説明

オーファン核内受容体RAR関連オーファン受容体ガンマ(NR1F3)活性を調節するための新規リガンドの同定方法

本発明は、オーファン核内受容体RORガンマのモジュレーター、並びにRORガンマ活性の新規モジュレーターの同定及びスクリーニング方法のほか、このような方法により同定された新規RORガンマモジュレーターによるRORガンマ媒介性疾患の治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、オーファン核内受容体RORガンマ(RORgamma)のモジュレーター、並びにRORガンマ活性の新規モジュレーターの同定及びスクリーニングの方法のほか、このような方法により同定された新規RORガンマモジュレーターによるRORガンマ媒介性疾患の治療方法を提供する。
【0002】
レチノイド受容体関連オーファン受容体は、3つのファミリーメンバー、すなわち、RORα(Becker−Andree、Biochem.Biophys.Res.Commun.1993年、194:1371〜1379頁)、RORβ(Andreら、Gene 1998年、516:277〜283頁)及びRORγ(Heら、Immunity 1998年、9:797〜806頁)から成り、核内受容体スーパーファミリーのNR1F(ROR/RZR)サブグループを構成する(Mangelsdorfら、Cell 1995年、83:835〜839頁)。
【0003】
核内受容体スーパーファミリーは、超可変N末端ドメイン、保存DNA結合ドメイン(DBD)、ヒンジ領域、及び保存リガンド結合ドメイン(LBD)から成る共通のモジュール構造ドメインを共有する。DBDは特定のDNA配列(核ホルモン応答エレメント、すなわちNRE)に対する受容体をターゲットとし、LBDは内因性又は外因性化学リガンドの認識において機能する。構成的転写活性化ドメインはN末端(AF1)で見出され、リガンド調節転写活性化ドメインは、典型的なNRではC末端LBD内に埋め込まれている。核内受容体は、核内受容体の標的NREに結合した際に、転写活性化状態又は抑制状態で存在し得る。遺伝子活性化の基本的機構は、共調節タンパク質、すなわちコアクチベーター及びコリプレッサーのリガンド依存的交換を伴う(McKennaら、Endocrine Rev.1999年、20:321〜344頁)。抑制状態でのNRは、そのDNA認識エレメントに結合しており、ヒストン脱アセチル化酵素(HDACS)を動員するコリプレッサータンパク質と結合している。アゴニストの存在下では、コリプレッサーはコアクチベーターと交換され、コアクチベーターはクロマチンリモデリング複合体の構築に寄与する転写因子を動員する。クロマチンリモデリング複合体は、ヒストンアセチル化を介して転写抑制を緩和し、転写開始を刺激する。LBDのAF−2ドメインは、コリプレッサー又はコアクチベータータンパク質の相互作用面を提示する、及び核内受容体スーパーファミリーのメンバーにより共有される遺伝子活性化又は抑制の保存された機構を提供する、リガンド依存性分子スイッチとして作用する。
【0004】
核内受容体のNR1Fファミリーのメンバー(RORガンマなど)は、既知のリガンドの非存在下では、構成的活性型転写因子と考えられ、エストロゲン関連受容体アルファと類似する(Vanackerら、Mol.Endocrinol.1999年、13:764〜773頁)。ERRアルファについては、ERRアルファ/PGC1アルファシグナル伝達を妨害することによりERRアルファ転写活性を低減する合成インバースアゴニストが記載されている(Willyら、PNAS 2004年、101:8912〜8917頁)。RORガンマのインバースアゴニストは、例えば、RORガンマの転写活性を低減し、RORガンマにより制御される生物学的経路に機能的にマイナスの影響を及ぼすことが予期され得る。
【0005】
RORは、選択的スプライシング又は選択的転写開始部位から生じるアイソフォームとして発現される。これまで、アイソフォームは、N末端ドメイン(A/Bドメイン)のみが異なると記載されてきた。ヒトでは、4つの異なるRORαアイソフォームが同定されたが(RORα1〜4)、RORβ(1及び2)及びRORγ(1及び2)の両方については2つのアイソフォームのみが知られている(Andreら、Gene 1998年、216:277〜283頁;Villeyら、Eur.J.Immunol.1999年、29:4072〜4080頁)。RORガンマは、RORγ1及び/又はRORγ2の両方を記載する用語として使用される。
【0006】
RORアイソフォームは、異なる組織発現パターンを示し、異なる標的遺伝子及び生理学的経路を調節する。例えば、RORγ2(RORγ−tとも呼ばれる)はCD4CD8胸腺細胞に高度に限定されるのに対し、他の組織はRORγ1を発現する(Eberlら、Science 2004年、305:248〜251頁)。
【0007】
RORは、核内受容体に特有の構造的構成を示す。RORは、4つの主要な機能ドメイン、すなわち、アミノ末端(A/B)ドメイン、DNA結合ドメイン(DBD)、ヒンジドメイン、及びリガンド結合ドメイン(LBD)を含有する(Evansら、Science 1988年、240:889〜895頁)。DBDは、ATリッチ配列に先行されるコンセンサスモチーフAGGTCAから成るROR応答エレメント(RORE)の認識に関与する、2つの高度に保存されたジンクフィンガーモチーフから成る(Andreら、Gene 1998年、216:277〜283頁)。該コンセンサスモチーフは、核内受容体Rev−ErbAα及びRev−Erbβ(それぞれ、NR1D1及びD2)のコンセンサスモチーフと類似している(Giguereら、Genomics 1995年、28:596〜598年)。これらの認識エレメントはまた、エストロゲン関連受容体、及び特にERRα(ERR、NR3B1、−2、−3)(Vanackerら、Mol.Endocrinol.1999年、13:764〜773頁)、ステロイド合成因子1(SF−1、NR5A)及びNGFI−B(NR4A1、−2、−3)(Wilsonら、Mol.Cell Biol.1993年、13:5794〜5804頁)について同定された認識エレメントとも高度な類似性を示している。
【0008】
Rev−Erb受容体は構成的転写抑制因子として作用し、及び類似のDNA認識配列に結合することから、Rev−Erb受容体は、まさに同じDNA応答エレメントをRORと奪い合うことによりROR媒介転写活性化を抑制することができる(Formanら、Mol.Endocrinol.1994年、8:1253〜1261頁)。このような相互作用の生理学的意義は、体内時計の制御に重要な役割を果たす概日リズムの制御において明らかであり、概日リズムにおいて、Rev−Erb及びRORαが、それぞれBmal1転写因子の転写を抑制及び活性化する(Akashi及びTakumi、Nat.Struct.Mol.Biol.2005年、12:441〜448頁)。RORのファミリーメンバーと、類似の認識エレメントに結合するERRαのような他の核内受容体との間のこのようなクロストークは、他の生理学的経路の制御でも同様に作用する可能性がある。
【0009】
RORαは、異なる脳領域で高度に発現され、小脳及び視床で最も高度に発現される。RORαノックアウトマウスは、いわゆるスタゲラー(staggerer)突然変異体マウス(RORαsg/sg)で示される症状に高度に類似した、強度の小脳萎縮を有する運動失調を示す。スタゲラー突然変異体マウスはRORαに突然変異を保有し、これがLBDを含有しない切断RORαをもたらす(Hamiltonら、Nature 1996年、379:736〜739頁)。
【0010】
RORαsg/sgスタゲラー−マウスの分析はさらに、脂質代謝に対する強い影響、すなわち血清及び肝臓トリグリセリドの著しい減少、血清HDLコレステロールレベルの低下及び肥満減少を明らかにした。SREBP1c並びにコレステロールトランスポーターABCA1及びABCG1は、スタゲラーマウスの肝臓で減少し、CHIP分析は、RORαが直接動員されSREBP1cプロモーターを調節することを示唆している。さらに、PGC1α、PGC1β、リピン1及びβ2アドレナリン作動性受容体は、肝臓又は白色及び褐色脂肪組織などの組織で増加することが見出され、スタゲラーマウスでの食餌性肥満に対する観察された抵抗性を説明するのに役立つ可能性がある(Lauら、J.Biol.Chem.2008年、283:18411〜18421頁)。
