説明

カスタネア・サチバの葉抽出物を含有する化粧品組成物

本発明は、植物カスタネア・サチバの葉抽出物を含有する組成物に関する。さらに本発明は、化粧品組成物の製造のための該抽出物の使用ならびにヒト身体の化粧処置のための該抽出物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物カスタネア・サチバの葉抽出物を含有する組成物に関する。さらに本発明は、化粧品組成物の製造のための該抽出物の使用ならびにヒト身体の化粧処置のための該抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カスタネア・サチバ(Castanea sativa)は、詳しくは、Castanea sativa Mill.(同義語:Castanea vesca Gaertn.、Castanea vulgaris Lam.)と称される植物を意味する。「Mill.」は、使用した命名系を示す。
【0003】
カスタネア・サチバ(以下においてはカスタネアと短縮することもある)は、ブナ(Fagaceae)科に属する。カスタネア・サチバの一般名称は、クリおよびヨーロッパグリである。
【0004】
気道を冒す疾患(例えば、気管支炎、咳)ならびに足および循環を冒す障害に対して、クリの葉を使用することが知られている。他のタンニン含有の薬物と同様に、クリの葉を、収斂剤として使用することができる[Bundesanzeiger No.76、1987年4月23日付け]。
【0005】
カスタネア・サチバの葉抽出物の抗細菌およびアレロパシー活性が知られている[BASILE A.、SORBO S.、GIORDANO S.、RICCIARDI L.;FERRARA S.、MONTESANO R.、CASTALDO COBIANCHI R.、VUOTTO M.L.、FERRARA L.、「Castanea sativa Mill.の葉からの抽出物の抗細菌およびアレロパシー活性」、FITOTERAPIA、Vol.71、p.110-116、2000年発行]。この刊行物において、以下のことが開示されている:カスタネア・サチバの葉を硫酸の水溶液(pH3.0)で抽出した後、酢酸エチルに可溶性の分画を、その抗細菌およびアレロパシー活性について試験した。この抽出物は、使用したグラム陽性およびグラム陰性細菌の8種類の菌株のうち7種類に対して、顕著な抗細菌効果を有することが示された(64〜256μg/mlの範囲のMICおよび256〜512μg/mlの範囲のMBC)(MIC=最少阻害濃度、MBC=最少殺菌濃度)。活性な分画がTLC(薄層クロマトグラフィー)およびHPLCによって分析され、ルチン、ヘスペリジン、ケルセチン、アピゲニン、モリン、ナリンギン、ガランギンおよびケンペロールの存在が示された。これらの同定されたフラボノイドの標準が、同じ細菌株に対して試験された。最も高い活性が、ケルセチン、ルチンおよびアピゲニンによって示された。アレロパシー作用が、ラディッシュ(Raphanus sativus)の種子発芽に対して試験された。抽出物、ケルセチン、ルチンおよびアピゲニンは、種子発芽ならびに根および上胚軸成長の割合の低下を引き起こした。
【0006】
以下に挙げる当分野の状況を示す文献は、カスタネア・サチバの葉に含有される成分を記載している。
Wichtlら[Wichtl M, Bisset、「ハーブ薬および植物医薬:科学的基礎に基づく実施のためのハンドブック」、NG CRC PRESS、1994、p.566]によれば、カスタネア・サチバの葉は、約9%のタンニン[その性質は正確には知られていない(没食子酸およびエラグ酸の両方が検出された)]、フラボノイド(特にケルセチン誘導体)、トリテルペン(例えばウルソル酸)および約0.2%のビタミンCを含有する。
Wagnerら[Wagner H.、Bladt S.、「植物薬の分析、薄層クロマトグラフィー図版(第2版)」、Springer Verlag、1996、p.384]によれば、カスタネア・サチバ葉の主な構成成分は、ルチン、イソクエルシトリン、アストラガリン(例えばケンペロール-3-O-グルコシド)、ケルセチンガラクツロニド、O p-クマロイルキナ酸、サポニンおよびフルクトースである。
【0007】
ケンペロール 2-クマロイルルチノシドが、カスタネア・サチバから単離されている(「Chapman、CDrom 植物化学辞書」による)。
Basileら[BASILE A.、SORBO S.、GIORDANO S.、RICCIARDI L.、FERRARA S.、MONTESANO R.、CASTALDO COBIANCHI R.、VUOTTO M.L.、FERRARA L.、「Castanea sativa Mill.の葉からの抽出物の抗細菌およびアレロパシー活性」、FITOTERAPIA、Vol.71、p.110-116、2000年発行]によれば、加水分解後のカスタネア・サチバ葉の主な構成成分は、ルチン、ヘスペリジン、ケルセチン、アピゲニン、モリン、ナリンギン、ガランギンおよびケンペロールである。
【0008】
「Duke 化学データベース」(植物化学および民族植物学データベース)によれば、カスタネア・サチバ葉の主な構成成分は、ベツリン(1000ppm)、カフェ酸、エラグ酸、油脂(81000ppm)、没食子酸、ハマメロース、ケンペロール、ペクチン、タンパク質(80000ppm)、ケルセチンおよびタンニン(90000ppm)である。
Romussiら[ROMUSSI G.、MOSTIN M.、Nebenflavonoide der Blaetter von Castanea sativa Mill. 3. Mitteilung:Ueber Inhaltsstoffe von Cupuliferae CIARALLO G. PHARMAZIE、Vol.36、p.718、1981]によれば、カスタネア・サチバの葉の主な構成成分は、ナルシシン(同義語:イソラムネチン 3-β-ルチノシド)およびヘリクリソシド(同義語:ケルセチン、3-O-β-D-(6''O-p-クマロイル)-グルコピラノシド)である。
【0009】
Marsiliら[Phytochemisty、Vol.11、p.2633-2634、1972:「Castanea sativaの葉のいくつかの構成成分」]によれば、以下の構成成分がカスタネア・サチバの葉において同定されている:ワックス 0.1%、ウルソル酸 0.2%、ルペオール 0.4%、ベツリン 0.1%、脂肪族炭化水素 0.04%、脂肪酸 1.58%。
Jones elら[Phytochemisty、Vol.23、p.2666-2667、1984:「いくつかの樹木および低木のアスコルビン酸含量に関する記録」]によれば、カスタネア・サチバの葉におけるアスコルビン酸の含量は、191.3±24.1mg/葉100gである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、化粧品用途に使用しうる物質の必要性である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、植物カスタネア・サチバの葉抽出物が、化粧品目的に有用であることがわかった。
本発明の対象は、植物カスタネア・サチバの葉抽出物ならびに化粧品目的に一般的な助剤および/または添加剤を含有する組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
植物カスタネア・サチバの葉抽出物を、本発明に係る抽出物と称する。前のパラグラフに規定した組成物を、本発明の組成物と称する。
【0013】
本発明の1つの態様において、化粧品目的に一般的な助剤および/または添加剤は、油成分、界面活性剤、乳化剤、油脂、ワックス、真珠色化ワックス、増粘剤、濃厚剤、過脂肪剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、レシチン、リン脂質、生物起源の活性成分、脱臭剤、抗微生物剤、発汗防止剤、皮膜形成剤、ふけ防止剤、膨潤剤、防虫剤、ヒドロトロープ剤、可溶化剤、防腐剤、芳香油および染料からなる群から選択される。
【0014】
本発明の1つの態様において、本発明の組成物中の本発明に係る抽出物の濃度は、0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%である。
【0015】
本発明の1つの態様において、本発明に係る抽出物は、植物カスタネア・サチバの葉を、水、アルコール(好ましくはメタノール)およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒(好ましい溶媒は、水、メタノールおよび80容量%メタノールと20容量%水の混合物である)で抽出して、溶媒中の抽出物の溶液を得ること、ならびに、この溶液から溶媒を除去して、抽出物を得ることによって得られる。
【0016】
本発明の別の対象は、ヒト身体の化粧処置のための、植物カスタネア・サチバの葉抽出物または本発明の組成物の使用である。この使用を、本発明の使用と称する。
