説明

カチオン抵抗性菌用殺菌剤及びその使用方法

【解決手段】
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを有効成分とする、カチオン界面活性剤と併用して用いるためのカチオン抵抗性菌用殺菌剤が開示される。また、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを、カチオン界面活性剤の存在下でカチオン抵抗性菌と接触させることを特徴とする、カチオン抵抗性菌の殺菌方法も開示される。
【効果】5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとカチオン界面活性剤とを併用することにより、従来では解決できなかった、カチオン界面活性剤に対し抵抗性を持つ菌を殺菌又は制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン抵抗性菌を殺菌するための殺菌剤、及びこれを用いるカチオン抵抗性菌の殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造及び調理施設、医療施設で細菌対策に苦慮している理由の一つとして、利用している殺菌剤への抵抗性菌が出現していることが挙げられる。特にカチオン系界面活性剤系の殺菌消毒剤を細菌対策として長い間使用してきている食品製造施設では、使用している殺菌剤に抵抗性のある微生物や馴化した微生物が生き残り、それらが食品中に混入した場合、製品価値を失い、大きな経済的損失を招きかねないとの懸念がある。また、医療施設においては、カチオン系の殺菌剤を使用している施設において、シュードモナス系のカチオン抵抗性菌が発生し、それが点滴やカテーテルに入り込み、死亡例が出たとの報告もある。さらに、食品製造、調理施設及び医療施設における殺菌に際し使用する薬剤は、無臭であり、腐食性も少なく、しかも経済性に富むものが望まれている。また、カチオン系界面活性剤に抵抗性のある菌としては、セラチア属の細菌、アルカリゲネス属の細菌、シュードモナス属の細菌、バークホルデリア属の細菌、アクロモバクター属の細菌、エンテロバクター属の細菌、フラボバクテリウム属の細菌、アシネトバクター属の細菌、及びプロテウス属の細菌が検出されたことが報告されている(非特許文献1)。
【0003】
例えば、特許文献1:特許3299951(花王)にはアルキルポリグリコシド、カチオン系殺菌剤、ビグアナイド系殺菌剤及びアミノ酸系殺菌剤より選ばれた殺菌剤及び脂肪酸塩を、それぞれ特定比率で含有し、洗浄性と殺菌性の両方に優れ、且つプラスチックに対する腐食や損傷の少ない洗浄剤が開示されている。
【0004】
また、特許文献2:特開平11−092794(花王)にはアニオン性界面活性剤、カチオン系殺菌剤、及びアミノポリカルボン酸又はその塩を含有し、洗浄効果だけでなく、殺菌効果に優れ、しかも環境に対し優しい洗浄剤組成物が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3:特開2006−143719(ロームアンドハース)には、殺菌剤の相乗効果の組み合わせとして、ベンズイソチアゾリン系殺菌剤とカチオン界面活性剤の組み合わせと、メチルイソチアゾリンとカプリルグリコール等の組み合わせが開示されている。
【0006】
しかし、これらの殺菌洗浄剤は、長期使用においてカチオン界面活性剤に抵抗性のある微生物や馴化した微生物が生き残り、それらが食品中に混入し、それによって製品価値を失い、大きな経済的損失を招きかねないといった問題があった。
【0007】
現在、カチオン界面活性剤に対する抵抗性菌を制御するには、定期的に塩素系殺菌剤、過酢酸系殺菌剤で殺菌しているのが現状である。しかし、そのような殺菌は非常に手間が掛かるばかりか、その場しのぎの対応でしかないため、カチオン抵抗性菌の発生を抑制しうる洗浄剤が必要とされている。また、塩素系や過酢酸系殺菌剤は抵抗性菌を発生させにくいと言われているが、臭気や腐食性に問題があるため、低臭で腐食性のない殺菌剤が必要とされている。
【特許文献1】特許第3299951号
【特許文献2】特開平11−092794
【特許文献3】特開2006−143719
【非特許文献1】誰でもわかる抗菌の基礎知識 269p 株式会社テクノシステム1999年発刊
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、カチオン界面活性剤に対し抵抗性を持つ菌(カチオン抵抗性菌)を殺菌するための殺菌剤及びこれを用いるカチオン抵抗性菌の殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討をおこなった結果、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤の存在下でカチオン抵抗性菌に対し優れた殺菌作用を有することを見いだした。5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、カチオン界面活性剤又は両性界面活性剤が存在しない条件下でカチオン抵抗性菌に作用させても殺菌効果がほとんどないため、このような結果は全く予測できなかったことである。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤を含有しているカチオン抵抗性菌用殺菌剤を第1の要旨とする。
【0011】
本発明はまた、上記カチオン抵抗性菌が、セラチア属の細菌、アルカリゲネス属の細菌、シュードモナス属の細菌、バークホルデリア属の細菌、アクロモバクター属の細菌、エンテロバクター属の細菌、フラボバクテリウム属の細菌、アシネトバクター属の細菌、及びプロテウス属の細菌からなる群より選択される細菌である、上記カチオン抵抗性菌用殺菌剤を第2の要旨とする。
【0012】
