カチオン性アルファアミノ酸を含有する生分解性ポリマー遺伝子導入組成物
本発明は、アルギニンまたはアグマチンなどの1つまたは複数のカチオン性アルファアミノ酸を含有する生分解性ポリマーを遺伝子キャリアとして用いる遺伝子導入組成物を提供する。組成物は、標的細胞をトランスフェクトするのに適したポリ核酸とのタイトな溶解性複合体を形成して、標的細胞によるカーゴポリ核酸の翻訳をもたらす。従って、このような化合物は、インビトロおよびインビボの両方において有用である。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
遺伝子治療は、被験者の特定の細胞に遺伝子材料を導入することによる疾患の処置であると定義することができる。人間の遺伝子治療の概念は、1970年代初期に最初に統合された。1970年代後半および1980年代を通しての分子生物学の進歩は、1990年に承認されたFDAプロトコールに従う遺伝子導入技術を用いた最初の患者の処置をもたらした。これらの研究からの楽観的な結果により、遺伝子治療は多くの人間の病気の処置および治療のために急速に一般的になることが期待された。しかしながら、1131の遺伝子治療の臨床試験が1989年から世界中で承認されたことを考慮すれば、成功した数が少ないのは残念なことである。
【0002】
遺伝子治療において使用される遺伝子構築物は、3つの成分:特定の治療用タンパク質をコードする遺伝子、標的細胞内の遺伝子の機能を制御するプラスミドベースの遺伝子発現系、および体内の特定の位置への遺伝子発現プラスミドの送達を制御する遺伝子導入系からなる。人間の遺伝子治療の発展に対する重要な制限によって、安全、効率的および制御可能な遺伝子導入方法は欠如したままである。
【0003】
人間の臨床的使用のためのウイルスベクターの使用は、歴史的に、限られたペイロード容量および一般的な産生問題から、免疫および毒性反応ならびに望ましくないウイルス組換えの可能性まで様々であり得る制限に遭遇している。ポリマーおよび脂質は最も一般的な非ウイルス合成導入ベクターであり、このような制限の可能性を回避することを目指して開発されてきた。従って、非ウイルス系、特に合成DNA送達系は、研究所および臨床設定の両方においてますます望ましくなっている。
【0004】
しかしながら、非ウイルス遺伝子導入分野における研究は、ウイルスベースの遺伝子導入系の研究と比較してその初期段階にある。近年、多数のグループが、カーゴ(cargo)の細胞内送達を高めるためにタンパク質形質導入ドメイン(PDT)を使用しており、よく研究された例は、HIV−1の転写のトランスアクチベーター、TATのアルギニンに富んだセグメントである。関連の研究において、TAT配列はアルギニンのモノマーによって置換され得ることが分かり、これにより、アルギニンのグアニジウム残基が異種遺伝子を標的細胞内に導入するTATの能力にとって不可欠であることが示された。この発見以来、多数のグループが、グアニジンに富んだPTDと、薬物、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ナノ粒子、およびリポソームとの化学的な結合体を調製し、これらを広範な種類の細胞型へうまく送達している。さらに、分子アルギニンは薬理学的使用のために抗凝固薬として提唱されており、天然ポリマーキトサンに結合されたアルギニンも報告されている(WG Liuら、J.Mat.Sci.:Materials in Medicine(2004年)15)。
【0005】
非ウイルス遺伝子導入剤として評価されている一般的なカチオン性ポリマーの中で、最もよく知られているのはポリ−L−リジン(PLL)およびポリエチレンイミン(PEI)である。非ウイルスベクターとして開発されたその他の合成および天然ポリカチオンとしては、ポリアミドアミンデンドリマー(Tomalia,D.A.ら、Angewandte Chemie−International Edition in English(1990年)29(2)”138−175)および変性キトサン(Erbacher,P.ら、Pharmaceutical Research(1998年)15(9):1332−1339)が挙げられる。
【0006】
遺伝子導入効率を改善するために特異的に設計されたポリマーとしては、プロトンスポンジ効果を有するイミダゾール含有ポリマー、膜分裂ペプチドおよびポリマー、例えばポリエチルアクリル酸(PEAA)およびポリプロピルアクリル酸(PPAA)などと、シクロデキストリン含有ポリマーおよび分解性ポリカチオン、例えばポリ[アルファ−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸](PAGA)およびポリ(アミノ酸)などと、ポリエチレンオキシド(PEO)などの非イオン性の水溶性ポリマーに結合されたポリカチオンとが挙げられる。ほとんどの場合、これらのポリマーは、安定性、生体適合性またはエンドソームエスケープなどの特定の細胞内障害に対処するために設計されたものである。結果は様々であり、いくつかのポリマーは、市販の最良のポリマーと同程度に機能するか、あるいはわずかに優れていた。しかしながら、どれも遺伝子導入ベクターとしてのウイルスの効率には到達していない。
【0007】
過去10年間、生物医学的用途のための生分解性で生体吸収性のポリマーは、ますます関心を集めている。最近記載されたαアミノ酸、脂肪族ジオール、および脂肪族ジカルボン酸に基づく脂肪族PEAは、その生体適合性、低毒性、および生分解性のために、生物医学的用途のための良好な候補であることが分かった(K.DeFifeら、Transcatheter Cardiovascular Therapeutics−TCT 2004 Conference.Poster presentation.Washington,DC.2004年、G.Tsitlanadzeら、J.Biomater.Sci.Polymers Edn.(2004年).15:1−24)。
【0008】
主に穏やかな温度の溶液中で実行される非常に用途の広い活性重縮合(APC)法は、高分子量を有する規則的な直鎖多官能性PEA、ポリ(エステル−ウレタン)(PEUR)およびポリ(エステル尿素)(PEU)の合成を可能にする。APCの合成多様性のために、構成要素として使用される3つの成分(αアミノ酸、ジオールおよびジカルボン酸)を変えて巨大分子骨格を作ることによって、これらのポリマーにおいて広範な材料特性を達成することができる(R.Katsaravaら、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem(1999年)37:391−407)。近年、アルギニンをポリマー骨格に組み込んだカチオン性PEAは、非ウイルス遺伝子導入剤として使用可能であることが発見された(2007年7月24日に出願された米国仮特許出願第60/961,876号明細書)。
【0009】
上記の研究によって、効率的なDNA送達に対する3つの主な障害:細胞形質膜を横切る取込みが低いこと、放出されたDNA分子の不適切な放出および不安定性、ならびに核を標的とすることの困難が存在することが示された。従って、当該技術分野における上記の進歩にもかかわらず、新規のより優れた非ウイルス遺伝子導入系が必要とされている。
【0010】
[発明の概要]
一実施形態では、本発明は、以下の:
一般構造式(I)で表される化学式を有するPEAポリマー
【化1】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化2】
式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、そして式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化3】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化4】
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(IV)で表される化学構造を有するPEURポリマー
【化5】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化6】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は、−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4およびR6はそれぞれ、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(V)で表される化学式を有するPEUポリマー
【化7】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化8】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は、−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片からなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
のうちの少なくとも1つを含むカチオン性ポリマーとの溶解性複合体に縮合された少なくとも1つのポリ核酸を含む生分解性遺伝子導入組成物を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、縮合されたポリ核酸を標的細胞にトランスフェクトするために、本発明の遺伝子導入組成物と共に標的細胞を溶液中でインキュベートすることによって標的細胞をトランスフェクトするための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】様々なポリマー濃度におけるPEA−Arg(OMe).HCl、PEA−Arg(OMe).AA、およびPEA−アグマチン.AAの存在下での、FL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。3つのポリマーのうち、PEA−Arg(OMe)結合体は、FL83B細胞に対する毒性が最も低かった。
【図2】様々な濃度のポリマーPEA−NTA−Arg(OMe).AAおよびPEA−NTA−アグマチン.AAの存在下での、FL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。PEA−NTA−Arg(OMe).AAだけが1mg/mLにおいて毒性であった。
【図3】ポリアルギニンの存在下での、FL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図4】様々な電荷比の本発明のポリマー:GFPをコードする核酸を含有するDNA複合体と、対照としてDharmafect(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)およびSuperfect(登録商標)のそれぞれ1つとの存在下での、FL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図5】Dharmafect(登録商標)トランスフェクション試薬による結果に対して規格化された、種々の本発明のポリマー複合体を用いてGFPをコードするDNAをトランスフェクトされた細胞の割合を示すフローサイトメトリーデータを要約するグラフである。
【図6】市販のトランスフェクション試薬に対して規格化された、FL83B細胞におけるGFP発現の割合を示すフローサイトメトリーデータを要約するグラフである。
【図7】本発明の組成物および種々の市販のトランスフェクション試薬とのGFPプラスミドDNA複合体によりトランスフェクトされた3つの異なる細胞型からのGFP蛍光を示すグラフである。本発明の組成物だけがGFPをHeLa細胞に効果的にトランスフェクトした。
【図8】本発明のカチオン性PEAポリマーおよび市販の遺伝子導入剤とのsiRNAの複合体をトランスフェクトされたマウス肝細胞におけるシェーグレン症候群B(SSB)遺伝子の発現パーセントを示すグラフである。
【図9】異なるトランスフェクション試薬と複合体を形成した100nMのDC03(siRNA)をトランスフェクトされたFL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図10】図10Aは式I、R2=OHのPEA.HのDMSO−d6における500MHzの1HNMRスペクトルであり、図10Bは式VIのPEA−(OMe).HClのDMSO−d6における500MHzの1HNMRスペクトルである。
【0013】
[発明の詳細な説明]
ポリ(エステル−アミド)(PEA)、ポリ(エステルウレタン)PEURおよびポリ(エステル尿素)(PEU)は、その骨格中のエステルおよびアミド、ウレタンまたは尿素ブロックのいずれかで構成される生分解性ポリマー類を形成する。これらのポリマーはポリエステルおよびポリアミドの両方の有利な特性を兼ね備えるので、PEAは長年にわたって広く研究されている。必須のアルファアミノ酸が構成要素として使用される場合、これらのポリマーは、生体適合性であることに加えてタンパク質様の特性も有する。例えば、L−アルギニンは、全ての生命体のタンパク質中に存在するαアミノ酸である。L−アルギニンの脱カルボキシル化形態であるアグマチンとして知られる4−アミノブチルグアニジンは、多くの生理学的機能に関与する生体アミン類に属する。
【0014】
アルギニンおよびアグマチンはいずれも、強塩基性グアニジノ基のために生理的pHにおいて正電荷を帯びており、約12のpKa値を有する。(アグマチンのイオン化形態は、−NH−C(=NH2+)−NH2と書くことができる。)本発明はアルギニン、アグマチンおよびその他のカチオン性αアミノ酸を用いて、本発明の組成物および方法で使用されるPEAならびに関連のPEURおよびPEUのカチオン性ペンダント基を提供する。これらのペンダント基は、負に帯電したDNAおよびRNAなどの核酸配列を中和して、細胞膜に侵入し得る溶解性複合体に縮合させるために必要な強塩基特性を提供する。
【0015】
従って、一実施形態では、本発明は、以下の:
一般構造式(I)で表される化学式を有するPEAポリマー
【化9】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化10】
式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、そして式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化11】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化12】
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(IV)で表される化学構造を有するPEURポリマー
【化13】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化14】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4およびR6はそれぞれ、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(V)で表される化学式を有するPEUポリマー
【化15】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化16】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片からなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
のうちの少なくとも1つを含むカチオン性ポリマーとの溶解性複合体に縮合された少なくとも1つのポリ核酸を含む生分解性遺伝子導入組成物を提供する。
【0016】
R7の好ましい例は、(C2〜C6)アルキルまたは(C2〜C6)アルケニルであり、特に−(CH2)4−である。
【0017】
本発明において使用するために合成されるポリマーの例は式IのPEAであり、pモノマー単位中のL−リジン(R7=(CH2)4)のC−末端は、アルギニンメチルエステル(VI)またはアグマチン(VII)のいずれかと共有結合しており、グアニジンペンダント部分は例えば塩酸からの酸性の対イオンと会合している。
【化17】
【0018】
アルファアミノ酸に基づくPEAおよびPEURの製造方法は米国特許第6,503,538B1号明細書に開示されており、PEUの調製方法は(米国特許出願第11/584,143号明細書)に記載されている。アルギニンおよびアグマチンのPEAへの結合のための手順は、本明細書の実施例1に記載されている。
【0019】
巨大分子に沿った電荷密度を変えるために、グアニジン誘導体を分枝状リンカーによってポリマーに結合させることができる。例えば、親和性リガンド6−アミノ−2−(ビス−カルボキシメチルアミノ)−へキサン酸(アミノブチル−、またはAB−NTA、その化学構造は式VIIIで示される)が分枝状リンカーとして使用されている。
【化18】
調製されるカチオン性PEAは、PEA−NTA−Arg(式IX)およびPEA−NTA−Agt(式X)と称され、その合成方法は以下の実施例1に開示されている。
【化19】
PEA−NTA結合体の一般式は、式(XI):
【化20】
で示され、式中、n、m、p、R1、R2、R3、R4およびR7は、式(I)のPEAについて上記で定義したとおりである。
【0020】
AB−NTAリンカーはリジンのα−N誘導体を表す。本発明の遺伝子導入組成物に含有されるカチオン性ポリマーの製造において使用することができる相同リンカーの付加的な例はオルニチン誘導体であり、その化学構造は以下の一般構造式(XII)で表される。
【化21】
式中、R11は独立して(C2〜C8)アルキレン、(C2〜C8)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C8)アルキレンであり、例えば、(C3〜C6)アルキレンまたは(C3〜C6)アルケニレンであり、そしてR12は、水素、(C1〜C12)アルキル、または(C2〜C12)アルケニルである。このようなリンカーの調製およびその構造式(I)のPEAとの結合は、米国特許出願公開第20070160622号明細書に例示されている。
【0021】
電荷密度を増大させるためにPEA、PEURおよびPEUポリマーのR2置換基として使用することができるカチオン性残基の製造の付加的な例は、本明細書において記載されるカチオン性PEA、PEURまたはPEUポリマーのp単位のアミノ酸のC−末端に、アルギニンに富んだオリゴマーまたは市販の低分子量のカチオン性ポリアミノ酸(オリゴアルギニンなど)をグラフトさせる方法によって成される。グラフト法は、式(XIII)に示されるようにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)型カップリングを用いて実行することができ、式中、rは上記で定義したとおりである。
【化22】
本発明のポリマーにグラフトさせることができるカチオン性オリゴアミノ酸およびカチオン性ポリアミノ酸のその他の例は、ポリリジン、ポリオルニチン、およびポリヒスチジンである。