本発明の1つの態様において、本発明の使用は抗老化効果を含む。
本発明の1つの態様において、本発明の使用は、UV放射に対するヒト皮膚細胞の保護(「UV-細胞光保護」)を含む。
【0017】
本発明の1つの態様において、本発明の使用は、抗炎症効果または抗掻痒効果または鎮静効果または抗フリーラジカル効果または抗プロテアーゼ効果(マトリクスメタロプロテアーゼに対する効果を除く)または抗リポキシゲナーゼ効果を含む。
本発明の1つの態様において、本発明の使用は太足症候群の軽減を含む。
本発明の1つの態様において、本発明の使用は増白効果または美白効果を含む。
【0018】
本発明の別の対象は、化粧品組成物の製造のため、好ましくは本発明の組成物の製造のための、植物カスタネア・サチバの葉抽出物の使用である。
【0019】
ヒト身体の化粧処置は、ヒト皮膚、ヒト毛髪、またはヒト皮膚付属物の処置であってよい。皮膚付属物とは、爪、脂腺、汗腺などを意味する。
【0020】
好ましくは、植物カスタネア・サチバの葉抽出物はポリフェノールを含有する。
本発明に係る抽出物は、多くの利点を有する。それは、化粧品用途に有利な多くの生物学的活性を有する。これら有利な性質の一部は、前のパラグラフに記載した。さらなる利点は、実験の部に記載する。
【0021】
化粧品目的に一般的な助剤および添加剤は、油成分、界面活性剤、乳化剤、油脂、ワックス、真珠色化ワックス、増粘剤、濃厚剤、過脂肪剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、レシチン、リン脂質、生物起源の活性成分、脱臭剤、抗微生物剤、発汗防止剤、皮膜形成剤、ふけ防止剤、膨潤剤、防虫剤、ヒドロトロープ剤、可溶化剤、防腐剤、芳香油および染料からなる群から選択することができる。
【0022】
本発明の1つの態様において、化粧品目的に一般的な助剤および添加剤は、界面活性剤、乳化剤、油脂、ワックス、安定剤、脱臭剤、発汗防止剤、ふけ防止剤および芳香油からなる群から選択する。
【0023】
助剤および添加剤の合計含量は、化粧品および/または医薬品調製物を基準に、1〜50重量%、好ましくは5〜40重量%であってよい。これらの調製物は、通常の冷間法または熱間法によって製造することができる。相反転温度法を使用するのが好ましい。
【0024】
本発明の目的のために、化粧品調製物はケア剤を意味することができる。ケア剤とは、皮膚および毛髪のためのケア剤を意味するものと解される。これらのケア剤には、特に、皮膚および毛髪のための洗浄および回復作用が含まれる。
【0025】
適用は、錠剤、糖衣錠、カプセル、ジュース、溶液および顆粒の形態で局所または経口であってよい。
【0026】
本発明の組成物および化粧品調製物は、化粧品および/または皮膚医薬品調製物、例えば、毛髪シャンプー、毛髪ローション、発泡浴剤、シャワー浴剤、クリーム、ゲル、ローション、アルコール性および水性/アルコール性溶液、エマルジョン、ワックス/油脂組成物、スティック調製物、粉末または軟膏の製造のために使用することができる。さらに、本発明の経口適用のための調製物は、錠剤、糖衣錠、カプセル、ジュース、溶液および顆粒に導入することもできる。
【0027】
存在していてよい界面活性剤(または界面活性物質)は、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性および/または両性または双性イオン性界面活性剤である。組成物中のこれらの含量は、通常は約1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、特に10〜30重量%である。
【0028】
陰イオン性界面活性剤の代表例は、石鹸、アルキルベンゼンスルホネート、アルカンスルホネート、オレフィンスルホネート、アルキルエーテルスルホネート、グリセロールエーテルスルホネート、α-メチルエステルスルホネート、スルホ脂肪酸、アルキルスルフェート、脂肪アルコールエーテルスルフェート、グリセロールエーテルスルフェート、脂肪酸エーテルスルフェート、ヒドロキシ混合エーテルスルフェート、モノグリセリド(エーテル)スルフェート、脂肪酸アミド(エーテル)スルフェート、モノおよびジアルキルスルホスクシネート、モノおよびジアルキルスルホスクシナメート、スルホトリグリセリド、アミド石鹸、エーテルカルボン酸およびその塩、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、N-アシルアミノ酸(例えば、アシルラクチレート、アシルタルトレート、アシルグルタメートおよびアシルアスパルテート)、アルキルオリゴグルコシドスルフェート、タンパク質脂肪酸縮合物(特に、コムギに基づく植物生成物)、および、アルキル(エーテル)ホスフェートである。陰イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含有しているときには、これらは通常の同族体分布を有していてよいが、好ましくは狭い同族体分布を有する。
【0029】
非イオン性界面活性剤の代表例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪酸アミドポリグリコールエーテル、脂肪アミンポリグリコールエーテル、アルコキシル化トリグリセリド、混合エーテルおよび混合ホルマール、所望により部分的に酸化したアルキル(アルケニル)オリゴグリコシドまたはグルクロン酸誘導体、脂肪酸N-アルキルグルカミド、タンパク質加水分解物(特に、コムギに基づく植物生成物)、ポリオール脂肪酸エステル、糖エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびアミンオキシドである。非イオン性界面活性剤がポリグリコールエーテル鎖を含有しているときには、これらは通常の同族体分布を有していてよいが、好ましくは狭い同族体分布を有する。
【0030】
陽イオン性界面活性剤の代表例は、第四アンモニウム化合物、例えばジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、およびエステルクォート(ester quat)、特に第四級化した脂肪酸トリアルカノールアミンエステル塩である。
両性または双性イオン性界面活性剤の代表例は、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート、イミダゾリニウムベタインおよびスルホベタインである。
上記した界面活性剤は既知化合物である。これら物質の構造および製造については、関連の概説文献を参照することができる。
【0031】
特に適する穏やかな(即ち、特に皮膚に適合する)界面活性剤の代表例は、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルフェート、モノグリセリドスルフェート、モノおよび/またはジアルキルスルホスクシネート、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、脂肪酸グルタメート、α-オレフィンスルホネート、エーテルカルボン酸、アルキルオリゴグルコシド、脂肪酸グルカミド、アルキルアミドベタイン、アンホアセタールおよび/またはタンパク質脂肪酸縮合物(好ましくは、コムギタンパク質に基づく)である。
【0032】
適する油成分は、例えば、6〜18個、好ましくは8〜10個の炭素原子を含む脂肪アルコールに基づくゲルベアルコール、直鎖C6-22脂肪酸と直鎖または分岐鎖C6-22脂肪アルコールとのエステル、分岐鎖C6-13カルボン酸と直鎖または分岐鎖C6-22脂肪アルコールとのエステル、例えば、ミリスチルミリステート、ミリスチルパルミテート、ミリスチルステアレート、ミリスチルイソステアレート、ミリスチルオレエート、ミリスチルベヘネート、ミリスチルエルケート、セチルミリステート、セチルパルミテート、セチルステアレート、セチルイソステアレート、セチルオレエート、セチルベヘネート、セチルエルケート、ステアリルミリステート、ステアリルパルミテート、ステアリルステアレート、ステアリルイソステアレート、ステアリルオレエート、ステアリルベヘネート、ステアリルエルケート、イソステアリルミリステート、イソステアリルパルミテート、イソステアリルステアレート、イソステアリルイソステアレート、イソステアリルオレエート、イソステアリルベヘネート、イソステアリルエルケート、オレイルミリステート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルオレエート、オレイルベヘネート、オレイルエルケート、ベヘニルミリステート、ベヘニルパルミテート、ベヘニルステアレート、ベヘニルイソステアレート、ベヘニルオレエート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルエルケート、エルシルミリステート、エルシルパルミテート、エルシルステアレート、エルシルイソステアレート、エルシルオレエート、エルシルベヘネートおよびエルシルエルケートなどである。