【0011】
RORβは、より特異的に、すなわち脳の特定の領域及び網膜で発現される。RORβノックアウトマウスは、アヒルのような歩き及び失明に至る網膜変性を示す(Andreら、EMBO.J.1998年、17:3867〜3877頁)。この網膜変性の背後にある分子機構は、依然としてあまり理解されていない。
【0012】
RORγ(特にRORγ2)ヌル突然変異体マウスは、リンパ節及びパイエル板が欠如し(Eberl及びLittmann、Immunol.Rev.2003年、195:81〜90頁)、リンパ組織誘導(LTi)細胞が脾臓腸間膜及び腸から完全に欠落している。さらに、胸腺の大きさ及び胸腺細胞の数は、ダブルポジティブCD4CD8及びシングルポジティブCD4CD8又はCD4CD8細胞の減少により、RORγヌルマウスで大幅に減少し(Sunら、Science 2000年、288:2369〜2373頁)、胸腺細胞の発生におけるRORγ2の極めて重要な役割を示唆している。
【0013】
胸腺細胞の発生は、それらの微環境により捧げられる(dedicated)細胞集団における増殖、分化、細胞死及び遺伝子組換えという協調したサイクルを伴う複雑なプログラムをたどる。胎児の肝臓又は成人の骨髄から胸腺に移動する多能性リンパ球前駆細胞は、T細胞系列にコミットメントしている。多能性リンパ球前駆細胞は、CD4CD8ダブルネガティブ細胞からCD4CD8細胞への一連のステップを通じて成熟し、自己MHCペプチドに対し親和性の低いものは負の選択により排除される。これらは、CD4CD8(キラー)又はCD4CD8(ヘルパー)T細胞系列へと成熟する。RORγ2はダブルネガティブでは発現されず、未熟なシングルネガティブ胸腺細胞ではほとんど発現されない(Heら、J.Immunol.2000年、164:5668〜5674頁)が、ダブルポジティブ胸腺細胞では高度にアップレギュレートされ、シングルポジティブ胸腺細胞では分化中にダウンレギュレートされる。RORγ欠損は、CD4CD8細胞でのアポトーシスの増加をもたらし、抹消血胸腺細胞の数は6倍減少する(10倍(CD4胸腺細胞)及び3倍(CD8胸腺細胞))。
【0014】
アレルギー性気道疾患モデルとしての、マウスにおけるオボアルブミン(OVA)誘発炎症モデルでの最近の実験は、RORγ KOマウスにおけるアレルギー性表現型の重度の発達障害を示し、OVAに曝露後の肺におけるCD4細胞数の減少並びにTh2サイトカイン/ケモカインタンパク質及びmRNA発現の減少を示した(Tilleyら、J.Immunol.2007年、178:3208〜3218頁)。IFN−γ及びIL−10産生は、wt脾細胞と比べてOVA抗原で再刺激後に脾細胞で増加し、Th2型応答の減少と引き換えにTh1型免疫応答へ移行することを示唆した。これは、リガンドによるRORγ転写活性の下方調節が、Th2型応答への免疫応答の同様の移行をもたらし得、特定のアレルギー性炎症疾患(inframmatory conditions)の治療に有益となり得ることを示唆している。
【0015】
ヘルパーT細胞は、以前はTh1及びTh2細胞から成ると考えられていた。しかし、Th細胞の新たなクラスである、IL−17を産生するTh17細胞が、炎症促進性であると考えられるヘルパーT細胞の1つの固有のクラスとして同定された。IL−17発現が、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、及びクローン病などの炎症性腸疾患又は潰瘍性大腸炎など、自己免疫病因の可能性のある多くの炎症性疾患に関連していることから、Th17細胞は自己免疫及び炎症性疾患における中心的存在として認識されている(Ivanovら、Cell 2006年、126:1121〜1133頁;Tesmerら、Immunol.Rev.2008年、223:87〜113頁)。強力な自己免疫病因要素を有する別の疾患は、1型糖尿病である。最近、Th17細胞の活性増加と1型糖尿病との関連が導き出された(Bradshawら、J.Immunol.2009年、183:4432〜4439頁;Emamaulleeら、Diabetes.2009年 58:1302〜1311頁)。乾癬、神経皮膚炎及びアトピー性湿疹など自己免疫要素を有する炎症性皮膚疾患も、Th17細胞の活性増加と関連していると考えられる(Miossec、Microbes Infect.2009年、11:625〜630頁)。
【0016】
RORγ2は、免疫系細胞でもっぱら発現され、及びTh17細胞分化のマスター調節因子として同定されている。RORγ2発現はTGF−ベータ又はIL−6により誘導され、RORγ2の過剰発現はTh17細胞系列及びIL−17発現の増加をもたらす。RORγ2 KOマウスは、腸固有層でTh17細胞をほとんど示さないが、Th17細胞は依然として検出できる。最近Yangら(2008年)は、STAT3依存的様式でTGF−ベータ及びIL−6により調節される、Th17細胞でのRORαの発現を報告した。RORα及びRORγ2における二重突然変異は、インビトロ及びインビボでTh17の分化を完全に抑制し、及びEAE(実験的自己免疫性脳炎)モデルでの症状の出現を完全に阻害した(Yangら、Immunity 2008年、28:29〜39頁)。これは、RORγ2及びRORαがTh17の発生を相乗的に制御することを示唆している。RORγ2及びRORαの両方の阻害剤は、炎症性疾患においてTh17細胞の発生及び炎症促進性IL−17の発現を抑制することができる。Th17細胞発生の抑制によるIL−17産生の抑制はまた、IL−17が深く関与するアトピー性皮膚炎及び乾癬でも有利になり得る。興味深いことに、IL−10は、マクロファージ及びT細胞の両方に分泌されるIL−17の発現を抑制するという最近の証拠が示された。さらに、Th17転写因子RORγ2の発現が抑制された(Guら、Eur.J.Immunol.2008年、38:1807〜1813頁)。さらに、IL−10欠損マウスは、Th1型炎症反応への移行がしばしば観察される、炎症性腸疾患(IBD)の優れたモデルを提供する。経口IL−10送達は、IBDの治療選択肢の可能性を有する。
【0017】
RORγ1は、筋肉並びに膵臓、胸腺、前立腺、肝臓及び精巣を含むいくつかの他の組織で発現される。RORγ1のドミナントアクティブ及びドミナントネガティブバージョンの異所性過剰発現は、この受容体が、脂質代謝(FABP4、CD36、LPL及びUCP3)、コレステロール流出(ABCA1、ABCG1)(炭水化物代謝(GLUT5、アディポネクチン受容体2及びIL−15)及び筋肉量(ミオスタチン及びIL−15)に関与する遺伝子を制御することを示した。
【0018】
RORα1及びRORγ1は肝臓で発現され、及び24時間周期で変動する。ダブルKOマウスは、これらの遺伝子が、3−ベータ−ヒドロキシステロイド脱水素酵素、Cyp450酵素及び硫酸転移酵素を含む第I相及び第II相代謝酵素の調節に関与することを示し、ステロイド、胆汁酸及び異物代謝における重要な役割を示唆している(Kangら、Physiol.Genomics 2007年、31:281〜294頁)。調節される遺伝子の1つは、コレステロール代謝に重要な役割を果たすCyp7b1であることが示され、RORαがCyp7b1の調節に必要及び十分であることが示された。RORα及びLXRα KOマウスにおける標的遺伝子の分析は、両方の受容体が、それぞれの標的遺伝子により相互に抑制されているという仮説を提起した(Wadaら、Exp.Biol.Med.2008年、233:1191〜1201頁)。
【0019】
RORに対するリガンド:
コレステロール及びその硫酸化誘導体は、RORαリガンドとして機能する可能性があること、及び特にコレステロール硫酸は、コレステロール除去細胞においてRORαの転写活性を回復させ得ることが報告された(Kallenら、Structure 2002年、10:1697〜1707頁)。以前、メラトニン(Missbachら、J.Biol.Chem.1998年、271:13515〜13522頁)及びチアゾリジンジオンは、RORαに結合することが示唆された(Wiesenbergら、Nucleic Acid Res.1995年、23:327〜333頁)。しかし、これらのいずれも、RORα又はいずれかの他のRORの機能的リガンドであることは示されていない。オールトランスレチノイド酸を含む特定のレチノイドは、RORβに結合し、及びRORβの部分アンタゴニストとして機能することが示されたが、RORαでは示されていない(Stehlin−Gaonら、Nat.Struct.Biol.2003年、10:820〜825頁)。しかし、RORガンマ調節化合物を求めて物質ライブラリーをスクリーニングする方法を生み出す潜在的基盤として、マウス及びヒトRORガンマ cDNAのクローニング(Medvedevら、Gene 1996年、181:199〜206頁、国際公開第2000/24757号)が記載されているのにもかかわらず、これらのリガンド又はいずれか他のリガンドはどれもまだ、RORγ1又はRORγ2に結合及び/又はRORγ1又はRORγ2の転写活性を調節することが記載されていない。
【0020】
したがって、オーファン核内受容体RORγ1及び/又はRORγ2に結合する化合物を提供すること、並びに故に、自己免疫疾患、炎症性皮膚疾患又は多発性硬化症など、RORガンマの調節に関連した疾患の新規の治療方法を公開することが本発明の目的である。
【0021】
さらに、RORガンマのリガンドを同定及び前記リガンドの活性を測定するためのスクリーニング方法を提供することが本発明の目的である。
【0022】
この目的は、ヒトRORガンマに対する低分子リガンドの驚くべき発見により解決される。これらのリガンドにはレチノイドがあるが、レキシノイドもある。
【0023】
故に、本発明は、RORガンマ受容体の不活性化又は活性化に関連した疾患又は障害の治療又は予防に使用することができるRORガンマモジュレーターを提供する。
【0024】
本発明は、細胞培養系又は生化学無細胞インビトロアッセイ系においてRORガンマ活性の計測値を誘導又は低減するのに十分な、本明細書に記載されたようなRORガンマモジュレーターの有効量をこのような細胞培養系又はアッセイ系に投与するステップを含む、このような細胞培養系又は生化学アッセイ系におけるRORガンマ活性の調節方法をさらに提供する。
【0025】
さらに、本発明は、本明細書に記載された方法により同定された化合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】RORガンマ−リガンド結合ドメイン(RORγ−LBD)に結合した放射性H−25−ヒドロキシコレステロールの、本明細書に記載の化合物による置換が測定された、放射性リガンド置換アッセイの結果を示す図である。
【図2A】本発明で使用される化合物の構造式を示す図である。
【図2B】本発明で使用される化合物の構造式を示す図である。
【図3】用量反応様式での、抹消血ヒト単核細胞(PBMC)における化合物LE135によるIL−17レベルの低下を示す図である。
【0027】
本発明は、RORガンマ受容体の抑制又は活性化に関連した疾患又は障害の治療又は予防に使用するためのRORガンマモジュレーターに関する。
【0028】
本発明はまた、RORガンマ受容体の抑制又は活性化に関連した疾患又は障害を治療又は予防する医薬品を調製するためのRORガンマモジュレーターの使用にも関する。
【0029】
本発明はまた、RORガンマ受容体の抑制又は活性化に関連した疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、RORガンマモジュレーターの有効量をこのような治療を必要とする被験者に投与することを含む方法にも関する。
【0030】
RORガンマ受容体の調節に関連した疾患又は障害を治療する場合、前記受容体の活性は好ましくは低減される。
【0031】
好ましくは、疾患又は障害は、自己免疫疾患、炎症性皮膚疾患及び多発性硬化症から成る、Th17関連組織炎症を有する疾患群から選択される。
【0032】
本発明で使用されるRORガンマモジュレーターは、以下の構造を有する式(I)
【0033】
【化1】


の化合物又は溶媒和物又は薬学的に許容可能なこの塩(式中
はCONHR、NHCOR、C(O)R、CH=CHR、C(CH)=CHR、C≡CR、CH(OH)CH=CHR、C(O)CH=CHR、5〜6員環ヘテロシクリル−Rであり、
は水素であり、
及びRは共に
【0034】
【化2】


も形成することができ
は水素、フッ素、塩素又はヒドロキシであり、
は4−イル−安息香酸又は6−イル−2−ナフトエ酸であり、
及びR10は水素であり、又はR及びR10はこれらが付着する結合と共に融合5〜10員のへテロ芳香族環又は芳香族環で、単環又は二環を形成する)
を好ましくは含む。
【0035】
上記及び以下では、使用される用語は、下記の通り独立に意味を有する。
【0036】
5〜10員の芳香族単環又は二環部分は、好ましくはフェニル、ビフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニル、インデニル及びフェナントレニル、より好ましくはフェニル及びナフチルから選択される。
【0037】
5〜10員のへテロ芳香族単環又は二環は、4〜9個の炭素原子並びにO、N及び/又はSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する少なくとも1個の環を有する環系である。好ましくは、ヘテロアリルは、O及び/又はNから選択される1、2、3又は4個、より好ましくは1、2又は3個のヘテロ原子を含有し、並びにピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びフロピリジニルから好ましくは選択される。スピロ部分もこの定義の範囲内に含まれる。好ましいヘテロアリールには、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル及びトリアゾリルが含まれる。
【0038】
ヘテロシクリルは、O、N及び/又はSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子並びに1、2、3、4、又は5個の炭素原子を含有する5〜6員の飽和環又は不飽和環である。好ましくは、ヘテロシクリルは、O及び/又はNから選択される1、2、3又は4個、より好ましくは1、2又は3個のヘテロ原子を含有する。ヘテロシクリルには、単環系及び二環系が含まれ、並びにピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、アゼチジン−2−オン−1−イル、ピロリジン−2−オン−1−イル、ピペリド−2−オン−1−イル、アゼパン−2−オン−1−イル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリル及びキノリジニルから好ましくは選択される。スピロ部分もこの定義の範囲内に含まれる。
【0039】
本発明で使用される化合物の好ましい実施形態は、図2に示されている。
【0040】
本発明で使用される化合物は、薬学的に許容可能な塩又は溶媒和物の形態であってもよい。用語「薬学的に許容可能な塩」は、無機塩基又は酸及び有機塩基又は酸を含む、薬学的に許容可能な非毒性塩基又は酸から調製される塩をいう。本発明の化合物が1つ又は複数の酸性基又は塩基性基を含有する場合、本発明は、これらの対応する薬学的に又は毒性学的に許容可能な塩、特にこれらの薬学的に利用可能な塩も含む。故に、酸性基を含有する本発明の化合物は、これらの基に存在することができ、及び例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はアンモニウム塩として、本発明により使用することができる。このような塩のより正確な例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はアンモニア若しくは、例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン若しくはアミノ酸などの有機アミンとの塩が含まれる。1つ又は複数の塩基性基(すなわちプロトン化することができる基)を含有する本発明の化合物は、無機又は有機酸との付加塩の形態で存在することができ、及び無機又は有機酸との付加塩の形態で本発明により使用することができる。適切な酸の例には、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、及び当業者に既知の他の酸が含まれる。本発明の化合物が分子中に酸性及び塩基性基を同時に含有する場合、本発明には、言及された塩形態に加えて、分子内塩又はベタイン(双性イオン)も含まれる。各塩は、当業者に既知の慣習的方法により、例えば、溶媒若しくは分散剤中で有機若しくは無機酸若しくは塩基とこれらを接触させることにより、又は他の塩とのアニオン交換若しくはカチオン交換により得ることができる。本発明は、低い生理的適合性のために、医薬品での使用には直接適さないが、例えば、化学反応用又は薬学的に許容可能な塩の調製用の中間体として使用することができる本発明の化合物の全ての塩も含む。
