wを載せた移動体であるハンガー装置2を巡回させている。
環状の搬送路Rは、図5において、搬送方向Xが反時計方向に向かうように形成されている。搬送路Rの一部には供給側搬送路Rsと交差する車体供給位置Sp1が設定され、搬送路Rの他の一部には排出側搬送路Reと交差する車体排出位置Sp2が設定され、車体排出位置Sp2より搬送方向Xに沿い車体供給位置Sp1側に向かう部分は待機区間Eoとして形成される。この待機区間Eoは複数のハンガー装置2が被搬送物を載せない空状態で互いに接近して空移動可能に搬送される。車体供給位置Sp1より車体排出位置Sp2の間に複数の作業工程区画Ea1〜Ec4が配設されている。
【0022】
車体供給位置Sp1では搬送路Rに供給側搬送路Rsが互いに上下に離れて干渉しない状態で直交して配備される。ここに供給側搬送路Rsを成すレール部材に案内されて走行する台車Tsが移動し、車体供給位置Sp1に停止できる。一方、搬送路Rの待機区間Eoからは一のハンガー装置2が被搬送物を載せない空状態で移動操作され、停止状態に保持される。
図5において、車体供給位置Sp1には台車Tsにより中間組立製品である溶組前の車体W(例えばアンダーボデー)が供給される。その台車Ts上の車体Wは車体供給位置Sp1に設けた昇降装置である供給側ホイスト装置30により降下位置に保持されている空状態のハンガー装置2により把持され、その上で供給側ホイスト装置30により車体Wを上昇させ、搬送路R側に移動保持した上で以後の搬送路Rに沿っての移送制御が不図示の制御装置により行われている。
【0023】
一方、車体排出位置Sp2には、ハンガー装置2により所定工程の組立てが完了した完成車体W1が搬送される。ここでは、ハンガー装置2上の完成車体W1を車体排出位置Sp2に設けた排出側昇降装置であるホイスト装置33が降下させ、排出側搬送路Reのスライド装置32(図5参照)に載置させる。
ここで、ホイスト装置33は、供給側ホイスト装置30とほぼ同
様の構成を採る。すなわち、図13に示すように、後述の走行レール1の所定分割部分1mの前後2箇所を前後昇降基枠201に一体的に装着され、その昇降基枠201の左右4角を4本のケーブル202(図13では2本のみ図示した)により連結し、懸架する。4本のケーブル202の他端側はウインチ機構203(図5参照)に連結され、ウインチ機構203の駆動に応じて、前後昇降基枠201と一体の走行レール1の分割部分1mを上下操作し、走行レール1に懸架された車体wを昇降作動できる。
【0024】
図13に示すように、ホイスト装置33により下端位置dtに向けて降下した走行レール1側のハンガー装置2は車体wをフロア側のスライド装置32に載置する。ここで、下端位置dtに降下すると、ハンガー装置2を把持状態より開放作動し、車体Wより離脱する。その上で、分割部分1mに支持されたハンガー装置2はホイスト装置33による上昇作動により搬送路Rの位置より更に上側の上端位置htに達する。
ここで、走行レール1の所定分割部分1mは待機区間Eoに続く屈曲搬送装置34側の走行レール35に連続するように対向配備される。このため、走行レール35に沿って空のハンガー装置2は屈曲搬送装置34側の環状チェーン搬送手段chr(図5に2点差線で示す)の搬送力を受けて車体供給位置Sp1側に移動される。
【0025】
一方、スライド装置32に載置された完成車体W1は、スライド装置32が完成車体W1を横方向(図5中の符号B参照)にスライド移動され、送出位置EXに完成車体W1を載置する。
なお、排出側昇降装置であるホイスト装置33に対し、供給側ホイスト装置30はフロア側の車体をハンガー装置2により把持した上で搬送路Rに対向させるよう移動させるものであり、ほぼ同様の構成を採り、ここでは重複説明を略す。
次に、車体排出位置Sp2と車体供給位置Sp1とを結ぶ屈曲搬送装置34を図5に沿って説明する。
【0026】
屈曲搬送装置34は車体排出位置Sp2にある空のハンガー装置2を屈曲状に配備された待機区間Eoに沿って搬送し、車体供給位置Sp1に戻すように作動する。その際の搬送操作力は屈曲搬送装置34が有する環状チェーン搬送手段chr(図5参照)側から搬送力を受けることで、搬送方向に駆動できる。ここで、屈曲搬送装置34は、循環駆動する環状チェーン搬送手段chr(図5参照)と、その環状チェーン搬送手段chrに設けられた不図示のフックによりハンガー装置2の搬送力受け部材3(図3参照)を押圧して車体供給位置Sp1に移動するよう機能できればよく、周知のチェーン搬送装置を用いることができる。