【0022】
さらに別の実施形態では、本発明は、組成物を標的細胞に進入させて標的細胞をトランスフェクトするための条件下および時間で、ポリマーと縮合されたポリ核酸をその中に含む本発明の遺伝子導入組成物と共に標的細胞を溶液中でインキュベートすることによって、標的細胞をトランスフェクトするための方法を提供する。
【0023】
本発明の組成物および方法を記載するために本明細書中で使用される場合、「溶液中」および「溶解性複合体」という用語は生物学者の間で一般的に使用される意味を包含し、液体中に懸濁された粒子は溶液中にあると言われる。ポリマーおよびポリ核酸の電荷は中和されるので、本発明の組成物中のカチオン性ポリマーおよびポリ核酸の複合体は縮合されて水性環境中のポリマー粒子を形成する。このような粒子の液体中の懸濁液は、本明細書では、溶液中にあると見なされる。
【0024】
本発明の方法の実施において使用するために適切な標的細胞には、哺乳類細胞、例えば、本発明の組成物の投与によって患者に送達されたポリ核酸の発現によって処置される患者の組織に属する細胞が含まれるがこれらに限定されない。適切な哺乳類の標的細胞としては、神経系の細胞(例えば、脳、脊髄および抹消神経系細胞)、循環系細胞(例えば、心臓、血管、ならびに赤血球および白血球細胞)、消化器系(例えば、胃および腸)、呼吸器系(例えば、鼻および肺)、生殖器系、内分泌系(例えば、肝臓、脾臓、甲状腺、および副甲状腺)、皮膚、筋肉、または結合組織が挙げられる。
【0025】
あるいは、標的細胞は、任意の器官または組織に由来する癌細胞、例えば本発明の組成物の投与によって患者に送達されたポリ核酸の発現によって処置される患者の組織に属する癌細胞であってもよい。あるいはさらに、標的細胞は、患者に感染しているまたは被験者に感染し得る寄生虫、病原体またはウイルスの細胞でもあり得る。従って、本発明の遺伝子導入組成物は、インビトロ(標的細胞と、その中で発現される所望のポリ核酸との相互作用を研究するため)およびインビボ(生きている被験者における遺伝子治療用途のため)の両方において有用である。
【0026】
4−メチレンイミダゾリニウムの構造式は次のとおりである。
【化23】
【0027】
特定の実施形態では、組成物中のポリマーは、ポリマー中の正に帯電した基と会合した1つまたは複数の対イオンおよび/またはポリマーに結合した1つまたは複数の保護基を有し得る。
【0028】
本発明の組成物中のポリマーと会合するために適切な対イオンの既知の例は、Cl−、F−、Br−、CH3COO−、CF3COO−、CCl3COO−、TosO−などの対アニオンである。
【0029】
本明細書中で使用される場合、本発明の遺伝子導入組成物に適用される「水溶性」および「水溶性の」という用語は、組成物の飽和点における脱イオン水1ミリリットルあたりの組成物の濃度を意味する。水溶性は、種々のポリマーそれぞれに対して異なり得るが、溶媒および溶質間の分子間力と、溶媒和に付随するエントロピー変化とのバランスによって決定される。pH、温度および圧力などの因子はこのバランスを変化させ、従って、水溶性を変化させ得る。水溶性はpH、温度、および圧力にも依存する。
【0030】
一般的に定義されるように、水溶性ポリマーはヒドロゲルへの真に水溶性のポリマーを含み得る(G.Swift、polymer Degr.Stab.59:(1998年)19−24)。本発明の組成物はかろうじて水溶性(例えば、約0.01mg/mLから)であってもよいし、あるいは吸湿性であり、湿った大気にさらされたときに急速に水を吸収して、最終的には粘性溶液を形成してもよく、溶液中の組成物/水の比は無限に変えることができる。
【0031】
本発明の遺伝子導入組成物中で使用されるポリマーの大気圧における脱イオン水への溶解性は、約18℃〜約55℃、好ましくは約22℃〜約40℃の範囲の温度で、約0.01mg/mL〜400mg/mLの範囲である。本発明の組成物の定量的な溶解性は、Braunの方法に従って視覚的に評価することができる(D.Braunら、Praktikum der Makromolekularen Organischen Chemie、Alfred Huthig、Heidelberg、Germany、1966年)。当業者には知られているように、Flory−Huggins溶液理論は、ポリマーの溶解性を説明する理論モデルである。Hansen溶解性パラメータおよびHildebrand溶解性パラメータは、溶解性の予測のための経験的方法である。融解エンタルピーなどの他の物理定数から溶解性を予想することも可能である。
【0032】
本明細書に記載されるPEA、PEURまたはPEURポリマーの脱イオン水溶液に低分子量の電解質を添加すると、4つの応答のうちの1つを引き起こすことができる。電解質は、鎖収縮、鎖伸張、キレート化による凝集(構造遷移)、または沈殿(相分離)を生じ得る。応答の正確な性質は、ポリマーの化学構造、濃度、および分子量、ならびに添加した電解質の性質などの種々の因子に依存し得る。それにもかかわらず、本発明の遺伝子導入組成物は、血液、血清、組織などの生理条件または水/アルコール溶媒系において見られるような条件を含む種々の水性条件下で溶解性であり得る。
【0033】
本発明の組成物の水溶性は、当該技術分野において既知であるように、そして本明細書の実施例において説明されるように1HNMR、13CNMR、ゲル浸透クロマトグラフィ、およびDSCなどのアッセイを用いて特徴付けることもできる。
【0034】
全てのアミノ酸は、末端アミノおよびカルボキシレート基のために帯電種として存在することができるが、アミノ酸の一部だけが適切な条件下で帯電し得る側鎖を有する。「カチオン性αアミノ酸」を言う用語は、本発明の組成物において使用されるポリマーを記載するために本明細書中で使用される場合、R2基が、弱酸(水中に溶解されたときに完全にはイオン化しない)としてその側鎖が機能し得るアミノ酸残基であるか、またはそれを含有することを意味する。酸素、硫黄または窒素などのへテロ原子に共有結合したプロトンからなるイオン化可能な部分が存在することによって、R2基内のこのようなアミノ酸残基においてイオン化可能な特性が与えられる。別のイオン化可能な分子または基の近くなどの適切な水性条件下では、イオン化可能なプロトンは、供与性水素イオンとしてR2から解離し、R2置換基内の1つまたは複数のアミノ酸残基を塩基にし、次いでこれは水素イオンを受け取ることができる。酸形態からのプロトンの解離、または塩基形態によるプロトンの受け取りは、水性環境のpHに強く依存する。イオン化度も環境に敏感であり、水性環境の温度およびイオン強度ならびにポリマー内のイオン化可能な基の微小環境に依存する。
【0035】
従って、「カチオン性αアミノ酸」という用語は、本発明の遺伝子導入組成物中の特定のポリマーを記載するために本明細書中で使用される場合、ポリマー内のアミノ酸残基のR2基中のアミノ酸残基が、適切な周囲の水性または溶媒条件下、特に血液および組織中などの生理条件下で正イオンを形成できることを意味する。このような正のアミノ酸の対イオンは、上記で記載したとおりであり得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「二酸の残基」という用語は、ジカルボン酸の二酸の2つのカルボキシル基を除く部分を意味し、この部分は本発明のポリマー組成物の骨格に取り込まれる。本明細書中で使用される場合、「ジオールの残基」という用語は、残基が本発明のポリマー組成物の骨格に取り込まれた部位において、ジオールの2つのヒドロキシル基を除く部分を意味する。「残基」を含有する対応する二酸またはジオールは、本発明の遺伝子導入組成物の合成において使用される。
【0037】
αアミノ酸およびジオールのジエステルのジアリールスルホン酸塩は、αアミノ酸、例えばp−アリールスルホン酸一水和物、およびジオールを、還流温度まで加熱したトルエン中で水の発生が終結するまで混ぜ合わせ、そして冷却することによって調製することができる。
【0038】
ジカルボン酸の飽和ジ−p−ニトロフェニルエステルおよびビス−αアミノ酸エステルの飽和ジ−p−トルエンスルホン酸塩は、米国特許第6,503,538B1号明細書に記載されるように調製することができる。
【0039】
カチオン性αアミノ酸を含有する式(I、IVおよびV)のPEA、PEURおよびPEUポリマーは、保護基化学を用いて調製することができる。保護されたモノマーは、APCの前か、またはポリマーの処理(work−up)の後のいずれかで脱保護され得る。保護基化学で使用される適切な保護試薬および反応条件は、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry、第3版、GreeneおよびWuts、Wiley & Sons,Inc.(1999年)において見出すことができ、その内容は参照によってその全体が本明細書に援用される。
【0040】
本発明の組成物中のポリ核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、二本鎖DNA、二本鎖RNA、二重鎖DNA/RNA、アンチセンスポリ核酸、機能性RNAまたはこれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、ポリ核酸はRNAであり得る。別の実施形態では、ポリ核酸はDNAであり得る。別の実施形態では、ポリ核酸はアンチセンスポリ核酸であり得る。別の実施形態では、ポリ核酸は、センスポリ核酸であり得る。別の実施形態では、ポリ核酸は、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むことができる。別の実施形態では、ポリ核酸は、リン酸ジエステル結合3’−5’および5’−3’ポリ核酸骨格を含むことができる。あるいは、ポリ核酸は、ホスホチオエート型、ホスホルアミデートおよびペプチド−ヌクレオチド骨格などの非リン酸ジエステル結合を含むことができる。別の実施形態では、部分は、ポリ核酸の骨格糖に結合することができる。このような結合を形成する方法は当業者によく知られている。
【0041】
ポリ核酸は、一本鎖ポリ核酸または二本鎖ポリ核酸であり得る。ポリ核酸は任意の適切な長さを有することができる。特に、ポリ核酸は約2〜約5,000ヌクレオチドの長さであることができ、約2〜約1000ヌクレオチドの長さが含まれ、約2〜約100ヌクレオチドの長さが含まれ、あるいは約2〜約10ヌクレオチドの長さが含まれる。
【0042】
アンチセンスポリ核酸は、通常、標的タンパク質をコードするmRNAに相補的なポリ核酸である。例えば、mRNAは、癌促進タンパク質、すなわち癌遺伝子の産物をコードすることができる。アンチセンスポリ核酸は一本鎖mRNAに相補的であり、二重鎖を形成し、それにより標的遺伝子の発現を阻害し得る。すなわち、癌遺伝子の発現を阻害し得る。本発明のアンチセンスポリ核酸は、標的タンパク質をコードするmRNAと二重鎖を形成することができ、標的タンパク質の発現を許さないであろう。
【0043】
「機能性RNA」は、リボザイムまたは他の翻訳されないRNAを指す。
【0044】
「ポリ核酸デコイ」は、細胞因子がポリ核酸デコイへ結合する際に、細胞因子の活性を阻害するポリ核酸である。ポリ核酸デコイは、細胞因子の結合部位を含有する。このような細胞因子の例としては、転写因子、ポリメラーゼおよびリボソームが挙げられるが、これらに限定されない。転写因子デコイとして使用するためのポリ核酸デコイの一例は、転写因子の結合部位を含有する二本鎖ポリ核酸であろう。あるいは、転写因子のためのポリ核酸デコイは、それ自体とハイブリッド形成して、標的転写因子の結合部位を含有するスナップバック二重鎖を形成する一本鎖核酸であってもよい。転写因子デコイの一例はE2Fデコイである。E2Fは、細胞周期調節に関連して細胞を増殖させる遺伝子の転写において役割を果たす。E2Fの制御は細胞増殖の調節を可能にする。例えば、外傷(例えば、血管形成、手術、ステント留置)の後、外傷に応答して平滑筋細胞が増殖する。増殖は、処置された領域の再狭窄(細胞増殖による動脈の閉鎖)を引き起こし得る。従って、E2F活性の調節は細胞増殖の制御を可能にし、増殖を低下させ、動脈の閉鎖を回避するために使用することができる。その他のこのようなポリ核酸デコイおよび標的タンパク質の例としては、ポリメラーゼを阻害するためのプロモーター配列、およびリボソームを阻害するためのリボソーム結合配列が挙げられるが、これらに限定されない。本発明が、任意の標的細胞因子を阻害するために構築されたポリ核酸デコイを含むことは理解される。
【0045】
「遺伝子治療剤」は、遺伝子を標的細胞内に導入した後に遺伝子産物の発現を行うことによって、標的細胞において遺伝子産物の発現を引き起こす薬剤を指す。このような遺伝子治療剤の一例は、DNAベクターなどの細胞内に導入されたときにタンパク質の発現を引き起こす遺伝子構築物であろう。あるいは、遺伝子治療剤は、標的細胞における遺伝子の発現を低減することができる。このような遺伝子治療剤の一例は、標的遺伝子に統合され得るか、あるいは遺伝子の発現を妨害し得る、ポリ核酸セグメントの細胞内への導入であろう。このような薬剤の例としては、相同的組換えによって遺伝子を妨害することができるポリ核酸が挙げられる。細胞内の遺伝子の導入および妨害方法は当業者によく知られており、本明細書に記載されるとおりである。
【0046】
一実施形態では、ポリ核酸は、一般に知られている化学方法に従って合成することができる。別の実施形態では、ポリ核酸は、商業的供給業者から得ることができる。ポリ核酸としては、ブロモ誘導体、アジド誘導体、蛍光誘導体またはこれらの組み合わせなどの少なくとも1つのヌクレオチド類似体が挙げられるが、これらに限定されない。ヌクレオチド類似体は当業者によく知られている。ポリ核酸は、連鎖停止剤を含むことができる。ポリ核酸は、例えば、架橋試薬または蛍光タグとして使用することもできる。多くの通常の結合は、ポリ核酸を別の部分、例えばホスファート、ヒドロキシルなどにカップリングさせるために使用することができる。さらに、部分は、ポリ核酸に取り込まれたヌクレオチド類似体によってポリ核酸に結合されてもよい。別の実施形態では、ポリ核酸は、リン酸ジエステル結合3’−5’および5’−3’ポリ核酸骨格を含むことができる。あるいは、ポリ核酸は、ホスホチオエート型、ホスホルアミデートおよびペプチド−ヌクレオチド骨格などの非リン酸ジエステル結合を含むことができる。別の実施形態では、部分は、ポリ核酸の骨格糖に結合することができる。このような結合を形成する方法は当業者によく知られている。
【0047】
縮合したポリマー:ポリ核酸は、インビトロでα−キモトリプシンなどの酵素と接触して、あるいはインビボに注入されたときに分解して、適切で有効な量のポリ核酸の持続放出を提供することができる。任意の適切で有効な期間を選択することができる。通常、適切で有効な量のポリ核酸は、約24時間、約2日または約7日で放出され得る。ポリ核酸が本発明の組成物から放出される時間の長さに通常影響を与える因子としては、例えば、ポリマーの性質および量、ポリ核酸の性質、サイズおよび量、組成物が導入される環境のpH、温度および電解質または酵素含量が挙げられる。
【0048】
式(I、IVまたはV)のPEA、PEURまたはPEUポリマーの任意の適切なサイズを本発明の遺伝子送達組成物において用いることができる。例えば、ポリマーは、約1×10−4メートル未満、約1×10−5メートル未満、約1×10−6メートル未満、約1×10−7メートル未満、約1×10−8メートル未満、または約1×10−9メートル未満のサイズを有することができる。
【0049】
本発明の遺伝子導入組成物および方法は、ポリ核酸、ポリ核酸およびポリ核酸を含む全てのタイプのRNAおよびDNAの使用および標的細胞への送達を包含する。より具体的には、核酸は、任意のDNAまたはRNAであり得る。DNAは、治療分子をコードする遺伝子などの、その中に含有される遺伝子の発現のためのプラスミドを含む。RNAは、メッセンジャー(mRNA)、転移(tRNA)、リボソーム(rRNA)、および干渉(iRNA)を含む。干渉RNAは転写後遺伝子サイレンシングに関与するRNAであり、センスおよびアンチセンス鎖で構成される二本鎖RNA(dsRNA)、小干渉(small interfering)RNA(siRNA)、およびミクロRNA(miRNA)を含むがこれらに限定されない。RNA干渉のメカニズムでは、dsRNAは細胞に進入し、その中の酵素DICERによって消化され21−23ヌクレオチドのsiRNAになる。連続的な切断事象は、RNAをsiRNAとして知られる19−21ヌクレオチドに分解する。siRNAアンチセンス鎖はヌクレアーゼ複合体と結合して、RNA誘導サイレンシング複合体、すなわちRISCを形成する。活性化RISCは、塩基対合相互作用によって相同転写物を標的にして、mRNAを切断し、それによって標的遺伝子の発現を抑制する。最近の証拠から、機構はmiRNAとほぼ同一であることが示唆される(Cullen,B.R.(2004年)Virus Res.102:3)。このようにして、iRNAは、ポリマーと縮合したら、食作用または飲作用により細胞内に送達されて放出され、標的遺伝子の発現を抑制する手段として細胞の正常な生物学的処理経路に進入することができる。
【0050】
遺伝子発現の新たな配列特異的阻害剤の小干渉RNA(siRNA)は大きい治療可能性を有するが、このような分子の治療薬としての開発は、インビボでのsiRNAの急速な分解によって妨害されている。従って、siRNAの治療的使用における成功のための重要な要件は、遺伝子サイレンシング核酸の保護である。本発明において、このようなsiRNAの保護は、ポリ核酸分子と、本明細書において記載されるカチオン性PEA、PEURまたはPEUポリマーとの縮合によって提供される。
【0051】
例えば、iRNAのアンチセンス鎖の送達のための本発明の組成物の製造において、負に帯電したiRNAのアンチセンス鎖はカチオン性ポリマーと縮合される。dsRNAは、キャリアポリマーと縮合される。あるいは、センス鎖は1つのポリマー鎖と縮合され、アンチセンス鎖は別のポリマー鎖と縮合され得る。いずれの場合も、ポリマーの生分解の間に本発明の組成物から放出される二本鎖RNA、およびセンス鎖から解放されるアンチセンス鎖は、iRNAの正常な生物学的経路に進入するであろう。
【0052】
本発明を説明するために、本明細書の実施例1に記載されるようにペンダントカチオン性グアニジン基を有するPEAポリマーを調製し、本発明の遺伝子導入組成物のために十分なプラスミドDNAまたはsiRNAに縮合させて、インビトロでマウス肝細胞に容易に進入させるために使用した。物理化学的試験(ゲル電気泳動、蛍光、緑色蛍光タンパク質発現アッセイ)により、本発明の組成物中のポリ核酸の成功した細胞トランスフェクションおよび発現を確認した。市販の遺伝子導入剤:Lipofectamine(登録商標)、Dharmafect(登録商標)、およびSuperfect(登録商標)と比較して、本発明の遺伝子導入組成物のトランスフェクション効率を評価するために、GFP発現アッセイを行った。
【0053】
