説明

カチオン性樹脂変性シリカ分散液及びその製造方法

【課題】シリカ粒子の凝集が発生しない、平均粒子径が200nm未満のシリカ微粒子とカチオン性樹脂とからなる、カチオン性樹脂変性シリカ分散液およびそれを製造する方法を提供すること。
【解決手段】極性溶媒中で乾式シリカ及びカチオン性樹脂を混合して得られる混合液を処理圧力300kgf/cm以上で対向衝突させるか、或いはオリフィスの入口側と出口側の差圧が300kgf/cm以上である条件下でオリフィスを通過させることにより得られる、分散液中のシリカ粒子の平均粒子径が200nm未満であり、かつ固形分濃度が1.5重量%となるように希釈された該分散液について測定された光散乱指数(n)値が2.0以上であることを特徴とするカチオン性樹脂変性シリカ分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性樹脂変性シリカ分散液及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、インクジェット記録用紙用の塗工液の原料等として有用な、新規のカチオン性樹脂変性シリカ分散液及び製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録用紙用の塗工液の原料には、シリカ分散液が用いられており、また、インクジェット記録用紙の画像濃度及び耐水性向上のため、カチオン化試薬を配合したシリカ分散液が用いられている。
【0003】
上記したインクジェット記録用紙用の塗工液として用いられるシリカ分散液としては、シリカ表面をアルミニウムイオン等のような多価金属イオンの化合物で被覆したカチオン変性コロイダルシリカが提案されており(特許文献1)、また、平均凝集粒子径が0.5〜30μmの合成シリカに第4級アンモニウム基を含むカチオン性樹脂を配合した組成物が提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているシリカを用いた塗工液で塗工されたインクジェット記録用紙は、耐水性、発色性などの性能が十分でないという欠点がある。また、特許文献2に記載されている組成物を用いた塗工液で塗工されたインクジェット記録用紙は、耐水性、発色性等は改善されるものの、シリカ粒子が大きいため、表面平滑性及び光沢性が低いという欠点がある。
【0005】
したがって、上記問題点を解決するため、平均粒子径が200nm未満のシリカ微粒子とカチオン性樹脂とからなるカチオン化変性シリカ分散液が検討されている。本発明において、平均粒子径とは、光散乱回折式の粒度分布計で測定した時の体積基準中位径D50のことである。
【0006】
【特許文献1】特公平4−19037号公報
【特許文献2】特公平5−57114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的に、平均粒子径が200nm未満のシリカ微粒子を分散させたシリカ分散液にカチオン性樹脂を混合すると、シリカ粒子が凝集してしまい、タービンステータ型高速回転式撹拌分散機(例えばホモジナイザー等)、コロイドミル、超音波乳化機などのような、慣用の分散機で再分散しても、元の分散状態に戻らないという問題があった。
【0008】
そして、上記したシリカ粒子の凝集によって、シリカの平均粒子径が大きくなると、塗工層の表面の平滑性が得られないだけではなく、光の透過が妨げられるため塗工層が不透明となり、光沢が不足するといった問題が発生する。
【0009】
したがって、本発明の目的は、シリカ粒子の上記したような凝集が発生しない、平均粒子径が200nm未満のシリカ微粒子とカチオン性樹脂とからなるカチオン性樹脂変性シリカ分散液およびそれを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題点について鋭意研究を重ねた結果、平均粒子径が200nm未満のシリカ微粒子とカチオン性樹脂とを極性溶媒中で混合して得られる混合液を、処理圧力300kgf/cm以上で対向衝突させるか、或いはオリフィスの入口側と出口側の差圧が300kgf/cm以上である条件下でオリフィスを通過させることにより、再度、元の分散状態まで再分散したシリカ分散液ができることを見いだした。
【0011】
即ち、本発明は、極性溶媒中に乾式シリカ及びカチオン性樹脂を分散せしめた分散液であって、該分散液中のシリカ粒子の体積基準中位径D50である平均粒子径が200nm未満であり、かつ該分散液の固形分濃度が1.5重量%における光散乱指数(n値)が2.0以上であることを特徴とするカチオン性樹脂変性シリカ分散液である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカチオン性樹脂変性シリカ分散液は、分散粒子が平均粒子径200nm未満のシリカ微粒子であるにも係わらず、カチオン化処理を行っていないコロイド状シリカ分散液並みに分散性が良いため、インクジェット用紙用の塗工液の原料として好適に使用でき、さらに新聞用紙等のような紙の内填剤等としても好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において用いられるシリカは、乾式シリカである。