【0027】
次に、車体供給位置Sp1より搬送方向X側に位置する車体組立てエリアを図5に沿って説明する。
この車体組立てエリアは、車体供給位置Sp1より延びる直状の上流側搬送区間Luと、上流側湾曲区間Lr1と、中流側搬送区間Lmと、下流側湾曲区間Lr2と、下流側搬送区間Lnと、下流端である図6において右端の車体排出位置Sp2とが連続して設けられている。
【0028】
ここで、上流側搬送区間Luの右端の車体供給位置Sp1より搬送路Rに沿って搬送されるハンガー装置2は上流側搬送区間Lu(上流域における第1の搬送区間L1)で複数の作業工程区画(Ea1〜Ea3)に順次搬送され停止される。この上流側搬送区間Luに続く上流側湾曲区間Lr1で方向を変更されたハンガー装置2は次の中流側搬送区間Lm(上流域における第2の搬送区間L1であると共に下流域における第1の搬送区間L1でもある)に搬送される。ここで複数の作業工程区画(Eb1〜Eb3)に順次搬送停止される。この中流側搬送区間Lmに続く下流側湾曲区間Lr2で方向を変更されたハンガー装置2は次の下流側搬送区間Ln(下流域における第2の搬送区間L2)に搬送され、ここで複数の作業工程区画(Ec1〜Ec4)に順次搬送停止される。
【0029】
各作業工程区画(Ea1〜Ec4)では各工程毎に設定されている組立て作業が行われ、中間組立て車体Wが完成度を増して次の作業工程区画に搬送されている。この作業時間は上流側搬送区間Lu、中流側搬送区間Lm、下流側搬送区間Lnでの各作業工程区画(Ea1〜Ec4)において、それぞれ同一時間に設定される。このため、各作業工程区画(a1〜an)では同時に組立て作業が成され、同時に終了され、同時に次の搬送工程への中間組立て車体を載せたハンガー装置2の搬送が成されている。
【0030】
ところで、図5に示すように、環状の搬送路Rのうち、上流側搬送区間Lu、中流側搬送区間Lm、下流側搬送区間Lnにはそれらの天井側に支持された走行レール1(図2参照)が環状に配備される。更に、これらを互いに結ぶ上流側湾曲区間Lr1、下流側湾曲区間Lr2、待機区間Eoにはそれらの天井側に支持された湾曲走行レール18(図11参照)及び屈曲走行レール35(図5参照)が配備される。これら走行レール1や湾曲走行レール18や屈曲走行レール35は隣り合うもの同士が相互に連結され、全体として環状の走行レール列を形成し、これにより複数のハンガー装置2が天井側に懸架にされた状態で環状の搬送路Rに沿って搬送方向Xに走行可能に支持された状態が保持されている。
【0031】
図5に示すように、第1の搬送区間L1としての中流側搬送区間Lmや、第2の搬送区間L2である下流側搬送区間Lnには、図2に示すように、天井側に支持された走行レール1が配備され、走行レール1の近傍には直状搬送装置37の要部である駆動レール4が併設される。
更に、上流側湾曲区間Lr1、下流側湾曲区間Lr2には図11に示すような湾曲搬送装置であるアーム回転装置21が併設される。図5において右端側に位置する待機区間Eoには天井側に支持された屈曲搬送装置34の要部である環状チェーン搬送手段chrが併設される。
ここで、図5に示すように、車体組立てエリアは上流側搬送区間Luを第1の搬送区間L1とし、これが上流側湾曲区間Lr1を介して中流側搬送区間Lmである第2の搬送区間L2に接続する上流域を備えると見做せる。更に、中流側搬送区間Lmを第1の搬送区間L1とし、これが下流側湾曲区間Lr2を介して下流側搬送区間Lnである第2の搬送区間L2に接続する下流域を備えると見做せる。
【0032】
この車体組立てエリアにおける上流域と下流域とは同様の構成を多く採り、以下の説明では、第1の搬送区間L1とし中流側搬送区間Lmを、第2の搬送区間L2とし下流側搬送区間Lnを主に説明し、重複説明を簡略化する。
まず、上流側搬送区間Lu、中流側搬送区間Lm、下流側搬送区間Lnにはそれぞれオーバーヘッドコンベヤの要部を成す直状搬送装置が配備されるが、ここでは下流側搬送区間Lnの走行レール1及び直状搬送装置37と、その搬送路Rの上流側の下流側湾曲区間Lr2に配備の湾曲走行レール18及びアーム回転装置21を代表して説明する。
