説明

カゼイン由来のプロテアーゼ阻害ペプチド

本発明は、プロテアーゼ活性を阻害する、化合物、ペプチド、ペプチド模倣物及び医薬組成物と、病態を治療又は予防するためのこれらの化合物、ペプチド、ペプチド模倣物及び医薬組成物の使用とに関する。特に病態は歯周病であり得る。化合物、ペプチド及びペプチド模倣物は様々なカゼイン、例えばα−カゼイン、β−カゼイン及びκ−カゼインから誘導され得る。本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物及び医薬組成物が阻害するプロテアーゼ活性には、ジンジパインのプロテアーゼ活性が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテアーゼ活性を阻害する、化合物、ペプチド、ペプチド模倣物及び医薬組成物と、病態を治療又は予防するためのこれらの化合物、ペプチド、ペプチド模倣物及び医薬組成物の使用とに関する。特に病態は歯周病であり得る。
【0002】
本願はオーストラリア仮出願第2009902841号(この出願はその全体が参照により本明細書に援用される)に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
歯周病は歯の支持組織の細菌関連の炎症性疾患であり、重大な公衆衛生上の問題である。ヒト集団のほぼ全てが或る程度歯周病に罹患している。1989年の米国の歯科衛生調査によると、研究対象の集団の85%が歯周病を有するという報告があった。歯周病の主形態は歯肉縁での歯垢の非特異的な集積に関連する歯肉炎である。歯周病のより破壊的な形態(歯周炎)は特定のグラム陰性細菌による歯肉縁下感染に関連する。この疾患に関与する主な細菌性病原体は「レッドコンプレックス」としても知られ、該レッドコンプレックスは、タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)及びトレポネーマ・デンティコラ(Treponema denticola)からなる。ポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)は慢性歯周炎における主要病因である。
【0004】
ポルフィロモナス・ジンジバリスの主要病原性因子は、その細胞外システインプロテアーゼ(まとめてジンジパインとして知られる)であると考えられている。最も一般的なものはRgpA及びRgpB(Arg−ジンジパイン)及びKgp(Lys−ジンジパイン)である。Arg−ジンジパインはArg残基のカルボキシル側でタンパク質を切断し、Lys−ジンジパインはLys残基のカルボキシル側でタンパク質を切断する。
【0005】
これらの細胞結合型システインプロテアーゼは、増殖並びに生存及び病原性に関する他の内因性機能及び外因性機能のためのペプチドをもたらすタンパク質の分解に重要であると考えられている。生存及び病原性に関するこれらの機能の幾つかは、宿主組織への細菌付着、血球凝集、並びに細菌の細胞表面タンパク質及び分泌タンパク質のプロセシングであり得る。RgpA及びKgpの触媒ドメインは一連の非共有的に結合した配列関連の血液凝集因子/付着因子ドメインを有する細胞表面上で複合体として結合することができるが、RgpBはプロテアーゼ付着因子複合体の一部として存在するのではないことが分かっており、触媒ドメインのみからなっている可能性がある。
【0006】
ジンジパインを阻害することが見出されている天然由来型及び合成型の両方の分子が幾つか存在する。ジンジパインの天然阻害剤は生物活性産物のスクリーニングにより見出されており、幾つかの合成阻害剤はプロテアーゼ活性部位及びプロテアーゼ阻害剤の構造に基づき合成されている。例えば、Arg−ジンジパイン阻害剤及びLys−ジンジパイン阻害剤はクランベリー果汁[具体的にはポリフェノール、及び高分子量の非透析性成分(NDM)]、緑茶カテキン及びニンニクから単離されている。これらの阻害剤は、合成型であるか、生産するのにコストがかかるか、許容できない風味があるか、又はヒトでの使用が認可されていない等といった1つ又は複数の問題を抱えている。
【0007】
様々な疾患、特に歯周病の発病に関与する細菌酵素のより良好な又は代替となる阻害剤が必要とされている。
【0008】
本明細書における任意の従来技術に対する参考文献は、この従来技術がオーストラリアにおける共通の一般知識若しくは権限(jurisdiction)の一部を形成するという、又はこの従来技術が当業者によって関連があるものと確認され、理解され、かつみなされることを合理的に期待することができるという承認又は任意の形態の示唆ではなく、またそのように解釈すべきでないものとする。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、細菌酵素の活性を阻害、低減又は阻止する化合物、ペプチド又はペプチド模倣物であって、該化合物、該ペプチド又は該ペプチド模倣物がカゼイン又はその断片のアミノ酸配列を含む、細菌酵素の活性を阻害、低減又は阻止する化合物、ペプチド又はペプチド模倣物が提供される。1つの実施の形態では、酵素は細胞外プロテアーゼであり得る。特定の実施の形態では、細胞外プロテアーゼはシステインプロテアーゼ、例えばジンジパインである。或る特定の実施の形態では、プロテアーゼはRgpA、RgpB又はKgpである。
【0010】
或る特定の実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は、
Leu Pro Gln Glu Val Leu Asn Glu Asn Leu Leu Arg Phe(配列番号1)、
Tyr Gln Glu Pro Val Leu Gly Pro Val Arg Gly Pro Phe Pro Ile Ile Val(配列番号2)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号3)、
Tyr Gln Glu Pro Val Leu Gly Pro Val Arg Gly Pro Phe(配列番号4)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号5)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
更なる実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は、
Leu Pro Gln Gly Val Leu Asn Glu Asn Leu Leu Arg Phe(配列番号6)、
Leu Ser Pro Glu Val Leu Asn Glu Asn Leu Leu Arg Phe(配列番号7)、
Leu Ser Ser Glu Val Leu Asn Glu Asn Leu Leu Arg Phe(配列番号8)、
Tyr Gln Glu Pro Val Leu Gly Pro Val Arg Gly Pro Phe Pro Ile Leu Val(配列番号9)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu(配列番号10)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Ile Thr Glu(配列番号11)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr(O結合型GalNAc) Pro Thr Thr Glu(配列番号12)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr(O結合型GalNAc) Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号13)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr(O結合型GalNAc) Glu(配列番号14)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr(O結合型GalNAc) Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号15)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号16)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Val Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号17)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Val Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号18)、
Pro Pro Lys Lys Asp Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号19)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Ala Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号20)、
Pro Pro Lys Lys Asp Gln Asp Lys Thr Glu Val Pro Ala Ile Asn Thr Ile Ala Ser Ala Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号21)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu(配列番号22)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Ile Thr Glu(配列番号23)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr(O結合型GalNAc) Pro Thr Thr Glu(配列番号24)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr(O結合型GalNAc) Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号25)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr(O結合型GalNAc) Glu(配列番号26)、
Thr Glu Ile Pro Thr(O結合型GalNAc) Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号27)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号28)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Val Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号29)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Val Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号30)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Ala Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号31)、及び
Thr Glu Val Pro Ala Ile Asn Thr Ile Ala Ser Ala Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号32)
からなる更なる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
他の実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は配列番号1〜配列番号32における保存的置換体を含む。これらの置換は以下で更に記載する。
【0013】
或る特定の実施の形態では、本発明のペプチド又はペプチド模倣物の長さは少なくとも13アミノ酸である。他の実施の形態では、ペプチド又はペプチド模倣物の長さは70アミノ酸以下である。或る特定の実施の形態では、ペプチド又はペプチド模倣物の長さは15アミノ酸〜61アミノ酸である。他の実施の形態では、ペプチド又はペプチド模倣物の長さは20アミノ酸〜30アミノ酸である。
【0014】
更なる実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物はリン酸化又はグリコシル化されていない。別の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は翻訳後修飾されている。例えば、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物はリン酸化のみ、又はグリコシル化のみ、又はリン酸化及びグリコシル化の両方を受けていてもよい。1つ又は複数の残基がこのように修飾されていてもよい。
【0015】
特定の実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は、配列番号1〜配列番号32(端を含む)のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列からなるか、又はそれから本質的になる。これらの実施の形態では、配列番号1〜配列番号32、及び更なるアミノ酸残基を含む化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は、以下に記載のアッセイに従って求めることができるように、細菌酵素の活性を阻害、低減又は阻止する活性を示していれば、配列番号1〜配列番号32「から本質的になる」であろう。同様に、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は、以下に記載のアッセイに従って求めることができるように、細菌酵素の活性を阻害、低減又は阻止する活性を示していれば、対応する配列番号より短くても配列番号1〜配列番号32のうちの1つ「から本質的になる」。このようなときにはこれらの実施の形態は全長のカゼイン配列を含まない。
【0016】
他の実施の形態では、本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は、配列番号1〜配列番号32からなる群から選択されるアミノ酸配列と60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物はこのようなアミノ酸配列から本質的になる。幾つかの実施の形態では、該群は配列番号1〜配列番号5からなる。
【0017】
或る特定の実施の形態では、細菌酵素の活性を阻害、低減又は阻止する化合物、ペプチド又はペプチド模倣物であって、該化合物、該ペプチド又は該ペプチド模倣物がヘリックス構造を形成することが可能であるアミノ酸配列を含み、細菌酵素の活性を非競合的に阻害、低減又は阻止する、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物が提供される。
【0018】
他の実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は、酵素が基質と相互作用する場合、酵素、基質又は酵素及び基質の両方と結合すること等により、酵素が基質から生成物を生成するのを阻害、低減又は阻止する。
【0019】
別の実施の形態では、本発明は、必要とする患者の口腔においてポルフィロモナス・ジンジバリス酵素の活性を阻害、低減又は阻止するのに使用される治療用ペプチドであって、配列番号1、配列番号2及び配列番号3、又はそのグリコシル化変異体及びリン酸化変異体、並びにその欠失突然変異体及び置換突然変異体からなる群から選択される、治療用ペプチドを提供する。幾つかの実施の形態では、配列番号1の変異体及び突然変異体は、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群から選択される。幾つかの実施の形態では、配列番号2の変異体及び突然変異体は、配列番号4及び配列番号9からなる群から選択される。幾つかの実施の形態では、配列番号3の変異体及び突然変異体は、配列番号5及び配列番号10〜配列番号32からなる群から選択される。
【0020】
或る特定の実施の形態では、本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物と、薬学的に許容される担体とを含む、細菌酵素を阻害する組成物が提供される。幾つかの実施の形態では、組成物は二価カチオンを更に含む。
【0021】
1つの実施の形態では、1つ又は複数の病態を治療又は予防する方法であって、有効量の本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物を、必要とする被験体に投与することを含む、1つ又は複数の病態を治療又は予防する方法が提供される。1つの実施の形態では、化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物は被験体の歯茎に直接投与される。1つの実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物は、歯磨きペースト、歯磨き粉及び歯磨き液を含む歯磨き剤、洗口液、トローチ、チューイングガム、歯科用ペースト、歯肉マッサージクリーム、うがい錠剤、乳製品及び他の食品等の口に適用可能な組成物の一部であり得る。治療又は予防に好適な病態又は疾患の例としては歯周病及び齲蝕が挙げられる。ジンジパインの酵素活性により引き起こされる又はジンジパインの酵素活性に関連する任意の疾患又は病態は、本発明による治療又は予防に好適であり得る。
【0022】
治療を必要とする又は歯周病若しくは齲蝕を発症する危険性のある被験体は動物である。幾つかの実施の形態では、被験体はヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ又はウシである。
【0023】
別の実施の形態では、被験体において歯周病の症状を治療又は緩和する方法であって、本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物を被験体に投与することを含む、被験体において歯周病の症状を治療又は緩和する方法が提供される。
【0024】
幾つかの実施の形態によれば、細菌酵素を阻害する方法であって、酵素と、配列番号1〜配列番号5及びそれらにおける保存的置換体のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列、例えば配列番号1〜配列番号32及びそれと少なくとも60%同一である配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を含む組成物とを接触させることを含む、細菌酵素を阻害する方法が提供される。特定の実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物のアミノ酸配列は全長のカゼイン配列を含まない。これらの実施の形態のいずれかによれば、細菌酵素はジンジパインであってもよく、例えばジンジパインはポルフィロモナス・ジンジバリス由来である。
【0025】
これらの実施の形態のいずれかによれば、接触する工程は、組成物を、それを必要とする被験体(例えばヒト)、例えば歯周病若しくは齲蝕を治療する必要がある、又は歯周病若しくは齲蝕を発症する危険性のある被験体に投与することを含み得る。これらの実施の形態のいずれかによれば、該方法は歯周病又は齲蝕の症状を治療又は緩和するのに効果的であり得る。
【0026】
別の実施の形態では、本発明の方法は、抗炎症剤、ポルフィロモナス・ジンジバリス又はポルフィロモナス・ジンジバリスにより発現されるタンパク質と結合する抗体、抗生物質、及びバイオフィルム抑制剤からなる群から選択される作用物質を投与することを更に含む。抗生物質は、アモキシシリン、ドキシサイクリン及びメトロニダゾールからなる群から選択され得る。抗炎症剤は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む。NSAIDの例としてはシクロオキシゲナーゼを阻害する化合物が挙げられる。NSAIDの具体例としては、アスピリン、イブプロフェン及びナプロキセンが挙げられる。バイオフィルム抑制剤の一例はフマル酸レダクターゼの阻害剤、例えばオキサンテルである。
【0027】
別の実施の形態では、本発明は、歯周病及び/又は治療に好適であるとして本明細書中で特定された、他の病態の治療又は予防用の薬剤の調製における有効量の本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物の使用を提供する。
【0028】
本発明は、有効量の本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物と、薬学的に許容される担体とを含む、歯周病(及び/又は治療に好適であるとして上記で特定された、他の病態)の治療又は予防用の医薬組成物も提供する。組成物は、抗炎症剤、ポルフィロモナス・ジンジバリス又はポルフィロモナス・ジンジバリス由来のタンパク質と結合する抗体、抗生物質、及びバイオフィルム抑制剤からなる群から選択される作用物質を更に含むことができる。抗生物質は、アモキシシリン、ドキシサイクリン及びメトロニダゾールからなる群から選択され得る。
【0029】
幾つかの実施の形態によれば、被験体において細菌酵素を阻害するのに有効な量の細菌酵素を阻害するカゼイン又はその断片のアミノ酸配列、例えば配列番号1〜配列番号5及びそれらにおける保存的置換体のいずれか1つ、又は配列番号1〜配列番号32及びそれらと少なくとも60%同一である配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を含む医薬組成物が提供される。特定の実施の形態では、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物のアミノ酸配列は全長のカゼイン配列を含まない。
【0030】
これらの実施の形態のいずれかによれば、組成物は、二価カチオン、例えば亜鉛、並びに/又は抗炎症剤、抗生物質、バイオフィルム抑制剤、及びポルフィロモナス・ジンジバリス又はポルフィロモナス・ジンジバリスにより発現されるタンパク質と結合する抗体からなる群から選択される作用物質を更に含み得る。
【0031】
これらの実施の形態のいずれかによれば、組成物は歯茎への局所投与用に構築することができ、かつ/又は単位剤形で提供することができる。
【0032】
別の実施の形態では、本発明は、活性成分として本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を含む、歯周病(及び/又は治療に好適であるとして上記で特定された、他の病態)の治療又は予防用の組成物を提供する。組成物は二価カチオンを更に含むことができる。
【0033】
別の実施の形態では、本発明は、有効量の本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を主成分として含む医薬組成物を提供する。組成物は、例えば歯周病及び/又は治療に好適であるとして上記で特定された、他の病態の治療又は予防に使用することができる。幾つかの実施の形態では、組成物は二価カチオンを更に含む。
【0034】
別の実施の形態では、本発明は、歯周病及び/又は治療に好適であるとして上記で特定された、他の病態の治療又は予防に使用される本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を提供する。
【0035】
別の実施の形態では、本発明は、歯周病の治療又は予防に使用される、本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を含む組成物を提供する。幾つかの実施の形態では、組成物は二価カチオンを更に含む。
【0036】
更なる態様では、本発明は、(a)本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物と、(b)薬学的に許容される担体とを備える部品のキットを提供する。
【0037】
或る特定の実施の形態では、二価カチオンは、Zn2+、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Sn2+及びMn2+からなる群から選択される。また、二価カチオンはSnF及びCuFのようなフッ化物に関連するものであり得る。幾つかの実施の形態では、二価カチオンはCa2+又はZn2+である。
【0038】
或る特定の実施の形態では、二価カチオンと化合物、ペプチド又はペプチド模倣物との比は1.0:2.0〜1.0:10.0の範囲、例えば1.0:4.0の範囲である。
【0039】
本明細書で使用されるように、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「含む(comprise)」という用語及びその用語の変化形、例えば「含む("comprising", "comprises" and "comprised")」は、更なる添加物、構成要素、整数又は工程を排除することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】合成型のαS1−カゼイン(11〜23)
【化1】