【0014】
上記乾式シリカは、一般に四塩化珪素類を酸素水素炎中で高温加水分解させて得られるものであり、フュームドシリカとも称されている。
【0015】
本発明においては、カチオン性樹脂としては、水に溶解したとき、解離してカチオン性を呈する樹脂であれば、特に限定なく使用でき、その中でも、第1〜3級アミン又は4級アンモニウム塩を有する樹脂が好適に使用でき、さらに、4級アンモニウム塩を有する樹脂がより好適である。
【0016】
本発明において用いられる極性溶媒は、シリカ及びカチオン性樹脂がその中に分散し易い極性溶媒であれば特に制限はない。かかる極性溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のようなアルコール類;エーテル類;ケトン類などが例示できる。上記極性溶媒の中では、水が好適である。また、水と上記極性溶媒との混合溶媒も使用できる。
【0017】
なお、シリカ粒子の安定性や分散性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤等を本発明のカチオン性樹脂変性シリカ分散液に少量添加してもよい。
【0018】
本発明において、カチオン性樹脂変性シリカ分散液中のシリカおよびカチオン性樹脂の量は、特に限定されないが、シリカ分散液中のシリカの量は8重量%〜50重量%、更には8重量%〜25重量%が好ましく、カチオン性樹脂の量はシリカ100重量部あたり3〜50重量部が好ましい。
【0019】
シリカ分散液中のシリカの量が50重量%より多いと、スラリーの流動性が極端に悪くなるので、カチオン性樹脂との混合が困難となり、一方、8重量%より少ないと、分散液を乾燥するために大きな装置を必要とするうえ、エネルギーコストが高くなるため好ましくない。
【0020】
シリカ分散液中のカチオン性樹脂の量が、シリカ100重量部あたり3重量部より少ないと、シリカ粒子の表面電荷のバランスが不均一となり、シリカ粒子が強固な凝集をおこしやすくなる。また、カチオン性樹脂の量がシリカ100重量部あたり50重量部より多いと、粘度が高くなり、分散処理が困難になる。
【0021】
本発明のカチオン性樹脂変性シリカ分散液中におけるシリカ粒子は、表面電荷の指標となるゼータ電位が+10mV以上、好ましくは+20mV以上、さらに好ましくは+30mV以上が好ましい。ゼータ電位が高いほどインクジェット用紙の耐水性に効果がある。上記ゼータ電位はカチオン性樹脂の混合量が多くなるほど高くなるが、その上昇幅は混合するカチオン性樹脂の種類により異なる。
【0022】
本発明のカチオン性樹脂変性シリカ分散液は、該分散液中のシリカ粒子の平均粒子径が200nm未満であり、かつ固形分濃度が1.5重量%となるように希釈された該分散液について測定された光散乱指数(n値)が2.0以上であることが必要である。シリカの平均粒子径が200nmより大きく、かつn値が2.0より小さいと、インクジェット記録用紙用の塗工液の原料として用いた場合、塗工層の表面の平滑性が得られないだけではなく、光の透過が妨げられ、塗工層が不透明となり、光沢が不足するといった問題が発生する。
【0023】
上記した光散乱指数(n値)は、分散液のシリカの分散状態の指標であり、分散性が向上するにつれてこの値は大きくなる。
【0024】
なお、n値は、Journal of Ceramic Society of Japan 101〔6〕707−712(1993)に記載の方法に準じて求めた値である。
【0025】
即ち、市販の分光光度計を用いて、光の波長(λ)が460〜700nmの範囲のシリカ分散液のスペクトルを測定することにより、吸光度τを求め、log(λ)及びlog(τ)をプロットし、下記式(1)を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求める。
【0026】
τ=αλ−n (1)
(ここで、τは吸光度、αは定数、λは光の波長、そしてnは光散乱指数を示す。)
なお、理論上、nの取りうる値は4以下である。
【0027】
上記測定条件を具体的に示せば、まず、光路長10mmのセルを用い、参照セル及び試料セルにそれぞれイオン交換水を満たし、460〜700nmの波長範囲にわたってゼロ点校正を行う。次に、分散液の固形分濃度が1.5重量%になるように分散液をイオン交換水で希釈し、試料セルに該希釈された分散液を入れて、波長(λ)460〜700nmの範囲の吸光度(τ)を測定する。
【0028】
