説明

オーラルケア配合物における、モノ−、ジ−及びポリオールアルコキシレートホスフェートエステル、及びその使用方法

本発明は、有機ホスフェート材料、追加のオーラルケア組成物成分、例えば、界面活性剤、及び所望による研磨剤を含むオーラルケア組成物として有用な組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願のクロスリファレンス]
本出願は、2007年6月12日に出願された米国仮出願第60/943,490号の利益を主張し、参照により、その全体を本明細書に援用する。
【0002】
[発明の分野]
本出願は、歯磨き剤及び他のオーラルケア製品に有用な組成物に関する。特に、本発明は、モノアルキル及びジアルキルホスフェートエステルの水溶性塩から本質的に成る界面活性剤を含むオーラルケア組成物に関する。本発明は、疎水性材料並びに親水性材料に関するこれらの表面の付着特性を変えるための、表面改質剤としての、モノ−、ジ−及びポリオールホスフェートエステルを含むオーラルケア配合物を含む。
【背景技術】
【0003】
オーラルケア配合物において、種々のホスフェートエステルを、それらの塩として用いる種々の利益が、10年の間に報告されている。米国特許第4,152,421号明細書は、歯磨き剤配合物における、アルキルホスフェートエステルのアルカリ金属又はアルカノールアミン塩の使用に言及している。米国特許第4,152,421号明細書は、食品及び飲料、特に柑橘系ジュースの風味に実質的な後作用を有しない「公知」の特性と組み合わせた、新規な、高い起泡性の高モノアルキル含有率ホスフェートエステル(モノアルキル:ジアルキルホスフェート、すなわちMAP:DAP、70:30〜100:0の重量比)を挙げている。上記構造の概念及び範囲は、次の特許、米国特許第5,370,865号明細書に拡張されており、そこでは、塩基性アミノ酸塩(特に、リジン、アルギニン及びヒスチジン)の心地よい風味を強調している。別の初期の特許である、米国特許第4,264,580号明細書は、0.2〜1.0%のアニオン性ホスフェートエステル混合物(1:10〜10:1のモノアルキル:ジアルキル重量比)の導入をカバーし、ラウリル硫酸ナトリウム−炭酸カルシウム組成物中の結晶粒の形成を減らし、滑らかなペーストを製造した。米国特許第4,350,680は、0.2%のアニオン性ホスフェートエステル界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウムに関する追加の界面活性剤として用いられた場合に、歯ブラシ作業の際、口腔粘膜の脱落又は落屑を減少させると強調している。米国特許第5,019,373号明細書は、短鎖アルキル鎖(C6〜C9)ジアルキルホスフェートエステル、特にジオクチルホスフェートの導入に関する特別の優位性を強調している。上記ホスフェートエステル濃度は、歯磨き剤配合物中で、2〜4重量%である。抗う蝕活性に関する証拠が提供され、そこでは、1%のラウリル硫酸ナトリウム(普通の水と同様(プラセボ)である)と、1ppmのフッ化ナトリウム(陽性対照)との両方と比較して、1%ジオクチルホスフェート溶液を用いて処理された歯(in vitro)の、低い割合のカルシウム脱塩を示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、オーラルケア配合物に複数の利益を提供するために、モノ−、ジ−及びポリオールホスフェートエステル(例えば、PEGホスフェートエステル、PPGホスフェートエステル、グリセリンホスフェートエステル)を用いる。それらが用いられる濃度は、意図される用途及び所望の利益の量によって変わりうる。親水性の性質を有するこれらの分子は、歯から汚染物を除去することを助力することが期待される。それらはまた、歯に吸着されることにより、歯の汚染を予防することを助力する。本発明の口腔衛生組成物は、下記を含む:歯に汚染物及び細菌が付着することを防止するための剥離可能な(ablatable)コーティングを提供すること;象牙質知覚過敏症を有する歯の減感;いらだたしさの少なさ、及び改良された組織適合性又は許容性;抗微生物剤、香味油を含む種々の成分の高い堆積;過酸化物ホワイトニング剤との適合性;及び抗歯石特性を含む。
【0005】
第1の態様では、本発明は、下記を含むオーラルケア組成物に向けられている;
(a)艶出剤(研磨剤)、起泡剤(sudsing agent)(界面活性剤)、バインダー、保湿剤、薬剤、過酸化物供給源、重炭酸アルカリ金属(alkali metal bicarbonate salt)、増粘材料、水、二酸化チタン、香味剤、甘味剤、キシリトール、着色剤、水及びそれらの混合物から成る群から選択される、少なくとも1種の成分約10%〜約99%;及び
(b)下記を含む、イオン性親水化(hydrophilizing)剤;
(b)(I)下記から選択される有機リン材料:
(b)(I)(1)次の構造(I)に従う有機リン化合物:
【化1】

(式中、
各R1及び各R2は、独立して、存在しないか又はOであるが、R1及びR2の少なくとも一方はOであり、
各R3は、独立して、所望により、アルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)基の1つ又は2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール又はアリールオキシにより置換されてもよいアルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)であり、
5及び各R4は、独立して、存在しないか、あるいは所望により、アルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)基の1つ又は2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール又はアリールオキシにより置換されてもよいアルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)であり、
6及びR8は、それぞれ、そして各R7は、独立して、H若しくは(C1〜C30)炭化水素、又は−POR910であり、上記炭化水素は、1つ若しくは2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、フッ素、アルキル、アルケニル若しくはアリールにより所望により置換されていてもよく、そして/又は1若しくは2以上の位置のところで、O,N若しくはSヘテロ原子により所望により割り込まれてもよく、
9及びR10は、それぞれ独立して、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ又は(C1〜C30)炭化水素であり、上記炭化水素は、1つ若しくは2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、フッ素、アルキル、アルケニル若しくはアリールで所望により置換されていてもよく、そして/又は1若しくは2以上の位置において、O,N若しくはSヘテロ原子により割り込まれてもよく、そして
mは、1〜5の整数である);
(b)(I)(2)構造(I)に従う有機リン化合物の塩;
(b)(I)(3)構造(I)に従う1種又は2種以上の有機リン化合物の2又は3以上の分子の縮合反応生成物;及び
(b)(I)(4) (b)(I)(1)、(b)(I)(2)及び(b)(I)(3)の、2種又は3種以上の、化合物、塩及び/又は反応生成物を含む混合物;
(b)(II)下記から選択されるビニルアルコール材料;
(b)(II)(1)次の構造(I−a)に従うモノマー単位を含むポリマー:
【化2】

(b)(II)(2)ポリマー(b)(II)(1)の塩;
(b)(II)(3)1種又は2種以上のポリマー(b)(II)(1)の2又は3以上の分子の反応生成物:並びに
(b)(II)(4) (b)(II)(1)、(b)(II)(2)及び(b)(II)(3)の、2又は3以上の、ポリマー、塩及び/又は反応生成物を含む混合物。
【0006】
本発明は、歯磨き剤、特に一般的な練り歯磨き内で、有機リン材料を用いることにさらに関する。
本発明はまた、有機リン材料、研磨剤(艶出剤)及び所望による液体を含む歯清浄製品に関する。
【0007】
本発明は、下記;
(a)本明細書に記載される有機リン材料を含む、抗汚染薬剤;
(b)アルコール:及び
(c)水:
を含む口内洗浄剤を提供する。
【0008】
さらに、本発明に従う、有機リン材料系歯磨き剤の長期間の使用は、予想外に長期間持続する有益な治療効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、市販の練り歯磨きを用いてブラシをかけ、次いで、緑茶(左)及び紅茶(右)で汚染し、次いで市販の練り歯磨きを用いてさらにブラシをかけた卵殻の写真を示す。
【図2】図2は、市販の練り歯磨き+20%PEG400ホスフェートエステル(ポリエチレングリコール400ホスフェートエステル)を用いてブラシをかけ、次いで緑茶(左)及び紅茶(右)で汚染し、次いで、練り歯磨き+20%PEG400ホスフェートエステルを用いてブラシをかけた卵殻の写真を示す。
【図3】図3は、市販の練り歯磨き+20%SDSを用いてブラシをかけ、次いで緑茶(左)及び紅茶(右)で汚染し、次いで、練り歯磨き+20%SDSを用いてブラシをかけた卵殻の写真を示す。
【図4】図4は、市販の練り歯磨き+20%PEG1000ホスフェートエステルを用いてブラシをかけ、次いで緑茶(左)及び紅茶(右)で汚染し、次いで、練り歯磨き+20%PEG1000ホスフェートエステルを用いてブラシをかけた卵殻の写真を示す。
【図5】図5は、CaCO3結晶上の純粋な脱イオン水の下、ヘキサデカンの液滴を示す。
【図6】図6は、PEG1000ホスフェートエステルを用いて事前処理したCaCO3結晶上の1重量%PEG1000ホスフェートエステルの下のヘキサデカンの液滴を示し、PEG1000ホスフェートエステルがCaCO3結晶上に吸着されることにより、水中で、CaCO3上のヘキサデカンの接触角が高くなることを示す。
【図7】図7は、図5のうち、接触角を示す標識を付したものである。
【図8】図8は、図6のうち、接触角を示す標識を付したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、専門用語「疎水性表面」は、70°以上、さらに典型的には90°以上の水接触角、そして/又は約40ダイン/cm以下の界面自由エネルギーにより証明されるような、水をはじき、従って、水により湿潤されることに抵抗する傾向を示す表面を意味する。
【0011】
本明細書において、専門用語「親水性表面」は、70°未満、さらに典型的には60°未満の水接触角、そして又は約40ダイン/cm超、さらに典型的には約50ダイン/cm以上の表面エネルギーにより証明されるような、水に対するアフィニティーを示し、それにより水により湿潤される表面を意味する。
【0012】
本明細書において、疎水性表面に関して、用語「親水化」は、低い水接触角により示されるように、表面をさらに親水性にし、ひいては疎水性を少なくすることを意味する。処理された疎水性表面の高い親水性の指標の一つは、未処理の表面における水接触角と比較して、処理された表面における低い水接触角である。
【0013】
本明細書において、基材に関して、専門用語「水接触角」は、一般的なイメージ分析方法、すなわち、25℃において、表面(概して、実質的に平面)上に水の液滴を配置し、上記液滴を撮影し、そして画像に示される接触角を測定することにより測定されるような、表面上の水の液滴により示される接触角を意味する。
【0014】
表面エネルギーは、次のヤングの方程式:
cos(θ)*γlv=γsv−γsl
