説明

オープンシールド掘進機の構造

【課題】古い既設管を破砕しながら、新設管を埋設して行く場合に、安全な状態で、シールド掘進機の前進位置よりも十分に先行して古い既設管の埋設部分を掘削し、破砕してゆく。

【解決手段】地表面を開削した状態で掘進し、その開削部に地上から新設管を吊りおろして敷設し、その新設管の表面を土砂で埋設する構成のシールド掘進機である。掘進機の先端には先行板を取付ける。先行板は、シールド掘進機の両側の掘進方向と直交するピンを介して取り付ける。この先行板は、ピンを中心に回転して掘進機の機体より前方に位置し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンシールド掘進機の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周囲の地山、あるいは盛土に反力をとって前進するオープンシールド掘進機は、特に文献を挙げるまでもなく広く利用されている。
【特許文献1】特開2004−183449
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
道路の下に数十年前に埋設した下水管や水道管、配電管が古くなって劣化したり、あるいは容量が不足するようになった場合に、これを新設管に交換する必要が生じる。
このような交換作業に、従来のオープンシールド掘進機が利用されているが、その場合に、次のような問題点がある。
なお、この明細書において「新設管」などという場合の「管」とは断面が円形のパイプのみを指すものではなく、断面が矩形のヒューム函など、広く中空体のコンクリート製、鋼製、その他の公知の構造物を意味するものである。
<イ> まず、図3に示すように、オープンシールド掘進機aの前方の路上に掘削機やコンクリート破砕機bを位置させる。そして露出させた既設管cを破砕して分割して撤去する。撤去した後の地山にオープンシールド掘進機aを前進させて、その後方に新設管dを吊り降ろして設置する作業を行う。その場合に既設管cの破砕は、オープンシールド掘進機aが前進するよりも先行して行う必要がある。
<ロ> オープンシールド掘進機aは地山の崩壊を阻止して掘削路を形成する装置であるが、オープンシールド掘進機aの掘進に先だって既設管cの掘り出しと破砕を行う場合には、その先行した掘り出し部分は、まだオープンシールド掘進機aによって崩壊を阻止する状態に到っていない。
<ハ> その結果、既設管cの破砕をあまり先行させると、オープンシールド掘進機aによる崩壊の阻止範囲の外部になってしまう。その結果、オープンシールド掘進機aが到達する前に、破砕部分では周囲の土砂が崩壊したり、あるいは接近した建物が傾いてしまうという危険性がある。
<ニ> それならば、既設管cの破砕位置の崩壊阻止のために、オープンシールド掘進機aのフロント側のブレードa1を先の方まで長く延長しておけばよいとも考えられる。しかしブレードa1を長く延長した構成を採用すると、オープンシールド掘進機aの全長が長くなるから、小さい半径で曲がる場合に対応することができない。
<ホ> また、ブレードa1を長いものにしておくと、地山に圧入した場合に内側に曲がりやすく、正確な直線方向への圧入が困難である。その上に、もし両側のブレードa1が内側へ曲がって接近してしまうと、前面の地中にクサビを打ち込んだ状態となり、掘進機aはそれ以降、掘進できなくなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような従来の装置の課題を解決した本発明のオープンシールド掘進機の構造は、地表面を開削した状態で掘進し、その開削部に地上から新設管を吊りおろして敷設し、その新設管の表面を土砂で埋設する工法に使用するオープンシールド掘進機において、この掘進機の先端には、その両側に、掘進方向と直交するピンを介して先行板を取り付け、この先行板は、ピンを中心に回転して掘進機の機体より前方に位置し得るように構成したオープンシールド掘進機の構造を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のオープンシールド掘進機の構造は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<イ> 古い既設管を破砕しながら、新設管を埋設して行く場合に、安全な状態で十分に先行して古い既設管の埋設部分を掘削し、破砕してゆくことが可能である。
<ロ> 簡単な構造によって、十分に先行して既設管を破砕し、効率よく新設管を埋設することができる。
<ハ> 小さい曲率の曲線も容易に掘進し通過することができる。
<ニ> オープンシールド掘進機の前進が困難になるような事故が発生することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照しながら本発明のオープンシールド掘進機の構造の実施例を説明する。
【実施例】
【0007】
<1>基本となる掘進機。
本発明のオープンシールド掘進機1は、公知の各種の開削タイプのシールド掘進機を基本の構造とするものである。
すなわち、ここでいうオープンシールド掘進機1とは、地表面を開削した状態で掘進し、その開削部に地上から掘削溝内に直接に新設管4を吊り降ろして敷設し、その新設管4の表面を土砂で埋設する構成のシールド掘進機であり、公知の各種のシールド掘進機を採用することができる。
このオープンシールド掘進機1の掘進方法は、二つに分けた枠体の間をジャッキで連結し、そのジャッキの伸縮で掘進するタイプ、あるいは複数本のブレードに分割して少数本のブレードを、他のブレードの摩擦を反力にとって地中に圧入するタイプ、あるいは新設管の周囲に投入した埋設土砂に反力を取って掘進するタイプなど、公知の掘進原理の掘進機に利用できる。
【0008】
<2>先行板2の取り付け。
この掘進機1の先端には、その両側に、先行板2を取りつける。
この先行板2は、掘進機1が掘進方向と直交する方向に配置したピン21を介して掘進機1に取り付ける。
先行板2は、補強した形状の単なる鋼製の板である。
そして先行板2は、ピン21を中心に回転可能である。
その結果、先行板2を掘進機1の前方に回転させた場合には、先行板2は掘進機1の機体より前方に位置することになる。