本発明においては、カチオン性樹脂変性シリカ分散液を製造する方法には格別の制限はない。しかし、好適な製造方法としては、例えば、極性溶媒中で乾式シリカとカチオン性樹脂とを混合して得られる混合液を処理圧力300kgf/cm以上で対向衝突させるか、或いは、オリフィスの入口側と出口側の差圧が300kgf/cm以上である条件下でオリフィスを通過させる、ことからなる方法が挙げられる。
【0029】
上記乾式シリカとカチオン性樹脂との混合液の製造方法は、特に限定されず、単に極性溶媒中でシリカとカチオン性樹脂とを混合する方法、タービンステータ型高速回転式撹拌分散機(例えば、ホモジナイザーなど)、コロイドミル、超音波乳化機などのような、慣用の分散機を用いてシリカを予め極性溶媒中に分散させて得られるシリカ分散液と、カチオン性樹脂とを混合する方法、シリカとカチオン性樹脂との混合物を上記慣用の分散機を用いて極性溶媒中で処理する方法、等が挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法において用いられる上記乾式シリカは、形態については特に限定されず、粉体、ケーク、スラリー及び分散液のいずれの形態のものでもよい。
【0031】
その中でも、粉体、ケーク等を予め液体媒体に分散させたシリカスラリーまたはシリカ分散液が好適であり、特にシリカ分散液が好適である。
【0032】
上記したシリカスラリーまたはシリカ分散液の原料は、得られるカチオン性樹脂変性シリカ分散液の分散性向上の点からは乾式シリカ粉体が好適である。
【0033】
シリカ分散液としては、粉砕シリカ分散液等が挙げられるが、その中でも、本発明の効果を勘案すると、平均粒子径が200nm未満の粉砕シリカ分散液が好適である。具体的には、シリカが極性溶媒中に分散されているシリカスラリーを、特開平9−142827号公報記載の方法により、平均粒子径200nm未満まで粉砕した粉砕シリカ分散液等が挙げられる。
【0034】
特に上記公報記載の方法で得られる粉砕シリカ分散液は、一次粒子が数個〜数10個凝集した凝集粒子で構成されているので、吸液性に優れており、インクジェット記録用紙等の分野において、好適に使用できる。
【0035】
なお、ここで言う粉砕とは、強固な凝集粒子よりなるシリカ粒子を砕くという意味だけではなく、緩やかな凝集粒子よりなるシリカ粒子の凝集をほぐす解砕や分散をも意味する。
【0036】
なお、本発明においてシリカスラリーとは、シリカを液体媒体中に分散させたのち放置したときにほとんど沈殿するものを指し、シリカ分散液とは、シリカを液体媒体中に分散させたのち放置してもほとんど沈殿しないものを指す。
【0037】
また、上記したシリカスラリー又はシリカ分散液を用いる場合において、カチオン性樹脂と混合する前の該シリカスラリー又はシリカ分散液中のシリカ濃度は、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下が好ましい。50重量%を越えると、流動性が極端に悪くなるため、カチオン性樹脂の混合が困難となる。
【0038】
本発明において、極性溶媒中で乾式シリカとカチオン性樹脂とを混合して得られる混合液を、処理圧力300kgf/cm以上で対向衝突させるか、或いはオリフィスの入口側と出口側の差圧が300kgf/cm以上である条件下でオリフィスを通過させるための装置としては、一般に高圧ホモジナイザーと呼ばれている市販の装置が好適に使用できる。高圧ホモジナイザーの代表例を具体的に例示すると、ナノマイザー製の商品名;ナノマイザー、マイクロフルイディクス製の商品名;マイクロフルイダイザー、及びスギノマシン製のアルティマイザーなどを挙げることができる。
【0039】
なお、ここで言うオリフィスとは、円形などの微細な穴を持つ薄板(オリフィス板)を直管内に挿入し、直管の流路を急激に絞る機構のことである。
【0040】
上記高圧ホモジナイザーは、基本的には、原料スラリーを加圧する高圧発生部と対向衝突部或いはオリフィス部とよりなる装置である。高圧発生部としては、一般にプランジャーポンプと呼ばれている高圧ポンプが好適に採用される。高圧ポンプには、一連式、二連式、三連式などの各種の形式があるが、いずれの形式も特に制限なく本発明において採用できる。
【0041】
本発明において、極性溶媒中で乾式シリカとカチオン性樹脂とを混合して得られる混合液を対向衝突させる場合における処理圧力及びオリフィスに通過させる場合におけるオリフィスの入口側と出口側の差圧は、いずれも、共に300kgf/cm以上、好ましくは800kgf/cm以上、さらに好ましくは1200kgf/cm以上が望ましい。
【0042】
対向衝突させる場合の該混合液の衝突速度は、相対速度として50m/秒以上、好ましくは100m/秒以上、さらに好ましくは150m/秒以上であることが望ましい。
【0043】
オリフィスを通過する際の極性溶媒の線速度は、用いるオリフィスの孔径にも依存するため一概には決められないが、上記対向衝突の際の衝突速度と同様に50m/秒以上、好ましくは100m/秒以上、さらに好ましくは150m/秒以上であることが望ましい。