(接触角θ、固相及び気相の間の界面エネルギーγsv、固相及び液相の間の界面エネルギーγsl、及び液相及び気相の間の界面エネルギーγlv、そしてγsvは、固体の表面エネルギーを表す)
を用いて見積もられる。
【0015】
本明細書において、ポリマー又はその一部に関する「分子量」は、ポリマー又は一部の重量平均分子量(「Mw」)を意味し、そこでは、ポリマーのMwは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された値であり、そしてポリマーの一部のMwは、当該一部を製造するために用いられたモノマー、ポリマー、開始剤及び/又は移動剤の量から公知の技法に従って計算された値である。
【0016】
本明細書において、有機基又は化合物に関する表記法「(Cn〜Cm)」(n及びmは整数である)は、上記基又は化合物が、上記基又は化合物あたり、n〜m個の炭素原子を含むことを意味する。
【0017】
本発明の口腔配合物は、練り歯磨き又は歯磨き剤の形態であることができる。本明細書において、用語「歯磨き剤」は、他に規定がない限り、ペースト、ゲル又は液体配合物を意味する。上記歯磨き剤組成物は、任意の所望の形態、例えば、ディープストライプ化、表面ストライプ化、ペーストを囲むゲルを有する複層化形態、又はそれらの任意の組み合わせであることができる。各歯磨き剤組成物は、ディスペンサーの物理的に分離された区画内に含まれ、そして平行して分注されうる。
【0018】
本明細書において、用語「口腔配合物」は、口腔表面に供給される、全ての歯磨き剤を意味する。上記口腔配合物は、通常の使用において、特定の治療薬の全身の投与の目的で意図的に嚥下されないが、口腔活性の目的で、歯の表面及び/又は口腔組織の実質的に全てに接触させるために十分な時間の間、口腔内にある程度保持される。
【0019】
本明細書において、用語「水性キャリア」は、本発明の口腔組成物内で用いるために、安全で且つ有効な材料を意味する。上記材料には、研磨艶出材料、過酸化物供給源、重炭酸アルカリ金属、増粘材料、保湿剤、水、界面活性剤、二酸化チタン、香味システム、甘味剤、キシリトール、着色剤、及びそれらの混合物が含まれる。
【0020】
本発明の組成物は、必須成分、並びに所望による成分を含む。本発明の必須成分及び所望による成分は、下記のパラグラフに記載されている。
オーラルケア用組成物は、多種多様の製品、例えば、練り歯磨き、口内洗浄剤及びリンスを含む。
【0021】
[有機リン材料]
本発明は、界面活性剤と、下記から選択される有機リン材料を含む親水化剤とを含むオーラルケア組成物を含む;
(1)次の構造(I)に従う有機リン化合物:
【化3】

(式中、
各R1及び各R2は、独立して、存在しないか又はOであるが、R1及びR2の少なくとも一方はOであり、
各R3は、独立して、所望により、アルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)基の1つ又は2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール又はアリールオキシにより置換されてもよいアルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)であり、
5及び各R4は、独立して、存在しないか、あるいは所望により、アルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)基の1つ又は2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール又はアリールオキシにより置換されてもよいアルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)であり、
6及びR8は、それぞれ、そして各R7は、独立して、H若しくは(C1〜C30)炭化水素、又は−POR910であり、上記炭化水素は、1つ若しくは2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、フッ素、アルキル、アルケニル若しくはアリールにより所望により置換されていてもよく、そして/又は1若しくは2以上の位置のところで、O,N若しくはSヘテロ原子により所望により割り込まれてもよく、
9及びR10は、それぞれ独立して、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ又は(C1〜C30)炭化水素であり、上記炭化水素は、1つ若しくは2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、フッ素、アルキル、アルケニル若しくはアリールで所望により置換されていてもよく、そして/又は1若しくは2以上の位置において、O,N若しくはSヘテロ原子により割り込まれてもよく、そして
mは、1〜5の整数である);
(2)構造(I)に従う有機リン化合物の塩;
(3)構造(I)に従う1種又は2種以上の有機リン化合物の2又は3以上の分子の縮合反応生成物:並びに
(4) (1)、(2)及び(3)の、2種又は3種以上の、化合物、塩及び/又は反応生成物。
【0022】
好適な有機リン材料はまた、2006年9月5日に出願された米国仮出願第60/842,265号明細書、及び2006年6月12日に出願された同第60/812,819号明細書に記載されている(両出願を参照することにより、本明細書に援用する)。
【0023】
本明細書において、用語「アルキル」は、一価の飽和の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基、概して、一価の飽和の(C1〜C30)炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル又はn−ヘキシル(所望により、上記基の1つ又は2つ以上の炭素原子上で、置換されていてもよい)を意味する。実施形態の一つでは、アルキル基は、アルコキシ、アミノ、ハロ、カルボキシ又はホスホノにより、当該基の1つ又は2つ以上の炭素原子上で置換されている(例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、メトキシメチル、エトキシメチル、イソプロポキシエチル、アミノメチル、クロロメチル若しくはトリクロロメチル、カルボキシエチル、又はホスホノメチル)。
【0024】
本明細書において、用語「ヒドロキシアルキル」は、その炭素原子の一つが、ヒドロキシル基で置換されているアルキル基を意味する。
本明細書において、用語「アルコキシル」は、アルキル基で置換されているオキシ基、例えば、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、又はブトキシルを意味する(所望により、上記基の1つ又は2つ以上の炭素原子上で、さらに置換されていてもよい)。
【0025】
本明細書において、用語「シクロアルキル」は、飽和の環式の炭化水素基、概して(C3〜C8)の飽和の環式の炭化水素基、例えば、シクロヘキシル又はシクロオクチル(所望により、上記基の1つ又は2つ以上の炭素原子上で、置換されていてもよい)を意味する。
本明細書において、用語「アルケニル」は、1又は2以上の炭素−炭素二重結合を含む、不飽和の直鎖、分岐鎖又は環式の炭化水素基、例えば、エテニル、1−プロペニル又は2−プロペニル(所望により、上記基の1つ又は2つ以上の炭素原子上で、置換されていてもよい)を意味する。
【0026】
本明細書において、用語「アリール」は、不飽和度を3つの共役する二重結合により表すことができる、1又は2以上の6員環の炭素環を含む、一価の不飽和の炭化水素基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル又はビフェニルを意味する(当該環の1つ又は2つ以上の炭素上で、所望により置換されていてもよい)。実施形態の一つでは、アリール基は、当該基の1つ又は2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、アルケニル、ハロ、ハロアルキル又はアミノにより置換されていてもよい(例えば、メチルフェニル、ジメチルフェニル、ヒドロキシフェニル、クロロフェニル、トリクロロメチルフェニル又はアミノフェニル)。
【0027】
本明細書において、用語「アリールオキシ」は、アリール基で置換されているオキシ基、例えば、フェニルオキシ、メチルフェニルオキシ、イソプロピルメチルフェニルオキシを意味する。
【0028】
本明細書において、基が、「所望により置換されている」又は「所望によりさらに置換されている」ことができる指標は、一般に、明確に又は上記参照の文脈により、さらに制限されていない限り、上記基が、1又は2以上の無機又は有機置換基、例えば、アルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、アルカリル、ヘテロ原子又はヘテロシクリルで置換されてよい、あるいは金属イオンに配位結合することができる1又は2以上の官能基、例えば、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、アミノ、イミノ、アミド、ホスホン酸、スルホン酸、又はそれらの無機及び有機エステル、例えば、スルフェート若しくはホスフェート、又はそれらの塩で置換されていてもよいことを意味する。
【0029】
本明細書において、有機基に関する専門用語「(Cx〜Cy)」(x及びyは、それぞれ、整数である)は、当該基が、1つの基あたり、x個の炭素原子からy個の炭素原子を含むことができることを示す。
実施形態の一つでは、R6及びR8は、それぞれ、そして各R7は、独立して、H、(C1〜C30)アルキル、(C1〜C30)アルケニル又は(C7〜C30)アルカリルである。
【0030】
実施形態の一つでは、各R1及び各R2はOであり、そして上記有機リン化合物は、下記から選択される;
(II)(1)次の構造(II)に従う有機ホスフェートエステル:
【化4】

(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びmは、それぞれ、上述の通りである);
(II)(2)構造(II)に従う有機リン化合物の塩;
(II)(3)構造(II)に従う1種又は2種以上の有機リン化合物の2つ又は3つ以上の分子の縮合反応生成物:並びに
(II)(4) (II)(1)、(II)(2)及び(II)(3)の、2種又は3種以上の、化合物、塩及び/又は反応生成物。
【0031】
実施形態の一つでは、各R1は存在せず、各R2はOであり、そして上記有機リン化合物は、下記から選択される;
(III)(1)次の構造(III)に従う有機ホスホネートエステル:
【化5】

(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びmは、それぞれ、上述の通りである);
(III)(2)構造(III)に従う有機リン化合物の塩;
(III)(3)構造(III)に従う1種又は2種以上の有機リン化合物の2つ又は3つ以上の分子の縮合反応生成物:並びに
(III)(4)(III)(1)、(III)(2)及び(III)(3)の、2種又は3種以上の、化合物、塩及び/又は反応生成物。
【0032】
実施形態の一つでは、各R1はOであり、各R2は存在せず、そして上記有機リン化合物は、下記から選択される;
(IV)(1)次の構造(IV)に従う有機ホスホネートエステル:
【化6】

(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びmは、それぞれ、上述の通りである);
(IV)(2)構造(IV)に従う有機リン化合物の塩;
(IV)(3)構造(IV)に従う1種又は2種以上の有機リン化合物の2つ又は3つ以上の分子の縮合反応生成物:並びに
(IV)(4) (IV)(1)、(IV)(2)及び(IV)(3)の、2種又は3種以上の、化合物、塩及び/又は反応生成物。