ペプチド、β−カゼイン(193〜205)
【化2】

ペプチド、β−カゼイン(193〜209)
【化3】

ペプチド及びκ−カゼイン(109〜137)
【化4】

ペプチドの存在下におけるポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277の全細胞のArg特異的なタンパク質分解活性を示す図である。2つの別個の細菌培養物及び3回の技術的反復測定によりアッセイを実施した。アッセイにおける細胞の平均数は4.0×10cfu/mLである。
【図2】合成型のαS1−カゼイン(11〜23)
【化5】

ペプチド、β−カゼイン(193〜209)
【化6】

ペプチド及びκ−カゼイン(109〜137)
【化7】

ペプチドの存在下におけるポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277の全細胞のLys特異的なタンパク質分解活性を示す図である。2つの別個の細菌培養物及び3回の技術的反復測定によりアッセイを実施した。アッセイにおける細胞の平均数は4.0×10cfu/mLである。
【図3】100μMの合成型のカゼイン由来ペプチドの存在下における精製プロテアーゼ複合体のArg特異的なタンパク質分解活性
【化8】

及びLys特異的なタンパク質分解活性
【化9】

を示す図である。6回の技術的反復測定によりアッセイを実施した。
【図4】幾つかの濃度のκ−カゼイン(109〜137)の存在下における精製RgpBのタンパク質分解活性を示す図である。RgpBの濃度は0.23μg/mLである。
【図5】蛍光BSA基質(DQTM BSA)及び500μMのカゼインペプチドを用いて測定されたポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277の全細胞のArg特異的なプロテイナーゼ活性及びLys特異的なプロテイナーゼ活性を示す図である。κ−カゼイン(106〜169)は天然由来型であり、他のκ−カゼインペプチドは合成型であった。誤差バーを3つの技術的反復測定結果及び2つの生物学的反復測定結果の標準偏差として算出した。全てのペプチドが対照の値と有意に異なっていた(p<0.05)。κ−カゼイン(117〜123)及びκ−カゼイン(127〜137)は互いに有意に(p<0.05)異なっていないが、残りのペプチドとは有意に異なっている。κ−カゼイン(106〜169)はκ−カゼイン(106〜137)と有意に異なっていたが、κ−カゼイン(109〜137)又はκ−カゼイン(117〜137)とは有意に異なっていなかった。κ−カゼイン(106〜137)はκ−カゼイン(117〜137)を除く全てのペプチドと有意に異なっていた。κ−カゼイン(109〜137)はκ−カゼイン(106〜169)を除く全てのペプチドと有意に異なっていた。
【図6】アッセイにおける1mMのシステイン濃度での合成型のκ−カゼイン(109〜137)ペプチド及びZnClの存在下におけるポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277の全細胞のArg特異的なタンパク質分解活性を示す図である。3つの別個の細菌培養物及び4回の技術的反復測定によりアッセイを実施した。
【図7】アッセイにおける1mMのシステイン濃度での合成型のκ−カゼイン(109〜137)ペプチド及びZnClの存在下におけるポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277の全細胞のLys特異的なタンパク質分解活性を示す図である。2つの別個の細菌培養物及び3回の技術的反復測定によりアッセイを実施した。
【図8】アッセイにおける1mMのシステイン濃度での合成型のκ−カゼイン(109〜137)ペプチド及びZnClの存在下における精製プロテアーゼ複合体のArg特異的なタンパク質分解活性
【化10】

及びLys特異的なタンパク質分解活性
【化11】

を示す図である。6回の技術的反復測定によりアッセイを実施した。
【図9】アッセイにおける1mMのシステイン濃度での合成型のαS1−カゼイン(11〜23)ペプチド
【化12】

、β−カゼイン(193〜209)ペプチド
【化13】

及びZnClの存在下におけるポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277の全細胞のArg特異的なタンパク質分解活性を示す図である。2つの別個の細菌培養物及び3回の技術的反復測定によりアッセイを実施した。
【図10】アッセイにおける1mMのシステイン濃度での合成型のαS1−カゼイン(11〜23)ペプチド
【化14】

、β−カゼイン(193〜209)ペプチド
【化15】

及びZnClの存在下におけるポルフィロモナス・ジンジバリスATCC33277の全細胞のLys特異的なタンパク質分解活性を示す図である。2つの別個の細菌培養物及び3回の技術的反復測定によりアッセイを実施した。
【図11】0.15mM、0.25mM及び1.0mMの濃度でのBApNA基質を用いた0μM
【化16】