より具体的には、式(VI、VII、IX、X)のアルギニン結合ポリ(エステル−アミド)またはアグマチン結合ポリ(エステル−アミド)を、例えば遺伝子治療において使用される標的細胞のトランスフェクションをもたらすための非ウイルス遺伝子導入剤としての効率について評価した。
【0054】
縮合をもたらすために本発明の方法において使用されるポリマー対ポリ核酸の比率は、場合により、従来技術の遺伝子導入剤の場合よりも大きいかもしれないので、ポリマーをマウス肝臓FL83B細胞と共にインキュベートすることによって、ポリマーの細胞毒性を検査した。細胞毒性は、標準ルミノメーター細胞増殖アッセイを用いて24時間および48時間で測定した。図1〜3に要約されるこの細胞の生存率実験からのデータによって示されるように、PEA−アグマチン.AAだけが0.1mg/mLの濃度において毒性を示した。その他の本発明のカチオン性ポリマーは全て、0.1mg/mLの濃度において毒性でなかった。PEA−NTA−アグマチン.AAは、1mg/mLの濃度においても毒性でなかった。全体として、全てのPEA結合体は、同様の濃度における市販のポリアルギニンよりも毒性が低かった(13uMのポリアルギニンは0.2mg/mLである)。これらの研究で対照として使用された市販のトランスフェクション試薬と比較すると、本発明の遺伝子導入組成物(すなわち、ポリマー:DNA複合体)と共にインキュベートされたFL83B細胞は、市販の最良のトランスフェクション試薬の場合と同程度に生存可能であり、概して、Superfect(登録商標)の場合よりも60%高く生存可能であった(図4)。
【0055】
「電荷比」という用語は、本発明の遺伝子導入組成物を記載するために使用される場合、負のポリ核酸電荷に対する正のポリマー電荷の比率を意味する。本発明を説明するために製造された本発明の組成物のそれぞれについて、記載した正電荷の総数は、1HNMRデータによって推定したポリマーあたりのグアニジウム負荷の%に基づいて計算した。DNAおよびsiRNAの両方について、負電荷の数は塩基対あたりの2つの負電荷を基準とし、質量あたりの電荷の総数として計算した。負のポリ核酸電荷に対する正のポリマー電荷の比率は、以下の表1および2に示されるような電荷比であると決定された。
【0056】
水性懸濁液中の本発明の組成物の縮合物のゲル遅延度アッセイおよびゼータ電位を用いて、正に帯電したPEAポリマーが負に帯電したプラスミドDNAを中和して、標的細胞のトランスフェクションにおいて使用するのに適したコンパクトな複合体を形成できることを確認した。siRNAを1:1、2:1、および4:1のポリマー対siRNAの電荷比においてPEA−Arg(OMe)と共に配合した。1:1の電荷比では、アガロースゲル中に結合していないsiRNAが観察されたが、2:1、4:1、および6:1の電荷比では、以下の表2に示されるようにsiRNAはポリマーと完全に複合体を形成した。従って、本明細書において記載されるカチオン性PEA、PEURおよびPEUポリマーは親和性を有してポリ核酸と複合体を形成し、形成された縮合物粒子の全体の電荷は、カチオン性ポリマーの過剰に従って変化することが分かった。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
標的細胞におけるポリ核酸カーゴの発現を説明するために、無血清培地中で作られたシェーグレン症候群B(SSB)に対するカチオン性PEAおよびsiRNAの複合体を含む本発明の組成物を用いて、本明細書の実施例3に記載されるように、無血清培地中で本発明の組成物と共に細胞をインキュベートすることによって、FL83B細胞をトランスフェクトした。当業者は、細胞トランスフェクションにおける使用に適していることが当該技術分野において分かっている任意のトランスフェクション条件が使用され得ることを理解するであろう。
【0060】
標的細胞を回収し、RNAを単離し、標準方法を用いて定量的PCRにより遺伝子発現を測定すると、PEA−Arg(OMe).HClまたはDharmafect(登録商標)と複合体を形成したsiRNAのトランスフェクションは、標的細胞においてほぼ同等(すなわち、70%)のSSB発現の下方制御をもたらすことが分かった(図9)。
【0061】
以下の実施例は本発明を説明することが意図され、限定は意図されない。
【0062】
[実施例1]
[A.材料のキャラクタリゼーション]
モノマーおよびポリマーの化学構造は標準化学法によって特徴付けた。1HNMR分光法のために500MHzで動作するBruker AMX−500スペクトロメーター(Numega R.Labs Inc.San Diego,CA)によってNMRスペクトルを記録した。テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として、重水素化溶媒CDCl3またはDMSO−d6(Cambridge Isotope Laboratories,Inc.、Andover,MA)を用いた。
【0063】
合成されるモノマーの融点は、自動Mettler−Toledo FP62融点測定装置(Columbus,OH)において決定した。合成したポリマーの数平均および重量平均分子量(MwおよびMn)ならびに分子量分布は、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 2414屈折率検出器を備えたモデル515ゲル浸透クロマトグラフィ(Waters Associates Inc.Milford,MA)によって決定した。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中の0.1%のLiCl溶液を溶離液として使用した(1.0mL/分)。2本のStyragel(登録商標)HR 5E DMF型カラム(Waters)を接続し、ポリスチレン標準で較正した。
【0064】
[B.PEA(PEA−OSu)の活性化のための一般手順]
5.0g(2.7mmol、重量平均Mw=65kDa、GPC(PS))のPEAポリマー(PEA−OSu)(式I、式中R1=(CH2)8、R2=OH、およびR3=CH2CH(CH3)2、R4=(CH2)6、R7=(CH2)4、米国特許第6,503,538B1号明細書の方法に従って合成)を50mLの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解した。次に、0.615gのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、2.98mmol)および0.374gのN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu、3.25mmol)を添加し、混合物を室温で約12時間、アルゴン下で攪拌した。0.45ミクロン孔径フリット(PTFEシリンジフィルタ)によりろ過することによって、形成した残渣を除去した。さらなる結合のために活性化PEA−OSuの溶液をアルゴン下で保持した。1H−NMR分析によって決定されるように、OSuとの結合によってPEAの80%〜100%を活性化した。
【0065】
[C.PEA−Arg(OMe)結合体(式VI)の合成]
PEA−OSuの活性化エステルの予め調製した溶液(5.3g、2.7mmolのポリマーを含有する)に、0.849gのL−アルギニンメチルエステル二塩酸塩(3.25mmol)、1.134mLのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、6.50mmol)および500mLのDMFをアルゴン下で添加した。得られた不均一な混合物を室温で約24時間攪拌した。そのようにして形成されたPEA−Arg(OMe)ポリマー結合体を、3体積%の酢酸を含む5Lの酢酸エチル中に沈殿させた。沈殿物を再度酢酸エチルで洗浄し、ペーパータオルで乾燥させた。捕集したポリマー沈殿物をエタノール中に再溶解させ(5.0g、50mL中)、3500Daの分子量カットオフを有する透析バッグに移し、DI水中で透析した。最後の透析溶液を凍結乾燥し、1H−NMR、GPCおよびDLSによってゼータ電位および粒径について分析した。1H−NMRによって決定されるようにポリマーの60%〜90%をArg(OMe)に転化させた(図10を参照)。精製後の生成物PEA−Arg(OMe)結合体の収率は80〜90%の範囲であり、重量平均分子量(Mw)は約70kDaであった(GPC、PSにより決定)。
【0066】
[D.PEA−アグマチン結合体(式VII)の合成]
0.5gの硫酸アグマチン(2.19mmol)および0.21gの水酸化ナトリウム(8.76mmol)の懸濁液を10mLのDMF中、室温で12時間攪拌し、形成した溶液を0.45ミクロン孔径フリット(PTFEシリンジフィルタ)によりろ過した。5%(重量/体積)DMF中の得られたアグマチン(遊離アミン形態、18.7mmol)5mLと、21.6mLのDMF中の酢酸(9.3mmol)0.53mLとを、活性化PEA−OSuの予め調製した溶液(3.0g、15.5mmol)に添加した。形成された不均一な混合物をアルゴン下、室温で約24時間攪拌した。PEA−アグマチンポリマー結合体を2.5Lの酢酸エチル中に沈殿させた。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、ペーパータオルで乾燥させた。捕集したポリマー結合体をエタノール(3.0g、100mL)中に再溶解させた。溶解したポリマーを、3500Daの分子量カットオフを有する透析バッグに移し、DI水中で透析した。透析した生成物PEA−アグマチン結合体を凍結乾燥し、1H−NMR、GPC、DSC、およびDLSによってゼータ電位および粒径について分析した。ポリマーに負荷されたアグマチンは、NMRによって決定されるように50〜60%の範囲であった。精製後の反応収率は70〜80%の範囲であり、重量平均分子量(Mw)は約70kDaであった(GPC、PS)。
【0067】
[E.PEA.I.NTA(PEA−NTA−OSu)の活性化のための一般手順]
5.0g(2.40mmol、重量平均Mw=77kDa、GPC(PS))のPEAポリマー(式I、式中R1=(CH2)8、R2=式VIIIのリンカー、およびR3=CH2CH(CH3)2、R4=(CH2)6、R7=(CH2)4)を、アルゴン下で50mLの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解した。次に、1.535gのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、7.44mmol)および0.884gのN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu、7.68mmol)を添加し、混合物を室温で約8時間攪拌した。0.45ミクロン孔径フリット(PTFEシリンジフィルタ)によりろ過することによって、形成した残渣を除去した。PEA−OSu結合体の溶液を丸底フラスコ内に捕集し、アルゴン下で保持した。サンプルポリマー溶液を、1H−NMRによってOSu負荷について分析し、80〜100%の範囲であった。
【0068】
[F.PEA−NTA−Arg(OMe)結合体(式IX)の合成]
DMF中のPEA−NTA−OSuの活性化エステル(5.7g、2.4mmol)の溶液に、2.08gのL−アルギニンメチルエステル二塩酸塩(Arg(OMe)、7.96mmol)、2.77mLのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、7.2mmol)および500mLのDMFを添加した。得られた不均一な混合物を室温で約24時間攪拌した。PEA−NTA−Arg(OMe)ポリマー結合体を、1%v/vの酢酸を含む5Lの酢酸エチル中に沈殿させた。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、ペーパータオルで乾燥させた。捕集したポリマー結合体をエタノール中に再溶解させ(5.0g、50mL中)、20mLの水で希釈し、3500Daの分子量カットオフを有する透析バッグに移した。ポリマーを脱イオン水中で2日間透析し、次にろ過し、そして凍結乾燥した。1H−NMR、GPC、DSC、およびDLSによって、生成物をゼータ電位および粒径について分析した。ポリマーに負荷されたArg(OMe)は、1H−NMRによって決定されるように50〜70%の範囲であった。精製後の生成物の収率は80〜90%の範囲であった。重量平均分子量(Mw)は155〜160kDaの範囲であった(GPC、PS)。
【0069】
[G.PEA−NTA−アグマチン結合体(式X)の合成]
丸底フラスコ中のPEA−NTA−OSuの活性化エステル(4.55g、19.1mmol)に、以下の試薬を添加した:5%(重量/体積)のDMF中の18.43mLのアグマチン(68.8mmol)、1.97mLの酢酸(34.4mmol)および20.5mLのDMF。アグマチン溶液のアミン形態を以下のように調製した:0.5gの硫酸アグマチン(2.19mmol)および0.21gの水酸化ナトリウム(8.76mmol)を10mLDMF溶液中に分散させ、一晩(約12時間)攪拌した。A0.45ミクロン孔径フリット(PTFEシリンジフィルタ)によって溶液をろ過した。
【0070】
アグマチンのアミン形態の溶液を丸底フラスコ内の溶液に添加し、得られた懸濁液を室温で約24時間攪拌した。得られたPEA−NTA−アグマチンポリマー結合体を2.5Lの酢酸エチル中に沈殿させた。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、ペーパータオルで乾燥させた。捕集したポリマーをエタノール(3.0g、100mL)中に溶解し、3500Daの分子量カットオフを有する透析バッグに移した。ポリマー結合体を3.5LのDI水中で透析し、溶液をろ過して凍結乾燥した。1H−NMR、GPC、DSC、およびDLSによって、生成物PEA−NTA−アグマチン結合体(式X)をゼータ電位および粒径について分析した。ポリマーに負荷されたアグマチンは、1H−NMRにより80〜90%であった。精製後の反応収率は、50〜60%の範囲であった。重量平均分子量(Mw)は150〜180kDaの範囲であった(GPC、PS)。
【0071】
[実施例2]
[A.材料]
臭化エチジウムはSigma(St.Louis,MO)から購入し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)はCellgro(Herndon,VA)から購入し、HEPES(Calbiochem、San Diego,CA)、DNAサイズマーカーTRACK ITTM(Invitrogen、Carlsbad,CA)、Superfect(登録商標)(Qiagen、Valencia,CA)、Lipofectamine(登録商標)(Invitrogen、Carlsbad,CA)、およびDharmafect(登録商標)(Dharmacon、Lafayette,CO)を商業的供給源から購入した。他の化学薬品および試薬は、他で特定されなければ、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。
【0072】
[B.プラスミドDNAの調製]
供給業者のプロトコールに従ってQiagenエンドトキシンフリープラスミドmaxi−prepキットを用いて、プラスミドDNAを調製した。260nmにおける分光光度分析および1%アガロースゲルにおける電気泳動法によって、精製プラスミドDNAの量および質を評価した。精製プラスミドDNAを10mMのTris−Cl(pH8.5)中に再度懸濁させ、一定分量において凍結させた。
【0073】
[C.細胞培養]
マウス肝細胞FL83Bは、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas,VA)から入手した。10%ウシ胎児血清が補充されたKaighnのF12K完全培地において5%のCO2中37℃で推奨されるようにFL83B細胞を増殖させた。
【0074】
[D.本発明のPEAストック懸濁液の調製]
上記の実施例1で調製されたポリマーを200プルーフのエタノール中に100mg/mLで溶解させた。100μLの100mg/mLの種々のポリマーを900μLの水に添加することによって10mg/mLのポリマー懸濁液を作った。ロータリーエバポレーターによって、ポリマー懸濁液中のエタノールを一部除去した。水の添加によって懸濁液をその元の体積に戻した。以下の実験のために10mg/mLのポリマー懸濁液を用いた。あるいは、水中で1mg/mLまでさらなる希釈を行った。
【0075】
[E.ポリマー細胞毒性の評価]
本発明のPEAポリマーの生体適合性をマウス肝細胞FL83B細胞において試験した。細胞毒性研究のために以下の本発明のPEAポリマーを使用した:PEA−Arg(OMe).HCl、PEA−Arg(Ome).AA、PEA−NTA−Arg(OMe).AA、PEA−Agt.AA、PEA−NTA−Agt.AA(式VI、VII、IX、X、式中、R1=(CH2)8、R3=CH2CH(CH3)2、R4=(CH2)6、AA−酢酸、p=0.75、m=0.25)およびポリアルギニン塩酸塩(分子量5,000〜15,000、Sigma、St.Louis,MO)。
【0076】
ポリマーをFL83B細胞に添加し、ViaLight(登録商標)Plus Cell Proliferation and Cytotoxicity BioAssay Kit(Cambrex、Rockland,ME)を用いて、細胞毒性を24時間および48時間で測定した。10%ウシ胎児血清が補充された細胞培地に100mg/mLのポリマーを添加して0.1mg/mL、0.5mg/mL、または1mg/mLの最終濃度にした。培地を取り出し、細胞溶解試薬を添加した。10分後に、100μlの細胞溶解物を白壁のルミノメータープレートに移した。100μlのATP Monitoring Reagent Plusを各ウェルに添加した。プレートを2分間インキュベートし、次にルミノメーターにおいて読み取った。生存%データは、サンプルの相対発光を対照の相対発光で割って100をかけることによって計算されるように、対照に対して規格化された生存パーセントで表される。
【0077】
図1〜3に要約されるこの実験からのデータによって示されるように、PEA−アグマチン.AAのみが0.1mg/mLの濃度において毒性を示した。その他の本発明のカチオン性ポリマーは全て、0.1mg/mLの濃度において毒性でなかった。PEA−NTA−アグマチン.AAは、1mg/mLの濃度においても毒性でなかった。全体として、全てのPEA結合体は、同様の濃度における市販のポリアルギニンよりも毒性が低かった(13uMのポリアルギニンは0.2mg/mLである)。
【0078】
[F.電荷比の定義および測定]
記載されるポリマーのそれぞれについて、1HNMRデータによって推定したポリマーあたりのグアニジウム負荷の%に基づいて正電荷の総数を計算した。DNAおよびsiRNAの両方について、負電荷の数は塩基対あたりの2つの負電荷を基準とし、質量あたりの電荷の総数として計算した。負のポリ核酸電荷に対する正のポリマー電荷の比率を電荷比であると決定し、表1および2におけるカテゴリーとして記入した。
【0079】