【0033】
実施形態の一つでは、各R3は、次の構造(V)、(VI)、(VII)又は(VIII)に従う2価基である:
【化7】

(式中、
各R12及び各R13は、独立して、H、ヒドロキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール、アリールオキシであるか、又は隣接する炭素原子と結合している2つのR12基が縮合して、それらが結合している炭素原子と共に、(C6〜C8)炭化水素環を形成し、
20は、H、ヒドロキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール又はアリールオキシであり、
22は、ヒドロキシル又はヒドロキシアルキルであるが、R20及びR22は、それぞれ、ヒドロキシルではない、
23及びR21は、それぞれ独立して、メチレン又はポリ(メチレン)であり、
p,p’,p’’,q,及びxは、それぞれ独立して、2〜5の整数であり、
各r,s,r’,r’’及びyは、独立して、0〜25の数であるが、r及びsの少なくとも一方は0ではない、
uは、2〜10の整数であり、
v及びwは、それぞれ、1〜25の数であり、そして
t,t’,及びt’’は、それぞれ、1〜25の数であるが、
数(r+s)×tの積が約100以下であり、数(v+r’)×t’の積が約100以下であり、そして数(w+r’’)×t’’の積が約100以下である)。
【0034】
実施形態の一つでは、各R4及び各R5は、独立して、存在しないか、又は構造(V)、(VI)若しくは(VII)に従う2価基(式中、R12,R13,R20,R21,R22,R23,p,p’,p’’,q,r,r’,r’’,s,t,t’’,t,u,v,w,x及びyは、上述の通りである)である。
実施形態の一つでは、各R3は、独立して、構造(V)、(VI)又は(VII)に従う2価基(式中、R12、R13、R20、R21、R22、R23,p,p’,p’’,q,r,r’,r’’,s,t,t’’,t,u,v,w,x,及びyは、上述の通りであり、そしてR4及びR5は、それぞれ独立して、存在しないか又はR3である)である。
【0035】
実施形態の一つでは、各R3は、独立して、構造(V)に従う2価基(式中、pは2、3又は4であり、rは整数1〜25であり、sは0であり、tは1〜2の整数であり、そしてR4及びR5は、それぞれ独立して、存在しないか又はR3である)である。
【0036】
実施形態の一つでは、各R3は、独立して、構造(VI)に従う2価基(式中、R12基が縮合して、それらが結合している炭素原子を含む、(C6〜C8)炭化水素環を形成し、各R13はHであり、p’は2又は3であり、uは2であり、vは1〜3の整数であり、r’は整数1〜25であり、t’は1〜25の整数であり、数(v+r’)×t’’の積は、約100以下であり、さらに典型的には約50以下であり、そしてR4及びR5は、それぞれ独立して、存在しないか又はR3である)である。
【0037】
実施形態の一つでは、各R3は、独立して、構造(VII)に従う2価基(式中、R20は、ヒドロキシル又はヒドロキシアルキルであり、R22は、H、アルキル、ヒドロキシル又はヒドロキシアルキルであるが、R20及びR22は、それぞれ、ヒドロキシルではなく、R21及びR23は、それぞれ独立して、メチレン、ジ(メチレン)又はトリ(メチレン)であり、wは1又は2であり、p’’は2又は3であり、r’’は1〜25の整数であり、t’’は1〜25の整数であり、数(w+r’’)×t’’の積は、約100以下であり、さらに典型的には約50以下であり、そしてR4及びR5は、それぞれ独立して、存在しないか又はR3である)である。
【0038】
構造(II)に従う有機リン化合物の実施形態の一つでは、
6及びR8は、それぞれ、そして各R7は、独立して、H若しくは(C1〜C30)炭化水素、又は−POR910であり、上記炭化水素は、1つ若しくは2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、フッ素、アルキル、アルケニル若しくはアリールにより所望により置換されていてもよく、そして/又は1若しくは2以上の位置のところで、O,N若しくはSヘテロ原子により所望により割り込まれてもよく、さらに典型的には、R6、R8及び各R7は、それぞれ、Hであり、
4及びR5は、それぞれ、存在せず、
各R3は、独立して、構造(V)、(VI)又は(VII)に従う2価基であり、そして
mは、1〜5の整数である。
【0039】
構造(II)に従う有機リン化合物の実施形態の一つでは、
6、R8及び各R7は、それぞれ、Hであり、
4及びR5は、それぞれ、存在せず、
各R3は、独立して、構造(V)に従う2価基であり、
各pは、独立して、2、3又は4であり、さらに典型的には、2又は3であり、
各rは、独立して、1〜約100の数、さらに典型的には2〜約50の数であり、
各sは、0であり、
各tは、1であり、及び
mは、1〜5の整数である。
【0040】
実施形態の一つでは、上記有機リン材料は、下記から選択される;
(X)(1)次の構造(IX)に従う有機リン化合物:
【化8】

(式中、
pは、2、3又は4であり、さらに典型的には2又は3であり、
rは、4〜約50の数である);
(IX)(2)構造(IX)に従う有機リン化合物の塩:並びに
(IX)(3) (IX)(1)及び(IX)(2)の、2種又は3種以上の、化合物及び/又は塩を含む混合物。
【0041】
構造(II)に従う有機リン化合物の実施形態の一つでは、
6、R8及び各R7は、それぞれ、Hであり、
4及びR5は、それぞれ、存在せず、
各R3は、独立して、構造(VI)に従う2価基であり、
12基が縮合して、それらが結合している炭素原子を含む、(C6〜C8)炭化水素環を形成し、
各R13は、Hであり、
p’は、2又は3であり、
uは、2であり、
vは、1であり、
r’は、1〜25の数であり、
t’は、1〜25の数であり、
数(v+r’)×t’の積が、約100以下であり、そして
mは、1〜5の整数である。
【0042】
構造(II)に従う有機リン化合物の実施形態の一つでは、
6、R8及び各R7は、それぞれ、Hであり、
4及びR5は、それぞれ、存在せず、
各R3は、独立して、構造(VII)に従う2価基であり、
20は、ヒドロキシル又はヒドロキシアルキルであり、
22は、H、アルキル、ヒドロキシル又はヒドロキシアルキルであり、
23及びR21は、それぞれ独立して、メチレン、ジ(メチレン)又はトリ(メチレン)であり、
wは、1又は2であり、
p’’は、2又は3であり、
r’’は、1〜25の数であり、
t’’は、1〜25の数であり、
数(w+r’’)×t’’の積が、約100以下であり、そして
mは、1〜5の整数である。
【0043】
実施形態の一つでは、上記有機リン化合物は、構造(III)に従い、各R3は、構造(V)に従う2価基であり、そしてs=0及びt=1であり、R4及びR5は、それぞれ、存在せず、そしてR6、R7及びR8は、それぞれ、Hである。
【0044】
実施形態の一つでは、上記有機リン化合物は、構造(IV)に従い、R3及びR5は、それぞれ、構造(V)に従い、そしてs=0及びt=1であり、そしてR6及びR8は、それぞれ、Hである。
実施形態の一つでは、有機リン材料(b)(I)は、構造(I)に従う2つ又は3つ以上の分子の縮合反応生成物を含む。
【0045】
実施形態の一つでは、有機リン材料(b)(I)は、直鎖の分子の形の構造(I)に従う2つ又は3つ以上の分子の縮合反応生成物、例えば、構造(II)に従う分子を、構造(IV)に従う分子と縮合することにより形成された、次の構造(X):
【化9】

(式中、R4,R7,p,rは、それぞれ、上述の通りである)
に従う直鎖の縮合反応生成物を含む。
【0046】
実施形態の一つでは、有機リン材料(b)(I)は、架橋網目形状の、構造(I)に従う2つ又は3つ以上の分子の縮合反応生成物を含む。
例示的な架橋された縮合反応生成物網目の一部を、次の構造(XI):
【化10】

(式中、
1、R2、R4、R5、R6、R7、R8及びmは、それぞれ、上述の通りであり、そして
各R3’は、独立して、構造(I)に従う化合物のR3基の残差であり、R3基は、アルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)部分の1つ又は2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル−、ヒドロキシアルキル−、ヒドロキシアルキレンオキシ−又はヒドロキシポリ(アルキレンオキシ)−により置換されたアルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)部分であり、そして−R3’−R4−及び−R3’−R5−は、それぞれ、R3基と、構造(I)に従う化合物の別の分子の−R3’−R5−又はR8−R5−基との縮合により形成された結合を表す)
により具体的に説明される。
【0047】
実施形態の一つでは、有機リン材料(b)(I)は、構造(I)に従う2つ又は3つ以上の分子の縮合反応生成物を含み、そして当該縮合反応生成物は、共有結合的に架橋された有機リン網目を形成する。典型的には、上記共有結合的に架橋された有機リン網目の水中の溶解性は、構造(I)に従う有機リン化合物より低く、さらに典型的には、上記共有結合的に架橋された有機リン網目は、水に実質的に不溶である。
【0048】
本明細書において、用語「塩」は、無機塩基又は有機塩基と、無機酸又は有機酸とを含む、塩基及び酸から調製された塩を指す。
実施形態の一つでは、有機リン材料(b)(I)は、構造(I)に従う有機リン化合物に由来するアニオン(例えば、ヒドロキシル又はヒドロキシアルキル置換基の脱プロトン化)と、塩基に由来する1又は2以上の正に帯電した対イオンとを含む塩の状態にある。
【0049】
好適な正に帯電した対イオンは、無機カチオン及び有機カチオン、例えば、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、カルシウムカチオン、マグネシウムカチオン、銅カチオン、亜鉛カチオン、アンモニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、並びに第1級、第2級及び第3級アミンに由来するカチオン、及び置換されたアミンを含む。
実施形態の一つでは、上記カチオンは、一価のカチオン、例えば、Na+又はK+である。
【0050】
実施形態の一つでは、上記カチオンは、多価のカチオン、例えば、Ca+2,Mg+2,Zn+2,Mn+2,Cu+2,Al+3,Fe+2,Fe+3,Ti+4,Zr+4であり、上記ケースでは、上記有機リン化合物は、上記有機リン化合物及び上記多価のカチオンから形成された「塩錯体」の状態であることができる。1分子あたり、2又は3以上のアニオン性位置、例えば、脱プロトン化ヒドロキシル置換基を有する有機リン化合物の場合、上記有機リン化合物−多価のカチオン錯体は、イオン的に架橋された網目構造を展開することができる。概して、イオン的に架橋された有機リン網目の、水への溶解性は、構造(I)に従う有機リン化合物の溶解性より低く、さらに典型的には、上記イオン的に架橋された有機リン網目は、実質的に水に不溶である。
【0051】
好適な有機リン化合物は、例えば、米国特許第5,550,274号明細書、同第5,554,781号明細書及び同第6,136,221号明細書に開示される、1分子あたり、それぞれ、2つ又は3つ以上のヒドロキシル基を有する1種又は2種以上の化合物を、リン酸、ポリリン酸及び/又は無水リン酸と反応させることによる、公知の合成方法により製造されうる。
【0052】
