カソード防食を含む極低温タンク試験方法
使用前に極低温金属タンクを試験するための方法。タンク(1)が水で満たされ、必要な場合には、適当な測定が行われる。金属極低温タンク(1)に海水を満たし、ほぼ露出した鋼鉄からできているタンク(1)の底部と側部の金属壁部(2,3)に、アノードが海水に浸漬した場合に、タンク(1)内に配置されているアノードに電流を注入することにより一時的なカソード防食を行う。
都合のよいことに、第1のアノード・アレイ(51)は、支持手段(52)によりタンクの底部のすぐそばに設置されている。支持手段(52)と第1のアノード(51)は取り外すことができることが好ましい。第1のアノード(51)は、タンクの底部の表面の中心を中心とする同心円(C1)の周囲に配置することが好ましい。円(C1)の直径は、タンクの底部(2)の40%乃至75%であることが好ましい。
都合のよいことに、第1のアノード・アレイ(51)は、支持手段(52)によりタンクの底部のすぐそばに設置されている。支持手段(52)と第1のアノード(51)は取り外すことができることが好ましい。第1のアノード(51)は、タンクの底部の表面の中心を中心とする同心円(C1)の周囲に配置することが好ましい。円(C1)の直径は、タンクの底部(2)の40%乃至75%であることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス用の極低温貯蔵タンクに関する。
より詳細には、本発明は使用する前の極低温タンクの漏洩および機械的強度の試験方法に関する。さらにより詳細には、本発明は金属極低温タンクにカソード防食を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス用の極低温タンクは、通常、淡水を満たすことにより、使用前に強度および漏洩についての試験が行われる。好適には、存在するかもしれないすべての漏洩をより明確に示すために、タンク内の圧力が常圧以上になるようにタンクを満たすことが好ましい。
【0003】
同時に、この方法で水を満たすと、最も高いレベルの応力が作用するタンクの部分、すなわち、タンクの底の部分の機械的な強度も試験することができる。この場合、液化ガスの比重(−170℃での液体メタンの比重d=0.48)より大きい水の比重により、動作中、液化ガスで満たした場合の動作中のタンク内の最大圧力の2倍の圧力を加えることができるからである。さらに、陸上に設置されたタンクの場合には、この試験により、同時にタンクが位置する基礎の機械的強度も試験することができる。このタンクには、次に、通常の動作中に受ける負荷の2倍の負荷がかかるからである。
【0004】
極低温タンクは、特殊鋼で作られる。より詳細に説明すると、ASTM規格A−353またはA−353−Type1に対応し、また、下記の化学的組成に対応する「9%ニッケル鋼」と呼ばれる鋼鉄から作られる。
【0005】
・炭素(最大): 0.13%
・マンガン(最大): 0.90%
・リン(最大): 0.035%
・硫黄(最大): 0.035%
・シリコン(最大): 0.15乃至0.40%
・ニッケル(最大): 8.50乃至9.50%
・残り:鉄
このタイプの鋼鉄が、極低温タンク内で使用される。何故なら、このタイプの鋼鉄は、極低温用途に有利な特性を有し、特に、極低温において優れた機械的強度と優れた粘り強さを有するからである。しかし、このタイプの鋼鉄は、水が存在すると腐食に非常に弱く、特に、水のpHが完全に中性でない場合には非常に弱い。この理由として、通常使用される水は海水であることが挙げられる。
【0006】
結果として起こる腐食現象は、一般に、局部的なもので、遷移部分、すなわち、溶接部または原料の鋳造、および上記金属タンクの上記壁部を形成しているシートまたはバーの圧延中に発生する恐れがある材料の欠陥部分で激しくなる。それ故、この注水試験を行って、極低温ガスを収容するための全金属タンクの絶対的な統合性を保証することはきわめて重要なことである。
【0007】
極低温タンクに水を満たして機械的強度試験および漏洩試験を行うためには、通常、腐食を抑えるために、タンクに不動態化化学添加剤を含む淡水が満たされる。好適には、金属を露出状態に維持することが好ましい。何故なら、単に淡水注入試験のためだけに錆止めペイントを塗布すると、非常にコストが高くなって実際にこの試験を行うことができないからである。
【0008】
タンクに水を満たした場合、外側からタンクの壁部、特に、その垂直な側壁部、および垂直な側壁部がタンクの底部に接する場所を観察することにより漏洩試験を行うことができる。また、この方法でタンクに水を満たすと、通常液化ガスを満たした場合に耐えなければならない負荷のほぼ2倍に対応する負荷がかかった場合の構造体の全体的または局部的安定度を測定することにより、タンクが位置する土台の強度を試験することができる。最後に、この注水試験により、溶接によるひずみ、特に垂直壁部がタンクの底壁部に接する部分内に位置する溶接部に対するひずみを解放することができる。このようなひずみは、タンクの底部に加わる水圧による加圧だけで発生するもので、その圧力は、タンクの高さが50メートル(m)の場合には約5バールになり、タンクから水を排出した場合のひずみの緩和がそれに続く。
【0009】
タンクに水を満たした状態で、機械的強度試験および漏洩試験を行うには長い時間がかかるが、それは本質的には、上記タンクに水を満たすのに必要な時間および種々の測定および確認を行うために必要な時間によるものである。すなわち、実際には、8週間以上もの時間が必要になる。このような長い時間は、特に影響を受けやすい鋼鉄を使用している場合には、腐食の問題を引き起こす可能性が高い。
【0010】
さらに、淡水の使用は、現に経済上および環境上重大な問題を引き起こしている。理由としては、淡水の利用度が一般的に低い点が挙げられる。ところが、使用する極低温タンクの容積に対応する淡水の量は、150,000立法メートル(m3)に達する場合があり、250,000m3に達する場合すらある。さらに、このような大量の水のコストは、完成したタンクの全コストの非常に有意な部分を占める。最後に、水の主供給源への有意な影響を避けるために、淡水を1時間当たりある限られた量しか取水できない。その結果、注水時間が長くなり、そのため腐食の危険が増大し、言うまでもないことだが、タンクを使用できるようにするために余分な時間が必要になる。この点に関して、塩素を含んでいる場合には、腐食防止剤を添加しなければならなくなる場合もでてくるし、浸食性が高いpHを調整するために不動態化剤を添加しなければならない事態になる場合もでてくることを付け加えておかなければならない。このような状況下では、添加剤による追加コストの他に、環境規制により、試験が終わってタンクを空にする場合に、水を周囲の自然環境に放出することができる方法が制限され、特に、上記周囲の自然環境への水の放出は、このような環境がその水を吸収できる速度で行わなければならない。これが試験の終わりにタンクをゆっくりと空にしなければならない理由であり、これによりさらに、タンクを使用できるようになるまでの時間が長くなる理由である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故、本発明の第1の目的は、使用を開始する前に、極低温金属タンクの機械的強度試験および漏洩試験を行うための新しい方法を提供することである。この方法は、上記欠点を持っていないし、特に上記金属タンクの腐食を防止するのによりコストが安く、より効果的な方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の本来の特徴によれば、極低温金属タンクを試験するための本発明の方法は、海水を使用して行われる。
液化ガス貯蔵端末は、通常、港湾エリアに位置しているので、海水を直接使用すれば海水はただであるという利点がある。さらに、1時間当たり大量の必要な量の海水を抽出するための取水点を非常に簡単に造成することができ、一方、供給ネットワークまたは河川から直接淡水を取水する場合には、許容できない程度に環境またはネットワークに悪影響を与えないようにするためには、一般に取水量がかなり制限される。海水を使用する場合
には、注水を10乃至20倍も大量に行うことができ、それにより、タンクに水を注水する時間をそれに対応して短縮することができ、従ってタンク使用開始前の時間を短縮することができる。何故なら、それに応じて試験時間を短縮することができるからである。
【0013】
海水が存在する場合には、直ちに激しい腐食が起こり、特に、鋼鉄プレート間で行われた溶接、さらに、すでに説明したように、タンクの底部内のモールドにより熱的な影響を受けたタンクのゾーンに集中的に起こる。しかし、本発明を使用すれば、淡水の代わりに海水を有利に使用することにより極低温タンクを試験することができ、それと同時に一方では、海水の高い腐食効果にもかかわらず、タンクの底部および垂直な側壁部の両方上でタンクのすべての金属壁部の統合性を保証することができる。
【0014】
それ故、本発明のもう1つの目的は、使用前の注水試験が行われている間に、極低温金属タンクに対して、また好適には、すなわち、金属を露出した状態に維持しながら、保護ペイントを全然使用しないでこの目的を達成するために、高度の腐食防止保護を行う方法を提供することである。
【0015】
米国特許第3,855,102号に、複数のアノードに電流を供給しながら、水を内蔵する上記タンクの内側に直列に接続され、垂直に吊下されている複数のアノードを使用して、淡水を含む金属タンク内の腐食に対して長期間カソード防食を行うための原理が開示されている。
【0016】
このようなカソード防食を行えば、腐食に対して保護を行うことができるが、この保護は金属壁部と水との接触によるものであり、この保護はペイント・タイプの腐食防止コーティングによる保護の追加的な保護である。カソード防食の原理は、酸化力を有する周囲の水性媒体を電子により飽和し、それにより金属のすべての分解を避けるために、保護対象の金属の自然の電気化学ポテンシャル(E)を人工的に低減するという原理である。電子による上記の飽和は、所与のpHを有する電解質からなる上記水性媒体内に浸漬した金属アノードにより、また上記アノードに直流(DC)を注入することにより行われる。
【0017】
通常、関連金属が、pHおよび電解質のタイプの関数として腐食への免疫性を有する電気化学ポテンシャル、すなわち、その電気化学ポテンシャル以下では金属がカソード防食される、すなわち、金属が正しく分極される電気化学ポテンシャルを示す、いわゆるPourbaix図が考慮の対象になる。
【0018】
この分極は、瞬間的には起こらないが、それに対して上記アノードが作用する全表面上で必要な値に達する前に、アノードの周囲でゆっくりと進行的に行われる。通常実施されるカソード防食システムにおいては、一般に分極が完全に効果を発揮する前に、金属面が保護されるには数週間から数カ月かかる。通常実施されるカソード防食システムの場合には、電気の消費量を妥当な値に制限することが望ましい。何故なら、構造体の全耐用期間中、この電流を永久に流し続けなければならないからである。
【0019】
実際には、カソード防食は、効果的な保護を行う腐食防止コーティングの追加措置として行われる。このカソード防食は、アノードと、1平方メートル当たり約50ミリアンペアの電流密度を発生することができる電流供給源からなる装置を供給することにより行われる。この電流密度は、腐食防止コーティングが破損した任意のゾーン内で長時間有効なカソード防食を行うのに充分な電流密度である。このゾーンは、一般に、水と接触している全ペイント塗布エリアの10乃至20%にあたると推定される。
【0020】
米国特許第4,936,969号に、淡水のタンク内の半分の高さのところに、ケーブルで吊り下げた状態に維持するケーブル保護システムが開示されている。このケーブルは
、指定電流を連続的に供給するためのアノードとして機能する。上記ケーブルは、ラインによりフロートから吊り下げられている。ケーブルの形をしているこのアノード・デバイスの電流注入容量は小さいが、長期間にわたってこのような淡水タンクの保護を行うのには十分である。対照的に、初期分極プロセスは非常に遅く、非常に腐食に弱い裸の鋼鉄からできている極低温タンクに対して行われる注水試験の際のすべての腐食の発生を防止するのに適している有効なカソード防食を行うことはできない。
【0021】
鋼鉄する電流は、保護対象の面積に比例し、本発明は、一般に、注入電流を、通常の非合金鋼に対しては80mA/m2に制限する。この注入電流は、長時間有効なカソード防食を行うには十分であり、また、電気の消費量を妥当な値に制限する働きもする。何故なら、この電流を構造体の耐用期間中永久に維持しなければならないからである。
【0022】
より正確に説明すると、本発明は、使用前に極低温金属タンクを試験するための方法を提供する。この方法の場合には、上記タンクは水で満たされる。この方法の特徴は、下記の工程を行うことである。下記の工程とは、
・ 上記金属極低温タンクに海水を満たす工程と、
・ 上記タンク内にアノードを配置し、アノードが海水に浸漬した場合に、アノードに電流を注入することにより、本質的には露出した鋼鉄からできている上記タンク内の金属の底部と側壁部に一時的なカソード防食を行う工程である。
【0023】