【0041】
実用において、本発明に使用される化合物は、従来の薬学的配合技術により医薬担体との緊密な混合における活性成分として組み合わせることができる。担体は、投与(例えば、経口又は非経口(静脈内を含む))に望ましい製剤の形態に応じて多種多様な形態をとることができる。経口剤形のための組成物の調製では、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液などの経口液体製剤の場合、例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存料、着色剤等などの通常の医薬媒体のいずれかを、又は例えば、粉末、硬及び軟カプセル並びに錠剤などの経口固体製剤の場合、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等などの担体を使用することができ、固体経口製剤は液体製剤よりも好ましい。
【0042】
投与の容易さのために、錠剤及びカプセルは最も有利な経口投与単位形態であり、この場合明らかに固体医薬担体が使用される。所望の場合、錠剤は、標準の水性又は非水性法により被覆することができる。このような組成物及び製剤は、少なくとも0.1パーセントの活性化合物を含有するべきである。これらの組成物中の活性化合物のパーセンテージは、当然変えることができ、及び好都合には、単位の重量の約2パーセント〜約60パーセントであってよい。このような治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、有効用量が得られるような量である。活性化合物は、例えば、液滴又はスプレーとして鼻腔内投与することもできる。
【0043】
錠剤、ピル、カプセル等は、トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;及びショ糖、乳糖又はサッカリンなどの甘味剤も含有することができる。投与単位形態がカプセルである場合、上記のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有してもよい。
【0044】
さまざまな他の材料が、コーティングとして、又は投与単位の物理的形態を修飾するために存在してもよい。例えば、錠剤は、セラック、糖又は両方で被覆することができる。シロップ又はエリキシル剤は、活性成分に加えて、甘味料としてのショ糖、保存料としてのメチル及びプロピルパラベン、色素並びにサクランボ又はオレンジ風味などの香料を含有してもよい。
【0045】
本発明で使用される化合物は、非経口投与することもできる。これらの活性化合物の溶液又は懸濁液は、ヒドロキシ−プロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及び油中のこれらの混合物中で調製することができる。貯蔵及び使用の通常の条件下では、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するための保存料を含有する。
【0046】
注射用途に適した医薬品形態には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、該形態は、滅菌されていなければならず、及び容易に注射できる程度に流動性でなければならない。該形態は、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならず、並びに細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、これらの適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。
【0047】
ここから
任意の適切な投与経路が、哺乳動物、特にヒトに本発明の化合物の有効用量を提供するのに使用され得る。例えば、経口、直腸、局所、非経口、眼内、肺内、鼻腔内等が使用され得る。剤形には、錠剤、トローチ、分散液、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾル等が含まれる。好ましくは、本発明の化合物は経口投与される。
【0048】
使用される活性成分の有効用量は、使用される特定の化合物、投与様式、治療される疾患及び治療される疾患の重症度に応じて変わり得る。このような用量は、当業者に容易に確認され得る。
【0049】
式(I)の化合物が適応されるRORガンマ媒介性疾患を治療又は予防する場合、化合物が、動物の体重1キログラム当たり約0.1ミリグラム〜約100ミリグラムの日用量で投与、好ましくは1日1回投与として若しくは1日2〜6回の分割投与で、又は持続放出形態で与えられる場合に、概ね満足な結果が得られる。大部分の大型哺乳動物について、合計日用量は約1ミリグラム〜約1,000ミリグラム、好ましくは約1ミリグラム〜約50ミリグラムである。70kgの成人の場合では、合計日用量は一般に約7ミリグラム〜約350ミリグラムとなろう。この投与レジメンは、最適な治療反応を得るように調節することができる。
【0050】
初めて、本発明は、RORガンマ受容体に結合するモジュレーター(以下ではリガンドとも呼ばれる)を記載する。驚くべきことに、式(I)の化合物などの特定の合成レチノイドは、RORガンマ受容体のモジュレーターとして作用することが見出された。
【0051】
式(I)の化合物は、SRC−1又はTIF−2などのコアクチベーター由来ペプチドとのRORγリガンド結合ドメインの構成的相互作用を用量依存的に調節する点で、拮抗活性を示す。
【0052】
RORγリガンド結合ドメインと該ペプチドとの間の相互作用は、均一FRETベースのリガンド検出アッセイにより判定することができることが驚くべきことに見出された。
【0053】
飽和濃度(500nM)でH−25−ヒドロキシコレステロールを用いる特定の放射性置換アッセイでは、非標識25−ヒドロキシコレステロール、LE540、TTNPB又はCH55による用量依存的競合置換が起こった(図1参照)。
【0054】
受容体活性調節特性を有する、RORγに対する高親和性リガンドの同定は、該分野に精通した専門家が低分子ライブラリーから新規の作動性及び拮抗性RORγリガンドを同定するアッセイを確立できるようにするための土台である。RORγ1及びRORγ2に結合する並びにRORγ1及びRORγ2の活性を調節するリガンドの同定は、RORγ1又はRORγ2の活性により直接又は間接的に制御される疾患の治療のため開発される可能性を有する、新規の低分子ベースの薬剤を開発するための第一必須ステップである。このような疾患には、炎症性疾患、関節リウマチ、自己免疫疾患又は全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(クローン病)、潰瘍性大腸炎、1型糖尿病などの自己免疫要素を有する疾患、及びアトピー性湿疹又は乾癬などの炎症性皮膚疾患、多発性硬化症又は類似の疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
故に、本発明はまた、RORガンマ受容体の新規のリガンドを同定する方法にも関する。
【0056】