【0044】
いずれの方法においても、分散効率は処理圧力に依存するため、処理圧力が高いほど分散効率も高くなる。ただし、処理圧力が3500kgf/cmを越えると高圧ポンプの配管等の耐圧性や装置の耐久性に問題が発生しやすい。
【0045】
上記したいずれの方法においても、処理回数は特に制限されず、本発明で規定するシリカ分散液を得ることができるように適宜決定すればよい。通常は、1〜数十回の範囲から選択される。
【実施例】
【0046】
以下、参考例、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0047】
なお、シリカ分散液に関する種々の測定は、次のようにして行った。
【0048】
(平均粒子径の測定)
光散乱回折式の粒度分布測定装置(コールター製、コールターLS−230)を用いて、体積基準中位径D50を測定し、この値を平均粒子径として採用した。なお、測定に際しては、水(分散媒)の屈折率1.332及びシリカの屈折率1.458をパラメーターとして入力した。
【0049】
(粘度の測定)
シリカ分散液300gを500cc容器に採取し、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで5分間攪拌した。次に30℃の恒温槽に10分間つけた後、B型粘度計(トキメック製、BL)を用いて60rpmの条件で粘度を測定した。
【0050】
(n値及び透過率の測定)
シリカ分散液の可視光吸収スペクトルを、分光光度計(日本分光製、Ubest−35型)を用いて測定した。まず、光路長10mmのセルを用い、参照セル及び試料セルにそれぞれイオン交換水に満たし、全波長範囲にわたってゼロ点校正を行った。次に、シリカ分散液の濃度が1.5重量%になるようにイオン交換水で希釈し、試料セルに該希釈された分散液を入れて、波長(λ)460〜760nmの範囲の吸光度(τ)を1nm毎に241個測定した。log(λ)及びlog(τ)をプロットし、前述した式(1)を用いて直線の傾き(−n)を最小二乗法で求めた。このようにして求められたnを光散乱指数として採用した。
【0051】
また、波長589nm(NaD線)の吸光度(τ)から下記式(2)により、透過率(T)を算出した。
【0052】
T(%)=10(2−τ) (2)
(ゼータ電位の測定)
シリカ分散液中のシリカ粒子のゼータ電位は、レーザーゼータ電位計(大塚電子製、LEZA−600)を用いて測定した。まず、シリカ分散液中のシリカ濃度が300ppmになるように該分散液を10ppmのNaCl水溶液で希釈し、超音波バスで5分間分散処理した。次に、測定セルに該希釈液を入れて印加電圧80V、測定角度20°及び測定温度25℃の条件でゼータ電位を測定した。
【0053】
参考例1(カチオン性樹脂と混合する前の粉砕シリカ分散液の調製)
市販の珪酸ソーダ及び純水を、反応槽中に珪酸ソーダ濃度が5%の溶液が形成されるように投入した。この溶液を40℃にまで加熱し、22wt%硫酸を用いて中和率50%まで中和反応を行った後、反応液の温度を95℃に上げた。この反応液に、中和率が100%になるまで上記の硫酸を加えた。生成したシリカに濾過及び洗浄操作を繰り返し、脱水ケーク(シリカ含有量15wt%)を得た。この脱水ケークを乾燥させて得られたシリカの比表面積は280m/gであった。
【0054】
上記の脱水ケーク2000gに、純水500gを加え、プロペラミキサーで撹拌することにより予備混合を行ない、シリカスラリーを得た。得られたペースト状のシリカスラリーを、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製;ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力800kgf/cmでオリフィスに3回通過させて、粉砕シリカ分散液を得た。これを以下においては粉砕シリカ分散液(A)と呼称する。その分析結果を表1に示す。
【0055】
参考例2
粉砕シリカ分散液(A)1000gにカチオン性樹脂として濃度25wt%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合物水溶液を48g加え、プロペラミキサーにより撹拌を行うことによって、予備混合液を得た。得られた予備混合液を、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA−31)を用いて処理圧力800kgf/cmでオリフィスに2回通過させることによりカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0056】
参考例3