本発明はまた、上記(B)カチオン界面活性剤が、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムアンモニウムクロライド、ジアルキルメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート、ジデシルジメチルアンモニウムプロピオネート、ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムスルホネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムブロマイド、1,4−ビス(3,3’−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムブロマイドアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムアジペート、アルキルトリメチルアンモニウムグルコネート、アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムアジペート、ジオクチルジメチルアンモニウムグルコネート、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムアジペート、オクチルデシルジメチルアンモニウムグルコネート、オクチルデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルメチルポリオキシエチレンアンモニウムプロピオネート、メチルベンゼトニウムクロライドから選ばれる第四級アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドハイドロクロライド、ポリヘキサメチレングアニジンホスフェート、ポリヘキサメチレングアニジンクロライド、グルコン酸クロルヘキシジンのグアニジン系カチオン界面活性剤、ヘキサデシルトリブチルフォスフォニウム、アルキルジアミン又はその塩から選ばれる少なくとも一種である、上記カチオン抵抗性菌用殺菌剤を第3の要旨とする。
【0013】
本発明はまた、上記(C)成分の両性界面活性剤が、アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、アルキルベタイン型両性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするカチオン抵抗性菌用殺菌剤を第4の要旨とする。
【0014】
本発明はまた、上記カチオン抵抗性菌用殺菌剤において、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンに対する、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤の有効成分量の重量比が(A):(B)及び/又は(C)=1:25000〜500:1であることを特徴とするカチオン抵抗性菌用殺菌剤を第5の要旨とする。
【0015】
本発明はまた、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤の存在下でカチオン抵抗性菌と接触させることを特徴とする、カチオン抵抗性菌の殺菌方法を第6の要旨とする。
【0016】
本発明はまた、上記カチオン抵抗性菌の殺菌方法において、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンに対する、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤の有効成分量の重量比が(A):(B)及び/又は(C)=1:25000〜500:1であることを特徴とするカチオン抵抗性菌の殺菌方法を第7の要旨とする。
【0017】
本発明はまた、上記カチオン抵抗性菌が、セラチア属の細菌、アルカリゲネス属の細菌、シュードモナス属の細菌、バークホルデリア属の細菌、アクロモバクター属の細菌、エンテロバクター属の細菌、フラボバクテリウム属の細菌、アシネトバクター属の細菌、及びプロテウス属の細菌からなる群より選択される細菌である、上記殺菌方法を第8の要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤を組み合わせることによって、カチオン抵抗性菌に対する殺菌効果が得られるために、長期間にわたりカチオン抵抗性菌の増殖を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤を含有しているカチオン抵抗性菌用殺菌剤を特徴とする。本明細書において用いる場合、カチオン抵抗性菌とは、カチオン系界面活性剤に対して抵抗性ないし耐性を有する微生物を意味し、ある種類の細菌がカチオン抵抗性を獲得することが知られている。代表的な菌としては、例えば、セラチア属の細菌、アルカリゲネス属の細菌、シュードモナス属の細菌、バークホルデリア属の細菌、アクロモバクター属の細菌、エンテロバクター属の細菌、フラボバクテリウム属の細菌、アシネトバクター属の細菌、及びプロテウス属の細菌を挙げることができる。
【0021】
本発明において用いられる(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、イソチアゾリン系の工業用殺菌剤として、水性媒体中の細菌・糸状菌・酵母等の微生物を殺すために用いられている。(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、一般に、副生成物としての2−メチル−イソチアゾリン−3−オンとの混合物として提供、市販されており、例えば、商品名:「ケーソン CL」(ローム・アンド・ハースジャパン社製)、商品名:「ケーソンWT」(ローム・アンド・ハースジャパン社製)等として入手可能である。
【0022】