、25μM
【化17】

、50μM
【化18】

、75μM
【化19】

及び100μM
【化20】

の濃度でのκ−カゼイン(109〜137)ペプチドによる精製RgpBの阻害のラインウェーバー・バークプロットを示す図である。
【図12】κ−カゼイン(109〜137)ペプチドによるRgpBの阻害に関する阻害定数(K)の評価のための二次プロットを示す図である。それぞれの点集合に関する直線は各データ集合の線形回帰分析結果を表す。Kを、回帰直線の負の切片として評価した。
【図13】κ−カゼイン(109〜137)、並びにヒトセリン/システインプロテイナーゼ阻害剤クレードG成員1スプライス変異体3(Q5UGI5)、血漿セリンプロテアーゼC1阻害剤(P05155)及び推定セリンプロテイナーゼ阻害剤(KUファミリー)(A3LQ30)のBLAST配列アラインメントを示す図である。
【図14】ヒトセリンプロテアーゼ阻害剤カザールタイプ5短鎖アイソフォーム(Q3LX95)、ヒトセリンプロテアーゼ阻害剤カザールタイプ5(Q9NQ38)、ヒトエラフィン(エラスターゼ特異的阻害剤)(P19957)及びヒトPI3タンパク質(ペプチダーゼ阻害剤3、皮膚由来(SKALP)、アイソフォームCRA_a)(Q6FG74)とのβ−カゼイン(193〜209)のBLAST配列アラインメントを示す図である。
【図15】ATP依存性ClpプロテアーゼATP結合サブユニットclpX(P50866)、セリンプロテアーゼ(Q1NE66)及びATP依存性亜鉛メタロプロテイナーゼ(Q7VHT4)とのαS1−カゼイン(11〜23)のBLAST配列アラインメントを示す図である。
【図16】提唱された不競合的阻害モデルを示す図である。E=Arg−ジンジパイン又はLys−ジンジパイン、S=BApNA基質又はGPKNA基質、I=κ−カゼイン(109〜137)ペプチド、及びP=p−ニトロアニリド生成物。
【図17a】κ−カゼイン(109〜137)、Zn(II)及び基質(BApNA)との相互作用に関与するRgpB活性部位の残基を示す図である。RgpBのHis211及びGlu152、κ−カゼイン(109〜137)のAsp115(Asp7)及びGlu118(Glu10)とZn(II)との間の静電相互作用を強調している。ペプチドのIle122(Ile14)とBApNA基質との間の疎水性相互作用も強調している。RgpBのTrp284及びCys244がそれぞれ、基質のArg残基及びアミド結合との相互作用を形成する。
【図17b】Zn(II)の存在下でRgpB:BApNA複合体と結合するκ−カゼイン(109〜137)の提唱された分子モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書で開示及び規定される本発明は、明細書若しくは図面で言及される又は明細書若しくは図面から明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての代替的な組合せにまで及ぶことが理解される。これらの様々な組合せは全て本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【0042】
プロテアーゼ阻害作用を示す化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を口腔ケア製品、機能性食品及び医薬品に使用することができる。本発明により、ポルフィロモナス・ジンジバリスの細胞外プロテアーゼ阻害活性を特徴とする新たなミルクカゼインペプチドが同定された。これらのペプチドは、合成的に製造するか、又はミルクカゼインの酵素消化により得ることができる。ペプチドをヒト、ウシ、ヤギ及びヒツジを含む様々な種由来のミルクカゼインから得ることができる。
【0043】
ウシのミルクカゼインは、更なるタンパク質分解に比較的耐性のあることが知られているタンパク質の天然供給源である。ウシのミルクカゼインは牛乳消化後のヒトの小腸末梢部及び血液で検出されている。
【0044】
これらのペプチドには幾つかの利点があり、これには天然供給源から誘導することができること、感知可能なほどの風味を有しないこと、及び併用すると、亜鉛等の二価カチオンの風味を消すことができるといったことが含まれるが、これらに限定されない。ペプチドは、
αS1−カゼイン(11〜23) (配列番号1)
β−カゼイン(193〜209) (配列番号2)
κ−カゼイン(109〜137) (配列番号3)
β−カゼイン(193〜205) (配列番号4)
κ−カゼイン(117〜137) (配列番号5)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0045】
本発明は配列番号1〜配列番号5のアミノ酸配列の機能的断片も含む。機能的断片は配列番号1〜配列番号5に対応するアミノ酸配列よりも短いが、配列番号1〜配列番号5に対応するアミノ酸配列の機能を維持しているアミノ酸配列である。機能的断片は、例えばエクソペプチダーゼを用いてアミノ酸配列を短くし、又はより長さの短いアミノ酸配列を合成し、その後以下の実施例に示される方法等により任意のプロテアーゼ阻害活性を試験することにより容易に求めることができる。
【0046】
配列番号1〜配列番号5が誘導されるウシカゼインに対してオーソロガス及びパラロガスであるタンパク質の断片に対応する配列番号1〜配列番号5のアミノ酸配列の変異体も本発明の範囲内である。
【0047】
配列が遺伝子重複事象により分離した場合、該配列は「パラロガス」である。すなわち同じゲノムの2つの異なる位置を占めるように、生物において遺伝子が重複する場合、2つのコピーはパラロガスである。
【0048】
配列が種分化事象により分離した場合、該配列は「オーソロガス」である。すなわち種が2つの異なる種に分化する場合、得られる種の単一遺伝子の分化コピーはオーソロガスであるといえる。
【0049】
本発明の範囲内にある別の変異体群は、翻訳後修飾を含有する配列番号1〜配列番号5のアミノ酸配列である。特定の翻訳後修飾はリン酸化及びグリコシル化である。これらの修飾を説明するために、以下のようにウシカゼインの多くの既知の遺伝的変異体が知られている:
A.αS1−カゼイン類
1.αS1−カゼインX−9P(遺伝的変異体−A、B、C、D、E、F、G及びH)
2.αS1−カゼイン断片
B.αS2−カゼイン類
1.αS2−カゼインX−15P(遺伝的変異体−A、B、C、D)
2.αS2−カゼインX−9P(f51〜207)(遺伝的変異体−A、C)
3.αS2−カゼインX−5P(f65〜203)(遺伝的変異体−A、C)
C.β−カゼイン類
1.β−カゼインX−5P(遺伝的変異体−A、A、A、B、C、D、E、F、G、H、H及びI)
2.β−カゼインX−1P(f29〜209)(遺伝的変異体−A、A、A、B、C、E、F、G、H、H及びI)
3.β−カゼインX−(f106〜209)(遺伝的変異体−A、A、B、F、G、H
4.β−カゼインX−(f108〜209)(遺伝的変異体−A、B、F、G及びH
5.β−カゼインX−4P(f1〜28)(遺伝的変異体−A、D及びH
6.β−カゼインX−5P(f1〜105)(遺伝的変異体−A、A、B、C、D、E、F、G、H、H及びI)
7.β−カゼインX−5P(f1〜107)(遺伝的変異体−A、A、A、B、C、D、E、F、G、H、H及びI)
8.β−カゼインX−1P(f29〜105)(遺伝的変異体−A、A、B、C、E、F、G、H、H及びI)
9.β−カゼインX−1P(f29〜107)(遺伝的変異体−A、A、A、B、C、E、F、G、H、H及びI)
D.κ−カゼイン類
1.κ−カゼインX−2P(遺伝的変異体−A、B、C、E、F、F、G、G、H、I及びJ)
2.κ−カゼインX−2P(f106〜169)(遺伝的変異体−A、B、E、F、F、G、G及びJ)
3.κ−カゼインX−2P(f117〜169)(遺伝的変異体−A、B、E、F、F、G、G及びJ)
Xは遺伝的変異体を示し、遺伝的変異体は以下の括弧内で述べられた変異体のいずれか1つであり得る。
【0050】
上記の名称はカゼインの既知の変異体を示している。例えばβ−カゼインB−1P(f29〜209)は、該タンパク質がβ−ファミリーのカゼインの一部であり、B遺伝的変異体であり、リン酸化することができるアミノ酸残基を含有し、残基29〜残基209のβ−カゼインタンパク質の断片であることを示す。どのアミノ酸がこれらのタンパク質においてリン酸化を受けやすいかは既知である。カゼイン変異体の名称及び更なる説明は、Farrell et al. Nomenclature of Proteins of Cow's Milk - Sixth Revision. Journal of Dairy Science (2004)87:1641-1674に記載されている。したがって、配列番号1〜配列番号5のアミノ酸配列に対応するこれらの配列の断片は変異体であり、開示される本発明の一部を形成する。
【0051】
ペプチドの特定の配列ではなくペプチドの物理的性質によりプロテアーゼ阻害活性がもたらされると考えられるため、活性を実質的に損うことなく、ペプチド配列においていわゆる保存的置換を行うことができる。本発明を限定するものではないが、幾つかの実施形態では、ペプチド又はペプチド模倣物のアミノ酸の最大25%が保存的に置換される。活性の実質的な喪失をもたらさないこのような保存的置換が本発明に包含されることが意図される。上記で言及された保存的置換の概念は当業者に十分に理解されているが、明確化のために、保存的置換は以下に記載のものである。
【0052】
Gly、Ala、Val、Ile、Leu、Met、
Asp、Glu、Ser、
Asn、Gln、
Ser、Thr、
Lys、Arg、His、
Phe、Tyr、Trp、及び
Pro、Nα−アルカルアミノ酸(alkalamino acids)。
【0053】
当業者にとって既知のように、アミノ酸の極性群、荷電(+)群、荷電(−)群又は脂肪族群のうちの1つの成員の同じ群の別の成員による任意の置換は、保存的置換であり得る。
【0054】
これらの付加的な実施形態を例示するために(本発明を限定しない)、以下の配列が与えられる:
αS1−カゼイン(11〜23)、
Leu Pro Gln Glu Val Leu Asn Glu Asn Leu Leu Arg Phe(配列番号1)(ボス・タウルス(Bos taurus)(ウシ))
Leu Pro Gln Gly Val Leu Asn Glu Asn Leu Leu Arg Phe(配列番号6)(ブバルス・ブバリス(Bubalus bubalis)(アジアスイギュウ(家畜種)(Domestic water buffalo)))
Leu Ser Pro Glu Val Leu Asn Glu Asn Leu Leu Arg Phe(配列番号7)(キャプラ・ヒルカス(Capra hircus)(ヤギ))
Leu Ser Ser Glu Val Leu Asn Glu Asn Leu Leu Arg Phe(配列番号8)(オービス・アリエス(Ovis aries)(ヒツジ))
β−カゼイン(193〜209)、
Tyr Gln Glu Pro Val Leu Gly Pro Val Arg Gly Pro Phe Pro Ile Ile Val(配列番号2)(ボス・タウルス(ウシ))
Tyr Gln Glu Pro Val Leu Gly Pro Val Arg Gly Pro Phe Pro Ile Leu Val(配列番号9)(キャプラ・ヒルカス(ヤギ)、オービス・アリエス(ヒツジ))
β−カゼイン(193〜205)、
Tyr Gln Glu Pro Val Leu Gly Pro Val Arg Gly Pro Phe(配列番号4)(ボス・タウルス(ウシ))
κ−カゼイン(109〜137)、
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号3)(ボス・タウルス(ウシ))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu(配列番号10)(アカスイギュウ(Syncerus caffer nanus)(フォーレストバッファロー(Forest Buffalo)))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Ile Thr Glu(配列番号11)(ボス・インディカス(Bos indicus)(コブウシ(Zebu)))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr(O結合型GalNAc) Pro Thr Thr Glu(配列番号12)(ボス・タウルス(ウシ))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr(O結合型GalNAc) Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号13)(ボス・タウルス(ウシ))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr(O結合型GalNAc) Glu(配列番号14)(ボス・タウルス(ウシ))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr(O結合型GalNAc) Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号15)(ボス・タウルス(ウシ))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号16)(ボス・タウルス(ウシ))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Val Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号17)(ブバルス・ブバリス(アジアスイギュウ(家畜種)))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Val Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号18)(ブバルス・ブバリス(アジアスイギュウ(家畜種)))
Pro Pro Lys Lys Asp Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号19)(オレアムノス・アメリカヌス(Oreamnos americanus)(シロイワヤギ(Mountain goat)))
Pro Pro Lys Lys Asn Gln Asp Lys Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Ala Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号20)(オレアムノス・アメリカヌス(シロイワヤギ))
Pro Pro Lys Lys Asp Gln Asp Lys Thr Glu Val Pro Ala Ile Asn Thr Ile Ala Ser Ala Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号21)(キャプラ・ヒルカス(ヤギ)、オービス・アリエス(ヒツジ))
κ−カゼイン(117〜137)、
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号5)(ボス・タウルス(ウシ))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Ile Glu(配列番号22)(アカスイギュウ(フォーレストバッファロー))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Ile Thr Glu(配列番号23)(ボス・インディカス(コブウシ))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr(O結合型GalNAc) Pro Thr Thr Glu(配列番号24)(ボス・タウルス(ウシ))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr(O結合型GalNAc) Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号25)(ボス・タウルス(ウシ))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr(O結合型GalNAc) Glu(配列番号26)(ボス・タウルス(ウシ))