また先行板2を掘進機1側に回転させた場合には、ピン21の取りつけ位置よりも機体側に位置することになる。
【0009】
<3>回転を与える機構。
掘進機1の掘進方向と直交する方向に配置したピン21を中心に先行板2を回転させるために、例えば掘進機1から支柱22を直立させる。
そしてこの支柱22と、先行板2の一端とをワイヤー23で連結し、ワイヤー23の中間に手動、あるいは電動のジャッキ、ウインチなどの公知の装置を介在させる。
あるいはワイヤー23をモーターで巻き取るような構成を採用することもできる。
ワイヤー23と先行板2との取りつけ点は、ピン21の位置とはできるだけ離れた位置に設定する。
その状態でジャッキやモーターを駆動すれば、ワイヤー23を巻き取って、下がっていた状態の先行板2を徐々に引き上げることができる。
あるいは引き上げ状態の先行板2を徐々に掘進機1の前方の地表面に接近させて接地させることができる。
接地した先行板2は、自重あるいは掘削機などの圧力によって包丁が野菜などに食い込むような状態で地中に食い込んで行く。
【0010】
<4>作動の説明。
次に既設管3の破砕と、新設管4の敷設、すなわち既設管3の交換作業について説明する。
【0011】
<5>先行板2の圧入。
本発明のオープンシールド掘進機1には、前記したようにその先端に先行板2が設けてある。
この先行板2を、掘進方向と直交する方向に配置したピン21を中心に、機体の前方の地表面に向けて回転させる。
すると先行板2は、その自重によって包丁が野菜に食い込むような状態でオープンシールド掘進機1の前方の地表面から地中に食い込んでゆく。
さらにオープンシールド掘進機1の前方に配置した掘削機5のバケットなどの加圧力を利用して先行板2を地中に食いこます。
掘進機1の両側に配置した先行板2を、掘進機1の前進方向の両側の地中に食い込ませることによって、既設管3の両側には簡易な土留め板が配置されたことになる。
【0012】
<6>既設管3の露出と破砕。
オープンシールド掘進機1の掘進方向の前方に、ユンボーのような掘削機5、およびコンクリート破砕機6を位置させる。
そして数十年前に埋設した既設の既設管3を、掘削機5によって周囲を掘削することによって露出させ、破砕機6によって小割りに破砕してゆく。
その場合に、前記したように既設管3の両側にはすでに簡易な先行板2が地中に食い込んで配置してある。
そのために既設管3の掘削を行っている部分には、オープンシールド掘進機1による土砂の崩壊阻止の機能が働いていないが、先行板2による簡易な保護がなされている。
その結果、既設管3の周囲の土砂の崩壊を阻止することができる。
このように単なる鋼板である先行板2によって簡易な保護ができるには理由がある。
すなわちまず、先行板2が機能する時間が、オープンシールド掘進機1の掘進が到達するまでの短時間だけであるからである。
次には、先行板2の全範囲にわたって掘削する必要はなく、先行板2の先端部分や周囲の土砂を完全に掘削せずに残しておけるから先行板2は完全に片持ち状態にはならないからである。
そのような理由があるために、横断方向の支持梁などが存在しないにもかかわらず、しかも簡単な板によって、既設管3の周囲の土砂の崩壊の阻止を行うことができるのである。
またもし、先行板2の一部が外側の土圧によって曲がってしまったとしても、地表に引き上げてハンマーで叩く程度で簡単に修復することができるから便利である。
【0013】
<7>掘進機1の前進。
既設管3の破砕が終わったら、その距離だけオープンシールド掘進機1は掘進する。
その場合に先行板2が地中に挿入されたままであると、地盤が硬い場合には湾曲してしまう可能性がある。
そのような場合には先行板2のワイヤー23を短縮し、あるいは巻き上げて先行板2を地中から引き抜く。
先行板2を引き抜いて地上に持ち上げた状態でオープンシールド掘進機1を掘進させれば、先行板2が変形することはない。
小さい曲線を通過する場合にも、先行板2を引き上げておけば、地中での抵抗はまったくないから、小さい半径の曲線を通過することができる。
もし、オープンシールド掘進機1のブレードの長さを延長した場合には、ブレードは簡単に撤去したり、継ぎ足したりすることはできないから、前記したように小さな半径の曲線を通過することは困難である。
本件発明のオープンシールド掘進機1は上記したように先行板2を地中に押し込み、あるいは引き上げるという作業を繰り返して、既設管3と新設管4との交換を効率よく行うことができる。
【0014】
<8>埋め戻し、転圧。
オープンシールド掘進機1が前進したら、その跡にヒューム管を吊り下ろす。
ヒューム管を吊り下ろしたらその上、側面の空間に土砂を充填して埋め戻しを行い、ローラーによる転圧、舗装などを行う。かかる工程は従来の工程と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のオープンシールド掘進機の先行板を持ち上げた状態の実施例の説明図。
【図2】先行板を圧入した状態の説明図。
【図3】先行板を昇降させる機構の実施例の説明図。
【図4】一般のオープンシールド掘進機で、既設管と新設管を交換する状態の説明図。
【符号の説明】
【0016】
1:オープンシールド掘進機
2:先行板
3:既設管
4:新設管
21:ピン
22:支柱
23:ワイヤー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面を開削した状態で掘進し、その開削部に地上から新設管を吊りおろして敷設し、その新設管の表面を土砂で埋設する工法に使用するオープンシールド掘進機において、
この掘進機の先端には、
その両側に、掘進方向と直交するピンを介して先行板を取り付け、
この先行板は、ピンを中心に回転して掘進機の機体より前方に位置し得るように構成した、
オープンシールド掘進機の構造。
【請求項2】
先行板は、
掘進機から直立させた支柱を介して引き上げ力を与え、
ピンを中心に回転するように構成した、
請求項1記載のオープンシールド掘進機の構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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