(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、単独でカチオン抵抗性菌に作用させても殺菌効果がほとんどないが、驚くべきことに、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤の存在下で(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを作用させると、きわめて高い殺菌効果が得られることが見いだされた。この作用機序は不明であるが、本発明者らは、現在のところ、カチオン抵抗性菌が(B)カチオン系界面活性剤に示す耐性メカニズムに対して(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンが何らかの影響を与えるためであろうと考えている。
【0023】
本発明のカチオン抵抗性菌用殺菌剤はカチオン抵抗性菌に対して効果があるため、長期に使用しても、カチオン抵抗性菌を発生させることがなく衛生的に使用できる。また発生してしまったカチオン抵抗性菌に対しても効果があるため、発生してしまったカチオン抵抗性菌を殺菌することもできる。したがって、本発明のカチオン抵抗性菌用殺菌剤は食品製造、調理施設及び医療施設における殺菌剤として有用である。
【0024】
本発明のカチオン抵抗性菌用殺菌剤の有効成分である(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、使用時に有効成分量として殺菌剤組成物又はその希釈液中に0.00004〜0.02質量%の範囲で使用される。すなわち0.00004質量%未満では所望の殺菌性能が得られず、また0.02質量%を超えるとコスト的に好ましくない。
【0025】
本発明において、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと配合することができる(B)カチオン界面活性剤の例としては以下のものが挙げられる。第四級アンモニウム塩としては、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルピリジニウムアンモニウムクロライド、ジアルキルメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート、ジデシルジメチルアンモニウムプロピオネート、ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムスルホネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムブロマイド、1,4−ビス(3,3’−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムブロマイドアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムアジペート、アルキルトリメチルアンモニウムグルコネート、アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムアジペート、ジオクチルジメチルアンモニウムグルコネート、ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムアジペート、オクチルデシルジメチルアンモニウムグルコネート、オクチルデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルメチルポリオキシエチレンアンモニウムプロピオネート、メチルベンゼトニウムクロライドが挙げられ、なかでも、殺菌力の強さの点からアルキル基の炭素原子数が8〜16に設定される。また、グアニジン系カチオン界面活性剤としては、ポリヘキサメチレンビグアナイドハイドロクロライド、ポリヘキサメチレングアニジンホスフェート、ポリヘキサメチレングアニジンクロライド、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられ、なかでも、ポリヘキサメチレンビグアナイドハイドロクロライド、ポリヘキサメチレングアニジンホスフェートが好ましい。さらに、アルキルジアミン及び/又はその塩はアルキル基の炭素原子数が8〜20に設定され、アルキルモノアミン及び/又はアルキルジアミンが好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせても良い。
【0026】
市販の上記カチオン界面活性剤としては、例えば、商品名:「PraepagenHY」(クラリアントジャパン社製)、商品名:「カチオンG50」(三洋化成工業社製)、商品名:「ProxelIB」(アーチケミカル社製)、商品名:「Bardac−2280」(ロンザジャパン社製)、商品名:「オスモリンDA−50」(三洋化成工業社製)等を挙げることができる。
【0027】
本発明において、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと配合することができる(C)両性界面活性剤の例としては、アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、アルキルベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。好ましい両性界面活性剤として塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン、ナトリウムアルキルジアミノエチルグリシンが挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせても良い。
【0028】
上記(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤の配合量は、使用時にその有効成分として殺菌剤組成物又はその希釈液中に0.001〜1質量%の範囲で使用される。0.001質量%未満では所望の殺菌性能が得られず、また、1質量%を超えるとコスト的に好ましくない。
【0029】
本発明はその他、必要に応じてアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤を配合することができる。
【0030】
アニオン界面活性剤としては、下記一般式(1)〜(4)で表されるものが挙げられる:
【化1】