【0033】
また適するのは、直鎖C6-22脂肪酸と分岐鎖アルコール(特に2-エチルヘキサノール)とのエステル、C18-38アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖または分岐鎖C6-22脂肪アルコールとのエステル(特にジオクチルマレエート)、直鎖および/または分岐鎖脂肪酸と多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ダイマージオールまたはトリマートリオール)および/またはゲルベアルコールとのエステル、C6-10脂肪酸に基づくトリグリセリド、C6-18脂肪酸に基づく液体のモノ/ジ/トリグリセリド混合物、C6-22脂肪アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸(特に安息香酸)とのエステル、C2-12ジカルボン酸と1〜22個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖アルコールまたは2〜10個の炭素原子および2〜6個のヒドロキシル基を含むポリオールとのエステル、植物油、分岐鎖の第一アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖および分岐鎖のC6-22脂肪アルコールカーボネート(例えば、ジカプリリルカーボネート;Cetiol CC)、6〜18個、好ましくは8〜10個の炭素原子を含む脂肪アルコールに基づくゲルベカーボネート、安息香酸と直鎖および/または分岐鎖C6-22アルコールとのエステル(例えば、Finsolv TN)、アルキル基あたりに6〜22個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の対称または非対称のジアルキルエーテル(例えば、ジカプリリルエーテル;Cetiol OE)、エポキシ化脂肪酸エステルのポリオールによる開環生成物、シリコーン油(特に、シクロメチコーン、ケイ素メチコーン型)および/または脂肪族またはナフテン系炭化水素(例えば、スクアラン、スクアレンまたはジアルキルシクロヘキサン)である。
【0034】
適する乳化剤は、例えば、下記の群の少なくとも1つに由来する非イオン性界面活性剤である:
・8〜22個の炭素原子を含む直鎖脂肪アルコールへの、12〜22個の炭素原子を含む脂肪酸への、アルキル基に8〜15個の炭素原子を含むアルキルフェノールへの、および、アルキル基に8〜22個の炭素原子を含むアルキルアミンへの、エチレンオキシド2〜30モルおよび/またはプロピレンオキシド0〜5モルの付加生成物;
・アルキル(アルケニル)基に8〜22個の炭素原子を含むアルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシド、ならびに、そのエトキシル化類似体;
・ヒマシ油および/または水素化ヒマシ油へのエチレンオキシド1〜15モルの付加生成物;
・ヒマシ油および/または水素化ヒマシ油へのエチレンオキシド15〜60モルの付加生成物;
・グリセロールおよび/またはソルビタンと、12〜22個の炭素原子を含む不飽和、直鎖または飽和、分岐鎖の脂肪酸および/または3〜18個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸との部分エステル、ならびに、エチレンオキシド1〜30モルを含むその付加生成物;
・ポリグリセロール(平均の自己縮合度2〜8)、ポリエチレングリコール(分子量400〜5000)、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、糖アルコール(例えばソルビトール)、アルキルグルコシド(例えば、メチルグルコシド、ブチルグルコシド、ラウリルグルコシド)およびポリグルコシド(例えばセルロース)と、12〜22個の炭素原子を含む飽和および/または不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪酸および/または3〜18個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸との部分エステル、ならびに、エチレンオキシド1〜30モルを含むその付加生成物;
・ペンタエリトリトール、脂肪酸、クエン酸および脂肪アルコールの混合エステルおよび/または6〜22個の炭素原子を含む脂肪酸、メチルグルコースおよびポリオール(好ましくは、グリセロールまたはポリグリセロール)の混合エステル;
・モノ、ジおよびトリアルキルホスフェートならびにモノ、ジおよび/またはトリ-PEG-アルキルホスフェートおよびその塩;
・羊毛ワックスアルコール;
・ポリシロキサン/ポリアルキル/ポリエーテルコポリマーおよび対応する誘導体;
・ブロックコポリマー、例えば、ポリエチレングリコール-30 ジポリヒドロキシステアレート;
・ポリマー乳化剤、例えば、GoodrichのPemulenグレード(TR-1、TR-2);
・ポリアルキレングリコール;および
・グリセロールカーボネート。
【0035】
脂肪アルコール、脂肪酸、アルキルフェノールへの、またはヒマシ油への、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加生成物は、既知の市販生成物である。これらは同族体混合物であり、その平均のアルコキシル化度は、付加反応を行う基質とエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとの量比に対応する。グリセロールへのエチレンオキシドの付加生成物のC12/18脂肪酸モノエステルおよびジエステルは、化粧品調製物のための脂質層増強剤として知られている。
【0036】
アルキルおよび/またはアルケニルオリゴグリコシド、その製造およびその使用は、従来技術から既知である。これらは、グルコースまたはオリゴ糖と8〜18個の炭素原子を含む第一アルコールとを反応させることによって製造することができる。グリコシド基に関する限り、モノグリコシド(環状糖基がグリコシド結合によって脂肪アルコールに結合している)ならびにオリゴマーグリコシド(好ましくは約8までのオリゴマー化度を有する)の両方が適している。このオリゴマー化度は、統計学的平均値であり、この値は、上記のような工業用グレード製品に一般的な同族体分布に基づいている。
【0037】
適する部分グリセリドの代表例は、ヒドロキシステアリン酸モノグリセリド、ヒドロキシステアリン酸ジグリセリド、イソステアリン酸モノグリセリド、イソステアリン酸ジグリセリド、オレイン酸モノグリセリド、オレイン酸ジグリセリド、リシノール酸モノグリセリド、リシノール酸ジグリセリド、リノール酸モノグリセリド、リノール酸ジグリセリド、リノレン酸モノグリセリド、リノレン酸ジグリセリド、エルカ酸モノグリセリド、エルカ酸ジグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酒石酸ジグリセリド、クエン酸モノグリセリド、クエン酸ジグリセリド、リンゴ酸モノグリセリド、リンゴ酸ジグリセリド、ならびに、これらの工業用グレード混合物(これらは、製造方法に由来する副生成物として少量のトリグリセリドを含んでいることもある)である。また同様に適するのは、これらの部分グリセリドへのエチレンオキシド1〜30モル、好ましくは5〜10モルの付加生成物である。
【0038】
適するソルビタンエステルは、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンセスキイソステアレート、ソルビタンジイソステアレート、ソルビタントリイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノエルケート、ソルビタンセスキエルケート、ソルビタンジエルケート、ソルビタントリエルケート、ソルビタンモノリシノレエート、ソルビタンセスキリシノレエート、ソルビタンジリシノレエート、ソルビタントリリシノレエート、ソルビタンモノヒドロキシステアレート、ソルビタンセスキヒドロキシステアレート、ソルビタンジヒドロキシステアレート、ソルビタントリヒドロキシステアレート、ソルビタンモノタルトレート、ソルビタンセスキタルトレート、ソルビタンジタルトレート、ソルビタントリタルトレート、ソルビタンモノシトレート、ソルビタンセスキシトレート、ソルビタンジシトレート、ソルビタントリシトレート、ソルビタンモノマレエート、ソルビタンセスキマレエート、ソルビタンジマレエート、ソルビタントリマレエートならびにこれらの工業用グレード混合物である。また同様に適するのは、これらのソルビタンエステルへのエチレンオキシド1〜30モル、好ましくは5〜10モルの付加生成物である。
【0039】