タンクに海水を満たしている間に、タンクの大きな壁部エリアは最初急速に海水で濡れる。すなわち、タンクの底壁部は海水で濡れ、底壁部の周辺部は、また、最ももろいゾーンの1つになる。本発明の場合には、すべての腐食が起こるのを防止する目的で、注水が始まった後でできるだけ迅速に腐食防止保護を効果的に行うために、支持手段を使用してタンクの底部のすぐ近くに第1のアノード・アレイが設置される。この場合、好適には、上記支持手段および上記第1のアノードは取り外すことができることが好ましい。
【0024】
タンクの底部の近くにアノードを設置することにより上記アノードを浸漬することができ、それによりできるだけ速く腐食防止を行うことができる。それ故、上記支持手段は、上記第1のアノードをタンクの底部の近くに保持できるものでなければならないし、一方では、上記アノードと上記底部との間のすべての電気的接触を防止するために、アノードを底部から充分離れた状態に維持できるものでなければならない。
【0025】
本明細書で使用する「取り外すことができる」という用語は、試験が終了した後で、上記第1のアノードと上記支持手段とを上記タンクから取り出すことができることを意味する。
【0026】
より詳細に説明すると、タンクの底部近くの上記第1のアノードは、タンクの底部から50センチ(cm)未満の距離、好適には、2.5cm乃至20cmの距離、より好適には、5cm乃至10cmの距離だけ底部から上に位置していることが好ましい。この最適の距離は、上記アノードとタンクの金属底部の電気的接触を防止するばかりでなく、アノードがあまりに接近しすぎた場合に起こる恐れがある、すべての電解質の短絡を防止する働きをする。それ故、アノードがタンクの底部の接近しているために、電解質の短絡のすべての危険を防止する一方で最大の効率が維持される。
【0027】
本発明の場合には、タンクの底部に対して最適なカソード防食を行うために、上記第1のアノードは、タンクの底面の中心を中心とする同心円の周囲に配置されるが、好適には、タンクの底面の直径の40乃至75%の範囲内の直径を有することが好ましい。
【0028】
タンクの底部上に位置する上記第1のアノードのこの円形の配置は、アノード間、また
はそうでない場合には、実際に放出する電流密度に悪影響を及ぼす恐れがある1つのアノードの異なる部分間の干渉を避けるために最適な配置を表す。
【0029】
上記アノードは、タンクの底部の直径が大きい場合には、複数の同心円を形成するように配置することもできる。しかし、実際には、75m乃至90mまでの直径を有するタンクの場合で、アノードが50アンペア(A)の容量を有する場合には、タンクの直径の40%乃至75%の範囲内の直径の1つの円を含む配置で十分である。
【0030】
上記第1のアノードは下記のものにより構成することができる。
・「ワイヤ・アノード」とも呼ばれる1つまたはそれ以上の柔軟な金属ケーブル・アノード。好適には、上記アノードは円を形成しているか、または上記のいくつかの第1のアノードは、円の一部を形成していて、同じ円の周囲に配置されていることが好ましい、および/または
・不連続な状態で並べて配置されていて、そうしたい場合には、導電性ケーブルで相互に接続している複数の硬質のアノード。
【0031】
しかし、もっと大きな電流密度を供給するためには、好適には、それぞれが、特に、円筒形、長方形またはディスクの形のブロックの形をしている複数の硬質なアノードの形に上記第1のアノードを配置することが好ましい。
【0032】
より詳細に説明すると、上記第1のアノードは、1つまたはそれ以上の第1のストリングを形成するために、1つ以上のケーブルにより相互に接続されている。上記第1のストリングは、タンクの上記底部の上に近接してほぼ水平に配置されている。
【0033】
本明細書においては、「アノードのストリング」という用語は、上記硬質のアノードが、それに沿って上記第1のアノードが、好適には一定の間隔で配置されている導電性ワイヤからなるケーブルにより相互に接続されていることを意味する。上記ワイヤは、2つの連続しているアノード間で電気的に絶縁されていて、ワイヤと上記アノード間は電気的に接触している。
【0034】
上記第1のアノードは、特に任意の1つのストリング内では相互にできるだけ接近して配置されているが、これらアノードは、その効果、すなわち、これらアノードが供給する電流密度に悪影響を与える虞があるような電気的干渉を回避するために十分な間隔をおいて配置されている。
【0035】
ある実施形態の場合には、上記支持手段は、電気的絶縁材料より形成された素子からなり、タンクの底部上に位置している。また、上記素子は、適宜に第1のストリングに沿って、第1の各アノードの対向端部に位置される。
【0036】
さらにより詳細に説明すると、上記支持手段は、タンクの底部上に垂直に立っているディスクからなる。上記ディスクは、その中心を通る上記第1のストリングの上記第1のアノードの2つの連続しているアノードを相互に接続されいる絶縁ケーブルの一部を有する。ディスクの直径は、上記垂直方向の上記第1のアノードの直径より大きくする等、適宜に変更可能である。
【0037】
タンクの底部が海水で濡れた後で、タンクの垂直な側壁部をさらにカソード防食するためには、その底部に近いタンクの水平方向の配置内に上記第1のアノードを設置し、また好適には取り外すことができるように、その頂部からタンクの内側の垂直に吊り下げられている第2のアノードを設置すると有利である。この場合、好適には、上記第2のアノードは、また、垂直に吊り下げられている第2のストリングの形に相互に接続していること
が好ましい。また、上記第2のストリングは、好適には、内接するように相互に間隔を置いて配置することが好ましい。また、好適には、上記タンクと同じ軸を有する円筒形に配置することが好ましい。
【0038】
有利な実施形態の場合には、垂直に吊り下げられている第2のストリングの底端部に配置されている第2のアノードの端部アノードは、第1のアノードの上記円で囲まれている円形面の面積S1が、タンクの底部の残りの面積S2に、タンクの底部の側壁部の高さHのところの底部の部分の面積S3を加えたものにほぼ等しくなるように、底部から高さHのところに位置している。面積S2は、面積S1の外側に位置するタンクの底部の残りの面積であり、S1=S2+S3である。
【0039】
上記第1のアノードが、ある電流容量を有し、これら第1のアノードが、腐食が発生するのを防止するために適当な電気化学ポテンシャルを達成することができるような電流密度を発生することができるだけの数および配置で設置されていること、そしてこれは、腐食が発生するのに必要な時間より短い時間内に、特に1時間より短い時間内に、好適には20分より短い時間内、好適には、実際には瞬間的に行われ、タンクの底部の表面(S1+S2)のすべての点でこれが発生すること、そのほうがよい場合には、タンクの垂直な側壁部の高さHのところの底部表面(S3)上のすべての点で起こることを理解することができるだろう。タンクの底部近くに位置する第1のアノードのこの配置により、浸漬した側壁部を保護するために垂直に吊り下げられている第2のアノードが腐食防止を行う前に、タンクの低い部分(すなわち、S1+S2+S3)に対して完全なカソード防食を行うことができる。
【0040】
海水の存在下で9%ニッケル鋼に対して本発明により行った測定は、腐食に対して免疫性を与えるためには、Ag/AgClタイプの基準電極に対して、−950ミリボルト(mV)の保護電気化学ポテンシャルで十分であることを示した。
【0041】
より詳細に説明すると、上記タンクの金属は9%ニッケル鋼であり、鋼の保護電気化学ポテンシャルは−950mVであり、第1のアノードは、200mA/m2乃至400mA/m2の電流密度が達成できるように、タンクの底部近くに位置している。それ故、この電流密度は、水を含む従来の金属タンクに対するカソード防食の分野で通常実施される電流密度の数値の4乃至8倍である。この場合、構造体の全耐用期間中分極を維持しなければならない。
【0042】
タンクの底部上で円形の幾何学的形状の周囲に、端部同士が向き合うように配置されているアノードのストリングにより、電流を約200mA/m2乃至400mA/m2の密度で注入することができる。
【0043】
本発明の場合には、高容量アノード、特に50Aの非常に大きな注入電流を収容することができ、200mA/m2乃至400mA/m2の電流密度を供給することができるアノードを使用することにより、また、タンクの金属底部および壁部に近いアノード間に、25ミリメートル(mm)乃至500mmの範囲内の狭い間隔で関連する非常に高い密度でアノードを配置することにより、−950mVの腐食免疫性電気化学ポテンシャルを達成し、上記アノードが海水内に浸漬された後で、アノードが腐食保護を開始するやいなや、非常に迅速にまたは実際には瞬間的に、9%ニッケル鋼でできているタンクの全底部上で分極プロセスを作動することができる。
【0044】
それ故、本発明を使用すれば、タンクの底部および垂直な側壁部の両方の全閉じ込めエンベロープの統合性を保証しながら、従来使用されてきた淡水の代わりに、海水を有利に使用して注水試験を行うことができる。
【0045】
本発明の他の有利な特性によれば、タンクの底部のすぐ近くに位置する上記第1のアノードが完全に浸漬されるまで、最初上記タンクは淡水で満たされる。その後で、上記第1のアノードに電流が注入され、上記タンクへの注水が引き続き行われるが、こんどは海水が使用される。
【0046】
タンクの底部に近い位置に上記第1のアノードが位置しているので、淡水による最初の注水は少量の淡水で行われ、上記第1のアノードが腐食保護動作に入る前に、腐食のすべての危険をさらに低減することができ、タンクの底部に対して有効なカソード防食を行うことができる。
【0047】
都合のよいことに、本発明の他の特性によれば、上記壁部の電気化学ポテンシャルを測定するために、また複数の発電機またはその位置により、種々のアノードに関連して行われた上記測定の関数として、種々のアノード内に注入される電流の量を規制することができるように、上記第1および第2のアノードに別々に電流を供給することができるコントローラを制御するために、上記タンクの底部および壁部上に種々のデバイスが設置される。
【0048】
本発明は、また、本発明の試験方法で使用するのに適している鋼鉄の露出金属壁部を有する極低温タンクを提供する。上記タンクの特徴は、このタンクが、好適には、上記タンク内に取り外すことができるように配置することが好ましい、すでに定義したアノードを含む一時的なカソード防食システムを含むことと、上記タンクが、また、好適には、複数の発電機またはすでに説明したように、上記アノードに異なる量の電流を供給するのに適しているコントローラを制御するために、上記壁部の電気化学ポテンシャルを測定することができる種々のデバイスを含むことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の他の特徴および利点については、添付の図面を参照しながら種々の実施形態の下記の詳細な説明で記述する。
図1は、貯蔵対象の極低温液体を収容するための底部1、および円形円筒状の側壁部3を備える大容量の円形円筒状の金属タンク1である。
【0050】
図2は、それに極低温特性を与える円筒状の金属タンク1用の絶縁システムである。この絶縁システムは、鉄筋コンクリート32のウエブからなる硬質管状構造体により囲まれている熱絶縁材料31自身の層からなる。タンク1は、その頂部上に金属フレーム41により支持されているドーム状のカバー4を有する。
【0051】
例を挙げて説明すると、円筒状の金属タンクは、内径75m、高さ50mを有する空間を含み、165000m3の容積を有する。タンクの内壁を形成していて、カソード電流により保護しなければならない金属の総面積は約16000m2である。
【0052】
タンクはすでに説明したように、9%ニッケル鋼で作ると有利であり、その壁部は、底部2のところの壁部の厚さを19mmにし、垂直な側壁部の底端部のところの厚さを28.8mmにすると有利である。この場合、垂直な側壁部のこの厚さは、上記タンクの垂直な側壁部3の頂部の最小の厚さが10mmになるように、タンクの頂部の方向にほぼ同じ傾きでテーパ状になっている。
【0053】
図2は、大きな剛性を与え、絶縁システムを含む130cmの厚さを有する基礎いかだ(raft)21である。
タンク1の金属側壁部3を取り巻く熱絶縁材料の層31は、例えば、パーライト(pe
arlite)からできていて、100cmの厚さを有する。鉄筋コンクリートの外部ウエブ32は80cmの厚さを有する。
【0054】
図1、図5、図9および図10は、円形に配置されているタンクの底部2の近くに水平に位置する上記第1のアノード用の種々の装置を示す。
