説明

カスパーゼ活性のアポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質調節を変える薬剤についてのスクリーニングアッセイ

【課題】アポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質による、細胞死プロテアーゼであるカスパーゼファミリーのメンバーの調節の提供。
【解決手段】アポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質のカスパーゼ阻害活性を調整する薬剤を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該カスパーゼおよび該IAP、ならびに該IAPのカスパーゼ阻害活性を調整し得ると推測される薬剤を、インビトロで接触させる工程であって、ここで該IAPは、該カスパーゼ活性を阻害する、工程;および(b)カスパーゼ活性を検出する工程であって、ここでカスパーゼ活性は、該IAPのカスパーゼ阻害活性を調整する薬剤を同定する、工程、
を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
承認
本発明は、国立衛生研究所により授与されたCA 69381、AG 15402、HL 51399、およびAG 14357、ならびに国防総省により授与されたBC 960435による政府支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般的に、分子医学および薬物スクリーニングアッセイに関し、より詳細には、プログラム細胞死の調節に関与する相互作用およびこのような相互作用を変える薬物を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
身体内の正常組織は、最終的に分化した状態に達してもはや分裂しない細胞、または一定期間後に死んで分裂細胞のプールから取り替えられる細胞、のいずれかにより形成される。例えば、神経組織は発生初期に形成され、そして神経系の細胞は、誕生後すぐに最終的に分化した状態に達する。一般的に、神経組織が損傷した場合、神経細胞は分裂し得ず、従って、損傷した神経細胞による機能喪失は修復されない。
【0004】
神経系と比較して、皮膚は重層上皮細胞からなり、ここで上(外)層の細胞は常に抜け落ち、そして下層の細胞は、喪失した細胞を取りかえるように分裂する。従って、皮膚は、定常状態で維持される組織の例であり、ここで喪失した細胞の数は、生成された新細胞の数に等しい。
【0005】
皮膚のようないくつかの組織において、定常状態は、部分的にプログラム細胞死のプロセスにより維持され、プログラム細胞死において細胞は、一定期間後に死ぬように遺伝的に「プログラム」されている。プログラム細胞死にあっている細胞は、アポトーシスに特有の形態学的変化(例えば、そのDNAの断片化およびその核の崩壊を含む)を受ける。
【0006】
アポトーシスは、生物の発生の間に特に顕著であり、ここで一過的機能を実行する細胞は、それらの機能がもはや必要とされなくなった後に死ぬようにプログラムされている。さらに、アポトーシスは、激しい遺伝的変化を受けた細胞において起こり得、従って、生物に、不完全な細胞および潜在的にガンを形成する細胞をそれ自体で取り除く手段を提供する。アポトーシスはまた、種々の外部刺激(例えば、細菌毒素、エタノールおよび紫外線放射を含む)への生物の暴露により誘導され得る。ガンを処置するための化学療法剤もまた、アポトーシスの強力な誘導物質である。
【0007】
生物の一生の間に連続して代謝回転される組織(例えば、皮膚および腸)において、これらの組織を形成する細胞は、生物の一生を通してプログラム細胞死を受ける。通常、このプロセスは厳密に調節され、そして細胞分裂により生成される細胞の数は、プログラム細胞死を受けている細胞の数により平衡を保たせられる。しかし、プログラム細胞死の調節は、非常に多くの経路を含む複雑なプロセスであり、そして時折、プログラム細胞死の調節に欠陥が生じる。このプロセスの重要な役割が、組織における細胞の定常状態数を維持することに、または生物の発生の間に適切な細胞を維持することにあるとすれば、プログラム細胞死における欠陥は、しばしば病的状態と関連する。
【0008】
種々の疾患状態は、生物におけるプログラム細胞死の異常な調節により起こる。例えば、組織の定常状態を維持するために必要とされる正常レベルと比較して、組織において減少したレベルのアポトーシスをもたらす欠陥は、組織における細胞数の増加をもたらし得る。細胞数を増加させるこのような機構は、種々のガンにおいて同定されており、ここで腫瘍形成は、必ずしもガン細胞がそれらの正常な対応物よりも速く分裂するからではなく、細胞がその正常速度で死なないために起こる。細胞死経路に関与すると同定された最初の遺伝子であるbcl-2遺伝子はガン細胞において同定され、そしてこの遺伝子を発現する細胞がアポトーシスを受ける見込みを減少させることにより機能することが示された。
【0009】
細胞がアポトーシスを受けている見込みが減少しているガンと比較して、種々の病理は、正常量のアポトーシスより高い量のアポトーシスを受けている細胞を含む組織と関連する。例えば、増大したレベルのアポトーシスは、種々の神経病理(パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、および後天性免疫不全疾患(AIDS)に関連する脳障害を含む)において観察される。神経細胞は、一般的に成体において分裂しないので、従って、瀕死の細胞を取り替えるために新たな細胞が利用できず、このような疾患において生じる神経細胞死は、この疾患を罹患している患者が徐々に悪化する状態をもたらす。
【0010】
プログラム細胞死経路に関与する非常に多くの遺伝子は同定されており、そしてこれらの遺伝子のうち多くの産物についての役割が記載されている。結果として、アポトーシスを導く細胞経路が定義されている。プログラム細胞死経路の図は、この経路にそったアポトーシスシグナルの転移を操作するために使用され得る治療薬剤の開発のための標的を提供する。例えば、このような薬剤は、細胞死経路における欠陥の1段階下流に指向され得、従って、この欠陥を迂回し、そして欠陥を有する細胞集団が正常レベルのアポトーシスを受けるのを可能にする。不運にも、細胞死経路における重要な段階は同定されなければならないままである。従って、プログラム細胞死経路に関与する因子を同定する必要性が存在する。本発明はこの必要性を満たし、そしてさらなる利点を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって、以下が提供される:
(1)アポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質のカスパーゼ阻害活性を調整する薬剤を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該カスパーゼおよび該IAP、ならびに該IAPのカスパーゼ阻害活性を調整し得ると推測される薬剤を、インビトロで接触させる工程であって、ここで該IAPは、該カスパーゼ活性を阻害する、工程;および
(b)カスパーゼ活性を検出する工程であって、ここでカスパーゼ活性は、該IAPのカスパーゼ阻害活性を調整する薬剤を同定する、工程、
を包含する、方法。
(2)前記IAPが真核生物IAPである、項目1に記載の方法。
(3)前記真核生物IAPがX染色体連鎖IAPである、項目2に記載の方法。
(4)前記真核生物IAPが、c-IAP-1およびc-IAP-2からなる群より選択される、項目2に記載の方法。
(5)前記カスパーゼが、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、およびカスパーゼ-9からなる群より選択される、項目1に記載の方法。
(6)前記IAPの非存在下でカスパーゼ活性を許容する前記条件が、シトクロムcを含むサイトゾル抽出物中での前記カスパーゼのインキュベーションである、項目1に記載の方法。
(7)前記IAPの非存在下でカスパーゼ活性を許容する前記条件が、カスパーゼ-8を含むサイトゾル抽出物中での前記カスパーゼのインキュベーションである、項目1に記載の方法。
(8)カスパーゼ活性が基質のタンパク質分解により検出される、項目1に記載の方法。
(9)カスパーゼ活性が抗体を用いて検出される、項目1に記載の方法。
(10)アポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質によるプロカスパーゼの活性化を調整する薬剤を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該プロカスパーゼおよび該IAP、ならびに該IAPのカスパーゼ阻害活性を調整し得ると推測される薬剤を、該IAPの非存在下で該プロカスパーゼの活性化を許容する条件下で、インビトロで接触させる工程であって、ここで該IAPは、該プロカスパーゼの活性化を阻害する、工程;および
(b)カスパーゼ活性を検出する工程であって、ここでカスパーゼ活性は、該IAPによる該プロカスパーゼの活性化の調節を調整する薬剤を同定する、工程、
を包含する、方法。
(11)前記IAPが真核生物IAPである、項目10に記載の方法。
(12)前記真核生物IAPがX染色体連鎖IAPである、項目11に記載の方法。
(13)前記真核生物IAPが、c-IAP-1およびc-IAP-2からなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(14)前記プロカスパーゼが、プロカスパーゼ-3、プロカスパーゼ-7、およびプロカスパーゼ-9からなる群より選択される、項目10に記載の方法。
(15)前記IAPの非存在下で前記プロカスパーゼの活性化を許容する前記条件が、シトクロムcを含むサイトゾル抽出物中での該プロカスパーゼのインキュベーションである、項目10に記載の方法。
(16)前記IAPの非存在下で前記プロカスパーゼの活性化を許容する前記条件が、カスパーゼ-8を含むサイトゾル抽出物中での該プロカスパーゼのインキュベーションである、項目10に記載の方法。
(17)前記カスパーゼ活性が基質のタンパク質分解により検出される、項目10に記載の方法。
(18)前記カスパーゼ活性が抗体を用いて検出される、項目10に記載の方法。
(19)カスパーゼとアポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質との特異的会合を変える薬剤を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該カスパーゼおよび該IAPを、該カスパーゼと該IAPとの会合を変え得ると推測される薬剤と、該カスパーゼと該IAPとが特異的に会合し得る条件下、および該IAPの非存在下でカスパーゼ活性を許容する条件下で接触させる工程;ならびに
(b)該カスパーゼと該IAPとの会合の変化を検出し、それにより該カスパーゼと該IAPとの会合を変える薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(20)前記接触させる工程がインビトロで行われる、項目19に記載の方法。
(21)前記接触させる工程が細胞内で起こる、項目19に記載の方法。
(22)前記IAPが真核生物IAPである、項目19に記載の方法。
(23)前記真核生物IAPがX染色体連鎖IAPである、項目22に記載の方法。
(24)前記真核生物IAPが、c-IAP-1およびc-IAP-2からなる群より選択される、項目22に記載の方法。
(25)前記カスパーゼが、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、およびカスパーゼ-9からなる群より選択される、項目19に記載の方法。
(26)プロカスパーゼとアポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質との特異的会合を変える薬剤を同定する方法であって、該方法は、以下の工程:
(a)該プロカスパーゼおよび該IAPを、該プロカスパーゼと該IAPとの該会合を変え得ると推測される薬剤と、該プロカスパーゼおよび該IAPが特異的に会合し得る条件下で接触させる工程;ならびに
(b)該プロカスパーゼと該IAPとの会合の変化を検出し、それにより該プロカスパーゼと該IAPとの会合を変える薬剤を同定する工程、
を包含する、方法。
(27)前記接触させる工程がインビトロで行われる、項目26に記載の方法。
(28)前記接触させる工程が細胞内で起こる、項目26に記載の方法。
(29)前記IAPが真核生物IAPである、項目26に記載の方法。
(30)前記真核生物IAPがX染色体連鎖IAPである、項目29に記載の方法。
(31)前記真核生物IAPが、c-IAP-1およびc-IAP-2からなる群より選択される、項目29に記載の方法。
(32)前記プロカスパーゼがプロカスパーゼ-9である、項目26に記載の方法。
(33)細胞集団のアポトーシスのレベルを変えることにより、個体における病的状態の重篤度を低減する方法であって、IAPのカスパーゼ阻害活性を変える薬剤を該個体に投与する工程を包含する、方法。
(34)前記病的状態が病的に上昇したレベルのアポトーシスにより特徴付けられ、そして前記薬剤がIAPのカスパーゼ阻害活性を増大させる、項目33に記載の方法。
(35)前記病的状態が神経変性疾患である、項目34に記載の方法。
(36)前記病的状態の重篤度が、前記細胞集団のアポトーシスのレベルを増大させることにより低減され、そして前記薬剤がIAPのカスパーゼ阻害活性を減少させる、項目33に記載の方法。
(37)前記病的状態がガンである、項目36に記載の方法。
(38)前記病的状態が、乾癬、自己免疫疾患、および再狭窄からなる群より選択される、項目36に記載の方法。
(39)細胞集団がエクスビボで生存する能力を調整する方法であって、該細胞を、該細胞におけるIAPのカスパーゼ阻害活性を変える薬剤と接触させる工程を包含する、方法。
【0012】
(発明の要旨)
本発明は、アポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質による、細胞死プロテアーゼであるカスパーゼファミリーのメンバーの調節に関する。例えば、本発明は、X染色体連鎖アポトーシスインヒビター(XIAP)による、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、またはカスパーゼ-9の活性の阻害、およびIAPによるプロカスパーゼ活性化の調節に関する。本明細書中に開示されるように、IAP(例えば、XIAP)またはヒトIAPファミリーのプロテアーゼ(例えば、c-IAP-1もしくはc-IAP-2)は、カスパーゼの活性を阻害し得、そしてプロカスパーゼ前駆体ポリペプチドのタンパク質分解プロセシングを妨げ、従って、活性なカスパーゼの形成を妨げ得る。さらに、IAPは、活性なカスパーゼに結合し得る。
【0013】
本発明は、さらに、IAPのカスパーゼ阻害活性を調整する、従って、カスパーゼの活性を調整するか、またはIAPタンパク質によるプロカスパーゼ活性化を調節する薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。さらに、本発明は、カスパーゼとIAPタンパク質との特異的会合を変える薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。例えば、本発明は、IAPタンパク質(例えば、XIAP)とカスパーゼ(例えば、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、またはカスパーゼ-9)との相互作用を変える薬剤を同定するためのインビトロスクリーニングアッセイを提供する。本発明はまた、プロカスパーゼとIAPタンパク質との特異的会合を変える薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。例えば、IAPタンパク質(例えば、XIAP)とプロカスパーゼ(例えば、プロカスパーゼ-9)との相互作用を変える薬剤を同定するためのインビトロスクリーニングアッセイが提供される。本発明は、さらに、IAPのカスパーゼ阻害活性を変え、従って、カスパーゼの活性またはプロカスパーゼの活性化を調節する薬剤を同定するための無細胞アポトーシス系に基づくスクリーニングアッセイを提供する。
【0014】
本発明は、さらに、IAPのカスパーゼ阻害活性を変え、従って、細胞集団のアポトーシスレベルを変える薬剤を個体に投与することにより、個体における病的状態の重篤度を低減する方法を提供する。例えば、本発明は、神経変性疾患のような病的状態(これは、病的に上昇したレベルのアポトーシスにより特徴付けられる)の重篤度を低減するための方法を提供する。さらに、本発明は、ガンのような病的状態(これは、細胞集団の病的拡大により特徴付けられる)の重篤度を低減するための方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、アポトーシスインヒビター(IAP)タンパク質による、細胞死プロテアーゼのカスパーゼファミリーのメンバーの調節に関する。例えば、本発明は、IAPのカスパーゼ阻害活性、ならびに真核生物IAP(eIAP)タンパク質(例えば、X染色体連鎖アポトーシスインヒビター(XIAP;Genbank登録番号U32974、これは本明細書中に参考として援用される);細胞IAPタンパク質(c-IAP-1/HIAP-2/hMIHBおよびc-IAP-2/HIAP-1/hMIHC;Listonら、Nature 379:349-353(1996);Rotheら、Cell 83:1243-1252(1995)、これらの各々は本明細書中に参考として援用される);ニューロンアポトーシス阻害タンパク質(NAIP;Royら、Cell 80:167-178(1995)、これは本明細書中に参考として援用される);およびスルビビン(survivin)(Ambrosiniら、Nature Med.3:917-921(1997)、これは本明細書中に参考として援用される))による、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、またはカスパーゼ-9)活性の阻害に関する。
【0016】