適するポリグリセロールエステルの代表例は、ポリグリセリル-2 ジポリヒドロキシステアレート(Dehymuls PGPH)、ポリグリセロール-3 ジイソステアレート(Lameform TGI)、ポリグリセリル-4 イソステアレート(Isolan GI 34)、ポリグリセリル-3 オレエート、ジイソステアロイル ポリグリセリル-3 ジイソステアレート(Isolan PDI)、ポリグリセリル-3 メチルグルコース ジステアレート(Tego Care 450)、ポリグリセリル-3 蜜蝋(Cera Bellina)、ポリグリセリル-4 カプレート(Polyglycerol Caprate T2010/90)、ポリグリセリル-3 セチルエーテル(Chimexane NL)、ポリグリセリル-3 ジステアレート(Cremophor GS 32)、ポリグリセリル ポリリシノレエート(Admul WOL 1403)、ポリグリセリル ジメレート イソステアレートおよびこれらの混合物である。他の適するポリオールエステルの例は、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトールと、ラウリン酸、ヤシ油脂肪酸、獣脂脂肪酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸などとの、モノ、ジおよびトリエステルである(これらを、所望によりエチレンオキシド1〜30モルと反応させてもよい)。
【0040】
さらに、双性イオン性界面活性剤を、乳化剤として使用することができる。用語「双性イオン性界面活性剤」は、分子中に少なくとも1つの第四アンモニウム基および少なくとも1つのカルボキシレート基および1つのスルホネート基を含む界面活性化合物を指す。特に適する双性イオン性界面活性剤は、ベタインであり、例えばN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばヤシ油アルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばヤシ油アシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、および2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン(アルキル基またはアシル基にそれぞれ8〜18個の炭素原子を含む)、およびヤシ油アシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートである。特に好ましいのは、コカミドプロピルベタイン(Cocamidopropyl Betaine)のCTFA名称のもとで既知である脂肪酸アミド誘導体である。
同様に適する乳化剤は、両性界面活性剤である。用語「両性界面活性剤」は、分子中にC8/18アルキル基またはアシル基に加えて、少なくとも1つの遊離アミノ基および少なくとも1つの−COOH基または−SOH基を含有し、内部塩を形成することができる界面活性化合物を指す。適する両性界面活性剤の例は、N-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸およびアルキルアミノ酢酸(アルキル基にそれぞれ約8〜18個の炭素原子を含む)である。特に好ましい両性界面活性剤は、N-ヤシ油アルキルアミノプロピオネート、ヤシ油アシルアミノエチルアミノプロピオネートおよびC12/18アシルサルコシンである。
最後に、陽イオン性界面活性剤も適する乳化剤であり、エステルクォート(ester quat)型の乳化剤、好ましくはメチルで第四級化したジ脂肪酸トリエタノールアミンエステル塩が特に好ましい。
【0041】
使用しうる油脂およびワックスを以下に記載する。
油脂の代表例は、グリセリド、即ち、高級脂肪酸の混合グリセロールエステルから本質的になる固体または液体の植物または動物産物である。
適するワックスは、特に天然ワックス、例えばカンデリラワックス、カルナバワックス、木蝋、アフリカハネガヤワックス、コルクワックス、グアルマ(guaruma)ワックス、コメ胚油ワックス、サトウキビワックス、オウリキュリー(ouricury)ワックス、モンタンワックス、蜜蝋、セラックワックス、鯨蝋、ラノリン(羊毛ワックス)、尾羽脂、セレシン、オゾケライト(地蝋)、ペトロラタム、パラフィンワックス、微結晶ワックス;化学修飾したワックス(硬ワックス)、例えばモンタンエステルワックス、サゾール(sasol)ワックス、水素化ジョジョバワックス、ならびに、合成ワックス、例えばポリアルキレンワックスおよびポリエチレングリコールワックスである。
油脂に加えて、適する添加剤は、油脂様の物質、例えばレシチンおよびリン脂質である。用語「レシチン」は、脂肪酸、グリセロール、リン酸およびコリンからエステル化によって生成するグリセロリン脂質を意味すると当業者に理解されている。従って、レシチンは、ホスファチジルコリン(PC)と称されることも多い。挙げることができる天然レシチンの例はケファリンである。これは、ホスファチジン酸とも称され、1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-リン酸の誘導体である。対照的に、リン脂質は、リン酸とグリセロールとのモノエステル、好ましくはジエステル(グリセロホスフェート)を意味すると通常は理解されており、これは、一般に油脂と考えられている。さらに、スフィンゴシンおよびスフィンゴ脂質も適している。
【0042】
適する真珠色化ワックスの例は、アルキレングリコールエステル、特にエチレングリコールジステアレート;脂肪酸アルカノールアミド、特にヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド;部分グリセリド、特にステアリン酸モノグリセリド;多塩基性の所望によりヒドロキシ置換されたカルボン酸と、6〜22個の炭素原子を含む脂肪アルコールとのエステル、特に酒石酸の長鎖エステル;合計して少なくとも24個の炭素原子を含む脂肪化合物、例えば、脂肪アルコール、脂肪ケトン、脂肪アルデヒド、脂肪エーテルおよび脂肪カーボネート、特にラウロンおよびジステアリルエーテル;脂肪酸、例えばステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸またはベヘン酸;12〜22個の炭素原子を含むオレフィンエポキシドの、12〜22個の炭素原子を含む脂肪アルコールおよび/または2〜15個の炭素原子および2〜10個のヒドロキシル基を含むポリオールによる開環生成物;およびこれらの混合物である。
【0043】
使用しうる増粘剤および濃厚剤を以下に記載する。
適する増粘剤は、主に、12〜22個、好ましくは16〜18個の炭素原子を含む脂肪アルコールまたはヒドロキシ脂肪アルコール、さらに部分グリセリド、脂肪酸またはヒドロキシ脂肪酸である。これらの物質と、アルキルオリゴグルコシドおよび/または脂肪酸N-メチルグルカミド(同じ鎖長)および/またはポリグリセロール ポリ-12-ヒドロキシステアレートとの組合せが好ましい。
適する濃厚剤は、例えば、Aerosilグレード(親水性シリカ)、多糖、特にキサンタンゴム、グアール、寒天、アルギネートおよびチロース(tylose)、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、さらに比較的高分子量の脂肪酸ポリエチレングリコールモノエステルおよびジエステル、ポリアクリレート[例えば、CarbopolおよびPemulenグレード(Goodrich);Synthalen(Sigma);Keltrolグレード(Kelco);Sepigelグレード(Seppic);Salcareグレード(Allied Colloids)]、ポリアクリルアミド、ポリマー、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドン、界面活性剤(例えば、エトキシル化脂肪酸グリセリド)、脂肪酸とポリオール(例えば、ペンタエリトリトールまたはトリメチロールプロパン)とのエステル、狭い同族体分布を有する脂肪アルコールエトキシレートまたはアルキルオリゴグルコシド、ならびに、電解質(例えば、塩化ナトリウムおよび塩化アンモニウム)である。
【0044】
使用しうる過脂肪剤は、例えば、ラノリンおよびレシチン、さらにポリエトキシル化またはアシル化したラノリンおよびレシチン誘導体、ポリオール脂肪酸エステル、モノグリセリドおよび脂肪酸アルカノールアミドである(後者は、発泡安定剤としても働く)。
使用しうる安定剤は、脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸またはリシノール酸のマグネシウム、アルミニウムおよび/または亜鉛塩である。
【0045】
使用しうるポリマーを以下に記載する。