Thr Glu Ile Pro Thr(O結合型GalNAc) Ile Asn Thr Ile Ala Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号27)(ボス・タウルス(ウシ))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser(P) Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号28)(ボス・タウルス(ウシ))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Val Ser Gly Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号29)(ブバルス・ブバリス(アジアスイギュウ(家畜種))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Val Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号30)(ブバルス・ブバリス(アジアスイギュウ(家畜種)))
Thr Glu Ile Pro Thr Ile Asn Thr Ile Ala Ser Ala Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号31)(オレアムノス・アメリカヌス(シロイワヤギ))
Thr Glu Val Pro Ala Ile Asn Thr Ile Ala Ser Ala Glu Pro Thr Ser Thr Pro Thr Thr Glu(配列番号32)(キャプラ・ヒルカス(ヤギ)、オービス・アリエス(ヒツジ))
(P)は前述のアミノ酸がリン酸化されていることを指す。すなわちSer(P)はリン酸化されたセリンアミノ酸である。
【0055】
(O結合型GalNAc)は、前述のアミノ酸がアミノ酸側鎖のヒドロキシ酸素と結合したN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)を有することを指す。すなわちThr(O結合型GalNAc)はその側鎖のヒドロキシ酸素と結合したN−アセチルガラクトサミンを有するトレオニンアミノ酸である。他のグリカンはGalNAcと結合し、グリカン鎖長を増大することにより、二糖類、例えばGal(β1−3)GalNAc、三糖類、例えばNeuAc(α2−3)Gal(β1−3)GalNAc又はGal(β1−3)[NeuAc(α2−6)]GalNAc、及び四糖類、例えばNeuAc(α2−3)Gal(β1−3)[NeuAc(α2−6)]GalNacを含むようにすることができる。
【0056】
本発明は、DEPTXPTTE(式中、X=TQ又はST)、QEPVXGPVRGPXPIIXI(式中、X=L、N又はK、X=F、Y又はC、及びX=L、H又はV)及びEVLNENLLRFからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物も提供する。
【0057】
これらの実施形態では本発明は、配列番号1〜配列番号32(端を含む)のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列からなるか、又はそれから本質的になるが、全長カゼイン配列を含まない、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を提供する。
【0058】
配列番号1〜配列番号32のいずれか1つにより規定されるアミノ酸配列に対する1つ又は複数のアミノ酸の欠失を、化合物、ペプチド又はペプチド模倣物のプロテアーゼ活性を阻害、低減又は阻止する能力を損わずに行うことができることが当業者に理解されるであろう。或る特定の実施形態では、配列番号1〜配列番号32を含むペプチド又はペプチド模倣物の最大25%が欠失され得るが、得られるペプチド又はペプチド模倣物はプロテアーゼ活性を阻害、低減又は阻止する能力を維持していなければならない。配列番号1〜配列番号32のいずれか1つと1つ又は複数のアミノ酸欠失によって異なるアミノ酸配列を有する化合物、ペプチド又はペプチド模倣物が依然として、プロテアーゼ活性を阻害、低減又は阻止することができるかどうかを判定するために、本明細書に記載のものを含む実験を実施することができる。
【0059】
本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物を、歯周病の治療又は予防を必要とする被験体の歯茎に直接投与することができる。幾つかの実施形態では、本発明の組成物を局所的に投与するが、化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物を非経口的に、例えば注射により静脈内に、腹腔内に、筋内に、髄腔内に又は皮下にも投与することができることが当業者に理解されるであろう。
【0060】
代替的には、本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物を、経口投与(舌下投与及び口腔投与を含む)、経肺投与(鼻内投与及び吸入投与)、経皮投与、又は直腸投与用の組成物として構築することができる。
【0061】
治療を必要とする被験体は歯周病の亜臨床(subclinical:無症候性)症状又は臨床症状を示す被験体であり得る。歯周病の亜臨床兆候又は臨床兆候は、歯肉の急性又は慢性の炎症を含む。血漿及び白血球の血液から損傷組織への移動の増大を含む急性炎症の特質が存在し得る。発赤(紅化)、発熱(熱増大)、腫瘍(腫脹)、痛み(疼痛)及び機能喪失(機能低下)を含む歯肉の急性感染の臨床徴候も存在し得る。慢性炎症は白血球細胞(単球、マクロファージ、リンパ球、血漿細胞)の浸潤を特徴とし得る。組織及び骨量の減少が観察される場合もある。治療を必要とする被験体は、歯周部位に存在するポルフィロモナス・ジンジバリス細菌レベルが、歯周病ではない個体で観察される正常な範囲を超えて増大していることも特徴とし得る。
【0062】
投与経路は、投与するアンタゴニスト又は組成物の性質、及び被験体の病態の重症度を含む多くの因子に応じて異なり得る。本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物の投与頻度、及び本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物の投与量は、特に被験体における歯周病の発症又は進行の段階に応じて被験体ごとに異なり得ることが理解される。投与頻度は臨床医が決定することができる。
【0063】
ジンジパイン又は関連のプロテアーゼ(例えば他のシステインプロテアーゼ)のプロテアーゼ活性の結果として起こる、又はそれに関連する任意の疾患、病態又は症状は、本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物により予防又は治療することができることも考慮する。さらに、歯周病の結果として起こる、若しくはそれに関連する他の疾患、病態若しくは症状も治療することができるか、又はこれらの疾患、病態若しくは症状を発症する危険性を低減することができる。例えば、歯周病は個体が心疾患を発症する危険性を増大させ得る。この心疾患を発症する増大した危険性は、歯周病の個体に本発明の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物を投与することにより歯周病を治療することによって低減させることができる。
【0064】
「ペプチド模倣物」は、本発明のペプチドと実質的に同じ構造及び/又は機能的特性を有する合成化合物である(機能的特性を本明細書で更に記載する)。通常、ペプチド模倣物は本発明のペプチドと同じ又は類似の構造、例えばカゼイン又はその断片と同じ又は類似の配列を有する。ペプチド模倣物は一般的に、自然には合成されない残基を少なくとも1つ含有する。ペプチド模倣化合物の非天然構成要素は、a)天然型のアミド結合(「ペプチド結合」)による連結以外の残基連結基、b)自然発生的なアミノ酸残基の代わりとなる非天然型の残基、又はc)二次構造の模倣を誘導する、すなわち二次構造、例えばβターン構造(turn)、γターン構造、βシート構造、αヘリックス構造等を誘導又は安定させる残基のうちの1つ又は複数によるものであり得る。
【0065】
ペプチド模倣物は、科学文献及び特許文献、例えばOrganic Syntheses Collective Volumes, Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY, al-Obeidi (1998) Mol. Biotechnol. 9:205-223、Hruby (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:114-119、Ostergaard (1997) Mol. Divers. 3:17-27、Ostresh (1996) Methods Enzymol. 267:220-234に記載の多様な手順及び方法論を用いて合成することができる。
【0066】
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物を、GMP条件下で、又は幾つかの実施形態では従来の混合、溶解、造粒、糖衣形成、研和(levigating)、乳化、カプセル封入、封入若しくは凍結乾燥のプロセスにより製造することができる。
【0067】
医薬組成物を、1つ又は複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又は補助剤を用いて構築することができる。これらの成分により、ペプチド又はペプチド模倣物を薬学的に使用することができる調製物へと加工処理するのが容易となり得る。
【0068】
治療のための投与は非経口投与、静脈内投与、経口投与、皮下投与、動脈内投与、頭蓋内投与、髄腔内投与、腹腔内投与、局所投与、鼻内投与又は筋内投与であり得る。
【0069】
非経口投与用の医薬組成物は一般的に滅菌されており、実質的に等張である。ハンクス液、リンガー液、又は生理食塩バッファー若しくは酢酸バッファー等の生理学的に相溶性のバッファーを使用することができる。該溶液には、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤が含有されていてもよい。ペプチド又はペプチド模倣物を粉末形態で準備し、使用前に発熱性物質除去滅菌水等の溶媒に溶解させてもよい。
【0070】
ペプチド又はポリペプチド配列、すなわち本明細書で規定の本発明のペプチドに対する「アミノ酸配列の同一性のパーセント(%)」又は「パーセント(%)同一な」は、必要に応じて最大の配列同一性パーセントを達成するために配列をアラインメントし、ギャップを導入した後に、特定のペプチド又はポリペプチド配列、すなわち本発明のペプチドにおけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合と定義される(配列同一性の一部としてはいずれの保存的置換も考慮しない)。
【0071】
当業者は、比較対象の配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するのに必要となる任意のアルゴリズム(非限定的な例が以下に記載される)を含む、アラインメントを測定するのに適切なパラメータを求めることができる。アミノ酸配列をアラインメントする場合、所定のアミノ酸配列Bに対する(to, with, or against)所定のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性パーセント(代替的には所定のアミノ酸配列Bに対して或る特定のアミノ酸配列同一性パーセントを有するか又は含む所定のアミノ酸配列Aと表すことができる)は、アミノ酸配列同一性パーセント=X/Y×100(式中、XはA及びBの配列アラインメントプログラム又はアルゴリズムのアラインメントにより完全な一致としてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、YはBにおけるアミノ酸残基の総数である)として算出することができる。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性パーセントは、Aに対するBのアミノ酸配列同一性パーセントと等しくない。
【0072】
同一性パーセントを算出する際には、通常正確な一致数を数える。数学アルゴリズムを用いて2つの配列間の同一性パーセントの測定を達成することができる。2つの配列の比較に利用される数学アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264のアルゴリズム(Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877に記載のように修正)である。このようなアルゴリズムをAltschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403のBLASTNプログラム及びBLASTXプログラムに組み込む。比較目的でギャップのあるアラインメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST 2.0)をAltschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3389に記載のように利用することができる。代替的に、PSI−Blastを、分子間の距離関係を検出する反復サーチ(iterated search)を行うのに使用することができる。上記のAltschul et al. (1997)を参照されたい。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI−Blastプログラムを利用する場合、各プログラムのデフォルトパラメータ(例えばBLASTX及びBLASTN)を使用することができる。アラインメントを手検測(manually by inspection)により行うこともできる。配列の比較に利用される数学アルゴリズムの別の非限定的な例はClustalWアルゴリズム(Higgins et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22:4673-4680)である。ClustalWは配列を比較し、アミノ酸配列又はDNA配列全体をアライメントすることにより、アミノ酸配列全体の配列保存に関するデータを提供することができる。ClustalWアルゴリズムを幾つかの市販のDNA/アミノ酸分析ソフトウェアパッケージ、例えばVector NTI Program Suite(Invitrogen Corporation, Carlsbad, CA)のALIGNXモジュールに使用する。ClustalWによるアミノ酸配列のアラインメントの後、アミノ酸同一性パーセントを評価することができる。ClustalWアラインメントの分析に有用なソフトウェアプログラムの非限定的な例はGENEDOC(商標)又はJalView(http://www.jalview.org/)である。GENEDOC(商標)により、多数のタンパク質間のアミノ酸(又はDNA)の類似性及び同一性の評価が可能になる。配列の比較に利用される数学アルゴリズムの別の非限定的な例は、Myers and Miller (1988) CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムを、GCG Wisconsin Geneticsソフトウェアパッケージ、バージョン10(Accelrys, Inc., 9685 Scranton Rd., San Diego, CA, USAから入手可能)の一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込む。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重量残基表、12のギャップ長ペナルティ、及び4のギャップペナルティを使用することができる。
