説明

カ−ペットセンサ

【課題】本発明は、カーペットのパイル糸を導電体とし、カーペットに人や物体が接近又は接触することにより生じる誘電電位が、カーペットの静電容量の変化として確実に検出することができるカーペットセンサを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明者らは、導電繊維を含む糸をカーペットのパイル糸として植え込むことにより、カーペットを三次元的な導電体となし、人や物体がカーペットに接近又は接触することにより生じる誘電電位が、カーペット上の静電容量の変化として検出しやすいことを見出し本発明に到達した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人や物の接近又は接触を検出するセンサに関するものであり、建物の出入り口や室内に本発明のカ−ペットセンサを敷設すれば、防犯や介護等の監視業務に役立つことができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来から静電容量型近接センサは、導電体を有し、導電体に人や物体が接近又は接触することにより生じる誘電電位が静電容量の変化として検出できることを利用している。
【0003】
特許文献1においては、通常の生活環境に多数存在する布帛やフィルムを導電体とすることにより、人体の接近または接触を違和感なく検出することができ、離床センサ、入浴センサ、進入センサ等として使用することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2においては、不均一な面における圧力変化を測定できるシート状センサとして、導電繊維と該導電繊維の周囲を被覆する非導電性材料からなる経糸及び緯糸で織った布帛を開示し、経糸と緯糸の交差部分に物体が近付いたり、軽く触れることにより電界に乱れを生じ静電容量が変化することを利用したタッチセンサが提案されている。
【0005】
特許文献3においては、要介護者の動静を静電容量タッチ電極を用いた静電容量タッチセンサによって検出し、要介護者の安全を確保した介護システムの技術を開示している。しかしながら、これらの技術は、静電容量の変化が微小で検知しにくいことが多いことから、検知しやすいセンサが求められている。
【特許文献1】特開2004−150869
【特許文献2】特開2006−234716
【特許文献3】特開2007−213845
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、カーペットを導電体とし、カーペットに人や物体が接近又は接触することにより生じる誘電電位がカーペットの静電容量の変化として確実に検出できるカーペットセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討の結果、導電繊維を含む糸をカーペットのパイル糸として植え込むことにより、カーペットを三次元的な導電体となし、人や物体が接近又は接触することにより生じる誘電電位がカーペットの静電容量の変化として検出しやすいことを見出し本発明に到達した。前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]パイル糸を植設したループパイルカ−ペットであって、連続した導電繊維を含むパイル糸を少なくとも2本植設し、該2本の導電繊維の一方を検出電極とし、他の一方を検出電極と絶縁した基準電極とし、前記検出電極と前記基準電極との間の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備えてなることを特徴とするカ−ペットセンサ。
【0009】
[2]パイル糸を植設したループパイルカ−ペットであって、連続した導電繊維を含むパイル糸を少なくとも2本植設し、該2本の導電繊維の一方を検出電極とし、他の一方を検出電極と絶縁した基準電極とし、前記検出電極と前記基準電極との間の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段と、前記静電容量検出手段の信号により所定の制御信号を発生する制御手段とを備えてなることを特徴とするカ−ペットセンサ。
【0010】
[3] 前記検出電極と絶縁した基準電極が、導電繊維の周辺を導電繊維以外のパイル糸で被覆したパイル糸からなることを特徴とする前項1または2に記載のカ−ペットセンサ。
【0011】
[4]前記連続した導電繊維を含むパイル糸を、導電繊維を含まないパイル糸1本または2本以上の本数置きに少なくとも2本植設したタフテッドカーペットであることを特徴とする前項1または2に記載のカ−ペットセンサ。
【発明の効果】
【0012】
[1]の発明では、連続した導電繊維を含むパイル糸を少なくとも2本植設し、該2本の導電繊維の一方を検出電極とし、他の一方を検出電極と絶縁した基準電極とするので、前記検出電極と前記基準電極との間の静電容量の変化を静電容量検出手段によって検出できるカ−ペットセンサとすることができる。また、連続した導電繊維を含むパイル糸を少なくとも2本植設するので、前記2本のパイル糸部分が導電体となり、この状態で、前記2本のパイル糸部分に人や物体が接近又は接触するときに生じる誘電電位が、静電容量の変化をもたらし静電容量検出手段によって測定されることでカーペットへの圧力変化や接近を測定することができる。また、パイル糸は、織物等に較べ三次元的に立っていることから、少しの圧力でも変位は大きく、静電容量の変化として検出されやすい。
【0013】