カスパーゼは、ポリペプチドのアスパラギン酸残基のC末端側で切断するシステインプロテアーゼのファミリーであり、そしてアポトーシスを導く細胞死経路に関与する(MartinおよびGreen、Cell 82:349-352(1995)を参照のこと)。カスパーゼは、このファミリーの最初に同定されたメンバーであるインターロイキン-1β(IL-1β)変換酵素(Ice)(これは、IL-1βの不活性33キロダルトン(kDa)形態を活性17.5kDa形態に変換する)とのそれらの相同性に基づいて「Ice」プロテアーゼと以前に呼ばれた。Iceプロテアーゼは、C.elegans発生の間のアポトーシスに関与するCaenorhabditis elegans ced-3遺伝子と相同であることが見出され、そしてトランスフェクション実験は、線維芽細胞におけるIce発現がその細胞においてアポトーシスを誘導したことを示した(MartinおよびGreen、前出、1995を参照のこと)。
【0017】
Iceおよびced-3と相同性を共有するさらなるポリペプチドは同定されており、そしてカスパーゼと呼ばれ、各々のカスパーゼは数字により区別される。例えば、最初に同定されたIceプロテアーゼは、現在カスパーゼ-1と呼ばれ、以前にCPP32、YAMA、およびアポパインとさまざまに知られていたプロテアーゼはカスパーゼ-3と呼ばれ、そして以前にMch6またはICE-LAP6と知られていたプロテアーゼは現在カスパーゼ-9と呼ばれる。プロテアーゼのカスパーゼファミリーは、各々がアスパラギン酸残基のC末端側で切断するシステインプロテアーゼであり、そして各々が、保存された活性部位システインを有し、一般的にアミノ酸配列QACXG(配列番号1)(ここでXは任意のアミノ酸であり得、しばしばアルギニンである)を含む点で特徴付けられる。カスパーゼは、DEVD(配列番号2)切断活性を有するカスパーゼ(カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7を含む)、ならびにYVAD(配列番号3)切断活性を有するカスパーゼ(カスパーゼ-1を含む)にさらに再分類される(MartinおよびGreen、前出、1995)。
【0018】
アポトーシスにおけるカスパーゼの役割は、種々の細胞型における同定されたカスパーゼ各々の過剰発現が細胞のアポトーシスをもたらすことを示すことにより実証されている。さらに、CrmA(これは牛痘ウイルスにより発現される)の細胞における発現は、カスパーゼ-1活性を阻害することにより、アポトーシスの種々の誘導物質に応答した細胞死を受けることから細胞を守ることが示された。CrmAはまたカスパーゼ-3と結合し、そしてカスパーゼ-3によるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)のタンパク質分解を阻害することが示されたが、カスパーゼ-3を結合する能力を欠くCrmA点変異体は、タンパク質分解を阻害しなかった。PARPならびに他の細胞タンパク質(ラミンB、トポイソメラーゼI、およびβ-アクチンを含む)は、細胞のアポトーシス間に分解される(MartinおよびGreen、前出、1995を参照のこと)。
【0019】
種々のカスパーゼ遺伝子のノックアウト研究は、カスパーゼの効果が細胞型特異的であり得ることを示すが、1つを超えるカスパーゼが特定の細胞型において発現され得、それにより重複的なレベルを提供する。例えば、Ice遺伝子をノックアウトされたマウスは正常に発生し、これは、Ice活性が発生に重要でないことを示す。このようなマウスに由来する胸腺細胞は、デキサメタゾンまたは電離放射線により誘導されるアポトーシスに感受性であるが;この胸腺細胞は、Fas誘導細胞死に耐性である(Kuidaら、Science 267:2000-2003(1995))。比較して、カスパーゼ-3遺伝子をノックアウトされたマウスは、胸腺細胞において正常なアポトーシスを示すが、脳細胞におけるアポトーシスは異常である。しかし、カスパーゼ-3ノックアウトマウスは、期待されるよりも低頻度で生まれ、それらの正常な同腹子より小さく、そして1〜3週間で死んだ(Kuidaら、Nature 384:368-372(1996))。
【0020】
アポトーシスにおけるカスパーゼプロテアーゼの関与は、部分的に、細胞のアポトーシスに関連する特徴的な変化を説明し得る。例えば、ラミンB(これは、クロマチンの核包膜への接着に関与する)のカスパーゼ誘導タンパク質分解は、アポトーシスに関連するクロマチンの崩壊の原因であり得る(MartinおよびGreen、前出、1995)。DNA断片化因子45kDaサブユニット(DFF-45)のカスパーゼ誘導タンパク質分解は、ゲノムDNAのヌクレオソームフラグメントへの断片化を導く経路を活性化する(Liuら、Cell89:175-184(1997))。さらに、カスパーゼ誘導性のPARPのタンパク質分解は、PARPがDNA損傷を修復する能力を妨げ得、さらにアポトーシスと関連する形態学的変化に寄与する。さらに、大部分の細胞型におけるラミンBおよびPARPのようなタンパク質の一般的な発現は、種々の細胞型について観察されたアポトーシスの類似する出現を説明し得る。他のカスパーゼ標的タンパク質は、ステロール調節エレメント結合タンパク質;網膜芽細胞腫(RB)タンパク質;DNA依存性キナーゼ;U170-Kキナーゼ;およびDNA複製複合体のラージサブユニットを含む(Wangら、EMBO J.15:1012-1020(1996);Takahashiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8395-8400(1996);Casciola-Rosenら、J.Exp.Med.183:1957-1964(1996);ならびにUbedaおよびHabener,J.Biol.Chem.272:19562-19568(1997))。
【0021】
カスパーゼは、カスパーゼ活性を欠く前駆体ポリペプチド(「プロカスパーゼ」)として細胞に存在し;カスパーゼ活性化は、プロカスパーゼのタンパク質分解プロセシングにより生じる。例えば、カスパーゼ-3は、32kDaのポリペプチド前駆体であるプロカスパーゼ-3のタンパク質分解により形成される、約17〜20kDaおよび11Daのポリペプチドからなるヘテロ4量体である。プロカスパーゼ-3切断は、2つの段階で進行する。第1の切断は、プロドメインをなお含む部分的にプロセシングされたラージサブユニット(22〜24kDa)およびより小さな完全にプロセシングされた約11kDaサブユニットの生成をもたらす。第2の段階において、プロドメインは、恐らく自己触媒プロセスにより、部分的にプロセシングされたラージサブユニットから切断されて、活性カスパーゼ酵素の17〜20kDaの成熟し完全にプロセシングされたラージサブユニットを生成する。しかし、部分的にプロセシングされたカスパーゼもまたカスパーゼ活性を有するので、プロドメインの除去は、プロテアーゼ活性化に必要ではない。
【0022】
哺乳動物細胞において、カスパーゼの活性化は少なくとも2つの独立した機構により達成され、この機構は、別個のカスパーゼにより開始されるが、共通の「実行者」カスパーゼの活性化をもたらす。Fasレセプターへのリガンド結合により開始されるアポトーシスは、1つの十分に記載された細胞死経路である。この経路において、リガンドのFasへの結合は、Fasの細胞内ドメインが細胞内MORT1(FADD)タンパク質に結合するのを可能にし、これは、次に、カスパーゼ-8(MACH;FLICE;Mch5;Boldinら、Cell 85:803-815(1996);Muzioら、Cell 85:817-827(1996)を参照のこと)に結合する。これらの結果は、カスパーゼ-8を、Fas細胞死経路に関与する最も上流のカスパーゼと規定する。さらに、カスパーゼ-3がFas細胞死経路において活性化され、これは、上流プロテアーゼ(例えば、カスパーゼ-8)またはカスパーゼ-8により活性化されるプロテアーゼがカスパーゼ-3活性化に関与することを示唆する。
【0023】
カスパーゼ活性化はまたシトクロムcを含み得、シトクロムcは哺乳動物細胞において、しばしば、アポトーシスの間にミトコンドリアからサイトゾルに放出される(Liuら、Cell 86:147-157(1996);Kharbandaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:6939-6942(1997);Kluckら、Science 275:1132-1136(1997);およびYangら、Science 275:1129-1132(1997)、これらの各々は本明細書中に参考として援用される)。サイトゾルに入る際に、シトクロムcは、プロカスパーゼ-3のタンパク質分解性の活性化をもたらすタンパク質複合体のATPまたはdATP依存性の形成および核のアポトーシス破壊を誘導する(Liuら、前出、1996)。この複合体のメンバーの中に、CED-4ホモログApaf-1およびカスパーゼ-9(Apaf-3;Liuら、前出、1996;Liら、Cell 91:479-489(1997);Zouら、Cell 90:405-413(1997))がある。XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2は、ミトコンドリアからのシトクロムcの放出を引き起こすことが知られている刺激により誘導されるアポトーシスを抑制し、そしてインビトロでシトクロムcにより誘導されるカスパーゼ活性化を阻害し得る。今までのところ、XIAPおよび他のIAPファミリータンパク質がシトクロムc誘導性アポトーシスをブロックする機構は、まだ知られていない。
【0024】
本明細書中に開示されるように、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2は、異なるカスパーゼを阻害することにより、カスパーゼ活性化の2つの別個の経路をブロックする。カスパーゼ-8誘導性プロテアーゼ活性化は、p24およびp12サブユニットへのその最初の切断後に活性カスパーゼ-3を阻害することにより、カスパーゼ-3のレベルでXIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2により抑制された(実施例Vを参照のこと)。上記のようにp24サブユニットは、カスパーゼ-3の部分的にプロセシングされた形態であり、これは、プロカスパーゼ-3の最初の切断から生じるが、そのN末端プロドメインの除去によるさらなるプロセシングはされなかった。さらに、外因性の活性カスパーゼ-8の添加により活性化され、そしてGST-XIAPとインキュベートされた無細胞系において、グルタチオン-Sepharoseは、GST-XIAPをともなうカスパーゼ-3ラージサブユニットのp24形態を解体する(実施例V;図2A)。カスパーゼ-8の公知のアクチベーターであるFas(CD95)を過剰発現する細胞において、XIAPは、部分的にプロセシングされたカスパーゼ-3のp24形態と複合体化し、そしてFas媒介性アポトーシスを阻害した(実施例V;図2B)。要約すると、これらの結果は、XIAPが、カスパーゼ-3レベルでカスパーゼ-8アポトーシス経路を阻害し、これは、カスパーゼ-8がカスパーゼ-3プロセシングを誘導するのを可能にするが、部分的にプロセシングされたカスパーゼ-3酵素に直接結合し、そしてそれを阻害することにより、その後の自己触媒成熟を妨げることを示す。
【0025】
別個の機構を介して、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2はまた、シトクロムcにより誘導されるアポトーシス経路を阻害する。カスパーゼ-8処理抽出物において見られた結果とは対照的に、プロカスパーゼ-3を、ラージサブユニットおよびスモールサブユニットにプロセシングする場合、シトクロムc処理抽出物へのXIAPの添加は、プロカスパーゼ-3の、ならびにまたプロカスパーゼ-6およびプロカスパーゼ-7のプロセシングを阻害した(実施例V;図2A)。さらに、グルタチオン-Sepharoseを用いるシトクロムc処理抽出物からのGST-XIAPタンパク質の単離は、会合したカスパーゼ-3分子を全く示さなかった。これらの結果は、XIAPが、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、およびカスパーゼ-7の上流のシトクロムc経路を阻害することを示す。なぜなら、これらのカスパーゼのプロセシングが、XIAPの存在下でほとんどまたは全く起きなかったからである。
【0026】
本明細書中にさらに開示される場合、50kDaタンパク質は、グルタチオン-Sepharoseを用いたこのサイズのタンパク質の回収により示されるように、GST-XIAPと特異的に会合する(実施例VI;図3A)。カスパーゼ-9は、約50kDaの分子量を有することが公知である。実施例VIに開示されるように、GST-XIAP、GST-c-IAP-1、およびGST-c-IAP-2は、インビトロで翻訳されたプロカスパーゼ-9と会合するが、GSTコントロールタンパク質は会合しない(図3B);これらのIAPファミリーのタンパク質はまた、プロカスパーゼ-9にインビボで結合する(実施例X;図8D)。さらに、c-IAP-1およびc-IAP-2は、サイトゾル抽出物、ならびにシトクロムcおよびdATP、Apaf-1およびプロカスパーゼ-9を含有するインビトロ再構築系中のシトクロムcにより誘導されるプロカスパーゼ-9のタンパク質分解性プロセシングを阻害する(実施例VIIおよびVIII;図4および5)。サイトゾル抽出物中では、XIAPは、プロカスパーゼ-9のシトクロムc媒介プロセシングの、Ac-DEVD-FmkまたはzVAD-fmk(2つの十分に特徴付けられたカスパーゼインヒビター)のいずれよりも強力なインヒビターであった(実施例IX;図6)。これらの結果は、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2が、カスパーゼ-9のチモーゲンと会合し得、そしてそのプロセシングをブロックし得ることを示す。本明細書中上記のデータと結びつけると、これらの結果は、シトクロムc誘導性活性化のIAP媒介阻害が、カスパーゼ-3の上流で、少なくとも部分的にはプロカスパーゼ-9プロセシングの直接阻害を介して生じることを示す。
【0027】
本明細書中にさらに開示される場合、XIAP、cIAP-1、およびcIAP-2は、活性なカスパーゼ-9を直接阻害する。1つのアッセイでは、組換えプロカスパーゼ-3を用いてカスパーゼ-9の活性をモニターした。精製された組換えプロカスパーゼ-3との活性な組換えカスパーゼ-9のインキュベーションは、イムノブロット分析により決定されるようにプロカスパーゼ-3のタンパク質分解性プロセシングをもたらし、一方、カスパーゼ-9に対する等モル濃度のXIAPの添加は、プロカスパーゼ-3の切断を強力に阻害した(実施例IX;図7A)。これらの結果は、DEVD-AFC基質からのAFC発蛍光団の遊離を介してカスパーゼ-9活性を測定することにより確証された:この結果は、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2が各々、プロカスパーゼ-3活性化およびテトラペプチド基質の切断を効率的に阻害し、一方、種々のGSTコントロールタンパク質は有意な効果を有さないことを実証する(図7Bを参照のこと)。
【0028】
インビトロでのプロカスパーゼ-9活性化に対するXIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2の阻害効果を考慮して、これらのIAPファミリーのタンパク質は、インタクトな細胞においてカスパーゼ-9誘導性アポトーシスを防ぐ能力、およびプロカスパーゼ-3のプロセシングのような下流の事象を阻害する能力についてアッセイされた。293T細胞は、エピトープタグ化FLAG-カスパーゼ-9単独で、またはmycタグ化IAPファミリータンパク質との組合せでトランスフェクトされた。プロカスパーゼ-3およびAC-DEVD-AFC切断活性のカスパーゼ-9誘導性タンパク質分解性切断は、FLAG-カスパーゼ-9およびXIAP、c-IAP-1またはc-IAP-2で同時トランスフェクトした293T細胞において、FLAG-カスパーゼ-9単独でトランスフェクトした293T細胞と比較した場合に著しく減少した(実施例X;図8B)。XIAP、c-IAP-1、またはc-IAP-2によるプロカスパーゼ-3プロセシングの観察された阻害は、アポトーシス性の293T細胞数の減少を伴った(実施例X;図8C)。従って、IAPファミリーのタンパク質は、活性なカスパーゼ-9をインビトロおよびインビボにおいて阻害し、そして活性なカスパーゼ-9の阻害は、IAPファミリーのタンパク質がシトクロムc誘導性アポトーシスを阻害する機構であり得る。
【0029】
上記のように、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2は、活性なカスパーゼ-3へのプロカスパーゼ-3前駆体ポリペプチドのタンパク質分解性プロセシングを阻止し、そしてラージサブユニットおよびプロドメインを含む22〜24kDaのカスパーゼ-3の中間体タンパク質分解性産物の蓄積をもたらす。これらのIAPタンパク質はまた、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7、ならびに22〜24kDaのカスパーゼ-3ラージサブユニットおよびプロドメインに結合するが、プロセシングされていないプロカスパーゼ-3前駆体ポリペプチドにもプロカスパーゼ-7前駆体ポリペプチドにも結合しない(実施例II)。これらのIAPタンパク質は、部分的にプロセシングされたプロテアーゼに結合し、そしてカスパーゼ-3によるプロドメインの自己触媒性除去を防止することによりカスパーゼ-3プロセシングの完了を防止する。さらに、XIAPは、無細胞アポトーシス系におけるアポトーシス様の核破壊を防止し(実施例I.B.1)、そしてトランスフェクトされた哺乳動物細胞のBax誘導性アポトーシスを、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-3関連プロテアーゼの阻害の両方に関連して防止する(実施例III)。従って、本発明は、IAPタンパク質が、カスパーゼに直接結合し、そしてそれらの活性を阻害することによりアポトーシスを調整し得るという発見、ならびに上記のように、IAPタンパク質がまたプロカスパーゼ-9のようなプロカスパーゼに結合し、そしてこれを阻害することによりアポトーシスを調整し得るという発見に基づく。
【0030】