実施形態の一つでは、カチオンが、水不溶性基材上に固定され、水不溶性カチオン性粒子を形成し、そして親水化層が、カチオン性粒子をさらに含む。好適な基材には、無機酸化物粒子、例えば、単一元素の酸化物、例えば、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、二酸化ケイ素及び酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化インジウム及び酸化スズ、及び上記酸化物の混合物、並びに上記元素の混合物の酸化物、例えば、セリウム−酸化ジルコニウムが含まれる。上記粒子は、動的光散乱又は光学顕微鏡法により測定されるような、約1ナノメートル(「nm」)〜約50マイクロメートル(「μm」)、さらに典型的には約5〜約1000nm、さらに典型的には約10〜約800nm、そしてさらに典型的には約20〜約500nmの平均粒径(「D50」)を示すことができる。実施形態の一つでは、アルミニウムカチオンが、シリカ粒子上に固定される。
【0053】
[ビニルアルコール材料]
実施形態の一つでは、上記オーラルケア製品は、親水化材料として、ビニルアルコール材料(b)(II)を含む。
改良された水への溶解性及び改良された加工性を提示する実施形態の一つでは、上記ビニルアルコール材料(b)(II)は、構造(I−a)に従うモノマー単位を含むポリマー(「ビニルアルコールポリマー」)を含む。
【0054】
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、約10,000以上、さらに典型的には約10,000〜約100,000、さらに典型的には約10,000〜約30,000の重量平均分子量を示す。改良された耐久性を提示する別の実施形態では、上記ビニルアルコールポリマーは、約100,000以上、さらに典型的には約100,000〜約200,000の重量平均分子量を示す。加工性及び耐久性の間の均衡を提示する別の実施形態では、上記ビニルアルコールポリマーは、約50,000以上、さらに典型的には約50,000〜約150,000、さらに典型的には約80,000〜約120,000の重量平均分子量を示す。
【0055】
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、ビニルエステルモノマー、例えば、ビニルアセテートを重合して、炭化水素主鎖及びエステル置換基を有する、ビニルアセテートに由来するモノマー単位を含むポリマー、例えば、ポリ(ビニルアセテート)ホモポリマー又はコポリマーを生成し、次いで、上記ポリマーのエステル置換基の少なくとも一部を加水分解して、構造(I−a)に従うヒドロキシ置換されたモノマー単位を形成することにより製造される。改良された水への溶解性と、改良された加工性とを提供する実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、約88%以上、さらに典型的には約88%〜約95%の加水分解度を示す。本明細書において、炭化水素主鎖及びエステル置換基を当初に有するポリマーを加水分解することにより製造されるビニルアルコールポリマーに関して、用語「加水分解度」は、ヒドロキシ−置換モノマー単位を生成するために加水分解された、ビニルエステル−置換モノマー単位のパーセンテージとして表現した相対量を意味する。水への改良された溶解性と、改良された耐久性とを提示する別の実施形態では、上記ビニルアルコールポリマーは、約99%以上の加水分解度を示す。水への溶解性及び耐久性の間の折衷案を提供するさらに別の実施形態では、上記ポリマーは、約92〜約99%の加水分解度を示す。
【0056】
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、線状ポリマー構造を有する。別の実施形態では、上記ビニルアルコールポリマーは、分岐ポリマー構造を有する。
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、構造(I−a)に従うモノマー単位から単に成るビニルアルコールホモポリマーである。
【0057】
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、構造(I−a)に従う構造を有するモノマー単位を含み、そして構造(I−a)以外の構造を有するコモノマー単位をさらに含むビニルアルコールコポリマーである。実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、(I−a)に従うヒドロキシ−置換モノマー単位と、エステル置換されたモノマー単位とを含むコポリマーであり、そしてビニルエステルホモポリマーの不完全な加水分解により製造される。
【0058】
実施形態の一つでは、ビニルアルコールコポリマーは、約50モル%(「mol%」)以上、さらに典型的には約80mol%以上の、構造(I−a)に従うモノマー単位と、約50mol%未満、さらに典型的には約20mol%未満の、構造(I−a)以外の構造を有するコモノマー単位とを含む。
【0059】
上述のように、構造(I−a)に従うモノマー単位を有するビニルアルコールポリマーは、ビニルエステルモノマーの重合と、上記ポリマーのビニルエステル−置換モノマー単位の次の加水分解とに由来するのが典型的である。好適なビニルアルコールコポリマーは、上記ビニルエステルモノマーを、上記ビニルエステルモノマーと共重合性であるエチレン系不飽和モノマー、例えば、他のビニルモノマー、アリルモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー、アクリルアミドモノマーと共重合し、次いで、エステル−置換モノマー単位の少なくとも一部を加水分解して、構造(I−a)に従うヒドロキシ−置換モノマー単位を形成することに由来するのが典型的である。
【0060】
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、構造(I−a)に従うモノマー単位を含み、そして構造(I−a)に従うモノマー以外の親水性モノマー単位をさらに含む。本明細書において、用語「親水性モノマー単位」は、上記モノマー単位のホモポリマーが、25℃において、1重量%のホモポリマー濃度で、水に可溶であり、そして下記に由来するモノマー単位等を含むものである:例えば、ヒドロキシ(C1〜C4)アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(C1〜C4)アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル−アクリルアミド、アルコキシル化(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)−モノメタクリレート及びポリ(エチレングリコール)−モノメチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシ(C1〜C4)アクリルアミド及びメタクリルアミド、ヒドロキシル(C1〜C4)アルキルビニルエーテル、N−ビニルピロール、N−ビニル−2−ピロリドン、2−及び4−ビニルピリジン、計3〜5個の炭素原子を有するエチレン系の不飽和カルボン酸、アミノ(C1〜C4)アルキル、モノ(C1〜C4)アルキルアミノ(C1〜C4)アルキル、及びジ(C1〜C4)アルキルアミノ(C1〜C4)アルキル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリルアミド。
【0061】
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、構造(I−a)に従うモノマー単位を含み、そして疎水性のモノマー単位をさらに含む。本明細書において、用語「疎水性モノマー単位」は、上記モノマー単位のホモポリマーが、25℃において、1重量%のホモポリマー濃度で、水に不溶であり、そして下記に由来するモノマー単位等を含むものである:(C1〜C18)アルキル及び(C5〜C18)シクロアルキル(メタ)アクリレート、(C5〜C18)アルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニル(C1〜C18)アルカノエート、(C2〜C18)アルケン、(C2〜C18)ハロアルケン、スチレン、(C1〜C6)アルキルスチレン、(C4〜C12)アルキルビニルエーテル、フッ素化(C2〜C10)アルキル(メタ)アクリレート、(C3〜C12)パーフルオロアルキルエチルチオカルボニルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルオキシアルキルシロキサン、N−ビニルカルバゾール、(C1〜C12)アルキルマレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びメサコン酸エステル、ビニルアセテート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルエチルチオカルボニルアミノエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサ−フルオロイソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレート、トリストリメチルシリルオキシシリルプロピルメタクリレート、及び3−メタクリルオキシプロピルペンタメチルジシロキサン。
【0062】
本明細書において、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はアクリレート及びメタクリレートを意味し、そして用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアクリルアミド及びメタクリルアミドを意味する。
実施形態の一つでは、構造(I−a)に従うモノマー単位を含むポリマーは、ランダムコポリマーである。別の実施形態では、構造(I−a)に従うモノマー単位を含むコポリマーは、ブロックコポリマーである。
【0063】
好適なビニルアルコールポリマーを製造するための方法は、当業界に公知である。実施形態の一つでは、構造(I−a)に従うモノマー単位を含むポリマーは、公知のラジカル重合方法により、少なくとも1種のビニルエステルモノマー、例えば、ビニルアセテートを含む1種又は2種以上のエチレン系の不飽和モノマーを重合し、続いて、上記ポリマーのビニルエステルモノマー単位の少なくとも一部を加水分解して、所望の加水分解度を有するポリマーを製造することにより製造される。別の実施形態では、上記構造(I−a)に従うモノマー単位を含むポリマーは、公知の制御されたラジカル重合技法、例えば、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT,reversible addition fragmentation transfer)、ザンテートの交換を経由した高分子設計(MADIX,macromolecule design via interchange of xanthates)、又は原子移動可逆重合(ATRP,atom transfer reversible polymerization)により製造されたコポリマーである。
【0064】
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコールポリマーは、典型的には、脂肪族アルコール反応媒体内で、公知の溶液重合技法により製造される。
別の実施形態では、上記ビニルアルコールポリマーは、水性反応媒体内で、1種又は2種以上の界面活性剤の存在下で、エマルション重合技法により製造される。
【0065】
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコール材料は、ビニルアルコールポリマーの分子を架橋することにより製造されるミクロゲルを含む。