図1の場合には、上記第1のアノード51は、円筒状のC1内に位置する1つの「第1の」ストリング5を形成する。図9の場合には、上記第1のアノードは、それぞれがほぼ半円の形をしている2つの「第1の」ストリング5を形成する。この場合、上記2つの第1のストリングは、一緒に円C1を形成する。図5の場合には、上記第1のアノードは、複数のストリング、すなわち、水平に延びる8つの「第1の」ストリング5を備える。上記第1の各ストリング5は、3つのアノード51を備える。上記第1のストリングは、円の一部を形成し、これらストリングは、共通の円の周囲に等間隔になるように配置されている。図5の実施形態は、複数の上記第1のストリングを含むことが好ましい。何故なら、上記第1のストリングは、電流レベルを関連ゾーン内の要件に整合させるために、それぞれの異なる電流の供給を受けることができるからである。非常に大型のタンクの場合には、および特に75mを超える直径のタンクの場合には、第1の円C1の周囲に配置されている上記第1のストリング5は、タンクの底部の表面上の中心ゾーンに追加のカソード防食を行うように、もっと小さな直径の円C2の周囲に配置されているもっと小さな電流容量の細長い柔軟なアノードと関連を有することができる。それ故、図10の場合には、上記第1の柔軟なアノードの中の2つは、同心円C2の周囲を延びる湾曲したケーブルの形でタンクの底部の中心ゾーン内に位置する。この場合、上記の細長い各第1のアノードは、その周囲のほぼ半分を占める。それ故、もっと小さな直径の円C2内に位置する第2の一連の第1のアノードは、タンクの底部2の中心部分に追加のカソード防食を行う。
【0055】
また、図1および図2は、タンクのドーム4の構造体41から垂直に吊り下がっているアノード6の第2のストリングを示す。
図1は、垂直に延びる、すなわち、水平面の一部内の円内を延びるアノード6の種々の第2のストリングの好適な配置を示す。
【0056】
図1および図10は、図に示すための便宜上、底部アノードが床上Hの高さに位置している場合の、それぞれが等間隔で配置されている複数のアノード61を備える6つの上記の垂直な第2のストリング6を示す。
【0057】
図3および図4の場合には、アノード5および6のストリングは、それぞれ、アノード51および61の相互に接続しているか、またはこれらアノードを通る、好適には、銅でできていることが好ましい導電性ケーブル7からなる。アノードは、好適には、機械的に正しい位置に保持されている上記ケーブル7の周囲に固定されていることが好ましい。上記アノード51,61は、種々の貴金属でカバーされているタングステンのような貴金属からできている。上記アノード51,61は、好適には、導電性ケーブル7に沿って等間隔で設置されていることが好ましい。ケーブル7は、所与のストリング56内の2つのアノード51,61の間に絶縁材料71を有する。しかし、導電性ケーブル7は、当然上記アノード51,61に電気的に接続していて、2つの連続しているアノード51および61間を延びるケーブルのこれらの部分だけが絶縁される。
【0058】
上記各ストリングにおいては、使用しているアノード51,61は、大容量のものである。すなわち、これらアノードは50Aの容量を有し、その形は円筒形または卵形であり、それぞれ、その長さは約1mであり、外径は約22mmであり、干渉を避け、最大の電流密度を得るために、上記ストリングに沿って3乃至5m間隔で位置している。
【0059】
上記の垂直な第2のストリング6においては、図面に示す都合上、5つのアノード61
だけが図示されている。50mの高さを有するタンクの場合には、もっと多くの上記アノードが必要なことを理解することができるだろう。
【0060】
水平ストリング5は、例えば、絶縁材料からできているディスクからなり、アノード51の直径よりも大きい直径を有する支持素子52によりタンクの底部2のすぐ近くに保持されている。上記ディスクは、各アノード51の各端部のところのケーブル7の周囲に位置している。これらの絶縁ディスク52は垂直に配置されていて、その縁部を通して、25mmの直径を有するアノード用の225mmの外径を有するタンクの底部2上に位置していて、それにより、確実にアノード51がタンクの底部2から100mmのほぼ一定の間隔を有するようにし、そのため、アノード51と底部2との間の電気的接触を防止すると同時に、電解質の短絡も防止する働きをする。
【0061】
75mの直径を有するタンクの場合には、上記第1のアノードを半径R1=27mの円の周囲に複数のストリングとして配置すると有利である。
タンクの底部上に位置する上記第1のアノード51を円内に配置すると、供給電流密度に悪影響を持つ恐れがある、アノード間の干渉を避けるための最適な配置になる。第1のアノード51を上記特性(アノードの長さ1m、容量50A、相互に3m乃至5m離れている)を有する円内に位置させると、アノード内に50Aの電流を注入することにより、250mA/m2乃至275mA/m2の初期電流密度を得ることができ、それ故、数十分以内、または数分以内に、上記アノードから数十メートルの半径内に位置するタンクの表面のところにある電位を得ることができる。
【0062】
図1の場合には、アノード6の垂直なストリングは、アノード5の上記水平ストリングと同じ直径を有する円の周囲に位置しているが、それはアノードを設置したり取り出したりする実際の都合上このような配置になっているだけである。しかし、機能上の観点から、タンクの側壁部の表面に対して垂直な第2のアノード61を配置する距離は、上記側壁部からの第1のアノードの距離と異なる距離であってもよい。タンクの側壁部の表面にあまりに接近して垂直なアノード61を設置するのは、必ずしも有利ではない。何故なら、そのような配置にすると、もっと多くのアノードを使用しなければならなくなるからである。
【0063】
図1、図5および図9に示す円C1内に配置されたアノード5の水平ストリングの配置の別の好適な実施形態の場合には、上記円C1は、水平ストリング5が形成する円の外側のタンクの底部上の表面の残りの部分が形成する表面積S2に、アノードの垂直なストリングの底部端部の高さに対応する、高さHのところの垂直な側壁部3の底部に対応する表面積S3を加えたものにほぼ等しい内表面積S1を形成するように(S1=S2+S3)、25m乃至30mの半径R1を有する。それ故、25m乃至30mの範囲内の半径R1の場合には、Hは1m乃至4mの範囲内にある。
【0064】
タンクに注水している際に、海水がアノード6の垂直な第2のストリングの底端部のところの末端のアノード61に達した場合で、このアノードとまだ接触してない場合には、底部と海水で濡れた垂直な壁部の一部からなる、タンクの底部にカソード防食を行うのは、底部上に位置するアノード5の水平な第1のストリング内の第1のアノード51だけである。それ故、アノード6の垂直なストリングの上記アノード61が腐食保護動作をスタートするまで、底部上に位置するアノード5の上記水平なストリングは、タンクの底部の表面積S1+S2に、底部吊り下げアノード61の下に位置する側壁部の底部の表面積S3を加えたものからなる保護対象のタンクの表面のほぼ重心に位置し、できるだけ速く分極の必要なレベルに上げるために供給される非常に大きな電流が、タンクの中心から底部の周辺および高さHまでの側壁部に均等で最適な状態で分配される。
【0065】
図7A乃至図7Dのアノードに対する位置の関数として、電流密度(mA/m2)がどのように変化するのかを示す図7A乃至図7Dおよび図8A乃至図8Bを参照しながら、分極プロセスについて説明する。図7Aは、アノードに電流の注入をスタートした時の電流密度を示し、図7B、図7Cおよび図7Dは、その後の例の図である。図8Aおよび図8Bは、それぞれ、時間の関数として、処理対象のタンクの表面の所与の点で測定した電気化学ポテンシャルEおよび電流密度(I/m2)である。
【0066】
図8Aおよび図8Bは、時間tpのところまで、電気化学ポテンシャルEおよび電流密度が同時に上昇することを示す。時間tpにおいて、電気化学ポテンシャルEは、この場合には、−0.95Vである腐食免疫値に達する。この値は、使用する9%ニッケル鋼の分極に特有なものであり、この時間tpのところで、ほぼ同時に電流密度のピークは、250mA/m2乃至275mA/m2に達する。図7A乃至図7Dを見れば、アノードに対して電流の供給がスタートするとすぐに、アノードの近いゾーン内の電流密度が非常に高くなり、ここから離れるにつれて減少することが分かる。供給電流は、自然に250mA/m2乃至275mA/m2の範囲内にある最大値に制限される。何故なら、このような鋼の保護電位(−950mV)に迅速に到達するには、このレベルで十分であるからである。
【0067】
電気化学プロセスは、ミネラル塩を含む海水内で行われ、カルシウムおよびマグネシウムをベースとするスケールの沈殿物が観察される。それ故、このスケールは、アノードに近いゾーン内の図8Aおよび図8Bのt=0とt=tpの間に沈殿し、その後で、電流密度は減少し、50mA/m2乃至100mA/m2の範囲内で安定し、一方、電圧Eは、もはや有意に変化しないで、約−1Vのところに留まる。スケール沈殿物は、分極面上のpHの増大によるもので、この沈殿物は、関連エリア上で、電流密度を約50mA/m2乃至約100mA/m2の範囲内に位置する値まで減少させる効果を有する天然の絶縁バリヤを生成する。これは電位Eを、9%ニッケル鋼に対して−0.95Vよりもっと負の方向の値に維持するのに十分である。これにより、すべての腐食プロセスが防止される。
【0068】
それ故、アノードをできるだけタンクの底部に近づけることにより、また供給電流レベルを増大することにより、保護層が形成されるこのプロセスが有意に加速されることが理解できるだろう。
【0069】
実際には、アノード51を底部から数センチメートルのところに設置することにより、海水の注水速度が1時間当たり1000立法メートル(m3/h)を超える場合には、アノードは数分間海水内に浸漬し、その結果、アノードが海水内に浸漬すると、アノードは瞬間的に腐食保護活動に入り、数分以内に効果的な保護がスタートする。さらに、大容量アノード内の供給電流レベルが十分に高い場合(50A容量)で、すでに説明したようにアノードの数が十分であり、適当に配置されている場合には、約10メートルの遠い距離のところで、迅速に(数分以内に)カソード防食を行うことができる。それ故、数十分以内に、タンクの底部の全表面が完全に保護され、その結果、すべての腐食の開始を防止することができる。
【0070】
好適な実施形態の場合には、タンクに水を注水することによるタンクの漏水および機械的強度を確認するための試験は、通常、淡水の深さが5cm乃至10cmになり、妥当な量の淡水が注水されて、底部のアノード51が完全に浸漬されるまで、1000m3/hの流量でタンクに淡水を注水することによりスタートする。その後で、上記アノードに電流が供給され、非常に速い流速で海水が引き続き注水される。
【0071】
「淡水」は、浸食性があまり強くない場合には、その地方の給水源または川水、または工業用水からとることができる。
海水が淡水と混合し、電流がアノード内に注入されると、アノードが分散配置されていて、またタンクの底部上に位置するすべてのアノードを通して非常に大量の電流が同時に注入されるために、タンクの底部の金属表面は数分以内にカソード防食構成内で分極を起こす。
【0072】
アノード5および6の上記ストリングは、1つまたはそれ以上の定電流源9に接続していて、デバイス91は、好適には、その頂部を通してタンク1から延びているケーブル8を通して注入される電流を監視し、制御することが好ましい。複数のストリング5、6は、アレイの形に相互に接続することができ、1つの定電流源9と関連づけることができる。しかし、好適には、アノード5の水平の第1のストリング、およびアノード6の上記の垂直な第2のストリングは、いくつかの発電機9またはいくつかのコントローラ9a乃至9cに接続していることが好ましく、また好適には、上記各アノード・ストリング6は、いくつかの発電機9またはコントローラ9a乃至9cに関連する1つの発電機9に接続していることが好ましく、それにより、保護されている底壁部2のゾーンおよび側壁部3のゾーンの関数として、カソード防食を最適にするために、(以下に説明するように)電流の注入を上記各ストリング5,6内で別々に制御することができる。上記ゾーンの中の特定のゾーン内に欠陥が生じた場合に、このような個別の制御が必要になる場合があり、タンクが多角形の基礎の上に載っている四角柱である場合には、必ず必要になる。何故なら、このようなタンクは、比較的もろく、タンクの残りの部分よりももっと高いレベルのカソード防食を必要とするコーナーを持っているからである。
【0073】
図2の場合には、タンクのドーム4の上部構造体41から吊り下がっているアノード6のいくつかの垂直なストリング、およびタンクの底部上に位置するいくつかの水平なストリング5は、ケーブル8により、1つの定電流源9に電気的に接続している。この場合、何本かのケーブル8がブラケット20から吊り下がっている。このようなブラケット20は、図9の好適で有利な実施形態上に設置することもできる。
【0074】
図9の場合には、タンク1の壁部の電気化学ポテンシャルEは、タンクの底部2上に3つのセンサ10a、10bおよび10cを設置し、垂直な壁部の発電機のラインに沿って3つの追加のセンサ10d、10eおよび10fを設置することにより監視することができる。例えば、Ag/AgCl基準セル・タイプのこれらのセンサ10a乃至10fは、監視および制御ユニット11に接続していて、電気化学ポテンシャルの値が、パーソナルコンピュータ・タイプのコンピュータ12により試験中継続的に記録される。例えば、24VDCのような低電圧の分極電流が、主電源に接続していて、また中央監視/制御ユニット11の制御下で、サイリスタにより、3つの電子コントローラ9a,9b,9cに接続しているトランスおよび整流器9により供給される。コントローラ9aは、上記の垂直な第2のストリング6すべてに接続していて、コントローラ9bおよび9cは、それぞれ、アノード5の上記第1のストリングの2つの異なるストリング、または半円形に配置されていて、タンクの底部上に位置しているが、図10のところで説明するように、そこから絶縁している上記の連続している第1のアノード51の2つのアノードに接続している。