一般に、さまざまなアッセイ系を核内受容体リガンドの新たな同定に使用することができる。このようなアッセイ系は、天然の細胞環境由来の精製受容体、若しくは好ましくは、研究中の核内受容体の精製組換えバージョンを使用するどちらかの生化学、無細胞アッセイであり、又はこれらは、細胞ベースのアッセイ系である。研究中の核内受容体は、通常、完全長受容体として、又は核内受容体のリガンド結合ドメインを構成するようなアミノ酸残基を少なくともカバーする、この部分として使用される。リガンド結合ドメイン(LBD)は、DNA結合ドメインを含有する高度に保存されたジンクフィンガーから遠位又はC末端に、及びより保存度の低いヒンジ領域から核内受容体のC末端まで伸展するような、核内受容体のタンパク質ドメインとして定義される。
【0057】
生化学アッセイでは、核内受容体又はこのLBD含有部分は、大腸菌、酵母、バキュロウイルス誘導昆虫細胞又は哺乳動物細胞培養系などの通常の発現系の1つにおいて組換え発現される。核内受容体発現コンストラクトは、天然、すなわち自然発生アミノ酸配列に完全に類似していてもよく、又は、好ましくは、該コンストラクトは、精製を容易にするため親和性タグに似た特定の人工アミノ酸ストレッチを含有してもよい。或いは、NRコンストラクトは、親和性タグ(すなわち局在化タグ)として、又はフォールディング及び安定化の補助として作用する別のタンパク質又はタンパク質ドメインに融合されてもよい。
【0058】
組換え発現されたNRタンパク質は、次いでタンパク質発現及び精製の、当業者に利用可能な標準的な方法を用いて、リガンド結合活性の特徴付けを可能にする程度まで精製される。リガンドスクリーニングの目的のため、組換えNRタンパク質はこれ自体として使用されてもよく、又は該タンパク質は標識試薬でさらに標識若しくは装飾されてもよい。非修飾タンパク質は、放射性標識又は蛍光標識された本物のリガンドが参照リガンドとして利用可能な、放射性リガンド又は蛍光リガンド置換アッセイにおいて使用することができる。FRET又はアルファスクリーン(Alphascreen)(登録商標)型アッセイでの使用では、組換えNRタンパク質は、親和性タグに対するユーロピウム−キレートフルオロフォア含有抗体などのさらなる試薬で装飾されなければならない。このような装飾試薬は、第2試薬によりさらに転移、増強又は補足され得る1次シグナルを発する。FRETアッセイの場合では、第2試薬は、NRタンパク質に付加される第1試薬により発せさられる波長光を吸収することができる発色団である。Eu−キレートが、NR装飾された試薬から生じる第1蛍光源である場合は、すなわちアロフィコシアニン(APC)が第2蛍光吸収体となり得る。蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)効果は、発光体及び吸収体が近接近する状態になる場合に生じるのみである。
【0059】
したがって、ほとんどの非放射性標識生化学核内受容体アッセイは、核内受容体のタンパク質動員機能を利用する。核内受容体は、一般に、クロマチン及び転写活性修飾タンパク質複合体に核内受容体をつなぎ止める特定のアダプタータンパク質を動員する傾向がある。リガンドの非存在下では、ほとんどのNRは、ヒストン脱アセチル化活性を含有するか、又はさらに動員し、故に転写的にサイレントなNR応答エレメントの周りのクロマチン領域を維持する、いわゆるコリプレッサーを動員する。アゴニストである活性化リガンドが核内受容体に結合すると、コリプレッサーは、ヒストンアセチラーゼ活性を有する他のタンパク質を動員するアダプタータンパク質、コアクチベーターに取って代わられる。得られるクロマチング(chromating)オープニングは、次いでこれらのプロモーター領域から始まる転写活性の増加をもたらすことができる。
【0060】
故に、コアクチベーターの動員は、アゴニストリガンドにより開始される活性化カスケードに必須のステップである。したがって生化学アッセイ系は、コアクチベーターの動員の検出によりリガンド結合を検出することができる。このコアクチベーター動員は、同様に、コアクチベーターがこのアッセイタイプに必要な第2試薬により標識される場合に検出することができる。核内受容体リガンドは、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR−FRET)を利用する核内受容体−ペプチド相互作用アッセイを用いて同定することができる。このアッセイは、リガンドが、核内受容体のリガンド結合ドメイン(LBD)内で結合するとコンフォメーション変化を誘導することができ、コンフォメーション変化が、コアクチベーター又はコリプレッサータンパク質との相互作用を変え、これが今度は転写活性の変化を媒介するという原理の発見に基づく。TR−FRETでは、蛍光ドナー分子は双極子−双極子相互作用を介して、(通常は蛍光)アクセプター分子にエネルギーを転移させる。この手法は、10〜70Å範囲の距離及び距離の変化を測定するための標準的な分光法であり、ドナー分子とアクセプター分子の間の距離R−6に依存する。90Åの極めて大きなRとの相互作用は、発色団アロフィコシアニンに結合したユーロピウムクリプテートを用いて達成することができる(Mathisら、Clin.Chem.1993年、39:1953〜1959頁)。
【0061】
核内受容体リガンド感受性FRETアッセイの目的のため、既知のコアクチベータータンパク質の1つ、好ましくはコアクチベーターに由来するペプチドにアクセプター標識を付加することができる。通常は、物理的なNR−補因子相互作用に関与する明確に定義されたLXXLLモチーフの1つに似た、20〜30merペプチドで十分である。フルオロフォア標識は、ペプチドのビオチン化及び例えばストレプトアビジン−APC複合体によるビオチンの捕捉を含むさまざまな手段により、このようなペプチドに付加することができる。
【0062】
RORガンマの場合では、このような生化学アッセイ系における特定の構成的活性を観察することができる。これはまさに、補因子ペプチド及び全ての必要な試薬と共に、NRが既にシグナルを生成していることを意味する。このような構成的に活性なNRの場合では、活性なNRコンフォメーションをさらに安定化又は増強するアゴニスト化合物により、このようなシグナルをさらに刺激することが可能であり得る。しかし、このような構成的に活性な受容体の場合に用量依存的シグナルの減少をもたらす化合物は、インバースアゴニストと呼ばれる。
【0063】
RORガンマ媒介性免疫疾患の寛解と関連して炎症促進性Th17細胞数を低減する目的のため、このようなインバースアゴニストの同定が求められる。
【0064】
細胞ベースの核内受容体アッセイでは、研究中の核内受容体の大部分が組換え発現されたバージョンが使用され、一過性のトランスフェクション、又はトランスフェクション及びこれに続く安定核内受容体コンストラクト発現細胞株の選択のどちらかにより細胞に導入される。核内受容体又はこのLBD含有部分を一過性又は安定発現するこのような細胞株は、これらが、レポータープロモーター中の核内受容体コンストラクト特異的DNA応答エレメントの制御下で、前記核内受容体が特定のレポーター遺伝子の転写を開始できるプラスミドを保有しているか、又はトランスフェクトされる核内受容体コンストラクトが特定の天然標的遺伝子の転写を制御するプラスミドを保有しているかどちらかの場合に、リガンドスクリーニングに使用することができる。このような標的遺伝子に対するNRの転写制御を調節する特定のリガンドによりもたらされる内因性又は天然標的遺伝子発現の変化は、Taqman(登録商標)、Light Cycler(登録商標)、Sybr Green(登録商標)インコーポレーション又は類似の手法のような定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)ベースの方法などの任意の標的遺伝子mRNA特異的検出系でモニターすることができる。コードされたレポーター酵素の活性をモニターして、発現レベルを直接モニターすることができるレポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコール−アセチルトランスフェラーゼ又は類似の明確に定義されたレポーター酵素である。
【0065】
