説明

オープンラック型気化装置用フィンチューブ

【課題】クラッド成形によってフィンとフィンとの間の谷部における表面にも確実に被膜を形成することが可能な形状を有するオープンラック型気化装置用フィンチューブを提供すること。
【解決手段】オープンラック型気化装置の熱交換パネルを構成するフィンチューブ1である。円筒状の本体部11と、本体部11の外周面から外方に向かって突出した複数のフィン12とを備えた基材10と、基材10の外周面を覆う犠牲陽極用の被膜2とからなる。基材10と被膜2とは、基材用ビレットとその外周側に配設された被膜用ビレットとからなる二重構造のビレットを塑性加工することによりクラッド成形されている。隣接するフィン12同士の間の谷部3は、フィン12の側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、本体部11の中心Aに向かって凸状となる形状を呈している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンラック型気化装置の熱交換パネル用のフィンチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(以下、LNGという)を気化させる気化器として、オープンラック型気化装置がある。このオープンラック型気化装置は、LNGと海水や温排水との間で熱交換をさせるための熱交換パネルを備えている。
熱交換パネルは、管体の外周面にフィンを有するフィンチューブを複数用い、これらのフィン同士を連ねてパネル状に配列して構成される。熱交換パネルの上下端部には、LNGを供給・分配させるためのヘッダータンクが設けられる。また、熱交換パネルの上方には、その外表面に対面して海水を熱交換パネルの外表面に供給するための散水装置が配置される。
【0003】
LNGを気化させる際には、熱交換パネルの下端のヘッダータンクからLNGを供給し、熱交換パネルのフィンチューブ内を上昇させる。フィンチューブ内を上昇するLNGは、熱交換パネルの上部から散水される海水によって加熱され、気化する。これにより、LNGは、上端のヘッダータンクに達する際には気化した天然ガスとなり、当該ヘッダータンクから外部へと供給される。
【0004】
このようなオープンラック型気化装置の熱交換パネルを構成するフィンチューブとしては、例えば、特許文献1、2に記載のものが提案されている。これらのフィンチューブは、平板状に連ねる一対のフィンの他にさらに複数のフィンあるいは凹凸を有し、これらが熱交換時の表面積を増大させ、熱交換性能を向上させている。いずれのフィンチューブも、海水に接触することを考慮して比較的耐食性に優れたアルミニウム合金によって管状の基材を作製し、さらにその外表面には犠牲陽極となる被膜を形成した構成をとっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−29095号公報
【特許文献2】特開平5−164496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のフィンチューブ(伝熱管)は、犠牲陽極被膜を形成する方法として、基材の外表面にブラスト処理等を施して凹凸のある表面を形成し、次に、Al−Zn合金を加熱溶解してジェットガスで管体の外表面に吹き付けるといういわゆる溶射方法を採用している。
【0007】
しかし、溶射方法により形成した犠牲陽極被膜は多孔体であるために、過酷な使用環境で使用されるオープンラック型気化装置においては、十分な耐久性を示さない。すなわち、オープンラック型気化装置は、腐食性の高い海水環境下で使用され、さらに外表面での着氷を伴うため、表面の犠牲陽極被膜が比較的早期に減耗や脱落により消失する可能性がある。対策としては、再度溶射膜を形成し直すことが考えられるが、この場合にも耐久性という観点では同じである。
【0008】
特許文献2は、溶射方法による被膜に代えて、これよりも長期間にわたってフィンチューブの表面保護が可能な被膜として、押出成形を利用したクラッド成形によって被膜を形成することを提案したものである。この方法によれば、溶射方法に比べて厚く緻密な被膜を形成することが可能となり、耐食性を向上できるとされている。