実施形態の一つでは、上記ビニルアルコール材料は、ビニルアルコールポリマーの塩、例えば、ナトリウム又はカリウム塩を含む。
【0066】
[組成物]
本明細書に記載される有機リン材料はまた、様々なオーラルケア製品で用いられうる。本発明に従う組成物は、任意の形態で提供されることができ、そして複数の方式で用いられうる。従って、本発明に従う組成物は、ペースト、ゲル又は液体の状態であることができる。例えば、上記有機リン材料は、練り歯磨き(例えば、米国特許第5,939,052号明細書に記載されるもの)、及び口内洗浄剤(例えば、米国特許第6,767,560号明細書に記載されるもの)、及び他の歯磨き剤(例えば、米国特許出願公開第2004/0185207号明細書に記載されるもの)内で用いられることができる(このパラグラフで論じた各文献を参照することにより、本明細書に援用する)。
【0067】
本発明に従う練り歯磨き又はゲルは、上述の有機リン材料、適合する研磨剤系、及び液体を、所望の粘稠度を提供するような量で含むのが一般的であろう。
【0068】
例示的な練り歯磨きでは、上記液体は、水、保湿剤及びバインダーを、一般的に、当該練り歯磨きの約10〜約90重量%の範囲にわたる量で含むことができる。水は、練り歯磨き又はゲルが調製される場合の望ましい成分である。水は、上記練り歯磨き最大約50%、そして好ましくは約5〜35重量%を構成する。しかし、無水の練り歯磨き又はゲルが、必要に応じて配合されうる。
【0069】
本発明に従う歯磨き粉は、本明細書に記載される、可溶性のモノアルキル及びジアルキルホスフェートエステル塩と適合する艶出剤、例えば、重炭酸ナトリウム又はケイ酸を含むことができる。一般的に、上記艶出剤は、上記配合物の約20〜約95重量%、そして好ましくは約50重量%超の量であろう。本明細書に記載されるモノアルキル及びジアルキルホスフェートエステルの有効量は、上記歯磨き粉配合物の典型的には約0.1〜約10重量%、そして好ましくは約1重量%〜約5重量%である。上記歯磨き粉に含まれうる、所望によるが、好ましい成分は、着香剤及び/又は甘味剤、抗歯石剤、例えば、水溶性のポリホスフェートのアルカリ金属塩、抗う蝕剤、例えば、フッ化ナトリウム又はモノフルオロリン酸ナトリウム、緩衝剤、例えば、オルトリン酸アルカリ金属、リン酸、アルカリ金属グリセロホスフェート、タルトレート、又はシトレート、並びに1種又は2種以上の加工助剤、例えば、製品均一性を確保するフロー助剤である。
【0070】
本発明に従う口内洗浄剤は、一般的にアルコール、水、保湿剤、及び所望による、有効量の、本明細書に記載されるモノアルキル及びジアルキルホスフェートエステル塩を含む。上記口内洗浄剤内のモノアルキル及びジアルキルホスフェートエステル塩の有効量は、上記口内洗浄剤の、典型的には約0.1%〜約10%、そして好ましくは約1重量%〜約5重量%である。上記口内洗浄剤内に含まれる。所望によるが好ましい成分は、着香剤及び/又は甘味剤、抗歯石剤、例えば、水溶性のポリホスフェートのアルカリ金属塩、抗う蝕剤、例えば、フッ化ナトリウム又はモノフルオロリン酸ナトリウム、緩衝剤、例えば、オルトリン酸アルカリ金属、リン酸、アルカリ金属グリセロホスフェート、タルトレート、又はシトレートである。
【0071】
本明細書において、用語「水性媒体」及び「複数の水性媒体」は、本明細書において、水が主要な成分である液状媒体を指すために用いられる。従って、上記用語は、水それ自体、並びに水性溶液及び分散液を含む。例えば、上記水性媒体は、液状の身体排出物、例えば、小便、生理及び唾液であることができる。
【0072】
実施形態の一つでは、上記オーラルケア組成物は、上記組成物100重量部に基づいて(「pbw」)、約0.1〜約20pbw、さらに典型的には、約1〜約5pbwの有機リン材料と、約80〜99pbw、さらに典型的には、約90〜約98pbwのキャリアとを含む。
上記組成物のpH、又は本発明に従う組成物の使用のpHは、用途によって変わりうる。上記組成物のpHは重要ではなく、そして約2〜約12、好ましくは約4〜約10、そして最も好ましくは約6〜約8の範囲内にあることができる。上記pHは、緩衝剤、例えば、クエン酸を用いて調整することができる。
【0073】
本発明の上記オーラルケア組成物は、その用途にもよるが、その0.001〜10重量%の、少なくとも1種の上記有機リン材料(ホスフェートエステル)を含むことができる。
上記組成物は、所望によるすすぎの後、歯の表面に堆積されたホスフェートエステルの量が、処理された表面の、典型的には0.0001〜10mg/m2、例えば、0.001〜5mg/m2となるような量で用いられうる。
【0074】
他に表示がない限り、モル質量に言及される場合、g/molで表現される重量平均モル質量が参照される。後者は、ポリマーの組成にもよるが、水性溶離剤又は有機系溶離剤(例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等)を用いて、水性ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)又は光散乱(DLS又はMALLS)により測定することができる。
【0075】
[追加の成分]
本発明の有機リン材料に加えて、本発明のオーラルケア製品、例えば、口内洗浄剤、チューインガム、可溶性のオーラルケアストリップ(LISTERINE(商標)オーラルケアストリップと同様)、舐剤及び練り歯磨きは、添加剤成分を含む。上記製品に対するさらなる背景技術は、1998年3月6日に出願され、国際公開第98/38973号として公開されたPCT出願番号PCT/US98/04474号明細書、並びに米国特許第6,864,314号明細書に提供される(参照により、その全体を本明細書に援用する)。
【0076】
本発明に従う口腔衛生組成物は、限定されることを意図せず、この分野で習慣的に用いられる成分、例えば、艶出剤(研磨剤)、起泡剤(界面活性剤)、バインダー、保湿剤、薬剤、過酸化物供給源、重炭酸アルカリ金属、増粘材料、水、二酸化チタン、香味剤、甘味剤、キシリトール、着色剤、水及びそれらの混合物を含むことができる。よく知られている、市販の抗過敏性薬剤は、硝酸カリウムである。本発明のオーラルケア組成物の調製において、1種又は2種以上のこれらの追加の成分を、上記組成物に添加することが望ましい。上記材料は、当業界に周知であり、そして調製すべき組成物に関して望ましい物理的特性及び美的特性に基づいて、当業者により簡易に選択される。これらの追加の成分は、上記歯磨き剤組成物の、典型的には約40重量%〜約99重量%、好ましくは約70重量%〜約98重量%、そしてさらに好ましくは約90重量%〜約95重量%を構成する。
【0077】
例えば、所望によるが好ましい、本発明に従うオーラルケア製品に含まれうる成分は、有機系バインダー;無機系増粘剤、例えば、シリカ;第2の界面活性剤及び/又は甘味剤;着色剤及び/又は顔料;抗微生物薬;並びに練り歯磨き及びゲルに中将添加される同様の成分である。本発明の組成物において用いるために好適なバインダーには、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース、並びにキサンタンガム、イリス・モス(Iris moss)及びトラガカントガムが含まれる。バインダーは、0.01〜10%の量で存在することができる。用いるために好適な甘味料、例えばサッカリンが、約0.1%〜5%の濃度で存在することができる。
【0078】
[研磨艶出材料]
研磨艶出材料がまた、上記練り歯磨き組成物に含まれうる。本発明の組成物中で用いることが企図される研磨艶出材料は、象牙質を過度に研磨しない任意の材料であることができる。典型的な研磨艶出材料には、シリカ、例えば、シリカゲル及び沈降シリカ;アルミナ;ホスフェート、例えば、無機オルトホスフェート、ピロホスフェート、メタホスフェート、ポリホスフェート及びヘキサメタホスフェート;及びそれらの混合物が含まれる。具体例には、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、トリリン酸カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、アルミナ水和物、β−ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び樹脂研磨材、例えば、ウレア及びホルムアルデヒドの粒子状の縮合生成物、並びにその他、例えば、1962年12月25日に発行された、Cooleyらによる米国特許第3,070,510号明細書(参照により、本明細書に援用する)に開示されるものが含まれる。研磨剤の混合物をまた用いることができる。
【0079】
歯のエナメル又は象牙質を過度に研磨することなく、優れた歯の清浄性能及び研磨性能の特有の利益のため、種々の型の歯用シリカ研磨剤が好ましい。本明細書において、シリカ研磨艶出材料、並びに他の研磨剤は、一般的に、約0.1〜約30μm、そして好ましくは約5〜約15μmの範囲にわたる平均粒径を有する。上記研磨剤は、沈降シリカ又はシリカゲル、例えば、1970年5月2日に発行された、Paderらの米国特許第3,538,230号明細書、及び1975年1月21日に発行された、DiGiulioの米国特許第3,862,307号明細書(両文献を参照することにより、本明細書に援用する)に記載されるシリカキセロゲルであることができる。好ましいのは、W.R.Grace&Company,Davison Chemical Divisionにより、商標名「Syloid」の下で市販されるシリカキセロゲルである。また、好ましいのは、沈降シリカ材料、例えば、J.M.Tuber Corporationにより、商標名「Zeodent」、特に、名称「Zeodent 119」の下で市販されるものである。本発明において有用な種類の歯用シリカ研磨剤は、1982年の7月29日に発行された、Wasonの米国特許第4,340,583号明細書(参照により、本明細書に援用する)にさらに詳細に記載されている。1995年5月2日に発行された米国特許出願第08/434,147号明細書及び同日に発行された同第08/434,149号明細書に記載されるシリカ研磨剤をまた、参照により本明細書に援用する。本明細書に記載される練り歯磨き組成物中の研磨剤は、一般的に、上記組成物の約6重量%〜約70重量%の濃度で存在する。好ましくは、練り歯磨きは、上記歯磨き剤組成物の約10重量%〜約50重量%の研磨剤を含む。
【0080】
[保湿剤]
保湿剤はまた、オーラルケア製品、例えば、練り歯磨き又はゲルに望ましい成分である。上記保湿剤は、一般的に、上記オーラルケア組成物の約0重量%〜85重量%、そして好ましくは約15重量%〜55重量%を構成する。好ましくは、練り歯磨き又はゲルにおいて、上記保湿剤は、上記配合物の約5重量%〜約85重量%、そして好ましくは上記配合物の約10重量%〜約70重量%を構成する。屈折率が重要な検討材料である半透明ゲルでは、不透明なペーストよりも、水に対する保湿剤の高い割合を用いることが好ましい。ゲルにおいて、保湿剤:水の割合は、好ましくは0.5:1を超え、そしてさらに好ましくは、1:1を超える。
【0081】
本発明の組成物において用いることが企図される保湿剤は、ポリオール、例えば、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水素化され、部分的に加水分解された多糖類等を含む。例示的な量は、種々の型の組成物に関連して、下記に提供される。
【0082】
上記保湿剤は、空気への暴露の際に、練り歯磨き組成物を固化から保持するようにはたらき、そして一定の保湿剤はまた、練り歯磨き組成物に、望ましい甘味の香味を与えることができる。本発明で用いるための好適な保湿剤には、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及び他の食用の多価アルコールが含まれる。