このようなRORガンマ細胞ベースのレポーターアッセイでのアゴニストリガンドは、構成的レポーターシグナルをさらに刺激し、インバースアゴニストリガンドはレポーターシグナルを用量依存的に低減するであろう。
【0066】
例でより詳細に記載される通り、GST−RORガンマ−LBD融合タンパク質は、大腸菌から発現され及び精製される。TR−FRETアッセイは、GSTに融合した20〜60ng/ウェルの組換え発現RORγ−LBD、200〜600nMのN末端ビオチン化ペプチド(例えばSRC−1又はTIF−2由来の)、50〜500ng/ウェルのストレプトアビジン−xlAPC複合体(Prozyme社)及び2〜20ng/ウェルのEu W1024−抗GST(Perkin Elmer社)を含有するTrisベースの緩衝系:10〜50mM Tris−HCl pH7.9;50〜100mM KCl、1〜10mM MgCl;20〜100ng/μl BSA)を用いて、384ウェルプレートの個々のウェルにおける最終容積25μlで実施された。TR−FRETシグナルは、665nm及び615nmで放射光を検出してPerkin Elmer VICTOR2V(商標)Multilabel Counterを用いて検出され、結果は665/615nmの比としてプロットされた。
【0067】
GST融合タンパク質中のRORガンマ−LBD部分が、より小さい又はより大きい(例えば完全長のRORγ1又はRORγ2)タンパク質フラグメントを含有するRORガンマにより交換できることは当業者の共通の理解である。また、GST部分は、他の親和性タグ(例えばHis−タグ、myc−タグ、HA−タグ)により、使用した親和性タグを検出するそれぞれのユーロピウム標識抗体と併用して交換することもできる。さらに、コアクチベータータンパク質(例えばSRC−1及びTIF−2)の核内受容体相互作用ドメイン由来のビオチン化ペプチドは、真核細胞系の原核細胞系で組換え発現され、及びインビトロ又はインビボでビオチン化される、前記コアクチベーターのより大きなフラグメント又はさらには完全長のコアクチベーターにより交換され得る。本明細書に記載された核内受容体−ペプチド相互作用アッセイは、蛍光偏光(FP(国際公開第1999/027365号パンフレット)核内ホルモン受容体薬スクリーニング)及びFusion Alpha Multilabel Reader(PerkinElmer社により市販)を用いるAlphaScreenなどの代替検出方法を用いて実施することもできる。当業者には、蛍光標識ペプチド及び蛍光標識リガンドの両方を、RORガンマとのリガンド相互作用又は補因子由来ペプチドとRORガンマとのリガンド媒介相互作用の検出に使用することができる。
【0068】
RORガンマは、Th17細胞の主要な分化因子、及び分化したTh17細胞においてインターロイキン17(IL−17)遺伝子の転写を刺激する直接転写因子(Zhangら、Nat.Immunol.2008年、9:1297〜1306頁)であると考えられている。故にT細胞又はより一般的には、白血球由来の細胞培養上清中のIL−17を測定することは、Th17細胞分化及びこの活性に対するRORガンマ及びRORガンマ調節の影響を判定するための適切な手段になる可能性がある。このような白血球は、ヒト又は動物血液の低速遠心分離後の赤血球と血漿上清との境界面である、「バッフィーコート」として分離することができる。これらの「バッフィーコート」は、抹消血単核細胞(PBMC)と血小板の混合物を含有し、このT細胞部分は、IL−17を分泌するよう十分に刺激することができる。このようなPBMC細胞培養は、既知の又は潜在的な免疫調節及び免疫抑制化合物の効果を確かめる優れたシステムである(Zhangら、Cytokine 2008年、42:345〜352頁)。
【0069】
以下の例は、本発明をより詳細に記載する。しかし、これらの例は、いかなる方法によっても本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0070】
タンパク質発現及び精製
核内受容体レチノイド酸受容体関連オーファン受容体ガンマ(RORγ)とのリガンド相互作用を定量化するためのリガンド媒介補因子ペプチド相互作用の判定では、RORガンマのそれぞれのリガンド結合ドメイン(LBD)を大腸菌で発現させ、下記の通り精製した。
【0071】
ヒトRORγリガンド結合ドメイン(LBD)は、N末端グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)標識融合タンパク質として大腸菌株BL21(DE3)で発現させた。RORγリガンド結合ドメインをコードするDNAを、ベクターpDEST15(Invitrogen社)にクローニングした。リガンド結合ドメインのアミノ酸境界は、データベースエントリNM_005060(RefSeq)のアミノ酸267〜518であった。pDEST15での発現はIPTG誘導T7プロモーターにより制御し、大腸菌のクローニング及び形質転換は、基本的に、当業者に既知であって、Invitrogen社により提供された標準プロトコルに従って行った。
【0072】
RORγ−LBDの発現及び精製:pDEST15−huRORγ−LBDで形質転換した大腸菌株BL21(DE3)(Invitrogen社)の一晩の前培養物を、LB−アンピシリン培地で1:20に希釈し、OD600=0.6の至適密度まで30℃で増殖させた。遺伝子発現を次いで、最終濃度0.5mMまでIPTGを添加して誘導した。細胞はさらに16時間、16℃、180rpmでインキュベートした。細胞を遠心分離(7,000xg、10分、室温)により回収した。細胞を、湿ペレット重量1グラム当たり10ml溶解緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.5、20mM NaCl、5mM EDTA及び4mg/mlリゾチーム)で再懸濁し、及び30分間室温で放置した。続いて、1ml溶液当たり1μl DNaseI溶液(2mg/ml)を添加し、MgClを20mM最終濃度まで添加し、得られた溶液を氷上で15分間インキュベートする。細胞は次いで超音波処理にかけ、細胞残屑を遠心分離(14,000xg、60分、4℃)により除去した。オリジナル細胞培養物1l当たり0.5mlの予洗いしたグルタチオン4Bセファローススラリー(Pharmacia社)を添加し、懸濁液を1時間、4℃でゆっくり回転させ続けた。グルタチオン4Bセファロースビーズは遠心分離(1,000xg、1分、4℃)によりペレット化し、及び洗浄緩衝液(25mM Tris−HCl、pH7.5、50mM KCl、4mM MgCl及び1M NaCl)で3回洗浄した。ペレットを、湿ペレット重量1グラム当たり500μl溶出緩衝液で再懸濁した(溶出緩衝液:20mM Tris−HCl、pH7.5、60mM KCl、5mM MgCl及び粉末として使用する直前に添加した10mMグルタチオン)。懸濁液は15分間、4℃で回転させ、ビーズをペレット化し、及び溶出緩衝液で50mMグルタチオンにより再び溶出した。この後のTR FRETアッセイのため、グリセロールをこのタンパク質溶液に10%(v/v)まで添加した。
【0073】
放射性リガンド置換アッセイ(実施例3)のため、溶出液を60mM KCl、5mM MgCl含有20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.5)で一晩透析し、及びアッセイで直接使用した。
【0074】
ヒトRORガンマリガンド結合ドメインとのリガンドの相互作用の判定は、時間分解蛍光エネルギー移動(TR−FRET)に基づきリガンド感受性アッセイを用いて行った。
【0075】
TR−FRET活性アッセイ
この方法は、精製細菌発現RORγリガンド結合ドメイン(LBD)と、SRC1(NcoA1)、SRC2(NcoA2、TIF2)、SRC3(NcoA3)、PGC1α、PGC1β、CBP、GRIP1、TRAP220、RIP140など(但しこれらに限定されない)の核内受容体コアクチベータータンパク質に由来する合成N末端ビオチン化ペプチドとの間の相互作用を調節する推定リガンドの能力を測定する。実施例1及び実施例2用に使用したペプチドを、下の表1に列挙する。
【0076】