しかしながら、単純にクラッド成形を採用するだけでは、押出し工程においてフィン同士の間の谷部に被膜が残りにくく、被膜が形成されず基材が被膜により被覆されていない部分である被膜未形成部分が生じるという成形上の問題が発生する。基材が被膜により被覆されなければ、溶射方法の場合よりもさらに耐食性が低下してしまう。なお、特許文献2には、クラッド成形性向上に関する具体的な記載はない。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、クラッド成形によってフィンとフィンとの間の谷部における表面にも確実に被膜を形成して基材を被覆することが可能な形状を有するオープンラック型気化装置用フィンチューブを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、オープンラック型気化装置の熱交換パネルを構成するフィンチューブであって、
円筒状の本体部と、該本体部の外周面から外方に向かって突出した複数のフィンとを備えた基材と、
該基材の外周面を覆う犠牲陽極用の被膜とからなり、
上記基材と上記被膜とは、基材用ビレットとその外周側に配設された被膜用ビレットとからなる二重構造のビレットを塑性加工することによりクラッド成形されており、
隣接する上記フィン同士の間の谷部は、当該フィンの側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、上記本体部の中心に向かって凸状となる形状を呈しており、
上記フィン同士の間の上記谷部の曲率半径Rと上記本体部の外径Dとが、0.05≦R/D≦0.2の関係にあることを特徴とするオープンラック型気化装置用フィンチューブにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオープンラック型気化装置用フィンチューブは、上記のごとく、隣接する上記フィン同士の間の谷部は、当該フィンの側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、上記本体部の中心に向かって凸状となる形状を呈している。このような特定の形状が、フィンチューブをクラッド成形する際にメタルフローを最適化し、被膜未成形部分が発生することを従来よりも大幅に抑制することができる。
【0012】
この理由は次のように考えられる。
上記フィンチューブは、基材用ビレットとその外周側に配設された被膜用ビレットとからなる二重構造のビレットを塑性加工することによりクラッド成形する。クラッド成形では、フィン部分は、円筒状の本体部から径方向外方に向けて延びるように成形され、本体部は元のビレットの外径よりも小さく成形される。このとき、フィンとフィンとの間の上記谷部は、滑らかなメタルフローが実現できなければ、局部的に被膜用材料が不足する状態になりやすい。
【0013】
特に、前述した特許文献2の図1に示されたように、フィンとフィンとの間の谷部の形状が、本体部の中心を中心とする円弧状となって中心から離れる方向に凸状となる形状を呈している場合には、後述する比較例にも示すごとく、被膜用材料が不足して被膜未成形部分が発生しやすくなる。これは、谷部の底部両端側とフィン側面との境界部分で形状の曲率の方向が逆転し、略S字状のメタルフローが要求されるため、メタルフローがあまりスムーズに行われないことが原因であると考えられる。
【0014】
これに対し、本発明では、隣接する上記フィン同士の間の谷部は、当該フィンの側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、上記本体部の中心に向かって凸状となる形状を積極的に採用している。このような形状を必須要件として備えることによって、谷部の底が逆方向に凸状となる場合と比べて、メタルフローをより滑らかにすることができ、被膜用材料が不足することを避けることができる。
【0015】
また、本発明では、上記フィン同士の間の上記谷部の曲率半径Rと上記本体部の外径Dとが、0.05≦R/D≦0.2の関係にある。このR/Dの値を上記特定の範囲に収めることにより、クラッド成形性を良好に維持しつつ、適度な数のフィンを配置することができる。上記R/Dが0.05未満の場合には、クラッド成形性が低下し、被膜未成形部分の抑制効果が減少するおそれがあり、上記R/Dが0.2を超える場合には、配設できるフィンの数が低下し、熱交換性能向上効果が低下するおそれがある。
【0016】
したがって、本発明によれば、上記谷部の形状を上記のごとく積極的に特定の形状に限定し、かつ、上記R/Dの値を上記適正な範囲にすることによって、フィンの突出寸法が比較的大きい場合であっても、クラッド成形によって外表面全面に確実に被膜を形成することができると共に優れた熱交換特性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、オープンラック型気化装置用フィンチューブの断面形状を示す説明図。
【図2】実施例1における、オープンラック型気化装置用フィンチューブの断面の寸法関係を示す説明図。