IAPタンパク質は、当初、バキュロウイルス細胞において、ウイルスに感染した昆虫細胞のアポトーシスを阻害するタンパク質として同定された(Crookら,J.Virol. 67:2168-2174 (1993); Birnbaumら, J. Virol. 68:2521-2528 (1994)(これらの各々は、本明細書中に参考として援用される))。ウイルスIAPポリペプチドの実験は、バキュロウイルスIAP反復(「BIR」)と称される2つの反復システイン-ヒスチジン含有領域を、ポリペプチドのN末端および中央部分に、そしてRINGフィンガードメインをC末端部分に含む保存された配列を示した(Birnbaumら、前出、1993)。哺乳動物細胞におけるバキュロウイルスIAPタンパク質の発現はまた、外因性Iceプロテアーゼ(カスパーゼ-1)の遺伝子移入媒介過剰発現に起因する細胞のアポトーシスを防止し、このことは、IAPが進化的に保存されていることを示す(本明細書中に参考として援用される、Duckettら,EMBO J. 15:2685-2694 (1996))。バキュロウイルスIAPタンパク質のホモログは、続いて、ヒトおよびDrosophilaにおいて同定された(本明細書中に参考として援用される、Hayら,Cell 83:1253-1262 (1995);Rotheら、前出、1995;Duckettら、前出、1996;Royら、前出、1995;Listonら、前出、1996;Urenら、Proc.Natl. Acad. Sci., USA 93:4974-4978 (1996);Ambrosiniら、前出、1997もまた参照のこと)。しかし、本開示の前には、IAPタンパク質がアポトーシスを調整する手段は公知でなかった。
【0031】
本明細書中に開示される場合、IAPタンパク質は、カスパーゼ阻害活性を有する。特に、eIAPタンパク質(例えば、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2)は、プロカスパーゼの活性化を阻害し、そしてカスパーゼ活性を阻害することによりアポトーシスを減少または防止させる。本明細書中で使用される場合、「カスパーゼ活性化のインヒビター」もしくは「カスパーゼ活性のインヒビター」のような、または「カスパーゼ阻害活性」を有する、のようなIAPタンパク質についての参照は、IAPの存在下またはIAPに結合した場合のカスパーゼのタンパク質分解活性が、IAPの非存在下またはIAP結合の非存在下より少ないことを意味する。IAPのこのカスパーゼ阻害活性は、以下に起因し得る:a)下流カスパーゼのタンパク質分解性活性化に必要とされる上流カスパーゼの阻害;b)IAPによるカスパーゼプロセシングの完了の阻害;またはc)カスパーゼタンパク質分解性活性に対するIAPの直接阻害効果。
【0032】
上記の3つ全ての場合において、例えば、IAPの非存在下での活性と比較して、IAPの存在下でのカスパーゼによる特異的基質の加水分解が低レベルであることにより、IAPのカスパーゼ阻害活性は同定可能である。例えば、無細胞抽出物(これは、添加を行なわなければ、ペプチド基質のカスパーゼ-3媒介タンパク質分解を示す)へのXIAP、c-IAP-1、またはc-IAP-2の添加は、ペプチドのタンパク質分解の量を実質的に減少させる(実施例I.B.3およびIVを参照のこと)。さらに、細胞における組換えXIAPの発現は、そうでなければカスパーゼ活性化に起因してアポトーシスを受ける細胞のアポトーシスを防止した(実施例IIIおよびVを参照のこと)。カスパーゼに対するIAPの結合(例えば、カスパーゼ-3もしくはカスパーゼ-7に対するXIAP、c-IAP-1、もしくはc-IAP-2の結合)またはプロカスパーゼに対するIAPの結合(例えば、プロカスパーゼ-9に対するXIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2)の特異性、ならびにアポトーシスにおけるカスパーゼ活性化の役割を考慮すると、カスパーゼ活性が、例えば、特異的基質のタンパク質分解(加水分解)を調べることによって直接、または例えば、アポトーシスに特有な細胞もしくは細胞核における形態学的変化(これは、IAPが阻害するカスパーゼに依存する)を同定することによって、または活性なカスパーゼに結合するが不活性なカスパーゼには結合しない抗体、もしくは基質のタンパク質分解産物に結合する抗体を用いて間接的に、同定され得ることが認識されるべきである。
【0033】
少なくとも10個のカスパーゼが哺乳動物細胞において同定されており、そしてこれらのカスパーゼのホモログは、他の真核生物において発現される。さらに、ウイルスおよび真核生物のIAPを含む、多数のIAPタンパク質が公知である。しかし、アポトーシスは、カスパーゼの関与を一様に必要とするようである(Weilら,J. Cell Biol. 133:1053-1059 (1996))が、必要とされる特定のカスパーゼは、細胞型および細胞死を誘発するために用いられる刺激に依存して変化する(Kuidaら、前出、1995、1996)。従って、IAPファミリーの各々のメンバーがアポトーシスを阻害する能力は、細胞および関与する刺激、従って活性化される特定のカスパーゼに依存して変化し得る。
【0034】
本明細書中に開示される場合、例えば、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2のカスパーゼ阻害活性は、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7に特異的であり、一方、XIAPはカスパーゼ-1、カスパーゼ-6、またはカスパーゼ-8の活性化に対する直接阻害効果をほとんどまたは全く有さなかった。さらに、IAPタンパク質に起因する阻害効果は、XIAPのアミノ酸1位〜336位、c-IAP-1の1位〜350位、およびc-IAP-2の1位〜335位の範囲内に存在する3つのBIRドメインに局在する。従って、例えば、インビトロアッセイへのグルタチオンS-トランスフェラーゼ-BIR(GST-BIR)融合タンパク質の添加は、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7のペプチド加水分解(実施例IIおよびIV)をインビトロで阻害し、そして細胞におけるBIR構築物の発現はBax誘導性細胞死を防止した(実施例III)。
【0035】
本明細書中に開示される結果は、IAPタンパク質がカスパーゼに結合する能力が、IAPがそのカスパーゼのタンパク質分解活性を阻害する能力、それゆえ、アポトーシスを阻害する能力に相関することを示す。本開示を考慮すると、IAPタンパク質によるカスパーゼ活性化の調節がおそらく一般的な現象であることが認識される。従って、本発明は、IAPタンパク質が、細胞におけるカスパーゼ活性化を調節し、それゆえ、アポトーシスを調節するのに関与するという、より広い開示を提供し、そしてさらにどのIAPタンパク質がどのカスパーゼを調節するかを同定する方法を提供する。例えば、本明細書中に開示される場合、ヒトXIAPタンパク質およびIAPファミリーのタンパク質であるc-IAP-1およびc-IAP-2は、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性を阻害する(実施例IV)。さらに、ヒトXIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2のタンパク質はまた、カスパーゼ-9活性を阻害する(実施例IXおよびX)。
【0036】
上流のプロテアーゼであるカスパーゼ-9を阻害することによりXIAPがカスパーゼ-3、カスパーゼ-6、およびカスパーゼ-7の活性化を調節すること、ならびにXIAPが、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7ならびにカスパーゼ-9に直接結合し、そしてその活性を阻害することを決定するための開示された方法を用いて、他のカスパーゼの活性化を調節する特定のIAPタンパク質が同定され得る。実施例VIは、GST-XIAPおよび代謝的に標識された抽出物を用いてシトクロムc経路においてXIAPにより阻害される上流のプロテアーゼとしてのカスパーゼ-9の同定を開示する。無細胞アッセイは、特異的基質の加水分解における変化を同定することにより、種々の公知のIAPタンパク質が種々の公知のカスパーゼの活性を調節する能力を調べるために特に有用であり得る(実施例I.B.3および実施例V)。無細胞系は、細胞、特に哺乳動物細胞または他の真核生物細胞から得られたサイトゾル抽出物を利用する。サイトゾル抽出物へのシトクロムcおよびdATPの添加により、アポトーシスプログラム(タンパク質分解性プロセシングおよび特定のカスパーゼの活性化を含む)ならびに外部から添加された核のアポトーシス様破壊が開始される(Liuら、前出、1996)。この無細胞系は、インビボで通常観察されるアポトーシスの特徴を模倣し、ここで、ミトコンドリアからサイトゾルへのシトクロムcの遊離は、アポトーシスの開始に関連する(Kluckら、前出、1997;Liuら、前出、1996)。さらに、カスパーゼ-8のような「上流」のカスパーゼは、組換えにより活性な形態で生成され得、そしてサイトゾル抽出物に添加されてアポトーシスプログラムを開始し得る(実施例I.B.3および実施例Vを参照のこと)。
【0037】
無細胞アポトーシス系を用いて、アポトーシスプロセスに対するXIAPの効果を調べた。精製した核は、コントロールのサイトゾル中でインキュベートした場合、ほとんどインタクトなままであり、一方、サイトゾルへのシトクロムcおよびdATPの添加は、ほぼ全ての核のアポトーシス様破壊を生じた(実施例I.B.2)。シトクロムcおよびdATPと同時のXIAPの添加は、核破壊を実質的に阻害し、一方、等価な量の添加されたBcl-2タンパク質は保護効果を有さなかった。
【0038】
核のアポトーシスを阻害することに加えて、XIAP、ならびにc-IAP-1およびc-IAP-2はまた、無細胞アポトーシス系におけるカスパーゼ活性化を阻害し、一方、多数のコントロールタンパク質は、ほとんどまたは全く効果を有さなかった。同様の結果が、293腎臓細胞またはJurkatT細胞から調製したサイトゾルを用いて得られた。このことは、これらの結果が、一般的な効果を代表することを示す。さらに、XIAPを発現するpcDNA3-XIAPまたはpcDNA3コントロールプラスミドのいずれかでトランスフェクションした2日後に293T細胞から調製したサイトゾル抽出物では、カスパーゼ特異的基質加水分解は、XIAP発現細胞から調製した抽出物において、コントロールの抽出物と比較して、50%よりも多く減少した。従って、外部から添加されたXIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2、ならびに内部で生成されたXIAPは各々、シトクロムc誘導性カスパーゼ活性化を無細胞アポトーシス系において阻害する。シトクロムc添加前の無細胞アポトーシス抽出物へのXIAPの添加はまた、その32kDa形態から活性な17〜20kDa形態へのプロカスパーゼ-3前駆体ポリペプチドのタンパク質分解性プロセシングを防止した(実施例I.B.3)。このようなシトクロムc処理抽出物におけるカスパーゼ-3プロセシングの防止は、同定されていない上流のカスパーゼ(これは、プロカスパーゼ-3をプロセシングする)のIAPによる阻害に起因し得るか、または自己増幅プロセスの阻害を反映し得、これにより少量のカスパーゼ-3の活性化は、活性なカスパーゼ-3による、より多くのプロカスパーゼ-3のタンパク質分解性プロセシングを導き、そしてそれにより活性なカスパーゼ-3に対するIAP結合および活性なカスパーゼ-3の阻害は、プロカスパーゼ-3のさらなるプロセシングを防止し得る。
【0039】
無細胞系においてアポトーシスプログラムを誘導するシトクロムcおよびdATPを用いることの代替法として、活性な組換えカスパーゼ-8(これは、FasおよびTNF-R1レセプター複合体と会合し、そしてカスパーゼ-3活性化およびアポトーシスを導くタンパク質分解性カスケードの上流イニシエーターとして機能する)を抽出物に添加した。カスパーゼ-8は、プロカスパーゼ-3の切断を刺激し、プロテアーゼ活性化に特有の17〜20kDaのラージサブユニット(活性なカスパーゼ-3)を生じ、一方、XIAPの存在下では、カスパーゼ-8は、部分的にプロセシングされた22〜24kDaの形態のカスパーゼ-3の生成を誘導した(実施例I.B.3)。従って、XIAPは、カスパーゼ-8により誘導されたカスパーゼ-3の初期の切断を防止しなかったが、成熟ラージサブユニットを生成するその後のプロセシング事象を阻害した。以前の研究は、カスパーゼ-3プロセシング(プロドメインの除去を含む)の完了が、自己触媒性事象であり、ここで部分的にプロセシングされたカスパーゼ-3は、それ自体のプロセシングを完了し、それ自体のプロドメインを除去することを示した(本明細書中に参考として援用される、Martinら、EMBO J. 14:5191-5200 (1995))。
【0040】
XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2のカスパーゼ阻害活性の特異性もまた、調べられた。例えば、GST融合タンパク質として精製したXIAPは、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7による95%を超える基質タンパク質分解を阻害したが、50倍モル過剰に添加した場合でさえ、カスパーゼ-1、カスパーゼ-6、またはカスパーゼ-8による基質切断を妨害しなかった(実施例II)。さらに、XIAPの3つのBIRドメイン(残基1〜337)しか含有しないGST融合タンパク質はまた、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7を強力に阻害し、一方、RINGドメイン(338〜497)を含有するGST融合物ならびにいくつかのコントロールのGST融合タンパク質は、有意な結果を有さなかった。類似の結果は、c-IAP-1またはc-IAP-2、ならびにこれらのIAPタンパク質のBIR構築物を用いて得られた。従って、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2は、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性を特異的に阻害するが、カスパーゼ-1、カスパーゼ-6、またはカスパーゼ-8に対してはほとんどまたは全く阻害効果を有さない。
【0041】
それらのタンパク質分解活性を阻害することに加えて、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2は、精製した活性なカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7とインビトロで、ならびに部分的にプロセシングされた22〜24kDaのラージサブユニットおよびプロドメインと特異的に会合するが、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7のプロセシングされていない前駆体ポリペプチドとは会合しない(実施例I.B.3およびIV)。さらに、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2は、プロカスパーゼ-9とインビトロで特異的に会合する(実施例VI)。従って、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7のチモーゲンとは対照的に、プロカスパーゼ-9は、IAPファミリーのタンパク質と特異的に会合する。これらの結果は、インビトロの結合アッセイが、特定のカスパーゼと特異的に会合し、それゆえこれらのカスパーゼの活性の調節のもっともらしい候補物であるIAPタンパク質を同定するためのさらなる方法を提供することを実証する。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「特異的に会合する」または「特異的に結合する」とは、IAPタンパク質およびカスパーゼまたはプロカスパーゼへの言及に使用される場合、IAPおよびカスパーゼまたはプロカスパーゼが互いに結合親和性を有し、その結果、これらが結合複合体を形成することを意味する。例えば、本明細書に開示されるように、XIAPは、カスパーゼ-3(Kが約0.7nM)およびカスパーゼ-7(Kiが約0.2nM;実施例IIを参照のこと)への強固な可逆性結合を示した。値は、好ましいことに、標的カスパーゼについてカスパーゼのウイルス性インヒビターである牛痘CrmA(Kiが約0.01〜0.95nM)およびバキュロウイルスp35(Kiが約1.0nM)に匹敵した(Zhouら、J.Biol.Chem.272:7797-7800(1997)、これは本明細書において参考として援用される;Bertinら、J.Virol.70:6251-6259(1996)もまた参照のこと)。IAPタンパク質およびカスパーゼまたはプロカスパーゼの結合特異性を考慮すると、インビトロ結合アッセイは、IAPおよびカスパーゼまたはプロカスパーゼの特異的会合を変化させ得、従って、細胞中のアポトーシスのレベルを調整するために有用であり得る薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイの基本を提供する。
【0043】
一過的なトランスフェクションアッセイに基づいて、XIAPが、インタクトな細胞においてカスパーゼのプロセシングおよび活性化を阻害することがさらに開示される。ヒト293T細胞は、ヒトBax発現ベクターでトランスフェクトされた。Baxは、ミトコンドリア透過性の遷移を誘導し、これは、シトクロムcの放出およびカスパーゼ-3、カスパーゼ-6およびカスパーゼ-7のプロセシングを生じると予測される(Xiangら、Proc.Natl. Acad. Sci., USA 93:14559-14563(1996))。
【0044】