【0073】
本発明はヒトでの適用が見出されているが、本発明は獣医学的目的にも有用である。本発明は、本明細書に記載のように、ウシ、ヒツジ、ウマ及びトリ等の家畜動物、ネコ及びイヌ等のペット、並びに動物園の動物における疾患又は病態の治療又は予防に有用である。
【0074】
上述の医薬組成物を含有する本発明の経口組成物を、歯磨きペースト、歯磨き粉及び歯磨き液を含む歯磨き剤、洗口液、トローチ、チューイングガム、歯科用ペースト、歯肉マッサージクリーム、うがい錠剤、乳製品、並びに他の食品等の口に適用可能な様々な形態で調製及び使用することができる。本発明による経口組成物は特定の経口組成物の種類及び形態に応じて更なる既知の成分を更に含んでいてもよい。
【0075】
任意で組成物は、グラム陰性の嫌気性細菌にとって毒性であるか、又はグラム陰性の嫌気性細菌の増殖を阻害する1つ又は複数の抗生物質を更に含んでいてもよい。潜在的に任意の静菌性又は殺菌性の抗生物質を本発明の組成物に使用することができる。好適な抗生物質としては、アモキシシリン、ドキシサイクリン又はメトロニダゾールが挙げられる。
【0076】
本発明の或る特定の形態において、経口組成物は性質が実質的に液体のもの、例えば洗口液又はリンス剤であり得る。このような調製物において、ビヒクルは通常、望ましくは以下に記載のような保湿剤を含む水−アルコール混合物である。一般的に、アルコールに対する水の重量比は約1:1〜約20:1の範囲である。この種の調製物における水−アルコール混合物の総量は通常、調製物の約70重量%〜約99.9重量%の範囲である。アルコールは通常、エタノール又はイソプロパノールである。或る特定の実施形態では、アルコールはエタノールである。
【0077】
本発明のこのような液体及び他の調製物のpHは概して、約5〜約9、通常約5.0〜7.0の範囲である。pHを酸(例えばクエン酸又は安息香酸)若しくは塩基(例えば水酸化ナトリウム)で制御することができるか、又は(例えばクエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等を用いて)緩衝させることができる。
【0078】
本発明の他の望ましい形態において、組成物は、性質が実質的に固体又はペースト状のもの、例えば歯磨き粉、歯垢検出剤(dental tablet)又は歯磨きペースト(歯科用クリーム)又はゲル歯磨き剤であり得る。このような固体又はペースト状の経口調製物のビヒクルは一般的に、歯科的に許容される研磨材料を含有する。
【0079】
歯磨きペーストにおいて、液体ビヒクルは、通常調製物の約10重量%〜約80重量%の範囲の量で水及び保湿剤を含み得る。好適な保湿剤/担体としてグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール及びポリプロピレングリコールが例示される。水、グリセリン及びソルビトールの液体混合物も有益である。屈折率が考慮すべき重要なものである透明なゲルにおいて、約2.5%(w/w)〜30%(w/w)の水、0%(w/w)〜約70%(w/w)のグリセリン、及び約20%(w/w)〜80%(w/w)のソルビトールが通常用いられる。
【0080】
歯磨きペースト、クリーム及びゲルは通常、約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)、例えば約0.5%(w/w)〜約5%(w/w)の割合で天然型又は合成型の増粘剤又はゲル化剤を含有する。好適な増粘剤は、合成ヘクトライト、例えばLaporte Industries Limitedから市販されているLaponite(例えばCP、SP2002、D)として利用可能な合成コロイドマグネシウムアルカリ金属シリケート複合体粘土である。Laponite Dはおよそ58.00重量%のSiO、25.40重量%のMgO、3.05重量%のNaO、0.98重量%のLiO、並びに幾らかの水及び微量金属である。その真の比重は2.53であり、湿度8%で1.0g/mlの見掛けのかさ密度を有する。
【0081】
他の好適な増粘剤には、アイリッシュモス、イオタカラギーナン、トラガカントゴム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えばNatrosolとして利用可能)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び微砕Syloid(例えば244)等のコロイドシリカが含まれる。可溶化剤には、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びヘキシレングリコール等の湿潤ポリオール、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ、オリーブ油、ヒマシ油及びワセリン等の直鎖に少なくとも約12個の炭素を含有する植物油及びワックス、並びに酢酸アミル、酢酸エチル及び安息香酸ベンジル等のエステルも含まれ得る。
【0082】
従来通り経口調製物は通常、好適なラベル付きパッケージで販売又はそうでなくとも流通していると理解される。このため、マウスリンスのボトルはそれを実質的にマウスリンス又は洗口液として記載し、その使用に関して説明しているラベルを有しており、歯磨きペースト、クリーム又はゲルは通常、それを実質的に歯磨きペースト、ゲル又は歯科用クリームとして記載しているラベルを有する、押し出しチューブ(典型的にはアルミニウム、裏打ちされた鉛、若しくはプラスチック製の)、又は内容物を測り出すための他の搾り出し式ディスペンサー、ポンプ式ディスペンサー若しくは加圧式ディスペンサーに入っている。
【0083】
治療作用又は予防作用の増大を達成するために、口腔全体への活性剤の徹底的かつ完全な分散を達成するのを助けるために、及び本組成物をより化粧品として許容可能にするために有機界面活性剤を本発明の組成物に使用してもよい。有機界面活性材料はその性質がアニオン性、非イオン性又は両性であってもよく、幾つかの実施形態では活性剤と相互作用しない。組成物に洗浄性及び発泡性を与える洗浄材料を界面活性剤として利用するのが通常である。アニオン性界面活性剤の好適な例は、高級脂肪酸モノ硫酸モノグリセリドの水溶性塩、例えば硬化ヤシ油脂肪酸のモノ硫酸モノグリセリドのナトリウム塩、高級アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルキルスルホ酢酸塩、スルホン酸1,2−ジヒドロキシプロパンの高級脂肪酸エステル、及び低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミド、例えば脂肪酸、アルキルラジカル又はアシルラジカルに12個〜16個の炭素を有するもの等である。最後に言及されたアミドの例は、N−ラウロイルサルコシン、並びにセッケン又は同様の高級脂肪酸材料を実質的に含まないとされるN−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン又はN−パルミトイルサルコシンのナトリウム塩、カリウム塩及びエタノールアミン塩である。本発明の経口組成物におけるこれらのサルコナイト(sarconite)化合物の使用は、これらの材料が酸溶液中での歯のエナメル質の溶解性を或る程度低減させることに加えて、炭水化物分解による口腔での酸形成の阻害における長期にわたる顕著な効果を示すために特に有益である。使用に好適な水溶性の非イオン性界面活性剤の例は、エチレンオキシドと疎水性の長鎖(例えば約12個〜20個の炭素原子の脂肪族鎖)を有し、エチレンオキシドと反応性を有する様々な反応性水素含有化合物との縮合生成物(該縮合生成物(「エトキサマー(ethoxamers)」)は親水性ポリオキシエチレン部分を含有する)、例えばポリ(エチレンオキシド)と脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド、多価アルコール(例えばモノステアリン酸ソルビタン)及びポリプロピレンオキシド(例えばプルロニック材料)との縮合生成物である。
【0084】
界面活性剤は通常、約0.1重量%〜5重量%の量で存在する。界面活性剤が本発明の活性剤の溶解を助け、それにより必要となる可溶化保湿剤の量を減らすことができることは注目に値する。
【0085】
増白剤、保存料、シリコーン、クロロフィル化合物及び/又は尿素、リン酸二アンモニウム等のアンモニア化材料、並びにそれらの混合物等の様々な他の材料を本発明の経口調製物に組み込んでもよい。これらのアジュバントは存在する場合、所望の特性及び特質に実質的に悪影響を及ぼすことのない量で調製物に組み込まれる。
【0086】
任意の好適な芳香材料又は甘味材料を利用してもよい。好適な芳香成分の例は芳香油、例えばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、チョウジ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン及びオレンジの油、並びにサリチル酸メチルである。好適な甘味剤には、スクロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル)、サッカリン等が含まれる。好適には芳香剤及び甘味剤はそれぞれ又はともに、調製物の約0.1%〜5%以上(more)含まれ得る。
【0087】
本発明の組成物の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を、例えば加温したガム基剤中に攪拌すること又はガム基剤の外面をコーティングすることによりロゼンジに、又はチューイングガム若しくは他の製品に組み込むこともできる。ガム基剤の例は、望ましくは従来の可塑剤若しくは柔軟剤、糖類、又は例えばグルコース、ソルビトール等の他の甘味料を含むジェルトン、ゴム乳液、ビニライト樹脂等である。
【0088】
更なる態様では、本発明は、(a)化合物、ペプチド、ペプチド模倣物又は組成物と、(b)薬学的に許容される担体とを備える部品のキットを提供する。望ましくは該キットは、このような治療を必要とする患者における歯周病の治療又は予防に使用される取扱説明書を更に含む。
【0089】
経口使用を目的とする組成物を医薬組成物の製造に関して当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は薬学的に有効な(elegant)口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、芳香剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される作用物質を1つ又は複数含有してもよい。
【0090】
錠剤は錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は例えば不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;造粒剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア、並びに平滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。錠剤はコーティングされていなくてもよく、又は錠剤を胃腸管での崩壊及び吸収を遅らせ、それによりより長期にわたり作用が持続するように既知の技法でコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を利用してもよい。
【0091】
経口使用のための製剤を、硬ゼラチンカプセルとして(その中で活性成分は不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合される)、又は軟ゼラチンカプセルとして(その中で活性成分は水又は油媒体、例えば落花生油、液体パラフィン若しくはオリーブ油と混合される)提示してもよい。
【0092】
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合された活性材料を含有する。このような賦形剤は懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムである。分散剤又は湿潤剤は、天然のホスファチド、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。
【0093】
水性懸濁液は1つ又は複数の保存料、例えばベンゾエート、例えばエチルp−ヒドロキシベンゾエート又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート、1つ又は複数の着色剤、1つ又は複数の芳香剤、及び1つ又は複数の甘味剤、例えばスクロース又はサッカリンを含有していてもよい。
【0094】
油性懸濁液を、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油、又は液体パラフィン等の鉱油中に活性成分を懸濁することにより構築してもよい。油性懸濁液は増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有していてもよい。上記で記載されるような甘味剤、及び芳香剤を口当たりのよい経口調製物を提供するために添加してもよい。これらの組成物をアスコルビン酸等の抗酸化剤の添加により保存してもよい。
【0095】
本発明をより詳細に説明するために、以下の実施例を記載し、本発明の幾つかの態様及び実施形態を説明する。
【実施例】
【0096】
材料及び方法
【0097】
ペプチドの酵素消化及び精製
カゼイネート−HCl(Bonlac Foods, Melbourne Australia)を、最終濃度が21.5g/Lになるまで常時攪拌しながら、50℃、pH8.0の脱イオン水にゆっくりと添加することにより溶解させた。カゼイネートが溶解したら、温度を37℃まで下げ、1MのHClをゆっくりと添加することによりpHを6.3まで調整して、カゼインの沈殿を回避した。加水分解を開始するために、レンネット(90%キモシン(EC3.4.23.4)、145IMCU/ml、単一濃度(Single Strength)、Chr. Hanson)を、カゼイン1g当たり1.2IMCUの最終濃度となるまで添加し、溶液を37℃で1時間攪拌した。1MのHCl及び1MのNaOHを添加することにより、溶液のpHを6.3±0.2に維持した。最終濃度が4%になるまでトリクロロ酢酸を添加することにより、加水分解を停止させ、沈殿したタンパク質を遠心分離(5000×g、15分、4℃)によりペレット状にした。カゼイノマクロペプチド(CMP)を含有する上清を、3000Daのカットオフ膜(S10Y3、Amicon)を用いた透析濾過により濃縮した。それからこの材料を凍結乾燥した。調製物をAKTA Explorerシステム(Amersham Pharmacia Biotech, USA)に接続したSuperose 12カラム(Amersham Biosciences, USA)を用いて分画し、流速0.5ml/分で50mMのTris−HCl(pH8.0)を用いて溶出した。溶出液を214nm及び280nmの波長でモニタリングした。2分毎に画分を回収した。全ての試料をChrist Freeze Dryer(Osterode am Harz, Germany)で凍結乾燥し、−70℃で保存した。C18カラムを用いた逆相HPLCにより画分を更に分画し、90%アセトニトリル/0.1%(v/v)TFAを用いて溶出した。溶出液を、Agilent 1100Sダイオードアレイ及び多波長検出器(Agilent Tech., Palo Alto, California)を用いて214nmの一次波長でモニタリングした。回収した全ての画分を凍結乾燥し、−70℃で保存した。それぞれの画分の同一性を質量分光分析により確認した。
【0098】