予備混合液を高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA−31)を用いて処理圧力800kgf/cmで対向衝突を2回行うこと以外は、参考例2と全く同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0057】
参考例4
カチオン性樹脂として濃度20wt%のジアリルアミン塩酸塩−二酸化イオウ共重合物水溶液を60g用いた以外は、参考例2と全く同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0058】
参考例5
カチオン性樹脂として濃度28wt%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物水溶液を43g用いた以外は、参考例2と全く同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0059】
参考例6
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで10分間処理した以外は、参考例2と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0060】
参考例7
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで60分間処理した以外は、参考例2と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0061】
参考例8
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで10分間処理した以外は、参考例4と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0062】
参考例9
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで10分間処理した以外は、参考例5と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0063】
参考例10
市販の珪酸ソーダ及び純水を、反応槽中に、珪酸ソーダ濃度5%の溶液が形成されとなるように投入した。この溶液を40℃にまで加熱し、22wt%硫酸を用いて中和率50%まで中和反応を行った後、反応液の温度を95℃に上げた。この反応液に中和率が100%になるまで上記の硫酸を加えた。生成したシリカに濾過及び洗浄操作を繰り返し、脱水ケーク(シリカ含有量15wt%)を得た。この脱水ケークを乾燥させて得られたシリカの比表面積は280m/gであった。
【0064】
上記の脱水ケーク800gに、純水200gを加え、プロペラミキサーで撹拌することによりシリカスラリーを得た。このシリカスラリーにカチオン性樹脂として濃度25wt%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合物水溶液を48g加え、プロペラミキサーにより撹拌を行うことによって、予備混合液を得た。この予備混合液を高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA−31)を用いて処理圧力800kgf/cmでオリフィスを3回通過させることにより、カチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0065】
参考例11
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで10分間処理した以外は、参考例10と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1にみられるように、参考例2〜5、10のカチオン性樹脂変性シリカ分散液は、いずれも、粉砕シリカ分散液(A)と同等或いはそれ以上のn値及び平均粒子径を示した。一方、参考例6〜9、11のカチオン性樹脂変性シリカ分散液は、いずれも、n値が2.0よりも低く、平均粒子径が200nm以上であった。参考例6〜9、11の分散液は、また、参考例2〜5、10の分散液に比べ透過率が低かった。
【0068】
実施例1
比表面積300m/gの乾式シリカ(トクヤマ製、レオロシールQS30)120gに、純水880gを加え、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックス、T−25)で分散処理することによりシリカスラリーを得た。このシリカスラリーに、カチオン性樹脂として、濃度25wt%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合物水溶液を48g加え、プロペラミキサーにより撹拌を行うことによって、予備混合液を得た。得られた予備混合液を、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA−31)を用いて処理圧力800kgf/cmでオリフィスに1回通過させることによりカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表2に示す。