ポリマー:DNA複合体の形成は、動的光散乱(DLS)装置(Dispersion Technology Software 5.00を備えたZetasizer Nano ZS、Malvern Instruments Ltd、Worcestershire,UK)において測定したゼータ電位によっても確認した。結果は、本明細書の表1および2において見ることができる。PEA−Arg(OMe)懸濁液はGFPプラスミドと複合体を形成した。サンプルは20mMのHEPES緩衝液pH7.4中に1mLまでとし、次に、1mLの体積全体を、生成物プロトコールに従って使い捨てのキャピラリーセル(Malvern、DTS1060)に負荷した。
【0080】
[G.ポリマー:DNA複合体の細胞毒性]
ポリマーのみについての前の実施例において記載されるように、ポリマー:DNA複合体の細胞毒性を測定した。簡潔に言うと、24ウェルプレートの各ウェルに対して、1μgのGFPプラスミドDNAの最終濃度のために、1:1、2:1、および4:1の電荷比で、無血清培地中の1mg/mLの体積のGFPプラスミドに10mg/mLの体積のポリマー懸濁液を添加することによって、ポリマー:DNA複合体を作った。溶液を混ぜた後、直ちに懸濁液を数秒間ボルテックスし、次に周囲条件で40分間、平衡化させた。5%CO2下、37℃で18〜24時間、これらの複合体を細胞に添加した。ポリマー:DNA複合体溶液を含む細胞培地を取り出し、新鮮な培地に取り換えた。ポリマー:DNA複合体の細胞毒性は、Vialight(登録商標)アッセイ(East Rutherford、NJ)によって24時間および48時間で測定した。図4に要約されるデータにより示されるように、ポリマー:DNA複合体の存在下でFL83B細胞は、市販の最良のトランスフェクション試薬の場合と同程度に生存可能であり、概して、Superfectの場合よりも60%高く生存可能であった。
【0081】
[[H]緑色蛍光タンパク質プラスミド(GFP)によるトランスフェクション]
DNAは、上記のように1:1、2:1、および4:1のポリマー対DNAの電荷比で、PEA−Arg(OMe).HCl(式VI)と複合体を形成した。トランスフェクション効率を顕微鏡でモニターできるように、緑色蛍光タンパク質を発現するプラスミドDNAを用いた。ポリマー:DNA複合体を20mMのHEPES緩衝液または無血清細胞培地中で作った。ポリマー:DNA複合体は、アガロースゲル遅延度アッセイを行うことによって確認した。簡潔に言うと、TAE(トリス酢酸EDTA)緩衝液中の臭化エチジウムにより染色した1%アガロースゲルにおける100Vで15〜20分間の電気泳動法によって、上記のプロトコールを用いて形成されたポリマー:DNA複合体を分析した。UV照明によってDNAを視覚化した。遊離DNAはゲルを通って移動して臭化エチジウム染色により視覚化され得るが、ポリマー:DNA縮合物はゲルを通って移動しないであろう。図5は、4つの電荷比のポリマー:DNA縮合物を示す。0.5:1および1:1の電荷比では、未結合DNAがまだゲル上で視覚化され得る。完全な中和は、およそ2:1以上の電荷比で達成された。2:1および4:1の電荷比によって、未結合DNAは見ることができず、十分なポリマーがDNAと複合体を形成して電荷を中和し、移動を妨げることが示唆される。
【0082】
マウス肝細胞FL83B細胞を30,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種した。無血清培地中で作られた上記電荷比のポリマー:DNA複合体をFL83B細胞に添加した。複合体を37℃で18〜24時間、細胞上で放置した。次に、10%ウシ胎児血清を補充した新鮮な培地を細胞に再供給し、37℃でさらに48時間インキュベートした。緑色蛍光タンパク質(Aldevron、Fargo,ND)の発現に陽性の細胞を顕微鏡で観察し、BD FACSCantoTM(BD Biosciences、Franklin Lakes,NJ)におけるフローサイトメトリーによって定量した。GFP発現は図5に示される。意外にも、MVPEA−Arg(Ome).HClは、試験した全てのポリマーのうち最高のトランスフェクション効率を有した。しかしながら、このような効率は市販の試薬により達成される効率のわずか20%であった。トランスフェクション時間を短縮し、培地に血清を含ませることにより、図6に示されるようにトランスフェクション効率が改善され、市販の試薬のDharmafect(登録商標)と比較して80%まで改善された。
【0083】
[ヒト子宮頸癌細胞(ATCC)およびヒト冠動脈内皮細胞(Cambrex)におけるGFPによるトランスフェクション効率の比較]
ヒト冠動脈内皮細胞は、Cambrex BioScience(Walkersville,MD)から購入した。DNAは、上記のように6:1のポリマー対DNAの電荷比でPEA−Arg(OMe)HCl(式VI)と複合体を形成させた。ポリマー:DNA複合体を20mMのHEPES緩衝液pH7中で作った。市販のトランスフェクション試薬Dharmafect1(Dharmacon、Lafayette,CO)、Lipofectamine(Invitrogen、Carlsbad,CA)、Superfect(Qiagen、Valencia,CA)、JetPEI(Polyplus−Transfection、New York,NY)、およびLT−1(Mirus、Madison,WI)と、トランスフェクション能力を比較した。
【0084】
HeLa、ヒト子宮頸癌細胞、HCAEC、ヒト冠動脈内皮細胞およびFL83B、マウス肝細胞をそれぞれ、10,000、10,000および30,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種した。10%ウシ胎児血清を補充した培地において1μgDNA/ウェルの濃度でポリマー:DNA複合体を細胞に添加した。複合体を37℃で72時間、細胞上で放置した。緑色蛍光タンパク質(Aldevron、Fargo,ND)の発現に陽性の細胞を顕微鏡で観察し、BD FACSCantTMにおけるフローサイトメトリーによって定量した。GFPの発現は図7に示される。市販の試薬と比較して、PEA−Arg(OMe)HClは、HeLa細胞に対して有利なトランスフェクション効率を有し、トランスフェクション効率はFL83B細胞の場合に匹敵した。HCAECは、PEA−Arg(OMe)HCl、JetPEIおよびLT−1によってのみトランスフェクトされた。
【0085】
[実施例3]
[siRNAのトランスフェクションおよび発現]
シェーグレン症候群B(SSB)に対するsiRNAのパネルは、Dharmacon and Ambion(Austin,TX)から購入した。1XsiRNA緩衝液(6mMのHEPESpH7.5、20mMのKCl、0.2mMのMgCl2)中で、siRNAを20μMに戻し、−20℃で貯蔵した。パネルをSSB遺伝子発現の下方制御についてスクリーニングし、市販のトランスフェクション試薬Dharmafect(登録商標)と比較した。
【0086】
siRNAは、1:1、2:1、および4:1のポリマー対siRNAの電荷比においてPEA−Arg(OMe)と共に配合した。ポリマー:siRNA複合体の形成はアガロースゲル遅延度アッセイを行うことによって確認し、以下のように4つの電荷比において、ポリマー:siRNA縮合物の形成が検出された:レーン1=1kb Plus DNAラダー、レーン2=0.6μgのsiRNAのみ、レーン3=6:0電荷比のPEAのみ、レーン4=1:1電荷比のPEA:siRNA、レーン5=2:1電荷比のPEA:siRNA、レーン6=4:1電荷比のPEA:siRNA、レーン7=6:1電荷比のPEA:siRNA。種々の電荷比においてsiRNAと複合体を形成したPEA−Arg(OMe)HClのゲル遅延度アッセイの結果の顕微鏡写真の観察によって、1:1電荷比においてアガロースゲル中に未結合siRNAが観察されることが明らかになった。しかしながら、2:1、4:1、および6:1の電荷比では、siRNAはポリマーと完全に複合体を形成し、移動は観察されなかった。中和したポリマー:siRNA複合体の形成は、本明細書の表2に示されるように、ゼータ電位アッセイおよびDLSによっても確認した。
【0087】
ポリマー:siRNA複合体を無血清培地中で作り、40分間複合体を形成させた後、新鮮な培地を添加した。複合体をFL83B細胞に添加し、100nMの最終DC03濃度で18〜24時間、37℃でトランスフェクトさせた。24時間後に、新鮮な培地を添加し、細胞を37℃でさらに24時間インキュベートした。細胞を回収し、RNeasy RNA単離キット(Qiagen、Valencia,CA)を用いてRNAを単離した。定量的PCRにより遺伝子発現を測定した。この実験の結果、(図8)は、PEA−Arg(OMe).HClまたはDharmafect(登録商標)と複合体を形成したsiRNAのトランスフェクションが、SSB発現の約70%の下方制御をもたらすことを示した。
【0088】
[市販のトランスフェクション試薬に対するPEAポリマー:siRNA複合体の細胞毒性]
ポリマー:DNA複合体についての先行実施例において記載したように、ポリマー:siRNA複合体の細胞毒性を測定した。簡潔に言うと、10mg/mLの体積のポリマー懸濁液を多量のsiRNAに添加し、25mMのHepes、pH7中の100nMの最終siRNA濃度を得ることによって、ポリマー:siRNA複合体を作った。これらの複合体を5%CO2下、37℃で24ウェルプレート内の細胞に添加した。ポリマー:siRNA複合体の細胞毒性は、VialighTMアッセイによって24および48時間で測定した。図9に要約されるデータにより示されるように、本発明のポリマー:siRNA複合体の存在下でのFL83B細胞の生存率は、市販の最良のトランスフェクション試薬の場合と同程度に有利であった。
【0089】
全ての刊行物、特許、および特許文献は、個々に参照により援用されたかのように、参照によって本明細書に援用される。本発明は、種々の特定の好ましい実施形態および技術を参照して説明された。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内に留まりながら多くの変化および変更が成され得ることは理解されるべきである。
【0090】
本発明は上記実施例を参照して説明されたが、変更および変化が本発明の趣旨および範囲内に包含されることは理解されるであろう。従って、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
遺伝子治療は、被験者の特定の細胞に遺伝子材料を導入することによる疾患の処置であると定義することができる。人間の遺伝子治療の概念は、1970年代初期に最初に統合された。1970年代後半および1980年代を通しての分子生物学の進歩は、1990年に承認されたFDAプロトコールに従う遺伝子導入技術を用いた最初の患者の処置をもたらした。これらの研究からの楽観的な結果により、遺伝子治療は多くの人間の病気の処置および治療のために急速に一般的になることが期待された。しかしながら、1131の遺伝子治療の臨床試験が1989年から世界中で承認されたことを考慮すれば、成功した数が少ないのは残念なことである。
【0002】
遺伝子治療において使用される遺伝子構築物は、3つの成分:特定の治療用タンパク質をコードする遺伝子、標的細胞内の遺伝子の機能を制御するプラスミドベースの遺伝子発現系、および体内の特定の位置への遺伝子発現プラスミドの送達を制御する遺伝子導入系からなる。人間の遺伝子治療の発展に対する重要な制限によって、安全、効率的および制御可能な遺伝子導入方法は欠如したままである。
【0003】
人間の臨床的使用のためのウイルスベクターの使用は、歴史的に、限られたペイロード容量および一般的な産生問題から、免疫および毒性反応ならびに望ましくないウイルス組換えの可能性まで様々であり得る制限に遭遇している。ポリマーおよび脂質は最も一般的な非ウイルス合成導入ベクターであり、このような制限の可能性を回避することを目指して開発されてきた。従って、非ウイルス系、特に合成DNA送達系は、研究所および臨床設定の両方においてますます望ましくなっている。
【0004】
しかしながら、非ウイルス遺伝子導入分野における研究は、ウイルスベースの遺伝子導入系の研究と比較してその初期段階にある。近年、多数のグループが、カーゴ(cargo)の細胞内送達を高めるためにタンパク質形質導入ドメイン(PDT)を使用しており、よく研究された例は、HIV−1の転写のトランスアクチベーター、TATのアルギニンに富んだセグメントである。関連の研究において、TAT配列はアルギニンのモノマーによって置換され得ることが分かり、これにより、アルギニンのグアニジウム残基が異種遺伝子を標的細胞内に導入するTATの能力にとって不可欠であることが示された。この発見以来、多数のグループが、グアニジンに富んだPTDと、薬物、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ナノ粒子、およびリポソームとの化学的な結合体を調製し、これらを広範な種類の細胞型へうまく送達している。さらに、分子アルギニンは薬理学的使用のために抗凝固薬として提唱されており、天然ポリマーキトサンに結合されたアルギニンも報告されている(WG Liuら、J.Mat.Sci.:Materials in Medicine(2004年)15)。
【0005】
非ウイルス遺伝子導入剤として評価されている一般的なカチオン性ポリマーの中で、最もよく知られているのはポリ−L−リジン(PLL)およびポリエチレンイミン(PEI)である。非ウイルスベクターとして開発されたその他の合成および天然ポリカチオンとしては、ポリアミドアミンデンドリマー(Tomalia,D.A.ら、Angewandte Chemie−International Edition in English(1990年)29(2)”138−175)および変性キトサン(Erbacher,P.ら、Pharmaceutical Research(1998年)15(9):1332−1339)が挙げられる。
【0006】
遺伝子導入効率を改善するために特異的に設計されたポリマーとしては、プロトンスポンジ効果を有するイミダゾール含有ポリマー、膜分裂ペプチドおよびポリマー、例えばポリエチルアクリル酸(PEAA)およびポリプロピルアクリル酸(PPAA)などと、シクロデキストリン含有ポリマーおよび分解性ポリカチオン、例えばポリ[アルファ−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸](PAGA)およびポリ(アミノ酸)などと、ポリエチレンオキシド(PEO)などの非イオン性の水溶性ポリマーに結合されたポリカチオンとが挙げられる。ほとんどの場合、これらのポリマーは、安定性、生体適合性またはエンドソームエスケープなどの特定の細胞内障害に対処するために設計されたものである。結果は様々であり、いくつかのポリマーは、市販の最良のポリマーと同程度に機能するか、あるいはわずかに優れていた。しかしながら、どれも遺伝子導入ベクターとしてのウイルスの効率には到達していない。
【0007】
過去10年間、生物医学的用途のための生分解性で生体吸収性のポリマーは、ますます関心を集めている。最近記載されたαアミノ酸、脂肪族ジオール、および脂肪族ジカルボン酸に基づく脂肪族PEAは、その生体適合性、低毒性、および生分解性のために、生物医学的用途のための良好な候補であることが分かった(K.DeFifeら、Transcatheter Cardiovascular Therapeutics−TCT 2004 Conference.Poster presentation.Washington,DC.2004年、G.Tsitlanadzeら、J.Biomater.Sci.Polymers Edn.(2004年).15:1−24)。
【0008】
主に穏やかな温度の溶液中で実行される非常に用途の広い活性重縮合(APC)法は、高分子量を有する規則的な直鎖多官能性PEA、ポリ(エステル−ウレタン)(PEUR)およびポリ(エステル尿素)(PEU)の合成を可能にする。APCの合成多様性のために、構成要素として使用される3つの成分(αアミノ酸、ジオールおよびジカルボン酸)を変えて巨大分子骨格を作ることによって、これらのポリマーにおいて広範な材料特性を達成することができる(R.Katsaravaら、J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem(1999年)37:391−407)。近年、アルギニンをポリマー骨格に組み込んだカチオン性PEAは、非ウイルス遺伝子導入剤として使用可能であることが発見された(2007年7月24日に出願された米国仮特許出願第60/961,876号明細書)。
【0009】
上記の研究によって、効率的なDNA送達に対する3つの主な障害:細胞形質膜を横切る取込みが低いこと、放出されたDNA分子の不適切な放出および不安定性、ならびに核を標的とすることの困難が存在することが示された。従って、当該技術分野における上記の進歩にもかかわらず、新規のより優れた非ウイルス遺伝子導入系が必要とされている。
【0010】
[発明の概要]
一実施形態では、本発明は、以下の:
一般構造式(I)で表される化学式を有するPEAポリマー
【化1】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化2】
式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、そして式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化3】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化4】
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(IV)で表される化学構造を有するPEURポリマー
【化5】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化6】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は、−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4およびR6はそれぞれ、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(V)で表される化学式を有するPEUポリマー
【化7】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化8】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は、−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片からなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