図5に示すように、オーバーヘッドコンベヤの下流側搬送区間Lnより搬送路Rに沿って上流側に下流側湾曲区間Lr2が配備される。
【0033】
図11に示すように、下流側湾曲区間Lr2には天井側に逆U字型のブラケット38を介して支持された湾曲走行レール18が配備される。湾曲走行レール18の一端は中流側搬送区間Lm(図5参照)の走行レール1側に連結され、他端は下流側搬送区間Lnの走行レール1に連結される。更に、下流側湾曲区間Lr2には湾曲搬送装置であるアーム回転装置21(図11参照)が併設される。
図11に示すように、アーム回転装置21は工場構造体に設けられた縦支持部材53に上下部を枢支部材541を介して枢支された回転軸54と、回転軸54を回転駆動する回転駆動手段55と、回転軸54より延びるアーム19と、アーム19の回動端に形成された押圧部材191とを有する。回転駆動手段55は不図示の制御手段により回転制御される。
【0034】
ここで図5に示す中流側搬送区間Lmの走行レール1との受け渡し位置Sprに、ハンガー装置2が達したのを検知すると、回転駆動手段55が受け渡し位置Sprより上流側の待機位置Sprf(不図示)より揺動して、押圧部材191を回転駆動し、搬送力受け部材3に当接して押圧力を加える。この際、搬送力受け部材3側のハンガー装置2を縦回転中心線Lc1回りに回動させ、下流側湾曲区間Ln側の受け取り位置である搬送開始位置D1(図5参照)に搬送する。なお、回転駆動手段55は搬送開始位置D1にアーム19を揺動させると、その後、逆転作動して、アーム19を待機位置Sprf(不図示)に戻して、待機状態に入るよう制御される。
ところで、図2、3に示すように、オーバーヘッドコンベヤには、走行レール1とそれに併設された直状搬送装置37とが配備される。
【0035】
走行レール1は断面コ字形で互いに所定間隔を隔てて対向配備され、搬送方向(レール長手方向と同じ)Xに長い一対の部材により形成される。一対の断面コ字形部材から成る走行レール1は天井側に支持された逆U字型のブラケット38の両下端に片方ずつ結合され、全体は下流側搬送区間Lnにおいて複数のブラケット38を介して天井側に支持されている。図1、2に示すように、走行レール1を成す一対の断面コ字形部材には転動可能にローラ対39が嵌着され、ローラ対の枢軸は垂下片41を介してトロリ13に連結される。トロリ13は前後のローラ対39を介して走行レール1に確実に移動可能に嵌着される。
【0036】
ここで、搬送方向Xに所定間隔を介して一対のトロリ13が配備され、これらの下部がハンガー装置2の上部枠部材16に2点で連結される。これによりハンガー装置2が前後一対のトロリ13を介して走行レール1側に移動可能に懸架状態で連結される。
上部枠部材16は、図1に示すように、搬送方向Xに長い中央部材161と中央部材161の前後下端に一体結合される基枠部材162とで要部が形成される。また、図3に示すように、上部枠部材16の上部の中央部材161の一側からは搬送方向Xと直交する方向に搬送力受け部材3が突設される。搬送力受け部材3は基部301とこれに縦ピン302を介し連結された可動部303とを備える。図9に示すように、基部301に対し可動部303の揺動端は後方(搬送方向Xと逆の方向)への揺動のみを許容され、前方へは凸部304により揺動を阻止され、ばね305により可動部303が凸部304に当接するように付勢されている。
このため、図8(a)、図9(a)に示すように、可動部303には後述の搬送力伝達杆7側のバー状主部材5に締結された係脱手段11が係合可能に形成される。ここで、図8(b)、図9(b)に示すように、バー状主部材5より係脱手段11を介して前側(搬送方向Xでもある)fdへの搬送力Fが可動部303を介してハンガー側に伝達できる。なお、具体的作動は後述する。
【0037】
次に、ハンガー装置2を説明する。
図2に示すように、ハンガー装置2は上部枠部材16の一部である前後横向きバー42を備え、一対の前後横向きバー42の各両端部に枢支部材43を備え、左の前後枢支部材43に左ハンガーアーム44を、右の前後枢支部材43に右ハンガーアーム44を揺動可能に支持する。左右のハンガーアーム44はその上端を枢支端として形成され、上位端側の枢支部には先端にローラ443を備えた操作片444が突設され、下端の回動端に車体下部を載置する前後の載置部441,442が形成される。