トランスフェクトされた細胞におけるBax発現は、生体染色により検出される細胞死の7〜10倍の増加を、そしてDNA断片化により測定されるアポトーシスの8〜10培の増加を生じたが、XIAP発現プラスミドの同時トランスフェクションは、Bax誘導性アポトーシスを顕著に阻害した(実施例III)。BIRドメインのみを含む、mycタグ付加バージョンのXIAPは、Bax誘導性細胞死およびアポトーシスの抑制において、完全長XIAPタンパク質と同程度に効果的であったが、XIAPのRINGドメインは不活性であった。カスパーゼ阻害ペプチドであるzVAD-fmkもまた、Baxでトランスフェクトされた細胞においてアポトーシスを阻害し、これらの細胞におけるBax誘導性細胞死におけるカスパーゼについての役割と一致する。従って、XIAP、特にBIRドメインを含むXIAPのフラグメント(これは、活性型カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7と結合し得、そしてこれらのプロテアーゼ活性を阻害し得る)はまた、インタクトな細胞におけるBax誘導性アポトーシスを抑制し得る。さらに、これらの結果により、インタクトな細胞におけるトランスフェクトションアッセイは、特定のIAPタンパク質が、インビトロアッセイを使用して最初に決定されたように、選択されたカスパーゼの活性を調節することを確認するために使用され得、そして特に基質加水分解アッセイまたはイムノブロット分析と組み合わせて使用される場合において、IAPのカスパーゼ阻害活性を調整する薬剤を同定するスクリーニングアッセイに有用であり得ることが実証される(実施例I.B.3およびIIIを参照のこと)。
【0045】
本発明は、従って、IAPのカスパーゼ阻害活性を、カスパーゼおよびインヒビターIAPタンパク質の特異的会合を変化させることにより調整する薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイを提供する。本方法は、カスパーゼおよびIAPの特異的な会合が可能な条件下で、カスパーゼおよびIAPの会合を変化させ得ると思われる薬剤と、カスパーゼおよびIAPとを接触させる工程;およびカスパーゼおよびIAPの変化した会合を検出し、その結果、カスパーゼおよびIAPの会合を変化させる薬剤を同定する工程を包含する。例えば、本発明は、eIAP(例えば、XIAP、c-IAP-1またはc-IAP-2)およびカスパーゼ(例えば、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7またはカスパーゼ-9)の特異的結合を変化させる薬剤を同定するためのインビトロスクリーニングアッセイを提供する。さらに、本発明は、細胞で組換えIAPタンパク質を発現させ、そして細胞溶解物におけるカスパーゼ活性またはカスパーゼ活性化のレベルに対する薬剤の効果を決定することにより、IAPのカスパーゼ阻害活性を変化させる薬剤を同定するための細胞ベースのスクリーニングアッセイを提供する。細胞ベースのアッセイは、例えば、無細胞系またはインビトロアッセイを使用して同定された薬剤がまた、細胞において、IAPおよびカスパーゼの会合を変化させるために、またはIAPによるカスパーゼの活性調節を調整し、従って、アポトーシスを調整するために有効であることを確認するために特に有用であり得る。
【0046】
スクリーニングアッセイはまた、プロカスパーゼおよびIAPタンパク質の特異的会合を変化させる薬剤を同定するために使用され得る。この方法の工程は、プロカスパーゼおよびIAPが特異的に会合することが可能な条件下で、プロカスパーゼおよびIAPの会合を変化させ得ると思われる薬剤と、プロカスパーゼおよびIAPとを接触させる工程;およびプロカスパーゼおよびIAPの変化した会合を検出し、その結果、プロカスパーゼおよびIAPの会合を変化させる薬剤を同定する工程を包含する。IAPおよびプロカスパーゼの特異的会合を変化させる薬剤を同定するためのこのようなアッセイは、例えば、インビトロアッセイまたは細胞ベースのアッセイであり得る。このような方法において、特に有用なIAPは、X染色体連鎖IAP(例えば、XIAP)を含むeIAP、またはc-IAP-1もしくはc-IAP-2のようなeIAPであり得る。本明細書で開示される結果に基づいて、特に有用なプロカスパーゼは、例えば、プロカスパーゼ-9であり得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「プロカスパーゼ」は、カスパーゼのチモーゲンまたは不活性前駆体形態について言う。プロカスパーゼは、一般には、制限されたタンパク質分解により活性カスパーゼ形態に変換される。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「薬剤」は、化学的または生物学的分子(例えば、単純なまたは複雑な有機分子、ペプチド、ペプチド擬態物、タンパク質、またはオリゴヌクレオチド)を意味する。合成ペプチドは、本発明の方法でとりわけ有用な薬剤である。合成ペプチドは、例えば、アミノ酸、アミノ酸等価物または他の非アミノ基、関連有機酸(例えば、p-アミノ安息香酸(PABA))を含み得、そして置換型もしくは改変型の側鎖または官能基を有するアミノ酸アナログを含み得る。本明細書(実施例IおよびII)において開示される無細胞アポトーシス系およびインビトロアッセイは、自動化され得る点で、薬物スクリーニングアッセイとして特に有用であり、IAPのカスパーゼ阻害活性を効果的に変化させるかまたはIAPタンパク質およびカスパーゼもしくはプロカスパーゼの特異的会合を変化させる薬剤を同定するためにランダムに設計された薬剤の高処理スクリーニングを可能にする。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「変化させる(alter)」は、薬剤が、カスパーゼもしくはプロカスパーゼおよびIAPタンパク質の相対的な親和性を増加または減少させ得るか、またはIAPのカスパーゼ阻害活性を変化させ得ることを意味する。IAPタンパク質およびカスパーゼまたはプロカスパーゼの会合を変化させる薬剤の能力は、例えば、インビトロ結合アッセイを使用して同定され得る(実施例IおよびIIを参照のこと)。詳細には、IAPおよびカスパーゼまたはプロカスパーゼの結合の親和性を変化させる薬剤の能力は、複合体の解離定数を決定し、従って、IAPおよびカスパーゼまたはプロカスパーゼの特異的会合を様々な程度に増加または減少させる薬剤を選択するための手段を提供することにより同定され得る(実施例II)。カスパーゼまたはプロカスパーゼおよびIAPの特異的会合を種々に変化させる薬剤を選択する能力は、細胞集団(特に病的状態に関与する細胞の集団)のアポトーシスのレベルを厳密に調節するための手段を提供する。
【0050】
IAPおよびカスパーゼの会合を変化させるか、またはIAPのカスパーゼ阻害活性を変化させる薬剤は、エキソビボでの細胞集団(培養中の細胞または個体中の細胞を含む)のアポトーシスのレベルを変化させるために有用であり得る。例えば、IAPのカスパーゼ阻害活性を変化させる薬剤は、細胞におけるアポトーシスのレベルを減少させるためにエキソビボで細胞と共にインキュベートされ得る。このような方法は、例えば、培養した場合、そうでなければアポトーシスを受ける細胞を培養するために有用であるか、固体を処置するための準備として細胞に対するこのような処理の効果または個体に対し再投与されるべき細胞がどこにあるかのいずれかを検査するため、個体の細胞をエキソビボで処理するために有用であり得る。同様に、薬剤は、1つの細胞集団でアポトーシスを選択的に誘導し、その結果、残る集団の選択を可能にするために、培養中の混合された細胞集団を処理するために使用され得る。このような方法は、IAPのカスパーゼ阻害活性を減少させる能力を有すると同定された薬剤が、他の細胞集団と比較して1つの細胞集団によってより選択的に取り込まれる薬剤を同定するためにさらにスクリーニングされることを必要とする。このような方法は、当該分野の技術水準の充分に範囲内である。従って、本発明は、培養中の細胞集団のアポトーシスのレベルを、細胞中のIAPのカスパーゼ阻害活性を変化させる薬剤と細胞とを接触させることにより調整する方法を提供する。
【0051】
本発明は、個体にIAPのカスパーゼ阻害活性を変化させる薬剤を投与し、その結果、細胞集団のアポトーシスのレベルを変化させることにより、個体における病的状態の重症度を減少させる方法を提供する。細胞集団の所望されない高レベルの増殖(expansion)により少なくとも一部特徴付けられる病的状態の処置について有用である薬剤は、カスパーゼ活性化を阻害するIAPの能力を減少または阻害し得、その結果、活性カスパーゼが、細胞死の経路においてその作用を生じ得、そして細胞のアポトーシスが生じ得る。例えば、癌患者の腫瘍は、特定の癌に依存して、癌細胞の分裂の増加またはアポトーシスのレベルの減少のいずれかに起因する癌細胞集団の増殖に起因して形成する。カスパーゼ活性を阻害するIAPの能力を阻害することにより、細胞死の経路は癌細胞のアポトーシスを生じ得る。同様に、このような薬剤は、自己免疫疾患を媒介する免疫エフェクター細胞においてアポトーシスを誘導することが所望される場合、自己免疫疾患の処置について有用であり得る。さらに、所望されない細胞集団の増殖は、乾癬のような状態および再狭窄において生じる。従って、本発明は、細胞集団の病理学的に高レベルの増殖により特徴付けられる疾患を有する個体に、カスパーゼおよびIAPの特異的会合を減少または阻害する薬剤を投与し、その結果IAPのカスパーゼ阻害活性を減少または阻害することにより、その疾患を処置する方法を提供する。
【0052】
カスパーゼおよびIAPの特異的会合を増加させるか、またはIAPのカスパーゼ阻害活性を増加させる薬剤もまた、個体における細胞集団のアポトーシスのレベルを減少または阻害し得る。このような薬剤は、例えば、神経変性疾患(パーキンソン病、ハンティングトン病、アルツハイマー病およびAIDS患者で生じる脳障害を含む)で生じるようなニューロン細胞のアポトーシスを予防するために有用である。従って、本発明は、IAPおよびカスパーゼの特異的会合を増加させる薬剤を投与し、その結果、IAPのカスパーゼ阻害活性を増加させ、そして細胞集団のアポトーシスを減少または阻害することにより、細胞集団のアポトーシスの病理学的に上昇したレベルにより特徴付けられる疾患を有する個体を処置する方法を提供する。従って、IAPおよびカスパーゼの会合を変化させる能力を有するとして本発明の方法を使用して同定されたか、またはIAPのカスパーゼ阻害活性を変化させ得る薬剤は、癌または神経変性疾患またはアポトーシスの変化したレベルにより少なくともある程度は特徴付けられる疾患のような疾患を処置するための医薬として有用であり得る。
【0053】
IAPタンパク質によるカスパーゼ活性化の調節を調整する薬剤もまた、例えば、カスパーゼと特定のカスパーゼの活性を阻害することが公知であるIAPとを、カスパーゼの活性を調整し得ると思われる薬剤と共に接触させ、そしてカスパーゼのタンパク質分解活性を測定することによって、インビトロアッセイにおいて同定され得る。例えば、XIAPのようなIAPまたはBIRドメインを含むIAPのフラグメントが、カスパーゼ-3(これは、完全または部分的にプロセミングされたカスパーゼ-3のいずれかを含む活性型カスパーゼ-3であり得る)のようなカスパーゼおよび薬剤と共にインビトロでインキュベートされ得る。さらに、組換えXIAPは、サイトゾル抽出物での特定のプロカスパーゼの活性化およびプロセシングをブロックし得ることから、XIAPは、シトクロムcおよびdATPを含むサイトゾル抽出物中で、薬剤と共に、または薬剤を含まずにインキュベートされ得る。例えば、XIAPによるカスパーゼ-3活性化の調節を調整する薬剤の非存在下では、カスパーゼ-3活性のベースラインレベルは検出可能である。しかし、薬剤が、例えば、XIAPの阻害作用を防げることにより、XIAPによるカスパーゼ-3活性化の調節を調整し得る場合、カスパーゼ-3活性のベースラインレベルからの増加が検出可能である。カスパーゼの活性化または活性化の阻害は、例えば、カスパーゼにより特異的に加水分解される基質の加水分解を検出することにより、またはイムノブロット分析により活性型カスパーゼの生成を検出することによることを含む、本明細書で開示される任意の方法を使用して検出され得る。プロセミングされたカスパーゼはまた、プロセミングされかつ活性であるカスパーゼに存在する(しかし、プロカスパーゼには存在しない)エピトープと反応する抗体を使用するELISAまたはRIAにより検出され得る。
【0054】
本発明の方法は、XIAPによるカスパーゼ-3、カスパーゼ-7およびカスパーゼ-9の活性の調整により例証される。しかし、任意のeIAPを含む任意のIAPが、適切なカスパーゼとの組み合わせでアッセイに使用され得る。例えば、c-IAP-1およびc-IAP-2もまた、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7およびカスパーゼ-9をインビトロで阻害し(実施例IVおよびIXを参照のこと)、従ってまた、本発明の方法において有用である。特定のカスパーゼの調節に関与する他のIAPタンパク質は、本明細書中で開示される方法を使用して同定され得、次いで、カスパーゼおよびIAPの特定の組み合わせが、IAPによるカスパーゼ活性化の調節を調整するか、またはIAPおよびカスパーゼの特異的会合を変化させる薬剤を同定するためのスクリーニングアッセイに使用され得る。従って、以下の実施例は、例示することを意図するが本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0055】
実施例I
XIAPは無細胞系においてカスパーゼ活性および核崩壊を阻害する
本実施例は、XIAPが、サイトゾル抽出物において、単離された核アポトーシス様の崩壊を阻害し、そしてカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7に結合し、そしてこれらの活性化を阻害することを実証する。
【0056】
A.プラスミド構築物:
XIAPをコードするcDNA分子を、Jurkat T細胞由来の1本鎖(first strand)cDNAをテンプレートとして、そして、Genbank登録番号U32974(正方向プライマー、5’-GGGAATTCATGACTTTTAACAGTTTTGAAGGAT-3'(配列番号4);逆方向プライマー、5'-CTCTCGAGCATGCCTACTATAGAGTTAGA-3'(配列番号5)に基づく特異的プライマーを使用するRT-PCRにより入手した。PCR産物をEcoRIおよびXhoIで消化し、次いでpcDNA3(Invitrogen,Inc.;La Jolla CA、これはN-末端Mycタグを含む)またはpGEX4T-1(Pharmacia;Piscataway NJ)中に連結し、pGEX4T-1-XIAPを作製した。
【0057】
プラスミドpGEX4T-1-XIAPを、プラスミドpT-Trx(Yamakawaら、J.Biol. Chem. 270:25328-25331(1995)、これは本明細書中で参考として援用される)を含むE.coli株BL21(DE3)へ導入した。GST-XIAP融合タンパク質の発現を、0.2mMIPTG、(30℃、3時間)で誘導した。GST-XIAP融合タンパク質を可溶性画分から入手し、グルタチオン-セファロースを使用してアフィニティー精製し、そしてリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して透析した。
【0058】
完全長のカスパーゼ-3、カスパーゼ-6およびカスパーゼ-7をコードするcDNA分子並びにカスパーゼ-8の触媒サブユニット(Ser217からC-末端まで)をコードするcDNAを、pETベクター(Novagen,Inc.;Madison WI)にサブクローニングし、E.coli株BL21(DE3)pLysS中でHis6タグ付加タンパク質として発現させ、次で記載(Muzioら、J.Biol.Chem.272:2952-2956(1997);Orthら、 J.Biol.Chem. 271:20977-20980(1996)、これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される;Zhouら、前出、1997)のように精製した。組換えコントロールタンパク質、GST-Bcl-2、GST-Bax、GST-CD40サイトゾルドメイン、およびHis6-S5aプロテアソームサブユニットを、以前に記載されたように調製した(Hanadaら、J.Biol.Chem. 270:11962-1196(1995);Satoら、FEBS Lett. 358:113-118(1995);Deverauxら、J.Biol.Chem. 270:29660-29663(1995)、これらはそれぞれ本明細書中で参考として援用される)。
【0059】
B.無細胞アッセイ
1.サイトゾル抽出物の調製
細胞抽出物のサイトゾル画分を、293胚性腎細胞またはJurkat T細胞から、本質的には記載(Liuら、前出、1996)されたようにではあるが、以下に示されるような改変をして、調製した。細胞を氷冷緩衝液A(20mM Hepes(pH7.5)、10mM KCl、1.5mM MgCl2、1mM EDTA、1mM DTTおよび0.1 mM PMSF)で洗浄し、そして1容量の緩衝液Aで懸濁し、次いで氷上で20分間インキュベートした。293細胞を、26ゲージの注射針に15回通すことにより分離させ、そしてJurkatT細胞を、乳棒Bでの15回のストロークを使用して、2ml中でダウンスに(dounce)に均質化させることにより破砕した。細胞抽出物(10〜15mgの全タンパク質/ml)を16,000×g、30分間の遠心分離により清澄にし、次いでNaCl濃度を50mMまで増加させた。サイトゾル画分を直ちに使用するか、または-80℃で凍結保存した。
【0060】
2.無細胞系における核のアポトーシス
単離した核をHeLa細胞から調製した(Martinら、前出、1995)。約5×104〜1×105の核を20μlのサイトゾル抽出物に添加し、そして10μMウマ心臓シトクロムc(Sigma、Inc.; St. Louis MO)および1mM dATPを単独で(ポジティブコントロール)、またはシトクロムc、dATPおよび0.4μM GST-XIAPもしくは0.4μM GST-Bcl-2を添加することによりアポトーシスを開始させた。37℃にて60分間のインキュベーション後、核を1μg/mlのアクリジンオレンジおよびエチジウムブロミドで染色し、そして極端に凝縮したクロマチンおよび核の断片化の発生を含むアポトーシスの特徴を有する核の割合を決定した。
【0061】