【0083】
[抗う蝕剤]
抗う蝕剤をまた、本発明に従う組成物と共に用いることができる。従って、本発明のオーラルケア組成物は、遊離のフッ化物イオンを供給することができる可溶性のフッ化物供給源を導入することができる。例えば、本発明に従う口腔衛生組成物は、口腔ヘルスケア組成物に一般的に用いられるもの、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、インジウムフルオリド、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛アンモニウム、フッ化スズアンモニウム、フッ化カルシウム及びコバルトアンモニウムフルオリド等を含むことができる。本発明の組成物は、約50ppm〜約3500ppm、そして好ましくは約500ppm〜約3000ppmの遊離のフッ化物イオンを供給することができる可溶性のフッ化物イオン供給源を含む。フッ化ナトリウムが、最も好ましい可溶性フッ化物イオン供給源である。1960年7月26日に発行されたNorrisらの米国特許第2,946,725号明細書、及び1972年7月18日に発行された、Widderらの米国特許第3,678,154号明細書は、上記フッ化物イオン供給源並びにその他を開示する。両特許を参照し、それら全体を本明細書に援用する。
【0084】
[染料/着色剤]
口腔ヘルスケア組成物用に好適な染料/着色剤、すなわちFD&C Blue #1,FD&C Yellow #10,FD&C Red #40等が含まれる。種々の他の所望による成分、例えば、防腐剤;ビタミン、例えば、ビタミンC及びE;及び他の抗プラーク剤、例えば、第一錫塩、銅塩、ストロンチウム塩及びマグネシウム塩がまた、本発明の組成物中に含まれうる。上記組成物はまた、抗歯石剤、例えば、水溶性のポリホスフェートのアルカリ金属塩、緩衝剤、例えば、オルトリン酸アルカリ金属、リン酸、アルカリ金属グリセロホスフェート、タルトレート、又はシトレート、他の抗う蝕剤、例えば、グリセロリン酸カルシウム、トリメタリン酸ナトリウム;抗汚染化合物、例えば、シリコーンポリマー;植物抽出物;並びにそれらの混合物を含む。さらに、ポリマー、特にアニオン性ポリマー、例えば、ポリカルボキシレート又はポリスルホネート、又はカルボキシレート及びスルホネート部分の両方を含むポリマー、又はホスホネートポリマーを用いることができる。
【0085】
[緩衝剤]
本発明の組成物は、それぞれ、緩衝剤を含むことができる。本明細書において、緩衝剤は、上記組成物を、pH約6.5〜pH約10に調整するために用いられうる薬剤を指す。これらの薬剤には、アルカリ金属水酸化物、カーボネート、セスキカーボネート、ボラート、シリケート、ホスフェート、イミダゾール、及びそれらの混合物が含まれる。特定の緩衝剤には、モノリン酸ナトリウム、トリリン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸アルカリ金属塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロホスフェート塩、クエン酸及びクエン酸ナトリウムが含まれる。緩衝剤は、本発明の組成物の約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%、そしてさらに好ましくは約1.5重量%〜約3重量%の濃度で用いられる。
【0086】
無機ピロホスフェート塩はまた、好適な緩衝剤である。上記ピロホスフェート塩は、ジピロリン酸アルカリ金属塩、テトラピロリン酸アルカリ金属塩、及びそれらの混合物を含む。水和された及び水和されていない形態における、ピロリン酸二水素二ナトリウム(Na2227)、ピロリン酸四ナトリウム(Na427)、及びピロリン酸四カリウム(K427)が、好ましい種である。本発明の組成物では、上記ピロホスフェート塩が、次の3つの方式の1つに存在することができる:主に溶解されたピロホスフェート、主に溶解されていないピロホスフェート、又は溶解された及び溶解されていないピロホスフェートの混合物。
【0087】
主に溶解されたピロホスフェートを含む組成物は、少なくとも1種のピロホスフェートイオン供給源が、少なくとも約1.0%の遊離のピロホスフェートイオンを供給することができる量である組成物である。遊離のピロホスフェートイオンの量は、上記組成物の約1重量%〜約15重量%、好ましくは約1.5重量%〜約10重量%、そして最も好ましくは約2重量%〜約6重量%であることができる。遊離のピロホスフェートイオンは、上記組成物のpHにもよるが、種々のプロトン化状態で存在することができる。
【0088】
主に溶解されていない無機ピロホスフェートを含む組成物は、約20%以下の上記組成物に溶解されているピロホスフェート塩の総計、好ましくは約10%未満の上記組成物に溶解したピロホスフェートの総計を含む組成物を指す。ピロリン酸四ナトリウムが、これらの組成物において、好ましいピロホスフェート塩である。ピロリン酸四ナトリウムは、無水塩の形態、又は十水和物の形態、あるいは上記歯磨き剤組成物において、固定で安定な他の種であることができる。上記塩は、その結晶及び/又は非晶質の状態であることができる固体粒子の形態であり、そして上記塩の粒径は、使用の際に審美的に容認できる又は簡易に溶解するのに十分小さいことが好ましい。これらの組成物を製造するために有用なピロホスフェート塩の量は、任意の歯石制御有効量であり、そして上記組成物の、一般的に約1.5重量%〜約15重量%、好ましくは約2重量%〜約10重量%、そして最も好ましくは約2.5重量%〜約8重量%である。一部又は全てのピロリン酸四ナトリウムは、上記製品内で溶解されていなくともよく、そしてピロリン酸四ナトリウム粒子として存在することができる。種々のプロトン化形態におけるピロホスフェートイオン(例えば、HP27-3)がまた、ピロリン酸四ナトリウムの一部が溶解した場合に、上記組成物のpHによっては存在することができる。
【0089】
組成物はまた、溶解された又は溶解されていないピロホスフェート塩の混合物を含むことができる。上記のピロホスフェート塩のいずれも用いることができる。
上記ピロホスフェート塩は、さらに詳細には、Kirk&Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Third Edition,Volume 17,Wiley−Interscience Publishers(1982)に記載されている(参照により、Kirk&Othmerに組み込まれている全ての参考文献を含むその全体を、本明細書に援用する)。
【0090】
上記ピロホスフェート塩の代わりに、又は上記ピロホスフェート塩と組み合わせて用いるべき所望による薬剤には、歯石の形成に関連するリン酸カルシウム無機物の体積を減らすために有効であることが知られている材料が含まれる。含まれる薬剤は、例えば、Gaffarらの米国特許第4,627,977号明細書(当該公表を参照することにより、本明細書に援用する)に記載されるような、合成のアニオン性ポリマー、例えば、ポリアクリレート、及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えば、Gantrez);並びに、例えば、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ジホスホネート(例えば、EHDP;AHP)、ポリペプチド(例えば、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸)、及びそれらの混合物である。
【0091】
[増粘剤]
練り歯磨き状の本発明の組成物は、望ましい粘稠度を提供するための、いくつかの増粘材料又はバインダーを含むのが典型的である。好ましい増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、及びセルロースエーテルの水溶性塩、例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム及びヒドロキシエチルセルロースナトリウムである。天然のゴム、例えば、カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントガムをまた用いることができる。コロイド状のケイ酸アルミニウム・マグネシウム又は微粉化されたシリカを、テクスチャをさらに改良するための増粘剤の一部として用いることができる。増粘剤は、上記歯磨き剤組成物の約0.1重量%〜約15重量%の量で用いられうる。
【0092】
[水]
商業的に好適な口腔組成物の調製時に用いられる水は、好ましくは、低いイオン含有率を有し、そして有機系不純物を含まないべきである。水は、本明細書における組成物の、一般的には約5重量%〜約70重量%、そして好ましくは約10重量%〜約50重量を構成することができる。水の量には、遊離の水+他の材料、例えば、ソルビトール、シリカ、界面活性剤溶液、及び/又は着色溶液と共に導入された水が含まれる。
【0093】
[過酸化物]
本発明は、上記組成物中に過酸化物供給源を含むことができる。上記過酸化物供給源は、過酸化水素、過酸化カルシウム、過酸化尿素、及びそれらの混合物から成る群から選択されうる。好ましい過酸化物供給源は、過酸化カルシウムである。下記の量は、過酸化物原材料の量を表すが、上記過酸化物供給源は、上記過酸化物原材料以外の成分を含むことができる。本発明の組成物は、上記歯磨き剤組成物の約0.01重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約5重量%、さらに好ましくは約0.2重量%〜約3重量%、そして最も好ましくは約0.3重量%〜約0.8重量%の過酸化物供給源を含むことができる。
【0094】
[重炭酸アルカリ金属]
本発明はまた、重炭酸アルカリ金属を含むことができる。重炭酸アルカリ金属は、水に可溶であり、安定化されていない限り、水性系に二酸化炭素を放出する傾向がある。重曹としても知られる重炭酸ナトリウムはまた、好ましい重炭酸アルカリ金属である。上記重炭酸アルカリ金属はまた、緩衝材として作用する。本発明の組成物は、上記歯磨き剤組成物の約0.5重量%〜約50重量%、好ましくは約0.5重量%〜約30重量%、さらに好ましくは約2重量%〜約20重量%、そして最も好ましくは約5重量%〜約18重量%の重炭酸アルカリ金属を含むことができる。
【0095】
[起泡剤]
本発明の組成物はまた、一般的に気泡剤と称される、界面活性剤を含むことができる。上記界面活性剤は、適度に安定であり、そして広いpH範囲の全体で気泡するものであることが好ましい。上記界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双極性、カチオン性、又はそれらの混合物であることができる。本明細書において有用なアニオン性界面活性剤は、アルキル基内に8〜20個の炭素原子を有するアルキルスルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)と、8〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩とを含む。ラウリル硫酸ナトリウム及びココナッツモノグリセリドスルホン酸ナトリウムが、この種のアニオン性界面活性剤の例である。他の好適なアニオン性界面活性剤は、サルコシネート(sarcosinate)、例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム(sodium lauroyl sarcosinate)、タウレート、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウム、ラウレス(laureth)カルボン酸ナトリウム、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムである。アニオン性界面活性剤の混合物をまた用いることができる。複数の好適なアニオン性界面活性剤は、1976年5月25日に発行された、Agricolaらの米国特許第3,959,458号明細書(参照により、本明細書に援用する)に開示されている。