【表1】

【0077】
RORγのリガンド結合ドメイン(LBD)は、ベクターpDEST15を用いてBL−21(BL3)細胞においてGSTとの融合タンパク質として発現させた。細胞をリゾチーム処理及び超音波処理により溶解し、融合タンパク質を、メーカーの指示に従いグルタチオンセファロース(Pharmacia社)上で精製した。RORγ−ペプチド相互作用に対する影響について化合物をスクリーニングするため、LANCE技術(Perkin Elmer社)を適用した。この方法は、ドナーフルオロフォアから目的の結合パートナーに付加したアクセプターフルオロフォアへの結合依存性エネルギー転移に依存する。取り扱いの容易さ及び化合物蛍光発光からのバックグラウンドの低下のため、LANCE技術は、一般的なフルオロフォア標識を利用し、時間分解検出アッセイは、GSTに融合した20〜60ng/ウェルの組換え発現RORγ−LBD、200〜600nMのN末端ビオチン化ペプチド、200ng/ウェルのストレプトアビジン−xlAPC複合体(Prozyme社)及び6〜10ng/ウェルのEu W1024−抗GST(Perkin Elmer社)を含有するTrisベースの緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.9;60mM KCl、5mM MgCl;35ng/μl BSA)中で、384ウェルプレートにおける最終容積25μlで行った。試料のDMSO含有量は1%に保った。アッセイミックスの生成後、潜在的なRORγ調節リガンドを希釈した。このステップ後、アッセイを、FIAプレートブラック384ウェル(Greiner社)で、室温、暗所で1時間平衡させた。LANCEシグナルは、Perkin Elmer VICTOR2V(商標)Multilabel Counterにより検出した。結果は、665nm及び615nmでの放射光間の比をプロットして視覚化した。RORγ−ペプチド形成の基礎レベルは、添加リガンドの非存在下で観測する。複合体形成を促進するリガンドは、時間分解蛍光シグナルの濃度依存的増加を誘導する。単量体RORγ及びRORγ−ペプチド複合体の両方に等しく十分に結合する化合物は、シグナルに変化を与えないことが予想されるのに対し、単量体受容体に優先的に結合するリガンドは、観測されるシグナルの濃度依存的減少を誘導すると予想される。
【0078】
実施例1:
化合物の作動可能性及び拮抗可能性を評価するため、EC50又はIC50値を、上記の通り、時間分解蛍光エネルギー転移(TR−FRET)に基づきリガンド感受性アッセイを用いて判定した。正規化したTR FRETアッセイ値(以下の方程式:1000655nm測定値/615nm測定値による)をプログラムGraphPad Prismに移して以下の方程式によりグラフ及び用量反応曲線を生成した:
方程式:シグモイド用量反応(可変勾配)
Y=下限+(上限−下限)/(1+10^((LogEC50−X)Hill係数))
Xは濃度の対数である。Yは反応である。
Yは下限で始まり、シグモイドの形を有する上限に達する。
【0079】
これは、「4つのパラメータロジスティック方程式」と同じである。EC50又はIC50値はこの方程式により計算する。
【0080】
選択した化合物の例を、下の表2に列挙する:
【0081】
【表2】

【0082】
レチノイド構造を有する、上に列挙した全ての化合物(LE540、LE135、Am580、Ch55、TTNPB、9cisRA及びATRA)は、TR−FRETアッセイにおいてシグナルを用量依存的様式で減少させ、IC50値は相互作用ペプチドにSRC1を用いたLE540での3,600nMから、相互作用ペプチドにSRC1を用いたAm580での23,400nMまで及ぶ。
【0083】
対照的に、オキシステロール化合物22R−ヒドロキシコレステロール、25−ヒドロキシコレステロール、(25R)−26−ヒドロキシコレステロール、コレン酸メチルエステル及びDMHCAは、高度に強力な様式で作動性に作用し、EC50値はTIF2を相互作用ペプチドとするDMHCAでの10.7nMから、TIF2を相互作用ペプチドとするコレン酸メチルエステルでの27.7nMまで及ぶ。
【0084】
実施例2:
上記のアッセイのバリエーションでは、拮抗性化合物を飽和濃度(4μM)でアッセイミックスに添加した。次いで作動性化合物を希釈し、アッセイを暗所で1時間平衡化させた。飽和アンタゴニスト濃度に加えたアゴニストの滴定は、アゴニストに関する用量反応曲線を依然として生成したが、アンタゴニストの非存在下で得られたデータと比べてアゴニストのEC50値はより高度に明白であった(表2参照)。これは、アンタゴニストがアゴニストに取って代わられ得ることを示している。明白なEC50値は、下の表3に列挙されている通りであった:
【0085】
【表3】

【0086】
TR−FRETアッセイのこのバリエーションでは、オキシステロール型化合物が、用量依存的様式で、飽和濃度(4μM)の拮抗性化合物を置換し、計算されたEC50値は、相互作用ペプチドにTIF2を用いたDMHCAでの85nMから、及び相互作用ペプチドにTIF2を用いた25−ヒドロキシコレステロールでの363nMに及ぶ。
【0087】
実施例3:
放射性リガンド置換アッセイ
この方法は、RORガンマリガンド結合ドメインに結合した放射活性標識化合物を置換する推定リガンドの能力を測定する。
【0088】
RORγのリガンド結合ドメイン(LBD)は、ベクターpDEST15を用いてBL−21細胞においてGSTとの融合タンパク質として発現させた。細胞をリゾチーム処理及び超音波処理により溶解し、融合タンパク質を、メーカーの指示に従いグルタチオンセファロース(Pharmacia社)上で精製した。RORγに結合する能力について化合物をスクリーニングするため、市販の25−[26,27−H]−ヒドロキシコレステロール(Perkin Elmer社、NET674250UC)をタンパク質に結合させ、非放射活性リガンドによる置換を観察した。アッセイは、96−ウェルのグルタチオン及びシンチラント被覆マイクロプレート(Perkin Elmer社、SMP109001PK)で、最終容積100μlで行った。GSTに融合した50〜200ng/ウェルの組換え発現RORγ−LBDを、Trisベースの緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.9;60mM KCl、5mM MgCl;45ng/μl BSA)中で、100nM 25−[26,27−H]−ヒドロキシコレステロール及び400nM 25−ヒドロキシコレステロールと共にインキュベートした。試験化合物を滴定し、タンパク質−放射性リガンドミックスに添加した。試料のDMSO含有量は1%に保った。化合物の添加後、アッセイを、室温で30分間平衡化させた。このインキュベーション後、アッセイプレートウェルをTris緩衝液(20mM Tris−HCl pH7.5;60mM KCl、5mM MgCl)で2回洗浄し、続いてLUMIstar OPTIMA(BMG社)で1ウェル当たり500秒間測定した。
【0089】
アッセイの結果は図1に示されている。レチノイド様構造物、LE540、TTNBP及びCh55(但しオキシステロール25−ヒドロキシコレステロールも)は、RORガンマリガンド結合ドメインに事前に結合された25−[26,27−H]−ヒドロキシコレステロールを、用量依存的様式で置換することができる。置換の明らかな強度及び有効性は、LE540及び25−ヒドロキシコレステロールで最も高い。TTNBPは、強度は低いがどちらかといえば有効であるように思われるのに対し、Ch55は、RORガンマ相互作用リガンドの識別を可能にするこの置換アッセイにおいて最も低い強度及び有効性を示す。
【0090】
実施例4:
抹消血単核細胞(PBMC)刺激及びIL−17分泌アッセイ