のうちの少なくとも1つを含むカチオン性ポリマーとの溶解性複合体に縮合された少なくとも1つのポリ核酸を含む生分解性遺伝子導入組成物を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、縮合されたポリ核酸を標的細胞にトランスフェクトするために、本発明の遺伝子導入組成物と共に標的細胞を溶液中でインキュベートすることによって標的細胞をトランスフェクトするための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】様々なポリマー濃度におけるPEA−Arg(OMe).HCl、PEA−Arg(OMe).AA、およびPEA−アグマチン.AAの存在下での、FL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。3つのポリマーのうち、PEA−Arg(OMe)結合体は、FL83B細胞に対する毒性が最も低かった。
【図2】様々な濃度のポリマーPEA−NTA−Arg(OMe).AAおよびPEA−NTA−アグマチン.AAの存在下での、FL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。PEA−NTA−Arg(OMe).AAだけが1mg/mLにおいて毒性であった。
【図3】ポリアルギニンの存在下での、FL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図4】様々な電荷比の本発明のポリマー:GFPをコードする核酸を含有するDNA複合体と、対照としてDharmafect(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)およびSuperfect(登録商標)のそれぞれ1つとの存在下での、FL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図5】Dharmafect(登録商標)トランスフェクション試薬による結果に対して規格化された、種々の本発明のポリマー複合体を用いてGFPをコードするDNAをトランスフェクトされた細胞の割合を示すフローサイトメトリーデータを要約するグラフである。
【図6】市販のトランスフェクション試薬に対して規格化された、FL83B細胞におけるGFP発現の割合を示すフローサイトメトリーデータを要約するグラフである。
【図7】本発明の組成物および種々の市販のトランスフェクション試薬とのGFPプラスミドDNA複合体によりトランスフェクトされた3つの異なる細胞型からのGFP蛍光を示すグラフである。本発明の組成物だけがGFPをHeLa細胞に効果的にトランスフェクトした。
【図8】本発明のカチオン性PEAポリマーおよび市販の遺伝子導入剤とのsiRNAの複合体をトランスフェクトされたマウス肝細胞におけるシェーグレン症候群B(SSB)遺伝子の発現パーセントを示すグラフである。
【図9】異なるトランスフェクション試薬と複合体を形成した100nMのDC03(siRNA)をトランスフェクトされたFL83B細胞の生存パーセントを示すグラフである。
【図10】図10Aは式I、R2=OHのPEA.HのDMSO−d6における500MHzの1HNMRスペクトルであり、図10Bは式VIのPEA−(OMe).HClのDMSO−d6における500MHzの1HNMRスペクトルである。
【0013】
[発明の詳細な説明]
ポリ(エステル−アミド)(PEA)、ポリ(エステルウレタン)PEURおよびポリ(エステル尿素)(PEU)は、その骨格中のエステルおよびアミド、ウレタンまたは尿素ブロックのいずれかで構成される生分解性ポリマー類を形成する。これらのポリマーはポリエステルおよびポリアミドの両方の有利な特性を兼ね備えるので、PEAは長年にわたって広く研究されている。必須のアルファアミノ酸が構成要素として使用される場合、これらのポリマーは、生体適合性であることに加えてタンパク質様の特性も有する。例えば、L−アルギニンは、全ての生命体のタンパク質中に存在するαアミノ酸である。L−アルギニンの脱カルボキシル化形態であるアグマチンとして知られる4−アミノブチルグアニジンは、多くの生理学的機能に関与する生体アミン類に属する。
【0014】
アルギニンおよびアグマチンはいずれも、強塩基性グアニジノ基のために生理的pHにおいて正電荷を帯びており、約12のpKa値を有する。(アグマチンのイオン化形態は、−NH−C(=NH2+)−NH2と書くことができる。)本発明はアルギニン、アグマチンおよびその他のカチオン性αアミノ酸を用いて、本発明の組成物および方法で使用されるPEAならびに関連のPEURおよびPEUのカチオン性ペンダント基を提供する。これらのペンダント基は、負に帯電したDNAおよびRNAなどの核酸配列を中和して、細胞膜に侵入し得る溶解性複合体に縮合させるために必要な強塩基特性を提供する。
【0015】
従って、一実施形態では、本発明は、以下の:
一般構造式(I)で表される化学式を有するPEAポリマー
【化9】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化10】
式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、そして式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化11】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化12】
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(IV)で表される化学構造を有するPEURポリマー
【化13】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化14】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4およびR6はそれぞれ、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(V)で表される化学式を有するPEUポリマー
【化15】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化16】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片からなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
のうちの少なくとも1つを含むカチオン性ポリマーとの溶解性複合体に縮合された少なくとも1つのポリ核酸を含む生分解性遺伝子導入組成物を提供する。
【0016】
R7の好ましい例は、(C2〜C6)アルキルまたは(C2〜C6)アルケニルであり、特に−(CH2)4−である。
【0017】
本発明において使用するために合成されるポリマーの例は式IのPEAであり、pモノマー単位中のL−リジン(R7=(CH2)4)のC−末端は、アルギニンメチルエステル(VI)またはアグマチン(VII)のいずれかと共有結合しており、グアニジンペンダント部分は例えば塩酸からの酸性の対イオンと会合している。
【化17】
【0018】
アルファアミノ酸に基づくPEAおよびPEURの製造方法は米国特許第6,503,538B1号明細書に開示されており、PEUの調製方法は(米国特許出願第11/584,143号明細書)に記載されている。アルギニンおよびアグマチンのPEAへの結合のための手順は、本明細書の実施例1に記載されている。
【0019】
巨大分子に沿った電荷密度を変えるために、グアニジン誘導体を分枝状リンカーによってポリマーに結合させることができる。例えば、親和性リガンド6−アミノ−2−(ビス−カルボキシメチルアミノ)−へキサン酸(アミノブチル−、またはAB−NTA、その化学構造は式VIIIで示される)が分枝状リンカーとして使用されている。
【化18】
調製されるカチオン性PEAは、PEA−NTA−Arg(式IX)およびPEA−NTA−Agt(式X)と称され、その合成方法は以下の実施例1に開示されている。
【化19】
PEA−NTA結合体の一般式は、式(XI):
【化20】
で示され、式中、n、m、p、R1、R2、R3、R4およびR7は、式(I)のPEAについて上記で定義したとおりである。
【0020】
AB−NTAリンカーはリジンのα−N誘導体を表す。本発明の遺伝子導入組成物に含有されるカチオン性ポリマーの製造において使用することができる相同リンカーの付加的な例はオルニチン誘導体であり、その化学構造は以下の一般構造式(XII)で表される。
【化21】
式中、R11は独立して(C2〜C8)アルキレン、(C2〜C8)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C8)アルキレンであり、例えば、(C3〜C6)アルキレンまたは(C3〜C6)アルケニレンであり、そしてR12は、水素、(C1〜C12)アルキル、または(C2〜C12)アルケニルである。このようなリンカーの調製およびその構造式(I)のPEAとの結合は、米国特許出願公開第20070160622号明細書に例示されている。
【0021】
電荷密度を増大させるためにPEA、PEURおよびPEUポリマーのR2置換基として使用することができるカチオン性残基の製造の付加的な例は、本明細書において記載されるカチオン性PEA、PEURまたはPEUポリマーのp単位のアミノ酸のC−末端に、アルギニンに富んだオリゴマーまたは市販の低分子量のカチオン性ポリアミノ酸(オリゴアルギニンなど)をグラフトさせる方法によって成される。グラフト法は、式(XIII)に示されるようにジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)型カップリングを用いて実行することができ、式中、rは上記で定義したとおりである。
【化22】
本発明のポリマーにグラフトさせることができるカチオン性オリゴアミノ酸およびカチオン性ポリアミノ酸のその他の例は、ポリリジン、ポリオルニチン、およびポリヒスチジンである。
【0022】
さらに別の実施形態では、本発明は、組成物を標的細胞に進入させて標的細胞をトランスフェクトするための条件下および時間で、ポリマーと縮合されたポリ核酸をその中に含む本発明の遺伝子導入組成物と共に標的細胞を溶液中でインキュベートすることによって、標的細胞をトランスフェクトするための方法を提供する。
【0023】
本発明の組成物および方法を記載するために本明細書中で使用される場合、「溶液中」および「溶解性複合体」という用語は生物学者の間で一般的に使用される意味を包含し、液体中に懸濁された粒子は溶液中にあると言われる。ポリマーおよびポリ核酸の電荷は中和されるので、本発明の組成物中のカチオン性ポリマーおよびポリ核酸の複合体は縮合されて水性環境中のポリマー粒子を形成する。このような粒子の液体中の懸濁液は、本明細書では、溶液中にあると見なされる。
【0024】
本発明の方法の実施において使用するために適切な標的細胞には、哺乳類細胞、例えば、本発明の組成物の投与によって患者に送達されたポリ核酸の発現によって処置される患者の組織に属する細胞が含まれるがこれらに限定されない。適切な哺乳類の標的細胞としては、神経系の細胞(例えば、脳、脊髄および抹消神経系細胞)、循環系細胞(例えば、心臓、血管、ならびに赤血球および白血球細胞)、消化器系(例えば、胃および腸)、呼吸器系(例えば、鼻および肺)、生殖器系、内分泌系(例えば、肝臓、脾臓、甲状腺、および副甲状腺)、皮膚、筋肉、または結合組織が挙げられる。
【0025】
あるいは、標的細胞は、任意の器官または組織に由来する癌細胞、例えば本発明の組成物の投与によって患者に送達されたポリ核酸の発現によって処置される患者の組織に属する癌細胞であってもよい。あるいはさらに、標的細胞は、患者に感染しているまたは被験者に感染し得る寄生虫、病原体またはウイルスの細胞でもあり得る。従って、本発明の遺伝子導入組成物は、インビトロ(標的細胞と、その中で発現される所望のポリ核酸との相互作用を研究するため)およびインビボ(生きている被験者における遺伝子治療用途のため)の両方において有用である。
【0026】
4−メチレンイミダゾリニウムの構造式は次のとおりである。
【化23】
【0027】
特定の実施形態では、組成物中のポリマーは、ポリマー中の正に帯電した基と会合した1つまたは複数の対イオンおよび/またはポリマーに結合した1つまたは複数の保護基を有し得る。
【0028】
本発明の組成物中のポリマーと会合するために適切な対イオンの既知の例は、Cl−、F−、Br−、CH3COO−、CF3COO−、CCl3COO−、TosO−などの対アニオンである。
【0029】
本明細書中で使用される場合、本発明の遺伝子導入組成物に適用される「水溶性」および「水溶性の」という用語は、組成物の飽和点における脱イオン水1ミリリットルあたりの組成物の濃度を意味する。水溶性は、種々のポリマーそれぞれに対して異なり得るが、溶媒および溶質間の分子間力と、溶媒和に付随するエントロピー変化とのバランスによって決定される。pH、温度および圧力などの因子はこのバランスを変化させ、従って、水溶性を変化させ得る。水溶性はpH、温度、および圧力にも依存する。
【0030】
一般的に定義されるように、水溶性ポリマーはヒドロゲルへの真に水溶性のポリマーを含み得る(G.Swift、polymer Degr.Stab.59:(1998年)19−24)。本発明の組成物はかろうじて水溶性(例えば、約0.01mg/mLから)であってもよいし、あるいは吸湿性であり、湿った大気にさらされたときに急速に水を吸収して、最終的には粘性溶液を形成してもよく、溶液中の組成物/水の比は無限に変えることができる。
【0031】
本発明の遺伝子導入組成物中で使用されるポリマーの大気圧における脱イオン水への溶解性は、約18℃〜約55℃、好ましくは約22℃〜約40℃の範囲の温度で、約0.01mg/mL〜400mg/mLの範囲である。本発明の組成物の定量的な溶解性は、Braunの方法に従って視覚的に評価することができる(D.Braunら、Praktikum der Makromolekularen Organischen Chemie、Alfred Huthig、Heidelberg、Germany、1966年)。当業者には知られているように、Flory−Huggins溶液理論は、ポリマーの溶解性を説明する理論モデルである。Hansen溶解性パラメータおよびHildebrand溶解性パラメータは、溶解性の予測のための経験的方法である。融解エンタルピーなどの他の物理定数から溶解性を予想することも可能である。
【0032】
本明細書に記載されるPEA、PEURまたはPEURポリマーの脱イオン水溶液に低分子量の電解質を添加すると、4つの応答のうちの1つを引き起こすことができる。電解質は、鎖収縮、鎖伸張、キレート化による凝集(構造遷移)、または沈殿(相分離)を生じ得る。応答の正確な性質は、ポリマーの化学構造、濃度、および分子量、ならびに添加した電解質の性質などの種々の因子に依存し得る。それにもかかわらず、本発明の遺伝子導入組成物は、血液、血清、組織などの生理条件または水/アルコール溶媒系において見られるような条件を含む種々の水性条件下で溶解性であり得る。
【0033】
本発明の組成物の水溶性は、当該技術分野において既知であるように、そして本明細書の実施例において説明されるように1HNMR、13CNMR、ゲル浸透クロマトグラフィ、およびDSCなどのアッセイを用いて特徴付けることもできる。
【0034】
全てのアミノ酸は、末端アミノおよびカルボキシレート基のために帯電種として存在することができるが、アミノ酸の一部だけが適切な条件下で帯電し得る側鎖を有する。「カチオン性αアミノ酸」を言う用語は、本発明の組成物において使用されるポリマーを記載するために本明細書中で使用される場合、R2基が、弱酸(水中に溶解されたときに完全にはイオン化しない)としてその側鎖が機能し得るアミノ酸残基であるか、またはそれを含有することを意味する。酸素、硫黄または窒素などのへテロ原子に共有結合したプロトンからなるイオン化可能な部分が存在することによって、R2基内のこのようなアミノ酸残基においてイオン化可能な特性が与えられる。別のイオン化可能な分子または基の近くなどの適切な水性条件下では、イオン化可能なプロトンは、供与性水素イオンとしてR2から解離し、R2置換基内の1つまたは複数のアミノ酸残基を塩基にし、次いでこれは水素イオンを受け取ることができる。酸形態からのプロトンの解離、または塩基形態によるプロトンの受け取りは、水性環境のpHに強く依存する。イオン化度も環境に敏感であり、水性環境の温度およびイオン強度ならびにポリマー内のイオン化可能な基の微小環境に依存する。
【0035】
従って、「カチオン性αアミノ酸」という用語は、本発明の遺伝子導入組成物中の特定のポリマーを記載するために本明細書中で使用される場合、ポリマー内のアミノ酸残基のR2基中のアミノ酸残基が、適切な周囲の水性または溶媒条件下、特に血液および組織中などの生理条件下で正イオンを形成できることを意味する。このような正のアミノ酸の対イオンは、上記で記載したとおりであり得る。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「二酸の残基」という用語は、ジカルボン酸の二酸の2つのカルボキシル基を除く部分を意味し、この部分は本発明のポリマー組成物の骨格に取り込まれる。本明細書中で使用される場合、「ジオールの残基」という用語は、残基が本発明のポリマー組成物の骨格に取り込まれた部位において、ジオールの2つのヒドロキシル基を除く部分を意味する。「残基」を含有する対応する二酸またはジオールは、本発明の遺伝子導入組成物の合成において使用される。
【0037】
αアミノ酸およびジオールのジエステルのジアリールスルホン酸塩は、αアミノ酸、例えばp−アリールスルホン酸一水和物、およびジオールを、還流温度まで加熱したトルエン中で水の発生が終結するまで混ぜ合わせ、そして冷却することによって調製することができる。
【0038】
ジカルボン酸の飽和ジ−p−ニトロフェニルエステルおよびビス−αアミノ酸エステルの飽和ジ−p−トルエンスルホン酸塩は、米国特許第6,503,538B1号明細書に記載されるように調製することができる。
【0039】
カチオン性αアミノ酸を含有する式(I、IVおよびV)のPEA、PEURおよびPEUポリマーは、保護基化学を用いて調製することができる。保護されたモノマーは、APCの前か、またはポリマーの処理(work−up)の後のいずれかで脱保護され得る。保護基化学で使用される適切な保護試薬および反応条件は、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry、第3版、GreeneおよびWuts、Wiley & Sons,Inc.(1999年)において見出すことができ、その内容は参照によってその全体が本明細書に援用される。
【0040】