ここで、操作片444は車体供給位置Sp1や車体排出位置Sp2に進入した場合において、不図示のアーム閉鎖部材やアーム開放部材に当接することで、閉鎖力や開放力を受け、左右のハンガーアーム44を閉鎖位置(図2で実践で示す位置)や開放位置(図2で2点差線で示す位置)に揺動操作できるように形成されている。
【0038】
各ハンガーアーム44の前後載置部の内、前載置部441はアーム側に固定される。後載置部442はアーム側部材442aとこれに縦向きピン442bを介して可動載置台442cとで形成される。可動載置台442cは車種に応じて退避位置q1と使用位置q2とに切換えられ、小型車体では使用位置q2に切換え保持され、大型車体では退避位置q1に切換え保持される。なお、図1、2には使用位置q2での状態が示され、2点差線で退避状態q1が示される。
ハンガー装置2の一部である前後横向きバー42の各枢支部材43には、上方延出部431が形成され、そこに横向きの枢軸432が取り付けられ、枢軸432の左右端それぞれに補助ローラ17が枢着される。この左右各一対の補助ローラ17は、走行レール1の近傍に並列配備された左右補助レール15(図2参照)に転動可能に嵌着される。左右補助レール15は断面コ字形で互いに所定間隔を隔てて対向配備され、搬送方向(レール長手方向と同じ)Xに長い一対の部材により形成される。一対の断面コ字形部材から成る左右補助レール15はそれぞれ枠状ブラケット45を介して天井側に支持される。
【0039】
ハンガー装置2は左右補助レール15に補助ローラ17を介してころ接触して走行することで、ハンガー装置2の過度の横揺れを抑制でき、特に、ハンガー装置2の横揺れを抑えて係脱手段11と搬送力受け部材3との係脱状態を安定させるように機能できる。
次に、図5、6に示すように、オーバーヘッドコンベヤの下流側搬送区間Lnは、4つの作業工程区画(Ec1〜Ec4)とその前の搬送開始位置D1(受け取り位置)と後端の車体排出位置Sp2とに順次、中間組立車体を載せたハンガー装置2を一搬送距離S1ずつ送り移動させ、それら全域に走行レール1と併設された直状搬送装置37を配備することで搬送駆動力を付与するようにしている。
【0040】
図3に示すように、直状搬送装置37は断面コ字形で互いに所定間隔を隔てて対向配備され、搬送方向(レール長手方向と同じ)Xに長い一対の部材により形成された駆動レール4と、駆動レール4と締結される保持部材46を天井側に取り付ける懸架ブラケット49とを備える。なお、駆動レール4は下流側搬送区間Lnにおいて複数箇所を懸架ブラケット49を用いて天井側に取り付け支持されている。
駆動レール4の一対の断面コ字形部材には互いが枢軸の両端に枢支された状態の駆動側ローラ対47が嵌着され、該ローラ対47の枢軸は下方凸部48(図3参照)の上部に支持され、下方凸部48の下部は、駆動レール4に並列状を成して往復走行可能に支持される搬送力伝達杆7側と一体結合されている。
搬送力伝達杆7は要部を成すバー状主部材5を備え、このバー状主部材5は下流側搬送区間Ln全域にわたり連続配備される断面矩形部材であり、その側壁にラック6を一体結合する。ここで、ラック6とバー状主部材5とでレール長手方向(レール長手方向と同じ)Xに長い搬送力伝達杆7が形成されている。
【0041】
図5、6に示すように、4つの作業工程区画(Ec1〜Ec4)とその前の搬送開始位置D1(受け取り位置)と後端の車体排出位置Sp2とに亘って搬送力伝達杆7が配備される。図10に示すように、この搬送力伝達杆7は、単一バー状部材を成し、複数箇所のローラ対47を介して駆動レール4(図3参照)に一搬送距離S1での往復動可能に支持される。
図7に示すように、ここでのバー状主部材5は一搬送距離S1に近い長さを2分割した長さの前部5fと後部5rが互いに突合わされ、突合せ位置が一対の連結補助片709を用いて互いにボルト締結により一本化されている。
【0042】
更に、図8(d)に示すように、バー状主部材5の側面に重ねてボルト止めされたラック6はラック自体の歯切り加工や搬送を容易化できる程度の比較的短い長さm1(図7参照)の部材として形成される。その上でバー状主部材5の側面に各ラック6のラック歯のピッチを一定に保持した状態で、順次直状に連続配備され、複数のボルトでバー状主部材5の側面に締結され、単一のラック6として形成されている。