サイトゾル抽出物において単独でインキュベートされた核は、約15%のアポトーシス核のベースラインレベルを示した(2回の実験の平均)。サイトゾル抽出物へのシトクロムcおよびdATP(これらはカスパーゼを活性化する(以下を参照のこと;また、Liuら、前出、1996を参照のこと))の添加は、アポトーシス核のレベルを95%よりも増加させ、一方、核へのシトクロムcおよびdATPの添加は、単独では(サイトゾル抽出物なし)効果がなかった。シトクロムcおよびdATPとともに同時にGST-Bcl-2を添加すると、シトクロムcおよびdATPを単独で抽出物に添加した場合に観察されるアポトーシスのレベル(95%を越えるアポトーシス核)と比べ、効果がなかった。これに対して、シトクロムcおよびdATPとともにGST-XIAPをサイトゾル抽出物に添加すると、シトクロムcおよびdATPを添加しなかった抽出物において観察される、アポトーシス核のベースラインレベル(約15%)のみを生じた。これらの結果は、核は無細胞系におけるアポトーシスの性質の変化を受けるように誘導され得ること、およびXIAPはこの系において核のアポトーシスを防ぐことを示した。
【0062】
3.無細胞系におけるカスパーゼの活性化
カスパーゼ活性を、ベンジルオキシカルボニル(benzylyoxycarbonyl)-DEVD(配列番号2)またはベンジルオキシカルボニル(benzylyoxycarbonyl)-YVAD(配列番号3)合成ペプチドからの、7-アミノ-4-トリフルオロメチル-クマリン(AFC)またはp-ニトロアニリド(pNA)いずれかの放出により、AFC標識ペプチドについてMolecular Devices Spectromax 340またはpNA標識ペプチドについてPerkin/Elmer LS50Bを使用して、アッセイした(実施例IIを参照のこと;またZhouら、前出、1997を参照のこと)。293細胞またはJurkatT細胞からのサイトゾル抽出物を直接(ネガティブコントロール)、あるいは1μMシトクロムcおよび1mM dATPで処理するか、またはシトクロムc、dATPおよび0.2μMGST-XIAPで処理して、使用した。さらなるコントロール反応を、GST-XIAPについての、2μM GST-Bcl-2、GST-Bax、GST-NM23またはGST-CD40サイトゾルドメイン、あるいは、5μMHis6-S5aタンパク質で置き換えて、行った。DEVD-pNA加水分解を、種々の時間において測定し、そして複数の実験を、いくつかの異なるGST-XIAP調製物を用いて行った。
【0063】
293細胞抽出物を用いる実験において、抵レベルのDEVD-pNA加水分解活性が、コントロールの未処理サイトゾル抽出物で観察された;DEVD-pNA加水分解は、5分後にほとんど明白ではなく、そして、15分後においてΔA405≒0.01を示した。シトクロムcおよびdATPを用いて処理した抽出物において、単独またはGST-Bcl-2、GST-Bax、GST-NM23、GST-CD40サイトゾルドメイン、もしくはHis6-S5aとの組合せのいずれかにおいて、DEVD-pNA加水分解は、5分以内において明白であり、そして実験した15分間の間で指数関数的に増加した(15分後にΔA405≒0.1)。対照的に、シトクロムc、dATPおよびXIAPで処理した293細胞抽出物において、DEVD-pNA加水分解は、シトクロムcとともにインキュベートされなかった未処理コントロール抽出物とほぼ同一であった。
【0064】
同様の結果が、Jurkat細胞から調製されたサイトゾル抽出物を用いて得られた(コントロール未処理抽出物におけるDEVD-pNA加水分解のレベルは、安定的であるが、試験した20分間の間にゆっくりと増加したことを除く(15分後にΔA405≒0.02;20分後にΔA405≒0.025))。シトクロムcおよびdATPで処理された抽出物において、単独またはGST-Bcl-2、GST-Bax、GST-NM23、GST-CD40サイトゾルドメイン、もしくはHis6-S5aとの組合せのいずれかにおいて、DEVD-pNA加水分解は、再度、5分以内において明白であり、約15分間線形的に増加し(ΔA405≒0.09)、次に安定になり始めた(20分後ΔA405≒0.1)。比較において、シトクロムc、dATPおよびXIAPを用いて処理された抽出物におけるDEVD-pNA加水分解は、平行して増加したが、コントロール抽出物のものよりも若干高かった(15分後にΔA405≒0.025;20分後にΔA405≒0.03)。これらの結果は、シトクロムcおよびdATPが、2つの異なる細胞型から調製したサイトゾル抽出物におけるDEVD-pNA加水分解活性を誘導し、そしてXIAPがこの加水分解酵素の活性を阻害することを示す。
【0065】
内在的に発現されたXIAPが外来的に添加されたXIAPと同一の効果を有するか否かを決定するために、サイトゾル抽出物を、pcDNA3-XIAP(これはXIAPを発現する)またはコントロールpcDNA3プラスミドで一過性のトランスフェクションをした293細胞から調製した。シトクロムc/dATPで誘導されたDEVD-pNA加水分解活性の活性化は、コントロールプラスミドと比較した場合、pcDNA-XIAPでトランスフェクトされた細胞から調製した抽出物において50%を越えて減少した。これらの結果は、XIAPが加水分解酵素の活性化を阻害することを確認し、そしてそのような阻害はXIAPが抽出物に添加されても、または抽出物が調製される細胞において発現されても、生じることを実証した。
【0066】
イムノブロット分析は、DEVD-pNA加水分解が、カスパーゼの活性化に起因したことを実証した。XIAPに特異的な抗血清を、合成ペプチド、NH2-CDAVSSDRNFPNSTNLPRNPS-アミド(配列番号6)(これはXIAPのアミノ酸241位〜261位を示し(Listonら、前出、1996;Duckettら、前出、1996)、マレイミド-活性化KLHまたはOVAキャリアタンパク質と結合体化する(Pierce,Inc.; Rockford IL))を用いてウサギ中で調製した。抗カスパーゼ-3抗体を、Krajewskiら(Cancer Res.57:1605-1613(1997)、これを本明細書において参考として援用する)の記載の通りに調製した。精製カスパーゼを、クローン化cDNA分子から調製し、そして標準的な金属クロマトグラフィーにより精製した(Zhouら、前出、1997)。
【0067】
イムノブロット分析を、未処理の5μlサイトゾル抽出物(10mg/ml)またはシトクロムcおよびdATPもしくは活性カスパーゼ-8(1μg)とともに0.5または1時間インキュベートした抽出物を用いて、0.2μM GST-XIAPの非存在下または存在下で行った(30μl反応容量)。サイトゾル抽出物をタンパク質含有量で標準化して、次に5μl(10mg/ml)を750mM Tris/12%ポリアクリルアミド/0.1% SDSゲル中で分画して、ニトロセルロースに転写した(Deveraux、前出1995;Orthら、前出、1996)。
【0068】
3つの主要なカスパーゼ関連のバンド(本明細書においてバンド1、2または3という)が観察された:最高の分子量のバンド(バンド1;32kDa)は、プロセスされていないプロカスパーゼ-3を表し;中間のバンド(バンド2;22〜24kDa)は、部分的にプロセスされたプロカスパーゼ-3を表し(ラージサブユニットおよびプロドメイン);ならびに最低の分子量のバンド(バンド3;17〜20kDa)は、2つの完全にプロセスされたラージサブユニットである活性カスパーゼ-3の2つのバージョンを表す;抗カスパーゼ-3抗体は、プロセスされたプロテアーゼの10〜11kDa低分子サブユニットと反応しない。抗XIAP抗血清でブロットをプローブすると、適切なサンプルにおけるXIAPの存在が明らかとなった。
【0069】
バンド1(プロセスされていないプロカスパーゼ-3)は、各サンプルに存在したが、特定の処理に依存して、より多量にまたはより少量に存在し、そしてコントロールサイトゾル抽出物(未処理)において観察される唯一のバンドであった。バンド3(活性カスパーゼ-3)は、シトクロムcおよびdATPを用いてか、またはカスパーゼ-8を用いて処理された抽出物において観察された、主要なバンドであった。しかし、XIAPタンパク質を、シトクロムcおよびdATPの添加前に抽出物に添加した場合、ほとんどのカスパーゼ-3は、プロセスされていないプロカスパーゼ-3(バンド1)を示した。対照的に、カスパーゼ-8およびXIAPで処理された抽出物において、バンド2は、観察された主要なバンドであり、バンド3(活性カスパーゼ-3)は全くもしくはほとんど存在しなかった。これらの結果は、DEVD-pNA加水分解活性が、プロカスパーゼ-3から活性カスパーゼ-3へのプロセシングと相関し、そしてXIAPによるDEVD-pNA加水分解活性の阻害は、プロカスパーゼ-3から活性カスパーゼ-3へのプロセシングの阻害に相関することを示す。結果はまた、XIAPがカスパーゼ-3のプロセシングの完了を防ぐことによりカスパーゼ-3の活性化を阻害することを示し、これはこのカスパーゼの直接的な阻害と一致する。なぜなら、プロドメインの除去は、自己触媒機構を介して生じるからである(Martinら、前出、1995)。
【0070】
実施例II
XIAPは、選択的にカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性化を阻害し、そしてこれらのカスパーゼに結合する
この実施例は、XIAPがカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性化を阻害するが、カスパーゼ-1、-6または-8を阻害しないこと、およびXIAPがインビトロで特異的にカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7と結合することを示す。
【0071】
精製組換えカスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7またはカスパーゼ-8を、DEVD-pNAと、単独または10倍〜50倍モル過剰のGST-XIAP(20μM)とともにインキュベートし、そして基質の加水分解を測定した。精製された活性化カスパーゼの濃度は、0.1nM〜10nMの範囲であった。XIAPの濃度は、0.1nM〜500nMの範囲であった。アッセイを、カスパーゼ緩衝液中(50mM Tris、pH 7.4、100mM NaCl、10% スクロース、5〜10mM DTT、 1mM EDTAおよび0.1% CHAPS)で行った。
【0072】
精製GST-XIAPは、10倍モル過剰で存在する場合、インビトロでのカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7によるDEVD-pNAのプロセシングを、95%を越えるまで阻害した。しかし、カスパーゼ-1、カスパーゼ-6またはカスパーゼ-8による基質の切断は、50倍モル過剰で添加した場合であっても、妨げられなかった。さらに、XIAPの3つのBIRドメイン(アミノ酸1〜337)のみを含むGST融合タンパク質は、インビトロにおいてカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7を強力に阻害したのに対し、RINGドメイン(アミノ酸338〜497)を含むGST融合タンパク質は、効果がなかった。GST-CD40の添加は、カスパーゼ活性に効果がなかった。これらの結果は、XIAPが選択的にカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性を妨げることを示す。
【0073】
インビトロにおけるカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7のタンパク質分解活性の阻害に加え、XIAPはまた、インビトロで直接これらのカスパーゼに結合した。GST-XIAP(3μg)またはGST-CD40(6μg)を、5μlのグルタチオンSEPHAROSEビーズに固定化し、次に、50μlの293細胞サイトゾル抽出物(未処理(「コントロール」)、または1μMシトクロムcおよび1mMdATPと60分間30℃でプレインキュベート、または0.1%(w/v)のウシ血清アルブミンを含む100μlのカスパーゼアッセイ緩衝液(Martinら、前出、1995)中で0.5μgの精製カスパーゼ-3、カスパーゼ-6もしくはカスパーゼ-7とともにインキュベートのいずれか)に添加した。4℃にて60分間のインキュベーションに続き、ビーズを遠心分離によって除去し、そして100容量の50mM Tris(pH 7.5)、150mM KCl、2mM DTT および0.025% Triton-X100で2度洗浄し、SDS-PAGEおよびイムノブロットアッセイに供した(実施例I.B.3 を参照のこと)。
【0074】
カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の特異的結合は、抽出物をGST-XIAPビーズとインキュベーションした後に観察されたが、カスパーゼ-6については観察されなかった。GST-CD40ビーズとカスパーゼの結合は、観察されなかった。別の実験において、GST-XIAPは、サイトゾルアッセイにおいて存在するプロセスされていないプロカスパーゼ-3またはプロカスパーゼ-7に効率的には結合しなかったが、シトクロムcおよびdATPを用いて抽出物を処理した後には、プロセスされたカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7に結合した。さらに、サイトゾル抽出物をカスパーゼ-8およびXIAPとインキュベートすることにより生成された部分的にプロセスされたカスパーゼ-3(実施例I.B.3 を参照のこと)は、効率的にGST-XIAPに結合した。XIAPはまた、Ni樹脂に固定化されたHis6−カスパーゼ-3およびHis6−カスパーゼ-7に特異的に結合した。これらの結果は、XIAPが活性カスパーゼ-3および活性カスパーゼ-7、ならびに部分的にプロセスされたラージサブユニットおよびプロドメインを含むプロカスパーゼ-3に、直接的に結合するが、プロセスされていないプロカスパーゼには結合しないことを示す。
【0075】
平衡は、基質加水分解が定常状態に達した場合に、プログレス曲線から決定された;傾きを、cricket graph programを用いるカーブフィッティング分析よって計算した。実験を、精製組換えカスパーゼ-3、カスパーゼ-6、またはカスパーゼ-7を用いて行った。DEVD-AFC加水分解を、0.1nMカスパーゼおよび組換えXIAP(rXIAP)の濃度の範囲(0.2〜12μM)を用いて測定した。阻害定数(Ki)を、阻害機構の仮定を用いず、従って、0.1mM DEVD-AFC基質濃度について調整せずに計算した(Zhouら、前出、1997)。平均の速度比(vi/vo、ここで「vi」は、GST-XIAPの存在を示し、そして「vo」は、GST-XIAPのフラグメントぞんざいを示す)を決定した。
【0076】
0.2未満の平均の速度比は、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7を用いた場合に得られ、このことはXIAPがカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7が媒介するDEVD加水分解を有意に阻害することを示した。対照的に、約1.0の比は、カスパーゼ-6およびカスパーゼ-8を用いた場合に得られ、このことはXIAPの存在または非存在においてDEVD加水分解が異ならないことを示した。これらの結果は、XIAPがカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性をインビトロで阻害するが、カスパーゼ-6またはカスパーゼ-8のDEVD含有ペプチドを加水分解する能力には影響しないことを示す。
【0077】
プログレス曲線分析はまた、XIAPのカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7についての阻害定数(Ki)を決定するために使用した。XIAPは、強固な、可逆的な結合を、カスパーゼ-3(Ki≒0.7nM)およびカスパーゼ-7(Ki≒0.2nM)に対して示した。これらの値を、カスパーゼのウイルス性インヒビター(標的カスパーゼに対する、牛痘CrmA(Ki≒0.01〜0.95nM)およびバキュロウイルスp35(Ki≒1.0nM)を含む)と有利に比較する(Zhouら、前出、1997;Bertinら、前出、1996を参照のこと)。
【0078】
実施例III
XIAPは、細胞におけるカスパーゼ活性化を妨げる
この実施例は、XIAPがBaxに誘導されるカスパーゼ-3のプロセシングおよび293T細胞(SV40ラージT抗原を含む293細胞)における細胞死を阻害することを実証する。
【0079】
準コンフルエント(subconfluent)な293T細胞を、6cm皿において、リン酸カルシウム法を用い、1μgのpcDNA3-human Baxおよび9μgのpcDNA3(コントロールプラスミド)または9μgのpcDNA3-Myc-XIAPのいずれかでトランスフェクトした。N-ベンジルオキシカルボニル-Val-Ala-Aspフルオロメチルケトン(zVAD-fmk;50μM)(Bachem California; Torrance CA)をBaxプラスミドのトランスフェクションの直後に添加した。トランスフェクション効率は、pCMV-βGalを用いた同時トランスフェクションに続くX-Gal染色により決定した場合、均一に80〜90%であった。
【0080】
細胞を24時間培養中に維持し、次に、浮遊細胞および付着細胞を収集し、アリコートを取り出して、トリパンブルーまたはヨウ化プロピジウム(PI)いずれかの色素排除アッセイにより死細胞の割合を決定した。第2のアリコートを使用して、PI染色し、エタノール固定した細胞のFACS分析による準二倍体DNA含有量を用いてアポトーシス細胞の割合を評価した。残りの細胞ペレットを、10mM HEPES(pH 7.5)、142mM KCl、1mM EGTA、1mM DTT、0.2% NP-40、0.1mM PMSF中で溶解し、イムノブロット分析またはプロテアーゼアッセイのために使用した。
【0081】
PI染色は、コントロールレベルでの約2%のアポトーシス細胞を示し(コントロールプラスミドトランスフェクト細胞)、そしてXIAP発現細胞における約5%のアポトーシス細胞を示した。細胞におけるBaxの発現は、アポトーシス細胞のレベルを約25%まで上昇させた。比較すると、Baxと組み合わせたXIAPの発現は、有意にアポトーシス細胞のレベルを約10%未満にまで減少させた(p<0.01;t検定)。同様に、BIRドメインのみを含むXIAPのmycタグ化バージョンの発現は、Baxに誘導されるアポトーシスの抑制において全長タンパク質と同程度に効果的であったのに対し、XIAPのRINGドメインは、効果がなかった。Bax発現細胞のカスパーゼインヒビターzVAD-fmkを用いる処理は、アポトーシスレベルを約5%にまで減少させた。