凍結保存抹消血ヒト単核細胞(PBMC)を実験に使用した。細胞をCTL−Anti−Aggregate−Wash(商標)溶液で解凍し、及びベンゾナーゼを含むCTL Wash(商標)培地で1回洗浄した。CTL無血清試験培地(CTL−Test(商標)培地)で懸濁したPBMCを、96ウェルBD BioCoat抗ヒトCD3T細胞活性化プレートに、合計1×10細胞/ウェルで3通りに播種した。細胞は、異なる濃度でのLE540、LE135及びAm580の存在下又は非存在下、72時間、37℃、5%COで抗CD28(2μg/ml)と共にインキュベートした。化合物は時間0で添加した。上清を回収し、及び対応するELISAキット(Invitrogen社)からのプロトコルに従いIL−17についてアッセイした。検出範囲は15.6〜1,000.0pg/mlであった。データを平均±標準偏差値で表す。
【0091】
対照実験では、PBMCを0.1%DMSOの存在下、抗CD3(プレート)及び抗CD28で刺激した。IL−17の平均濃度は1,003.36±45.18pg/mlであった。一方、非刺激細胞でのIL−17の濃度は検出範囲より下であった(<15.6pg/ml)。LE540、LE135、及びAm580は全て、ヒトPBMCによるIL−17の産生を抑制する。化合物は、時間0で抗CD28mAbと共に細胞に添加した。結果は、濃度0.3μMで添加したLE540がIL−17の産生を強力に抑制することを示した(平均=289.69pg/ml;71.13%の低減)。より低い濃度のLE540(0.1μM)もPBMCで極めて強力であった。IL−17抑制のパーセンテージは、それぞれ34.28%(平均=659.39pg/ml)であった。これらの結果と比べて、LE135は、PBMCでのIL−17タンパク質産生に対する抑制効果は低い。図3に示された結果は、LE135がPBMCにおけるIL−17レベルを用量反応様式で低減することを示した。IL−17タンパク質の量は、3、1、及び0.3μMのLE135で細胞を処理後にダウンレギュレートされた(図3)。抑制のパーセンテージは、それぞれ75.91、61.85、及び35.78%であった。10、5、及び1μMのAm580で刺激した細胞のインキュベーションは、10μMの投与群でのみIL−17タンパク質の低減をもたらした(69.73%の抑制)。5及び1μMのAm580の存在下では、IL−17レベルは対照範囲内であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RORガンマ受容体の抑制又は活性化に関連した疾患又は障害の治療又は予防に使用するためのRORガンマモジュレーター。
【請求項2】
RORガンマ受容体の抑制又は活性化に関連した疾患又は障害を治療又は予防する医薬品を調製するためのRORガンマモジュレーターの使用。
【請求項3】
RORガンマ受容体活性が低減される、請求項1若しくは2に記載の使用のためのRORガンマモジュレーター又は請求項1若しくは2に記載の使用。
【請求項4】
Th17細胞の分化及び活性並びにこれらの細胞からのIL−17の分泌が低減される、請求項3に記載の使用のためのRORガンマモジュレーター又は請求項3に記載の使用。
【請求項5】
疾患又は障害が、Th17媒介性組織炎症、又は疼痛、掻痒、若しくは表皮剥脱などの、自己免疫疾患若しくは皮膚疾患に関連した症状である、請求項4に記載の使用のためのRORガンマモジュレーター又は請求項4に記載の使用。
【請求項6】
疾患又は障害が、自己免疫疾患、炎症性皮膚疾患、及び多発性硬化症から成る群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用のためのRORガンマモジュレーター又は請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
自己免疫疾患が関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(クローン病)、潰瘍性大腸炎及び1型糖尿病から選択される、請求項6に記載の使用のためのRORガンマモジュレーター又は請求項6に記載の使用。
【請求項8】
自己免疫疾患が関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患(クローン病)、及び潰瘍性大腸炎から選択される、請求項6に記載の使用のためのRORガンマモジュレーター又は請求項6に記載の使用。
【請求項9】
炎症性皮膚疾患がアトピー性湿疹及び乾癬から選択される、請求項6に記載の使用のためのRORガンマモジュレーター又は請求項6に記載の使用。
【請求項10】
式(I)
【化1】


の化合物又は溶媒和物又は薬学的に許容可能なこの塩
(式中
はCONHR、NHCOR、C(O)R、CH=CHR、C(CH)=CHR、C≡CR、CH(OH)CH=CHR、C(O)CH=CHR、5〜6員環ヘテロシクリル−Rであり、
は水素であり、
及びRは共に
【化2】


も形成することができ、
は水素、フッ素、塩素又はヒドロキシであり、
は4−イル−安息香酸又は6−イル−2−ナフトエ酸であり、
及びR10は水素であり、又はR及びR10はこれらが付着する結合と共に融合5〜10員のへテロ芳香族環又は芳香族環で、単環又は二環を形成する)
を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用のためのRORガンマモジュレーター又は請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
RORガンマ受容体の抑制又は活性化に関連した疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、RORガンマモジュレーターの有効量をこのような治療を必要とする被験者に投与するステップを含む方法。
【請求項12】
RORガンマモジュレーターとしての化合物(Z)−4−(10,10,13,13,15−ペンタメチル−11,12,13,15−テトラヒドロ−10H−ジナフト[2,3−b:1’,2’−e][1,4]ジアゼピン−7−イル)安息香酸(LE540)、(Z)−4−(5,7,7,10,10−ペンタメチル−7,8,9,10−テトラヒドロ−5H−ベンゾ[e]ナフト[2,3−b][1,4]ジアゼピン−13−イル)安息香酸(LE135)、(E)−4−(2−(5,5,8,8−テトラメチル−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル)プロプ−1−エニル)安息香酸(TTNBP)、(E)−4−(3−(3,5−ジ−テルト−ブチルフェニル)−3−オキソプロプ−1−エニル)安息香酸(Ch55)。
【請求項13】
生化学無細胞インビトロアッセイ系でRORガンマ活性のモジュレーターを同定する方法であって、
(a)このような細胞培養系又は生化学アッセイ系でRORガンマ活性の計測値を誘導又は低減するのに十分な、請求項10又は12に記載のRORガンマモジュレーターの有効量をこのようなアッセイ系に投与するステップと、
(b)測定された活性を参照RORガンマモジュレーターの活性と比較するステップ
とを含む方法。
【請求項14】
生化学アッセイ系が、配列SEQ1の組換え発現RORガンマタンパク質及びSEQ2又は3の配列を有するコアクチベーターペプチドと併用する、均一時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(HTR−FRET)アッセイ、放射性リガンド結合及び置換アッセイから選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
参照RORガンマモジュレーターが、請求項10又は12に記載の1つ又は複数の化合物であり、新たに同定されるモジュレーターの活性をモニターするための対照として使用される、請求項13又は14に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−506998(P2012−506998A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532544(P2011−532544)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007717
【国際公開番号】WO2010/049144
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(509057350)フェネックス ファーマシューティカルス アーゲー (2)
【Fターム(参考)】