図7に示すように、単一のラック6を備えたバー状主部材5の上面の複数箇所にはローラ対47が枢支され、下面の複数箇所、即ち、バー状主部材5にはその長手方向で作業工程区画Ec1から作業工程区画Ec4までの4箇所と対向するよう同様の係脱手段11がそれぞれ配備され、それぞれボルトにより締結されている。
ここで、図10(a),(b)に示すように、駆動側ローラ対47は枢軸を介してバー状主部材5の上面にローラブラケット48を介してボルト止めされる。ローラブラケット48は前後端がボルト止めされ、中間部に凹部481が形成される。ここ係脱手段11を締結するボルトの嵌合部が形成される。
【0043】
図10(a),(b)に示すように、係脱手段11は同一構成の一対の対向部材からなる。その一方は、図10(a),(b)に示すように、基部111とその左右端より下方に伸びる枢支部112が形成され、枢支部112に係止片113が所定量揺れ変位可能にピン結合される。基部111にはレール長手方向に長い取り付け孔114が形成される。このため、取り付け孔114とバー状主部材5に嵌挿されたボルトV1により、基部111が下面に重ねて締結される。なお、ボルトV1と取り付け孔114との相対位置を調整することで、係脱手段11を前後に所定量Zのずれ変位させることができ、これにより各作業工程エリヤに対する位置ずれを微調整できるようにしている。
係脱手段11は一対の対向部材により一対の係止片113を対向状に下方に突出するよう構成されている。ここで一対の係止片113は枢支部112に対し所定幅の揺動を許容され、両者間に搬送力受け部材3の可動部303を変位可能に嵌合するよう形成される。
【0044】
ここで係脱手段11とハンガー装置2側の可動部303の作動を図8(a)〜(c)、図9(a)〜(c)に沿って説明する。
【0045】
図8(a)に示すように、一の作業工程区画(例えばEc1)で待機する一のハンガー装置2側の搬送力受け部材3に対して後係止部材113(図中左が後方)が戻り作動bdしてくるとする。
この場合、作業工程区画Ec1で待機する一のハンガー装置2側の搬送力受け部材3と後係止部材113が当接する。するとハンガー側の可動部303が揺動し(図8(a)、図9(a)参照)、これを乗り越えた後係止部材113は前係止部材113との間に可動部303を嵌合状態で保持できる。
【0046】
次に、図8(b)、図9(b)に示すように、係脱手段11が可動部303を嵌合した状態で前方移動fd(搬送方向Xに移動)すると、バー状主部材5より係脱手段11を介して、可動部303側の上部枠部材16に搬送力Fを加えることができる。これにより、作業工程区画Ec1から作業工程区画Ec2へハンガー装置2を搬送できる。なお、この時点で、先に作業工程区画Ec2にあったハンガー装置2も作業工程区画Ec3に一斉に移動しており、作業工程区画Ec2はからの状態にあり、そこに、作業工程区画Ec1にあったハンガー装置2が一搬送距離S1を移動して搬送されることとなる。
【0047】
次に、一搬送距離S1の搬送作動後、作業工程区画Ec2に達したバー状主部材5側の係脱手段11のみが、作業工程区画Ec2から作業工程区画Ec1へ戻る作動に入るとする。
この場合、図8(c)、図9(c)に示すように、作業工程区画Ec2と対向するバー状主部材5側の前後の係止部材113、113の間に可動部303が嵌合状態にあり、この状態より係止部材113が戻り作動bdすると、ハンガー側の可動部303が後方揺動し、後係止部材113は可動部303を後方に向けて乗り越え、バー状主部材5が戻り作動bdを継続できる。
この際、ハンガー装置2側は可動部303が揺動するのみで、作業工程区画Ec2に保持されることとなる。
【0048】
更に、一搬送距離S1の戻り作動後、バー状主部材5が作業工程区画Ec1に戻ると、再び、戻り作動bdしてくる後係止部材113が、新たに作業工程区画Ec1に達している次のハンガー装置2の可動部303を揺動させて乗り越え、前後の係止部材113,113の間に可動部303を嵌合状態で保持でき、次に行われる作業工程区画Ec1から作業工程区画Ec2へのハンガーの搬送待機の状態を維持することとなる。
【0049】