【化2】

【化3】

[一般式(1)〜(3)において、RはC3〜C20のアルキル基又はアルケニル基、R’はC1〜C4のアルキル基。nは1〜8の整数。mは1〜2の整数。Mは水素、アルカリ金属、アミン又はアルカノールアミンであり、AOはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド又はブチレンオキサイドである]
【化4】

[一般式(4)のRはC3〜C20のアルキル基又はアルケニル基、m,nは1〜2の整数、Mは水素、アルカリ金属、アミン又はアルカノールアミンである]。
【0031】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリセリンエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキサイド、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマー及びポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテルが挙げられる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例について比較例と併せて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
【0033】
本発明のカチオン抵抗性菌用殺菌剤組成物として、後記の表1〜表27に示す実施例1〜132、及び比較例1〜29の組成(各表の数値は、各成分の有姿によるものであり、その単位は、質量%である)の供試殺菌剤組成物を作成し、カチオン系殺菌剤の抵抗性菌に対する殺菌性及び、一般細菌に対する殺菌性、洗浄性について評価した。なお、各項目の試験方法、評価基準は、以下に示すとおりである。
【0034】
〔試験方法〕
(1) カチオン抵抗性菌及び一般細菌に対する殺菌性
〔試験方法〕
懸濁法により、供試潤滑剤組成物のカチオン抵抗性菌及び一般細菌に対する殺菌性を試験し、以下の評価基準で判定した。
〔供試菌株〕
i)殺菌性試験1 カチオン抵抗性菌
カチオン系潤滑剤を使用している食品工場から分離されたカチオン抵抗性菌を使用した。
(1) Serratia marcescens 1 (食品工場分離株)初発菌数:5.0×10 cfu/ml
(北里大学医療衛生学部での同定の結果セラチア マルセッセンスと同定された。)
(2) Serratia marcescens 2 (飲料工場分離株)初発菌数:3.5×10 cfu/ml
(北里大学医療衛生学部での同定の結果セラチア マルセッセンスと同定された。)
(3) Alcaligenes faecalis (飲料工場分離株)初発菌数:4.1×10 cfu/ml
(北里大学医療衛生学部での同定の結果アルカリゲネス フェカーリスと同定された。)
(4) Pseudomonas aeruginosa (飲料工場分離株)初発菌数:3.7×10 cfu/ml
(北里大学医療衛生学部での同定の結果シュードモナス エルギノーサと同定された。)
ii)殺菌性試験2 一般細菌
(1) Pseudomonas aeruginosa (緑膿菌)NBRC 13736
初発菌数:5.0×10 cfu/ml、
(2) Staphylococcus aureus subsp. aureus (黄色ブドウ球菌)NBRC13276 初発菌数:3.3×10 cfu/ml、
(3) Escherichia coli (大腸菌)NBRC 12734
初発菌数:4.9×10 cfu/ml
〔接触時間/温度〕6時間/20℃
〔使用希釈水〕精製水
〔評価基準〕
○:5Logリダクション以上の菌数減少
△:4以上5未満のLogリダクションの菌数減少
×:4Logリダクション未満の菌数減少
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0035】
(2)洗浄性試験
〔試験方法〕
ステンレス片(5cm×8cm)に、油脂汚れ(JIS−K3362:1998−9.2のモデル汚れ)を500mg/枚で付着させ、25℃で1時間、乾燥させたものをテストピースとした。供試洗浄剤水溶液(40℃)を、リーナツ型試験器を用いて洗浄力試験(250rpm、10分間)を行った後、流水ですすぎ、自然乾燥させる。その後、洗浄前と洗浄後における重量変化に基づき、次式から洗浄効率(%)を算出し、以下の基準により評価した。
洗浄効率(%)=〔洗浄前の重量(g)−洗浄後の重量(g)〕/〔洗浄前の重量(g)−清浄なステンレス片の重量(g)〕×100
〔評価基準〕
○:洗浄率 80%以上(洗浄性に優れる)
△:洗浄率 50%以上〜80%未満(洗浄性に優れる)
×:洗浄率 50%未満(洗浄性に劣る)
とし、評価基準が△、○を実用性のあるものと判定した。
【0036】
(A)成分
・チアゾリン系殺菌剤1
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(副生成物としての2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを含む)
商品名:「バイオエース原体」、ケイ・アイ化成社製(5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 有効成分10質量%(副生成物として2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 3質量%含有))