[2]の発明では、パイル糸を植設したループパイルカ−ペットであって、連続した導電繊維を含むパイル糸を少なくとも2本植設し、該2本の導電繊維の一方を検出電極とし、他の一方を検出電極と絶縁した基準電極とし、前記検出電極と前記基準電極との間の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段と、前記静電容量検出手段の信号により所定の制御信号を発生する制御手段とを備えているので、 静電容量の変化を検出した信号を制御手段に接続することにより、不審な侵入者を検知する防犯装置や、ドアの開閉装置等に利用することができる。
【0014】
[3]の発明では、検出電極と絶縁した基準電極が、導電繊維の周辺を導電繊維以外のパイル糸で被覆したパイル糸からなるので、パイル糸が踏まれて導電繊維を含むパイル糸同士が強く接したとしても、絶縁が保たれ静電容量の変化が正確に検出される。
【0015】
[4]の発明では、連続した導電繊維を含むパイル糸を、導電繊維を含まないパイル糸1本置きまたは2本以上の本数置きに少なくとも2本植設したタフテッドカーペットであるので、連続した導電繊維を含むパイル糸同士が接触して通電する可能性が低下し、連続した導電繊維を導電繊維以外のパイル糸で被覆しなくても長期の使用にも耐えうるカ−ペットセンサとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
静電容量は、互いに絶縁された導体の間につくられる電荷の貯えることのできる能力を示すもので、二つの導体間の距離と形状、およびその空間の性質によって決まるとされている。二つの導体間に物を近づけたり、接触したりすると、この静電容量は増加(変化)する性質を有しており、本発明はこの性質を利用し、静電容量の変化を測定することによって様々なセンサとして利用するものである。
【0017】
次に、この発明に係るカ−ペットセンサの一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態のカ−ペットセンサ1は、パイル糸2と基布3とバッキング層4を含み、パイル糸2には連続した導電繊維5がゆるく撚り合わされてカーペットのループパイルを形成している。本発明では、タフデッドカーペットのように多数本のパイル糸を同時に使って、ループパイルカーペットとしてもよいし、ハンドタフトカーペットのように一本のパイル糸を基布に植設して全体を構成するループパイルカーペットとしてもよい。またその大きさも問わず、カーペットの面積に応じて検出電極6と基準電極7と静電容量検出手段8の数を増やしてやればよい。(図1、2参照)
【0018】
ループパイルカーペットは、無数のループパイルが形成され、本発明は、そのループパイル列のうちの少なくとも2列に連続した導電繊維を含むパイル糸を植設するもので、その一方の列を検出電極とし、他の一方の列を基準電極とし、それぞれにリード線を介して前記検出電極と前記基準電極と静電容量検出手段の間は接続されている。 この状態で人や物体がカーペットに接近又は接触すると、該静電容量が変化することから、静電容量検出手段によって該静電容量の変化を測定することができるので、カ−ペットセンサとして使用することができる。
【0019】
また、静電容量検出手段によって該静電容量の変化を測定して得られた信号を、さらに制御手段に接続することにより、不審な侵入者を検知する防犯装置や、ドアの開閉装置等に利用することが可能となる。またこれらの2列に連続した導電繊維を含むパイル糸を植設する数をカーペット全体に複数個に増やすことにより、カーペット全体の静電容量の変化を測定することができるようになり、測定値の変化が時間的にずれれば、被検出物の移動方向も検出できるようになり、様々な応用制御が可能なカ−ペットセンサとして使用することができる。
【0020】
導電繊維5としては、特に限定されないが例えばステンレス等の金属繊維や炭素繊維、合成繊維に金属粒子や炭素粒子等を練りこんだ導電繊維や、合成繊維や天然繊維等の非導電性繊維に金属メッキや金属スパッタリング等で導電性を施した導電繊維等を使用することができる。(削除)
【0021】
パイル糸2としては、非導電性の糸であれば特に限定されないが、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、レ−ヨン繊維等の合成繊維からなるもの等を好適に使用でき、その他麻、綿、羊毛等の天然繊維からなる糸等も使用できる。パイル長は、カーペットの規格にもよるが3.0〜10mmであるのが好ましい。10mmを超えるとパイル糸に荷重がかかるとき、もう一方の導電繊維を含むパイル糸の列に接触通電する可能性が高くなり好ましくない。また、3.0mmを下回っても、カーペットの地が見えてしまう地スケとなり、カーペットとしての品位が下がり好ましくない。
【0022】
なお、本発明において静電容量検出手段や制御手段の構造及び機能は、当業者によく知られるもので構わない。
【0023】
次に、導電繊維の周辺を導電繊維以外のパイル糸で被覆したパイル糸は、導電繊維を中心に配置しその周囲に非導電繊維のパイル糸を巻き付けるように給糸速度に差をつけながら撚糸してやれば得ることができる。(図4参照)さらに確実な導電繊維の被覆方法としては、導電繊維の周辺を非導電性樹脂で被覆する方法が簡単で確実である。
【0024】
連続した導電繊維を含むパイル糸を、導電繊維を含まないパイル糸1本置きまたは2本以上の本数置きに少なくとも2本植設するのは、カーペットが踏み込まれて、パイル形態を維持できなくなったとき、少しでも検出電極と基準電極の絶縁状態を維持させ誤動作を防ごうとするものである。タフテッドカーペットの場合は、使用するパイル糸が細くパイルが倒れやすいことが多いことから、導電繊維を含まないパイル糸1本置きまたは2本以上の本数置きに導電繊維を含むパイル糸を植設することが有効である。但し、静電容量は電極間の距離が大きくなると減少するので、静電容量を実測して導電繊維を含まないパイル糸の本数を決めるのがよい。
【実施例】
【0025】
<実施例1>