【0082】
これらの結果は、XIAPが生細胞においてカスパーゼ活性化を阻害することを示す。さらに、BIR発現構築物がアポトーシスを阻害する能力は、XIAPの活性がXIAPのカスパーゼへの結合能と相関することを実証する。
【0083】
DEVD-AFC加水分解アッセイおよびイムノブロット分析は、Baxでトランスフェクトされた293T細胞から調製された抽出物が、コントロールでトランスフェクトされた細胞に比べ、実質的により多量のカスパーゼ活性およびプロセスされたカスパーゼ-3を含むことを明らかにした。対照的に、BaxおよびXIAPで同時トランスフェクトされた細胞由来の抽出物の分析は、XIAPがBaxにより誘導されるカスパーゼ活性およびプロカスパーゼ-3プロセシングの生成を顕著に阻害することを明らかにした。細胞内およびインビトロでのサイトゾル抽出物における、このプロカスパーゼ-3プロセシングの抑制は、XIAPは、カスパーゼ-3の上流のカスパーゼの活性をブロックするか、またはカスパーゼ-3媒介性のプロカスパーゼ-3のプロセシングを妨げるかのいずれかにより、自己増幅プロセスを妨げ、これにより少量のプロセスされた活性カスパーゼ-3はさらなるカスパーゼ-3を切断して活性化することを示す。
【0084】
実施例IV
c-IAP-1およびc-IAP-2は、選択的にカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7に結合し、そしてこれらのカスパーゼの活性を阻害する
この実施例は、XIAPと同様に、c-IAP-1およびc-IAP-2は、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7に結合し、プロカスパーゼ-3およびプロカスパーゼ-7の活性カスパーゼへのプロセシングを阻害し、そしてカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性を阻害することを実証する。
【0085】
c-IAP-1およびc-IAP-2のcDNA配列を、JurkatT細胞より得られたRNAのRT-PCRにより得た。以下のPCRプライマーを使用した:
【0086】
【数1】

【0087】
PCR産物を、EcoRIおよびXhoIで消化し、そしてpGEX4Tに連結した。c-IAP-1(BIR)およびc-IAP-2(BIR)構築物を、同一の正方向プライマーおよび以下の逆方向プライマーを用いた全長構築物のPCRにより生成した:
【0088】
【数2】

【0089】
すべてのc-IAP構築物を、プラスミドpT-Trxを含むE.coli BL21(DE3)株において発現させた(実施例 I.A を参照のこと)。E.coliを0.5の吸光度まで、30℃で増殖させ;融合タンパク質の発現を、30℃にて0.4mM IPTGで2時間誘導した(GST-c-IAP-2発現を室温で1時間誘導したことを除く)。融合タンパク質は、可溶性画分より得られ、そして標準的な方法によりグルタチオンSEPHAROSE上でアフィニティー精製した。溶出したタンパク質を、PBSに対して透析した。
【0090】
カスパーゼ活性を、実質的に実施例IIの記載のように、ベンジルオキシカルボニル-DEVD-AFC(配列番号2)基質を用いて、37℃で、Perkin-Elmer LS50B 蛍光定量的プレートリーダーをキネティック(kinetic)モードにおいて、それぞれ400nmと505nmの励起波長および発光波長を使用して、アッセイした。阻害速度および平衡を、プログレス曲線から計算した。ここで基質加水分解(100μM)を、カスパーゼ-3(7pM)、カスパーゼ-6(100pM)、カスパーゼ-7(150pM)またはカスパーゼ-8(125pM)および0.025〜1.5μMの範囲の濃度のIAP存在化で測定した。反応をカスパーゼ緩衝液(50mM Hepes、100mM NaCl、1mM EDTA、0.1% CHAPS、10% スクロース、5mM DTT)中で行った。阻害定数(Ki)を、記載の通りに計算した(Zhouら、前出、1997)。イムノブロット分析を実施例I.B.3に記載のとおりに行った。
【0091】
XIAPと同様に、c-IAP-1およびc-IAP-2、ならびにこれらIAPタンパク質のBIRドメインを含む構築物もまた、インビトロアッセイにおいて、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性を阻害した。カスパーゼ-3についてのKiは以下のとおりであった:c-IAP-1(Ki120nM);c-IAP-1(BIR)(Ki 330nM);c-IAP-2(Ki 40nM);およびc-IAP-2(BIR)(Ki260nM);ならびにカスパーゼ-7についてのKiは以下のとおりである:c-IAP-1(Ki 53nM);c-IAP-1(BIR)(Ki160nM);c-IAP-2(Ki 26nM);およびc-IAP-2(BIR)(Ki 238nM)。さらに、c-IAP-1、c-IAP-1(BIR)、c-IAP-2およびc-IAP-2(BIR)のGST構築物ならびにNAIPは、グルタチオンSEPHAROSEアフィニティークロマトグラフィーを用いて実証されるように(実施例IIを参照のこと)、インビトロにおいてカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7に結合したのに対し、カスパーゼはコントロールGST-CD40構築物に結合しなかった。
【0092】
c-IAPタンパク質はまた、無細胞アッセイ系においてカスパーゼ活性を阻害した。3μMのc-IAP-1、c-IAP-1(BIR)、c-IAP-2またはc-IAP-2(BIR)の、30分間シトクロムcおよびdATPで活性化された293細胞サイトゾル抽出物への添加は、DEVD加水分解を阻害した。さらに、XIAPについて実証されるように、イムノブロット分析は、カスパーゼ活性の阻害が、部分的に、プロカスパーゼ-3およびプロカスパーゼ-7のそれぞれカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7へのプロセシングの阻害と相関することを確証した。
【0093】
これらの結果は、IAPタンパク質がカスパーゼに結合し得、そして活性を阻害し得ることを示し、そしてIAPタンパク質がカスパーゼに関して有する一般的な調節効果を確証する。
【0094】
実施例V
XIAPは、シトクロムcで処理した抽出物と比較して、カスパーゼ-8で処理した抽出物においてプロカスパーゼ-3のプロセシングおよび活性化を差別的に阻害する
本実施例は、XIAPが、シトクロムcと比較して、カスパーゼ-8で処理した抽出物においてプロカスパーゼ-3のプロセシングおよび活性化を差別的に阻害することを実証する。
【0095】
細胞を含まない系において、サイトゾル抽出物に外因性の活性カスパーゼ-8またはシトクロムcの添加により、プロカスパーゼ-3のタンパク質分解性プロセシングを誘導し得る(Liuら、前出、1996;Muzioら、前出、1997)。カスパーゼ-8は、特徴的なp20およびp17型へのプロカスパーゼ-3のタンパク質分解性プロセシングを誘導した。カスパーゼ-3の小p12サブユニットは、これらの研究に使用される抗カスパーゼ-3抗体により検出不可能であった。
【0096】
牛痘CrmAタンパク質は、近位の細胞死プロテアーゼカスパーゼ-8に堅結に結合し、強力に阻害するセルピンであるが、カスパーゼ-3および他の下流エフェクターカスパーゼに対してほとんど活性がない(Komiyamaら、J.Biol.Chem.269:19331-19337(1994);OrthおよびDixit、J.Biol.Chem.27:8841-8844(1997);Srinivasulaら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA93:14486-14491(1996);Zhouら、前出、1997)。コントロールとして、組換え型の精製CrmAを活性カスパーゼ-8と同時に抽出物に添加した。組換えCrmAの添加により、プロカスパーゼ-3のカスパーゼ-8誘導性プロセシングが完全に防止された。しかし、次いで、シトクロムcおよびdATPを添加すると、プロカスパーゼ-3プロセシングのCrmA媒介性阻害は回避された(図1A)。相対的に大量のCrmA(10μM)は、プロカスパーゼ-3のシトクロムc誘導性プロセシングを実質的に抑制しなかったが、0.1μMのCrmAは、プロカスパーゼ-3のカスパーゼ-8誘導性プロセシングを完全に阻害した。従って、CrmAは、プロカスパーゼ-3のカスパーゼ-8誘導性プロセシングの比較的強力なインヒビターであるが、プロカスパーゼ-3のシトクロムc媒介性活性化に対してほとんど効果がない。対照的に、0.1〜0.2μMの組換えXIAPを添加することにより、サイトゾル抽出物においてプロカスパーゼ-3のシトクロムc誘導性プロセシングが、効果的に阻止された。類似した結果が、Ac-DEVD-AFC加水分解速度を測定することによりカスパーゼ活性をサイトゾル抽出物においてアッセイしたときに得られた(図1B)。これらの結果は、カスパーゼ-8がシトクロムc経路の上流にあるか、またはこれと無関係であることを示し、さらに、XIAPが、先の研究と一致して、プロカスパーゼ-3プロセシングを阻害することにより、シトクロムcの下流に機能することを実証する。
【0097】
図1Aに示したプロカスパーゼ-3のカスパーゼ-8およびシトクロムc誘導性プロセシングおよび活性化のCrmAおよびXIAP阻害については、0.1μMの組換え型精製活性カスパーゼ-8を、293細胞由来の細胞質抽出物に、0.5μM CrmA;10μMシトクロムcおよび1mM dATP;または0.2μM XIAPの非存在または存在下で添加した。サンプルを30℃で30分間インキュベートした。次に、抽出物をSDS-PAGE電気泳動により分離し、ニトロセルロースに移し、そしてカスパーゼ-3のチモーゲンおよびラージサブユニットに特異的な抗血清と共にインキュベートした。
【0098】
サイトゾル抽出物におけるカスパーゼの活性化については、サイトゾル抽出物を、以下のようにいくらか変更したが、本質的にはLiuら、前出、1966に記載のように、293胚性腎細胞を使用して調製した。簡潔には、細胞を氷冷した緩衝液A(20mM Hepes[pH7.5],10mM KCl,1.5mM MgCl2,1mM EDTA、および1mM DTT)で洗浄し、1容量の緩衝液Aに懸濁した。細胞を氷上で20分間インキュベートし、次いで26ゲージの針に15回通過させて粉砕した。細胞抽出物を16,000×gで30分間遠心分離して透明化し、得られた上清を-80℃で貯蔵した。カスパーゼの活性化を開始させるため、10μMのウマ心臓シトクロムc(Sigma,Inc.)を1mMdATPと共に、または100nMの精製した組換えカスパーゼ-8のいずれかを抽出物(10〜15mg総タンパク質/ml)に添加した。
【0099】
DEVD-AFC切断活性を以下のように分析した。簡潔には、カスパーゼ活性を、先に記載したように(Quanら、J.Biol.Chem.270:10377-10379(1995);StennickeおよびSalvesen,J.Biol.Chem.272:25719-25723(1997))、連続読み取り装置を使用し、YVADまたはDEVD含有合成ペプチドからのアミノ-4-トリフルオロメチル-クメリン(AFC)またはp-ニトロアニリド(pNA)(酵素系生成物)の遊離によりアッセイした。 テトラペプチドインヒビターは、Calbiochemから購入した。
【0100】
イムノブロット分析を使用して、プロカスパーゼ-3、プロカスパーゼ-6およびプロカスパーゼ-7のプロセシングを、組換えXIAPの存在または非存在下、カスパーゼ-8およびシトクロムc誘導性抽出物において研究した(図2)。dATPを含むシトクロムcまたは活性カスパーゼ-8のいずれかをXIAPの非存在下、サイトゾル抽出物に添加することにより、それらのチモーゲン形態の転換により示されるように、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、およびカスパーゼ-7のタンパク質分解性プロセシングが生じた。対照的に、シトクロムc処理抽出物にXIAPを添加すると、三つのプロカスパーゼのプロセシングが阻害された。図2Aに示すように、大部分のカスパーゼ-3は、XIAPを含むシトクロムc処理抽出物中に非プロセシング形態(約36kDa)で残留したが、少量のカスパーゼ-3のラージサブユニットは検出された。カスパーゼ-8で処理した抽出物において、プロカスパーゼ-6およびプロカスパーゼ-7のプロセシングもまた、XIAPによりブロックされた。しかし、プロカスパーゼ-3は、ラージサブユニットとスモールサブユニットとに切断された。図2Aに示すように、カスパーゼ-3の約36kDaチモーゲンは、ほぼ完全に消費されたが、カスパーゼ-3のラージサブユニットの約24kDa形態は、蓄積された。カスパーゼ-3ラージサブユニットの成熟した約20kDaおよび約17kDa形態は、カスパーゼ-8およびXIAPで処理した抽出物において、ほとんどまたは全く認められなかった(図2A)。
【0101】
プロカスパーゼ-3のプロセシングは、p12スモールサブユニットを生成する最初の切断、および部分的にプロセシングされたp24ラージサブユニットを伴う(Martinら、EMBO J.15:2407-2416(1996))。さらに、p24ラージサブユニットは、そのN-末端プロドメインの自己触媒的除去によりプロセシングされ、ラージサブユニットのp20またはp17型のいずれかを生成する(Martinら、前出、1996)。上記のように、部分的にプロセシングされたp24形態は、カスパーゼ-8およびXIAP処理抽出物において蓄積した。これらの結果は、XIAPが、カスパーゼ-3のラージサブユニットの自己触媒的プロセシングのみをブロックし、カスパーゼ-8によるプロカスパーゼ-3の最初の切断を阻害しなかったことを示す。対照的に、シトクロムc処理抽出物において、XIAPは、ラージサブユニットおよびスモールサブユニットへのプロカスパーゼ-3の最初のプロセシングを強く抑制した。
【0102】
プロセシングされたカスパーゼ-3がXIAPに結合されたかどうかを分析するために、GST-XIAPタンパク質を、グルタチオン-Sepharoseを使用して、上記の抽出物から回収した(図2A右パネル;レーン1)。シトクロムc処理抽出物では、カスパーゼ-3分子は、GST-XIAPタンパク質と結合しなかった。対照的に、カスパーゼ-8で処理した抽出物において、GST-XIAPは、優先的にカスパーゼ-3のラージサブユニットのp24形態に結合した(図2A、レーン2)。コントロールとして、GST-XIAPを、先にシトクロムcで1時間処理した抽出物に添加し、次いでグルタチオン-Sepharose上で回収した(レーン3)。これは、活性カスパーゼ-3がGST-XIAPに結合したこと、および大部分のカスパーゼ-3のラージサブユニットが、存在する部分的にプロセシングされたp24型の少数のみによって、p17およびp20形態にプロセシングされたことを示す。類似の結果が、GST-c-IAP-1またはGST-c-IAP-2をGST-XIAPと置換した場合に得られた。
【0103】
XIAPはまた、カスパーゼ-8の公知のアクチベーターであるFasを過剰発現させる細胞(CD95)において部分的にプロセシングされたカスパーゼ-3のp24形態に結合した。図2Bに示すように、Fas誘導性アポトーシスは、Fasをコードするプラスミドおよびmyc-エピトープタグ化XIAPで同時トランスフェクトされた293細胞において著明に抑制された。Fasを過剰発現する293細胞から得た溶解物のmyc-XIAPタンパク質の免疫沈降により、結合したp24-カスパーゼ-3が示された(図2B;右パネル;レーン4)。対照的に、Bax(これは、ミトコンドリアからシトクロムcの放出を誘導する(Rosseら、Nature391:496-499(1998)))を過剰発現する細胞において、プロカスパーゼ-3プロセシングは、完全に妨げられ、いずれの形態のプロセシングされたカスパーゼ-3も、XIAPと同時免疫沈降しなかった。
【0104】
要するに、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、およびカスパーゼ-7のプロセシングは、XIAPの存在下、シトクロムc処理細胞においてほとんどまたは全く生じない。これは、XIAPが、これらのカスパーゼの上流のシトクロムc経路を阻害することを示す。対照的に、XIAPは、カスパーゼ-3レベルで、カスパーゼ-8にカスパーゼ-3のプロセシングを誘導させ、しかし部分的にプロセシングされた酵素に直接結合しそして阻害することによって次の自己触媒性成熟化を妨げることにより、カスパーゼ-8アポトーシス経路を阻害する。これらの結果はまた、XIAPの存在下で、ほとんどチモーゲン形態で残留するカスパーゼ-6およびカスパーゼ-7が、カスパーゼ-8アポトーシス経路においてカスパーゼ-3の下流に存在し得ることを示す。
【0105】
図2Cに示すように、カスパーゼ-8およびシトクロムcは、独立してプロカスパーゼ-3を活性化し得る。各経路は、異なる点でXIAPにより阻害される。上に記載の結果は、XIAPが、カスパーゼ-3を直接阻害し、それにより、下流のカスパーゼ-6およびカスパーゼ-7の活性化を防ぐことで、カスパーゼ-8誘導性アポトーシスプログラムをブロックすることを示す。上記の結果はまた、XIAPが、シトクロムcアポトーシスプログラムにおいて、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6およびカスパーゼ-7の上流にある別のプロテアーゼを阻害することを示す。
【0106】
図2Aに示すシトクロムcおよびカスパーゼ-8処理抽出物におけるプロカスパーゼ-3、-6および-7プロセシングのXIAP媒介性阻害については、dATP(1mM)と共にシトクロムc(10μM)または活性カスパーゼ-8(0.1μM)を、293細胞由来のサイトゾル抽出物に、GST-XIAP(0.2μM)の存在または非存在下で加えた。抽出物を30℃で1時間インキュベートし、次いでカスパーゼ-3のチモーゲンおよびラージサブユニットについて、あるいはカスパーゼ-7およびカスパーゼ-6のチモーゲン形態についてイムノブロット分析により分析した。また、幾つかの分析については、GST-XIAPを含む抽出物サンプルをグルタチオン-Sepharoseビーズとともにインキュベートした。生じた結合タンパク質をSDS-PAGEおよび抗カスパーゼ-3抗血清を使用するイムノブロッティングにより分析した。GSTおよび他のコントロールGST融合タンパク質を用いる実験において、カスパーゼプロセシングおよびカスパーゼ結合の阻害は、いずれも観察されなかった。