なお、ここでは、搬送力伝達杆7のバー状主部材5側にはその長手方向で作業工程区画Ec1から作業工程区画Ec4までの4箇所と対向する部位に同様の係脱手段11がそれぞれ配備されている(図7には一搬送距離S1間の前後2つの係脱手段11のみを示した)。
このため、搬送力伝達杆7側のバー状主部材5に支持された4箇所の係脱手段11が一搬送距離S1の往復動を繰り返す毎に、作業工程区画Ec1〜作業工程区画Ec4(図5参照)に待機している各ハンガー装置2をそれぞれ一搬送距離S1だけ搬送させ、作業工程区画Ec2〜作業工程区画Ec4及び車体排出位置Sp2に同時に搬送できる。
次に、図7に示すように、搬送力伝達杆7の一部には駆動手段9が対向配備される。この駆動手段9は図3、4に示すように、モータ901、減速機902、ピニオンギヤ8とを備える。
【0050】
モータ901は不図示の制御手段に制御され、搬送指令に応じて所定の搬送時間正回転して搬送開始位置(例えば、作業工程区画Ec1)D1から一搬送距離S1だけラック6を備えた搬送力伝達杆7を搬送移動させて搬送停止位置(例えば、作業工程区画Ec2)D2に移送し、逆に、戻し指令を受けると所定の戻し搬送時間逆回転して搬送停止位置D2より一搬送距離S1だけラック6を備えた搬送力伝達杆7を戻し搬送して搬送開始位置D1に戻し移動させる。
【0051】
このような搬送力伝達杆7の往動時において、4つの作業工程区画(Ec1〜Ec4)と対向する各ハンガー装置2が搬送力伝達杆7側からの搬送力を受けて一搬送距離S1だけ隣の各作業工程区画(Ec2〜Ec4及び車体排出位置Sp2)に車体wを移動させる。そこでの停止時間(所定経過時間)に各組立て作業が成される。更に、その停止時間中に搬送力伝達杆7側が一搬送距離S1だけ戻り駆動し、次の一搬送距離S1の搬送駆動の待機をすることとなる。
【0052】
このような一搬送サイクルの搬送作動を繰り返すことで、ハンガー装置2に支持された車体wはその完成度を順次増し、図5中の下流側搬送区間Lnにおいて、右端側の車体排出位置Sp2に順次搬送される。この車体排出位置Sp2において、完成車体W1が検出されると、図13に示すように、排出側昇降装置であるホイスト装置33が駆動し、左右のハンガーアーム部202が配した完成車体W1を降下させ、排出側搬送路Reのスライド装置4に載置させる。その直後、ハンガーアーム部202が開放作動し、空のハンガー装置2はホイスト装置33により上昇し、搬送路Rより更に上方の屈曲搬送装置34との対向位置である上端位置htに切換え保持される。これによって、走行レール1の所定分割部分1mは待機区間Eoに続く屈曲搬送装置34側の走行レール101に連続するように対向配備される。このあと、屈曲搬送装置34側の走行レール101に沿って空のハンガー装置2は環状チェーン搬送手段chr(図5に2点差線で示す)により車体供給位置Sp1側に移動される。
【0053】
一方、車体wを載置したスライド装置32は完成車体W1を横方向(図5中の符号B参照)にスライド移動させ、送出位置EXに完成車体W1を載置することができる。
以上のように、駆動手段9によりピニオンギヤ8を正転、逆転駆動することで、搬送力伝達杆7のラック6を一搬送距離S1だけ往復走行させるという一搬送サイクルの駆動を行う際、係脱手段11が搬送力受け部材3を介して走行レール1に懸架されているハンガー装置2を搬送方向Xに一搬送距離S1だけ搬送させ、復動時に搬送力受け部材3より離脱して搬送力伝達杆7を一搬送距離S1だけ戻り移動させるという一搬送サイクルの送り駆動を行うようにした。このため、一搬送サイクルS1の送り駆動を所定経過時間ごとに繰り返すことでハンガー装置2に積載する車体等の搬送物を一の作業工程区画Ea1対向位置から一搬送距離S1だけ離れた隣の作業工程区画Ea1対向位置に順次搬送することができる。
【0054】
更に、隣り合う作業工程区画(例えば、Ec1、Ec2)間の一搬送距離S1を変更する場合、即ち、バー状主部材5に支持された係脱手段11のそれぞれ互いに隣り合う係脱手段11の間隔となる一搬送距離S1を修正変更するとする。この場合には、図7に示すように、バー状主部材5の一端の係脱手段11の締結位置Jに対して、順次隣り合う係脱手段11の締結位置Jとの相対距離を変更前の距離に修正長さ分Dlを増減した新しい一搬送距離S1’の締結位置J’(例えば、図7の符号J’参照)に締結する。