適する陽イオン性ポリマーは、例えば、陽イオン性セルロース誘導体、例えば第四級化したヒドロキシエチルセルロース(AmercholからPolymer JR 400の名称で入手できる)、陽イオン性デンプン、ジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドのコポリマー、第四級化したビニルピロリドン/ビニルイミダゾールポリマー、例えばLuviquat(BASF)、ポリグリコールとアミンの縮合生成物、第四級化したコラーゲンポリペプチド、例えばラウリルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン(Lamequat L、Gruenau)、第四級化したコムギポリペプチド、ポリエチレンイミン、陽イオン性シリコーンポリマー、例えばアミドメチコーン、アジピン酸とジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンのコポリマー(Cartaretin、Sandoz)、アクリル酸とジメチルジアリルアンモニウムクロリドのコポリマー(Merquat 550、Chemviron)、ポリアミノポリアミドおよびその架橋した水溶性ポリマー、陽イオン性キチン誘導体、例えば第四級化したキトサン(所望により微結晶分散している)、ジハロアルキル(例えばジブロモブタン)とビス-ジアルキルアミン(例えばビス-ジメチルアミノ-1,3-プロパン)との縮合生成物、陽イオン性グアールゴム(例えば、CelaneseからのJaguar CBS、Jaguar C-17、Jaguar C-16)、第四級化したアンモニウム塩ポリマー(例えば、MiranolからのMirapol A-15、Mirapol AD-1、Mirapol AZ-1)である。
【0046】
適する陰イオン性、双性イオン性、両性および非イオン性ポリマーは、例えば、酢酸ビニル/クロトン酸コポリマー、ビニルピロリドン/アクリル酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル/マレイン酸ブチル/アクリル酸イソボルニルコポリマー、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーおよびそのエステル、未架橋のポリアクリル酸およびポリオール架橋したポリアクリル酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド/アクリレートコポリマー、オクチルアクリルアミド/メタクリル酸メチル/tert-ブチルアミノエチルメタクリレート/2-ヒドロキシプロピルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート/ビニルカプロラクタムターポリマーおよび所望により誘導体化したセルロースエーテルおよびシリコーンである。
【0047】
適するシリコーン化合物は、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、環式シリコーン、ならびに、アミノ-、脂肪酸-、アルコール-、ポリエーテル-、エポキシ-、フッ素-、グリコシド-および/またはアルキル-修飾したシリコーン化合物である(これらは、室温で液体または樹脂形態のいずれかであることができる)。また適するのは、水素化シリケートおよび200〜300のジメチルシロキサン単位の平均鎖長を有するジメチコーンの混合物であるシメチコーンである。
【0048】
使用しうる脱臭剤および抗微生物剤を以下に記載する。
化粧品用脱臭剤は、体臭を相殺するか、遮蔽するか、または除去する。体臭は、アポクリン発汗における皮膚細菌の作用の結果として生じ、不快臭を有する分解生成物の生成を伴う。従って、脱臭剤は、抗微生物剤、酵素阻害剤、臭気吸収剤または臭気遮蔽剤として作用する活性成分を含有する。
【0049】
適する抗微生物剤は、基本的に、グラム陽性細菌に対して効果的な全ての物質であり、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸およびその塩およびエステル、N-(4-クロロフェニル)-N'-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、2,4,4'-トリクロロ-2'-ヒドロキシジフェニルエーテル(トリクロサン)、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール、2,2'-メチレン-ビス-(6-ブロモ-4-クロロフェノール)、3-メチル-4-(1-メチルエチル)フェノール、2-ベンジル-4-クロロフェノール、3-(4-クロロフェノキシ)-1,2-プロパンジオール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート、クロロヘキシジン、3,4,4'-トリクロロカルバニリド(TTC)、抗細菌芳香物質、チモール、タイム油、オイゲノール、チョウジ油、メントール、ミント油、ファルネソール、フェノキシエタノール、グリセロールモノカプレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノラウレート(GML)、ジグリセロールモノカプレート(DMC)、サリチル酸N-アルキルアミド(例えば、n-オクチルサリチルアミドまたはn-デシルサリチルアミド)などである。
【0050】
適する酵素阻害剤は、例えばエステラーゼ阻害剤である。これらは、好ましくはクエン酸トリアルキル、例えばクエン酸トリメチル、クエン酸トリプロピル、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリブチル、特にクエン酸トリエチル(Hydagen CAT)である。これらの物質は、酵素活性を阻害し、これによって臭気の生成を減少させる。適するエステラーゼ阻害剤である他の物質は、ステロールのスルフェートまたはホスフェート、例えばラノステロール、コレステロール、カンペステロール、スチグマステロールおよびシトステロールのスルフェートまたはホスフェート、ジカルボン酸およびそのエステル、例えばグルタル酸、グルタル酸モノエチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸、アジピン酸モノエチル、アジピン酸ジエチル、マロン酸およびマロン酸ジエチル、ヒドロキシカルボン酸およびそのエステル、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸または酒石酸ジエチル、およびグリシン酸亜鉛である。
【0051】
適する臭気吸収剤は、臭気生成化合物を吸収することができ、その大部分を保持することができる物質である。これらは、個々の成分の分圧を低下させ、こうしてその拡散速度を低下させる。この過程において、芳香物質が損なわれないままであることが重要である。臭気吸収剤は、細菌に対して効果的ではない。これらは、例えば主成分として、ラブダナムもしくはエゴノキの抽出物またはある種のアビエチン酸誘導体などの「保留剤」として当業者に知られている特定のほぼ臭気中性の芳香物質またはリシノール酸の錯亜鉛塩を含有する。
【0052】
臭気遮蔽剤は、その臭気遮蔽剤としての機能に加えて、そのそれぞれの芳香を脱臭剤に与える芳香物質または芳香油である。挙げることができる芳香油は、例えば、天然および合成の芳香物質の混合物である。天然の芳香物質は、花、茎および葉、果実、果皮、根、木、ハーブおよび草、針状葉および枝、樹脂およびバルサムの抽出物である。また適するのは、動物原料、例えばジャコウおよびビーバーである。通常の合成芳香化合物は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコールおよび炭化水素型の生成物である。エステル型の芳香化合物は、例えば、酢酸ベンジル、酢酸p-tert-ブチルシクロヘキシル、酢酸リナリル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、プロピオン酸スチラリルおよびサリチル酸ベンジルである。エーテルには、例えばベンジルエチルエーテルが含まれ、アルデヒドには、例えば8〜18個の炭素原子を含む直鎖アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアルおよびボルゲオナールが含まれる。ケトンには、例えばイオノンおよびメチルセドリルケトンが含まれ、アルコールには、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコールおよびテルピネオールが含まれ、炭化水素には、主にテルペンおよびバルサムが含まれる。しかし、好ましいのは、異なる芳香物質の混合物を使用することである(これらは一緒になって快い芳香を生じる)。また、比較的低揮発性の精油(これらのほとんどは芳香成分として使用される)も芳香油として適している。これらは、例えば、セージ油、カミツレ油、チョウジ油、メリッサ油、ミント油、シナモン葉油、シナノキ花油、ビャクシン果実油、ベチベルソウ油、オリバヌム油、ガルバヌム油、ラブダナム油およびラベンジン油である。以下のものを、単独でまたは混合物として使用するのが好ましい:即ち、ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアル、ライラール(lyral)、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイサムブレン・フォルテ(boisambrene forte)、アムブロキサン(ambroxan)、インドール、ヘジオン(hedione)、サンデリス(sandelice)、レモン油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、シクロベルタール(cyclovertal)、ラベンジン油、サルビア油、β-ダマスコーン、ゼラニウム油バーボン、サリチル酸シクロヘキシル、ベルトフィックス・ケウアー(Vertofix coeur)、イソ-E-スーパー(iso-E-super)、フィクソリド(Fixolide)NP、エベルニル(evernyl)、イラルデイン(iraldein)ガンマ、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラット(romilat)、イロチル(irotyl)およびフロラマット(floramat)。