グリコシル化されていないκ−カゼイン(106〜169)を、前に記載のように(Malkoski et al., 2001)キモシン消化により得た。κ−カゼイン(106〜137)を、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)V8株(Roche, Penzberg Germany)由来のエンドプロテアーゼ−Glu−C(E:S;1:200)を用いた、37℃、24時間での50mMの酢酸アンモニウム(pH4.0)バッファーに溶解したグリコシル化されていないκ−カゼイン(106〜169)の加水分解により得た。2MのNaOHを添加することによりpHを6.0まで増大させることにより、加水分解を終わらせ、分析(C18)RP−HPLCを用いてペプチドを分離した。回収した画分を分析し、MS/MS分析を用いてペプチドを同定した。
【0099】
MALDI TOF/TOF MS
ペプチド試料を、標準的なバッファー(50%アセトニトリル、0.1% TFA)中で飽和2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)マトリクスを用いたMTP 384ターゲットグラウンド鋼板上で同時に結晶化させた(1:1(vol/vol))。試料をUltraflex MALDI TOF/TOF質量分析計(Bruker, Bremen, Germany)で分析した。ローカルMASCOTサーバーでインストールしたカゼインデータベースに適合させた分画スペクトルを用いたBruker DaltonicsのflexAnalysis2.4及びBruker DaltonicsのBioTools3.0ソフトウェアを用いて、分析を行った。
【0100】
固相ペプチド合成
αS1−カゼイン(11〜23)ペプチド、β−カゼイン(193〜205)ペプチド、β−カゼイン(193〜209)ペプチド、κ−カゼイン(106〜137)ペプチド、κ−カゼイン(109〜137)ペプチド、κ−カゼイン(117〜137)ペプチド、κ−カゼイン(117〜123)ペプチド及びκ−カゼイン(127〜137)ペプチドを、Liberty(商標)Microwaveペプチドシンセサイザー(CEM Corporation, North Carolina)で標準的なFmoc−ケミストリプロトコルを用いて調製した。ペプチド合成は各C末端アミノ酸に結合したWang樹脂上のアミド末端から進行した。C18カラムを用いた逆相HPLCによりペプチドを精製した。
【0101】
エレクトロスプレーMS
RP−HPLCにより回収された画分を、エレクトロスプレー質量分析モードで操作するEsquire−LC MS/MSシステム(Bruker Daltonics)を用いて分析した。試料の注入を340μL/時間で行い、窒素流は5L/分、乾燥ガス温度は300℃であった。
【0102】
細菌株及び増殖条件
グリセロール又はポルフィロモナス・ジンジバリスW50及びATCC 33277細胞の凍結乾燥培養物を、ウマ血液アガー(HBA、Oxoid)上で37℃で嫌気的に増殖させた。ポルフィロモナス・ジンジバリスの細胞を継代培養により維持し、第3代〜第7代のの細胞だけを用いて、へミン(5mg/L)及びシステイン(0.5g/L)、並びにATCC 33277ではビタミンK(メナジオン)(5mg/L)を添加したブレインハートインフュージョン培地(BHI)(37g/L)20mL及び200mLに接種した。650nmの波長での培養物の光学密度(OD)の測定により増殖を求めた。培養物のグラム染色を任意のコンタミネーションを確認するために行った。ポルフィロモナス・ジンジバリスの細胞を遠心分離(8000×g、20分、4℃)により指数増殖期で回収し、0.5g/Lのシステインを含有するTC150バッファー(50mMのTris−HCl、150mMのNaCl、5mMのCaCl(pH8.0))で1回洗浄した。洗浄した細胞を2mLのTC150バッファー(0.5g/Lのシステインを有する)で再懸濁し、4℃で維持し、すぐにタンパク質分解アッセイに使用した。
ポルフィロモナス・ジンジバリスのRgpA−Kgpプロテイナーゼ付着因子複合体及びRgpBの精製
【0103】
ポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞を後期指数増殖期まで2Lのバッチ培養物中で増殖させ、前に記載された手順(Pathirana et al., 2006)に基づき、Arg−セファロースアフィニティクロマトグラフィを用いて、Triton X114抽出物からRgpA−Kgpプロテイナーゼ付着因子複合体を精製した。前に公開された手順(Chen et al., 2002、Pike et al., 1994)を用いて、ポルフィロモナス・ジンジバリスHG66株からRgpBを精製した。
【0104】
発色基質を用いたポルフィロモナス・ジンジバリスのArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性の測定
インキュベーション容量を減らして96ウェルプレートを用いて行うように修正し、適合させたポルフィロモナス・ジンジバリスの全細胞のArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性のために開発したアッセイを用いて細菌のプロテアーゼ阻害活性を求めた(O'Brien-Simpson et al., 1998、O'Brien-Simpson et al., 2001)。合成発色基質;N−α−ベンゾイル−Arg−p−ニトロアニリド(L−BApNA)及びN−(p−トシル)−Gly−Pro−Lys 4−ニトロアニリド酢酸塩(GPK−NA)(Sigma Aldrich)を用いてArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性を求めた。Arg特異的な反応バッファー及びLys特異的な反応バッファーは、30%(v/v)イソプロパノール、0.93mMのL−システイン、400mMのTris−HCl(pH8.0)及び100mMのNaClに溶解した2mMのL−BApNA又はGPK−NAをそれぞれ含有していた。要求される濃度に応じて、カゼインペプチドをTC150バッファーで希釈した。10mMのL−システイン(pH8.0)10μL及びポルフィロモナス・ジンジバリス全細胞懸濁液、精製RgpA−Kgpプロテイナーゼ付着因子複合体(0.01μg/μL)又は精製RgpB(0.00116μg/μL)のいずれかを最終容量が100μLとなるまで添加した。それから試料を37℃で15分間インキュベートした後、Arg特異的な反応バッファー又はLys特異的な反応バッファーを添加した(総容量200μL)。PerkinElmerの1420 Multilabel Counter VICTOR3(商標)(Waltham, MA)を用いて、37℃で10秒間隔で約20分間、pH8.0で、405nmで吸光度を測定することにより、活性を求めた。8mMのZnClのストック溶液を脱イオン水で調製し、特定のアッセイで要求される濃度で凍結乾燥したカゼインペプチドを溶解させるのに使用した。対照試料は、あらゆるプロテアーゼ阻害物質、すなわちペプチド及び/又は亜鉛を欠いていた以外は(however)試験試料と同一であった。
【0105】
インキュベーション後、分析(C18)カラム及びバッファーBが0%〜100%という線形勾配を用いたRP−HPLCにより、アッセイ内容物を分析し、アッセイ中、カゼインペプチド分解が起こったか判定した。溶出した画分をESI−MS分析及びMS/MS分析により分析した。
【0106】
蛍光標識したウシ血清アルブミンを用いたポルフィロモナス・ジンジバリスのタンパク質分解活性の測定
前に公開された手順(Grenier et al., 2002、Yoshioka et al., 2003)を修正してDQ(商標)Green BSA(Molecular Probes, Eugene, OR)を用いて、細菌のプロテアーゼ阻害活性も求めた。指数増殖(O.D650nm=0.6)中に回収したポルフィロモナス・ジンジバリスATCC 33277の全細胞を、1つのウェル当たり5.6×10cfu/mLでアッセイに使用した。アッセイ混合物は、ポルフィロモナス・ジンジバリスの細胞(100μL培養物)、TC150及び阻害剤(最終容量80μl)、並びにDQ BSA(20μL、200μg/mL)を含有していた。1mMのN−α−p−トシル−l−リシンクロロメチルケトン(TLCK)で処理した細胞を対照として使用した。TLCKはRgp活性及びKgp活性の両方を阻害するとことが知られている(Fletcher et al., 1994、Pike et al., 1994)。アッセイ混合物を37℃で2時間暗所でインキュベートし、その後蛍光光度計(PerkinElmerの1420 Multilabel Counter VICTOR3(商標))を用いて、蛍光を測定した(Em 535nm、Ex 485nm)。陰性対照(TLCK処理細胞)から得られた蛍光値を全ての値から減算した。特に明記しない限り、三連で2〜3回の生物学的反復測定により全てのアッセイを実施した。
【0107】
部分阻害濃度指数
部分阻害濃度指数(FIC指数)は、2つ以上の阻害剤又は抗菌剤の相互作用(相乗的、相加的、又は拮抗的)を規定する尺度である(Berenbaum, 1978)。FIC指数をFIC指数=[(A+B)/A]+[(A+B)/B](式中、Aはκ−カゼイン(109〜137)の効果を表し、Bは塩化亜鉛の効果を表し、A+Bは両方の組合せの効果を表す)として算出する。1を超えるFIC指数は拮抗効果を示し、1に等しいFIC指数は相加効果を示し、1未満のFIC指数は相乗効果を示す。
【0108】
阻害の種類及び阻害定数(K)の測定
0.15mM、0.25mM及び1mMの基質(BApNA)濃度でのOD405/秒として初期反応速度を得た。阻害剤(ペプチド)濃度は0μM、25μM、50μM、75μ及び100μMの範囲であった。データをラインウェーバー・バーク(二重逆数)プロットとしてグラフにし、傾きを一次線形回帰により求めた。ラインウェーバー・バークプロットを用いて、K(酵素親和性)及びVmax(最大反応速度)値、並びに酵素阻害の種類を求めて、競合阻害剤と、非競合阻害剤と、不競合阻害剤とを区別することができる(Stryer et al., 2002)。阻害剤濃度に対してラインウェーバー・バークプロットの傾きをプロットすることにより、阻害定数(K)を求めた。
【0109】
分子モデリング
FUGUEプログラム(Shi et al., 2001)を用いて、1034個のタンパク質ファミリーと10230個のアラインメント構造とを含有するキュレーション(curated)タンパク質データベース、HOMSTRAD(Mizuguchi et al., 1998)に対して阻害剤ペプチドで起こり得る構造モチーフを特定した。FUGUEは、構造プロファイルのデータベースをスキャンし、配列構造適合性スコアを算出し、潜在的なホモログ及びアラインメントのリストを作成する。特異性、感受性及びランク付けをZスコアに従って算出する。Zスコア閾値6は99%の特異性を示し、Zスコア閾値5は95%の特異性を示す。阻害剤ペプチドモデルを、SYBYL/Triposを用いて構築した。社内(in-house)ソフトウェアを用いて、阻害剤ペプチドにおける潜在的な金属結合部位を、骨格に対する金属原子位置及びモデルペプチドのC原子位置の軌跡により特定した。
【0110】
結果
【0111】
発色基質を用いたポルフィロモナス・ジンジバリスのArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性の測定
200μMのペプチド濃度で、κ−カゼイン(109〜137)は、全細胞のArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性を約90%阻害する最も有効な結果を示したが、αS1−カゼイン(11〜23)はそれぞれ、全細胞のArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性の約70%及び約60%の阻害を示した(図1、図2及び表1、表2;陰影セル(shading key)に関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。β-カゼイン(193〜209)は、全細胞のArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性の両方を50%阻害したが、より短いβ−カゼインペプチド(193〜205)はArg特異的なタンパク質分解活性を15%しか阻害しなかった(図1、図2及び表1、表2;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。ペプチドを様々な濃度で分析し、タンパク質分解活性の阻害率(%)により、ペプチド濃度に対する用量応答性が実証された(図1、図2;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。続いて、精製された外膜プロテアーゼ複合体(RgpA及びKgpを含む)をタンパク質分解アッセイに使用して、観察されるタンパク質分解の阻害が全細胞に存在し得る他のプロテアーゼによるものではないことが確認された。したがって、ペプチドはArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性を阻害し、更には僅か100μMのペプチドで阻害能の増大を示した(図3、表1、表2;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。
【0112】
Arg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性の最も有意な阻害を示すκ−カゼイン(109〜137)を更に評価した。ペプチドを精製RgpBに対して評価し、ペプチドの結合位置を求めた。RgpBのタンパク質分解活性の阻害は、ペプチドがプロテアーゼ複合体ではなく、プロテアーゼ自体と結合することを示した(図4、表1)。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
阻害に必須の残基を明らかにするため、LysリッチN末端領域を有しない一連のペプチドを合成した;κ−カゼイン(117〜123)、κ−カゼイン(127〜137)及びκ−カゼイン(117〜137)。蛍光BSAによる全細胞アッセイにおいて、及び発色基質による精製RgpA−Kgp複合体を用いたタンパク質分解アッセイにおいて、ポルフィロモナス・ジンジバリスのプロテイナーゼの阻害に関して、これらの合成ペプチドをスクリーニングした(表3、表4、図5)。κ−カゼイン(117〜137)だけがより長いκ−カゼイン(109〜137)と同程度の阻害能を有する阻害活性を示した。このことにより、プロテイナーゼ阻害に関してN末端領域のLys残基は重要ではないことが実証された。精製κ−カゼイン(106−169)は、蛍光BSAによる全細胞アッセイで試験した場合、より短いκ−カゼイン(109〜137)と同程度の有効性を示した(図5)。
【0116】
また蛍光基質であるDQ(商標)Green BSAを、ポルフィロモナス・ジンジバリスの全細胞のプロテイナーゼ活性に対するカゼインペプチドの阻害活性を測定するのに使用した。ペプチドを添加する前に、アッセイを、1つのウェルあたりの細胞数及びインキュベーション時間に関して最適化した。アッセイに関して、1つのウェル当たり10個の細胞との2時間のインキュベーション期間を選択したが、これはタンパク質の加水分解速度がこれらの条件下で線形であったためであった。カゼインに由来するグリコシル化されていないκ−カゼイン(106〜169)ペプチドは、アッセイにおいて500μMのペプチド濃度でBSAに対するプロテイナーゼ活性を60%阻害した。より短い合成断片であるκ−カゼイン(106〜137)は、発色アッセイにおいて200μMの濃度ではArg特異的なプロテアーゼ活性及びLys特異的なプロテアーゼ活性に対する効果をほとんど有しなかったが、蛍光アッセイにおいて500μMのペプチド濃度でプロテアーゼ活性を約37%阻害した(表4及び図5)。
【0117】
【表3】