本発明の組成物中のポリ核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、二本鎖DNA、二本鎖RNA、二重鎖DNA/RNA、アンチセンスポリ核酸、機能性RNAまたはこれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、ポリ核酸はRNAであり得る。別の実施形態では、ポリ核酸はDNAであり得る。別の実施形態では、ポリ核酸はアンチセンスポリ核酸であり得る。別の実施形態では、ポリ核酸は、センスポリ核酸であり得る。別の実施形態では、ポリ核酸は、少なくとも1つのヌクレオチド類似体を含むことができる。別の実施形態では、ポリ核酸は、リン酸ジエステル結合3’−5’および5’−3’ポリ核酸骨格を含むことができる。あるいは、ポリ核酸は、ホスホチオエート型、ホスホルアミデートおよびペプチド−ヌクレオチド骨格などの非リン酸ジエステル結合を含むことができる。別の実施形態では、部分は、ポリ核酸の骨格糖に結合することができる。このような結合を形成する方法は当業者によく知られている。
【0041】
ポリ核酸は、一本鎖ポリ核酸または二本鎖ポリ核酸であり得る。ポリ核酸は任意の適切な長さを有することができる。特に、ポリ核酸は約2〜約5,000ヌクレオチドの長さであることができ、約2〜約1000ヌクレオチドの長さが含まれ、約2〜約100ヌクレオチドの長さが含まれ、あるいは約2〜約10ヌクレオチドの長さが含まれる。
【0042】
アンチセンスポリ核酸は、通常、標的タンパク質をコードするmRNAに相補的なポリ核酸である。例えば、mRNAは、癌促進タンパク質、すなわち癌遺伝子の産物をコードすることができる。アンチセンスポリ核酸は一本鎖mRNAに相補的であり、二重鎖を形成し、それにより標的遺伝子の発現を阻害し得る。すなわち、癌遺伝子の発現を阻害し得る。本発明のアンチセンスポリ核酸は、標的タンパク質をコードするmRNAと二重鎖を形成することができ、標的タンパク質の発現を許さないであろう。
【0043】
「機能性RNA」は、リボザイムまたは他の翻訳されないRNAを指す。
【0044】
「ポリ核酸デコイ」は、細胞因子がポリ核酸デコイへ結合する際に、細胞因子の活性を阻害するポリ核酸である。ポリ核酸デコイは、細胞因子の結合部位を含有する。このような細胞因子の例としては、転写因子、ポリメラーゼおよびリボソームが挙げられるが、これらに限定されない。転写因子デコイとして使用するためのポリ核酸デコイの一例は、転写因子の結合部位を含有する二本鎖ポリ核酸であろう。あるいは、転写因子のためのポリ核酸デコイは、それ自体とハイブリッド形成して、標的転写因子の結合部位を含有するスナップバック二重鎖を形成する一本鎖核酸であってもよい。転写因子デコイの一例はE2Fデコイである。E2Fは、細胞周期調節に関連して細胞を増殖させる遺伝子の転写において役割を果たす。E2Fの制御は細胞増殖の調節を可能にする。例えば、外傷(例えば、血管形成、手術、ステント留置)の後、外傷に応答して平滑筋細胞が増殖する。増殖は、処置された領域の再狭窄(細胞増殖による動脈の閉鎖)を引き起こし得る。従って、E2F活性の調節は細胞増殖の制御を可能にし、増殖を低下させ、動脈の閉鎖を回避するために使用することができる。その他のこのようなポリ核酸デコイおよび標的タンパク質の例としては、ポリメラーゼを阻害するためのプロモーター配列、およびリボソームを阻害するためのリボソーム結合配列が挙げられるが、これらに限定されない。本発明が、任意の標的細胞因子を阻害するために構築されたポリ核酸デコイを含むことは理解される。
【0045】
「遺伝子治療剤」は、遺伝子を標的細胞内に導入した後に遺伝子産物の発現を行うことによって、標的細胞において遺伝子産物の発現を引き起こす薬剤を指す。このような遺伝子治療剤の一例は、DNAベクターなどの細胞内に導入されたときにタンパク質の発現を引き起こす遺伝子構築物であろう。あるいは、遺伝子治療剤は、標的細胞における遺伝子の発現を低減することができる。このような遺伝子治療剤の一例は、標的遺伝子に統合され得るか、あるいは遺伝子の発現を妨害し得る、ポリ核酸セグメントの細胞内への導入であろう。このような薬剤の例としては、相同的組換えによって遺伝子を妨害することができるポリ核酸が挙げられる。細胞内の遺伝子の導入および妨害方法は当業者によく知られており、本明細書に記載されるとおりである。
【0046】
一実施形態では、ポリ核酸は、一般に知られている化学方法に従って合成することができる。別の実施形態では、ポリ核酸は、商業的供給業者から得ることができる。ポリ核酸としては、ブロモ誘導体、アジド誘導体、蛍光誘導体またはこれらの組み合わせなどの少なくとも1つのヌクレオチド類似体が挙げられるが、これらに限定されない。ヌクレオチド類似体は当業者によく知られている。ポリ核酸は、連鎖停止剤を含むことができる。ポリ核酸は、例えば、架橋試薬または蛍光タグとして使用することもできる。多くの通常の結合は、ポリ核酸を別の部分、例えばホスファート、ヒドロキシルなどにカップリングさせるために使用することができる。さらに、部分は、ポリ核酸に取り込まれたヌクレオチド類似体によってポリ核酸に結合されてもよい。別の実施形態では、ポリ核酸は、リン酸ジエステル結合3’−5’および5’−3’ポリ核酸骨格を含むことができる。あるいは、ポリ核酸は、ホスホチオエート型、ホスホルアミデートおよびペプチド−ヌクレオチド骨格などの非リン酸ジエステル結合を含むことができる。別の実施形態では、部分は、ポリ核酸の骨格糖に結合することができる。このような結合を形成する方法は当業者によく知られている。
【0047】
縮合したポリマー:ポリ核酸は、インビトロでα−キモトリプシンなどの酵素と接触して、あるいはインビボに注入されたときに分解して、適切で有効な量のポリ核酸の持続放出を提供することができる。任意の適切で有効な期間を選択することができる。通常、適切で有効な量のポリ核酸は、約24時間、約2日または約7日で放出され得る。ポリ核酸が本発明の組成物から放出される時間の長さに通常影響を与える因子としては、例えば、ポリマーの性質および量、ポリ核酸の性質、サイズおよび量、組成物が導入される環境のpH、温度および電解質または酵素含量が挙げられる。
【0048】
式(I、IVまたはV)のPEA、PEURまたはPEUポリマーの任意の適切なサイズを本発明の遺伝子送達組成物において用いることができる。例えば、ポリマーは、約1×10−4メートル未満、約1×10−5メートル未満、約1×10−6メートル未満、約1×10−7メートル未満、約1×10−8メートル未満、または約1×10−9メートル未満のサイズを有することができる。
【0049】
本発明の遺伝子導入組成物および方法は、ポリ核酸、ポリ核酸およびポリ核酸を含む全てのタイプのRNAおよびDNAの使用および標的細胞への送達を包含する。より具体的には、核酸は、任意のDNAまたはRNAであり得る。DNAは、治療分子をコードする遺伝子などの、その中に含有される遺伝子の発現のためのプラスミドを含む。RNAは、メッセンジャー(mRNA)、転移(tRNA)、リボソーム(rRNA)、および干渉(iRNA)を含む。干渉RNAは転写後遺伝子サイレンシングに関与するRNAであり、センスおよびアンチセンス鎖で構成される二本鎖RNA(dsRNA)、小干渉(small interfering)RNA(siRNA)、およびミクロRNA(miRNA)を含むがこれらに限定されない。RNA干渉のメカニズムでは、dsRNAは細胞に進入し、その中の酵素DICERによって消化され21−23ヌクレオチドのsiRNAになる。連続的な切断事象は、RNAをsiRNAとして知られる19−21ヌクレオチドに分解する。siRNAアンチセンス鎖はヌクレアーゼ複合体と結合して、RNA誘導サイレンシング複合体、すなわちRISCを形成する。活性化RISCは、塩基対合相互作用によって相同転写物を標的にして、mRNAを切断し、それによって標的遺伝子の発現を抑制する。最近の証拠から、機構はmiRNAとほぼ同一であることが示唆される(Cullen,B.R.(2004年)Virus Res.102:3)。このようにして、iRNAは、ポリマーと縮合したら、食作用または飲作用により細胞内に送達されて放出され、標的遺伝子の発現を抑制する手段として細胞の正常な生物学的処理経路に進入することができる。
【0050】
遺伝子発現の新たな配列特異的阻害剤の小干渉RNA(siRNA)は大きい治療可能性を有するが、このような分子の治療薬としての開発は、インビボでのsiRNAの急速な分解によって妨害されている。従って、siRNAの治療的使用における成功のための重要な要件は、遺伝子サイレンシング核酸の保護である。本発明において、このようなsiRNAの保護は、ポリ核酸分子と、本明細書において記載されるカチオン性PEA、PEURまたはPEUポリマーとの縮合によって提供される。
【0051】
例えば、iRNAのアンチセンス鎖の送達のための本発明の組成物の製造において、負に帯電したiRNAのアンチセンス鎖はカチオン性ポリマーと縮合される。dsRNAは、キャリアポリマーと縮合される。あるいは、センス鎖は1つのポリマー鎖と縮合され、アンチセンス鎖は別のポリマー鎖と縮合され得る。いずれの場合も、ポリマーの生分解の間に本発明の組成物から放出される二本鎖RNA、およびセンス鎖から解放されるアンチセンス鎖は、iRNAの正常な生物学的経路に進入するであろう。
【0052】
本発明を説明するために、本明細書の実施例1に記載されるようにペンダントカチオン性グアニジン基を有するPEAポリマーを調製し、本発明の遺伝子導入組成物のために十分なプラスミドDNAまたはsiRNAに縮合させて、インビトロでマウス肝細胞に容易に進入させるために使用した。物理化学的試験(ゲル電気泳動、蛍光、緑色蛍光タンパク質発現アッセイ)により、本発明の組成物中のポリ核酸の成功した細胞トランスフェクションおよび発現を確認した。市販の遺伝子導入剤:Lipofectamine(登録商標)、Dharmafect(登録商標)、およびSuperfect(登録商標)と比較して、本発明の遺伝子導入組成物のトランスフェクション効率を評価するために、GFP発現アッセイを行った。
【0053】
より具体的には、式(VI、VII、IX、X)のアルギニン結合ポリ(エステル−アミド)またはアグマチン結合ポリ(エステル−アミド)を、例えば遺伝子治療において使用される標的細胞のトランスフェクションをもたらすための非ウイルス遺伝子導入剤としての効率について評価した。
【0054】
縮合をもたらすために本発明の方法において使用されるポリマー対ポリ核酸の比率は、場合により、従来技術の遺伝子導入剤の場合よりも大きいかもしれないので、ポリマーをマウス肝臓FL83B細胞と共にインキュベートすることによって、ポリマーの細胞毒性を検査した。細胞毒性は、標準ルミノメーター細胞増殖アッセイを用いて24時間および48時間で測定した。図1〜3に要約されるこの細胞の生存率実験からのデータによって示されるように、PEA−アグマチン.AAだけが0.1mg/mLの濃度において毒性を示した。その他の本発明のカチオン性ポリマーは全て、0.1mg/mLの濃度において毒性でなかった。PEA−NTA−アグマチン.AAは、1mg/mLの濃度においても毒性でなかった。全体として、全てのPEA結合体は、同様の濃度における市販のポリアルギニンよりも毒性が低かった(13uMのポリアルギニンは0.2mg/mLである)。これらの研究で対照として使用された市販のトランスフェクション試薬と比較すると、本発明の遺伝子導入組成物(すなわち、ポリマー:DNA複合体)と共にインキュベートされたFL83B細胞は、市販の最良のトランスフェクション試薬の場合と同程度に生存可能であり、概して、Superfect(登録商標)の場合よりも60%高く生存可能であった(図4)。
【0055】
「電荷比」という用語は、本発明の遺伝子導入組成物を記載するために使用される場合、負のポリ核酸電荷に対する正のポリマー電荷の比率を意味する。本発明を説明するために製造された本発明の組成物のそれぞれについて、記載した正電荷の総数は、1HNMRデータによって推定したポリマーあたりのグアニジウム負荷の%に基づいて計算した。DNAおよびsiRNAの両方について、負電荷の数は塩基対あたりの2つの負電荷を基準とし、質量あたりの電荷の総数として計算した。負のポリ核酸電荷に対する正のポリマー電荷の比率は、以下の表1および2に示されるような電荷比であると決定された。
【0056】
水性懸濁液中の本発明の組成物の縮合物のゲル遅延度アッセイおよびゼータ電位を用いて、正に帯電したPEAポリマーが負に帯電したプラスミドDNAを中和して、標的細胞のトランスフェクションにおいて使用するのに適したコンパクトな複合体を形成できることを確認した。siRNAを1:1、2:1、および4:1のポリマー対siRNAの電荷比においてPEA−Arg(OMe)と共に配合した。1:1の電荷比では、アガロースゲル中に結合していないsiRNAが観察されたが、2:1、4:1、および6:1の電荷比では、以下の表2に示されるようにsiRNAはポリマーと完全に複合体を形成した。従って、本明細書において記載されるカチオン性PEA、PEURおよびPEUポリマーは親和性を有してポリ核酸と複合体を形成し、形成された縮合物粒子の全体の電荷は、カチオン性ポリマーの過剰に従って変化することが分かった。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
標的細胞におけるポリ核酸カーゴの発現を説明するために、無血清培地中で作られたシェーグレン症候群B(SSB)に対するカチオン性PEAおよびsiRNAの複合体を含む本発明の組成物を用いて、本明細書の実施例3に記載されるように、無血清培地中で本発明の組成物と共に細胞をインキュベートすることによって、FL83B細胞をトランスフェクトした。当業者は、細胞トランスフェクションにおける使用に適していることが当該技術分野において分かっている任意のトランスフェクション条件が使用され得ることを理解するであろう。
【0060】
標的細胞を回収し、RNAを単離し、標準方法を用いて定量的PCRにより遺伝子発現を測定すると、PEA−Arg(OMe).HClまたはDharmafect(登録商標)と複合体を形成したsiRNAのトランスフェクションは、標的細胞においてほぼ同等(すなわち、70%)のSSB発現の下方制御をもたらすことが分かった(図9)。
【0061】
以下の実施例は本発明を説明することが意図され、限定は意図されない。
【0062】
[実施例1]
[A.材料のキャラクタリゼーション]
モノマーおよびポリマーの化学構造は標準化学法によって特徴付けた。1HNMR分光法のために500MHzで動作するBruker AMX−500スペクトロメーター(Numega R.Labs Inc.San Diego,CA)によってNMRスペクトルを記録した。テトラメチルシラン(TMS)を内部標準として、重水素化溶媒CDCl3またはDMSO−d6(Cambridge Isotope Laboratories,Inc.、Andover,MA)を用いた。
【0063】
合成されるモノマーの融点は、自動Mettler−Toledo FP62融点測定装置(Columbus,OH)において決定した。合成したポリマーの数平均および重量平均分子量(MwおよびMn)ならびに分子量分布は、高圧液体クロマトグラフィーポンプ、Waters 2414屈折率検出器を備えたモデル515ゲル浸透クロマトグラフィ(Waters Associates Inc.Milford,MA)によって決定した。N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中の0.1%のLiCl溶液を溶離液として使用した(1.0mL/分)。2本のStyragel(登録商標)HR 5E DMF型カラム(Waters)を接続し、ポリスチレン標準で較正した。
【0064】
[B.PEA(PEA−OSu)の活性化のための一般手順]
5.0g(2.7mmol、重量平均Mw=65kDa、GPC(PS))のPEAポリマー(PEA−OSu)(式I、式中R1=(CH2)8、R2=OH、およびR3=CH2CH(CH3)2、R4=(CH2)6、R7=(CH2)4、米国特許第6,503,538B1号明細書の方法に従って合成)を50mLの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解した。次に、0.615gのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、2.98mmol)および0.374gのN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu、3.25mmol)を添加し、混合物を室温で約12時間、アルゴン下で攪拌した。0.45ミクロン孔径フリット(PTFEシリンジフィルタ)によりろ過することによって、形成した残渣を除去した。さらなる結合のために活性化PEA−OSuの溶液をアルゴン下で保持した。1H−NMR分析によって決定されるように、OSuとの結合によってPEAの80%〜100%を活性化した。
【0065】
[C.PEA−Arg(OMe)結合体(式VI)の合成]
PEA−OSuの活性化エステルの予め調製した溶液(5.3g、2.7mmolのポリマーを含有する)に、0.849gのL−アルギニンメチルエステル二塩酸塩(3.25mmol)、1.134mLのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、6.50mmol)および500mLのDMFをアルゴン下で添加した。得られた不均一な混合物を室温で約24時間攪拌した。そのようにして形成されたPEA−Arg(OMe)ポリマー結合体を、3体積%の酢酸を含む5Lの酢酸エチル中に沈殿させた。沈殿物を再度酢酸エチルで洗浄し、ペーパータオルで乾燥させた。捕集したポリマー沈殿物をエタノール中に再溶解させ(5.0g、50mL中)、3500Daの分子量カットオフを有する透析バッグに移し、DI水中で透析した。最後の透析溶液を凍結乾燥し、1H−NMR、GPCおよびDLSによってゼータ電位および粒径について分析した。1H−NMRによって決定されるようにポリマーの60%〜90%をArg(OMe)に転化させた(図10を参照)。精製後の生成物PEA−Arg(OMe)結合体の収率は80〜90%の範囲であり、重量平均分子量(Mw)は約70kDaであった(GPC、PSにより決定)。
【0066】
[D.PEA−アグマチン結合体(式VII)の合成]
0.5gの硫酸アグマチン(2.19mmol)および0.21gの水酸化ナトリウム(8.76mmol)の懸濁液を10mLのDMF中、室温で12時間攪拌し、形成した溶液を0.45ミクロン孔径フリット(PTFEシリンジフィルタ)によりろ過した。5%(重量/体積)DMF中の得られたアグマチン(遊離アミン形態、18.7mmol)5mLと、21.6mLのDMF中の酢酸(9.3mmol)0.53mLとを、活性化PEA−OSuの予め調製した溶液(3.0g、15.5mmol)に添加した。形成された不均一な混合物をアルゴン下、室温で約24時間攪拌した。PEA−アグマチンポリマー結合体を2.5Lの酢酸エチル中に沈殿させた。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、ペーパータオルで乾燥させた。捕集したポリマー結合体をエタノール(3.0g、100mL)中に再溶解させた。溶解したポリマーを、3500Daの分子量カットオフを有する透析バッグに移し、DI水中で透析した。透析した生成物PEA−アグマチン結合体を凍結乾燥し、1H−NMR、GPC、DSC、およびDLSによってゼータ電位および粒径について分析した。ポリマーに負荷されたアグマチンは、NMRによって決定されるように50〜60%の範囲であった。精製後の反応収率は70〜80%の範囲であり、重量平均分子量(Mw)は約70kDaであった(GPC、PS)。