【0075】
底部上に配置されているセンサ10a乃至10cは、下記のように有利に配置されている。
・センサ10aは、図7Aに示す分極波および図7B方向へのその変位を監視するために円形アノードの近くに位置する。
【0076】
・センサ10bは、水が深くなると、分極電流がどのように変化するのかを監視するために、円筒状の側壁部のコーナーの近くに位置する。
・最後のセンサ10cは、図7Cおよび図7Dに示すように、タンクの底部全体上の分
極状態を監視するために、タンクの中心の方向に有利に位置する。
【0077】
センサ10d、10eおよび10fは、水の深さが上記タンクの頂部まで上昇する間の分極を監視するために、垂直な壁部3の発電機ラインに沿って有利に設置されている。
図面を見やすくするために、図では、センサに接続しているケーブルは、監視/制御システム11に直接接続しているが、実際には、これらのケーブルは、電力ケーブル8の経路に類似している経路を通る。すなわち、これらのケーブルは、タンク内を上昇し、上記監視/制御システム11に戻る前に、ブラケット20を通してドーム・レベルのところでタンクから離れる。
【0078】
電気化学ポテンシャルは、例えば、−0.95Vよりもっと負の範囲のような、最小(絶対)値より上の範囲に維持しなければならないし、また、例えば、−1.2Vを超えないように維持しなければならない。それ故、上記電気化学ポテンシャルが上記−0.95Vの最小(絶対)値に近づくやいなや、監視/制御システム11は、対応するコントローラ9a、9bおよび9cにより供給電流を有意に増大する。同様に、電気化学ポテンシャルが−1.2Vに近づくと、上記監視/制御システムは、供給される対応する電流量を有意に低減することにより動作する。
【0079】
図10に示すように、アノードが連続していなくて、円筒、楕円または多角形の形をしていようが、アノードが連続していて、電流供給容量の点で高性能なケーブルの形(「ワイヤ」アノード)をしていようが、底部上に複数の円または任意の他の幾何学的配置としてアノードが配置されていも、それは本発明の精神内に含まれる。このようなすべての配置において、上記アノードは直接の短絡および電気化学的短絡を防止するために、絶縁デバイスにより表面からある間隔を置いて保持される。
【0080】
図11および図12は、第1のアノード51の修正した実施形態を示す。これらの実施形態の場合には、第1のアノード51は、垂直な第2のストリング6を終端させるように位置している第1のアノードからなる。第1のアノード51は、支持手段52によりタンクの底部2上に位置していて、そのすぐ上に位置する上記最も近い第2のアノード61は、1乃至4mの範囲内の高さHのところに位置する。
【0081】
図11および図12の場合には、第1のアノード51は、水平に配置されている。すなわち、その主要な部分が水平方向に配置されている。しかし、垂直な側壁部を保護するための第2のアノード61の場合には、アノードは垂直に配置されている。すなわち、その主要な部分が垂直方向に延びている。図11の場合には、第1のアノードは、長方形の形をしていて、アノードの各端部に固定されている垂直に配置された絶縁ディスクより構成されている支持手段52により保持されている。図12の場合には、第1のアノード51は、上記第1のアノード51を構成している上記ディスクの下に配置されたスタッドまたは脚部52からなる支持手段により支持されている水平ディスクである。
【0082】
タンクを建造した後で、それに海水を注水する前に、第1のアノードはタンクの底部上に設置され、機械的に固定するかまたは一時的な接着剤により、タンクに注水している間に組立体が決して変形または移動しないようにするために、重りで安定させることにより正しい位置に保持される。上記注水は、かなりの流量(1000m3/h乃至1500m3/h)で行われるので、大量の渦巻きが発生する。
【0083】
垂直な第2のストリングは、ドームのフレームワーク41から吊り下げられていて、電流を供給するための何本かのケーブル、および電気化学ポテンシャル測定セルから延びる種々の測定ケーブルは、電力ユニットおよび監視/制御ユニットに達する前に、ドーム4のレベルのところでタンクから離れる。
【0084】
タンクの垂直な側壁部および底壁部と側壁部の間の接続部に対して漏水試験が行われ、この場合、上記壁部は、外部から特に絶縁用のゾーンおよびそのサイズのためにアクセスすることができるゾーンから観察される。
【0085】
試験の終わりに、タンクから水が抜き取られ、次に、第1および第2のアノードのように測定セルが抜き取られる。
次に、すべての塩分を除去するために、タンクの壁部の全表面が加圧淡水噴射により洗い流され、その後で放置して水を蒸発させる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】定電流源が電流をアノードのアレイに供給する、本発明のタンクの簡単な分解斜視図。
【図2】発電機とアノードのストリング間の接合部のある特定の実施形態の詳細を示す、本発明のタンクの軸に沿った二分割部分の側面図。
【図3】垂直に吊りさげられたアノードのストリングの一部を示す側面図。
【図4】タンクの底部上に位置するアノードのストリングの一部を示す側面図。
【図5】円形幾何学的形状内のタンクの底部上に設置するための、アノードのいくつかのストリングの分散方法を示す平面図。
【図6】底部上に位置するアノードと同一平面上のタンクの底部の表面のゾーンを示す斜視図。
【図7A】(mA/m2単位で)分極電流密度が縦座標上に表示され、アノードからの距離が横座標上に表示されている黒丸でアノードを表しているグラフ。
【図7B】(mA/m2単位で)分極電流密度が縦座標上に表示され、アノードからの距離が横座標上に表示されている黒丸でアノードを表しているグラフ。
【図7C】(mA/m2単位で)分極電流密度が縦座標上に表示され、アノードからの距離が横座標上に表示されている黒丸でアノードを表しているグラフ。
【図7D】(mA/m2単位で)分極電流密度が縦座標上に表示され、アノードからの距離が横座標上に表示されている黒丸でアノードを表しているグラフ。
【図8A】保護対象の金属側壁または底部上の任意の点Mのところでの、電気化学ポテンシャルE(図8A)および電流密度(I/m2)の変化を示すグラフ。
【図8B】上記図8Aと同じく電気化学ポテンシャルEおよび電流密度(I/m2)の変化を示すグラフ。
【図9】分極電流の供給を規制するための制御システムを示す簡略図。
【図10】図5に示すように、その底部上に設置されたアノードのストリングを有し、絶縁ディスク(図示せず)により、底部上のある距離に保持された2つの隣接する半円からなる円形アノードを有する円形タンクの平面図。
【図11】アノードの垂直なストリングを示す側面図。
【図12】アノードの垂直なストリングを示す側面図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス用の極低温貯蔵タンクに関する。
より詳細には、本発明は使用する前の極低温タンクの漏洩および機械的強度の試験方法に関する。さらにより詳細には、本発明は金属極低温タンクにカソード防食を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス用の極低温タンクは、通常、淡水を満たすことにより、使用前に強度および漏洩についての試験が行われる。好適には、存在するかもしれないすべての漏洩をより明確に示すために、タンク内の圧力が常圧以上になるようにタンクを満たすことが好ましい。
【0003】
同時に、この方法で水を満たすと、最も高いレベルの応力が作用するタンクの部分、すなわち、タンクの底の部分の機械的な強度も試験することができる。この場合、液化ガスの比重(−170℃での液体メタンの比重d=0.48)より大きい水の比重により、動作中、液化ガスで満たした場合の動作中のタンク内の最大圧力の2倍の圧力を加えることができるからである。さらに、陸上に設置されたタンクの場合には、この試験により、同時にタンクが位置する基礎の機械的強度も試験することができる。このタンクには、次に、通常の動作中に受ける負荷の2倍の負荷がかかるからである。
【0004】
極低温タンクは、特殊鋼で作られる。より詳細に説明すると、ASTM規格A−353またはA−353−Type1に対応し、また、下記の化学的組成に対応する「9%ニッケル鋼」と呼ばれる鋼鉄から作られる。
【0005】
・炭素(最大): 0.13%
・マンガン(最大): 0.90%
・リン(最大): 0.035%
・硫黄(最大): 0.035%
・シリコン(最大): 0.15乃至0.40%
・ニッケル(最大): 8.50乃至9.50%
・残り:鉄
このタイプの鋼鉄が、極低温タンク内で使用される。何故なら、このタイプの鋼鉄は、極低温用途に有利な特性を有し、特に、極低温において優れた機械的強度と優れた粘り強さを有するからである。しかし、このタイプの鋼鉄は、水が存在すると腐食に非常に弱く、特に、水のpHが完全に中性でない場合には非常に弱い。この理由として、通常使用される水は海水であることが挙げられる。
【0006】
結果として起こる腐食現象は、一般に、局部的なもので、遷移部分、すなわち、溶接部または原料の鋳造、および上記金属タンクの上記壁部を形成しているシートまたはバーの圧延中に発生する恐れがある材料の欠陥部分で激しくなる。それ故、この注水試験を行って、極低温ガスを収容するための全金属タンクの絶対的な統合性を保証することはきわめて重要なことである。
【0007】
極低温タンクに水を満たして機械的強度試験および漏洩試験を行うためには、通常、腐食を抑えるために、タンクに不動態化化学添加剤を含む淡水が満たされる。好適には、金属を露出状態に維持することが好ましい。何故なら、単に淡水注入試験のためだけに錆止めペイントを塗布すると、非常にコストが高くなって実際にこの試験を行うことができないからである。
【0008】
タンクに水を満たした場合、外側からタンクの壁部、特に、その垂直な側壁部、および垂直な側壁部がタンクの底部に接する場所を観察することにより漏洩試験を行うことができる。また、この方法でタンクに水を満たすと、通常液化ガスを満たした場合に耐えなければならない負荷のほぼ2倍に対応する負荷がかかった場合の構造体の全体的または局部的安定度を測定することにより、タンクが位置する土台の強度を試験することができる。最後に、この注水試験により、溶接によるひずみ、特に垂直壁部がタンクの底壁部に接する部分内に位置する溶接部に対するひずみを解放することができる。このようなひずみは、タンクの底部に加わる水圧による加圧だけで発生するもので、その圧力は、タンクの高さが50メートル(m)の場合には約5バールになり、タンクから水を排出した場合のひずみの緩和がそれに続く。
【0009】
タンクに水を満たした状態で、機械的強度試験および漏洩試験を行うには長い時間がかかるが、それは本質的には、上記タンクに水を満たすのに必要な時間および種々の測定および確認を行うために必要な時間によるものである。すなわち、実際には、8週間以上もの時間が必要になる。このような長い時間は、特に影響を受けやすい鋼鉄を使用している場合には、腐食の問題を引き起こす可能性が高い。
【0010】
さらに、淡水の使用は、現に経済上および環境上重大な問題を引き起こしている。理由としては、淡水の利用度が一般的に低い点が挙げられる。ところが、使用する極低温タンクの容積に対応する淡水の量は、150,000立法メートル(m3)に達する場合があり、250,000m3に達する場合すらある。さらに、このような大量の水のコストは、完成したタンクの全コストの非常に有意な部分を占める。最後に、水の主供給源への有意な影響を避けるために、淡水を1時間当たりある限られた量しか取水できない。その結果、注水時間が長くなり、そのため腐食の危険が増大し、言うまでもないことだが、タンクを使用できるようにするために余分な時間が必要になる。この点に関して、塩素を含んでいる場合には、腐食防止剤を添加しなければならなくなる場合もでてくるし、浸食性が高いpHを調整するために不動態化剤を添加しなければならない事態になる場合もでてくることを付け加えておかなければならない。このような状況下では、添加剤による追加コストの他に、環境規制により、試験が終わってタンクを空にする場合に、水を周囲の自然環境に放出することができる方法が制限され、特に、上記周囲の自然環境への水の放出は、このような環境がその水を吸収できる速度で行わなければならない。これが試験の終わりにタンクをゆっくりと空にしなければならない理由であり、これによりさらに、タンクを使用できるようになるまでの時間が長くなる理由である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故、本発明の第1の目的は、使用を開始する前に、極低温金属タンクの機械的強度試験および漏洩試験を行うための新しい方法を提供することである。この方法は、上記欠点を持っていないし、特に上記金属タンクの腐食を防止するのによりコストが安く、より効果的な方法である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の本来の特徴によれば、極低温金属タンクを試験するための本発明の方法は、海水を使用して行われる。