【0053】
発汗防止剤は、エクリン汗腺の活性に影響を及ぼすことによって発汗を減少させ、こうして腋下の湿気および体臭を中和する。通常、水性または無水の発汗防止配合物は、1つまたはそれ以上の以下の成分を含有する:収斂性の活性成分、油成分、非イオン性乳化剤、共乳化剤、増粘剤、助剤、例えば濃厚剤または錯生成剤、および/または非水性溶媒(例えば、エタノール、プロピレングリコールおよび/またはグリセロール)。
【0054】
適する収斂性の発汗防止活性成分は、主に、アルミニウム、ジルコニウムまたは亜鉛の塩である。このような適する抗ヒドロ(antihydrotic)活性成分は、例えば、アルミニウムクロリド、アルミニウムクロロヒドレート、アルミニウムジクロロヒドレート、アルミニウムセスキクロロヒドレート、および、これらと例えば1,2-プロピレングリコールとの複合化合物、アルミニウムヒドロキシアラントイネート、アルミニウムクロリドタルトレート、アルミニウムジルコニウムトリクロロヒドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロヒドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロヒドレート、および、これらと例えばアミノ酸(グリシンなど)との複合化合物である。
【0055】
さらに、通常の油溶性および水溶性の助剤が、発汗防止剤に比較的少量で存在していてもよい。
このような油溶性の助剤は、例えば、抗炎症性、皮膚保護性または芳香性の精油、合成の皮膚保護活性成分、および/または油溶性の芳香油であってよい。
【0056】
通常の水溶性の添加剤は、例えば、防腐剤、水溶性芳香物質、pH調節剤、例えば緩衝混合物、水溶性濃厚剤、例えば水溶性の天然または合成ポリマー、例えばキサンタンゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたは高分子量ポリエチレンオキシドである。
【0057】
使用しうる皮膜形成剤を以下に記載する。
通常の皮膜形成剤は、例えば、キトサン、微結晶キトサン、第四級化キトサン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸系列のポリマー、第四セルロース誘導体、コラーゲン、ヒアルロン酸およびその塩および同様の化合物である。
【0058】
適するふけ防止活性成分は、ピロクトン オラミン(pirocton olamine)[1-ヒドロキシ-4-メチル-6-(2,4,4-トリメチルペンチル)-2-(1H)-ピリジノン モノエタノールアミン塩]、Baypival(クリムバゾール;climbazole)、Ketoconazole(4-アセチル-1-{4-[2-(2,4-ジクロロフェニル) r-2-(1H-イミダゾール-1-イルメチル)-1,3-ジオキシラン-c-4-イルメトキシフェニル}ピペラジン、ケトコナゾール、エルビオール、セレンジスルフィド、コロイド状イオウ、イオウポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート、イオウリシノールポリエトキシレート、イオウタールジスチレート、サリチル酸(または、ヘキサクロロフェンと組合せて)、ウンデシレン酸 モノエタノールアミド スルホスクシネートNa塩、Lamepon UD(タンパク質/ウンデシレン酸縮合物)、亜鉛ピリチオン、アルミニウムピリチオンおよびマグネシウムピリチオン/ジピリチオンマグネシウムスルフェートである。
【0059】
水相のための膨潤剤は、モンモリロナイト、粘土無機物質、ペムレン(Pemulen)およびアルキル修飾したカルボポール(Carbopol)グレード(Goodrich)であってよい。
適する防虫剤は、N,N-ジエチル-m-トルアミド、1,2-ペンタンジオールまたはブチルアセチルアミノプロピオン酸エチルである。
【0060】
流れ挙動を改善するために、ヒドロトロープ剤、例えばエタノール、イソプロピルアルコールまたはポリオールを使用することができる。ここで適するポリオールは、好ましくは2〜15個の炭素原子および少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する。これらポリオールは、他の官能基、特にアミノ基を含有することもでき、また、窒素で修飾することもできる。その代表例は、以下の通りである:
・グリセロール;
・アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、および、ポリエチレングリコール(100〜1000ダルトンの平均分子量を有する);
・1.5〜10の自己縮合度を有する工業用グレードのオリゴグリセロール混合物、例えば40〜50重量%のジグリセロール含量を有する工業用グレードのジグリセロール混合物;
・メチロール化合物、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリトリトールおよびジペンタエリトリトール;
・低級アルキルグルコシド、特にアルキル基に1〜8個の炭素原子を含むもの、例えばメチルおよびブチルグルコシド;
・5〜12個の炭素原子を含む糖アルコール、例えばソルビトールまたはマンニトール;
・5〜12個の炭素原子を含む糖、例えばグルコースまたはスクロース;
・アミノ糖、例えばグルカミン;
・ジアルコールアミン、例えばジエタノールアミンまたは2-アミノ-1,3-プロパンジオール。
【0061】
適する防腐剤は、例えば、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド溶液、パラベン、ペンタンジオールまたはソルビン酸、および化粧品指針(Cosmetics Directive)の付属書6のパートAおよびBに挙げられている他の群の物質である。
【0062】
使用しうる芳香油は、好ましくは天然および合成の芳香物質の混合物である。天然の芳香物質は、花(ユリ、ラベンダー、バラ、ジャスミン、ネロリ、イランイラン)、茎および葉(ゼラニウム、パチョリ、プチグレイン)、果実(アニス、コエンドロ、ヒメウイキョウ、ビャクシン)、果皮(ベルガモット、レモン、オレンジ)、根(ニクズク、アンゼリカ、セロリ、カルダモン、コスタス、アイリス、カルムス)、木(マツ、ビャクダン、ユソウボク、シーダー材、シタン)、ハーブおよび草(タラゴン、レモングラス、セージ、タイム)、針状葉および枝(トウヒ、モミ、マツ、低マツ)、樹脂およびバルサム(ガルバヌム、エレミ、ベンゾイン、ミルラ、乳香、オポパナックス)の抽出物である。また適するのは、動物原料、例えばジャコウおよびビーバーである。通常の合成芳香化合物は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、アルコールおよび炭化水素型の生成物である。エステル型の芳香化合物は、例えば、酢酸ベンジル、イソ酪酸フェノキシエチル、酢酸p-tert-ブチルシクロヘキシル、酢酸リナリル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、酢酸フェニルエチル、安息香酸リナリル、ギ酸ベンジル、エチルメチルフェニルグリシネート、シクロヘキシルプロピオン酸アリル、プロピオン酸スチラリルおよびサリチル酸ベンジルである。エーテルには、例えばベンジルエチルエーテルが含まれ、アルデヒドには、例えば8〜18個の炭素原子を含む直鎖アルカナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シクラメンアルデヒド、ヒドロキシシトロネラール、リリアルおよびボルゲオナールが含まれる。ケトンには、例えば、イオノン、α-イソメチルイオノンおよびメチルセドリルケトンが含まれ、アルコールには、アネトール、シトロネロール、オイゲノール、イソオイゲノール、ゲラニオール、リナロール、フェニルエチルアルコールおよびテルピネオールが含まれ、炭化水素には、主にテルペンおよびバルサムが含まれる。