【0069】
実施例2
比表面積300m/gの乾式シリカ(トクヤマ製、レオロシールQS30)200gに、純水800gを加え、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックス、T−25)で分散処理することによりシリカスラリーを得た。このシリカスラリーに、カチオン性樹脂として、濃度25wt%の濃度20wt%のジアリルメチルアミン塩酸塩重合物水溶液を50g加え、プロペラミキサーにより撹拌を行うことによって、予備混合液を得た。得られた予備混合液を、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザーLA−31)を用いて処理圧力800kgf/cmでオリフィスに1回通過させることによりカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表2に示す。
【0070】
実施例3
カチオン性樹脂として濃度50wt%のポリアリルアミン塩酸塩重合物水溶液を20g用いた以外は、実施例2と全く同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表2に示す。
【0071】
実施例4
カチオン性樹脂として濃度50wt%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物水溶液を20g用いた以外は、実施例2と全く同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表2に示す。
【0072】
比較例1
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで10分間処理した以外は、実施例1と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表2に示す。
【0073】
比較例2
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで10分間処理した以外は、実施例2と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表2に示す。
【0074】
比較例3
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで10分間処理した以外は、実施例3と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表2に示す。
【0075】
比較例4
高圧ホモジナイザーを用いる代わりに、ホモジナイザー(イカ製、ウルトラタラックスT−25)を用いて、20000rpmで10分間処理した以外は、実施例4と同様にしてカチオン性樹脂変性シリカ分散液を得た。この分散液についての測定結果を表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
表2にみられるように、実施例1〜4のカチオン性樹脂変性シリカ分散液は、いずれも平均粒子径が200nm以下で且つ、n値が2.0以上であった。一方、比較例6〜9のカチオン性樹脂変性シリカ分散液は、いずれもn値が2.0以上ではあるが、平均粒子径が200nm以上であった。比較例1〜4の分散液は、また、実施例1〜4の分散液に比べ透過率が低かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒中に乾式シリカ及びカチオン性樹脂を分散せしめた分散液であって、該分散液中のシリカ粒子の体積基準中位径D50である平均粒子径が200nm未満であり、かつ該分散液の固形分濃度が1.5重量%における光散乱指数(n値)が2.0以上であることを特徴とするカチオン性樹脂変性シリカ分散液。
【請求項2】
極性溶媒中で乾式シリカ及びカチオン性樹脂を混合して得られる混合液をオリフィスの入口側と出口側の差圧が300kgf/cm以上である条件下でオリフィスを通過させることを特徴とする請求項1記載のカチオン性樹脂変性シリカ分散液の製造方法。

【公開番号】特開2006−213927(P2006−213927A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72152(P2006−72152)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【分割の表示】特願平11−366220の分割
【原出願日】平成11年12月24日(1999.12.24)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】