液化ガス貯蔵端末は、通常、港湾エリアに位置しているので、海水を直接使用すれば海水はただであるという利点がある。さらに、1時間当たり大量の必要な量の海水を抽出するための取水点を非常に簡単に造成することができ、一方、供給ネットワークまたは河川から直接淡水を取水する場合には、許容できない程度に環境またはネットワークに悪影響を与えないようにするためには、一般に取水量がかなり制限される。海水を使用する場合
には、注水を10乃至20倍も大量に行うことができ、それにより、タンクに水を注水する時間をそれに対応して短縮することができ、従ってタンク使用開始前の時間を短縮することができる。何故なら、それに応じて試験時間を短縮することができるからである。
【0013】
海水が存在する場合には、直ちに激しい腐食が起こり、特に、鋼鉄プレート間で行われた溶接、さらに、すでに説明したように、タンクの底部内のモールドにより熱的な影響を受けたタンクのゾーンに集中的に起こる。しかし、本発明を使用すれば、淡水の代わりに海水を有利に使用することにより極低温タンクを試験することができ、それと同時に一方では、海水の高い腐食効果にもかかわらず、タンクの底部および垂直な側壁部の両方上でタンクのすべての金属壁部の統合性を保証することができる。
【0014】
それ故、本発明のもう1つの目的は、使用前の注水試験が行われている間に、極低温金属タンクに対して、また好適には、すなわち、金属を露出した状態に維持しながら、保護ペイントを全然使用しないでこの目的を達成するために、高度の腐食防止保護を行う方法を提供することである。
【0015】
米国特許第3,855,102号に、複数のアノードに電流を供給しながら、水を内蔵する上記タンクの内側に直列に接続され、垂直に吊下されている複数のアノードを使用して、淡水を含む金属タンク内の腐食に対して長期間カソード防食を行うための原理が開示されている。
【0016】
このようなカソード防食を行えば、腐食に対して保護を行うことができるが、この保護は金属壁部と水との接触によるものであり、この保護はペイント・タイプの腐食防止コーティングによる保護の追加的な保護である。カソード防食の原理は、酸化力を有する周囲の水性媒体を電子により飽和し、それにより金属のすべての分解を避けるために、保護対象の金属の自然の電気化学ポテンシャル(E)を人工的に低減するという原理である。電子による上記の飽和は、所与のpHを有する電解質からなる上記水性媒体内に浸漬した金属アノードにより、また上記アノードに直流(DC)を注入することにより行われる。
【0017】
通常、関連金属が、pHおよび電解質のタイプの関数として腐食への免疫性を有する電気化学ポテンシャル、すなわち、その電気化学ポテンシャル以下では金属がカソード防食される、すなわち、金属が正しく分極される電気化学ポテンシャルを示す、いわゆるPourbaix図が考慮の対象になる。
【0018】
この分極は、瞬間的には起こらないが、それに対して上記アノードが作用する全表面上で必要な値に達する前に、アノードの周囲でゆっくりと進行的に行われる。通常実施されるカソード防食システムにおいては、一般に分極が完全に効果を発揮する前に、金属面が保護されるには数週間から数カ月かかる。通常実施されるカソード防食システムの場合には、電気の消費量を妥当な値に制限することが望ましい。何故なら、構造体の全耐用期間中、この電流を永久に流し続けなければならないからである。
【0019】
実際には、カソード防食は、効果的な保護を行う腐食防止コーティングの追加措置として行われる。このカソード防食は、アノードと、1平方メートル当たり約50ミリアンペアの電流密度を発生することができる電流供給源からなる装置を供給することにより行われる。この電流密度は、腐食防止コーティングが破損した任意のゾーン内で長時間有効なカソード防食を行うのに充分な電流密度である。このゾーンは、一般に、水と接触している全ペイント塗布エリアの10乃至20%にあたると推定される。
【0020】
米国特許第4,936,969号に、淡水のタンク内の半分の高さのところに、ケーブルで吊り下げた状態に維持するケーブル保護システムが開示されている。このケーブルは
、指定電流を連続的に供給するためのアノードとして機能する。上記ケーブルは、ラインによりフロートから吊り下げられている。ケーブルの形をしているこのアノード・デバイスの電流注入容量は小さいが、長期間にわたってこのような淡水タンクの保護を行うのには十分である。対照的に、初期分極プロセスは非常に遅く、非常に腐食に弱い裸の鋼鉄からできている極低温タンクに対して行われる注水試験の際のすべての腐食の発生を防止するのに適している有効なカソード防食を行うことはできない。
【0021】
鋼鉄する電流は、保護対象の面積に比例し、本発明は、一般に、注入電流を、通常の非合金鋼に対しては80mA/m2に制限する。この注入電流は、長時間有効なカソード防食を行うには十分であり、また、電気の消費量を妥当な値に制限する働きもする。何故なら、この電流を構造体の耐用期間中永久に維持しなければならないからである。
【0022】
より正確に説明すると、本発明は、使用前に極低温金属タンクを試験するための方法を提供する。この方法の場合には、上記タンクは水で満たされる。この方法の特徴は、下記の工程を行うことである。下記の工程とは、
・ 上記金属極低温タンクに海水を満たす工程と、
・ 上記タンク内にアノードを配置し、アノードが海水に浸漬した場合に、アノードに電流を注入することにより、本質的には露出した鋼鉄からできている上記タンク内の金属の底部と側壁部に一時的なカソード防食を行う工程である。
【0023】
タンクに海水を満たしている間に、タンクの大きな壁部エリアは最初急速に海水で濡れる。すなわち、タンクの底壁部は海水で濡れ、底壁部の周辺部は、また、最ももろいゾーンの1つになる。本発明の場合には、すべての腐食が起こるのを防止する目的で、注水が始まった後でできるだけ迅速に腐食防止保護を効果的に行うために、支持手段を使用してタンクの底部のすぐ近くに第1のアノード・アレイが設置される。この場合、好適には、上記支持手段および上記第1のアノードは取り外すことができることが好ましい。
【0024】
タンクの底部の近くにアノードを設置することにより上記アノードを浸漬することができ、それによりできるだけ速く腐食防止を行うことができる。それ故、上記支持手段は、上記第1のアノードをタンクの底部の近くに保持できるものでなければならないし、一方では、上記アノードと上記底部との間のすべての電気的接触を防止するために、アノードを底部から充分離れた状態に維持できるものでなければならない。
【0025】
本明細書で使用する「取り外すことができる」という用語は、試験が終了した後で、上記第1のアノードと上記支持手段とを上記タンクから取り出すことができることを意味する。
【0026】
より詳細に説明すると、タンクの底部近くの上記第1のアノードは、タンクの底部から50センチ(cm)未満の距離、好適には、2.5cm乃至20cmの距離、より好適には、5cm乃至10cmの距離だけ底部から上に位置していることが好ましい。この最適の距離は、上記アノードとタンクの金属底部の電気的接触を防止するばかりでなく、アノードがあまりに接近しすぎた場合に起こる恐れがある、すべての電解質の短絡を防止する働きをする。それ故、アノードがタンクの底部の接近しているために、電解質の短絡のすべての危険を防止する一方で最大の効率が維持される。
【0027】
本発明の場合には、タンクの底部に対して最適なカソード防食を行うために、上記第1のアノードは、タンクの底面の中心を中心とする同心円の周囲に配置されるが、好適には、タンクの底面の直径の40乃至75%の範囲内の直径を有することが好ましい。
【0028】
タンクの底部上に位置する上記第1のアノードのこの円形の配置は、アノード間、また
はそうでない場合には、実際に放出する電流密度に悪影響を及ぼす恐れがある1つのアノードの異なる部分間の干渉を避けるために最適な配置を表す。
【0029】
上記アノードは、タンクの底部の直径が大きい場合には、複数の同心円を形成するように配置することもできる。しかし、実際には、75m乃至90mまでの直径を有するタンクの場合で、アノードが50アンペア(A)の容量を有する場合には、タンクの直径の40%乃至75%の範囲内の直径の1つの円を含む配置で十分である。
【0030】
上記第1のアノードは下記のものにより構成することができる。
・「ワイヤ・アノード」とも呼ばれる1つまたはそれ以上の柔軟な金属ケーブル・アノード。好適には、上記アノードは円を形成しているか、または上記のいくつかの第1のアノードは、円の一部を形成していて、同じ円の周囲に配置されていることが好ましい、および/または
・不連続な状態で並べて配置されていて、そうしたい場合には、導電性ケーブルで相互に接続している複数の硬質のアノード。
【0031】
しかし、もっと大きな電流密度を供給するためには、好適には、それぞれが、特に、円筒形、長方形またはディスクの形のブロックの形をしている複数の硬質なアノードの形に上記第1のアノードを配置することが好ましい。
【0032】
より詳細に説明すると、上記第1のアノードは、1つまたはそれ以上の第1のストリングを形成するために、1つ以上のケーブルにより相互に接続されている。上記第1のストリングは、タンクの上記底部の上に近接してほぼ水平に配置されている。
【0033】
本明細書においては、「アノードのストリング」という用語は、上記硬質のアノードが、それに沿って上記第1のアノードが、好適には一定の間隔で配置されている導電性ワイヤからなるケーブルにより相互に接続されていることを意味する。上記ワイヤは、2つの連続しているアノード間で電気的に絶縁されていて、ワイヤと上記アノード間は電気的に接触している。
【0034】
上記第1のアノードは、特に任意の1つのストリング内では相互にできるだけ接近して配置されているが、これらアノードは、その効果、すなわち、これらアノードが供給する電流密度に悪影響を与える虞があるような電気的干渉を回避するために十分な間隔をおいて配置されている。
【0035】
ある実施形態の場合には、上記支持手段は、電気的絶縁材料より形成された素子からなり、タンクの底部上に位置している。また、上記素子は、適宜に第1のストリングに沿って、第1の各アノードの対向端部に位置される。
【0036】
さらにより詳細に説明すると、上記支持手段は、タンクの底部上に垂直に立っているディスクからなる。上記ディスクは、その中心を通る上記第1のストリングの上記第1のアノードの2つの連続しているアノードを相互に接続されいる絶縁ケーブルの一部を有する。ディスクの直径は、上記垂直方向の上記第1のアノードの直径より大きくする等、適宜に変更可能である。
【0037】
タンクの底部が海水で濡れた後で、タンクの垂直な側壁部をさらにカソード防食するためには、その底部に近いタンクの水平方向の配置内に上記第1のアノードを設置し、また好適には取り外すことができるように、その頂部からタンクの内側の垂直に吊り下げられている第2のアノードを設置すると有利である。この場合、好適には、上記第2のアノードは、また、垂直に吊り下げられている第2のストリングの形に相互に接続していること
が好ましい。また、上記第2のストリングは、好適には、内接するように相互に間隔を置いて配置することが好ましい。また、好適には、上記タンクと同じ軸を有する円筒形に配置することが好ましい。
【0038】
有利な実施形態の場合には、垂直に吊り下げられている第2のストリングの底端部に配置されている第2のアノードの端部アノードは、第1のアノードの上記円で囲まれている円形面の面積S1が、タンクの底部の残りの面積S2に、タンクの底部の側壁部の高さHのところの底部の部分の面積S3を加えたものにほぼ等しくなるように、底部から高さHのところに位置している。面積S2は、面積S1の外側に位置するタンクの底部の残りの面積であり、S1=S2+S3である。
【0039】
上記第1のアノードが、ある電流容量を有し、これら第1のアノードが、腐食が発生するのを防止するために適当な電気化学ポテンシャルを達成することができるような電流密度を発生することができるだけの数および配置で設置されていること、そしてこれは、腐食が発生するのに必要な時間より短い時間内に、特に1時間より短い時間内に、好適には20分より短い時間内、好適には、実際には瞬間的に行われ、タンクの底部の表面(S1+S2)のすべての点でこれが発生すること、そのほうがよい場合には、タンクの垂直な側壁部の高さHのところの底部表面(S3)上のすべての点で起こることを理解することができるだろう。タンクの底部近くに位置する第1のアノードのこの配置により、浸漬した側壁部を保護するために垂直に吊り下げられている第2のアノードが腐食防止を行う前に、タンクの低い部分(すなわち、S1+S2+S3)に対して完全なカソード防食を行うことができる。
【0040】