【図3】実施例1における、クラッド成形用ビレットを作製する手順を示す説明図。
【図4】実施例1における、クラッド成形用ビレットの断面形状を示す説明図。
【図5】比較例1における、オープンラック型気化装置用フィンチューブの断面形状を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のオープンラック型気化装置用フィンチューブにおいては、上記フィンは、その突出寸法が上記本体部の外径の1/4以上である大型フィンとすることができる(請求項2)。上記フィンの突出寸法は、これが大きいほどフィンチューブの熱交換性能を向上させることができる一方、クラッド成形時における被膜未成形部分が生じやすい。特に、上記フィンの突出寸法が上記本体部の外径の1/4以上という大型フィンの場合にはクラッド成形が困難となりやすい。そのため、本発明の特定の形状を積極的に採用することによる成形性の確保が非常に有効である。
【0019】
また、上記フィンは上記本体部の外周面に6枚〜18枚設けられていることが好ましい。上記フィンの数をこの範囲内に設定することによって、熱交換性能の向上を図ることができる。一方、フィンの数が6枚〜18枚という比較的多い枚数の場合には、クラッド成形が難しく、本発明の特定の形状を積極的に採用することによる成形性の確保が非常に有効である。
【0020】
また、上記基材は3000系、5000系、6000系のいずれかのアルミニウム合金よりなり、上記被膜は7000系アルミニウム合金よりなることが好ましい(請求項3)。3000系、5000系、6000系のアルミニウム合金は高強度でかつ耐食性に優れるという特性を有するため上記基材として好適である。また、7000系アルミニウム合金は3000系、5000系、6000系アルミニウム合金よりも電気化学的に腐食電位が卑であることから、基材よりも優先的に腐食するいわゆる犠牲陽極材として働いて基材の腐食を防止するという特性を有するため上記被膜として好適である。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるオープンラック型気化装置用フィンチューブフィンチューブにつき、図1〜図4を用いて説明する。
本例のフィンチューブ1は、オープンラック型気化装置の熱交換パネル(図示略)を構成するフィンチューブ(クラッドフィンチューブ)である。
図1に示すごとく、フィンチューブ1は、円筒状の本体部11と、本体部11の外周面から外方に向かって突出した複数のフィン12a〜12d(以下、適宜、a〜dを省略して、フィン12として表す)とを備えた基材10と、基材10の外周面を覆う犠牲陽極用の被膜2とからなる。
基材10と被膜2とは、図3、図4に示すごとく、基材用ビレット41とその外周側に配設された被膜用ビレット42とからなる二重構造のビレット4を塑性加工することによりクラッド成形されている。
図1、図2に示すごとく、隣接するフィン12同士の間の谷部3は、当該フィン12の側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、本体部11の中心点Aに向かって凸状となる形状を呈している。
【0022】
同図に示すごとく、本例のフィンチューブ1は、本体部11の外周側に合計12枚のフィン12を配設してなる。一対の第1フィン12aは、本体部11の中心点Aに関して180°反対方向に向いて延設されている。第1フィン12aは隣り合うフィンチューブ1と連なってパネル状に配列される部分である。
【0023】
上記一対の第1フィン12aと直交する方向には、一対の第2フィン12bが形成されている。また、本体部11の周方向に見て、各第2フィン12bの両側には、本体部11の中心点Aに関して第2フィン12bから30°ずれた方向に延びる第3フィン12cが合計4枚形成されている。さらに、第1フィン12aと第3フィン12cとの間には、本体部11の中心点Aに関して第3フィン12dおよび第1フィン12aからそれぞれ30°ずれた方向に延びる第4フィン12dが合計4枚形成されている。すべてのフィン12は、その突出寸法L1〜L4(図2)が本体部11の外径D(図2)の1/4以上1/2以下である。具体的には、外径D=40mm、突出寸法L1=16mm、L2=L3=L4=14mmとした。
【0024】