・チアゾリン系殺菌剤2
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン
商品名:「KB−838」、ケイ・アイ化成株式会社製(有効成分8質量%)
・チアゾリン系殺菌剤3
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン
商品名:「サンアイバック 300K」 三愛石油社製(有効成分30質量%)
【0037】
(B)成分
カチオン界面活性剤1
塩化アルキル(C12)ベンザルコニウム
商品名:「カチオンG50」三洋化成工業社製(有効成分50質量%)
カチオン界面活性剤2
塩化ジデシルジメチルアンモニウム
商品名:「バーダック2280」ロンザジャパン社製(有効成分80質量%)
カチオン界面活性剤3
塩化セチルピリジニウム
商品名:「塩化セチルピリジニウム」和光純薬工業社製(有効成分100質量%)
カチオン界面活性剤4
ジデシルジメチルアンモニウムアジペート
商品名:「オスモリンDA−50」三洋化成工業社製(有効成分48質量%)
カチオン界面活性剤5
1−4ビス(3,3’−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジプロマイド
商品名:ビオサイドNeo タイショーテクノス社製(有効成分10質量%)
カチオン界面活性剤6
ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩
商品名:「ProxelIB」アーチケミカル社製(有効成分20質量%)
カチオン界面活性剤7
アルキルジアミン
商品名:「デュオミンTX」ライオンアクゾ社製(有効成分92質量%)
【0038】
(C)成分
両性界面活性剤1
ラウリルベタイン
商品名:「レボンLD−36」三洋化成工業社製(有効成分36質量%)
両性界面活性剤2
ラウラミノプロピオン酸ナトリウム
商品名:「レボンAPL」三洋化成工業社製(有効成分30質量%)
両性界面活性剤3
塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン
商品名:「レボン50」三洋化成工業社製(有効成分50質量%)
両性界面活性剤4
ナトリウムアルキルジアミノエチルグリシン
商品名:「レボンS」三洋化成工業社製(有効成分30質量%)
【0039】
(ノニオン界面活性剤)
ノニオン界面活性剤1
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
商品名:「プルラファックLF400」、BASF社製(有効成分100質量%)
ノニオン界面活性剤2
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル
商品名:「EMALEX6300M−ST」、日本エマルジョン社製(有効成分100質量%)
ノニオン界面活性剤3
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアマイド(1:1型)
商品名:「アデカソールCOA」ADEKA社製(有効成分100質量%)
【0040】
(アニオン界面活性剤)
アニオン界面活性剤1
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸
商品名:「フォスファノールRA−600」、東邦化学工業社製(有効成分100質量%)
アニオン界面活性剤2
ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム
商品名:「ビューライトLCA30D」、三洋化成工業社製(有効成分29質量%)
アニオン界面活性剤3
ラウロイルサルコシン
商品名:「サルコシネートLH」、日光ケミカルズ社製(有効成分100質量%)
アニオン界面活性剤4
ラウリン酸
商品名:「ラウリン酸98」、ミヨシ油脂社製(有効成分98質量%)
アニオン界面活性剤 アルキルエーテルリン酸
商品名:「フォスファノールML200」、東邦化学工業社製(有効成分100質量%)
【0041】
(可溶化剤)
可溶化剤1
メタキシレンスルホン酸ソーダ
商品名:「メタキシレンスルホン酸ソーダ」、三菱ガス化学社製(有効成分100質量%)
可溶化剤2
安息香酸ソーダ
商品名:「安息香酸ソーダ」、東亞合成社製 (有効成分100質量%)
可溶化剤3
クメンスルホン酸ソソーダ
商品名:「LUTENSIT TC−CS 40」、BASF社製(有効成分40質量%)
可溶化剤4
プロピレングリコール
商品名:「アデカプロピレングリコール(PG)」、旭電化工業社製(有効成分100質量%)
可溶化剤5
ヘキシレングリコール
商品名:「ヘキシレングリコール」、ダウケミカル社製(有効成分100質量%)
【0042】
(任意成分)
任意成分1
エチレンジアミン四酢酸三アンモニウム
商品名:「キレスト3N」、キレスト化学社製
任意成分2
酢酸
商品名:「酢酸T」、東ソーニッケミ社製(有効成分90質量%)
任意成分3
モノエタノールアミン
商品名:「モノエタノールアミン(MEA)」、日本触媒社製
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【0049】
【表7】