しかし、異なる芳香物質の混合物(これらは一緒になって快い芳香を生じる)を使用するのが好ましい。比較的低揮発性の精油(これらのほとんどは芳香成分として使用される)も芳香油として適している。これらは、例えば、セージ油、カミツレ油、チョウジ油、メリッサ油、ミント油、シナモン葉油、シナノキ花油、ビャクシン果実油、ベチベルソウ油、オリバヌム油、ガルバヌム油、ラブダナム油およびラベンジン油である。以下のものを、個々にまたは混合物として使用するのが好ましい:即ち、ベルガモット油、ジヒドロミルセノール、リリアル、ライラール(lyral)、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、α-ヘキシルシンナムアルデヒド、ゲラニオール、ベンジルアセトン、シクラメンアルデヒド、リナロール、ボイサムブレン・フォルテ(boisambrene forte)、アムブロキサン(ambroxan)、インドール、ヘジオン(hedione)、サンデリス(sandelice)、レモン油、マンダリン油、オレンジ油、アリルアミルグリコレート、シクロベルタール(cyclovertal)、ラベンジン油、サルビア油、β-ダマスコーン、ゼラニウム油バーボン、サリチル酸シクロヘキシル、ベルトフィックス・ケウアー(Vertofix coeur)、イソ-E-スーパー(iso-E-super)、フィクソリド(Fixolide)NP、エベルニル(evernyl)、イラルデイン(iraldein)ガンマ、フェニル酢酸、酢酸ゲラニル、酢酸ベンジル、ローズオキシド、ロミラット(romilat)、イロチル(irotyl)およびフロラマット(floramat)。
【0063】
使用しうる染料は、化粧品目的に認められかつ適している物質である。通常、これらの染料は、混合物全体を基準に、0.001〜0.1重量%の濃度で使用される。
【実施例】
【0064】
カスタネア・サチバの葉の水抽出のための方法
乾燥および粉末化したカスタネア・サチバの葉(0.2kg)を、蒸留水(2L)を入れたビーカーに導入した。次いで、この混合物を60℃で1時間撹拌した。固体を、遠心(4200rpmで15分間)および濾過によって除去した。この濾過した溶液が抽出物の粗溶液を構成し、水を噴霧乾燥によって除去した。得られた収率は乾燥葉の重量の6.22%であった。こうして得られた抽出物を、「水性抽出物」と称する。これを、以下に記載する実験に使用した。抽出を2回行い、2つの水性抽出物:「バッチA」および「バッチB」を得た。
この水性抽出物中に見いだされる成分
没食子酸、エラグ酸、ルチン、イソクエルシトリン、ナルシシン(イソラムネチン、3-O-ルチノシド)、アストラガリン(ケンペロール-3-O-グルコシド)、フルクトース。
【0065】
カスタネア・サチバの葉のアルコール抽出のための方法(80容量%のメタノール+20容量%の水)
乾燥および粉末化したカスタネア・サチバの葉(0.2kg)を、水中80%メタノール(2L)を入れたビーカーに導入した。次いで、この混合物を60℃で1時間撹拌した。固体を濾過によって除去した。メタノールを蒸発によって除去した。次いで、溶液を遠心した(4200rpmで5分間)。この溶液が抽出物の粗溶液を構成し、水を凍結乾燥によって除去した。得られた収率は乾燥葉の重量の17〜20%であった。こうして得られた抽出物を、「アルコール性抽出物」と称する。これを以下に記載する実験に使用した。抽出を2回行い、2つのアルコール性抽出物:「バッチA」および「バッチB」を得た。
【0066】
実施例1:抗フリーラジカル活性(この実験は、国際特許出願公開WO02/080949に記載されている実験と同様である)
1-1.背景:
フリーラジカル(FR)は反応性の化学種である。FRは、不飽和脂質、ある種のアミノ酸から、特に、自然の生物学的機序(例えばミトコンドリア呼吸鎖)または自然の生物学的過程(例えば炎症)において酸素から生成することができる。
また、化学汚染物質またはUVなどの酸化的ストレスも、フリーラジカル濃度の上昇を誘発し、これが生存生物の全ての細胞および組織構成成分(脂質、タンパク質、糖および核塩基)に損傷を引き起こす。
実際のところ、FR毒性は酸素レベルによって強く増強され、老化において、重篤な病気(例えば、癌、糖尿病など)の発生において鍵となる過程を構成する。
【0067】
1-2.この実験の方法および原理:
抗フリーラジカル(抗FR)活性を、フリーラジカルR・(DPPH試験)およびヒドロキシルラジカルHO・を捕捉する能力を評価するための化学試験によって評価した。また、抗FR活性は、反応性酸素種(ROS)の1種、いわゆるスーパーオキシドアニオン(O・)を捕捉する能力に向けた生化学試験によっても評価した。このO・は、主に、キサンチンオキシダーゼおよびリポキシゲナーゼ活性に由来する。キサンチンオキシダーゼ(XOD)は、酸化的ストレス中に活性化される酵素であり、この酵素は、エネルギー細胞代謝の途絶によって過剰産生されたヒポキサンチン(HX)の分解に伴ってO・放出を触媒する。次いで、O・は、自然にまたはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性によって過酸化水素(H)に不均化し、これがフェントン(Fenton)反応の後にHO・の供給源を構成し、白血球によって提示されるリポキシゲナーゼ活性も、炎症過程中に放出されるアラキドン酸からのロイコトリエン合成に伴ってO・を生じる[Mac Cord M、Chabot Fletcher M、Breton J、Marshall La、「ヒト角化細胞は、U937誘導した85kDaホスホリパーゼA2と生化学的に同等であるsn-2 アシルヒドロラーゼを保持する」、Journal of Investigative Dermatology、1994、No.102、p.980-986、ならびに、Bouclier M、Hensby CN、「Prostaglandines et leucotrienes en physiologie cutanee」、Bulletin d'esthetique Dermatologique et de Cosmetologie、1986、p.17-22]。
【0068】
1-3-1.抗DPPH試験:
原理:DPPH・(ジフェニルピクリル-ヒドラジル)は、紫色溶液を生成する非常に安定なフリーラジカルである。DPPH・の紫色溶液は、ラジカル捕捉剤として働く成分のゆえに、増白効果を有する。513nmでの光学密度(OD)を記録することによって反応を評価した[DEBY C: C :Relation entre les acides gras essentiels et le taux des antioxydants tissulaires chez la souris:SOCIETE BELGE DE BIOLOGIE、seance du 19 decembre 1970(発行年)、p.2675-2680]。
【0069】
結果(対照に対する阻害%、2回測定の平均):
【表1】

「%(w/v)」は、重量/容量%を意味する[1g/100mlが1%(w/v)である]。
「〜」は、約を意味する。
IC50は、50%を阻害する濃度である。
結果を、対照に対するDPPH・ラジカルの阻害%で表した。この試験の目的は、抗フリーラジカル活性を示すことである。
【0070】
1-3-2.デオキシリボースを用いる抗HO・試験(フェントン反応):
原理:ヒドロキシルラジカルHO・(Fe++とEDTAとの存在下にHにより生成される)は、デオキシリボース(DNAの成分)を酸化し、次いで、ピンク色の化合物が、チオバルビツール酸と酸化された形態のデオキシリボースとの縮合によって生成する。532nmにおける光学密度は、酸化されたデオキシリボースのレベルに対応する。抗フリーラジカル物質は、これらのラジカルHO・と反応し、このピンク色の化合物の生成を減少させる。また、この反応をEDTAなしでも行って、第一鉄イオンとの不活性錯体を形成する成分の能力を調べた[Halliwell B、Gutteridge JMC、Aruoma OI、「デオキシリボース法:ヒドロキシルラジカルの反応の速度定数を測定するための簡単な「試験管」測定」、Analytical Biochemistry、1987、No.165、p.215-219]。
【0071】
結果(対照に対する阻害%、2回測定の平均):
【表2】

結果を、対照に対するHO・ラジカルの阻害%で表した。この試験の目的は、抗フリーラジカル活性を示すことである。
【0072】
【表3】

結果を、対照に対するHO・ラジカルの阻害%で表した。この試験の目的は、抗フリーラジカル活性を示すことである。
【0073】
1-4.スーパーオキシドアニオンの生化学試験
1-4-1.キサンチンオキシダーゼにおける阻害試験
キサンチンオキシダーゼは酸化的ストレス中に誘発される酵素である。この酵素は、プリン塩基(アデニン、グアニン)を、尿酸およびスーパーオキシドアニオンO・に異化し、この後者が、自発的に(またはSOD=スーパーオキシドジスムターゼの作用によって)HおよびOに不均化する。