【0118】
【表4】

【0119】
補助阻害剤(Co-inhibitor)としての塩化亜鉛
ZnClは、ベンズアミジン及びクロルヘキシジン等の幾つかのプロテアーゼ阻害剤の阻害能を増大させることが分かっている潜在的な補助阻害剤である。補助阻害剤としての亜鉛の可能性を調べるために、全細胞のArg特異的なプロテアーゼアッセイ及びLys特異的なプロテアーゼアッセイを、ペプチド[κ−カゼイン(109〜137)/β−カゼイン(193〜209)/αS1−カゼイン(11〜23)]とZnClとを1:4の比で用いて行った。
【0120】
100μMでは、κ−カゼイン(109〜137)は全細胞のArg特異的なタンパク質分解活性を60%阻害し、400μMのZnClは30%の阻害を示した。しかしながら、κ−カゼイン(109〜137)及びZnClを1:4の比で組み合せると、阻害は90%まで増大した(図6)。ペプチドと亜鉛との混合物は、精製プロテアーゼ複合体を用いて分析した場合でも、Arg特異的なタンパク質分解活性の阻害の増大を示した(図8;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。同様の結果がκ−カゼイン(109〜137)を用いたLys特異的なプロテアーゼアッセイにおいて観察された。すなわち、ZnClの添加により、個々で分析した場合のペプチドの阻害能と比較して90%まで阻害能が増大した(図7)。FIC指数に基づくと、Zn2+の効果は相乗的である(表5)。
【0121】
【表5】

【0122】
100μMのβ−カゼイン(193〜209)はArg特異的なタンパク質分解活性を30%阻害したが、400μMのZnClは50%の阻害を示した。1:4の比で組み合わせると、タンパク質分解の阻害は70%まで増大した(図9;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。Lys特異的なプロテアーゼアッセイでは、β−カゼイン(193〜209):ZnClの混合物により、個々で分析した場合のペプチドの阻害剤の阻害能と比較して90%まで阻害能が増大した(図10;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。β−カゼイン(193〜209)及びZnClのFIC値は、阻害が相乗的であることを示している(表6)。
【0123】
【表6】

【0124】
αS1−カゼイン(11〜23)は100μMでArg特異的なタンパク質分解活性を40%阻害したが、ZnClは400μMでArg特異的なタンパク質分解活性を50%阻害した。阻害剤を1:4の比で組み合わせると、タンパク質分解の阻害は70%まで増大した(図9;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。Lys特異的なプロテアーゼアッセイでは、阻害剤の混合物により、85%まで阻害能が増大した(図10;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。これとは対照的に、αS1−カゼイン(11〜23)及びZnClに関して算出されたFIC値は、両方の阻害剤の混合物が相乗的ではなく、相加的であることを示している(表7)。
【0125】
【表7】