基布(目付100g/mポリプロピレンテープヤーン織布(14×13))にパイル糸(ポリエステル繊維(2500dtex))をタフティング機(1/8Gループ、幅1.5m)で植え込む(パイル長5.0mm、目付500g/m)タフテッドカーペットにおいて、導電繊維糸としてステンレス繊維(直径0.04mmx2本 表面抵抗値5Ω)を芯にポリエステル繊維(2500dtex)で撚り合わした複合糸を隣接して図2のように三箇所に給糸して、タフテッドカーペットの生地を得た。次にタフテッドカーペットの生地の裏面側にSBRラテックス(充填剤として炭酸カルシウム)を塗布しさらにセカンド基布として5デシテックスのポリエステル繊維からなるニードルパンチ不織布(目付300g/m、厚さ6mm)を積層し、乾燥して導電糸入りのタフテッドカーペットを得た。
【0026】
さらに、該導電糸入りのタフテッドカーペットをマットサイズに裁断し、図2のように三箇所の導電繊維糸の2本を抽出して、片方の導電繊維糸列を基準電極とし、もう一方の導電繊維糸列を検出電極とし、両者の端糸を静電容量検出手段に接続し、静電容量を測定したところ各々150pFの値を得た。つぎに人をカーペット上を図の上から下へ歩かせたとき、三箇所の静電容量はそれぞれ160pFの値をえることができ、静電容量が、人が歩く方向に順に変化することを確認することができた。なお、静電容量の測定は日置電機株式会社製LCRハイテスタ3532−50で行った。
【0027】
<実施例2>
ハンドタフト機(ループ用)を用いて図3のような円形のマットを作成した。まず、導電繊維糸としてステンレス繊維(直径0.04mmx2本 表面抵抗値5Ω)を芯にポリエステル繊維(2500dtex×4本)で撚り合わした複合糸をハンドタフト機にセットし、渦巻状に中心から外側にタフトし直径30cmの大きさにした。次に導電繊維糸(ステンレス繊維直径0.04mmx2本とポリエステル繊維(2500dtex×4本)の引き揃え)を前にタフトされた複合糸の隣に渦巻の中心から外側にタフトし直径30cmのマットとした。渦巻きの中心から、外側の端まで一本の連続した導電繊維糸2本が植えられ、その間を非導電繊維であるポリエステル繊維糸が埋めている構成になる。一方の導電繊維糸列を基準電極とし、他の導電繊維糸列を検出電極として両者の端糸を静電容量検出手段に接続し、静電容量を測定し250pFの値を得た。次に該マット上に人が手を5cmに近づけた状態で静電容量を測定したところ350pFの値をえることができ、静電容量が増加することを確認することができた。
【0028】
<比較例1>
実施例2において、非導電繊維糸に替えて導電繊維糸(ステンレス繊維直径0.04mmx2本とポリエステル繊維(2500dtex×4本)の引き揃え)とし導電繊維糸のみで構成されるマットとした以外は実施例1と同様にしてマットを得た。静電容量を測定したところ、マット内で導電繊維糸同士が接触してしまい静電容量を確認できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態に係るカーペットを示す概略拡大断面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係るカーペットを示す概略図で導電繊維部分のみ記載した。(導電繊維部分以外は非導電繊維糸のパイルで埋まっている。)
【図3】この発明の一実施形態に係るカーペットを示す写真である。
【図4】この発明の一実施形態に係る導電繊維糸を示す概略拡大図である。
【符号の説明】
【0030】
1・・・カーペットセンサ
2・・・パイル糸
3・・・基布
4・・・バッキング層
5・・・導電繊維
6・・・非導電繊維
7・・・検出電極
8・・・基準電極
9・・・静電容量検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイル糸を植設したループパイルカ−ペットであって、連続した導電繊維を含むパイル糸を少なくとも2本植設し、該2本の導電繊維の一方を検出電極とし、他の一方を検出電極と絶縁した基準電極とし、前記検出電極と前記基準電極との間の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段とを備えてなることを特徴とするカ−ペットセンサ。
【請求項2】
パイル糸を植設したループパイルカ−ペットであって、連続した導電繊維を含むパイル糸を少なくとも2本植設し、該2本の導電繊維の一方を検出電極とし、他の一方を検出電極と絶縁した基準電極とし、前記検出電極と前記基準電極との間の静電容量の変化を検出する静電容量検出手段と、前記静電容量検出手段の信号により所定の制御信号を発生する制御手段とを備えてなることを特徴とするカ−ペットセンサ。
【請求項3】
前記検出電極と絶縁した基準電極が、導電繊維の周辺を導電繊維以外のパイル糸で被覆したパイル糸からなることを特徴とする請求項1または2に記載のカ−ペットセンサ。
【請求項4】
前記連続した導電繊維を含むパイル糸を、導電繊維を含まないパイル糸1本または2本以上の本数置きに少なくとも2本植設したタフテッドカーペットであることを特徴とする請求項1または2に記載のカ−ペットセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−244020(P2009−244020A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89525(P2008−89525)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【出願人】(508098338)鵜飼撚織株式会社 (1)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【Fターム(参考)】