【0096】
本発明の組成物内で用いることができる非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド基(親水性の性質)を、事実上、脂肪族又はアルキル−芳香族であることができる有機疎水性化合物と縮合することにより製造された化合物として、広く規定されうる。好適な非イオン性界面活性剤の例には、ポロキサマー(商標名 Pluronicの下で市販される)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(商標名 TWEENSの下で市販される)、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、エチレンオキシドの、プロピレンオキシド及びエチレンジアミンの反応生成物との縮合に由来する生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長分子鎖第3級アミンオキシド、長分子鎖第3級ホスフィンオキシド、長分子鎖ジアルキルスルホキシド、及び上記材料の混合物が含まれる。
【0097】
本発明に有用な両性界面活性剤は、脂肪族第2級及び第3級アミンの誘導体として広く記載されることができ、そこでは、上記脂肪族基は、直鎖又は分岐鎖であることができ、そして上記脂肪族置換基の一つは、約8〜約18個の炭素原子を含み、上記脂肪族置換基の一つは、アニオン性水可溶化基、例えば、カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含む。他の好適な両性界面活性剤は、ベタイン、特に、コカミドプロピルベタインである。両性界面活性剤の混合物をまた用いることができる。複数の、これらの好適な非イオン性及び両性界面活性剤は、1977年9月27日に発行された、Gieskeらの米国特許第4,051,234号明細書(参照により、その全体を本明細書に援用する)に開示される。本発明の組成物は、1種又は2種以上の界面活性剤を、それぞれ、上記組成物の約0.25重量%〜約12重量%、好ましくは約0.5重量%〜約8重量%、そして最も好ましくは約1重量%〜約6重量%の濃度で含む。
【0098】
[着色剤]
二酸化チタンをまた、本発明の組成物に添加することができる。二酸化チタンは、上記組成物に不透明性を付与する白色粉末である。二酸化チタンは、一般的に、上記組成物の約0.25重量%〜約5重量%を構成する。
他の着色剤をまた、本発明の組成物に添加することができる。上記着色剤は、水性溶液、好ましくは水溶液中の1%着色剤の状態であることができる。着色溶液は、一般的に、上記組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成する。
【0099】
口腔ヘルスケア組成物用に好適な染料/着色剤、すなわちFD&C Blue #1,FD&C Yellow #10,FD&C Red #40等が含まれうる。種々の他の所望による成分、例えば、防腐剤;ビタミン、例えば、ビタミンC及びE;及び他の抗プラーク剤、例えば、第一錫塩、銅塩、ストロンチウム塩及びマグネシウム塩がまた、本発明の組成物に含まれる。組成物はまた、抗歯石剤、例えば、水溶性ポリホスフェートのアルカリ金属塩、緩衝剤、例えば、オルトリン酸アルカリ金属、リン酸、アルカリ金属グリセロホスフェート、タルトレート、又はシトレート、他の抗う蝕剤、例えば、グリセロリン酸カルシウム、トリメタリン酸ナトリウム;抗汚染化合物、例えば、シリコーンポリマー;植物抽出物;並びにそれらの混合物を含むことができる。さらに、ポリマー、特にアニオン性ポリマー、例えば、ポリカルボキシレート若しくはポリスルホネート、又はカルボキシレート及びスルホネート部分の両方を含むポリマー、あるいはホスホネートポリマーを用いることができる。
【0100】
[香味剤及び甘味剤]
香味システムをまた、上記組成物に添加することができる。好適な香味料成分には、ウィンターグリーンのオイル、ペパーミントのオイル、スペアミントのオイル、クローブ・バドオイル(clove bud oil)、メントール、アネトール、メチルサリチレート、オイカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリオイル、オキサノン(oxanone)、α−イオノン(irisone)、マヨラナ、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール(guaethol)、桂皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4−cis−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−para−tert−ブチルフェニルアセテート、及びそれらの混合物が含まれる。クーラントがまた、上記香味システムの一部であることができる。本発明の組成物における好ましいクーラントは、パラメンタンカルボキシアミド油薬剤、例えば、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(「WS−3」として市販されている)及びそれらの混合物である。香味システムは、上記組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で、上記組成物中で用いられるのが一般的である。
【0101】
本発明はまた、キシリトールを含むことができる。キシリトールは、甘味料及び保湿剤として用いられる糖アルコールである。キシリトールは、治療効果、例えば、抗菌作用又は抗う蝕性作用を供給することができる。本発明の組成物は、キシリトールを、組成物総量の、一般的には約0.01重量%〜約25重量%、好ましくは約3重量%〜約15重量%、さらに好ましくは約5重量%〜約12重量%、そして最も好ましくは約9重量%〜約11重量%の濃度で含む。あるいは、キシリトールが甘味料として用いられる場合、当該キシリトールは、より低い濃度、例えば、上記歯磨き剤組成物の約0.005重量%〜約5重量%で存在することができる。
【0102】
他の甘味剤を、上記組成物に添加することができる。これらには、サッカリン、デキストロース、サッカロース、ラクトース、マルトース、レブロース、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセサルフェーム、及びそれらの混合物が含まれる。種々の着色剤がまた、本発明に導入されうる。甘味剤及び着色剤は、練り歯磨き内に、上記組成物の約0.005重量%〜約5重量%の濃度で用いられるのが一般的である。
【0103】
[抗菌薬及び抗微生物薬]
本発明はまた、他の薬剤、例えば、抗菌薬及び抗微生物薬を含むことができる。好適な抗菌薬には、フェノール類及びサリチルアミドが含まれる。
【0104】
また、上記薬剤には、水不溶性の非カチオン性抗微生物薬、例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル、フェノール及びその同族体、モノ及びポリ−アルキル及び芳香族ハロフェノール、レソルシノール及びその誘導体、ビスフェノール系化合物及びハロゲン化サリチルアニリド、安息香酸のエステル、及びハロゲン化カルボアニリドが含まれる。水溶性抗微生物剤には、第4級アンモニウム塩、特に、ビス−ビクアニデ(bis−biquanide)が含まれる。トリクロサンモノホスフェートは、追加の水溶性抗微生物薬である。第4級アンモニウム薬剤は、4級窒素上の1つ又は2つの置換基が、約8〜約20個、典型的には約10〜約18個の炭素原子の炭素鎖長(典型的には、アルキル基)を有するが、残余の置換基(典型的には、アルキル又はベンジル基)が、より少ない数の炭素原子、例えば、約1〜約7個の炭素原子、典型的にはメチル又はエチル基を有するものを含む。ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルピリジニウムクロリド、ドミフェンブロミド、N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド、ドデシルジメチル(2−フェノキシエチル)アンモニウムブロミド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、4級化5−アミノ−1,3−ビス(2−エチル−ヘキシル)−5−メチルヘキサヒドロピリミジン、ベンズアルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド及びメチルベンゼトニウムクロリドが、典型的な第4級アンモニウム抗菌薬の例示である。他の化合物は、1980年1月3日に発行された、Baileyの米国特許第4,206,215号明細書(参照により、本明細書に援用する)に開示されるような、ビス[4−(R−アミノ)−1−ピリジニウム]アルカンである。第一錫塩、例えば、ピロリン酸錫及びグルコン酸錫、並びに他の抗微生物剤、例えば、ビスグリシン酸銅、グリシン酸銅、クエン酸亜鉛及び乳酸亜鉛がまた含まれうる。
【0105】
また、酵素、例えば、エンドグリコシダーゼ、パパイン、デキストラナーゼ、ムタナーゼ(mutanase)、及びそれらの混合物が有用である。上記薬剤は、Norrisらの米国特許第2,946,725号明細書(1960年7月26日)、及びGieskeらの米国特許第4,051,234号明細書(1977年9月27日)に開示されている(参照により、本明細書に援用する)。特定の抗微生物薬には、クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロサンモノホスフェート、及び香味オイル、例えば、チモールが含まれる。トリクロサン及びこの種の他の薬剤は、1991年5月14日に発行された、Parran,Jrらの米国特許第5,015,466号明細書、及び1990年1月16日に発行された、Nabiらの米国特許第4,894,220号明細書(参照により、本明細書に援用する)に開示されている。水不溶性の抗微生物薬、水溶性薬剤及び酵素が、上記組成物中に存在することができる。第4級アンモニウム薬剤、第一錫塩、及び置換されたグアニジンが、第2の歯磨き剤組成物中に存在することが好ましい。これらの薬剤は、上記歯磨き剤組成物の約0.01重量%〜約1.5重量%の濃度で存在することができる。
【0106】
本発明及びその優位性をさらに具体的に説明するために、次の非限定的な例が与えられる。
【実施例】
【0107】
[例1−卵殻試験]
この例では、卵殻(歯の置換物として)を、緑茶/紅茶汚染物を用いて汚染した。
図1は、市販の練り歯磨きを用いてブラシをかけ、次いで、緑茶(左)及び紅茶(右)で汚染し、次いで市販の練り歯磨きを用いてさらにブラシをかけた卵殻の写真を示す。これは、茶汚染物を除去しなかった。
【0108】
別の実験では、PEG400ホスフェートエステル(ポリエチレングリコールホスフェートエステル)を、中和なしで、練り歯磨きに直接混合した。市販の練り歯磨き+20%PEG400ホスフェートエステルを用いて、卵殻にブラシをかけ、次いで緑茶及び紅茶で汚染し、次いで、練り歯磨き+20%PEG400ホスフェートエステルを用いてブラシをかけた。図2は、市販の練り歯磨き+20%PEG400ホスフェートエステルを用いてブラシをかけ、次いで緑茶(左)及び紅茶(右)で汚染し、次いで、練り歯磨き+20%PEG400ホスフェートエステルを用いてブラシをかけた卵殻の写真を示す。これは、茶汚染物の良好な除去を示した。
【0109】