【0126】
阻害定数(K)及び阻害機構の測定
κ−カゼイン(109〜137)ペプチドの阻害定数及び阻害機構を求めるために精製RgpBを用いて、酵素反応速度アッセイを行なった。作成したラインウェーバー・バークプロットは、κ−カゼイン(109〜137)による不競合阻害を示している(図11;陰影セルに関しては「図面の簡単な説明」での上記の図の説明文を参照されたい)。不競合阻害の場合、K値は50%阻害に要求される阻害剤濃度(IC50)の値に等しい。K値は阻害剤とES複合体との結合に関する解離定数を表し、この場合K値は40.2μMである(図12)。
【0127】
カゼイン由来ペプチドのBLASTサーチ及び配列アラインメント
αS1−カゼイン(11〜23)配列は、ATP及び基質と結合するClpX及びClpAプロテアーゼサブユニット(シャペロン様プロテアーゼ)との配列類似性を示す(図15)。ATP及び基質と結合するClpX及びClpAは、微生物におけるストレス応答に重要なATP依存性セリンプロテアーゼ複合体(それぞれClpXP、ClpAPと呼ばれる)のサブユニットである。黄色ブドウ球菌では、ClpXPは浸透圧ストレス、酸化ストレス及び低温下での生存に一定の役割を果たす。ポルフィロモナス・ジンジバリスでは、ClpXPの喪失は酸化ストレス耐性に影響しないが、宿主の上皮細胞の浸潤、熱耐性及びバイオフィルム形成に重要であると考えられる。ClpAP及びClpXPは同一の活性を有してはいないが、類似している。カゼイン配列は、ATP依存性亜鉛メタロプロテアーゼ(FtsH 1)(これもポルフィロモナス・ジンジバリスにおけるバイオフィルム形成に一定の役割を果たす)とも類似性を示す。カゼイン配列は既知のプロテアーゼ阻害剤とは類似性を全く示さない。
【0128】
β−カゼイン(193〜209)は、幾つかのプロテアーゼ阻害剤との配列類似性を示す(図14)。セリンプロテアーゼ阻害剤カザールタイプ5又はLEKTI(リンパ上皮カザールタイプ関連阻害剤)は、複数の異なる阻害剤単位を含有するセリンプロテアーゼ阻害剤である。該阻害剤は粘膜上皮の抗炎症保護及び/又は抗菌保護に重要であると考えられ、トリプシン1、カテプシンG、プラスミン、サブチリシン−A及びエラスターゼ−2を阻害することが分かっている。エラフィン(又は別名SKALP(皮膚由来抗ロイコプロテアーゼ)としても知られている)は更に、エラスターゼ、アルギニルペプチダーゼ、プロテイナーゼ3及びミエロブラスチンを阻害するが、トリプシン、α−キモトリプシン、カテプシンG及びプラスミンを阻害しないセリンプロテアーゼ阻害剤である。エラフィンは主にセリンプロテアーゼ阻害剤として作用するが、抗炎症機能にも関与する。エラフィンはそのプロテアーゼ阻害機能とは関係なく、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)及びカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)に対する抗菌性及び抗真菌性も示す。
【0129】
BLASTサーチにより、幾つかのプロテアーゼ阻害剤とのκ−カゼイン(109〜137)の配列類似性が明らかになった(図13)。これらの中でも、血漿プロテアーゼC1阻害剤(Q5UGI5及びP05155)又はセルピンG1が血管透過性の調節及び炎症の抑制;第XIIa因子及び血漿カリクレイン(血漿カリクレイン−キニン系のプロテアーゼ)、C1r又はC1sプロテアーゼ(相補系)、プラスミン及び組織プラスミノーゲン活性化因子(線溶系)、並びに第XI因子及びトロンビン(凝固系)を阻害するのに重要である可能性があると考えられている。
【0130】
200μMの濃度では、κ−カゼイン(109〜137)は全細胞アッセイにおいて、Arg特異的なタンパク質分解活性の約93%の阻害、及びLys特異的なタンパク質分解活性の98%の阻害を示した。またペプチドは、200μM濃度で精製RgpBプロテアーゼを80%超阻害した(表1及び表2)。これらの結果は、ペプチドが3つのリシル残基を有するがアルギニル残基を有さず、そのためRgpBプロテアーゼにより切断されないため特に重要である。
【0131】
αS1−カゼイン(11〜23)は全細胞のプロテアーゼ活性を約60%阻害し、β−カゼイン(193〜209)はArg特異的なタンパク質分解活性及びLys特異的なタンパク質分解活性の両方の約40%〜50%の阻害を示した。この結果は精製プロテアーゼ複合体に対するプロテアーゼ阻害機能の改善も示している。しかしながら、β−カゼイン(193〜205)は、僅かに長いペプチドと比較して、両方のジンジパインに対して、さほど効力を有しなかった。このことは、追加の残基又はペプチドの長さがペプチドの阻害機能に重要な役割を果たすことを示していると考えられる。
【0132】
ZnClは、ベンズアミジン及びクロルヘキシジン等の幾つかのプロテアーゼ阻害剤の阻害能を増大させることが示されている潜在的な補助阻害剤である。様々なペプチド対亜鉛の比の効果を、両方の阻害剤の間に相乗効果があるかどうかを判定するために調べた。FIC指数を相乗効果を算出するのに用いている。阻害剤の組合せが相加的である場合、FIC指数は1に等しくなる。阻害剤同士が拮抗的である場合、同じ効果を得るのにより多くの阻害剤が必要とされ、合計が1より大きくなるのに対し、2つの阻害剤の組合せが別々の場合よりも効果的である場合、相乗効果により合計は1未満になる。全細胞のArg特異的なプロテアーゼアッセイの結果及びLys特異的なプロテアーゼアッセイの結果から算出されたFIC指数に基づき、κ−カゼイン(109〜137)とZnClとの混合物及びβ−カゼイン(193〜209)とZnClとの混合物は相乗的であったが、αS1−カゼイン(11〜23)とZnClとの混合物は相加的であった(表5、表6及び表7)。
【0133】
ジンジパイン活性の反応速度のラインウェーバー・バーク分析により、酵素阻害の種類を求めて、競合阻害剤と、非競合阻害剤と、不競合阻害剤とを区別することができる。競合阻害剤は、阻害されていない酵素と同じy切片を有する(Vmaxが同じである)が、それぞれの阻害剤濃度に対して異なる傾き及びx切片を有する(Kが異なる)。非競合阻害は、阻害されていない酵素と同じx切片を有するプロットをもたらす(Kが同じままである)が、異なる傾き及びy切片を有する(Vmaxを低減させる)。不競合阻害により、y軸及びx軸の両方で異なる切片が生じるが、同じ傾きがもたらされる。酵素反応速度アッセイ及びラインウェーバー・バークプロットに基づくと、κ−カゼイン(109〜137)ペプチドは不競合阻害剤である。いずれの理論又は作用機構にも縛られるものではないが、不競合阻害剤は、ペプチドが酵素−基質複合体とだけ結合し、生成物の形成を妨げることを意味し得る。K値及びVmax値の両方が低減する。基質の結合は酵素の構造変化を誘導すると考えられている。新たな構造により、阻害剤の結合が可能になる(図16)。これは、酵素及び酵素−基質複合体の両方と結合することができる非競合阻害剤(Vmaxを低減させる(阻害剤が触媒作用を妨げる)が、K値は変化しない(酵素に対する基質の親和性には影響がない))とは異なる。
【0134】
ペプチドの阻害定数は40.2μMであり、不競合阻害剤の場合、K値はIC50値と等しい。RgpBの他の阻害剤とのK値の比較により、このペプチド阻害剤が同程度のK値を有し、クロルヘキシジン(2.62×10−4M)及びドキシサイクリン(不競合阻害剤)と同様のRgpBに対するK値を有するRgpBの中程度の阻害剤であり、3μMのRgpBに対するIC50を有することが明らかになる。
【0135】
BLASTサーチにより、αS1−カゼイン(11〜23)の、ATP及び基質と結合するClpX及びClpAプロテアーゼサブユニット(シャペロン様プロテアーゼ)、並びにポルフィロモナス・ジンジバリスのバイオフィルム形成に一定の役割を果たすATP依存性亜鉛メタロプロテアーゼ(FtsH1)との配列類似性が明らかになった。β−カゼイン(193〜209)配列は、セリンプロテアーゼ阻害剤カザールタイプ5又はLEKTI(リンパ上皮カザールタイプ関連阻害剤)等の幾つかのプロテアーゼ阻害剤、及びエラフィンとの配列類似性を示す。これらのセリンプロテアーゼ阻害剤は両方ともそのプロテアーゼ阻害機能とは関係なく、抗菌機能も示す。κ−カゼイン(109〜137)も幾つかのプロテアーゼ阻害剤との部分的な配列類似性を示す。それらのプロテアーゼ阻害剤の中には、血漿プロテアーゼC1阻害剤(Q5UGI5及びP05155)又はセルピンG1が含まれる。
【0136】
Fugueプログラムを用いて、キュレーションタンパク質データベース、HOMSTRADに対してペプチドで起こり得る構造モチーフを特定した。3.87のZスコアがκ−カゼイン(109〜137)ペプチドで得られ、α−ヘリックス構造に関する90%の信頼性を示す。κ−カゼイン(109〜137)で起こり得る構造モチーフは、α−ヘリックス貫通残基109〜126、ターン構造、及び別のα−ヘリックス貫通残基129〜137とを含む。これらのモチーフに基づき、κ−カゼイン(109〜137)ペプチドのモデルをSYBYLソフトウェアを用いて構築した。RgpBを阻害するκ−カゼイン(109〜137)のモデルを、RgpBの結晶構造(PDB 1cvr)、及び潜在的な金属結合部位を有する提唱されたκ−カゼイン(109〜137)のモデルに基づき展開した。図17(a)は、ペプチド阻害剤であるκ−カゼイン(109〜137)、Zn(II)、及び合成基質(BApNA)との相互作用に関与するRgpB活性部位の残基を強調する提唱されたモデルを示す。このモデルはRgpBのHis211残基及びGlu152残基、κ−カゼイン(109〜137)のAsp115残基及びGlu118残基とZn(II)との間の静電相互作用を強調している。κ−カゼイン(109〜137)のIle122残基はBApNA基質との疎水性相互作用を形成する。またRgpBのTrp284残基及びCys244残基はそれぞれ、BApNA基質のArg残基及びアミド結合と相互作用する。図17(b)は、Zn(II)の存在下での酵素−基質複合体(RgpB−BApNA)と結合するκ−カゼイン(109〜137)の提唱された分子モデルを示す。このモデルは相乗的阻害の実験上の証拠と一致している。
組成物及び製剤
治療又は予防を目的とする本発明の態様を具体化する組成物の例示を助けるために、以下の試料製剤を調製する。
【0137】
以下は歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
グリセロール 20.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ナトリウムラウロイルサルコニセート 0.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
グルコン酸クロルヘキシジン(Chlorohexidine gluconate) 0.01
デキストラナーゼ 0.01
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.2
水 残り
【0138】
以下は更なる歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウロイルジエタノールアミド 1.0
モノラウリン酸スクロース 2.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.1
水 残り
【0139】
以下は更なる歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ソルビトール 22.0
アイリッシュモス 1.0
水酸化ナトリウム(50%) 1.0
Gantrez 19.0
水(脱イオン水) 2.69
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
サッカリンナトリウム 0.3
ピロホスフェート 2.0
アルミナ水和物 48.0
香料オイル 0.95
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.3
ラウリル硫酸ナトリウム 2.00
【0140】
以下は液体歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ポリアクリル酸ナトリウム 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 20.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
エタノール 3.0
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.2
リノール酸 0.05
水 残り
【0141】
以下は洗口液製剤の一例である。
成分 %(w/w)
エタノール 20.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイルジエタノールアミド 0.3
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.2
水 残り
【0142】
以下は更なる洗口液製剤の一例である。
成分 %(w/w)
Gantrez(登録商標)S−97 2.5
グリセリン 10.0
香料オイル 0.4
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイルジエタノールアミド 0.2
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.3
水 残り
【0143】
以下はロゼンジ製剤の一例である。
成分 %(w/w)
糖 75〜80
トウモロコシシロップ 1〜20
香料オイル 1〜2
NaF 0.01〜0.05
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.3
ステアリン酸Mg 1〜5
水 残り
【0144】
以下は歯肉マッサージクリーム製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ホワイトワセリン 8.0
プロピレングリコール 4.0
ステアリルアルコール 8.0
ポリエチレングリコール4000 25.0
ポリエチレングリコール400 37.0
モノステアリン酸スクロース 0.5
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.3
水 残り
【0145】
以下は歯周ゲル製剤の一例である。
成分 %(w/w)
Pluronic F127(BASF製) 20.0
ステアリルアルコール 8.0
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 3.0
コロイド二酸化ケイ素(例えばAerosil(登録商標)200(商標))1.0
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
水 残り
【0146】
以下はチューイングガム製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ガム基剤 30.0
炭酸カルシウム 2.0
結晶性ソルビトール 53.0
グリセリン 0.5
香料オイル 0.1
本発明の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物 0.3
水 残り
【0147】
本発明は本明細書中で詳細に説明しているが、実施例は単に例示目的にすぎないと理解すべきである。分子生物学、歯の治療及び関連の関連分野の当業者にとって明らかな本発明の実施形態の他の修正形態が本発明の範囲内であることが意図される。
【0148】
【表8−1】

【0149】
【表8−2】

【配列表フリーテキスト】
【0150】
配列番号12:Xaaはグリコシル化トレオニン
配列番号13:Xaaはグリコシル化トレオニン
配列番号14:Xaaはグリコシル化トレオニン
配列番号15:Xaaはグリコシル化トレオニン
配列番号16:Xaaはリン酸化セリン
配列番号24:Xaaはグリコシル化トレオニン
配列番号25:Xaaはグリコシル化トレオニン
配列番号26:Xaaはグリコシル化トレオニン
配列番号27:Xaaはグリコシル化トレオニン
配列番号28:Xaaはリン酸化セリン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌酵素の活性を阻害、低減又は阻止する化合物、ペプチド又はペプチド模倣物であって、該化合物、該ペプチド又は該ペプチド模倣物が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5、並びにそれらにおける保存的置換体からなる群から選択されるアミノ酸配列から本質的になる、細菌酵素の活性を阻害、低減又は阻止する化合物、ペプチド又はペプチド模倣物。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4及び配列番号5からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物。
【請求項3】
前記アミノ酸配列が配列番号5である、請求項1に記載の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物。
【請求項4】
配列番号1〜配列番号32のいずれか1つと少なくとも60%同一であるアミノ酸配列からなる、細菌酵素の活性を阻害、低減又は阻止する化合物、ペプチド又はペプチド模倣物。
【請求項5】
前記細菌酵素がジンジパインである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物。
【請求項6】
前記ジンジパインがポルフィロモナス・ジンジバリス由来である、請求項5に記載の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物。
【請求項7】
カゼイン又はその断片のアミノ酸配列を含む化合物、ペプチド又はペプチド模倣物と、薬学的に許容される担体とを含む、細菌酵素を阻害する医薬組成物。
【請求項8】
前記アミノ酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4又は配列番号5、及びそれらにおける保存的置換体のいずれか1つ又は複数から本質的になる、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
二価カチオンを更に含む、請求項7又は8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記二価カチオンが亜鉛である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物と、薬学的に許容される担体とを含む、歯周病の治療に使用される医薬組成物。
【請求項12】
二価カチオンを更に含む、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記二価カチオンが亜鉛である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
歯周病の治療用の薬剤の調製における請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物、ペプチド又はペプチド模倣物の使用。
【請求項15】
歯周病を予防又は治療する方法であって、有効量の請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物、ペプチド、ペプチド模倣物を、必要とする被験体に投与することを含む、歯周病を予防又は治療する方法。
【請求項16】
細菌酵素を阻害する方法であって、該酵素と、配列番号1〜配列番号32、及びそれらにおける保存的置換体のいずれか1つからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む化合物、ペプチド又はペプチド模倣物を含む組成物とを接触させることを含む、細菌酵素を阻害する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【公表番号】特表2012−530073(P2012−530073A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515290(P2012−515290)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/AU2010/000760
【国際公開番号】WO2010/144968
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(510007610)オーラル ヘルス オーストラリア ピーティーワイ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】