【0107】
GST-XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2を、記載(Royら、EMBOJ.16:6914-6925(1997))のように、発現させ、精製した。これらの実験に使用したコントロールGSTタンパク質および以下のものは、GST非融合体、種々のGST融合体(例えば、GST-CD40、GST-Bcl-2、GST-TRAF-3、およびGST-NAIP融合タンパク質(ここで、NAIPタンパク質フラグメントは、円偏光二色性により測定されるように、正確に折りたたまれない))を含んだ。
【0108】
GST「プルダウン」アッセイを以下のように実施した。U937または293細胞を、メチオニン非含有のRPMIまたは透析した5%FBSおよび50μCi/ml35S-L-メチオニンを含むDMEM中で3時間培養した後、1%Triton-X100および1mMDTTを含むTBSで抽出した。溶解物にグルタチオン-GSTビーズを添加し、4℃で1時間インキュベートすることにより前透明化した。次に、グルタチオンビーズを遠心分離により除去し、1%Triton-100および1mM DTTを含むTBSで二回洗浄した。結合されたタンパク質をSDS-PAGEゲルで分離した。
【0109】
図2Bのアポトーシス活性の測定については、60mmディッシュの293細胞を6μgのpcDNA-myc-タグコントロールまたはpcDNA-myc-XIAPプラスミドおよび2μgのpCMV5またはpCMV5-FasプラスミドDNAのいずれかで一過性にトランスフェクトした。すべてのトランスフェクト物は、マーカーとして0.5μgのpEGFPを含み、全DNA含有量について規格化した。アポトーシス形態およびアポトーシスと一致する核変化を有するGFPポジティブ細胞の割合を、36時間でDAPI染色により算出した(平均値+SD;n=3)。あるいは、細胞溶解物を調製し、そして抗mycモノクローナル抗体をプロテインG-Sepharoseと共に使用して免疫沈降物を集め、次いで抗カスパーゼ-3抗血清を使用するSDS-PAGEイムノブロットアッセイ(Krajewskaら、前出、1997)を行い、部分的にプロセシングされたカスパーゼ-3のXIAP結合性p24イソ型を明らかにした。レーンは、(1)コントロールプラスミド;(2)myc-XIAP;(3)Fas+mycコントロール;および(4)Fas+myc-XIAPでトランスフェクトした細胞に相当する。
【0110】
アポトーシスアッセイを以下の通り、実施した。293細胞を上記のようにトランスフェクトした。ただし、0.5μgのpEGFPプラスミドDNAを含有させた。浮遊細胞および粘着細胞の両方を24〜36時間後に回収し、アポトーシス形態を示すGFPポジティブ細胞の割合を、0.1mg/mlDAPIで染色することにより決定した(Royら、前出、1997)。
【0111】
同時免疫沈降およびイムノブロットアッセイを次の通り実施した。ヒト胚性腎293T細胞を、10%ウシ胎児血清、1mM L-グルタミンおよび抗生物質を補充したDMEM中で維持した。2×106細胞を10mmディッシュに播種し、24時間後に、リン酸カルシウム沈降法(Royら、前出、1997)によって、2μgのpFLAG-CMV2-カスパーゼ-9またはpCMV-Fasのいずれか、および6〜8μgのpcDNA3myc-XIAP、pcDNA3myc-c-IAP-1、pcDNA3myc-c-IAP-2、またはpcDNA3mycコントロールプラスミドDNAのいずれかを用いて、一過性に同時トランスフェクトした。24〜48時間後に細胞を遠心分離により集め、氷冷PBSで洗浄した後、溶解緩衝液(10mM Hepes,142mM KCl,5mM MgCl2,1mM EGTA,0.2% NP-40)で20分間溶解した。溶解物を16,000×gで30分間遠心分離して透明化した。Mycタグ化IAPタンパク質を、プロテインG-Sepharose(Santa Cruz)上に固定化した40μlの抗myc 9E10抗体で2時間、免疫沈降した。免疫沈降物を溶解緩衝液で3回洗浄し、結合したタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、FLAGエピトープ(Kodak,Inc.)、mycエピトープ、またはカスパーゼ-3に特異的な抗体を使用して、イムノブロッティングにより分析した。
【0112】
カスパーゼのイムノブロッティングを、上記のように、タンパク質について細胞溶解物を規格化した後、750mM Tris/12%ポリアクリルアミドゲルを使用して行った。カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、およびカスパーゼ-7に特異的な抗血清を先に記載のように調製した(Krajewskiら、前出、1997;Orthら、前出、1996;Srinivasulaら、J.Biol.Chem.271:27099-27106(1996))。
【0113】
実施例VI
IAPは、シトクロムc処理サイトゾル抽出物においてカスパーゼ-9と結合する
本実施例は、XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2がカスパーゼ-9のチモーゲンと結合し得ることを実証する。
【0114】
XIAPがシトクロムc経路において阻害するプロテアーゼを同定するために、サイトゾル抽出物を35S-L-メチオニンの存在下で培養した293細胞から調製した。次に、GST-XIAPまたはGST-TRAF-3などの種々のコントロールGSTタンパク質を、代謝的に標識した抽出物に添加し、次いで、グルタチオン-Sepharoseを使用して回収した。図3Aに示すように、結合されたタンパク質をSDS-PAGEで分離することにより、GST-XIAPと特異的に結合した約50kDaの35S標識タンパク質が認められた。
【0115】
二つの公知カスパーゼ、すなわち、カスパーゼ-2およびカスパーゼ-9は、約50kDaの分子量を有する。カスパーゼ-2は、シトクロム含有抽出物中で活性化されないようである(Royら、前出、1997)。カスパーゼ-9がXIAPと結合し得るかどうかをアッセイするために、35S-L-メチオニンの存在下で、プロカスパーゼ-9をインビトロで翻訳し、GST-XIAP、GST-c-IAP-1、GST-c-IAP-2、またはシトクロムcによるカスパーゼ活性化を防ぐことができないGSTコントロールタンパク質とともにインキュベートした(Royら、前出、1997)。GST-コントロールタンパク質以外のGST-XIAP、GST-c-IAP-1およびGST-c-IAP-2の各々は、プロカスパーゼ-9と結合した(図3B)。まとめると、以上のこれらの結果は、XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2が、カスパーゼ-9のチモーゲンと結合し得ることを示す。対照的に、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性型のみがこれらのIAPに結合する(Royら、前出、1997)。
【0116】
図3Aに示す結果については、GST-XIAPを、35S-L-メチオニン含有培地で培養したU937細胞の溶解物中でインキュベートした。溶解物を、GST、GST-TRAF-3(1〜357)またはGST-XIAPとともに、4℃で1.5時間インキュベートした。タンパク質をSDS-PAGEゲル上で分離し、オートラジオグラフィーにより分析した。アルタリスクは、ビーズによって非特異的に回収されたバックグラウンドバンドを示し、そしてローディングコントロールとして働く。類似した結果が、293細胞由来の抽出物を使用して得られた。
【0117】
図3Bに示される結果については、約2μMのGST-XIAP、c-IAP-1、c-IAP-2、またはグルタチオン-Sepharose上に固定化されたGST-コントロール融合タンパク質を、インビトロ翻訳された35S標識プロカスパーゼ-9を含有する10μlの網状赤血球溶解物とともにインキュベートした。徹底的に洗浄した後、結合したタンパク質を、SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析した。ポジティブコントロールとして、1.5μlのインビトロ翻訳された反応物(IVT)を分析した。
【0118】
実施例VII
IAPはシトクロムcで処理したサイトゾル抽出物においてプロカスパーゼ-9プロセシングをブロックする
本実施例は、XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2が、シトクロムcで処理したサイトゾル抽出物において、プロカスパーゼ-9プロセシングをブロックし得ることを実証する。
【0119】
XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2がインビトロでプロカスパーゼ-9に結合し得るという観察に基づいて、これらのタンパク質を、プロカスパーゼ-9の活性化を阻害する能力についてアッセイした。シトクロムcを最初にサイトゾルに添加し、インビトロで翻訳した35S-プロカスパーゼ-9のプロセシングをIAPの存在下および非存在下で分析した。図4に示すように、サイトゾル抽出物とインキュベートした場合、プロカスパーゼ-9は、プロセシングされずに残るが、シトクロムcの添加により、プロカスパーゼ-9は、酵素の活性サブユニットに特有なフラグメントに切断された。XIAPを添加すると、プロカスパーゼ-9のプロセシングはほぼ完全に阻止され、より低い程度ではあるが、c-IAP-1およびc-IAP-2もまた、プロカスパーゼ-9プロセシングを阻害した。これらの結果は、プロカスパーゼ-9が、XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2により結合されるだけでなく、プロカスパーゼ-9のプロセシングもまた、これらのIAPファミリーのタンパク質により阻害されることを実証する。
【0120】
図4に示す結果については、インビトロで翻訳した35S標識プロカスパーゼ-9を293細胞由来のサイトゾル抽出物に添加した後、0.2μMGST-IAPタンパク質またはGSTコントロールタンパク質の存在下または非存在下、10μMシトクロムcおよび1mM dATPと共に(レーン2〜6)、または無しで(レーン1)30℃で30分間インキュベートした。次いで、プロカスパーゼ-9のシトクロムc誘導性プロセシングをSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによりモニターした。カスパーゼ-9のプロセシングされたサブユニットの位置を図4に星印で示す。
【0121】
実施例VIII
インビトロでのカスパーゼ-9プロセシングの再構築
本実施例は、IAPファミリーのタンパク質がインビトロの再構築系においてカスパーゼ-9のプロセシングを阻害し得ることを実証する。
【0122】
インビトロでの再構築系を用いて、プロカスパーゼ-9のシトクロムc誘導性プロセシングに及ぼすIAPファミリーのタンパク質の効果をさらに分析した。インビトロの再構築系は、シトクロムcおよびdATP、インビトロで翻訳したアポトーシスプロテアーゼ活性化因子-1(Apaf-1)および35S標識カスパーゼ-9チモーゲンを含んだ。図5Aに示すように、Apaf-1とプロカスパーゼ-9をインキュベートしても、シトクロムcおよびdATPもまた存在しない限り、プロセシングは生じなかった。XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2を、シトクロムcおよびdATPと共にApaf-1を含む反応物へ添加することにより、プロカスパーゼ-9のプロセシングが完全にブロックされた。逆に、種々の対照GST-融合タンパク質は、これらの条件下でプロカスパーゼ-9のシトクロムc誘導性切断を阻害できなかった。シトクロムcおよびdATPを、インビトロで翻訳したApaf-1の非存在下、プロカスパーゼ-9に添加すると、そのチモーゲンのプロセシングは認められなかった(図5A)。逆に、Apaf-1をシトクロムcおよびカスパーゼ-3のプロ形態とともにプロカスパーゼ-9の非存在下でインキュベートすることにより、プロカスパーゼ-3は、活性化されなかった。これは、この系におけるカスパーゼ-9の必要条件を確立し、これは、Liら、(前出)1997;Liuら、(前出) 1996;およびZouら、(前出) 1997の結果と一致する。
【0123】
IAPとは異なり、組換えBcl-XLタンパク質は、Apaf-1、シトクロムcおよびdATPの組み合わせにより誘導されたプロカスパーゼ-9のインビトロでのプロセシングを抑制しなかった(図5B)。また、Bcl-XLは、サイトゾルにおけるカスパーゼのシトクロムc誘導性活性化を阻害しなかった(示さない)。しかし、組換えBcl-XLタンパク質の同じ調製物は、KCl負荷リポソームを使用するイオンチャネル形成アッセイ(Schendelら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA94:5113-5118(1997))において十分に機能的であり、他のBcl-2ファミリータンパク質との二量体化時に有用であった。従って、Bcl-XLは、これらのインビトロ条件下でシトクロムcおよびApaf-1により媒介されるプロカスパーゼ-9プロセシングをブロックしない。これらの結果は、Bcl-XLおよびBcl-2が、シトクロムc放出レベルの上流にあるか、またはそのレベルにあり、先の結果(Kharbandaら、前出、1997;およびKluckら、EMBOJ.16:4639-4649(1997))と一致することを示す。
【0124】
図5Aおよび図5Bに示す結果については、インビトロで翻訳した35S標識プロカスパーゼ-9およびApaf-1を個々に、または10μMシトクロムcおよび1mMdATPと共にインキュベートした。次に、0.1μMの指示されたGST-IAPまたは0.1μMのBcl-XLの非存在下または存在下におけるプロカスパーゼ-9のプロセシングをSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによりモニターした。星印は、プロセシングされたカスパーゼ-9のラージサブユニットの位置を示す。類似の結果が、2μMものBcl-XLをシトクロムc刺激されたサイトゾル抽出物に添加した場合に得られた。
【0125】
インビトロでカスパーゼ-9の活性化をアッセイするために、プロカスパーゼ-9(pET21(b)-Mch-6)またはApaf-1(pcDNA3-Apaf-1)をコードするcDNAを含む1μgのプラスミドを、製造者の指示に従って、カップリング転写/翻訳TNTキット(Promega)を使用し、[35S]-L-メチオニンの存在下で、インビトロで転写し、翻訳させた。タンパク質をBio-spinP-6カラム(BioRad)で脱塩し、緩衝液Aと交換した。カスパーゼ-9(2μl)をApaf-1(6μl)およびシトクロムc/dATPと混合して、緩衝液Aで全量を10μlにするか、あるいはGST-XIAP、GST-c-IAP-1、GST-c-IAP-2またはGST-NAIPで等容量にし、30℃で1時間インキュベートした。反応物をSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析した。いくつかの実験については、インビトロで翻訳したHis6-カスパーゼ-9を金属クロマトグラフィーにより精製した。
【0126】
実施例IX
XIAPは活性なカスパーゼ-9を阻害する
本実施例は、XIAPがカスパーゼ-9の直接的なインヒビターであることを実証する。
【0127】
シトクロムcおよびdATP処理サイトゾルにおけるプロカスパーゼ-9のプロセシングをブロックするXIAPの能力を、Ac-DEVD-fmkおよびzVAD-fmkと比較した。Ac-DEVD-fmkおよびzVAD-fmkは、2つの十分に特徴づけられたカスパーゼインヒビターであり、これらは、細胞死におけるカスパーゼの役割に取り組むために広範囲に使用されてきた(JacobsonおよびEvan,Curr.Biol.4:337-340(1994);MartinおよびGreen,前出、1995;Patelら、FASEBJ.10:587-597(1996)に概説)。図6に示されるように、XIAPは、Ac-DEVD-fmkまたはzVAD-fmkのいずれよりも強力な、サイトゾル抽出物におけるプロカスパーゼ-9のシトクロムc媒介性プロセシングのインヒビターである。これらのアッセイにおいて、プロカスパーゼ-9のプロセシングを完全に阻止するために、組換えXIAPは、代表的に、0.2μM未満で十分であったが、同様の阻害に、少なくとも5μMのzVAD-fmkまたはAc-DEVD-fmkが必要であった。また、XIAPは、これらのアッセイにおいてプロカスパーゼ-9のシトクロムc誘導性プロセシングの阻害について、バキュロウイルスp35タンパク質よりも約5倍強力であった。
【0128】
組換え活性カスパーゼ-9をE.coli抽出物から精製し、その活性を直接阻害する能力についてIAPをアッセイした。組換えカスパーゼ-9は、希釈に極めて感受性であることが認められた。さらに、カスパーゼアッセイに代表的に使用される蛍光原性テトラペプチドは、この酵素のための不十分な基質であることを確認した。従って、組換えプロカスパーゼ-3をカスパーゼ-9の活性をモニターする基質として使用した。
【0129】
カスパーゼ-9と精製したプロカスパーゼ-3とのインキュベーションは、イムノブロット分析により決定された、プロカスパーゼ-3のタンパク質分解プロセシングを生じた(図7A)。カスパーゼ-9に対して等モル濃度のXIAPを添加すると、プロカスパーゼ-3の切断は、強力に阻害された。また、カスパーゼ-9の活性を、インビトロでのカスパーゼ-3活性化の結果として、Ac-DEVD-AFCの加水分解に基づく連結反応において測定した。XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2は、それぞれプロカスパーゼ-3の活性化およびテトラペプチド基質の切断を効率的に阻害したが、種々のGSTコントロールタンパク質には、カスパーゼ-9によるプロカスパーゼ-3の活性化に及ぼす有意な効果はなかった(図7B)。