【0050】
【表8】

【0051】
【表9】

【0052】
【表10】

【0053】
【表11】

【0054】
【表12】

【0055】
【表13】

【0056】
【表14】

【0057】
【表15】

【0058】
【表16】

【0059】
【表17】

【0060】
【表18】

【0061】
【表19】

【0062】
【表20】

【0063】
【表21】

【0064】
【表22】

【0065】
【表23】

【0066】
【表24】

【0067】
【表25】

【0068】
【表26】

【0069】
【表27】

【0070】
表1〜表22の結果より、本発明のカチオン抵抗性菌用殺菌剤を配合した殺菌剤組成物の実施例品1〜132はいずれも、カチオン界面活性剤に対し抵抗性を持つ菌に対する殺菌性及び/又は洗浄性において、全ての項目で優れた性能を有していることがわかる。さらに、カチオン抵抗性菌として、バークホルデリア属、アクロモバクター属、エンテロバクター属、フラボバクテリウム属、アシネトバクター属、及びプロテウス属の細菌を用いた場合にも、同様の結果が得られた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと(B)カチオン界面活性剤及び/又は、(C)両性界面活性剤を含有するカチオン抵抗性菌用殺菌剤。
【請求項2】
上記カチオン抵抗性菌が、セラチア属の細菌、アルカリゲネス属の細菌、シュードモナス属の細菌、バークホルデリア属の細菌、アクロモバクター属の細菌、エンテロバクター属の細菌、フラボバクテリウム属の細菌、アシネトバクター属の細菌、及びプロテウス属の細菌からなる群より選択される細菌である、請求項1記載のカチオン抵抗性菌用殺菌剤。
【請求項3】
上記(B)カチオン界面活性剤が、
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、
アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド、
アルキルピリジニウムアンモニウムクロライド、
ジアルキルメチルベンジルアンモニウムクロライド、
ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、
ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、
ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート、
ジデシルジメチルアンモニウムプロピオネート、
ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド、
ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、
ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、
ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、
ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムスルホネート、
ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムブロマイド、
1,4−ビス(3,3’−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、
アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、
アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、
アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムブロマイド、
アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、
アルキルトリメチルアンモニウムアジペート、
アルキルトリメチルアンモニウムグルコネート、
アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、
ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、
ジオクチルジメチルアンモニウムアジペート、
ジオクチルジメチルアンモニウムグルコネート、
ジオクチルジメチルアンモニウムブロマイド、
オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、
オクチルデシルジメチルアンモニウムアジペート、
オクチルデシルジメチルアンモニウムグルコネート、
オクチルデシルジメチルアンモニウムブロマイド、
ジデシルメチルポリオキシエチレンアンモニウムプロピオネート、
メチルベンゼトニウムクロライドから選ばれる第四級アンモニウム塩、
ポリヘキサメチレンビグアナイドハイドロクロライド、
ポリヘキサメチレングアニジンホスフェート、
ポリヘキサメチレングアニジンクロライド、
グルコン酸クロルヘキシジンのグアニジン系カチオン界面活性剤、
ヘキサデシルトリブチルフォスフォニウム、アルキルジアミン又はその塩から選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載のカチオン抵抗性菌用殺菌剤。
【請求項4】
上記(C)成分の両性界面活性剤が、アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、アルキルベタイン型両性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3に記載のカチオン抵抗性菌用殺菌剤。
【請求項5】
上記カチオン抵抗性菌用殺菌剤において、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンに対する、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤の有効成分量の重量比が(A):(B)及び/又は(C)=1:25000〜500:1
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のカチオン抵抗性菌用殺菌剤。
【請求項6】
(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤の存在下でカチオン抵抗性菌と接触させることを特徴とする、カチオン抵抗性菌の殺菌方法。
【請求項7】
上記カチオン抵抗性菌の殺菌方法において、(A)5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンに対する、(B)カチオン界面活性剤及び/又は(C)両性界面活性剤の有効成分量の重量比が(A):(B)及び/又は(C)=1:25000〜500:1であることを特徴とする請求項6記載のカチオン抵抗性菌の殺菌方法。
【請求項8】
上記カチオン抵抗性菌が、セラチア属の細菌、アルカリゲネス属の細菌、シュードモナス属の細菌、バークホルデリア属の細菌、アクロモバクター属の細菌、エンテロバクター属の細菌、フラボバクテリウム属の細菌、アシネトバクター属の細菌、及びプロテウス属の細菌からなる群より選択される細菌である、請求項6、7記載の殺菌方法。


【公開番号】特開2010−83800(P2010−83800A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254477(P2008−254477)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(598028648)ジョンソンディバーシー株式会社 (30)
【Fターム(参考)】