海水の存在下で9%ニッケル鋼に対して本発明により行った測定は、腐食に対して免疫性を与えるためには、Ag/AgClタイプの基準電極に対して、−950ミリボルト(mV)の保護電気化学ポテンシャルで十分であることを示した。
【0041】
より詳細に説明すると、上記タンクの金属は9%ニッケル鋼であり、鋼の保護電気化学ポテンシャルは−950mVであり、第1のアノードは、200mA/m2乃至400mA/m2の電流密度が達成できるように、タンクの底部近くに位置している。それ故、この電流密度は、水を含む従来の金属タンクに対するカソード防食の分野で通常実施される電流密度の数値の4乃至8倍である。この場合、構造体の全耐用期間中分極を維持しなければならない。
【0042】
タンクの底部上で円形の幾何学的形状の周囲に、端部同士が向き合うように配置されているアノードのストリングにより、電流を約200mA/m2乃至400mA/m2の密度で注入することができる。
【0043】
本発明の場合には、高容量アノード、特に50Aの非常に大きな注入電流を収容することができ、200mA/m2乃至400mA/m2の電流密度を供給することができるアノードを使用することにより、また、タンクの金属底部および壁部に近いアノード間に、25ミリメートル(mm)乃至500mmの範囲内の狭い間隔で関連する非常に高い密度でアノードを配置することにより、−950mVの腐食免疫性電気化学ポテンシャルを達成し、上記アノードが海水内に浸漬された後で、アノードが腐食保護を開始するやいなや、非常に迅速にまたは実際には瞬間的に、9%ニッケル鋼でできているタンクの全底部上で分極プロセスを作動することができる。
【0044】
それ故、本発明を使用すれば、タンクの底部および垂直な側壁部の両方の全閉じ込めエンベロープの統合性を保証しながら、従来使用されてきた淡水の代わりに、海水を有利に使用して注水試験を行うことができる。
【0045】
本発明の他の有利な特性によれば、タンクの底部のすぐ近くに位置する上記第1のアノードが完全に浸漬されるまで、最初上記タンクは淡水で満たされる。その後で、上記第1のアノードに電流が注入され、上記タンクへの注水が引き続き行われるが、こんどは海水が使用される。
【0046】
タンクの底部に近い位置に上記第1のアノードが位置しているので、淡水による最初の注水は少量の淡水で行われ、上記第1のアノードが腐食保護動作に入る前に、腐食のすべての危険をさらに低減することができ、タンクの底部に対して有効なカソード防食を行うことができる。
【0047】
都合のよいことに、本発明の他の特性によれば、上記壁部の電気化学ポテンシャルを測定するために、また複数の発電機またはその位置により、種々のアノードに関連して行われた上記測定の関数として、種々のアノード内に注入される電流の量を規制することができるように、上記第1および第2のアノードに別々に電流を供給することができるコントローラを制御するために、上記タンクの底部および壁部上に種々のデバイスが設置される。
【0048】
本発明は、また、本発明の試験方法で使用するのに適している鋼鉄の露出金属壁部を有する極低温タンクを提供する。上記タンクの特徴は、このタンクが、好適には、上記タンク内に取り外すことができるように配置することが好ましい、すでに定義したアノードを含む一時的なカソード防食システムを含むことと、上記タンクが、また、好適には、複数の発電機またはすでに説明したように、上記アノードに異なる量の電流を供給するのに適しているコントローラを制御するために、上記壁部の電気化学ポテンシャルを測定することができる種々のデバイスを含むことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の他の特徴および利点については、添付の図面を参照しながら種々の実施形態の下記の詳細な説明で記述する。
図1は、貯蔵対象の極低温液体を収容するための底部1、および円形円筒状の側壁部3を備える大容量の円形円筒状の金属タンク1である。
【0050】
図2は、それに極低温特性を与える円筒状の金属タンク1用の絶縁システムである。この絶縁システムは、鉄筋コンクリート32のウエブからなる硬質管状構造体により囲まれている熱絶縁材料31自身の層からなる。タンク1は、その頂部上に金属フレーム41により支持されているドーム状のカバー4を有する。
【0051】
例を挙げて説明すると、円筒状の金属タンクは、内径75m、高さ50mを有する空間を含み、165000m3の容積を有する。タンクの内壁を形成していて、カソード電流により保護しなければならない金属の総面積は約16000m2である。
【0052】
タンクはすでに説明したように、9%ニッケル鋼で作ると有利であり、その壁部は、底部2のところの壁部の厚さを19mmにし、垂直な側壁部の底端部のところの厚さを28.8mmにすると有利である。この場合、垂直な側壁部のこの厚さは、上記タンクの垂直な側壁部3の頂部の最小の厚さが10mmになるように、タンクの頂部の方向にほぼ同じ傾きでテーパ状になっている。
【0053】
図2は、大きな剛性を与え、絶縁システムを含む130cmの厚さを有する基礎いかだ(raft)21である。
タンク1の金属側壁部3を取り巻く熱絶縁材料の層31は、例えば、パーライト(pe
arlite)からできていて、100cmの厚さを有する。鉄筋コンクリートの外部ウエブ32は80cmの厚さを有する。
【0054】
図1、図5、図9および図10は、円形に配置されているタンクの底部2の近くに水平に位置する上記第1のアノード用の種々の装置を示す。
図1の場合には、上記第1のアノード51は、円筒状のC1内に位置する1つの「第1の」ストリング5を形成する。図9の場合には、上記第1のアノードは、それぞれがほぼ半円の形をしている2つの「第1の」ストリング5を形成する。この場合、上記2つの第1のストリングは、一緒に円C1を形成する。図5の場合には、上記第1のアノードは、複数のストリング、すなわち、水平に延びる8つの「第1の」ストリング5を備える。上記第1の各ストリング5は、3つのアノード51を備える。上記第1のストリングは、円の一部を形成し、これらストリングは、共通の円の周囲に等間隔になるように配置されている。図5の実施形態は、複数の上記第1のストリングを含むことが好ましい。何故なら、上記第1のストリングは、電流レベルを関連ゾーン内の要件に整合させるために、それぞれの異なる電流の供給を受けることができるからである。非常に大型のタンクの場合には、および特に75mを超える直径のタンクの場合には、第1の円C1の周囲に配置されている上記第1のストリング5は、タンクの底部の表面上の中心ゾーンに追加のカソード防食を行うように、もっと小さな直径の円C2の周囲に配置されているもっと小さな電流容量の細長い柔軟なアノードと関連を有することができる。それ故、図10の場合には、上記第1の柔軟なアノードの中の2つは、同心円C2の周囲を延びる湾曲したケーブルの形でタンクの底部の中心ゾーン内に位置する。この場合、上記の細長い各第1のアノードは、その周囲のほぼ半分を占める。それ故、もっと小さな直径の円C2内に位置する第2の一連の第1のアノードは、タンクの底部2の中心部分に追加のカソード防食を行う。
【0055】
また、図1および図2は、タンクのドーム4の構造体41から垂直に吊り下がっているアノード6の第2のストリングを示す。
図1は、垂直に延びる、すなわち、水平面の一部内の円内を延びるアノード6の種々の第2のストリングの好適な配置を示す。
【0056】
図1および図10は、図に示すための便宜上、底部アノードが床上Hの高さに位置している場合の、それぞれが等間隔で配置されている複数のアノード61を備える6つの上記の垂直な第2のストリング6を示す。
【0057】
図3および図4の場合には、アノード5および6のストリングは、それぞれ、アノード51および61の相互に接続しているか、またはこれらアノードを通る、好適には、銅でできていることが好ましい導電性ケーブル7からなる。アノードは、好適には、機械的に正しい位置に保持されている上記ケーブル7の周囲に固定されていることが好ましい。上記アノード51,61は、種々の貴金属でカバーされているタングステンのような貴金属からできている。上記アノード51,61は、好適には、導電性ケーブル7に沿って等間隔で設置されていることが好ましい。ケーブル7は、所与のストリング56内の2つのアノード51,61の間に絶縁材料71を有する。しかし、導電性ケーブル7は、当然上記アノード51,61に電気的に接続していて、2つの連続しているアノード51および61間を延びるケーブルのこれらの部分だけが絶縁される。
【0058】
上記各ストリングにおいては、使用しているアノード51,61は、大容量のものである。すなわち、これらアノードは50Aの容量を有し、その形は円筒形または卵形であり、それぞれ、その長さは約1mであり、外径は約22mmであり、干渉を避け、最大の電流密度を得るために、上記ストリングに沿って3乃至5m間隔で位置している。
【0059】
上記の垂直な第2のストリング6においては、図面に示す都合上、5つのアノード61
だけが図示されている。50mの高さを有するタンクの場合には、もっと多くの上記アノードが必要なことを理解することができるだろう。
【0060】
水平ストリング5は、例えば、絶縁材料からできているディスクからなり、アノード51の直径よりも大きい直径を有する支持素子52によりタンクの底部2のすぐ近くに保持されている。上記ディスクは、各アノード51の各端部のところのケーブル7の周囲に位置している。これらの絶縁ディスク52は垂直に配置されていて、その縁部を通して、25mmの直径を有するアノード用の225mmの外径を有するタンクの底部2上に位置していて、それにより、確実にアノード51がタンクの底部2から100mmのほぼ一定の間隔を有するようにし、そのため、アノード51と底部2との間の電気的接触を防止すると同時に、電解質の短絡も防止する働きをする。
【0061】
75mの直径を有するタンクの場合には、上記第1のアノードを半径R1=27mの円の周囲に複数のストリングとして配置すると有利である。
タンクの底部上に位置する上記第1のアノード51を円内に配置すると、供給電流密度に悪影響を持つ恐れがある、アノード間の干渉を避けるための最適な配置になる。第1のアノード51を上記特性(アノードの長さ1m、容量50A、相互に3m乃至5m離れている)を有する円内に位置させると、アノード内に50Aの電流を注入することにより、250mA/m2乃至275mA/m2の初期電流密度を得ることができ、それ故、数十分以内、または数分以内に、上記アノードから数十メートルの半径内に位置するタンクの表面のところにある電位を得ることができる。
【0062】
図1の場合には、アノード6の垂直なストリングは、アノード5の上記水平ストリングと同じ直径を有する円の周囲に位置しているが、それはアノードを設置したり取り出したりする実際の都合上このような配置になっているだけである。しかし、機能上の観点から、タンクの側壁部の表面に対して垂直な第2のアノード61を配置する距離は、上記側壁部からの第1のアノードの距離と異なる距離であってもよい。タンクの側壁部の表面にあまりに接近して垂直なアノード61を設置するのは、必ずしも有利ではない。何故なら、そのような配置にすると、もっと多くのアノードを使用しなければならなくなるからである。
【0063】
図1、図5および図9に示す円C1内に配置されたアノード5の水平ストリングの配置の別の好適な実施形態の場合には、上記円C1は、水平ストリング5が形成する円の外側のタンクの底部上の表面の残りの部分が形成する表面積S2に、アノードの垂直なストリングの底部端部の高さに対応する、高さHのところの垂直な側壁部3の底部に対応する表面積S3を加えたものにほぼ等しい内表面積S1を形成するように(S1=S2+S3)、25m乃至30mの半径R1を有する。それ故、25m乃至30mの範囲内の半径R1の場合には、Hは1m乃至4mの範囲内にある。
【0064】
タンクに注水している際に、海水がアノード6の垂直な第2のストリングの底端部のところの末端のアノード61に達した場合で、このアノードとまだ接触してない場合には、底部と海水で濡れた垂直な壁部の一部からなる、タンクの底部にカソード防食を行うのは、底部上に位置するアノード5の水平な第1のストリング内の第1のアノード51だけである。それ故、アノード6の垂直なストリングの上記アノード61が腐食保護動作をスタートするまで、底部上に位置するアノード5の上記水平なストリングは、タンクの底部の表面積S1+S2に、底部吊り下げアノード61の下に位置する側壁部の底部の表面積S3を加えたものからなる保護対象のタンクの表面のほぼ重心に位置し、できるだけ速く分極の必要なレベルに上げるために供給される非常に大きな電流が、タンクの中心から底部の周辺および高さHまでの側壁部に均等で最適な状態で分配される。
【0065】
図7A乃至図7Dのアノードに対する位置の関数として、電流密度(mA/m2)がどのように変化するのかを示す図7A乃至図7Dおよび図8A乃至図8Bを参照しながら、分極プロセスについて説明する。図7Aは、アノードに電流の注入をスタートした時の電流密度を示し、図7B、図7Cおよび図7Dは、その後の例の図である。図8Aおよび図8Bは、それぞれ、時間の関数として、処理対象のタンクの表面の所与の点で測定した電気化学ポテンシャルEおよび電流密度(I/m2)である。
【0066】