【0067】
[E.PEA.I.NTA(PEA−NTA−OSu)の活性化のための一般手順]
5.0g(2.40mmol、重量平均Mw=77kDa、GPC(PS))のPEAポリマー(式I、式中R1=(CH2)8、R2=式VIIIのリンカー、およびR3=CH2CH(CH3)2、R4=(CH2)6、R7=(CH2)4)を、アルゴン下で50mLの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解した。次に、1.535gのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、7.44mmol)および0.884gのN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu、7.68mmol)を添加し、混合物を室温で約8時間攪拌した。0.45ミクロン孔径フリット(PTFEシリンジフィルタ)によりろ過することによって、形成した残渣を除去した。PEA−OSu結合体の溶液を丸底フラスコ内に捕集し、アルゴン下で保持した。サンプルポリマー溶液を、1H−NMRによってOSu負荷について分析し、80〜100%の範囲であった。
【0068】
[F.PEA−NTA−Arg(OMe)結合体(式IX)の合成]
DMF中のPEA−NTA−OSuの活性化エステル(5.7g、2.4mmol)の溶液に、2.08gのL−アルギニンメチルエステル二塩酸塩(Arg(OMe)、7.96mmol)、2.77mLのN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、7.2mmol)および500mLのDMFを添加した。得られた不均一な混合物を室温で約24時間攪拌した。PEA−NTA−Arg(OMe)ポリマー結合体を、1%v/vの酢酸を含む5Lの酢酸エチル中に沈殿させた。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、ペーパータオルで乾燥させた。捕集したポリマー結合体をエタノール中に再溶解させ(5.0g、50mL中)、20mLの水で希釈し、3500Daの分子量カットオフを有する透析バッグに移した。ポリマーを脱イオン水中で2日間透析し、次にろ過し、そして凍結乾燥した。1H−NMR、GPC、DSC、およびDLSによって、生成物をゼータ電位および粒径について分析した。ポリマーに負荷されたArg(OMe)は、1H−NMRによって決定されるように50〜70%の範囲であった。精製後の生成物の収率は80〜90%の範囲であった。重量平均分子量(Mw)は155〜160kDaの範囲であった(GPC、PS)。
【0069】
[G.PEA−NTA−アグマチン結合体(式X)の合成]
丸底フラスコ中のPEA−NTA−OSuの活性化エステル(4.55g、19.1mmol)に、以下の試薬を添加した:5%(重量/体積)のDMF中の18.43mLのアグマチン(68.8mmol)、1.97mLの酢酸(34.4mmol)および20.5mLのDMF。アグマチン溶液のアミン形態を以下のように調製した:0.5gの硫酸アグマチン(2.19mmol)および0.21gの水酸化ナトリウム(8.76mmol)を10mLDMF溶液中に分散させ、一晩(約12時間)攪拌した。A0.45ミクロン孔径フリット(PTFEシリンジフィルタ)によって溶液をろ過した。
【0070】
アグマチンのアミン形態の溶液を丸底フラスコ内の溶液に添加し、得られた懸濁液を室温で約24時間攪拌した。得られたPEA−NTA−アグマチンポリマー結合体を2.5Lの酢酸エチル中に沈殿させた。沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、ペーパータオルで乾燥させた。捕集したポリマーをエタノール(3.0g、100mL)中に溶解し、3500Daの分子量カットオフを有する透析バッグに移した。ポリマー結合体を3.5LのDI水中で透析し、溶液をろ過して凍結乾燥した。1H−NMR、GPC、DSC、およびDLSによって、生成物PEA−NTA−アグマチン結合体(式X)をゼータ電位および粒径について分析した。ポリマーに負荷されたアグマチンは、1H−NMRにより80〜90%であった。精製後の反応収率は、50〜60%の範囲であった。重量平均分子量(Mw)は150〜180kDaの範囲であった(GPC、PS)。
【0071】
[実施例2]
[A.材料]
臭化エチジウムはSigma(St.Louis,MO)から購入し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)はCellgro(Herndon,VA)から購入し、HEPES(Calbiochem、San Diego,CA)、DNAサイズマーカーTRACK ITTM(Invitrogen、Carlsbad,CA)、Superfect(登録商標)(Qiagen、Valencia,CA)、Lipofectamine(登録商標)(Invitrogen、Carlsbad,CA)、およびDharmafect(登録商標)(Dharmacon、Lafayette,CO)を商業的供給源から購入した。他の化学薬品および試薬は、他で特定されなければ、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。
【0072】
[B.プラスミドDNAの調製]
供給業者のプロトコールに従ってQiagenエンドトキシンフリープラスミドmaxi−prepキットを用いて、プラスミドDNAを調製した。260nmにおける分光光度分析および1%アガロースゲルにおける電気泳動法によって、精製プラスミドDNAの量および質を評価した。精製プラスミドDNAを10mMのTris−Cl(pH8.5)中に再度懸濁させ、一定分量において凍結させた。
【0073】
[C.細胞培養]
マウス肝細胞FL83Bは、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas,VA)から入手した。10%ウシ胎児血清が補充されたKaighnのF12K完全培地において5%のCO2中37℃で推奨されるようにFL83B細胞を増殖させた。
【0074】
[D.本発明のPEAストック懸濁液の調製]
上記の実施例1で調製されたポリマーを200プルーフのエタノール中に100mg/mLで溶解させた。100μLの100mg/mLの種々のポリマーを900μLの水に添加することによって10mg/mLのポリマー懸濁液を作った。ロータリーエバポレーターによって、ポリマー懸濁液中のエタノールを一部除去した。水の添加によって懸濁液をその元の体積に戻した。以下の実験のために10mg/mLのポリマー懸濁液を用いた。あるいは、水中で1mg/mLまでさらなる希釈を行った。
【0075】
[E.ポリマー細胞毒性の評価]
本発明のPEAポリマーの生体適合性をマウス肝細胞FL83B細胞において試験した。細胞毒性研究のために以下の本発明のPEAポリマーを使用した:PEA−Arg(OMe).HCl、PEA−Arg(Ome).AA、PEA−NTA−Arg(OMe).AA、PEA−Agt.AA、PEA−NTA−Agt.AA(式VI、VII、IX、X、式中、R1=(CH2)8、R3=CH2CH(CH3)2、R4=(CH2)6、AA−酢酸、p=0.75、m=0.25)およびポリアルギニン塩酸塩(分子量5,000〜15,000、Sigma、St.Louis,MO)。
【0076】
ポリマーをFL83B細胞に添加し、ViaLight(登録商標)Plus Cell Proliferation and Cytotoxicity BioAssay Kit(Cambrex、Rockland,ME)を用いて、細胞毒性を24時間および48時間で測定した。10%ウシ胎児血清が補充された細胞培地に100mg/mLのポリマーを添加して0.1mg/mL、0.5mg/mL、または1mg/mLの最終濃度にした。培地を取り出し、細胞溶解試薬を添加した。10分後に、100μlの細胞溶解物を白壁のルミノメータープレートに移した。100μlのATP Monitoring Reagent Plusを各ウェルに添加した。プレートを2分間インキュベートし、次にルミノメーターにおいて読み取った。生存%データは、サンプルの相対発光を対照の相対発光で割って100をかけることによって計算されるように、対照に対して規格化された生存パーセントで表される。
【0077】
図1〜3に要約されるこの実験からのデータによって示されるように、PEA−アグマチン.AAのみが0.1mg/mLの濃度において毒性を示した。その他の本発明のカチオン性ポリマーは全て、0.1mg/mLの濃度において毒性でなかった。PEA−NTA−アグマチン.AAは、1mg/mLの濃度においても毒性でなかった。全体として、全てのPEA結合体は、同様の濃度における市販のポリアルギニンよりも毒性が低かった(13uMのポリアルギニンは0.2mg/mLである)。
【0078】
[F.電荷比の定義および測定]
記載されるポリマーのそれぞれについて、1HNMRデータによって推定したポリマーあたりのグアニジウム負荷の%に基づいて正電荷の総数を計算した。DNAおよびsiRNAの両方について、負電荷の数は塩基対あたりの2つの負電荷を基準とし、質量あたりの電荷の総数として計算した。負のポリ核酸電荷に対する正のポリマー電荷の比率を電荷比であると決定し、表1および2におけるカテゴリーとして記入した。
【0079】
ポリマー:DNA複合体の形成は、動的光散乱(DLS)装置(Dispersion Technology Software 5.00を備えたZetasizer Nano ZS、Malvern Instruments Ltd、Worcestershire,UK)において測定したゼータ電位によっても確認した。結果は、本明細書の表1および2において見ることができる。PEA−Arg(OMe)懸濁液はGFPプラスミドと複合体を形成した。サンプルは20mMのHEPES緩衝液pH7.4中に1mLまでとし、次に、1mLの体積全体を、生成物プロトコールに従って使い捨てのキャピラリーセル(Malvern、DTS1060)に負荷した。
【0080】
[G.ポリマー:DNA複合体の細胞毒性]
ポリマーのみについての前の実施例において記載されるように、ポリマー:DNA複合体の細胞毒性を測定した。簡潔に言うと、24ウェルプレートの各ウェルに対して、1μgのGFPプラスミドDNAの最終濃度のために、1:1、2:1、および4:1の電荷比で、無血清培地中の1mg/mLの体積のGFPプラスミドに10mg/mLの体積のポリマー懸濁液を添加することによって、ポリマー:DNA複合体を作った。溶液を混ぜた後、直ちに懸濁液を数秒間ボルテックスし、次に周囲条件で40分間、平衡化させた。5%CO2下、37℃で18〜24時間、これらの複合体を細胞に添加した。ポリマー:DNA複合体溶液を含む細胞培地を取り出し、新鮮な培地に取り換えた。ポリマー:DNA複合体の細胞毒性は、Vialight(登録商標)アッセイ(East Rutherford、NJ)によって24時間および48時間で測定した。図4に要約されるデータにより示されるように、ポリマー:DNA複合体の存在下でFL83B細胞は、市販の最良のトランスフェクション試薬の場合と同程度に生存可能であり、概して、Superfectの場合よりも60%高く生存可能であった。
【0081】
[[H]緑色蛍光タンパク質プラスミド(GFP)によるトランスフェクション]
DNAは、上記のように1:1、2:1、および4:1のポリマー対DNAの電荷比で、PEA−Arg(OMe).HCl(式VI)と複合体を形成した。トランスフェクション効率を顕微鏡でモニターできるように、緑色蛍光タンパク質を発現するプラスミドDNAを用いた。ポリマー:DNA複合体を20mMのHEPES緩衝液または無血清細胞培地中で作った。ポリマー:DNA複合体は、アガロースゲル遅延度アッセイを行うことによって確認した。簡潔に言うと、TAE(トリス酢酸EDTA)緩衝液中の臭化エチジウムにより染色した1%アガロースゲルにおける100Vで15〜20分間の電気泳動法によって、上記のプロトコールを用いて形成されたポリマー:DNA複合体を分析した。UV照明によってDNAを視覚化した。遊離DNAはゲルを通って移動して臭化エチジウム染色により視覚化され得るが、ポリマー:DNA縮合物はゲルを通って移動しないであろう。図5は、4つの電荷比のポリマー:DNA縮合物を示す。0.5:1および1:1の電荷比では、未結合DNAがまだゲル上で視覚化され得る。完全な中和は、およそ2:1以上の電荷比で達成された。2:1および4:1の電荷比によって、未結合DNAは見ることができず、十分なポリマーがDNAと複合体を形成して電荷を中和し、移動を妨げることが示唆される。
【0082】
マウス肝細胞FL83B細胞を30,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種した。無血清培地中で作られた上記電荷比のポリマー:DNA複合体をFL83B細胞に添加した。複合体を37℃で18〜24時間、細胞上で放置した。次に、10%ウシ胎児血清を補充した新鮮な培地を細胞に再供給し、37℃でさらに48時間インキュベートした。緑色蛍光タンパク質(Aldevron、Fargo,ND)の発現に陽性の細胞を顕微鏡で観察し、BD FACSCantoTM(BD Biosciences、Franklin Lakes,NJ)におけるフローサイトメトリーによって定量した。GFP発現は図5に示される。意外にも、MVPEA−Arg(Ome).HClは、試験した全てのポリマーのうち最高のトランスフェクション効率を有した。しかしながら、このような効率は市販の試薬により達成される効率のわずか20%であった。トランスフェクション時間を短縮し、培地に血清を含ませることにより、図6に示されるようにトランスフェクション効率が改善され、市販の試薬のDharmafect(登録商標)と比較して80%まで改善された。
【0083】
[ヒト子宮頸癌細胞(ATCC)およびヒト冠動脈内皮細胞(Cambrex)におけるGFPによるトランスフェクション効率の比較]
ヒト冠動脈内皮細胞は、Cambrex BioScience(Walkersville,MD)から購入した。DNAは、上記のように6:1のポリマー対DNAの電荷比でPEA−Arg(OMe)HCl(式VI)と複合体を形成させた。ポリマー:DNA複合体を20mMのHEPES緩衝液pH7中で作った。市販のトランスフェクション試薬Dharmafect1(Dharmacon、Lafayette,CO)、Lipofectamine(Invitrogen、Carlsbad,CA)、Superfect(Qiagen、Valencia,CA)、JetPEI(Polyplus−Transfection、New York,NY)、およびLT−1(Mirus、Madison,WI)と、トランスフェクション能力を比較した。
【0084】
HeLa、ヒト子宮頸癌細胞、HCAEC、ヒト冠動脈内皮細胞およびFL83B、マウス肝細胞をそれぞれ、10,000、10,000および30,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種した。10%ウシ胎児血清を補充した培地において1μgDNA/ウェルの濃度でポリマー:DNA複合体を細胞に添加した。複合体を37℃で72時間、細胞上で放置した。緑色蛍光タンパク質(Aldevron、Fargo,ND)の発現に陽性の細胞を顕微鏡で観察し、BD FACSCantTMにおけるフローサイトメトリーによって定量した。GFPの発現は図7に示される。市販の試薬と比較して、PEA−Arg(OMe)HClは、HeLa細胞に対して有利なトランスフェクション効率を有し、トランスフェクション効率はFL83B細胞の場合に匹敵した。HCAECは、PEA−Arg(OMe)HCl、JetPEIおよびLT−1によってのみトランスフェクトされた。
【0085】
[実施例3]
[siRNAのトランスフェクションおよび発現]
シェーグレン症候群B(SSB)に対するsiRNAのパネルは、Dharmacon and Ambion(Austin,TX)から購入した。1XsiRNA緩衝液(6mMのHEPESpH7.5、20mMのKCl、0.2mMのMgCl2)中で、siRNAを20μMに戻し、−20℃で貯蔵した。パネルをSSB遺伝子発現の下方制御についてスクリーニングし、市販のトランスフェクション試薬Dharmafect(登録商標)と比較した。
【0086】
siRNAは、1:1、2:1、および4:1のポリマー対siRNAの電荷比においてPEA−Arg(OMe)と共に配合した。ポリマー:siRNA複合体の形成はアガロースゲル遅延度アッセイを行うことによって確認し、以下のように4つの電荷比において、ポリマー:siRNA縮合物の形成が検出された:レーン1=1kb Plus DNAラダー、レーン2=0.6μgのsiRNAのみ、レーン3=6:0電荷比のPEAのみ、レーン4=1:1電荷比のPEA:siRNA、レーン5=2:1電荷比のPEA:siRNA、レーン6=4:1電荷比のPEA:siRNA、レーン7=6:1電荷比のPEA:siRNA。種々の電荷比においてsiRNAと複合体を形成したPEA−Arg(OMe)HClのゲル遅延度アッセイの結果の顕微鏡写真の観察によって、1:1電荷比においてアガロースゲル中に未結合siRNAが観察されることが明らかになった。しかしながら、2:1、4:1、および6:1の電荷比では、siRNAはポリマーと完全に複合体を形成し、移動は観察されなかった。中和したポリマー:siRNA複合体の形成は、本明細書の表2に示されるように、ゼータ電位アッセイおよびDLSによっても確認した。
【0087】
ポリマー:siRNA複合体を無血清培地中で作り、40分間複合体を形成させた後、新鮮な培地を添加した。複合体をFL83B細胞に添加し、100nMの最終DC03濃度で18〜24時間、37℃でトランスフェクトさせた。24時間後に、新鮮な培地を添加し、細胞を37℃でさらに24時間インキュベートした。細胞を回収し、RNeasy RNA単離キット(Qiagen、Valencia,CA)を用いてRNAを単離した。定量的PCRにより遺伝子発現を測定した。この実験の結果、(図8)は、PEA−Arg(OMe).HClまたはDharmafect(登録商標)と複合体を形成したsiRNAのトランスフェクションが、SSB発現の約70%の下方制御をもたらすことを示した。
【0088】
[市販のトランスフェクション試薬に対するPEAポリマー:siRNA複合体の細胞毒性]
ポリマー:DNA複合体についての先行実施例において記載したように、ポリマー:siRNA複合体の細胞毒性を測定した。簡潔に言うと、10mg/mLの体積のポリマー懸濁液を多量のsiRNAに添加し、25mMのHepes、pH7中の100nMの最終siRNA濃度を得ることによって、ポリマー:siRNA複合体を作った。これらの複合体を5%CO2下、37℃で24ウェルプレート内の細胞に添加した。ポリマー:siRNA複合体の細胞毒性は、VialighTMアッセイによって24および48時間で測定した。図9に要約されるデータにより示されるように、本発明のポリマー:siRNA複合体の存在下でのFL83B細胞の生存率は、市販の最良のトランスフェクション試薬の場合と同程度に有利であった。