また、隣り合うフィン12同士の間のすべての谷部3a〜3cは、上記のごとく、フィン12の側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、本体部11の中心点Aに向かって凸状となる形状を呈している。そして、すべての谷部3a〜3cの曲率半径R(a〜c)と上記本体部の外径Dとが、0.05≦R(a〜c)/D≦0.2の関係にある。より具体的には、本例では、第1フィン12aと第4フィン12dとの間の谷部3aの円弧形状の曲率半径Raは4.0mmであり、本体部11の外径Dが40mmであるため、Ra/D=0.1である。同様に、第4フィン12dと第3フィン12cとの間の谷部3bの円弧形状の曲率半径Rbは4.7mmであるため、Rb/D=0.12である。同様に、第3フィン12cと第2フィン12bとの間の谷部3cの円弧形状の曲率半径Rcは4.7mmであるため、Rc/D=0.12である。なお、図2に示すごとく、本体部11の外径Dの位置と内径との間の肉厚については、最大値T1=9mm、最小値T2=6.5mmである。
【0025】
また、円筒状の本体部11は、LNGとの接触面積を少しでも増大させるように、その内周面に凹凸部115を設けてある。
また、フィンチューブ1は、基材10は5000系アルミニウム合金であるA5052材(Al−2.5%Mg合金)よりなり、被膜2は7000系アルミニウム合金であるA7072材(Al−1%Zn合金)よりなる。
【0026】
上記フィンチューブ1を作製するに当たっては、次のように行った。
まず、図3、図4に示すごとく、中実の円柱状ビレットの内部を刳り貫いて、肉厚10mm、長さ500mm、直径203mm(8インチ)の円筒状形状の被膜用ビレット42を作製した。
【0027】
また、上記被膜用ビレット42の内側に焼き嵌め可能な寸法に外径を合わせ、内径70mm、長さ500mmの円筒形状とした基材用ビレット41を作製した。
次に、被膜用ビレット42及び基材用ビレット41との合わせ面を機械加工により平坦化した後、焼き嵌めによって両者を一体化した。これにより、基材用ビレット41とその外周側に配設された被膜用ビレット42とからなる二重構造のビレット4を得た。
【0028】
次に、所望形状の金型を用いて、ビレット4を押出成形(塑性加工)し、上述した形状のオープンラック型気化装置用フィンチューブ1を得た。
得られたフィンチューブ1は、押出成形時の長手方向3箇所(頭部、中央部及び尾部)でサンプルを採取し、各サンプルの断面観察によって、全てのフィン12の先端部及び全ての谷部3の中央部における被膜2の厚みを測定した。測定結果を表1に示す。フィン12については、図1における上方に向くフィン12bの先端部P1を周方向位置の0°位置とし、谷部3についてはその右側の谷部3cの中央部V1を周方向位置の0°位置として、順次時計回りに測定し、表1に記載した。
【0029】
【表1】

【0030】
図示しない断面観察の結果、本例のフィンチューブ1は、全てのサンプルにおいて、外表面全面に途切れることなく被膜2が形成されていた。また、表1から知られるごとく、フィンチューブ1の全てのフィン12の先端部及び全ての谷部3において確実に有効な厚さの被膜2が形成されていることも分かった。
このように、本例では、隣接するフィン12同士の間の全ての谷部3について、フィン12の側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、本体部11の中心に向かって凸状となる形状を積極的に採用することによって、クラッド成形時の谷部3におけるメタルフローをより滑らかにすることができ、実際に被膜用材料が不足することを避けることができ、健全な被膜2が得られることがわかった。
【0031】
(比較例1)
本比較例では、前述した特許文献2に記載された従来の形状を有するオープンラック型気化装置用フィンチューブ9を作製し、被膜の形成状態について評価した。
フィンチューブ9は、図5に示すごとく、円筒状の本体部91と、本体部91の外周面から外方に向かって突出した複数のフィン92とを備えた基材90と、基材90の外周面を覆う犠牲陽極用の被膜95とからなる。基材90と被膜95とは、前述した実施例1と同様に、基材用ビレット41とその外周側に配設された被膜用ビレット42とからなる二重構造のビレット4を塑性加工することによりクラッド成形されている。
【0032】
本比較例の特徴は、隣接するフィン92同士の間の谷部93が、本発明とは異なり、本体部91の中心Bを中心とする円弧状となって中心から離れる方向に凸状となる形状を呈している。そして、谷部93の両端と中央部分とにおいて円弧形状の曲率の方向が逆転し、略S字状となっている。
フィンチューブ9の寸法は、最も長い一対の第1フィン92aの長さを実施例1の第1フィン12aと合致させ、その他は図5に示す形状と相似形状となる寸法とした。
【0033】