図8Aおよび図8Bは、時間tpのところまで、電気化学ポテンシャルEおよび電流密度が同時に上昇することを示す。時間tpにおいて、電気化学ポテンシャルEは、この場合には、−0.95Vである腐食免疫値に達する。この値は、使用する9%ニッケル鋼の分極に特有なものであり、この時間tpのところで、ほぼ同時に電流密度のピークは、250mA/m2乃至275mA/m2に達する。図7A乃至図7Dを見れば、アノードに対して電流の供給がスタートするとすぐに、アノードの近いゾーン内の電流密度が非常に高くなり、ここから離れるにつれて減少することが分かる。供給電流は、自然に250mA/m2乃至275mA/m2の範囲内にある最大値に制限される。何故なら、このような鋼の保護電位(−950mV)に迅速に到達するには、このレベルで十分であるからである。
【0067】
電気化学プロセスは、ミネラル塩を含む海水内で行われ、カルシウムおよびマグネシウムをベースとするスケールの沈殿物が観察される。それ故、このスケールは、アノードに近いゾーン内の図8Aおよび図8Bのt=0とt=tpの間に沈殿し、その後で、電流密度は減少し、50mA/m2乃至100mA/m2の範囲内で安定し、一方、電圧Eは、もはや有意に変化しないで、約−1Vのところに留まる。スケール沈殿物は、分極面上のpHの増大によるもので、この沈殿物は、関連エリア上で、電流密度を約50mA/m2乃至約100mA/m2の範囲内に位置する値まで減少させる効果を有する天然の絶縁バリヤを生成する。これは電位Eを、9%ニッケル鋼に対して−0.95Vよりもっと負の方向の値に維持するのに十分である。これにより、すべての腐食プロセスが防止される。
【0068】
それ故、アノードをできるだけタンクの底部に近づけることにより、また供給電流レベルを増大することにより、保護層が形成されるこのプロセスが有意に加速されることが理解できるだろう。
【0069】
実際には、アノード51を底部から数センチメートルのところに設置することにより、海水の注水速度が1時間当たり1000立法メートル(m3/h)を超える場合には、アノードは数分間海水内に浸漬し、その結果、アノードが海水内に浸漬すると、アノードは瞬間的に腐食保護活動に入り、数分以内に効果的な保護がスタートする。さらに、大容量アノード内の供給電流レベルが十分に高い場合(50A容量)で、すでに説明したようにアノードの数が十分であり、適当に配置されている場合には、約10メートルの遠い距離のところで、迅速に(数分以内に)カソード防食を行うことができる。それ故、数十分以内に、タンクの底部の全表面が完全に保護され、その結果、すべての腐食の開始を防止することができる。
【0070】
好適な実施形態の場合には、タンクに水を注水することによるタンクの漏水および機械的強度を確認するための試験は、通常、淡水の深さが5cm乃至10cmになり、妥当な量の淡水が注水されて、底部のアノード51が完全に浸漬されるまで、1000m3/hの流量でタンクに淡水を注水することによりスタートする。その後で、上記アノードに電流が供給され、非常に速い流速で海水が引き続き注水される。
【0071】
「淡水」は、浸食性があまり強くない場合には、その地方の給水源または川水、または工業用水からとることができる。
海水が淡水と混合し、電流がアノード内に注入されると、アノードが分散配置されていて、またタンクの底部上に位置するすべてのアノードを通して非常に大量の電流が同時に注入されるために、タンクの底部の金属表面は数分以内にカソード防食構成内で分極を起こす。
【0072】
アノード5および6の上記ストリングは、1つまたはそれ以上の定電流源9に接続していて、デバイス91は、好適には、その頂部を通してタンク1から延びているケーブル8を通して注入される電流を監視し、制御することが好ましい。複数のストリング5、6は、アレイの形に相互に接続することができ、1つの定電流源9と関連づけることができる。しかし、好適には、アノード5の水平の第1のストリング、およびアノード6の上記の垂直な第2のストリングは、いくつかの発電機9またはいくつかのコントローラ9a乃至9cに接続していることが好ましく、また好適には、上記各アノード・ストリング6は、いくつかの発電機9またはコントローラ9a乃至9cに関連する1つの発電機9に接続していることが好ましく、それにより、保護されている底壁部2のゾーンおよび側壁部3のゾーンの関数として、カソード防食を最適にするために、(以下に説明するように)電流の注入を上記各ストリング5,6内で別々に制御することができる。上記ゾーンの中の特定のゾーン内に欠陥が生じた場合に、このような個別の制御が必要になる場合があり、タンクが多角形の基礎の上に載っている四角柱である場合には、必ず必要になる。何故なら、このようなタンクは、比較的もろく、タンクの残りの部分よりももっと高いレベルのカソード防食を必要とするコーナーを持っているからである。
【0073】
図2の場合には、タンクのドーム4の上部構造体41から吊り下がっているアノード6のいくつかの垂直なストリング、およびタンクの底部上に位置するいくつかの水平なストリング5は、ケーブル8により、1つの定電流源9に電気的に接続している。この場合、何本かのケーブル8がブラケット20から吊り下がっている。このようなブラケット20は、図9の好適で有利な実施形態上に設置することもできる。
【0074】
図9の場合には、タンク1の壁部の電気化学ポテンシャルEは、タンクの底部2上に3つのセンサ10a、10bおよび10cを設置し、垂直な壁部の発電機のラインに沿って3つの追加のセンサ10d、10eおよび10fを設置することにより監視することができる。例えば、Ag/AgCl基準セル・タイプのこれらのセンサ10a乃至10fは、監視および制御ユニット11に接続していて、電気化学ポテンシャルの値が、パーソナルコンピュータ・タイプのコンピュータ12により試験中継続的に記録される。例えば、24VDCのような低電圧の分極電流が、主電源に接続していて、また中央監視/制御ユニット11の制御下で、サイリスタにより、3つの電子コントローラ9a,9b,9cに接続しているトランスおよび整流器9により供給される。コントローラ9aは、上記の垂直な第2のストリング6すべてに接続していて、コントローラ9bおよび9cは、それぞれ、アノード5の上記第1のストリングの2つの異なるストリング、または半円形に配置されていて、タンクの底部上に位置しているが、図10のところで説明するように、そこから絶縁している上記の連続している第1のアノード51の2つのアノードに接続している。
【0075】
底部上に配置されているセンサ10a乃至10cは、下記のように有利に配置されている。
・センサ10aは、図7Aに示す分極波および図7B方向へのその変位を監視するために円形アノードの近くに位置する。
【0076】
・センサ10bは、水が深くなると、分極電流がどのように変化するのかを監視するために、円筒状の側壁部のコーナーの近くに位置する。
・最後のセンサ10cは、図7Cおよび図7Dに示すように、タンクの底部全体上の分
極状態を監視するために、タンクの中心の方向に有利に位置する。
【0077】
センサ10d、10eおよび10fは、水の深さが上記タンクの頂部まで上昇する間の分極を監視するために、垂直な壁部3の発電機ラインに沿って有利に設置されている。
図面を見やすくするために、図では、センサに接続しているケーブルは、監視/制御システム11に直接接続しているが、実際には、これらのケーブルは、電力ケーブル8の経路に類似している経路を通る。すなわち、これらのケーブルは、タンク内を上昇し、上記監視/制御システム11に戻る前に、ブラケット20を通してドーム・レベルのところでタンクから離れる。
【0078】
電気化学ポテンシャルは、例えば、−0.95Vよりもっと負の範囲のような、最小(絶対)値より上の範囲に維持しなければならないし、また、例えば、−1.2Vを超えないように維持しなければならない。それ故、上記電気化学ポテンシャルが上記−0.95Vの最小(絶対)値に近づくやいなや、監視/制御システム11は、対応するコントローラ9a、9bおよび9cにより供給電流を有意に増大する。同様に、電気化学ポテンシャルが−1.2Vに近づくと、上記監視/制御システムは、供給される対応する電流量を有意に低減することにより動作する。
【0079】
図10に示すように、アノードが連続していなくて、円筒、楕円または多角形の形をしていようが、アノードが連続していて、電流供給容量の点で高性能なケーブルの形(「ワイヤ」アノード)をしていようが、底部上に複数の円または任意の他の幾何学的配置としてアノードが配置されていも、それは本発明の精神内に含まれる。このようなすべての配置において、上記アノードは直接の短絡および電気化学的短絡を防止するために、絶縁デバイスにより表面からある間隔を置いて保持される。
【0080】
図11および図12は、第1のアノード51の修正した実施形態を示す。これらの実施形態の場合には、第1のアノード51は、垂直な第2のストリング6を終端させるように位置している第1のアノードからなる。第1のアノード51は、支持手段52によりタンクの底部2上に位置していて、そのすぐ上に位置する上記最も近い第2のアノード61は、1乃至4mの範囲内の高さHのところに位置する。
【0081】
図11および図12の場合には、第1のアノード51は、水平に配置されている。すなわち、その主要な部分が水平方向に配置されている。しかし、垂直な側壁部を保護するための第2のアノード61の場合には、アノードは垂直に配置されている。すなわち、その主要な部分が垂直方向に延びている。図11の場合には、第1のアノードは、長方形の形をしていて、アノードの各端部に固定されている垂直に配置された絶縁ディスクより構成されている支持手段52により保持されている。図12の場合には、第1のアノード51は、上記第1のアノード51を構成している上記ディスクの下に配置されたスタッドまたは脚部52からなる支持手段により支持されている水平ディスクである。
【0082】
タンクを建造した後で、それに海水を注水する前に、第1のアノードはタンクの底部上に設置され、機械的に固定するかまたは一時的な接着剤により、タンクに注水している間に組立体が決して変形または移動しないようにするために、重りで安定させることにより正しい位置に保持される。上記注水は、かなりの流量(1000m3/h乃至1500m3/h)で行われるので、大量の渦巻きが発生する。
【0083】
垂直な第2のストリングは、ドームのフレームワーク41から吊り下げられていて、電流を供給するための何本かのケーブル、および電気化学ポテンシャル測定セルから延びる種々の測定ケーブルは、電力ユニットおよび監視/制御ユニットに達する前に、ドーム4のレベルのところでタンクから離れる。
【0084】
タンクの垂直な側壁部および底壁部と側壁部の間の接続部に対して漏水試験が行われ、この場合、上記壁部は、外部から特に絶縁用のゾーンおよびそのサイズのためにアクセスすることができるゾーンから観察される。
【0085】
試験の終わりに、タンクから水が抜き取られ、次に、第1および第2のアノードのように測定セルが抜き取られる。
次に、すべての塩分を除去するために、タンクの壁部の全表面が加圧淡水噴射により洗い流され、その後で放置して水を蒸発させる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】定電流源が電流をアノードのアレイに供給する、本発明のタンクの簡単な分解斜視図。
【図2】発電機とアノードのストリング間の接合部のある特定の実施形態の詳細を示す、本発明のタンクの軸に沿った二分割部分の側面図。
【図3】垂直に吊りさげられたアノードのストリングの一部を示す側面図。
【図4】タンクの底部上に位置するアノードのストリングの一部を示す側面図。
【図5】円形幾何学的形状内のタンクの底部上に設置するための、アノードのいくつかのストリングの分散方法を示す平面図。
【図6】底部上に位置するアノードと同一平面上のタンクの底部の表面のゾーンを示す斜視図。
【図7A】(mA/m2単位で)分極電流密度が縦座標上に表示され、アノードからの距離が横座標上に表示されている黒丸でアノードを表しているグラフ。
【図7B】(mA/m2単位で)分極電流密度が縦座標上に表示され、アノードからの距離が横座標上に表示されている黒丸でアノードを表しているグラフ。
【図7C】(mA/m2単位で)分極電流密度が縦座標上に表示され、アノードからの距離が横座標上に表示されている黒丸でアノードを表しているグラフ。
【図7D】(mA/m2単位で)分極電流密度が縦座標上に表示され、アノードからの距離が横座標上に表示されている黒丸でアノードを表しているグラフ。
【図8A】保護対象の金属側壁または底部上の任意の点Mのところでの、電気化学ポテンシャルE(図8A)および電流密度(I/m2)の変化を示すグラフ。
【図8B】上記図8Aと同じく電気化学ポテンシャルEおよび電流密度(I/m2)の変化を示すグラフ。
【図9】分極電流の供給を規制するための制御システムを示す簡略図。
【図10】図5に示すように、その底部上に設置されたアノードのストリングを有し、絶縁ディスク(図示せず)により、底部上のある距離に保持された2つの隣接する半円からなる円形アノードを有する円形タンクの平面図。
【図11】アノードの垂直なストリングを示す側面図。