スーパーオキシドアニオンO・は、540nmでの光学密度を記録することにより、NBTによって明らかにすることができる(NBT=Nitroblue tetrazolium)[OHKUMA N.ら、「表皮におけるスーパーオキシドジスムターゼ」、J.of Invest.Dermatol.、1987、No.14、p.218-223]。抗フリーラジカル活性を有する物質は、このO・アニオンを吸収または破壊し、これにより、それは光学密度を低下させる。
【0074】
結果(阻害%で表す、2回試験の平均):
【表4】

結果を、対照に対するO・ラジカルの阻害%で表した。この試験の目的は、抗フリーラジカル活性を示すことである。
「U/ml」の意味について:酵素に対しては、用量を一貫性のためにU/mlで表した。他の場合、それは酵素ではない。
【0075】
1-4-2.リポキシゲナーゼにおける阻害試験
リポキシゲナーゼを、特異的基質(不飽和脂肪酸)および試験成分と共にインキュベートした。次いで、放出されるスーパーオキシドアニオンの割合を、発光プローブ(ルミノール)によって評価した。カフェ酸を、参照成分として試験した。
【0076】
結果(阻害%で表す、2回試験の平均):
【表5】

【0077】
実施例1の結果について:
・フリーラジカルの安定化:カスタネア抽出物は、フリーラジカルを安定化する良好な潜在能力を示した(参照物質アスコルビン酸とほぼ同等に高い)。
・ヒドロキシルラジカルの安定化:カスタネア抽出物は、ヒドロキシルラジカルを安定化する良好な潜在能力を示した(参照物質マンニトールおよびo-フェナントロリンよりも高い)。この活性は、EDTAを含まない方が強く、このことは、これらの抽出物が、第一鉄イオンとの安定な錯体を形成する良好な潜在能力を供することを意味する。
・スーパーオキシドアニオンの捕捉:カスタネア抽出物は、キサンチンオキシダーゼおよびリポキシゲナーゼによって生成されるスーパーオキシドアニオンを捕捉する良好な潜在能力を示した。即ち、カスタネア抽出物は、リポキシゲナーゼを阻害する良好な潜在能力を示した(しかし、参照物質カフェ酸よりも低かった)。
【0078】
実施例2:ヒト線維芽細胞におけるUV-A作用の阻害(この実験は、欧州特許出願No.03292802.0に記載されている実験と同様である)
実験の目的:ヒト線維芽細胞の生存割合におけるUV-A放射の陰性効果を減少させる試験成分の潜在能力の測定
実験のプロトコール:
・ヒト線維芽細胞を増殖培地に播種
・37℃、CO=5%(雰囲気:空気中5%二酸化炭素)で3日間インキュベート
・増殖培地を、ある濃度範囲の試験成分を含む培地と交換
・37℃、CO=5%で2日間インキュベート
・成分を含む培地を平衡塩類溶液と交換およびUV-A照射(20J/cm)
・放出されたMDAレベルを、分光蛍光法によって記録[MDA(マロナルジアルデヒド)は、細胞膜由来の脂質の酸化分解生成物である]
【0079】
結果(対照に対する%、3組の2回測定の平均):
【表6】


UV-A照射は、ヒト線維芽細胞においてMDAの強い放出を誘発した。ビタミンEは、UV-A照射した線維芽細胞から放出されるMDAの割合を大きく減少させた。カスタネア抽出物は、UV-A照射した線維芽細胞から放出されるMDAの割合を明らかに低下させた。
【0080】
実施例3:プロテアーゼの阻害(この実験は、欧州特許出願No.03292668.5に記載されている実験と同様である)
3-1.エラスターゼの阻害
エラスターゼは、ストレスを受けたかまたは老化したヒト皮膚線維芽細胞から、あるいは、炎症中に多形核好中性顆粒球から分泌されるプロテアーゼである。このプロテアーゼは、主要な皮膚タンパク質(例えば、プロテオグリカン、エラスチンおよびコラーゲン繊維)の破壊を触媒し、従ってヒト皮膚の本来の老化ならびに光老化を誘発する酵素である[ROBERT L、LABAT ROBERT J:「Vieillissement et tissu conjonctif」、Annee Gerontologique、1992、p.23-37]。これは、皮膚の弾力性の損失、しわの形成、および乾燥皮膚を導く。
【0081】
試験を、コンゴ・レッド(Congo red)でラベルしたエラスチンにおいて、膵臓由来のエラスターゼを用いて行った。インキュベート時間は、室温で30分間であり、放出されたコンゴ・レッドの光学密度を、遠心後に520nmで記録した。結果を、以下の表に対照(=0%)に対する阻害%で示す。
【0082】
試験管中でのエラスターゼ阻害[対照(=0%)に対する阻害%、2回測定の平均]:
【表7】


カスタネア抽出物は、エラスターゼ活性を試験管において阻害し、皮膚老化および皮膚光老化に抗するために使用することができる。
【0083】
実施例4:メラニン合成の阻害(この実験は、欧州特許出願No.03292735.2に記載されている実験と同様である)
実験の目的:メラニン合成を低下させる化合物の潜在能力の評価(化合物を、B16と称されるメラニン細胞の培養物において試験した)
B16メラニン細胞における効果試験のプロトコール:
・メラニン細胞を増殖培地に播種
・37℃、CO=5%(雰囲気:空気中5%二酸化炭素)で3日間インキュベート
・増殖培地を、ある濃度範囲の試験成分を含む培地と交換
・37℃、CO=5%(雰囲気:空気中5%二酸化炭素)で3日間インキュベート
・ブラッドフォード(Bradford)法により細胞タンパク質レベルを記録
・分光測光法(475nmにおけるOD)によりメラニンを記録
【0084】
結果(対照に対する%、3組の2回測定の平均):
【表8】


コウジ酸およびアルブチンは、処理したB16メラニン細胞から放出されるメラニンの割合を大きく減少させた。カスタネア抽出物は、放出されるメラニンの割合を明らかに低下させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)植物カスタネア・サチバの葉抽出物、ならびに
(b)化粧品目的に一般的な助剤および/または添加剤、
を含有する組成物。
【請求項2】
化粧品目的に一般的な助剤および/または添加剤が、油成分、界面活性剤、乳化剤、油脂、ワックス、真珠色化ワックス、増粘剤、濃厚剤、過脂肪剤、安定剤、ポリマー、シリコーン化合物、レシチン、リン脂質、生物起源の活性成分、脱臭剤、抗微生物剤、発汗防止剤、皮膜形成剤、ふけ防止剤、膨潤剤、防虫剤、ヒドロトロープ剤、可溶化剤、防腐剤、芳香油および染料からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中の抽出物の濃度が0.001〜10重量%である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
抽出物が、
(a)植物カスタネア・サチバの葉を、水、アルコールおよびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒で抽出して、溶媒中の抽出物の溶液を得ること、ならびに、
(b)この溶液から溶媒を除去して、抽出物を得ること、
によって得られる請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ヒト身体の化粧処置のための、植物カスタネア・サチバの葉抽出物または請求項1〜4のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項6】
化粧処置が抗老化効果を含む請求項5に記載の使用。
【請求項7】
化粧処置が、UV放射に対するヒト皮膚細胞の保護を含む請求項5に記載の使用。
【請求項8】
化粧処置が、抗炎症効果または抗掻痒効果または鎮静効果または抗フリーラジカル効果または抗プロテアーゼ効果(ただし、この効果は抗マトリクスメタロプロテアーゼ効果ではない)または抗リポキシゲナーゼ効果を含む請求項5に記載の使用。
【請求項9】
化粧処置が増白効果または美白効果を含む請求項5に記載の使用。
【請求項10】
化粧品組成物の製造のため、好ましくは請求項1〜4のいずれかに記載の組成物の製造のための、植物カスタネア・サチバの葉抽出物の使用。

【公表番号】特表2007−522161(P2007−522161A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552511(P2006−552511)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001105
【国際公開番号】WO2005/079741
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(502021660)コグニス・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (21)
【氏名又は名称原語表記】COGNIS FRANCE, S.A.S
【Fターム(参考)】