【0089】
全ての刊行物、特許、および特許文献は、個々に参照により援用されたかのように、参照によって本明細書に援用される。本発明は、種々の特定の好ましい実施形態および技術を参照して説明された。しかしながら、本発明の趣旨および範囲内に留まりながら多くの変化および変更が成され得ることは理解されるべきである。
【0090】
本発明は上記実施例を参照して説明されたが、変更および変化が本発明の趣旨および範囲内に包含されることは理解されるであろう。従って、本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
一般構造式(I)で表される化学式を有するPEAポリマー
【化1】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化2】
式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、そして式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化3】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化4】
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(IV)で表される化学構造を有するPEURポリマー
【化5】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化6】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は、−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4およびR6はそれぞれ、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(V)で表される化学式を有するPEUポリマー
【化7】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化8】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は、−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片からなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
のうちの少なくとも1つを含むカチオン性生分解性ポリマーとの溶解性複合体中に少なくとも1つのポリ核酸を含む遺伝子導入組成物。
【請求項2】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、−NHCH(COOMe)−(CH2)3NHC(=NH2+)NH2である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、−NH−(CH2)4NHC(=NH2+)NH2である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記PEAポリマーが、以下の一般構造式:
【化9】
で表される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記PEAポリマーが、以下の一般構造式:
【化10】
で表される請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)rであり、rが約2〜約25の範囲である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
R7が−(CH2)4−を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、ヒスチジンメチルエステルの残基としての4−メチレンイミダゾリニウムイオン:
【化11】
である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマーに会合した少なくとも1つの酸性対イオンをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記会合した酸性対イオンが、約−7〜+5のpKaを有する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリ核酸が、治療用ポリペプチドをコードする遺伝子を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリ核酸が、前記遺伝子を発現するのに適したプラスミドDNAをさらに含む請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記プラスミドDNAが、哺乳類の標的細胞における前記遺伝子の発現に適している請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリ核酸に対する前記ポリマーの電荷比が、約2:1〜約4:1である請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリ核酸がRNAを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記RNAが、標的タンパク質をコードするmRNAに相補的なアンチセンスポリ核酸を含む請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリ核酸が、標的細胞内の標的遺伝子の抑制のためのiRNAを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記iRNAが、siRNAを形成する請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記DNAが、治療用ポリペプチドをコードするcDNAである請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
約1:1〜約2000.1であるポリマー:ポリ核酸の重量比が存在する請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物を標的細胞に進入させて、前記組成物中のポリ核酸を標的細胞にトランスフェクトするために適切な条件下および時間で、前記組成物と共に標的細胞を溶液中でインキュベートすることを含む、標的細胞のトランスフェクション方法。
【請求項22】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、−NHCH(COOMe)−(CH2)3NHC(=NH2+)NH2である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、−NH−(CH2)4NHC(=NH2+)NH2である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
R2が、
【化12】
を含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリ核酸が、治療用ポリペプチドをコードする遺伝子を含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリ核酸が、前記遺伝子を発現するのに適したプラスミドDNAをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記プラスミドDNAが、哺乳類の標的細胞における前記遺伝子の発現に適している請求項26に記載の方法。
【請求項1】
以下の:
一般構造式(I)で表される化学式を有するPEAポリマー
【化1】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化2】
式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、そして式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化3】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(III)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、
【化4】
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(IV)で表される化学構造を有するPEURポリマー
【化5】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R1は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、α,ω−ビス(4−カルボキシフェノキシ)−(C1〜C8)アルカン、および構造式(II)のα,ω−アルキレンジカルボキシラート、ならびにこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、式(II)中のR5は、(C2〜C12)アルキレン、および(C2〜C12)アルケニレンから独立して選択され、式(II)中のR6は、(C2〜C12)アルキレン、(C2〜C12)アルケニレン、および(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレンからなる群から独立して選択され、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化6】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は、−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4およびR6はそれぞれ、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片、およびこれらの組み合わせからなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
または一般構造式(V)で表される化学式を有するPEUポリマー
【化7】
[式中、nは約15〜約150の範囲であり、mは約0.1〜0.9の範囲であり、pは約0.9〜0.1の範囲であり、
R2は、ヒドロキシル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル、−O−(C1〜C12)オキシアルキル(C6〜C10)アリールおよび保護基からなる群から独立して選択されるが、ただし、ポリ核酸の電荷を中和するために十分なR2は、−R8−R9−NH−C(=NH2+)NH2、−R8−R9−NH2+、−R8−R9−(4−メチレンイミダゾリニウム)、−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)r−OH、(ポリアルギニン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリリジン)、−(NH−CH(CH2CH2CH2NH3+)−CO−)r−OH、(ポリオルニチン)および
【化8】
(ポリヒスチジン)からなるカチオン性残基の群から選択され、ここでrは約2〜約50の範囲であり、R8は、−O−、−S−または−NR10−であり、R10は、水素、(C1〜C8)アルキル、−CH(CO(C1〜C8)アルキルオキシ)−、−CH(CO(PG))−からなる群から選択され、R9は、(C1〜C12)アルキレンまたは(C3〜C12)アルケニレンであり、そしてPGは保護基であり、
R3は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C6〜C10)アリール(C1〜C6)アルキル、および−(CH2)2SCH3からなる群から独立して選択され、
R4は、(C2〜C20)アルキレン、(C2〜C20)アルケニレン、(C2〜C8)アルキルオキシ(C2〜C20)アルキレン、構造式(II)の1,4:3,6−ジアンヒドロヘキシトールの二環式断片からなる群から独立して選択され、そして
R7は独立して(C2〜C20)アルキルまたは(C2〜C20)アルケニルである]
のうちの少なくとも1つを含むカチオン性生分解性ポリマーとの溶解性複合体中に少なくとも1つのポリ核酸を含む遺伝子導入組成物。
【請求項2】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、−NHCH(COOMe)−(CH2)3NHC(=NH2+)NH2である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、−NH−(CH2)4NHC(=NH2+)NH2である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記PEAポリマーが、以下の一般構造式:
【化9】
で表される請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記PEAポリマーが、以下の一般構造式:
【化10】
で表される請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが−(NH−CH(CH2CH2CH2−NHC(=NH2+)NH2)CO−)rであり、rが約2〜約25の範囲である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
R7が−(CH2)4−を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、ヒスチジンメチルエステルの残基としての4−メチレンイミダゾリニウムイオン:
【化11】
である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ポリマーに会合した少なくとも1つの酸性対イオンをさらに含む請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記会合した酸性対イオンが、約−7〜+5のpKaを有する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリ核酸が、治療用ポリペプチドをコードする遺伝子を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリ核酸が、前記遺伝子を発現するのに適したプラスミドDNAをさらに含む請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記プラスミドDNAが、哺乳類の標的細胞における前記遺伝子の発現に適している請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリ核酸に対する前記ポリマーの電荷比が、約2:1〜約4:1である請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリ核酸がRNAを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記RNAが、標的タンパク質をコードするmRNAに相補的なアンチセンスポリ核酸を含む請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリ核酸が、標的細胞内の標的遺伝子の抑制のためのiRNAを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記iRNAが、siRNAを形成する請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記DNAが、治療用ポリペプチドをコードするcDNAである請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
約1:1〜約2000.1であるポリマー:ポリ核酸の重量比が存在する請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の組成物を標的細胞に進入させて、前記組成物中のポリ核酸を標的細胞にトランスフェクトするために適切な条件下および時間で、前記組成物と共に標的細胞を溶液中でインキュベートすることを含む、標的細胞のトランスフェクション方法。
【請求項22】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、−NHCH(COOMe)−(CH2)3NHC(=NH2+)NH2である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カチオン性残基の少なくとも1つが、−NH−(CH2)4NHC(=NH2+)NH2である請求項21に記載の方法。
【請求項24】
R2が、
【化12】
を含む請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリ核酸が、治療用ポリペプチドをコードする遺伝子を含む請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリ核酸が、前記遺伝子を発現するのに適したプラスミドDNAをさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記プラスミドDNAが、哺乳類の標的細胞における前記遺伝子の発現に適している請求項26に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A)】
【図10B)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A)】
【図10B)】
【公表番号】特表2010−536884(P2010−536884A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522076(P2010−522076)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/074069
【国際公開番号】WO2009/026543
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(505323312)メディバス エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/074069
【国際公開番号】WO2009/026543
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(505323312)メディバス エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】
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