【0130】
活性カスパーゼ-3は、プロカスパーゼ-9を切断し、活性化することが公知である(Srinivasulaら、J.Biol.Chem.271:27099-27106(1996))。これらの実験において、フィードバックループの可能性を除くために、XIAPを、基質として、インビトロで翻訳し、精製した[35S]プロカスパーゼ-9を使用し、細菌的に生成した活性カスパーゼ-9の阻害について試験した。図7Cに示されるように、GST-XIAPタンパク質は、これらのインビトロ反応において、プロカスパーゼ-9のプロセシングを強力に阻害したが、GSTコントロールタンパク質には、ほとんど効果がなかった。要するに、これらの結果は、XIAPがカスパーゼ-9の直接的なインヒビターであることを証明する。
【0131】
Ac-DEVD-fmk、zVAD-fmkおよびXIAPによるプロカスパーゼ-9の阻害を次のように比較した。インビトロで翻訳した35S標識プロカスパーゼ-9を、10μMシトクロムcおよび1mMdATPを含む293細胞由来のサイトゾル抽出物に添加した。試料を指示された濃度のインヒビターの存在下、30℃で30分間インキュベートした。タンパク質をSDS-PAGEゲル上で分離し、直ちに乾燥し、フィルムに暴露した。
【0132】
図7に示す結果については、活性カスパーゼ-9を細菌で生成し、His6標識タンパク質として精製した。細菌で生成したカスパーゼ-3の精製組換えチモーゲン型のプロセシングおよび活性をモニターすることにより、カスパーゼ-9の活性を測定した。活性カスパーゼ-9(0.1μM)をGST-XIAP(0.1μM)の存在または非存在下、プロカスパーゼ-3(0.5μM)とインキュベートした。活性カスパーゼ-9の2つの独立した調製物について実験を行った。ついで、試料をイムノブロット分析により、プロカスパーゼ-3プロセシングについて分析した。星印は、カスパーゼ-3の大きなサブユニットのプロセシング型を示す。同時に、DEVD-AFCからのAFC蛍光体の遊離について試料をアッセイした。活性は、二つの活性カスパーゼ-9調製物の一つを任意に100%とした。
【0133】
完全長N末端標識カスパーゼ-9をpcDNA3(Duanら、J.Biol.Chem.,271:16720-4(1996),Dr.Vishva Dixitにより提供された)からpET-23dのNcol-Xhol(鈍)部位に、Ncol-Xbal(鈍)フラグメントとしてサブクローン化した。得られたベクターをBL21(DE3)に導入した後、0.2mMIPTGにより、O.D.(600nm)=0.6で4時間誘導したとき、完全にプロセシングされた酵素が得られた。カスパーゼ-3のチモーゲン型を、発現時間を30分間まで減少させた場合を除いて、先に記載したような発現によって得た。。プロカスパーゼ-3およびプロセシングされたカスパーゼ-9を、製造者が推奨する方法に従い、Ni-キレートSepharose(Pharmacia,Sweden)クロマトグラフィーを使用し、10mMTris、100mM NaCl、pH8.0において0〜200mMのイミダゾール勾配によって溶出することで単離した。精製した酵素の濃度を、Edelhoch関連(relationship)(Edelhoch,1967)から算出したカスパーゼのモル吸光係数;カスパーゼ-3(e280=26000M-1cm-1)、カスパーゼ-9(e280=30010M-1cm-1)に基づき、280nmの吸光度から決定した。
【0134】
図7Cに示される結果については、プロカスパーゼ-9を35S-L-メチオニンの存在下で、網状赤血球溶解物においてインビトロ翻訳させ、次いで金属クロマトグラフィーにより精製した。得られた試料(2μl)を、直ちに等容量のLaemmli緩衝液中で煮沸するか、あるいは単独または0.1μM組換え型活性カスパーゼ-9と共に、0.1μMGST-XIAPまたはGSTコントロールタンパク質の存在または非存在下、30℃で1時間インキュベートした。タンパク質をSDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析した。星印は、カスパーゼ-9のプロセシング型を示す。組換えGSTコントロールタンパク質は、これらのアッセイにおいて、カスパーゼ-9活性に及ぼす効果がほとんどないか、全くなかった。
【0135】
実施例X
XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2は無傷細胞においてプロカスパーゼ-3のカスパーゼ-9誘導性プロセシングを阻害する
本実施例は、インビトロにおけるように、無傷細胞において、IAPファミリータンパク質が、カスパーゼ-9活性を阻害し得ることを証明する。
【0136】
インビトロでのプロカスパーゼ-9の活性化に及ぼすXIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2の阻害作用を考慮して、無傷細胞におけるカスパーゼ-9誘導性アポトーシスに対する保護能力およびプロカスパーゼ-3のプロセシングなど下流の事象を阻害する能力について、IAPファミリータンパク質をアッセイした。インビボでのカスパーゼの過剰発現により、アポトーシスすることがよくある(JacobsonおよびEvan,前出、1994;Martinら、前出、1995;Patelら、(前出)1996に概説される)。従って、インビボでのカスパーゼ-9の活性化に及ぼすIAPの作用を検討するため、293T細胞をエピトープ標識FLAG-カスパーゼ-9単独またはmyc標識IAPとの組み合わせによりトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後、溶解物を回収し、プロカスパーゼ-3のタンパク質分解プロセシングをイムノブロット分析により測定した。図8Aに示すように、カスパーゼ-9の過剰発現により、カスパーゼ-3チモーゲンの完全な転換が生じ、Ac-DEVD-AFC切断活性が増加した(図8B)。逆に、プロカスパーゼ-3のカスパーゼ-9誘導性タンパク質分解切断およびAc-DEVD-AFC切断活性は、XIAP、c-IAP-1またはc-IAP-2で同時トランスフェクトした293T細胞において著明に減少した。XIAP、c-IAP-1またはc-IAP-2により観察されたプロカスパーゼ-3プロセシングの阻害は、アポトーシス293T細胞数の減少を伴った(図8C)。アポトーシスよりも大きなDEVD-切断活性の抑制は、IAPファミリータンパク質の短い半減期の結果であるカスパーゼ-9誘導性プロテアーゼの活性化により得る。
【0137】
カスパーゼ-9のチモーゲン型がインビトロでXIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2に結合すると仮定して、IAPファミリータンパク質を、インビボでカスパーゼ-9に結合する能力についてアッセイした。Flagプロカスパーゼ-9およびmycエピトープ標識IAPタンパク質で同時トランスフェクトした293T細胞を使用して、抗myc抗体で免疫沈降を行った。得られた免疫複合体を、Flagエピトープに特異的な抗血清を使用して、イムノブロッティングにより分析した。図8Dに示すように、カスパーゼ-9のチモーゲン型は、XIAP、c-IAP-1またはc-IAP-2と共免疫沈降したが、種々のコントロールタンパク質とは共免疫沈降しなかった(第8図)。これらの結果は、XIAP、c-IAP-1およびc-IAP-2がそれぞれ、インビボでプロカスパーゼ-9に結合し、その活性化を防ぐことにより、プロカスパーゼ-3の活性化をブロックし、結果的にアポトーシスをブロックすることを示す。
【0138】
図8に示される結果については、293T細胞をFLAG標識プロカスパーゼ-9またはpcDNA-myc標識コントロールプラスミドDNAで単独か、あるいはmyc標識XIAP、c-IAP-1、c-IAP-2またはmyc標識コントロールタンパク質と組み合わせてトランスフェクトした。16時間後、(A)カスパーゼ-3のイムノブロット分析または(B)DEVD-AFCのいずれかについて、細胞溶解物を調製した。プロカスパーゼ-3のイムノブロット分析を、IAPの非存在または存在下、プロカスパーゼ-9を過剰発現させることにより、アポトーシスが誘導される細胞由来の溶解物で行った。DEVD-AFC分析については、溶解物を総タンパク質含有量について統一化し、上記のように、DEVD-AFCの加水分解についてアッセイした。トランスフェクションの1.5〜2日後に、pGFPおよびFLAGコントロールまたはFLAGプロカスパーゼ-9、ならびにpcDNA3-myc標識コントロールプラスミド、pcDNA3-myc-XIAP、pcDNA3-myc-IAP-1またはpcDNA3-myc-c-IAP-2のいずれかで同時トランスフェクトした293T細胞について、DAPI染色(平均値±SE;n=3)により相対的アポトーシスをスコア付けした。パネルDにおいては、トランスフェクトの約16時間後にプロテインG-Sepharoseに固定化した抗myc抗体でIAPタンパク質を免疫沈降させた。抗FLAG抗体によるイムノブロット分析を、得られた免疫複合体におけるプロカスパーゼ-9の検出に用いた。また、同じ細胞からの溶解物(50μg/レーン)を抗FLAGおよび抗myc抗体を使用するイムノブロッティングにより分析し、それぞれIAPおよびカスパーゼの発現を確認した。
【0139】
上記に提供した、括弧内であろうがなかろうが、雑誌論文、参考文献および特許、引用物はすべて、先に述べたにせよ、述べなかったにせよ、それら全体において本明細書中で援用される。
【0140】
本発明を上に提供した実施例を参照して説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが理解されるべきである。従って、本発明は、請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1は、サイトゾル抽出物中での、カスパーゼ-8ならびにプロカスパーゼ-3のシトクロムcにより誘導されるプロセシングおよび活性化の、CrmAおよびXIAPの阻害を示す。(A)チモーゲンおよびカスパーゼ-3ラージサブユニットに特異的な抗血清を用いた、示された薬剤で処理された293細胞の細胞質抽出物のウェスタン分析。分子量標準は、パネルAの右に示される。(B)パネルAにおいて分析された293細胞の細胞質抽出物の相対的DEVD-AFC切断活性。データは、平均+/-標準誤差(n=2)を示す。
【図2】図2は、シトクロムcおよびカスパーゼ-8処理抽出物におけるプロカスパーゼ-3、-6、および-7のプロセシングのXIAP媒介性阻害を示す。(A)チモーゲンおよびカスパーゼ-3ラージサブユニットに特異的な抗血清(左上パネル)、またはカスパーゼ-7もしくは-6のチモーゲン形態に特異的な抗血清(左下パネル)を用いたウェスタン分析。右上パネルは、グルタチオン-SepharoseビーズとインキュベートされたGST-XIAPを含む抽出物の抗カスパーゼ-3抗血清を用いたイムノブロッティングを示す。レーン1:グルタチオンビーズは、シトクロムc、dATP、およびGST-XIAPを含む抽出物とインキュベートされた。レーン2:グルタチオンビーズは、カスパーゼ-8およびGST-XIAPを含む抽出物とインキュベートされた。レーン3:GST-XIAPグルタチオンビーズは、シトクロムcおよびdATPで前処理された抽出物とインキュベートされた。(B)36時間でDAPI染色により数えられたアポトーシスと一致する、アポトーシス形態および核変化を有するグリーン蛍光タンパク質陽性293細胞のパーセンテージ(平均+標準偏差;n=3)。右パネルは、プロテインG-Sepharoseと共に抗mycモノクローナル抗体を用いた細胞溶解物の免疫沈降、それに続く抗カスパーゼ-3抗血清を用いたSDS-PAGEイムノブロット分析を示す。レーン1:コントロールプラスミド。レーン2:myc-XIAP。レーン3:Fasおよびmyc-コントロール。レーン4:Fas+myc-XIAP。(c)カスパーゼ-8またはシトクロムcにより誘導されるプロカスパーゼ-3、-6、および-7活性化のいずれかのXIAP媒介性阻害の模式図。
【図3】図3は、プロカスパーゼ-9のXIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2への結合を示す。(A)GST、GST-TRAF-3(1-357)またはGST-XIAPとインキュベートされた35S-L-メチオニン標識U937細胞溶解物のSDS-PAGEおよびオートラジオグラフ分析。星印は、非特異的にビーズで回収され、そしてローディングのコントロールとして役立つバックグラウンドバンドを示す。(B)グルタチオン-Sepharose上に固定化されたGST-XIAP、c-IAP-1、c-IAP-2、またはGSTコントロール融合タンパク質を用いた、インビトロ翻訳された35S-標識プロカスパーゼ-9を含む網状赤血球溶解物のSDS-PAGEおよびオートラジオグラフ分析。コントロールとして、インビトロ翻訳された反応物(IVT)1.5μlがはるか右のレーンに含まれる。
【図4】図4は、XIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2によるシトクロムc誘導カスパーゼ-9プロセシングの阻害を示す。293細胞サイトゾル抽出物に添加され、次いで、示されたGST-IAPまたはコントロールGSTタンパク質の存在下または非存在下で、シトクロムcおよびdATPと共に(レーン2〜6)またはシトクロムcおよびdATPを伴わずに(レーン1)インキュベートされた、インビトロ翻訳された35S-標識プロカスパーゼ-9のSDS-PAGEおよびオートラジオグラフ分析が示される。カスパーゼ-9のプロセシングされたサブユニットの位置は、星印により示される。
【図5】図5は、プロカスパーゼ-9プロセシングが、Apaf-1およびシトクロムcを必要とし、そしてXIAP、c-IAP-1、およびc-IAP-2により阻害されることを示す。インビトロ翻訳された35S-標識プロカスパーゼ-9およびApaf-1は、シトクロムcおよびdATPと個々にまたは共にインキュベートされた。(A)SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによりモニターされたGST-IAP非存在下または存在下でのプロカスパーゼ-9のプロセシング。(B)SDS-PAGEおよびオートラジオグラフィーによりモニターされたBcl-XLの非存在下または存在下でのプロカスパーゼ-9のプロセシング。星印は、カスパーゼ-9のプロセシングされたラージサブユニットの位置を示す。
【図6】図6は、Ac-DEVD-fmk、zVAD-fmk、およびXIAPによるプロカスパーゼ-9阻害の比較を示す。シトクロムcおよびdATPで処理された293細胞由来サイトゾル抽出物に添加され、示された濃度のインヒビターの存在下でインキュベートされた、インビトロ翻訳された35S-標識プロカスパーゼ-9のSDS-PAGEおよびオートラジオグラフ分析が示される。星印は、カスパーゼ-9のプロセシングされたラージサブユニットを示す。
【図7】図7は、XIAPによる精製活性カスパーゼ-9の阻害を示す。(A)精製His6タグ化活性カスパーゼ-9またはGST-XIAPの存在下または非存在下での、カスパーゼ-3の精製組換えチモーゲン形態のイムノブロット分析。星印は、カスパーゼ-3ラージサブユニットのプロセシングされた形態を示す。(B)Aにおいて分析された同じサンプルのDEVD-AFCからのAFC発蛍光団の放出。活性カスパーゼ-9の2つの分析された調製物のうちの1つ活性を、任意に100%と示した。(C)網状赤血球溶解物においてインビトロ翻訳され、金属クロマトグラフィーにより精製され、Laemmli緩衝液中で煮沸され、そしてGST-XIAPまたはGSTコントロールタンパク質と共にまたは伴わずに組換え活性カスパーゼ-9の存在下または非存在下でインキュベートされた、35S-L-メチオニン標識プロカスパーゼ-9のSDS-PAGEおよびオートラジオグラフ分析。星印は、カスパーゼ-9のプロセシング形態を示す。
【図8】図8は、XIAP、c-IAP-1、c-IAP-2が、インビボでプロカスパーゼ-9に結合し、そしてカスパーゼ-3のカスパーゼ-9誘導プロセシングを阻害することを示す。293T細胞は、FLAGタグ化プロカスパーゼ-9もしくはpcDNA-myc-タグ化コントロールプラスミドDNA単独で、またはmycタグ化XIAP、c-IAP-1、c-IAP-2もしくはmycタグ化コントロールタンパク質とを組み合せてのいずれかでトランスフェクトされた。プロカスパーゼ-3のイムノブロット分析は、プロカスパーゼ-9を過剰発現させることによりアポトーシスを受けるように誘導された細胞(IAPの非存在下または存在下)に由来する溶解物を用いて行われた。(B)総タンパク質含有量について規格化された溶解物は、DEVD-AFCの加水分解についてアッセイされた。(C)pGFPおよびFLAGコントロール(−)またはFLAGプロカスパーゼ-9(+)、およびpcDNA3-myc-タグ化コントロールプラスミド、pcDNA3-myc-XIAP、pcDNA3-myc-IAP-1、またはpcDNA3-myc-c-IAP-2のいずれかと同時トランスフェクトされた293T細胞のDAPI染色により決定された相対的アポトーシス(平均±標準誤差;n=3)。(D)プロテインG-Sepharose上に固定化された抗myc抗体を用いたIAPタンパク質の免疫沈降、およびその後の、プロカスパーゼ-9検出のために抗FLAG抗体を用いたイムノブロット分析。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例に記載に方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−204308(P2006−204308A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102591(P2006−102591)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【分割の表示】特願平10−550356の分割
【原出願日】平成10年4月10日(1998.4.10)
【出願人】(591180152)ザ バーナム インスティテュート (8)
【Fターム(参考)】