この場合、複数の係脱手段11の締結位置J’を順次修正し、バー状主部材5に締結することで修正変更できる。さらにこれに伴い、ピニオンギヤの回転数を調整すればよく、一搬送距離S1の変更を比較的容易に行え、メンテナンス性が良好となる。
【0055】
更に、レール長手方向に長い搬送力伝達杆7の要部をなすラック6を製作する際に、比較的短く製作が容易な単体ラック601を複数作製しておき、これをバー状主部材5の側壁に直列状を成すように順次一体結合すればよく、比較的作業性よく製作できる。
更に、ハンガー装置2が走行レール1と補助レール15とに荷重を分散させた状態で搬送方向Xに走行できるので、ハンガー装置2の横揺れを抑えて係脱手段11と搬送力受け部材3との係脱状態を安定して保持できる。
更に、第1の搬送区間例えば中流側搬送区間Lmと、第2の搬送区間例えば下流側搬送区間Lnとの各走行レール1を湾曲区間Lrの湾曲走行レール18により連結した上で、アーム回転装置21がハンガー装置2に搬送力を加え、湾曲区間Lrの湾曲走行レールに沿ってハンガー装置2を容易に方向転換して搬送できる。このため、第1、第2の搬送区間を互いに異なる方向に配備でき、工場内の搬送路のレイアウトを多様化することができる。
【0056】
上述のところにおいて、中流側搬送区間Lmと下流側搬送区間Lnとの各走行レール1を湾曲区間Lrの湾曲走行レール18により連結した上で、アーム回転装置21がハンガー装置2に搬送力を加え、湾曲区間Lrをハンガー装置2が搬送されるとの構成を開示したが、これに代えて、次のような湾曲部チェーン駆動装置66を用いてもよい。
図12に示すように、天井側に支持された湾曲走行レール18はその一端が中流側搬送区間Lmの走行レール1に、他端が下流側湾曲区間Lr2の走行レール1に連結される。更に、下流側湾曲区間Lr2には湾曲部チェーン駆動装置66が付設される。
【0057】
図12に示すように、湾曲部チェーン駆動装置66は天井側に支持された逆U字型のブラケット38の上部に結合された断面エ字形のチェーン駆動用レール60と、チェーン駆動用レール60の下方でブラケット38の下部に結合される湾曲走行レール18と、チェーン駆動用レール60に移動可能に嵌着されるガイドローラ対61と、ガイドローラ対61に懸架されたローラ懸架金具62と、ローラ懸架金具62に連結された係合片25と、湾曲走行レール18に沿って環状に配備され、循環回転する環状チェーン列cdrと、その環状チェーン列cdrを循環駆動する歯車駆動手段26とを備える。
ここでブラケット38や歯車駆動手段26は共に天井側2に連結支持されている。環状チェーン列cdrの適所には突状搬送力受け部材23が突設される。これに係合片25の下部が係合することで、湾曲走行レール18に支持されたハンガー装置2側に湾曲部チェーン駆動装置26が搬送力を加えることができる。
【0058】
このような湾曲部チェーン駆動装置66は不図示の制御手段により回転制御される。この湾曲部チェーン駆動装置26が中流側搬送区間Lmの走行レール1の受け渡し位置Sprにハンガー装置2が達したのを検知すると、歯車駆動手段26が駆動して、係合片25を湾曲走行レール18に沿って送り駆動する。すると、係合片25が突状搬送力受け部材23に当接して押圧力を加え、突状搬送力受け部材23側のハンガー装置2を湾曲走行レール18に沿って移動させ、中流側搬送区間Lmと異なる搬送方向Xにある下流側湾曲区間Lr2側の搬送開始位置D1(受け取り位置)に搬送する。この搬送開始位置D1で、下流側搬送区間Lnへのハンガー装置2の搬送を待つことと成る。
なお、環状チェーン列cdrに支持された係合片25は搬送開始位置D1で突状搬送力受け部材23から外れ、環状チェーン列cdrの張設経路に沿って移動し、次の搬送に備え待機するよう制御される。
【0059】
このような湾曲部チェーン駆動装置66は、図11のアーム回転装置21を用いた場合と同様に、第1、第2の搬送区間を互いに異なる方向に配備でき、工場内の搬送路Rのレイアウトを多様化できる。特に、湾曲走行レール18及び環状チェーン列cdrの曲率を一定でなく、段階的に変更した曲率で形成しても良く、この点で下流側湾曲区間Lr2のレイアウト上の自由度が増す。
【符号の説明】
【0060】
1 走行レール
2 ハンガー装置
3 搬送力受け部材
4 駆動レール