【図12】アノードの垂直なストリングを示す側面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用前に極低温金属タンクを試験するための方法であって、前記タンク(1)が水で満たされ、必要な場合には、適当な測定が行われ、下記の工程、すなわち、
・前記金属極低温タンク(1)に海水を満たす工程と、
・前記タンク(1)内にアノードを配置し、前記アノードが海水に浸漬した場合に、前記アノードに電流を注入することにより、ほぼ露出した鋼鉄から形成されるタンク(1)の金属の底部と側壁部(2,3)に一時的なカソード防食を行う工程と
からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1のアノード・アレイ(51)が、支持手段(52)により前記タンクの底部のすぐ近くに配置されていて、好適には、前記支持手段(52)と前記第1のアノード(51)が取り外すことができることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンクの底部(2)に近い前記第1のアノード(51)が、50cm未満、好適には、2.5cm乃至20cm、より好適には、5cm乃至10cmの範囲で前記タンクの底部から上に位置していることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のアノード(51)が、前記タンクの底面の中心を中心とする同心円(C1)に沿って配置されていて、好適には、前記円(C1)の直径が、前記タンクの底面の直径の40%乃至75%であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアノード(51)が、1つ以上の第1のストリング(5)を構成する1つ以上のケーブルにより相互に接続していて、前記第1のストリングが、前記タンクの底部(2)上の付近にほぼ水平に配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持手段(52)が、前記タンクの底部(2)上に位置する電気絶縁材料の素子からなり、そのほうがよい場合、前記第1のストリング(5)に沿って前記各第1のアノード(51)の対向端部に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持手段(52)が、前記タンクの底部(2)上に垂直に位置するディスクからなり、前記ディスクの直径が、前記垂直方向の前記第1のアノード(51)の直径より大きく、そのほうがよい場合には、前記ディスクの中心が、前記第1のストリングの前記第1のアノード(51)の相互に接続している2つの連続しているアノードを貫通する絶縁ケーブルの一部を有することを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記タンク内に、前記タンクの底部(2)の近くに水平に配置されている前記第1のアノード(51)と、好適には取り外すことができるように、その頂部(4)から前記タンクの内部に垂直に垂れ下がっている前記第2のアノード(61)が位置していて、好適には、前記第2のアノードも垂直に垂れ下がっている第2のストリング(6)の形に相互に接続していて、好適には、前記第2のストリング(6)も内接するような方法で、また好適には、前記タンク(1)と同じ軸を有する円筒状に一定の間隔で相互に分離していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記垂直に垂れ下がっている第2のストリング(6)の底部端部のところに配置されている前記第2のアノード(61)の最後のアノードが、前記第1のアノード(51)が形成する円形表面の面積(S1)が、前記タンクの前記底部(2)の残りの面の面積(S2)に、前記タンクの垂直な側壁部(3)の高さHのところの底部の面積(S3)を加えたも
のにほぼ等しくなるように、前記底部(2)から高さHのところに位置することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記タンクの前記金属が9%ニッケル鋼であり、該ニッケル鋼の電気化学ポテンシャルが−950mVであり、前記第1のアノード(51)が電流密度を200mA/m2乃至400mA/m2にすることができるように、前記タンクの底部(2)の近くに位置することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
その位置により、種々のアノード(51,61)に関連して行った前記測定値の関数として、前記種々のアノードに注入される電流量を規制できるように、前記壁部の前記電気化学ポテンシャルを測定し、前記第1および第2のアノード(51,61)に電流を供給する複数の発電機(9)を制御するために、前記タンク(1)の壁部(2,3)に対してデバイス(10,11)が設置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記タンクの底部(2)のすぐ近くに位置する前記第1のアノード(51)がほぼ完全に浸漬するまで、最初に前記タンクに淡水を注水し、その後で、前記第1のアノード(51)に電流が注入され、前記タンクに引き続き海水が注水される請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法で使用するのに適している鋼鉄の露出金属壁部を有する極低温タンク(1)であって、前記タンクが、好適には請求項1乃至12のいずれか1項に定義するように、前記タンク(1)内に取り外すことができるように配置されているアノード(51,61)を備える一時的なカソード防食システムを含み、好適には請求項2乃至10のいずれか1項に定義するように、支持手段(52)含むことと、また、タンクが、好適には、請求項11に定義するように、複数の発電機(9)を制御するために、前記壁部(2,3)の前記電気化学ポテンシャルを測定することができるデバイス(10乃至11)を含むことを特徴とするタンク。
【請求項14】
前記タンクの底部の直径が50m以上であることを特徴とする請求項13に記載のタンク。
【請求項1】
使用前に極低温金属タンクを試験するための方法であって、前記タンク(1)が水で満たされ、必要な場合には、適当な測定が行われ、下記の工程、すなわち、
・前記金属極低温タンク(1)に海水を満たす工程と、
・前記タンク(1)内にアノードを配置し、前記アノードが海水に浸漬した場合に、前記アノードに電流を注入することにより、ほぼ露出した鋼鉄から形成されるタンク(1)の金属の底部と側壁部(2,3)に一時的なカソード防食を行う工程と
からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1のアノード・アレイ(51)が、支持手段(52)により前記タンクの底部のすぐ近くに配置されていて、好適には、前記支持手段(52)と前記第1のアノード(51)が取り外すことができることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンクの底部(2)に近い前記第1のアノード(51)が、50cm未満、好適には、2.5cm乃至20cm、より好適には、5cm乃至10cmの範囲で前記タンクの底部から上に位置していることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のアノード(51)が、前記タンクの底面の中心を中心とする同心円(C1)に沿って配置されていて、好適には、前記円(C1)の直径が、前記タンクの底面の直径の40%乃至75%であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアノード(51)が、1つ以上の第1のストリング(5)を構成する1つ以上のケーブルにより相互に接続していて、前記第1のストリングが、前記タンクの底部(2)上の付近にほぼ水平に配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持手段(52)が、前記タンクの底部(2)上に位置する電気絶縁材料の素子からなり、そのほうがよい場合、前記第1のストリング(5)に沿って前記各第1のアノード(51)の対向端部に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記支持手段(52)が、前記タンクの底部(2)上に垂直に位置するディスクからなり、前記ディスクの直径が、前記垂直方向の前記第1のアノード(51)の直径より大きく、そのほうがよい場合には、前記ディスクの中心が、前記第1のストリングの前記第1のアノード(51)の相互に接続している2つの連続しているアノードを貫通する絶縁ケーブルの一部を有することを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記タンク内に、前記タンクの底部(2)の近くに水平に配置されている前記第1のアノード(51)と、好適には取り外すことができるように、その頂部(4)から前記タンクの内部に垂直に垂れ下がっている前記第2のアノード(61)が位置していて、好適には、前記第2のアノードも垂直に垂れ下がっている第2のストリング(6)の形に相互に接続していて、好適には、前記第2のストリング(6)も内接するような方法で、また好適には、前記タンク(1)と同じ軸を有する円筒状に一定の間隔で相互に分離していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記垂直に垂れ下がっている第2のストリング(6)の底部端部のところに配置されている前記第2のアノード(61)の最後のアノードが、前記第1のアノード(51)が形成する円形表面の面積(S1)が、前記タンクの前記底部(2)の残りの面の面積(S2)に、前記タンクの垂直な側壁部(3)の高さHのところの底部の面積(S3)を加えたも
のにほぼ等しくなるように、前記底部(2)から高さHのところに位置することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記タンクの前記金属が9%ニッケル鋼であり、該ニッケル鋼の電気化学ポテンシャルが−950mVであり、前記第1のアノード(51)が電流密度を200mA/m2乃至400mA/m2にすることができるように、前記タンクの底部(2)の近くに位置することを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
その位置により、種々のアノード(51,61)に関連して行った前記測定値の関数として、前記種々のアノードに注入される電流量を規制できるように、前記壁部の前記電気化学ポテンシャルを測定し、前記第1および第2のアノード(51,61)に電流を供給する複数の発電機(9)を制御するために、前記タンク(1)の壁部(2,3)に対してデバイス(10,11)が設置されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記タンクの底部(2)のすぐ近くに位置する前記第1のアノード(51)がほぼ完全に浸漬するまで、最初に前記タンクに淡水を注水し、その後で、前記第1のアノード(51)に電流が注入され、前記タンクに引き続き海水が注水される請求項1乃至11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法で使用するのに適している鋼鉄の露出金属壁部を有する極低温タンク(1)であって、前記タンクが、好適には請求項1乃至12のいずれか1項に定義するように、前記タンク(1)内に取り外すことができるように配置されているアノード(51,61)を備える一時的なカソード防食システムを含み、好適には請求項2乃至10のいずれか1項に定義するように、支持手段(52)含むことと、また、タンクが、好適には、請求項11に定義するように、複数の発電機(9)を制御するために、前記壁部(2,3)の前記電気化学ポテンシャルを測定することができるデバイス(10乃至11)を含むことを特徴とするタンク。
【請求項14】
前記タンクの底部の直径が50m以上であることを特徴とする請求項13に記載のタンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2006−514162(P2006−514162A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−569297(P2004−569297)
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003007
【国際公開番号】WO2004/081543
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(503438089)
【氏名又は名称原語表記】SAIPEM s.a.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003007
【国際公開番号】WO2004/081543
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(503438089)
【氏名又は名称原語表記】SAIPEM s.a.
【Fターム(参考)】
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