得られたフィンチューブ9は、押出成形時の長手方向3箇所(頭部、中央部及び尾部)でサンプルを採取し、各サンプルの断面観察によって、全てのフィン92の先端部及び全ての谷部93の中央部における被膜95の厚みを測定した。測定結果を表2に示す。フィン92については、図5における上端に位置するフィン92先端部P91を周方向位置の0°位置とし、谷部93についてはその右隣の谷部93の中央部V91を周方向位置の0°位置として、順次時計回りに測定し、表2に記載した。
【0034】
【表2】

【0035】
図5には、基本構成を説明する都合上その全面に被膜95が存在する状態で記載している。しかし、実際の断面観察の結果、フィンチューブ9は、多くの谷部93において被膜未形成部分が存在することが分かった。また、表2に示すごとく、谷部93に被膜95が存在する部位においても、その厚みが実施例1に比べて非常に薄いことが分かった。
【0036】
以上の実施例1と比較例1との対比から、谷部の形状を特定の形状に限定した本発明のフィンチューブが、クラッド成形を採用した場合の被膜形成状態を健全とすることができ、耐久性にも優れることが分かる。
【0037】
(実施例2)
本例では、表3に示すごとく、実施例1の構成を基本とし、基材材質、フィンの数、各部寸法等を変更した例を示す。表3において、基材の材質であるA3003材はAl−1.2%Mn合金、A5052材はAl−2.5%Mg合金、A6063材はAl−0.6%Mg−0.4%Si合金よりなり、被膜の材質であるA7072材はAl−1%Zn合金よりなる。製造に使用したビレットは、実施例1と同じ要領で準備した。そして、各フィンチューブは、表3に示す各部寸法に対応した金型を用いて押出成形することによって作製した。フィンの長さ、本体部の外径D及び外径Dの位置と内径との間の肉厚については、実施例1と同様とした。
【0038】
【表3】

【0039】
得られた各フィンチューブは、押出成形時の長手方向1箇所(中央部)でサンプルを採取し、各サンプルの断面観察によって、全てのフィン及び全ての谷部における被膜の形成状態(クラッド状態)を観察した。評価は、谷部も含め全周に被膜が形成されていた場合を合格(○)とし、谷部に被膜未形成部分が生じていた場合を不合格(×)とした。
また、熱交換性能の観点からみれば、フィンの数が6枚未満の場合には経験的に熱交換性の向上効果が低い。そのため、フィンの数が6枚以上を良、それ未満を不良とした。
これらの評価結果は上記表3に記載した。
【0040】
表3より知られるごとく、フィン同士の間の上記谷部の曲率半径Rと上記本体部の外径Dとが、0.05≦R/D≦0.2の関係にある場合には、熱交換性能を確保した上で、基材を被覆する被膜が欠落している部分(被膜未形成部分)の発生を確実に防止することができることが分かる。
【符号の説明】
【0041】
1 オープンラック型気化装置用フィンチューブ
10 基材
11 本体部
12 フィン
2 被膜
3 谷部
4 ビレット
41 基材用ビレット
42 被膜用ビレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンラック型気化装置の熱交換パネルを構成するフィンチューブであって、
円筒状の本体部と、該本体部の外周面から外方に向かって突出した複数のフィンとを備えた基材と、
該基材の外周面を覆う犠牲陽極用の被膜とからなり、
上記基材と上記被膜とは、基材用ビレットとその外周側に配設された被膜用ビレットとからなる二重構造のビレットを塑性加工することによりクラッド成形されており、
隣接する上記フィン同士の間の谷部は、当該フィンの側面同士を滑らかに繋ぐ円弧形状であって、上記本体部の中心に向かって凸状となる形状を呈しており、
上記フィン同士の間の上記谷部の曲率半径Rと上記本体部の外径Dとが、0.05≦R/D≦0.2の関係にあることを特徴とするオープンラック型気化装置用フィンチューブ。
【請求項2】
請求項1に記載のオープンラック型気化装置用フィンチューブにおいて、上記フィンは、その突出寸法が上記本体部の外径の1/4以上であることを特徴とするオープンラック型気化装置用フィンチューブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオープンラック型気化装置用フィンチューブにおいて、上記基材は3000系、5000系、6000系のいずれかのアルミニウム合金よりなり、上記被膜は7000系アルミニウム合金よりなることを特徴とするオープンラック型気化装置用フィンチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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