別の実験では、20%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を、市販の練り歯磨きに混合した。20%SDSを、100%粉末として用いた。図3は、市販の練り歯磨き+20%SDSを用いてブラシをかけ、次いで緑茶(左)及び紅茶(右)で汚染し、次いで、練り歯磨き+20%SDSを用いてブラシをかけた卵殻の写真を示す。これは、茶汚染物の除去を示さなかった/わずかに示した。
【0110】
別の実験では、PEG1000ホスフェートエステル(ポリエチレングリコールホスフェートエステル)を、中和なしで、練り歯磨きに直接混合した。図4は、市販の練り歯磨き+20%PEG1000ホスフェートエステルを用いてブラシをかけ、次いで緑茶(左)及び紅茶(右)で汚染し、次いで、練り歯磨き+20%PEG1000ホスフェートエステルを用いてブラシをかけた卵殻の写真を示す。これは、茶汚染物の良好な除去を示した。
【0111】
別の実験では、SDS又はPEGホスフェートエステルを用いた卵殻の処理、次いで染色及び簡単なすすぎは、未処理の卵殻と比較して汚染物の除去を解消しなかったことに留意する。これは、改良された清浄性が、汚物層の生成ではなく、良好な清浄能力に起因することを暗示する。
【0112】
[例2]
図5は、CaCO3結晶(歯の追加の置換物として)上の純粋な脱イオン水の下、ヘキサデカンの液滴を示す。図7は、図5のうち、接触角を示す標識を付したものである。図7は、接触角が60°〜80°であることを示している。
【0113】
図6は、CaCO3結晶上で、pH10において、1重量%PEG1000ホスフェートエステルを含む溶液の下、ヘキサデカンの液滴を示す。これは、PEG1000ホスフェートエステルの存在により、CaCO3上でヘキサデカンの接触角が増すことを示す。炭酸カルシウム結晶の前処理は、当該結晶を、例えば、PEG1000ホスフェートエステル(例えば、1重量%、pH9〜10)の水性溶液に浸漬することによりなされた。上記結晶上の良好な吸着及び上記表面特性の各変化は、ヘキサデカンの接触角を測定することにより示される。図8は、図6のうち、接触角を示す標識を付したものである。図8は、接触角が130°超であることを示す。
【0114】
図7及び図8を比較は、CaCO3結晶上のPEG1000ホスフェートエステルの存在により、CaCO3上のヘキサデカンの接触角が、<80°から、>130°に増加することを示す。
【0115】
従って、低い接触角(すなわち、望ましくない、上記結晶上への油の高い吸着性)が、純粋中の上記結晶に関して観察され、そして高い接触角(すなわち、望ましい、上記結晶上への油の低い吸着性)が、水及びPEG1000ホスフェートエステルの溶液内の上記結晶に関して観察された。
【0116】
上記明確に論じたもの以外の実施形態が、本発明の精神及び範囲内にあることは明白であろう。従って、本発明は、上記記述により制限されず、添付の特許請求の範囲により規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含むオーラルケア組成物;
(a)艶出剤(研磨剤)、起泡剤(界面活性剤)、バインダー、保湿剤、薬剤、過酸化物供給源、重炭酸アルカリ金属塩、増粘材料、水、二酸化チタン、香味剤、甘味剤、キシリトール、着色剤、水及びそれらの混合物から成る群から選択される、約10%〜約99%の、少なくとも1種の成分;及び
(b)下記を含む、有効量の抗汚染薬剤;
(b)(I)(1)次の構造(I)に従う有機リン化合物:
【化1】

(式中、
各R1及び各R2は、独立して、存在しないか又はOであるが、R1及びR2の少なくとも一方はOであり、
各R3は、独立して、所望により、アルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)基の1つ又は2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール又はアリールオキシにより置換されてもよいアルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)であり、
5及び各R4は、独立して、存在しないか、あるいは所望により、アルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)基の1つ又は2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルケニル、アリール又はアリールオキシにより置換されてもよいアルキレンオキシ又はポリ(アルキレンオキシ)であり、
6及びR8は、それぞれ、そして各R7は、独立して、H若しくは(C1〜C30)炭化水素、又は−POR910であり、前記炭化水素は、1つ若しくは2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、フッ素、アルキル、アルケニル若しくはアリールで所望により置換されていてもよく、そして/又は1若しくは2以上の位置のところで、O,N若しくはSヘテロ原子により所望により割り込まれてもよく、
9及びR10は、それぞれ独立して、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ又は(C1〜C30)炭化水素であり、前記炭化水素は、1つ若しくは2つ以上の炭素原子上に、ヒドロキシル、フッ素、アルキル、アルケニル若しくはアリールにより所望により置換されていてもよく、そして/又は1若しくは2以上の位置において、O,N若しくはSヘテロ原子により割り込まれてもよく、そして
mは、1〜5の整数である);
(b)(I)(2)構造(I)に従う有機リン化合物の塩;
(b)(I)(3)構造(I)に従う1種又は2種以上の有機リン化合物の2又は3以上の分子の縮合反応生成物:並びに
(b)(I)(4) (b)(I)(1)、(b)(I)(2)及び(b)(I)(3)の、2種又は3種以上の、化合物、塩及び/又は反応生成物を含む混合物。
【請求項2】
前記抗汚染薬剤が、下記;
(b)(II)(1)次の構造(I−a)に従うモノマー単位を含むポリマー:
【化2】

(b)(II)(2)ポリマー(b)(II)(1)の塩;
(b)(II)(3)1種又は2種以上のポリマー(b)(II)(1)の2又は3以上の分子の反応生成物:
から選択されるビニルアルコール材料をさらに含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項3】
緩衝剤として、炭酸ナトリウムをさらに含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項4】
シリカ、アルミナ、ホスフェート、オルトホスフェート、ポリメタホスフェート、β−ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、及びそれらの混合物から成る群から選択される研磨艶出材料、並びに水をさらに含む、請求項3に記載のオーラルケア組成物。
【請求項5】
約0.01%〜約10%の過酸化物供給源を含む、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項6】
界面活性剤、増粘材料、保湿剤、水、二酸化チタン、香味系、甘味剤、キシリトール、着色剤、及びそれらの混合物から成る群から選択される材料をさらに含む、請求項5に記載のオーラルケア組成物。
【請求項7】
前記有機リン材料が、液状キャリア中に存在する、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項8】
前記有機リン材料、界面活性剤、研磨剤及び所望による液体を含む歯清浄製品である、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項9】
前記研磨剤が、ケイ酸、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性アルミノケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、又はそれらの混合物の1種又は2種以上を含む研磨剤系である、請求項8に記載のオーラルケア組成物。
【請求項10】
前記研磨剤系が、前記歯清浄製品の約5重量%〜約70重量%の量である、請求項9に記載のオーラルケア組成物。
【請求項11】
前記歯清浄製品が、練り歯磨き又は歯清浄ゲルである、請求項8に記載のオーラルケア組成物。
【請求項12】
前記液体が、水、保湿剤、バインダー、又はそれらの混合物の1種又は2種以上を含む、請求項8に記載のオーラルケア組成物。
【請求項13】
前記液体が、前記歯清浄製品の約10重量%〜約90重量%の量である、請求項12に記載のオーラルケア組成物。
【請求項14】
前記保湿剤が、前記歯清浄製品の約5%〜約85%の量である、請求項12に記載のオーラルケア組成物。
【請求項15】
前記歯清浄製品が、少なくとも約0.5:1の、保湿剤:水の比を有する半透明ゲルである、請求項8に記載のオーラルケア組成物。
【請求項16】
有効量の前記有機リン材料と、約20重量%〜約95重量%の艶出剤とを含む歯磨き粉である、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項17】
有効量の前記有機リン材料が、前記歯磨き粉の約0.1重量%〜約10重量%である、請求項16に記載のオーラルケア組成物。
【請求項18】
有効量の前記有機リン材料が、前記歯磨き粉の約1重量%〜約5重量%である、請求項16に記載のオーラルケア組成物。
【請求項19】
50重量%超の艶出剤を含む、請求項16に記載のオーラルケア組成物。
【請求項20】
1種又は2種以上の、着香剤、甘味剤、抗歯石剤、抗う蝕剤.緩衝剤、又は加工助剤をさらに含む、請求項16に記載のオーラルケア組成物。
【請求項21】
歯から汚染物を除去するために有効な量の有機リン材料;アルコール;保湿剤;及び水を含む口内洗浄剤である、請求項1に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項22】
有効量の前記有機リン材料が、前記口内洗浄剤の約0.1重量%〜約10重量%である、請求項21に記載のオーラルケア組成物。
【請求項23】
有効量の前記有機リン材料が、前記口内洗浄剤の約1重量%〜約5重量%である、請求項21に記載のオーラルケア組成物。
【請求項24】
1種又は2種以上の、着香剤、甘味剤、抗歯石剤、抗う蝕剤、緩衝剤、又は加工助剤をさらに含む、請求項21に記載のオーラルケア組成物。
【請求項25】
請求項1に記載のパーソナルケア組成物を含む練り歯磨き。
【請求項26】
請求項1に記載のパーソナルケア組成物を含む、チューインガム。
【請求項27】
請求項1に記載のパーソナルケア組成物を含む、口内洗浄剤。
【請求項28】
請求項1に記載のパーソナルケア組成物を含む、オーラルケアストリップ。
【請求項29】
請求項1に記載のパーソナルケア組成物を含む、舐剤。
【請求項30】
有効量の請求項1に記載の組成物を、清浄を必要とする歯に適用することを含む、歯を清浄するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−529207(P2010−529207A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512336(P2010−512336)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/066635
【国際公開番号】WO2008/157197
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(598109291)ローディア インコーポレイティド (41)
【Fターム(参考)】