5 バー状主部材
6 ラック
601 単体ラック
7 搬送力伝達杆
8 ピニオンギヤ
9 駆動手段
11 係脱手段
15 補助レール
16 上部枠部材
17 補助ローラ
18 湾曲走行レール
19 アーム
191 回動端
21 アーム回転装置
23 突状搬送力受け部材
24 湾曲ガイドレール
25 係合片
26 チェーン駆動装置
J 締結位置
R 搬送路
S1 一搬送距離
W 搬送物
X 搬送方向(レール長手方向)
L1 第1の搬送区間
L2 第2の搬送区間
Lr 湾曲区間
Lc1 縦回転中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井側に支持された走行レールに懸架され搬送物Wを積載搬送するハンガー装置と、
前記ハンガー装置の上部に配備され搬送方向と直交する方向に突設された搬送力受け部材と、
前記天井側に支持され前記走行レールの近傍に並列配備された駆動レールと、
前記駆動レールに並列状を成して往復走行可能に支持されるバー状主部材及び該バー状主部材の側壁に一体結合されるラックとからなるレール長手方向に長い搬送力伝達杆と、
前記ラックに噛合するピニオンギヤを回転駆動することで前記搬送力伝達杆を所定の一搬送距離の間で往復走行させる駆動手段と、
前記バー状主部材の長手方向での所定箇所に締結され、搬送力伝達杆の往動時に前記搬送力受け部材を係止してハンガー装置を一搬送距離だけ搬送させ、搬送力伝達杆の復動時に搬送力受け部材から離脱変位して搬送力伝達杆を一搬送距離だけ戻り移動させる係脱手段と、
を備えたオーバーヘッドコンベヤ。
【請求項2】
請求項1記載のオーバーヘッドコンベヤにおいて、
前記バー状主部材の側壁に一体結合されるラックはレール長手方向に沿って所定長さの単体ラックを複数直列状に連結することで形成された、ことを特徴とするオーバーヘッドコンベヤ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオーバーヘッドコンベヤにおいて、
前記天井側に支持され前記走行レールの近傍に並列配備された補助レールと、前記ハンガー装置の上部枠部材に搬送方向と直交する方向の側方端部に並列に枢支される補助ローラとを備え、
前記ハンガー装置が走行レールに沿って走行すると同時に補助ローラが補助レールにころ接触して走行することを特徴とするオーバーヘッドコンベヤ。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のオーバーヘッドコンベヤにおいて、
第1の搬送区間に配備された走行レールとレール長手方向が異なる第2の搬送区間に配備された走行レールとを湾曲区間に配備された湾曲走行レールにより連結し、
前記湾曲区間における天井側に支持されると共に縦回転中心線回りに回転するアームを有したアーム回転装置を配備し、
該アーム回転装置が前記第1の走行レールより湾曲区間の湾曲走行レールにハンガー装置が達するのを検知すると前記アームを回転駆動させてその回動端により搬送力受け部材に搬送力を加えることを特徴とするオーバーヘッドコンベヤ。
【請求項5】
請求項1、2又は3に記載のオーバーヘッドコンベヤにおいて、
第1の搬送区間に配備された走行レールとレール長手方向が異なる第2の搬送区間に配備された走行レールとを湾曲区間に配備された湾曲走行レールにより連結し、
ハンガー装置の上部より走行レールの上方に突き出すように突状搬送力受け部材を形成し、
前記天井側に支持され前記湾曲走行レールより上方に並列配備した湾曲ガイドレールに湾曲部チェーン駆動装置により送り移動される下向きの係合片を走行可能に支持し、
前記湾曲部チェーン駆動装置が前記第1の走行レールより湾曲区間の湾曲走行レールにハンガー装置が達するのを検知すると前記下向きの係合片により突状搬送力受け部材に搬送力を加えることを特徴とするオーバーヘッドコンベヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−121774(P2011−121774A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283116(P2009−283116)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】